特許第6087703号(P6087703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087703
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/012 20060101AFI20170220BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20170220BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20170220BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   H01G9/05 E
   H01G9/05 F
   H01G9/24 C
   H01G9/08 C
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-81067(P2013-81067)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-204059(P2014-204059A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592181602
【氏名又は名称】古河精密金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100156030
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 孝臣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】手塚 晃治
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−059855(JP,A)
【文献】 特開2004−055889(JP,A)
【文献】 特開平06−232195(JP,A)
【文献】 特開2005−079357(JP,A)
【文献】 米国特許第8614880(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/012
H01G 9/00
H01G 9/08
H01G 9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極部材、陰極部材、及び誘電体部材を有するコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子を被覆した外装体と、
前記外装体の下面に露出した陽極端子部を有すると共に、前記陽極部材に電気的に接続された陽極引出し構造体と、
前記外装体の下面に露出した陰極端子部を有すると共に、前記陰極部材に電気的に接続された陰極引出し構造体と、を備え、
前記陽極引出し構造体は、
前記陽極端子部の上面に対向した対向部と、
前記陰極端子部側に位置する前記陽極端子部の端縁及び前記対向部の第1端縁を互いに連結する連結部と、
前記対向部の前記第1端縁とは反対側の第2端縁に連結されると共に、前記陽極部材に電気的に接続された接続部と、を更に有し、
前記陽極端子部の前記上面と前記対向部との間には隙間が設けられ、
前記連結部には、前記隙間に通じる開口部が設けられ、
前記開口部及び前記隙間には、前記外装体を構成する樹脂の一部が充填されている、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記開口部は、前記陽極端子部の前記端縁又は前記対向部の前記第1端縁に沿って拡がっている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
陽極部材、陰極部材、及び誘電体部材を有するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子を被覆した外装体と、前記外装体の下面に露出した陽極端子部を有すると共に前記陽極部材に電気的に接続された陽極引出し構造体と、前記外装体の下面に露出した陰極端子部を有すると共に前記陰極部材に電気的に接続された陰極引出し構造体とを備えた固体電解コンデンサの製造方法であって、
(a)前記陽極引出し構造体となる、上面及び下面を有した平坦なフレームであって、前記陽極端子部となる第1領域と、前記第1領域の端縁に接した領域であって連結部となる第2領域と、前記第1領域とは反対側の前記第2領域の端縁に接した領域であって対向部となる第3領域と、前記第2領域とは反対側の前記第3領域の端縁に接した領域であって接続部となる第4領域と、前記第2領域に形成されると共に前記フレームを前記上面から前記下面まで貫通した開口部とを有する前記フレームを準備する工程と、
(b)前記第2領域を曲げるか、又は前記第1領域の前記端縁及び前記第2領域の前記端縁において前記フレームを折り曲げることにより、前記第3領域を前記第1領域に対向させると共に前記第1領域と前記第3領域との間に隙間を形成し、且つ、前記第3領域の前記端縁において前記フレームを折り曲げることにより、前記第4領域の姿勢を変え、前記陽極端子部、前記連結部、前記対向部、及び前記接続部を有する前記陽極引出し構造体を形成する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記連結部及び前記開口部を前記陰極端子部の方へ向けた状態において、前記接続部に前記陽極部材を電気的に接続すると共に、前記陰極端子部の上面に前記陰極部材を電気的に接続する工程と、
(d)前記工程(c)の後、金型を用いた樹脂モールドにより前記外装体を形成する工程であって、前記陽極端子部の下面及び前記陰極端子部の下面が前記金型の内面に接触する様に、前記コンデンサ素子、前記陽極引出し構造体、及び前記陰極引出し構造体を金型内に配置し、その後、前記金型内に樹脂を流し込む工程と、を有する、固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)において、前記開口部は、前記2領域と前記第1又は第3領域との境界線に沿って拡がった扁平形状を呈している、請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂モールドにより外装体が形成された固体電解コンデンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の固体電解コンデンサを概念的に示した断面図である。図7に示す様に、固体電解コンデンサは、コンデンサ素子81と、コンデンサ素子81を被覆した外装体82と、陽極端子83と、陰極端子84とを備えている(例えば、特許文献1参照)。コンデンサ素子81は、多孔質焼結体からなる陽極体811と、陽極体811に植立された陽極リード812と、陽極体811を構成する導電性材料の表面に形成された誘電体層813と、誘電体層813の表面に形成された電解質層814と、電解質層814の外周面に形成された陰極層815とを有している。尚、図7には、誘電体層813のうち、陽極体811の外周面に形成されている部分のみが模式的に示されているが、誘電体層813は、陽極体811に存在する微細な孔の内周面にも形成されている。
【0003】
陽極端子83は、1枚のフレームに曲げ加工と潰し加工とを施すことにより逆T字状に形成されたものである。曲げ加工によって生じた対向部分831及び832は、潰し加工により、互いに密着すると共にそれらの全体の厚さがフレームの厚さと同程度になる様に押し潰されている。陽極端子83のうち横方向に延びた端子部833は、その下面833aが外装体82の下面82aから露出している。又、陽極端子83のうち縦方向に延びた接続部834は、陽極リード812に電気的に接続されている。陰極端子84は、その下面84aが外装体82の下面82aから露出すると共に、導電性接着材86を介して陰極層815に電気的に接続されている。
【0004】
外装体82は、陽極端子83及び陰極端子84にコンデンサ素子81が接続された後、樹脂モールドにより形成される。図8は、樹脂モールド工程の説明に用いられる断面図である。先ず、コンデンサ素子81、陽極端子83、及び陰極端子84を金型87内に配置する。このとき、陽極端子83の端子部833の下面833a及び陰極端子84の下面84aを金型87内の底面87aに面接触させる。次に、軟化した樹脂を、金型87に設けられた溝87b及び87cの何れか一方から金型87内へ流し込む。このとき、他方の溝は、塞がれてもよいし、樹脂の流出口として用いられてもよい。金型87内が樹脂で充填された後、金型87内の樹脂を硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−55889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示す様にコンデンサ素子81等を金型87内に配置した場合、金型87内には、陽極端子83と陰極端子84との間に、コンデンサ素子81と金型87とで挟まれた狭い空間Rcが形成される。金型87内に樹脂を流し込んだ際、空間Rcへは、コンデンサ素子81と陽極端子83との間に設けられた隙間を主な入口Reとして、樹脂が流れ込もうとする(図8に示す白抜き矢印Fc参照)。その一方で、空間Rc内に存在する空気は、空間Rcへ入り込もうとする樹脂の圧力によって入口Reから外部へ逃げようとする。
【0007】
よって、入口Reにおいて樹脂と空気とが互いの移動を妨げ、その結果、空間Rcには樹脂が流れ込み難くなると共に、入口Re付近にて樹脂の圧力が高まることになる。これに伴って、陽極リード812に圧力が付加されると共に、その圧力が高まることになる。陽極リード812に圧力が付加されると、陽極体811のうち陽極リード812の根元近傍の領域に応力が集中し、その領域に形成された誘電体層813にクラック等の欠陥が生じる虞があった。特に、陽極体811と陽極リード812との界面近傍において、誘電体層813にはクラック等の欠陥が生じ易い。この様な欠陥は、固体電解コンデンサの漏れ電流が増加する原因となる。
【0008】
そこで本発明の目的は、漏れ電流の増加が抑制された固体電解コンデンサ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る固体電解コンデンサは、陽極部材、陰極部材、及び誘電体部材を有するコンデンサ素子と、コンデンサ素子を被覆した外装体と、外装体の下面に露出した陽極端子部を有すると共に陽極部材に電気的に接続された陽極引出し構造体と、外装体の下面に露出した陰極端子部を有すると共に陰極部材に電気的に接続された陰極引出し構造体とを備えている。陽極引出し構造体は、対向部、連結部、及び接続部を更に有している。対向部は、陽極端子部の上面に対向し、その上面と対向部との間には隙間が設けられている。連結部は、陰極端子部側に位置する陽極端子部の端縁及び対向部の第1端縁を互いに連結している。接続部は、対向部の第1端縁とは反対側の第2端縁に連結されると共に、陽極部材に電気的に接続されている。連結部には、開口部が設けられ、開口部は、陽極端子部と対向部との間に設けられた隙間に通じている。そして、開口部及び隙間には、外装体を構成する樹脂の一部が充填されている。
【0010】
上記固体電解コンデンサによれば、外装体の形成時(金型を用いた樹脂モールド時)において、開口部及び隙間により形成された通路が圧抜き用の通路として機能し、その結果、金型内の全体に樹脂が行き亘ると共に、金型内において樹脂の圧力が高まり難くなる。よって、外装体の形成時において、コンデンサ素子には応力が生じ難く、従って誘電体部材にクラック等の欠陥が生じ難い。その結果、固体電解コンデンサにおいて、漏れ電流の増加が抑制されることになる。
【0011】
上記固体電解コンデンサにおいて、開口部は、陽極端子部の端縁又は対向部の第1端縁に沿って拡がっていることが好ましい。
【0012】
本発明に係る製造方法は、陽極部材、陰極部材、及び誘電体部材を有するコンデンサ素子と、コンデンサ素子を被覆した外装体と、外装体の下面に露出した陽極端子部を有すると共に陽極部材に電気的に接続された陽極引出し構造体と、外装体の下面に露出した陰極端子部を有すると共に陰極部材に電気的に接続された陰極引出し構造体とを備えた固体電解コンデンサを製造する方法であり、工程(a)〜(d)を有している。尚、工程(a)〜(d)は、後述の実施形態にて説明するフレーム準備工程、フレーム加工工程(主に第1及び第2曲げ加工工程)、接続工程、及び樹脂モールド工程にそれぞれ対応している。
【0013】
工程(a)では、陽極引出し構造体となる、上面及び下面を有した平坦なフレームを準備する。このフレームは、陽極端子部となる第1領域と、第1領域の端縁に接した領域であって連結部となる第2領域と、第1領域とは反対側の第2領域の端縁に接した領域であって対向部となる第3領域と、第2領域とは反対側の第3領域の端縁に接した領域であって接続部となる第4領域と、第2領域に形成されると共にフレームを上面から下面まで貫通した開口部とを有する。工程(b)では、第2領域を曲げるか、又は第1領域の上記端縁及び第2領域の上記端縁においてフレームを折り曲げることにより、第3領域を第1領域に対向させると共に第1領域と第3領域との間に隙間を形成し、且つ、第3領域の端縁においてフレームを折り曲げることにより、第4領域の姿勢を変える。この様にして、陽極端子部、連結部、対向部、及び接続部を有する陽極引出し構造体を形成する。工程(b)の後、連結部及び開口部を陰極端子部の方へ向けた状態において、工程(c)では、接続部に陽極部材を電気的に接続すると共に、陰極端子部の上面に陰極部材を電気的に接続する。工程(c)の後、工程(d)において、金型を用いた樹脂モールドにより外装体を形成する。工程(d)では、陽極端子部の下面及び陰極端子部の下面が金型の内面に接触する様に、コンデンサ素子、陽極引出し構造体、及び陰極引出し構造体を金型内に配置し、その後、金型内に樹脂を流し込む。
【0014】
工程(a)及び(b)により、開口部は、陽極端子部と対向部との間に設けられた隙間に通じることになる。一方、工程(d)においては、陽極端子部の下面及び陰極端子部の下面を金型の内面に接触させる。このため、金型内には、陽極端子部と陰極端子部との間に、コンデンサ素子と金型とで挟まれた狭い空間が形成されることになる。ここで、上記製造方法によれば、金型内では、陽極端子部と対向部との間に設けられた隙間が、開口部を介して狭い空間に通じることになる。即ち、狭い空間へ通じる通路として、コンデンサ素子と陽極引出し構造体との間に設けられた入口を通る通路とは別の通路が、開口部及び隙間により形成されることになる。従って、金型内に樹脂が流し込まれ、狭い空間に樹脂が入り込もうとした際、その空間内の空気が、開口部及び隙間を通って外部へ逃げ易くなる。即ち、開口部及び隙間により形成された通路が、圧抜き用の通路として機能することになる。その結果、狭い空間へ樹脂が流れ込み易くなると共に、その空間の入口付近において樹脂の圧力が高まり難くなる。
【0015】
よって、上記製造方法によれば、コンデンサ素子に応力が生じ難く、従って誘電体部材にクラック等の欠陥が生じ難い。その結果、製造される固体電解コンデンサにおいて、漏れ電流の増加が抑制されることになる。
【0016】
上記製造方法の工程(a)において、開口部は、第2領域と第1又は第3領域との境界線に沿って拡がった扁平形状を呈していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る固体電解コンデンサ及びその製造方法によれば、漏れ電流の増加が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る固体電解コンデンサを概念的に示した断面図である。
図2図1に示される陽極引出し構造体を、陰極引出し構造体側から見て示した概念図である。
図3】(a)固体電解コンデンサの製造方法にて行われるフレーム準備工程にて準備されるフレームを概念的に示した平面図、及び(b)図3(a)に示されるIII−III線に沿う断面図である。
図4】固体電解コンデンサの製造方法にて行われるフレーム加工工程の(a)第1曲げ加工工程、(b)第2曲げ加工工程、及び(c)潰し加工工程の説明に用いられる断面図である。
図5】固体電解コンデンサの製造方法にて行われる接続工程の説明に用いられる断面図である。
図6】固体電解コンデンサの製造方法にて行われる樹脂モールド工程の説明に用いられる断面図である。
図7】従来の固体電解コンデンサを概念的に示した断面図である。
図8】従来の固体電解コンデンサの製造過程で行われる樹脂モールド工程の説明に用いられる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<固体電解コンデンサの構成>
図1は、本発明の実施形態に係る固体電解コンデンサを概念的に示した断面図である。図1に示す様に、固体電解コンデンサは、コンデンサ素子1と、外装体2と、陽極引出し構造体3と、陰極引出し構造体4とを備えている。コンデンサ素子1は、陽極体11と、陽極リード12と、誘電体層13と、電解質層14と、陰極層15とを有している。
【0020】
陽極体11は、導電性を有する多孔質焼結体から構成されている。陽極体11の形状には、直方体や円柱等、様々な形状を採用することが出来る。陽極リード12は、導電性を有するワイヤから構成されている。陽極体11及び陽極リード12を構成する導電性材料には、同種又は異種の材料が用いられる。導電性材料としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)等の弁金属が用いられる。特に、チタン、タンタル、アルミニウム、及びニオブは、それらの表面を酸化させることより誘電率の高い酸化被膜(誘電体層13)が形成されるため、使用する材料として適している。尚、導電性材料には、2種類以上の弁金属から成る合金や、弁金属と他の物質から成る合金等、弁金属を主成分として含む合金が用いられてもよい。
【0021】
誘電体層13は、陽極体11を構成する導電性材料の表面(多孔質焼結体の表面)に形成されている。誘電体層13は、陽極体11を構成する導電性材料の表面を酸化させることにより形成された酸化被膜である。従って、誘電体層13は、陽極体11の外周面、及び陽極体11に存在する微細な孔の内周面に形成されている。尚、図1では、誘電体層13のうち、陽極体11の外周面に形成されている部分のみが、模式的に示されている。
【0022】
電解質層14は、誘電体層13の表面に形成されている。具体的には、電解質層14は、誘電体層13の外周面、及び陽極体11に存在する微細な孔の内側に形成されている。尚、図1では、電解質層14のうち、誘電体層13の外周面に形成されている部分のみが、模式的に示されている。電解質層14を構成する電解質材料には、二酸化マンガン等の導電性無機材料、TCNQ(Tetracyano-quinodimethane)錯塩や導電性高分子等の導電性有機材料が用いられる。尚、電解質材料には、これらの導電性無機材料や導電性有機材料に限定されない種々の物質が用いられてもよい。
【0023】
陰極層15は、電解質層14の外周面に形成されている。具体的には、陰極層15は、電解質層14の外周面に形成されたカーボン層(図示せず)と、該カーボン層の外周面に形成された銀ペイント層(図示せず)とから構成されている。尚、この様な構成に限らず、陰極層15には、集電機能を有する様々な構成を採用することが出来る。
【0024】
外装体2は、コンデンサ素子1を被覆している。ここで、外装体2は、その下面2aが陽極リード12の延在方向と略平行になる様に形成されている。外装体2の構成材料には、電気絶縁性の樹脂が用いられる。好ましくは、外装体2の構成材料として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。
【0025】
陽極引出し構造体3は、コンデンサ素子1の陽極リード12に電気的に接続されることにより、陽極リード12に通じる陽極電流路を外装体2の下面2aに引き出す電極構造体である。又、陰極引出し構造体4は、コンデンサ素子1の陰極層15に電気的に接続されることにより、陰極層15に通じる陰極電流路を外装体2の下面2aに引き出す電極構造体である。陽極引出し構造体3は平坦な陽極端子部31を有し、又、陰極引出し構造体4は平坦な陰極端子部41を有している。そして、外装体2の下面2aには、陽極端子部31の下面31a及び陰極端子部41の下面41aが露出しており、これらの下面31a及び41aにより固体電解コンデンサの下面電極が構成されている。
【0026】
図2は、図1に示される陽極引出し構造体3を、陰極引出し構造体4側から見て示した概念図である。尚、図2では、陽極引出し構造体3以外の構成についての図示が省略されている。図1及び図2に示される様に、陽極引出し構造体3は、陽極端子部31に加えて、対向部32と、連結部33と、接続部34とを有している。ここで、陽極引出し構造体3は、後述する様に1枚のフレームに曲げ加工を施すことにより形成されたものである。
【0027】
対向部32は、陽極端子部31の上面31bに対向し、その上面31bと対向部32との間には隙間Rgが設けられている。この隙間Rgは、後述する圧抜き用の通路を構成するための隙間である。従って、隙間Rgは、対向部32に沿って、陰極端子部41側に位置する対向部32の第1端縁32aから、それとは反対側の第2端縁32bまで拡がっている。尚、隙間Rgは、第1端縁32aから第2端縁32bまで途中で切れることなく形成されていればよく、例えば、陽極端子部31と対向部32とは部分的に接触していてもよい。
【0028】
連結部33は、陰極端子部41側に位置する陽極端子部31の端縁31c及び対向部32の第1端縁32aを互いに連結している。本実施形態においては、連結部33は、U字状に湾曲している。尚、連結部33は、U字状に限らず、V字状等、様々な形状を呈したものであってもよい。
【0029】
接続部34は、対向部32の第2端縁32bに連結されている。そして、接続部34の先端34aが、溶接等の接続手段により、コンデンサ素子1の陽極リード12に電気的に接続されている。本実施形態においては、接続部34は、陽極端子部31の上面31bに対して略垂直に、対向部32の第2端縁32bから陽極リード12まで延びている。尚、接続部34は、陽極端子部31の上面31bに対して傾斜して、即ち、対向部32の第2端縁32bから陽極リード12へ向けて斜めに延びていてもよい。
【0030】
連結部33には、開口部35が設けられており、開口部35は、陽極端子部31と対向部32との間に設けられた隙間Rgに通じている。そして、開口部35及び隙間Rgには、外装体2を構成する樹脂の一部が充填されている(図1参照)。尚、本実施形態においては、開口部35は、陽極端子部31の端縁31c又は対向部32の第1端縁32aに沿って拡がっている(図2参照)。
【0031】
図1に示す様に、陰極引出し構造体4は、陰極端子部41に加えて、延在部42を有している。延在部42は、陽極端子部31側に位置する陰極端子部41の端縁41cから陽極端子部31の方へ向けて延びている。延在部42の厚さは、陰極端子部41の厚さより小さく、陰極端子部41の上面41bと延在部42の上面42bとが略同一平面で揃う一方で、延在部42の下面42aの位置が、陰極端子部41の下面41aの位置から上方へずれている。そして、陰極端子部41の下面41aが外装体2の下面2aから露出する一方で、延在部42の下面42aは、外装体2により覆われている。又、陰極端子部41の上面41b及び延在部42の上面42bは、導電性接着材6を介して陰極層15に電気的に接続されている。
【0032】
<固体電解コンデンサの製造方法>
次に、本実施形態に係る固体電解コンデンサの製造方法について、具体的に説明する。本実施形態の製造方法では、フレーム準備工程、フレーム加工工程、接続工程、及び樹脂モールド工程が、順に行われる。
【0033】
図3(a)は、フレーム準備工程にて準備されるフレームを概念的に示した平面図である。又、図3(b)は、図3(a)に示されるIII−III線に沿う断面図である。図3
a)及び(b)に示す様に、フレーム準備工程では、陽極引出し構造体3となる陽極フレーム部71と、陰極引出し構造体4となる陰極フレーム部72とを有する平坦なフレーム7を準備する。フレーム7は、1枚の金属板から形成されており、陽極フレーム部71と陰極フレーム部72とは、フレーム7の他の部分(図示せず)を介して互いに繋がっている。又、陽極フレーム部71及び陰極フレーム部72は、一方向(図3(a)に示す所定方向Da)に並ぶ様に配置されると共に、それらの下面71a及び72aが略同一平面で揃えられている。
【0034】
陽極フレーム部71は、陽極端子部31となる第1領域711と、連結部33となる第2領域712と、対向部32となる第3領域713と、接続部34となる第4領域714と、第2領域712に形成された開口部35とを有している。陽極フレーム部71において、第1領域711、第2領域712、第3領域713、及び第4領域714は、この順序で、陽極フレーム部71から陰極フレーム部72へ向かう方向である所定方向Daに並ぶと共に、第4領域714が陰極フレーム部72の最も近くの位置に配される様に設けられている。具体的には、第2領域712は、第1領域711の端縁711aに接している。第3領域713は、第1領域711とは反対側の第2領域712の端縁712aに接している。第4領域714は、第2領域712とは反対側の第3領域713の端縁713aに接している。本実施形態においては、第4領域714は舌片形状を呈している。開口部35は、第2領域712にてフレーム7をその上面から下面まで貫通している。
【0035】
本実施形態においては、第1領域711と第2領域712との境界線B1(端縁711aに一致)、第2領域712と第3領域713との境界線B2(端縁712aに一致)、及び第3領域713の端縁713aは、これらが何れも所定方向Daに対して略垂直となる様に設定されている。そして、開口部35は、境界線B1又はB2に沿って拡がった扁平形状を呈している。
【0036】
陰極フレーム部72は、陰極端子部41となる第1領域721と、延在部42となる第2領域722とを有している。陰極フレーム部72において、第1領域721及び第2領域722は、この順序で所定方向Daに並ぶと共に、第2領域722が陽極フレーム部71の最も近くの位置に配される様に設けられている。
【0037】
フレーム加工工程では、第1曲げ加工工程、第2曲げ加工工程、及び潰し加工工程が行われる。第1及び第2曲げ加工工程は、陽極引出し構造体3を形成するための工程であり、陽極フレーム部71に対してこの順で行われる。又、潰し加工工程は、陰極引出し構造体4を形成するための工程であり、陰極フレーム部72に対して行われる。
【0038】
図4(a)は、第1曲げ加工工程の説明に用いられる断面図である。図4(a)に示す様に、第1曲げ加工工程では、次の第2曲げ加工工程により第1領域711と第3領域713とを互いに対向させたときに、第4領域714が第1領域711に対して略垂直に配置されることとなる様に(図4(b)参照)、第3領域713の端縁713aにおいて陽極フレーム部71を折り曲げ、これにより第4領域714の姿勢を変える。具体的には、第4領域714の先端714aが下方を向くと共に、第4領域714が第3領域713に対して略垂直となる様に、陽極フレーム部71を折り曲げる。尚、第1曲げ加工工程では、第4領域714が第3領域713に対して傾斜する様に、陽極フレーム部71を折り曲げてもよい。この場合、第2曲げ加工工程により第1領域711と第3領域713とを互いに対向させたとき、第4領域714は、第1領域711に対して傾斜して配置されることになる。
【0039】
図4(b)は、第2曲げ加工工程の説明に用いられる断面図である。図4(b)に示す様に、第2曲げ加工工程では、第2領域712を曲げることにより、第3領域713を第1領域711に対向させると共に、第1領域711と第3領域713との間に隙間Rgを形成する。具体的には、図3(a)に示される一点鎖線B3を基準として第2領域712をU字状に湾曲させることにより、第3領域713が第1領域711の上方に配される様に陽極フレーム部71を折り返す。尚、第2領域712は、U字状に限らず、V字状等、様々な形状に曲げられてもよい。又、第2領域712を曲げることに代えて、第2領域712の端縁712a及び第1領域711の端縁711a(第2領域712の他方の端縁に一致)において陽極フレーム部71を折り曲げてもよい。
【0040】
第2曲げ加工工程において、隙間Rgは、第2領域712の端縁712aから第3領域713の端縁713aまで途中で切れることがない様に形成されればよく、例えば、第1領域711と第3領域713とを部分的に接触させてもよい。又、第2曲げ加工工程は、第1曲げ加工工程の前に行われてもよいし、第1曲げ加工工程と同時に行われてもよい。
【0041】
第1及び第2曲げ加工工程により、陽極引出し構造体3が形成される。即ち、第1領域711は陽極端子部31となり、第2領域712は連結部33となり、第3領域713は対向部32となり、第4領域714は接続部34となる。そして、開口部35は、第1領域711(陽極端子部31)と第3領域713(対向部32)との間に設けられた隙間Rgに通じることになる。
【0042】
図4(c)は、潰し加工工程の説明に用いられる断面図である。図4(c)に示す様に、潰し加工工程では、第2領域722の厚さT2が第1領域721の厚さT1よりも小さくなる様に、第2領域722に対して潰し加工を施す。具体的には、第2領域722の下面722aの位置が、第1領域721の下面721aの位置から上方へずれる様に、第2領域722に対して潰し加工を施す。これにより、陰極引出し構造体4が形成される。即ち、第1領域721は陰極端子部41となり、第2領域722は延在部42となる。
【0043】
本実施形態においては、上述したフレーム準備工程及びフレーム加工工程により、陽極引出し構造体3及び陰極引出し構造体4は、次の様な状態となる。即ち、陽極端子部31の下面31aと陰極端子部41の下面41aとが略同一平面で揃うと共に、連結部33及び開口部35が陰極端子部41の方を向くことになる。尚、陽極引出し構造体3及び陰極引出し構造体4の作製は、フレーム準備工程又はフレーム加工工程の段階において陽極フレーム部71及び陰極フレーム部72をフレーム7から切り離すことにより、別個独立に行われてもよい。この場合、次の接続工程の前に、陽極引出し構造体3及び陰極引出し構造体4を、陽極端子部31の下面31aと陰極端子部41の下面41aとが略同一平面で揃うと共に、連結部33及び開口部35が陰極端子部41の方を向く様に配置する。
【0044】
図5は、接続工程の説明に用いられる断面図である。図5に示す様に、接続工程では、陽極引出し構造体3及び陰極引出し構造体4にコンデンサ素子1を接続する。具体的には、接続部34(第4領域714)に陽極リード12が対向すると共に、延在部42(第2領域722)に陰極層15が対向する様に、陽極引出し構造体3及び陰極引出し構造体4に対してコンデンサ素子1を配置する。そして、溶接等の接続手段により、陽極リード12を接続部34の先端34aに電気的及び機械的に接続する。又、陰極層15と延在部42とを、これらの間に導電性接着材6を介在させることにより、互いに電気的及び機械的に接続する。尚、導電性接着材6は、図5に示す様に、陰極層15と陰極端子部41との間にも介在することが好ましい。
【0045】
図6は、樹脂モールド工程の説明に用いられる断面図である。樹脂モールド工程では、先ず、コンデンサ素子1、陽極引出し構造体3、及び陰極引出し構造体4を金型5内に配置する。このとき、陽極端子部31の下面31a及び陰極端子部41の下面41aを金型5内の底面5aに面接触させる。このため、従来の固体電解コンデンサと同様(図8参照)、金型5内には、陽極端子部31と陰極端子部41との間に、コンデンサ素子1と金型5とで挟まれた狭い空間Rcが形成される。
【0046】
次に、軟化した樹脂を、金型5に設けられた溝5b及び5cの何れか一方から金型5内へ流し込む。このとき、他方の溝は、塞がれてもよいし、樹脂の流出口として用いられてもよい。樹脂には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いる。金型5内に流し込まれた樹脂は、コンデンサ素子1と陽極引出し構造体3との間に設けられた隙間を主な入口Reとして、空間Rcへ流れ込もうとする(図6に示す白抜き矢印Fc参照)。尚、樹脂には、熱硬化性樹脂に限らず、軟化した状態から硬化させることが可能な様々な樹脂を用いることが出来る。
【0047】
ここで、本実施形態の製造方法によれば、金型5内では、フレーム加工工程にて陽極端子部31と対向部32との間に設けられた隙間Rgが、開口部35を介して空間Rcに通じることになる。即ち、空間Rcへ通じる通路として、入口Reを通る通路とは別の通路が、開口部35及び隙間Rgにより形成されることになる。
【0048】
従って、金型5内に樹脂が流し込まれ、空間Rcに樹脂が入り込もうとした際、その空間Rc内の空気が、開口部35及び隙間Rgを通って外部へ逃げ易くなる(図6に示す実線矢印Fa参照)。即ち、開口部35及び隙間Rgにより形成された通路が、圧抜き用の通路として機能することになる。その結果、空間Rcへ樹脂が流れ込み易くなると共に、その空間Rcの入口Re付近において樹脂の圧力が高まり難くなる。よって、空間Rcに樹脂が十分に充填され、その結果、金型5内の全体に樹脂が行き亘り易くなる。尚、本実施形態の製造方法によれば、開口部35及び隙間Rgを通って空間Rcへ樹脂が流れ込むこともある。この場合、空間Rc内の空気は、入口Reから外部へ逃げることになる。
【0049】
金型5内が樹脂で充填された後、金型5内の樹脂を硬化させる。尚、樹脂が熱硬化性樹脂である場合、金型5内の樹脂を加熱することにより樹脂の硬化を促進させる。この様にして、外装体2を形成する。その後、金型5を除去し、陽極端子部31及び陰極端子部41を、図6に示される一点鎖線B4及びB5にてそれぞれ切断する。これにより、図1に示される固体電解コンデンサが完成する。
【0050】
本実施形態の製造方法によれば、上述した様に、金型5内の全体に樹脂が行き亘り易くなる。従って、形成された外装体2において、樹脂のない空隙が生じ難くなる。又、金型5内において樹脂の圧力が高まり難いので、コンデンサ素子1には応力が生じ難く、従って誘電体層13にクラック等の欠陥が生じ難くなる。その結果、製造される固体電解コンデンサにおいて、漏れ電流の増加が抑制されることになる。又、陽極リード12と接続部34との接続箇所にも応力が生じ難い。よって、製造される固体電解コンデンサにおいて、電気的な接続不良(例えば、溶接の破壊)が生じ難い。
【0051】
更に、本実施形態の製造方法によれば、開口部35及び隙間Rgにも樹脂が充填されることになる。従って、製造された固体電解コンデンサにおいて、開口部35及び隙間Rgを満たす樹脂と空間Rcを満たす樹脂とが繋がることになる。よって、製造された固体電解コンデンサからの樹脂の剥離(特に、外装体2の下面2aを構成する部分の剥離)が、アンカー効果により防止されることになる。又、本実施形態においては、開口部35が、陽極端子部31の端縁31c又は対向部32の第1端縁32aに沿って拡がっている。よって、開口部35及び隙間Rgを満たす樹脂と空間Rcを満たす樹脂との繋がりが強く、従ってアンカー効果が発揮され易い。
【0052】
尚、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、開口部35は、扁平形状に限らず、円形や矩形等、様々な形状を有したものであってもよい。又、本発明は、リードタイプの固体電解コンデンサに限らず、樹脂モールドにより外装体が形成される様々なタイプの固体電解コンデンサに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 コンデンサ素子
2 外装体
2a 下面
3 陽極引出し構造体
4 陰極引出し構造体
5 金型
5a 底面
5b、5c 溝
6 導電性接着材
7 フレーム
11 陽極体
12 陽極リード
13 誘電体層
14 電解質層
15 陰極層
31 陽極端子部
31a 下面
31b 上面
31c 端縁
32 対向部
32a 第1端縁
32b 第2端縁
33 連結部
34 接続部
34a 先端
35 開口部
41 陰極端子部
41a 下面
41b 上面
41c 端縁
42 延在部
42a 下面
42b 上面
71 陽極フレーム部
72 陰極フレーム部
71a、72a 下面
B1、B2 境界線
B3、B4、B5 一点鎖線
Da 所定方向
Fa 実線矢印
Fc 白抜き矢印
Rc 空間
Re 入口
Rg 隙間
711 第1領域
711a 端縁
712 第2領域
712a 端縁
713 第3領域
713a 端縁
714 第4領域
714a 先端
721 第1領域
722 第2領域
721a、722a 下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8