特許第6087686号(P6087686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087686
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】エンジンのEGR装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/17 20160101AFI20170220BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20170220BHJP
   F02M 26/41 20160101ALI20170220BHJP
   F02M 26/52 20160101ALI20170220BHJP
【FI】
   F02M26/17
   F02B37/00 302F
   F02M26/41 301
   F02M26/52
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-64162(P2013-64162)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-190171(P2014-190171A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】小山 秀行
(72)【発明者】
【氏名】鍬崎 寛
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋朝 智也
(72)【発明者】
【氏名】森永 秀隆
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−163750(JP,A)
【文献】 特開2004−270632(JP,A)
【文献】 特開平09−089153(JP,A)
【文献】 特開平10−073053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02M 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気経路(1)がEGR経路(2)で吸気経路(3)に連通された、エンジンのEGR装置において、
エンジン放熱部(4)の放熱温度の昇降で変形する感温性変形部材(5)を備え、この感温性変形部品(5)に吸気経路(3)の吸気絞り弁(6)が連動連結され、
エンジン負荷の減少で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が下降すると、感温性変形部品(5)が変形し、これに伴う出力部(5a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、EGR率が増加するように構成されているとともに、
エンジン負荷の増加で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が上昇すると、感温性変形部品(5)が変形し、これに伴う出力部(5a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少するように構成され、
前記エンジン放熱部(4)がシリンダヘッド(12)の壁面であり、EGR経路(2)がEGR導出パイプ(15)であり、EGR導出パイプ(15)は、シリンダヘッド(12)外で、排気経路(1)と吸気経路(3)の間に配置され、
吸気経路(1)を構成する吸気マニホルド(14)は、吸気入口(14a)と吸気コレクタ(14b)を備え、立形エンジンの平面視で、吸気コレクタ(14b)はクランク軸架設方向に伸び、
平面視で、シリンダヘッド(12)の幅方向を左右横方向として、吸気マニホルド(14)の左右両側のうち、シリンダヘッド(12)のある側とは反対側の横一側で、シリンダヘッド(12)外のEGR導出パイプ(15)が、吸気マニホルド(14)の吸気コレクタ(14b)に沿って設けられ、平面視で、このEGR導出パイプ(15)が吸気マニホルド(14)の吸気コレクタ(14b)のクランク軸架設方向の長さを越える長さで設けられている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンのEGR装置において、
感温性変形部品(5)として、ワックスペレット型変形部品(7)が用いられ、このワックスペレット型変形部品(7)は、本体(7a)に出力ロッド(7b)が挿入され、本体(7a)にワックスペレット(7b)が収容され、ワックスペレット(7b)に出力ロッド(7c)が連結され、
エンジン負荷の減少で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が下降すると、ワックスペレット(7b)内のワックス(7c)の液体から固体への相変化で、ワックスペレット型変形部品(7)が縮小変形し、これに伴う本体(7b)への出力ロッド(7c)の引き込み変位で、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、EGR率が増加するように構成されているとともに、
エンジン負荷の増加で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が上昇すると、ワックスペレット(7b)内のワックス(7c)の固体から液体への相変化で、ワックスペレット型変形部品(7)が伸長変形し、これに伴う本体(7b)への出力ロッド(7c)の押し出し変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少するように構成されている、ことを特徴とするエンジンのEGR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのEGR装置に関し、詳しくは、EGR率の調節に複雑な電子制御を必要としないエンジンのEGR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのEGR装置として、排気経路がEGR経路で吸気経路に連通されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のEGR装置によれば、排気の一部がEGRガスとして吸気に還流され、NOの発生が抑制される利点がある。
【0004】
しかし、この従来技術では、エンジン回転数やエンジン負荷を検出し、これらとEGR率との適正な相関関係を実験的に求めたマップや演算式に基づいて、電子制御装置でエンジン負荷に応じたEGR率の電子制御がなされているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−273518号公報(図1図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
《問題点》 EGR率の調節に複雑な電子制御を必要とする。
エンジン回転数やエンジン負荷を検出し、これらとEGR率との適正な相関関係を実験的に求めたマップや演算式に基づいて、電子制御装置でエンジン負荷に応じたEGR率の電子制御がなされているため、EGR率の調節に複雑な電子制御を必要とする。
【0007】
本発明の課題は、EGR率の調節に複雑な電子制御を必要としないエンジンのEGR装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図3に例示するように、排気経路(1)がEGR経路(2)で吸気経路(3)に連通された、エンジンのEGR装置において、
図3に例示するように、エンジン放熱部(4)の放熱温度の昇降で変形する感温性変形部材(5)を備え、この感温性変形部品(5)に吸気経路(3)の吸気絞り弁(6)が連動連結され、
図1(A)(B)に例示するように、エンジン負荷の減少で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が下降すると、感温性変形部品(5)が変形し、これに伴う出力部(5a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、EGR率が増加するように構成されているとともに、
図1(A)(B)に例示するように、エンジン負荷の増加で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が上昇すると、感温性変形部品(5)が変形し、これに伴う出力部(5a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少するように構成され、
図3に例示するように、前記エンジン放熱部(4)がシリンダヘッド(12)の壁面であり、EGR経路(2)がEGR導出パイプ(15)であり、EGR導出パイプ(15)は、シリンダヘッド(12)外で、排気経路(1)と吸気経路(3)の間に配置され、
吸気経路(1)を構成する吸気マニホルド(14)は、吸気入口(14a)と吸気コレクタ(14b)を備え、立形エンジンの平面視で、吸気コレクタ(14b)はクランク軸架設方向に伸び、
図3に例示するように、平面視で、シリンダヘッド(12)の幅方向を左右横方向として、吸気マニホルド(14)の左右両側のうち、シリンダヘッド(12)のある側とは反対側の横一側で、シリンダヘッド(12)外のEGR導出パイプ(15)が、吸気マニホルド(14)の吸気コレクタ(14b)に沿って設けられ、平面視で、このEGR導出パイプ(15)が吸気マニホルド(14)の吸気コレクタ(14b)のクランク軸架設方向の長さを越える長さで設けられている、ことを特徴とするエンジン。
【0009】
【発明の効果】
【0010】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 EGR率の調節に複雑な電子制御を必要としない。
図1(A)(B)に例示するように、エンジン負荷の増減で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が昇降すると、感温性変形部品(5)が変形し、これに伴う出力部(5a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増減し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増減して、EGR率が増減するように構成されているので、EGR率の調節に複雑な電子制御を必要としない。
【0011】
《効果》 低負荷運転時には、NOの発生を抑制することができる。
図1(A)(B)に例示するように、エンジン負荷の減少で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が下降すると、感温性変形部品(5)が変形し、これに伴う出力部(5a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、EGR率が増加するように構成されているので、低負荷運転時には、NOの発生を抑制することができる。
【0012】
《効果》 高負荷運転時には、PMの発生が抑制される。
図1(A)(B)に例示するように、エンジン負荷の増加で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が上昇すると、感温性変形部品(5)が変形し、これに伴う出力部(5a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少するように構成されているので、高負荷運転時には、不完全燃焼が抑制され、PMの発生が抑制される。
【0013】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 バッテリや商用電源等の給電装置がない場合でもEGR率の調節を行うことができる。
図1(A)(B)に例示するように、エンジン負荷の増減で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が昇降すると、ワックスペレット(7b)内のワックス(7c)の液体と固体間の相変化で、ワックスペレット型変形部品(7)が伸縮変形し、これに伴う出力ロッド(7c)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増減し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増減して、EGR率が増減するので、バッテリや商用電源等の給電装置がない場合でもEGR率の調節を行うことができる。
【0014】
【0015】
【0016】
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンのEGR装置を説明する図で、図1(A)はシリンダヘッド放熱温度低温時の感温性変形部品と吸気絞り弁の状態を示す模式図、図1(B)はシリンダヘッド放熱温度高温時の感温性変形部品と吸気絞り弁の状態を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るエンジンのEGR装置の制御特性を説明するグラフで、図2(A)はシリンダヘッド放熱温度に対する吸気絞り弁の開度の制御特性、図2(B)はシリンダヘッド放熱温度に対するEGR率の制御特性をそれぞれ示している。
図3】本発明の実施形態に係るEGR装置を備えたエンジンの模式平面図である。
図4】本発明の参考形態に係るエンジンのEGR装置を説明する図で、図4(A)は排気マニホルド放熱温度低温時の感温性変形部品と吸気絞り弁の状態を示す模式図、図4(B)は排気マニホルド放熱温度高温時の感温性変形部品と吸気絞り弁の状態を示す模式図である。
図5】本発明の参考形態に係るエンジンのEGR装置の制御特性を説明するグラフで、図5(A)は排気マニホルド放熱温度に対する吸気絞り弁の開度の制御特性、図5(B)は排気マニホルド放熱温度に対するEGR率の制御特性をそれぞれ示している。
図6】本発明の参考形態に係るEGR装置を備えたエンジンを説明する図で、図6(A)はエンジンの模式平面図、図6(B)は熱電素子デバイスの横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図3本発明の実施形態に係るエンジンのEGR装置を説明する図、図4図6は本発明の参考形態に係るエンジンのEGR装置を説明する図であり、各実施形態と参考形態では、立形の直列多気筒ディーゼルエンジンのEGR装置について説明する。
【0019】
まず、実施形態について説明する。
図3に示すように、このエンジンの概要は、次の通りである。
このエンジンは立形の直列4気筒エンジンで、シリンダブロック(11)の上部にシリンダヘッド(12)が組み付けられ、シリンダヘッド(12)の横一側に排気マニホルド(13)が組み付けられ。横他側に吸気マニホルド(14)が組み付けられている。このエンジンにはEGR装置が組み付けられている。
【0020】
EGR装置の概要は、次の通りである。
図3に示すように、排気経路(1)がEGR経路(2)で吸気経路(3)に連通されている。
排気経路(1)は排気マニホルド(13)、EGR経路(2)はEGR導出パイプ(15)、吸気経路(3)は吸気マニホルド(14)である。排気マニホルド(13)は、4本の排気ブランチ(13a)とクランク軸架設方向に伸びた排気コレクタ(13b)と排気出口(13c)とを備えている。吸気マニホルド(14)は、吸気入口(14a)とクランク軸架設方向に伸びた吸気コレクタ(14b)と4本の吸気ブランチ(14c)とを備えている。吸気入口(14a)は吸気コレクタ(14b)の前端部に設けられている。EGR導出パイプ(15)は金属パイプで、パイプ入口(15a)が排気マニホルド(13)のコレクタ(13b)の後端部に接続され、パイプ出口(15b)が吸気マニホルド(14)の吸気入口(14a)に接続されている。EGR導出パイプ(15)には多数の放熱フィン(15c)が設けられている。EGR経路(2)にはEGRバルブは設けられておらず、排気経路(1)と吸気経路(3)はEGR経路(2)で常に連通状態とされ、排気経路(1)と吸気経路(3)の差圧により、吸気経路(3)にEGRガス(8)が吸い込まれる。
【0021】
このエンジンは、エンジン放熱部(4)の放熱温度の昇降で変形する感温性変形部材(5)を備えている。
図3に示すように、エンジン放熱部(4)に感温性変形部品(5)が取り付けられ、この感温性変形部品(5)に吸気経路(3)の吸気絞り弁(6)が連動連結されている。
図1(A)(B)に示すように、エンジン負荷の減少で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が下降すると、感温性変形部品(5)が変形し、これに伴う出力部(5a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、EGR率が増加するように構成されている。
図1(A)(B)に示すように、エンジン負荷の増加で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が上昇すると、感温性変形部品(5)が変形し、これに伴う出力部(5a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少するように構成されている。
【0022】
エンジン放熱部(4)はシリンダヘッド(12)の壁面である。吸気絞り弁(6)はバタフライ弁であり、吸気マニホルド(14)の吸気入口(14a)に配置され、その下流側にEGR導出パイプ(15)のパイプ出口(15b)が開口されている。
EGR導出パイプ(15)は、シリンダヘッド(12)外で、排気経路(1)と吸気経路(3)の間に配置されている。
吸気経路(1)を構成する吸気マニホルド(14)は、吸気入口(14a)と吸気コレクタ(14b)を備え、立形エンジンの平面視で、吸気コレクタ(14b)はクランク軸架設方向に伸びている。
平面視で、シリンダヘッド(12)の幅方向を左右横方向として、吸気マニホルド(14)の左右両側のうち、シリンダヘッド(12)のある側とは反対側の横一側で、シリンダヘッド(12)外のEGR導出パイプ(15)が、吸気マニホルド(14)の吸気コレクタ(14b)に沿って設けられ、平面視で、このEGR導出パイプ(15)が吸気マニホルド(14)の吸気コレクタ(14b)のクランク軸架設方向の長さを越える長さで設けられている。

【0023】
図1(A)(B)に示すように、感温性変形部品(5)として、ワックスペレット型変形部品(7)が用いられ、このワックスペレット型変形部品(7)は、本体(7a)に出力ロッド(7c)が挿入され、本体(7a)にワックスペレット(7b)が収容され、ワックスペレット(7b)に出力ロッド(7c)が連結されている。
図1(A)(B)に示すように、エンジン負荷の減少で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が下降すると、ワックスペレット(7b)内のワックス(7d)の液体から固体への相変化で、ワックスペレット型変形部品(7)が縮小変形し、これに伴う本体(7a)への出力ロッド(7c)の引き込み変位で、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、EGR率が増加するように構成されている。
図1(B)に示すように、エンジン負荷の増加で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が上昇すると、ワックスペレット(7b)内のワックス(7d)の固体から液体への相変化で、ワックスペレット型変形部品(7)が伸長変形し、これに伴う本体(7a)への出力ロッド(7c)の押し出し変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少するように構成されている。
【0024】
ワックスペレット型変形部品(7)の具体的構造は、次の通りである。
図1(A)(B)に示すように、本体(7a)の端壁(7e)にスピンドル(7f)が取り付けられ、このスピンドル(7f)がワックスペレット(7b)に差し込まれ、スピンドル(7f)がゴム筒(7g)で取り囲まれ、ゴム筒(7g)がワックス(7d)に取り囲まれている。ワックスペレット(7b)は付勢バネ(7h)の付勢力(7i)で出力ロッド引き込み側に付勢されている。ワックス(7d)の液体から固体への相変化で、図1(A)に示すように、ワックス(7d)の体積は小さくなり、ワックスペレット(7b)は付勢バネ(7h)の付勢力(7i)で出力ロッド引き込み側に位置するが、ワックス(7d)の固体から液体への相変化で、図1(B)に示すように、ワックス(7d)の体積が増加し、ワックス(7d)でゴム筒(7g)が周囲から圧迫されると、スピンドル(7f)の先端部(7j)とワックスペレット(7b)の前端壁(7k)との間にゴム筒(7g)の圧搾部(7m)が形成され、ワックスペレット(7b)がスピンドル(7f)から抜け出す方向に移動し、ワックスペレット(7b)が出力ロッド押し出し側に位置する。
【0025】
EGR装置の制御特性は、次の通りである。
エンジン負荷の減少で、シリンダヘッド放熱温度が下降すると、図2(A)に示すように、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、図2(B)に示すように、EGR率が増加する。
エンジン負荷の増加で、シリンダヘッド放熱温度が上昇すると、図2(A)に示すように、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、図2(B)に示すように、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少する。
【0026】
次に、参考形態について説明する。
参考形態は、次の点を除き、実施形態と同一に構成されている。図4(A)(B)、図6(A)(B)中、実施形態と同一の要素には図1(A)(B)、図3と同一の符号を付しておく。
図6(A)に示すように、エンジン放熱部(4)に熱電素子デバイス(9)が取り付けられ、この熱電素子デバイス(9)に電動アクチュエータ(10)が接続され、この電動アクチュエータ(10)に吸気経路(3)の吸気絞り弁(6)が連動連結されている。
図4(A)(B)に示すように、エンジン負荷の減少で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が下降すると、熱電素子デバイス(9)の発電量が減少し、これに伴う電動アクチュエータ(10)の出力部(10a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、EGR率が増加するように構成されている。
図4(A)(B)に示すように、エンジン負荷の増加で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が上昇すると、熱電素子デバイス(9)の発電量が増加し、これに伴う電動アクチュエータ(10)の出力部(10a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少するように構成されている。
【0027】
各構成要素の内容は、次の通りである。
図6(A)に示すように、エンジン放熱部(4)は排気マニホルド(13)の排気コレクタ(13b)の壁面である。熱電素子デバイス(9)はベーゼック素子デバイスである。図4(A)(B)に示すように、電動アクチュエータ(10)は電磁ソレノイド(16)で、本体(16a)に出力ロッド(16b)が差し込まれ、本体(16a)内で出力ロッド(16b)が電磁コイル(16c)に取り囲まれ、出力ロッド(16b)が付勢バネ(16d)の付勢力(16e)で本体(16a)への出力ロッド引き込み方向に付勢されている。熱電素子デバイス(9)の発電量が減少すると、本体(16a)からの出力ロッド(16b)の押し出し力が低下して、図4(A)に示すように、本体(16a)に出力ロッド(16b)が引き込まれ、出力ロッド(16b)の引き込み変位で、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、EGR率が増加する。熱電素子デバイス(9)の発電量が増加すると、本体(16a)からの出力ロッド(16b)の押し出し力が増加して、図4(B)に示すように、本体(16a)から出力ロッド(16b)が押し出され、出力ロッド(16b)の押し出し変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少する。
【0028】
図6(B)に示すように、熱電素子デバイス(9)は、ケース(9g)と、ケース(9g)の開口を塞いで取り付けられた低温側基板(9a)と、この低温側基板(9a)の内面に沿って設けられた低温側電極(9b)と、ケース(9g)の奥端面に沿って設けられた高温側基板(9c)と、この高温側基板(9c)の表面に沿って設けられた高温側電極(9d)と、この高温側電極(9d)と低温側電極(9b)との間に設けられた熱電素子(9e)とで構成され、ケース(9g)内は不活性ガスで満たされている。この熱電素子デバイス(9)は、高温側電極(9d)寄りのケース奥端壁(9f)をエンジン放熱部(4)に沿って取り付け、低温側電極(9b)寄りの低温側基板(9a)をエンジンルーム内に露出させている。熱電素子デバイス(9)では、高温側基板(9c)と低温側基板(9a)との温度差で、ベーセック効果によって発電がなされる。
【0029】
EGR装置の制御特性は、実施形態と同じである。
エンジン負荷の減少で、排気マニホルド放熱温度が下降すると、図5(A)に示すように、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、図5(B)に示すように、EGR率が増加する。
エンジン負荷の増加で、排気マニホルド放熱温度が上昇すると、図5(A)に示すように、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、図5(B)に示すように、EGR率が減少する。
参考形態に係る発明の効果は、次の通りである。
《効果》 EGR率の調節に複雑な電子制御を必要としない。
図4(A)(B)に例示するように、エンジン負荷の増減で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が昇降すると、熱電素子デバイス(9)の発電量が増減し、これに伴うアクチュエータ(10)の出力部(10a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増減し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増減して、EGR率が増減するように構成されているので、EGR率の調節に複雑な電子制御を必要としない。
《効果》 低負荷運転時には、NOの発生を抑制することができる。
図4(A)(B)に例示するように、エンジン負荷の減少で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が下降すると、熱電素子デバイス(9)の発電量が減少し、これに伴う電動アクチュエータ(10)の出力部(10a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が減少し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が増加して、EGR率が増加するように構成されているので、低負荷運転時には、NOの発生を抑制することができる。
《効果》 高負荷運転時には、PMの発生が抑制される。
図4(B)に例示するように、エンジン負荷の増加で、エンジン放熱部(4)の放熱温度が上昇すると、熱電素子デバイス(9)の発電量が増加し、これに伴う電動アクチュエータ(10)の出力部(10a)の変位で、吸気絞り弁(6)の開度が増加し、吸気経路(3)へのEGRガス(8)の吸い込み量が減少して、EGR率が減少するように構成されているので、高負荷運転時には、不完全燃焼が抑制され、PMの発生が抑制される。
【符号の説明】
【0030】
(1) 排気経路
(2) EGR経路
(3) 吸気経路
(4) エンジン放熱部
(5) 感温性変形部品
(5a) 出力部
(6) 吸気絞り弁
(7) ワックス内蔵部品
(7a) ワックス
(7b) 本体
(7c) 出力ロッド
(8) EGRガス
(9) 熱電素子デバイス
(10) 電動アクチュエータ
(10a) 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6