特許第6087702号(P6087702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6087702-ハイブリッド車両の自動変速制御装置 図000002
  • 特許6087702-ハイブリッド車両の自動変速制御装置 図000003
  • 特許6087702-ハイブリッド車両の自動変速制御装置 図000004
  • 特許6087702-ハイブリッド車両の自動変速制御装置 図000005
  • 特許6087702-ハイブリッド車両の自動変速制御装置 図000006
  • 特許6087702-ハイブリッド車両の自動変速制御装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087702
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の自動変速制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20170220BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20170220BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20170220BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20170220BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20170220BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20170220BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   B60W10/08 900
   B60K6/48ZHV
   B60K6/547
   B60W10/02 900
   B60W10/10 900
   B60W20/00
   B60L11/14
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-77317(P2013-77317)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-201137(P2014-201137A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知樹
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−098679(JP,A)
【文献】 特開2006−213133(JP,A)
【文献】 特開2008−290582(JP,A)
【文献】 特開2003−200748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/547
B60L 11/14
B60W 10/02
B60W 10/10
B60W 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(21)にクラッチ(26)と電動機(31)と機械式変速機(10)がこの順序で接続されたハイブリッド車両であって、
前記クラッチ(26)を切断して高段位のギヤからギヤ抜きを行った後に低段位のギヤにギヤ入れを行う前記機械式変速機(10)のシフトダウン時に、そのギヤ抜き後ギヤ入れ前に前記機械式変速機(10)のインプットシャフト(2)の回転速度を増加させるように前記電動機(31)を制御する変速制御手段(36)を備えたハイブリッド車両の自動変速制御装置において、
走行道路の勾配を検出する道路勾配検出手段(37)が設けられ、
前記変速制御手段(36)は、シフトダウン時に前記道路勾配検出手段(37)が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出すると、ギヤ抜き後に前記電動機(31)により前記インプットシャフト(2)の回転速度を増加させることなく、アウトプットシャフト(3)の回転速度が低下するのを待って前記機械式変速機(10)のギヤ入れを行うように構成された
ことを特徴とするハイブリッド車両の自動変速制御装置。
【請求項2】
アウトプットシャフト(3)の回転速度を検出する回転検出手段(39)が更に設けられ、
変速制御手段(36)は、シフトダウン時に道路勾配検出手段(37)が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出するとともに、ギヤ抜き前に前記回転検出手段(39)が所定値以下の回転速度を検出すると、ギヤ抜き後に前記インプットシャフト(2)の回転速度を増加させることなく、アウトプットシャフト(3)の回転速度が低下するのを待って前記機械式変速機(10)のギヤ入れを行うように構成された請求項1記載のハイブリッド車の自動変速制御装置。
【請求項3】
機械式変速機(10)の段位を検出する段位検出手段(38)が更に設けられ、
変速制御手段(36)は、シフトダウン時に道路勾配検出手段(37)が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出するとともに、ギヤ抜き前に前記段位検出手段(38)が所定の低速段位以下を検出すると、ギヤ抜き後に前記インプットシャフト(2)の回転速度を増加させることなく、アウトプットシャフト(3)の回転速度が低下するのを待って前記機械式変速機(10)のギヤ入れを行うように構成された請求項1記載のハイブリッド車両の自動変速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関にクラッチと電動機と機械式変速機がこの順序で接続されたハイブリッド車両の自動変速制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックなど商用車においては、機械式変速機を搭載するものが多く見られる。この機械式変速機は、内燃機関の回転軸に連結されたインプットシャフトと、そのインプットシャフトに同軸に設けられたアウトプットシャフトと、そのアウトプットシャフトの周囲で空転する複数のドリブンギヤとを備える。アウトプットシャフトの下方には、インプットシャフトとともに回転するカウンタシャフトが設けられ、カウンタシャフトにはドライブギヤが一体的に形成される。ドライブギヤはドリブンギヤと常時噛み合っており、各ドリブンギヤのそれぞれの間のアウトプットシャフトには、円盤状のシンクロナイザハブがそれぞれ一体的に設けられる。その複数のシンクロナイザハブの外周には、複数の結合スリーブが摺動可能に設けられる。そして、結合スリーブが隣接するドリブンギヤに係合すると、カウンタシャフトとアウトプットシャフトは連結され、これによりギヤ入れは完了することになる。このようにギヤ入れが完了すると、インプットシャフトの回転がカウンタシャフトを介してアウトプットシャフトに伝達されることになる。
【0003】
このような構造の機械式変速機では、結合スリーブを摺動させるシフタロッドが設けられる。このため、このシフタロッドをエアシリンダ等のアクチュエータにより移動させる自動変速制御装置が知られている。この自動変速制御装置を備える車両では、内燃機関と機械式変速機の間に設けられて内燃機関の動力を切断するクラッチと、そのアクチュエータを制御する制御手段と、その制御手段がアクチュエータを制御するための情報を提供する各種のセンサが設けられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、近年では、省エネルギーの観点から、内燃機関の出力軸にクラッチを介して電動機を結合し、この電動機の回転駆動力を駆動出力として機械式変速機におけるインプットシャフトに伝達し、アウトプットシャフトからの駆動出力を駆動車輪に伝達する構造のハイブリッド車両が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このようなハイブリッド車両の自動変速制御装置では、クラッチを切断した状態で、機械式変速機におけるシフトアップ又はシフトダウンの変速制御をしている。その際、制御手段は、駆動車輪を回転させるアウトプットシャフトの回転速度を求め、そこから求められるインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度を更に求め、その求められたギヤ入れ可能な回転速度を目標として、電動機によりインプットシャフトの実際の回転速度を一致させることが提案されている。このようにインプットシャフトの実際の回転速度を、アウトプットシャフトの回転速度から求められるインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度に一致させた状態で、アウトプットシャフトと一体的に回転する結合スリーブを隣接するドリブンギヤに係合させることにより、変速を確実に行うとともに、その変速に係る時間を短縮し得るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6ー241300号公報
【特許文献2】特開2007−69787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来のハイブリッド車両の自動変速制御装置では、アウトプットシャフトの回転速度からインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度を求めている。しかし、電動機が実際にインプットシャフトの回転速度を、得られたギヤ入れ可能な回転速度に一致させるまでに時間的なずれが生じる。この時間的なずれは、インプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度に、実際のインプットシャフトの回転速度を一致させることができない場合を生じさせる。
【0007】
即ち、図6に示すように、車両の速度が低下してシフトダウンを行う時には、クラッチを切断した後(t1)、シフタロッドを移動させてギヤ抜きを行い(t2)、その後、電動機により、インプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度を目標に、インプットシャフトの回転速度を上昇させることになる(t3)。けれども、例えば、車両が上り坂を走行しているときのように、駆動車輪の回転速度が著しく低下する場合には、それとともにアウトプットシャフトの回転速度も著しく低下することになる。すると、電動機により、そのアウトプットシャフトの回転速度から求められたインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度に、実際のインプットシャフトの回転速度を一致させた段階では、時間的なずれにより、すでにインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度は更に低下していることになる。
【0008】
すると、図6の実線で示すインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度は、破線で示す実際のインプットシャフトの回転速度より低下して下方に位置し、両者は平行状態を保って、求められたインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度に実際のインプットシャフトの回転速度を一致させることができないことになる。特に、この差は、2速段から1速段にシフトダウンするような場合のように、低速段におけるシフトダウン時に大きなものとなる。このため、本来であれば図6の破線で示すようにシフタロッドが移動して(t5)ギヤ入れが完了するのだけれども、ギヤ入れ方向にシフタロッドを付勢しても(t4)、実線で示すようにシフタロッドは移動せずに、ギヤ入れは不能となり、ギヤ入れを完了させることができない問題を生じさせる。
【0009】
本発明の目的は、車両が上り坂を走行するときのように、駆動車輪の回転速度の低下率が大きな場合であっても、シフトダウン時におけるギヤ入れを確実に完了させ得るハイブリッド車両の自動変速制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内燃機関にクラッチと電動機と機械式変速機がこの順序で接続されたハイブリッド車両であって、クラッチを切断して高段位のギヤからギヤ抜きを行った後に低段位のギヤにギヤ入れを行う機械式変速機のシフトダウン時に、そのギヤ抜き後ギヤ入れ前に機械式変速機のインプットシャフトの回転速度を増加させるように電動機を制御する変速制御手段を備えたハイブリッド車両の自動変速制御装置の改良である。
【0011】
その特徴ある構成は、走行道路の勾配を検出する道路勾配検出手段が設けられ、変速制御手段は、シフトダウン時に道路勾配検出手段が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出すると、ギヤ抜き後に電動機によりインプットシャフトの回転速度を増加させることなく、アウトプットシャフトの回転速度が低下するのを待って機械式変速機のギヤ入れを行うように構成されたところにある。
【0012】
このハイブリッド車両の自動変速制御装置では、アウトプットシャフトの回転速度を検出する回転検出手段が更に設けられ、変速制御手段は、シフトダウン時に道路勾配検出手段が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出するとともに、ギヤ抜き前に回転検出手段が所定値以下の回転速度を検出すると、ギヤ抜き後にインプットシャフトの回転速度を増加させることなく、アウトプットシャフトの回転速度が低下するのを待って機械式変速機のギヤ入れを行うように構成することが好ましい。
【0013】
一方、このハイブリッド車両の自動変速制御装置では、機械式変速機の段位を検出する段位検出手段が更に設けられ、変速制御手段は、シフトダウン時に道路勾配検出手段が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出するとともに、ギヤ抜き前に段位検出手段が所定の低速段位以下を検出すると、ギヤ抜き後にインプットシャフトの回転速度を増加させることなく、アウトプットシャフトの回転速度が低下するのを待って機械式変速機のギヤ入れを行うように構成することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハイブリッド車両の自動変速制御装置では、シフトダウン時に道路勾配検出手段が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出すると、ギヤ抜き後にインプットシャフトの回転速度を増加させずに、アウトプットシャフトの回転速度が低下するのを待つ。すると、そのアウトプットシャフトの回転速度から得られるインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度が、実際のインプットシャフトの回転速度に近づいて略一致した段階で、アウトプットシャフトと一体的に回転する結合スリーブが隣接するドリブンギヤに係合することになり、機械式変速機のギヤ入れを完了させることができる。これにより、本発明では、インプットシャフトの回転速度を増加させることに起因して、アウトプットシャフトの回転速度から求められたインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度と、実際のインプットシャフトの回転速度が一致しないような状態を回避して、ギヤ入れを完了させることができる。
【0015】
ここで、登坂時に生じるインプットシャフトのギヤ入れ可能な回転速度と、実際のインプットシャフトの回転速度の差は、2速段から1速段にシフトダウンするような場合のように、低速段におけるシフトダウン時に大きなものとなる。このため、回転検出手段や段位検出手段により、低速段である場合にのみ、アウトプットシャフトの回転速度が低下するのを待って、ギヤ入れを行うようにすれば、その低速段におけるシフトダウン時におけるギヤ入れを確実に完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明実施形態のハイブリッド車両の自動変速制御装置の構成図である。
図2】その機械式変速機の構成を示す断面図である。
図3】そのハイブリッド車両の自動変速制御装置の動作を示すフローチャートである。
図4】その動作におけるクラッチとシフタロッドのストロークとアウトプットシャフトの回転速度とインプットシャフトの回転速度との関係を示す図である。
図5】登坂時におけるクラッチとシフタロッドのストロークとアウトプットシャフトの回転速度とインプットシャフトの回転速度との関係を示す図4に対応する図である。
図6】従来の変速制御装置におけるクラッチとシフタロッドのストロークとアウトプットシャフトの回転速度とインプットシャフトの回転速度との関係を示す図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、ハイブリッド車両100には機械式変速機10が設けられる。図2に詳しく示すように、この実施の形態における機械式変速機10は、ギヤケース11と、そのギヤケース11内に設けられて後述する電動機31(図1)の回転軸に連結されたインプットシャフト2と、そのインプットシャフト2に連結してそのインプットシャフト2に同軸に設けられたアウトプットシャフト3と、アウトプットシャフト3に支持されてそのアウトプットシャフト3の周囲で空転する複数のドリブンギヤ5a〜5eとを備える。
【0019】
ギヤケース11にはアウトプットシャフト3の下方にそのアウトプットシャフト3に平行にカウンタシャフト4が設けられ、このカウンタシャフト4にはドライブギヤ6a〜6fが一体的に形成される。カウンタシャフト4の先頭に設けられたカウンタドライブギヤ6fはインプットシャフト2に形成されたスピードギヤ2aと歯合しており、これによりカウンタシャフト4はインプットシャフト2とともに回転するように構成される。また、アウトプットシャフト3に支持されたドリブンギヤ5a〜5eは、カウンタシャフト4のドライブギヤ6a〜6eと常時噛み合っており、各ドリブンギヤ5a〜5eのそれぞれの間のアウトプットシャフト3には、円盤状のシンクロナイザハブ5f〜5hがそれぞれ一体的に設けられる。そして、その複数のシンクロナイザハブ5f〜5hの外周には、軸方向に伸びるスプラインが形成され、そのスプライン上に複数の結合スリーブ7a〜7cが摺動可能に設けられる。
【0020】
また、この機械式変速機10では、アウトプットシャフト3の上方にそのアウトプットシャフト3に平行な複数のシフタロッド9(図では1本のみ示す。)が長手方向に移動可能に設けられ、この複数のシフタロッド9には、シフタフォーク8a〜8cの上端がそれぞれ設けられる。シフタフォーク8a〜8cの下部は結合スリーブ7a〜7cに連結され、そのシフタロッド9を選択的に軸方向に移動させることにより、その移動するシフタロッド9とともに移動するシフタフォーク8a〜8cは、その下端に連結された結合スリーブ7a〜7cを摺動させるように構成される。
【0021】
そして、複数のシンクロナイザハブ5f〜5hの外周におけるスプライン上に設けられた複数の結合スリーブ7a〜7cを摺動させて、隣接するドリブンギヤ5a〜5eに係合させると、カウンタシャフト4とアウトプットシャフト3は連結することになる。これによりギヤ入れは完了し、インプットシャフト2の回転をカウンタシャフト4を介してアウトプットシャフト3の回転に伝達するように構成される。
【0022】
ギヤケース11の上部にはアッパカバー12が設けられる。アッパカバー12には、上方からの平面視でシフタロッド9に直交するギヤシフト軸13が設けられる。このギヤシフト軸13にはスライディングレバー14がスプライン嵌合されて、このスライディングレバー14はそのギヤシフト軸13の軸方向に移動可能に構成される。そして、スライディングレバー14がギヤシフト軸13の軸線方向に移動して、シフタロッド9に選択的に対向すると、このスライディングレバー14はその対向するシフタロッド9と係合するように構成される。
【0023】
スライディングレバー14の移動はセレクト用エアシリンダ16(図1)のセレクト操作により行われ、スライディングレバー14がシフタロッド9に選択的に係合した状態で、シフト用エアシリンダ17(図1)のシフト操作によりギヤシフト軸13がスライディングレバー14とともに回動することになる。すると、スライディングレバー14の回動方向に応じてスライディングレバー14に係合するシフタロッド9が軸線方向に移動し、そのシフタロッド9とともにシフタフォーク8a〜8cが前進又は後退することにより、ギヤ抜き及び所望のギヤ入れ操作がなされるように構成される。
【0024】
図1に戻って、ハイブリッド車両100は、内燃機関21にクラッチ26と電動機31をこの順序に介して上述した機械式変速機10が接続される。内燃機関21は制御ECU36によって制御され、ガソリン、軽油、CNG(Compressed Natural Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、又は代替燃料等を内部で燃焼させて、軸を回転させる動力を発生させ、発生した動力をクラッチ26に伝達するように構成される。
【0025】
クラッチ26は、図1の左側にある内燃機関21の駆動出力軸に結合されて、その出力軸とともに回転するフライホイール26aと、そのフライホイール26aに対向配置されて電動機31の回転軸と一体的に回転するクラッチディスク26bを備える。そして、クラッチ26にはクラッチレバー26cが設けられ、このクラッチレバー26cをクラッチブースタ27が傾動可能に構成される。クラッチブースタ27はクラッチアクチュエータ28により制御される油圧によりそのロッド27aを出没させてクラッチレバー26cを動かすものを例示する。
【0026】
クラッチアクチュエータ28は制御ECU36からの電気信号により制御され、クラッチ26は、内燃機関21からの軸出力を、電動機31及び機械式変速機10を介してドライブシャフト18に伝達し、ドライブシャフト18の回転により駆動車輪19を回転させて、車両100を走行させるように構成される。即ち、クラッチ26は、制御ECU36の制御によって、内燃機関21の回転軸と電動機31の回転軸とを機械的に接続することにより、内燃機関21の軸出力を電動機31に伝達したり、又は、内燃機関21の回転軸と電動機31の回転軸との機械的な接続を切断することにより、内燃機関21の軸と、電動機31の回転軸とが互いに異なる回転速度で回転できるようにする。
【0027】
電動機31は、いわゆる、モータジェネレータであり、インバータ32から供給された電力により、軸を回転させる動力を発生させて、その軸出力を機械式変速機10に供給するか、又は機械式変速機10から供給された軸を回転させる動力によって発電し、その電力をインバータ32に供給するものである。
【0028】
インバータ32は、制御ECU36によって制御され、バッテリ33からの直流電力を交流電力に変換するか、又は電動機31からの交流電力を直流電力に変換するものである。電動機31が動力を発生させる場合、インバータ32は、バッテリ33の直流電力を交流電力に変換して、電動機31に電力を供給し、電動機31が発電する場合、インバータ32は、電動機31からの交流電力を直流電力に変換するように構成される。即ち、インバータ32は、バッテリ33に直流電力を供給するための整流器及び電圧調整装置としての役割を果たすものである。
【0029】
バッテリ33は、充放電可能な二次電池であり、電動機31が動力を発生させるとき、電動機31にインバータ32を介して電力を供給するか、又は電動機31が発電しているとき、電動機31が発電する電力によって充電されるものである。
【0030】
制御ECU36は、インバータ32を制御することによって電動機31を制御するように構成される。そして、この制御ECU36は、例えば、CPU、ASIC、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSPなどにより構成され、内部に、演算部、メモリ、及びI/Oポートなどを有するものが使用される。
【0031】
車両100には、アクセルペダル41の踏み込み量を検出するアクセルセンサ42や、セレクトレバー43の位置を検出するレンジセンサ44が設けられ、これらの検出出力は、制御ECU36の制御入力に接続される。また、この車両100には、走行道路の勾配を検出する道路勾配検出手段である勾配センサ37や、機械式変速機10の段位を検出する段位検出手段であるギヤ位置センサ38、及びアウトプットシャフト3の回転速度を検出する回転検出手段である回転センサ39が設けられ、それらの検出出力も制御ECU36の制御入力に接続される。更に、この制御ECU36には、内燃機関21の回転速度情報等も入力される。
【0032】
この制御ECU36は、これらの情報を参照して、セレクト用エアシリンダ16及びシフト用エアシリンダ17を制御し、機械式変速機10をシフトアップまたはシフトダウンさせるように構成される。ここで、図1に示す符号16a及び17aは、それらエアシリンダ16,17に圧縮エアを給排するバルブ16a、17aである。これにより、その機械式変速機10を車両の走行状態に応じた最適な段位に制御されることになる。
【0033】
そして、この制御ECU36により機械式変速機10をシフトダウンさせる時には、クラッチ26を切断して、高段位のギヤからギヤ抜きを行った後に低段位のギヤにギヤ入れを行うことになる。けれども、このような機械式変速機10のシフトダウン時に、制御ECU36は、そのギヤ抜き後ギヤ入れ前に機械式変速機10のインプットシャフト2の回転速度を増加させるように電動機31を制御するように構成される。
【0034】
本発明の特徴ある構成は、変速制御手段である制御ECU36は、機械式変速機10をシフトダウンさせる時に、道路勾配検出手段である勾配センサ37が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出すると、ギヤ抜き後にインプットシャフト2(図2)の回転速度を増加させることなく、アウトプットシャフト3(図2)の回転速度が低下するのを待って、機械式変速機10のギヤ入れを行うように構成されたところにある。即ち、本発明のハイブリッド車両用変速制御装置は、シフトダウン時に、インプットシャフト2の回転速度を増加させる通常変速制御と、インプットシャフト2の回転速度を増加させない登坂時ダウン変速制御の、いずれかの制御が可能に構成される。
【0035】
アウトプットシャフト3の回転速度を検出する回転検出手段である回転センサ39を備えたこの実施の形態では、シフトダウン時に道路勾配検出手段が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出するとともに、ギヤ抜き前にその回転検出手段である回転センサ39が所定値以下の回転速度を検出したときに限り、ギヤ抜き後にそのインプットシャフト2の回転速度を増加させることなく、アウトプットシャフト3の回転速度が低下するのを待って、機械式変速機10のギヤ入れを行うように構成されたものとする。
【0036】
これは、登坂時に生じる、アウトプットシャフト3の回転速度から求められるインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度と、実際のインプットシャフト2の回転速度の差は、低速段におけるシフトダウン時に大きなものとなるからである。即ち、回転検出手段である回転センサ39が低速段であることを示す所定値以下の回転速度を検出したときに限り、アウトプットシャフト3の回転速度が低下するのを待って、そのアウトプットシャフト3の回転速度とともに低下するインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度に、実際のインプットシャフト2の回転速度が一致した段階においてギヤ入れを行うことにより、その低速段におけるシフトダウン時におけるギヤ入れを確実に完了させるためである。
【0037】
次に、このように構成されたハイブリッド車両の自動変速制御装置の動作を説明する。
【0038】
この変速制御装置では、各種センサ37,38,39,42,44からの情報により、制御ECU36が機械式変速機10をシフトダウンさせる必要が生じたと判断したときに、その制御ECU36は、先ずクラッチ26を切断する(図4のt1)。図1に示すように、このクラッチ26の切断は、クラッチアクチュエータ28に指令を発してクラッチブースタ27のロッド27aを突出させてフライホイール26a及びクラッチディスク26bを切り離すことにより行われる。その後に具体的なシフトダウン動作が開始される。
【0039】
このシフトダウンに際して、制御ECU36は勾配検出手段である勾配センサ37の検出出力から、この車両100が走行する道路の勾配が所定の値の勾配以上のいわゆる上り坂であるか否かを判断する(図3のS01)。ここで、所定の値の勾配とは、例えば、水平方向に100メータ走行した際に8メータ以上登るような値が例示される。そして、その道路が上り坂でない場合には、通常のシフトダウン制御を開始する(図3のS03)。
【0040】
即ち、図4に示すように、クラッチ26を切断した(t1)状態で、シフト用エアシリンダ17を制御して図2に示すシフタロッド9を移動させてギヤ抜きを行う(t2)(図3のS04)。その後、制御ECU36は、ドライブシャフト18の回転速度からアウトプットシャフト3の回転速度を求め、そのアウトプットシャフト3の実際の回転速度からインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度を更に求める。そして、その求められたインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度にインプットシャフト2の実際の回転速度を一致させるように、電動機31を駆動して、そのインプットシャフト2の回転速度を増加させる(t3)(図3のS05)。
【0041】
インプットシャフト2の回転速度が増加して、インプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度にインプットシャフト2の実際の回転速度が近づき、インプットシャフト2の実際の回転速度と、インプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度の差が規定値以内になった段階で(図3のS06)、シフタ用エアシリンダ17を再び制御して、シフタロッド9をギヤ入れを行う方向に付勢させる(t4)(図3のS07)。その後、インプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度とインプットシャフト2の実際の回転速度が一致すると、ギヤ入れ方向に付勢されていたシフタロッド9はそのギヤ入れ方向に移動して、図2に示すアウトプットシャフト3と一体的に回転する結合スリーブ7a〜7cのいずれか隣接するドリブンギヤ5a〜5eに係合し、低位の段位へのギヤ入れが完了する(t5)(図3のS08)。これにより変速は完了し、その変速に係る時間は短縮される。そして、ギヤ入れが完了した後には、再びクラッチ26を接続することにより(t6)、その新たにギヤ入れされた低位の段位での走行が可能になる。
【0042】
この実施の形態では、ギヤ抜き前に回転検出手段である回転センサ39が所定値以下の回転速度を検出する時に限り、登坂時ダウン変速制御を行うので、シフトダウンに際して、勾配センサ37の検出出力から、所定値以上の上り坂であるとされた場合(図3のS01)、次に、ギヤ抜き前に回転センサ39が所定値以下の回転速度を検出するか否かを判断する(図3のS02)。所定値以下の回転速度か否かを判断するのは、低速段におけるシフトダウンであるか否かを判断するためのものであり、登坂時に生じるインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度と、実際のインプットシャフト2の回転速度の差は、低速段におけるシフトダウン時に大きなものとなるからである。よって、その回転速度が所定値以下でない場合には、上述した図4における通常のシフトダウン制御を行う(図3のS03〜S09)。
【0043】
一方、ギヤ抜き前に回転検出手段である回転センサ39が所定値以下の回転速度を検出した場合には(図3のS02)登坂時ダウン変速制御を行う(図3のS13)。即ち、図5に示すように、クラッチ26を切断した(T1)状態で、シフタ用エアシリンダ17を制御してシフタロッド9を移動させてギヤ抜きを行う(T2)(図3のS14)。その後、制御ECU36は、インプットシャフト2の回転速度を維持しつつ、アウトプットシャフト3の回転速度が低下するのを待つ(T3)(図3のS15)。
【0044】
アウトプットシャフト3の回転速度が低下すると、そのアウトプットシャフト3の回転速度から求められるインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度も低下する。そして、そのインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度に実際のインプットシャフト2の回転速度が近づき(T4)、そのインプットシャフト2の実際の回転速度とインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度の差が規定値以内になった段階で(図3のS16)、シフタ用エアシリンダ17を制御して、シフタロッド9をギヤ入れを行う方向に付勢させる(図3のS17)。その後、インプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度とインプットシャフト2の実際の回転速度が一致すると、ギヤ入れ方向に付勢されていたシフタロッド9はそのギヤ入れ方向に移動して、図2に示すアウトプットシャフト3と一体的に回転する結合スリーブ7a〜7cのいずれかが隣接するドリブンギヤ5a〜5eに係合し、低位の段位へのギヤ入れが完了する(T5)(図3のS18)。そして、この登坂時ダウン変速制御が終了した後には、ギヤ入れが完了したのでその後再びクラッチ26を接続することにより(T6)、その新たにギヤ入れされた低位の段位での走行が可能になる。
【0045】
上述したように、本発明のハイブリッド車両の自動変速制御装置では、シフトダウン時に道路勾配検出手段である勾配センサ37が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出すると、ギヤ抜き後にインプットシャフト2の回転速度を増加させずに、アウトプットシャフト3の回転速度が低下するのを待つことになる。すると、そのアウトプットシャフト3の回転速度から得られるインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度が、実際のインプットシャフト2の回転速度に近づいて略一致した段階で、アウトプットシャフト3と一体的に回転する結合スリーブ7a〜7cが隣接するドリブンギヤ5a〜5eに係合することになり、機械式変速機10のギヤ入れを完了させることができる。よって、本発明では、車両100が上り坂を走行しているときのように、駆動車輪29の回転速度の変化率が大きな場合であっても、ギヤ入れを確実に完了させることができることになる。
【0046】
そして、登坂時に生じるインプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度と、実際のインプットシャフト2の回転速度の差は、2速段から1速段にシフトダウンするような場合のように、低速段におけるシフトダウン時に大きなものとなる。このため、回転検出手段である回転センサ39により、アウトプットシャフト3の回転速度を求め、低速段である場合にのみ、アウトプットシャフト3の回転速度が低下するのを待って、ギヤ入れを行うようにするので、ギヤ入れを確実に完了させることができる。ここで、インプットシャフト2の回転速度を増加させないので、ギヤ入れが完了するまでの時間が増加するとも考えられるけれども、登坂時にあっては、アウトプットシャフト3の回転速度の低下が著しいので、インプットシャフト2のギヤ入れ可能な回転速度が、実際のインプットシャフト2の回転速度に略一致するまでの時間がそう長くなることはない。よって、ギヤ入れ完了までの時間が著しく延長されることはない。
【0047】
なお、上述した実施の形態では、回転センサ39によりアウトプットシャフト3の回転速度を求め、低速段である場合にのみアウトプットシャフト3の回転速度が低下するのを待って、ギヤ入れを行うようにした。けれども、機械式変速機10の段位を検出する段位検出手段であるギヤ位置センサ38を備えていれば、シフトダウン時に道路勾配検出手段が所定値以上の勾配の上り坂であることを検出するとともに、ギヤ抜き前に段位検出手段が、例えば2速段のように、所定の低速段位以下を検出する時に限り、ギヤ抜き後にそのインプットシャフト2の回転速度を増加させることなく、アウトプットシャフト3の回転速度が低下するのを待って、機械式変速機10のギヤ入れを行うようにしても良い。この場合であっても、ギヤ入れ完了までの時間を著しく延長することなく、その低速段におけるシフトダウン時におけるギヤ入れを確実に完了させることができる。なお、この所定の低速段位は、2速段に限らず、3速段又は4速段であっても良い。
【0048】
また、上述した実施の形態では、アウトプットシャフト3の回転速度を検出する回転検出手段として、そのアウトプットシャフトに連結されたドライブシャフト18の回転速度を検出する回転センサ39を例示したけれども、回転検出手段はこれに限定されるものではなく、アウトプットシャフト3の回転速度を検出し得る限り、他の形式のセンサであっても良い。
【0049】
また、上述した実施の形態では、所定の値の勾配として、例えば、水平方向に100メータ走行した際に8メータ以上登るような値を例示したけれども、この所定の値の勾配はこれに限定されず、通常変速制御におけるシフトダウンが困難となる値であれば良いものとされる。
【符号の説明】
【0050】
2 インプットシャフト
3 アウトプットシャフト
10 機械式変速機
21 内燃機関
26 クラッチ
31 電動機
36 制御ECU(変速制御手段)
37 勾配センサ(道路勾配検出手段)
38 ポジションセンサ(段位検出手段)
39 回転センサ(回転検出手段)
100 ハイブリッド車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6