(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087689
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ユニオン継手
(51)【国際特許分類】
F16L 19/025 20060101AFI20170220BHJP
F16L 47/04 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
F16L19/025
F16L47/04
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-65668(P2013-65668)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190412(P2014-190412A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野 智和
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第01017294(GB,A)
【文献】
特開2004−053006(JP,A)
【文献】
米国特許第04316624(US,A)
【文献】
特開2002−310361(JP,A)
【文献】
実開昭60−097480(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0230650(US,A1)
【文献】
実開平06−006868(JP,U)
【文献】
特開平09−257171(JP,A)
【文献】
米国特許第2300517(US,A)
【文献】
特開2004−114001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/00 − 19/14
F16L 47/00 − 47/34
F16L 33/00 − 33/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管体と他方の管体を接続するユニオン継手であって、
一端が一方の管体に接続され他端が他方の管体に接続される樹脂製の継手本体と、
前記継手本体の一端に装着された外筒部材と、
前記継手本体の他端に対して回転自在に装着されたユニオンナットとを備え、
前記継手本体の他端部にはリブが設けられ、
前記ユニオンナットには、他方の管体に螺合される雌ねじと、前記継手本体のリブと係合可能な係止部と、該係止部に沿って前記リブの外径よりも大きな内径で、前記リブの幅よりも小幅のガイド溝とが設けられ、
他方の管体の雄ねじに、前記ユニオンナットの雌ねじがねじ込まれたとき、前記継手本体のリブに生じる膨出部を前記ガイド溝に収容させ、ユニオンナットの回転を確保することを特徴とするユニオン継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユニオン継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、管体同士を接続するに際して、一方の管体を接続可能な継手本体及び継手本体に対して回転自在に装着されたユニオンナットからなるユニオン継手が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このユニオン継手は、ユニオンナットを回転させることにより、ユニオン継手の継手本体側に接続された一方の管体を回転させることなく他方の管体と接続することができ、低圧の流体、例えば、水道水等を供給する小口径の管体の接続に好適に採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開20005−114001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユニオン継手は、前述したように、低圧の流体を供給する小口径の管体を接続する場合に用いられ、格別大きな強度を必要としない。しかしながら、継手本体及びユニオンナットは、比較的強度の大きな金属材料、例えば、砲金等の銅合金によって製造されており、コストがかさむという問題があった。このため、低圧の流体を流通させることから、大きな強度を必要としない継手本体を樹脂化してコストを低減させる試みがなされている。
【0005】
この場合、ユニオン継手を構成する金属製のユニオンナットを接続対象である他方の管体の雄ねじにねじ結合する場合、他方の管体の一端面に継手本体の一端面を突き当ててユニオン継手による接続部分の水密性を確保する必要がある。すなわち、ユニオンナットを継手本体に対して回転させ、他方の管体の雄ねじにねじ結合するとき、ユニオンナットの係止部が継手本体のリブに係合して継手本体を引き寄せ、他方の管体の一端面に継手本体のリブ側一端面を突き当てて密封することから、ユニオンナットを必要以上に締め付けると、その係止部が継手本体のリブを大きな力で押圧することになる。これにより、ユニオンナットの係止部が、他方の管体の先端面に突き当てられた樹脂製の継手本体のリブの外周端縁部を圧潰してその端縁部を外方に膨出させ、ユニオンナットの係止部及び内周面からなる隅角部に圧着させる場合があった。この結果、ユニオンナットと継手本体とが一体化し、ユニオンナットを継手本体に対して回転させることが困難となり、他方の管体から離脱させることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、樹脂製の継手本体に対して継手本体と同等以上の強度を有するユニオンナットを必要以上に締め付けた場合であっても、継手本体に対するユニオンナットの回転を確保することのできるユニオン継手を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
一方の管体と他方の管体を接続するユニオン継手であって、一端が一方の管体に接続され他端が他方の管体に接続される樹脂製の継手本体と、前記継手本体の一端に装着された外筒部材と、前記継手本体
の他端に対して回転自在に装着されたユニオンナット
とを備え、前記継手本体の他端部にリブが設けられ、前記ユニオンナットに
は、他方の管体に螺合される雌ねじと、前記継手本体のリブと係合可能な係止部
と、該係止部に沿って
前記リブの外径よりも大きな内径で、
前記リブの幅よりも小幅のガイド溝と
が設けられ、他方の管体の雄ねじに、前記ユニオンナットの雌ねじがねじ込まれたとき、前記継手本体のリブに生じる膨出部を前記ガイド溝に収容させ、ユニオンナットの回転を確保することを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、接続対象の管体の雄ねじにユニオンナットの雌ねじをねじ込み、接続するに際して、継手本体のリブ側一端面と接続対象の管体の一端面とが突き合わされた状態でユニオンナットを必要以上に締め付けることによって、ユニオンナットの係止部が継手本体のリブを大きな力で押圧してリブを圧潰させ、その圧潰された端縁部を係止部に沿って外方に膨出させたとしても、その膨出部は、ユニオンナットの係止部に沿って形成されたガイド溝に収容され、ユニオンナットの内周面に圧着されることを防止できる。
【0009】
この結果、仮にユニオンナットを必要以上に締め付けることによって樹脂製の継手本体のリブを圧潰させ、その圧潰した端縁部を外方に膨出させたとしても、継手本体に対するユニオンナットの回転を確保することができ、ユニオン継手を接続対象の管体から確実に離脱させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂製の継手本体に対して継手本体と同等以上の強度を有するユニオンナットを必要以上に締め付けた場合であっても、継手本体に対するユニオンナットの回転を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のユニオン継手の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1のユニオン継手のユニオンナットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1には、本発明のユニオン継手1の一実施形態が示されている。
【0014】
このユニオン継手1は、樹脂製の継手本体2と、継手本体2に対して回転自在に装着された金属製のユニオンナット3とを主要部として構成されており、詳細には図示しないが、例えば、建物内に敷設される架橋ポリエチレン管等の給水管を一方の管体とし、また、給湯器の接続口を他方の管体として両者を接続する場合に用いられる。
【0015】
継手本体2は、一端部に外方に突出する設定幅のリブ21が形成され、また、略中間部他端部よりには、シール溝2aが形成されるとともに、そのシール溝2aにはシール部材22が配設され、給水管の内周面を密封することができる。また、継手本体2のリブ21側一端面には、シートパッキン23が配設されており、給湯器の接続口端面との間を密封することができる。
【0016】
ユニオンナット3は、給湯器の接続口に形成された雄ねじに対応する雌ねじ31(管用平行ねじ)が形成されるとともに、継手本体2がユニオンナット3に嵌挿された際、継手本体2のリブ21と係合可能な係止部32が形成されている。そして、ユニオンナット3に継手本体2が嵌挿された際、継手本体2におけるリブ21に連続する外周面に対して回転できるように、係止部32の内径が設定されている。また、ユニオンナット3の係止部32に沿う内周面には、継手本体2のリブ21の幅よりも小幅で、かつ、リブ21の外径よりも大きな内径のガイド溝33が形成されており、ユニオンナット3の係止部32に押圧されるリブ21の外周端縁部が圧潰し、係止部32に沿って外方に膨出した場合に、その膨出部を収容できるように深さ(内径)と幅が設定されている。
【0017】
なお、このユニオン継手1の実施形態においては、継手本体2の外周面に一体に装着された外筒部材4と、該外筒部材4に一体に装着されたキャップ5と、外筒部材4及びキャップ5間に配設された抜け止めリング6と、継手本体2に配設されたシール部材22の離脱を防止するように、継手本体2に嵌挿された挿入ガイド7とによって、給水管を差し込むことよって接続することができるワンタッチ継手に形成されている。
【0018】
次に、このように構成されたユニオン継手1を用いて給水管及び給湯器の接続口を接続する施工要領について説明する。
【0019】
まず、ユニオン継手1を給湯器の接続口(図示せず)に接続する。具体的には、給湯器の接続口に形成された雄ねじにユニオン継手1のユニオンナット3の雌ねじ31をねじ込み、締め付ける。これにより、ユニオンナット3の係止部32が継手本体2のリブ21に係合し、そのリブ21側一端面を給湯器の接続口端面に突き当てるように引き寄せる。そして、ユニオン継手1の継手本体2のリブ21側一端面と給湯器の接続口端面とが突き合わされて面接触し、リブ21側一端面に配設されたシートパッキン23によってそれらの突き合わせ面が密封される。
【0020】
一方、ユニオン継手1を給湯器に接続したならば、ユニオン継手1に給水管を接続する。具体的には、ユニオン継手1の継手本体2の外周面と、外筒部材4の内周面及びキャップ5の内周面との間に形成された空間に給水管の先端部分を差し込む。これにより、給水管の先端部内周面が抜け止めリング6の外周面に乗り上げてそのフランジ部に突き当たる。給水管をさらに差し込むと、その先端面が挿入ガイド7のフランジ部に突き当った状態で挿入ガイド7とともに差し込まれる。この際、シール部材22は、その外周面側が挿入ガイド7によって覆われており、給水管の差し込みに際してその先端がシール部材22に接触し、シール溝2aからシール部材22を離脱させて損傷させることを防止できる。給水管がストロークエンドまで差し込まれれば、給水管の接続作業が完了し、ユニオン継手1を介して給湯器及び給水管を接続することができる。
【0021】
なお、給水管に抜け出し方向の力が作用したとしても、抜け止めリング6の内周縁が内径を縮小するように変形し、給水管の外周面に食い込むことから、給水管の抜け出しを確実に防止することができる。
【0022】
また、ユニオン継手1のユニオンナット3を緩めるように回転操作すれば、給湯器からユニオン継手1を離脱させることができ、給湯器の保守点検等を行なうことができる。この際、給水管を一体に接続している継手本体2に対してユニオンナット3を回転操作することができ、給水管を回転させることはない。
【0023】
ところで、ユニオン継手1を給湯器と接続するに際して、仮に、継手本体2のリブ21側一端面と給湯器の接続口端面とが必要かつ十分に突き合わされているにも関わらず、ユニオンナット3をなおも締め付けた場合、給湯器の接続口端面と継手本体2のリブ21側一端面とが突き合わされた状態で、ユニオンナット3の係止部32が継手本体2のリブ21を大きな力で押圧することになる。これにより、継手本体2のリブ21における外周端縁部が圧潰し、圧潰した端縁部がユニオンナット3の係止部32に沿って外方に膨出することになる。この場合、ユニオンナット3の係止部32に沿ってガイド溝33が形成されていることから、リブ21の膨出部はユニオンナット3の係止部32に沿ってガイド溝33に収容され、ユニオンナット3の内周面に圧着されることはない。したがって、ユニオンナット3を継手本体2に対して確実に回転させることができ、必要に応じて給湯器の接続口から離脱させることができる。
【0024】
なお、前述した実施形態においては、金属製のユニオンナットを例示したが、樹脂製の継手本体と同等以上の強度を有するユニオンナットを必要以上に締め付けた場合にも、継手本体2のリブ21における外周端縁部を圧潰させるおそれがある。このため、ユニオンナットとしては、金属に限定されず、例えば、金属製雌ねじ部に樹脂をコーティングしたナット、樹脂(PPSU;ポリフェニルサルフォン、PPS;ポリフェニレンサルファイド、PES;ポリエーテルサルフォン、ナイロン、POM;ポリアセタール、ポリカーボネート)にガラス繊維を含浸して強度を向上させたナット、継手本体と同等以上の強度を有する樹脂(PPSUやPES等)からなるナットであっても適用することができる。
【0025】
また、前述した実施形態においては、給水管と給湯器の接続口を接続する場合について例示したが、このような例に限定されず、管体同士を接続する場合において採用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ユニオン継手
2 継手本体
21リブ
3 ユニオンナット
32 係止部
33 ガイド溝