(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
[構成]
【0013】
図1は、この発明に係る給湯排熱利用空調システムの実施例1の概略説明図である。この
図1において、地盤1上には平板状のべた基礎2が設けられている。ここで、地盤1とは地表面1aおよび地表面1aの下方の地中(地中部)1b含めたものを言う。
【0014】
また、べた基礎2は、底板2aと、底板2aの周囲に一体に形成された起立する立ち上がり部2bを有する。この立ち上がり部2b上に建物3の床部3aの周縁部を設置することにより、立ち上がり部2b上には住宅等の建物3が構築されている。
【0015】
そして、建物3の床部3aとべた基礎2の底板2aとの間には床下空間4が形成されている。この床下空間4内には、べた基礎2の周縁部に沿わせた基礎断熱部材5が配設されている。この基礎断熱部材5は、立ち上がり部2bの内側面に固定した側面部5aと、側面部5aの下端部に連設され且つ底板2a上に設けた底面部5bを有する。この基礎断熱部材5には、グラスウール,発泡ウレタン,発泡スチロール等が使用される。
【0016】
また、建物3内には、床部3a上に設置した浴槽30が湯利用部として配設されている。この浴槽30には、図示を省略した給湯装置からの湯が供給されるようになっている。また、浴槽30の残り湯は、排水パイプ31及び開閉弁32を介して汚水枡33に排水されるようになっている。
【0017】
この排水パイプ31は、浴槽30の底部に接続された湯排出パイプ部31aと、湯排出パイプ部31aに連設された放熱パイプ部31bを有する。この放熱パイプ部31bは、べた基礎2に近接してべた基礎2の真下の地中に埋設されていると共に、湯排出パイプ部31aから汚水枡33に向かうに従って下方に緩い角度で傾斜させられている。そして、放熱パイプ部31bの下端と汚水枡33との間に開閉弁32が介装されている。この開閉弁32には、電磁弁等が用いられている。
【0018】
これにより、浴槽30の残り湯は、排水パイプ31及び開閉弁32を介して汚水枡33に排水されるようになっている。尚、汚水枡33は、建物3の浴槽30を配置した側とは反対側に近接して地中に埋設されている。
【0019】
また、建物3内には開閉弁32を開閉制御させるコントローラ34が設けられている。このコントローラ34は、開閉弁32を開閉制御させる制御部34aと、制御部34aに接続されたスイッチ34bを有する。そして、制御部34aは、スイッチ34bに開閉弁32を開閉制御するようになっている。
【0020】
更に、排水パイプ31の放熱パイプ部31bの温度は温度センサ35により検出され、浴槽30の残り湯の排出は放熱パイプ部31bの下端に設けた排水センサ36で検出されるようになっている。この温度センサ35からの温度検出信号および排水センサ36からの排水検出信号は制御部34aに入力されるようになっている。
【0021】
そして、制御部34aは、排水センサ36からの排水検出信号や、温度センサ35からの温度検出信号に基づいて開閉弁32を開閉制御させるようになっている。
【0022】
更に、建物3には、地中熱および浴槽30の残り湯の排熱を利用するヒートポンプシステム6が空調装置として設けられている。このヒートポンプシステム(ヒートポンプ)6は、
図1に示したように、建物3に近接させて外側に設置したヒートポンプユニット7と、べた基礎2の底板2a上に設置した床下放熱器8と、このヒートポンプユニット7と床下放熱器8を接続する第1,第2接続パイプ9,10を備えている。
【0023】
この床下放熱器8は、
図2に示したように、凝縮器(放熱部)8aと、この凝縮器8aに空気を送風する送風ファン8bを有する。尚、この第1,第2接続パイプ9,10内にはヒートポンプユニット7からの冷媒を床下放熱器8に循環させる冷媒流路が形成されている。
【0024】
ヒートポンプユニット7は、
図2に示したように、第1の熱交換部(一次側熱交換部)11を有する。この第1の熱交換部11は、蒸発器11aと、この蒸発器11aを収容する熱交換容器11bを有する。
【0025】
また、ヒートポンプユニット7は、蒸発器11aの両端に接続された第1,第2冷媒流路12,13と、第1冷媒流路12の途中に介装されたコンプレッサ14と、第2冷媒流路13の途中に介装された膨張弁15を有する。尚、第1,第2冷媒流路12,13は、複数のパイプから形成されている。
【0026】
そして、第1,第2冷媒流路12,13には、上述した第1,第2接続パイプ9,10を介して床下放熱器8の凝縮器8aが接続されている。これにより、第1,第2接続パイプ9,10,蒸発器11a,第1,第2冷媒流路12,13,コンプレッサ14,膨張弁15,凝縮器8a等は一連の冷媒環流路を形成している。
【0027】
コンプレッサ14は蒸発器11aからの気体状の冷媒を圧縮して凝縮器8aに供給させ、膨張弁15は凝縮器8aで放熱させられて液化した冷媒を膨張させて蒸発器11aに供給させるように配設されている。
【0028】
図1において、空調装置であるヒートポンプシステム6は熱搬送流体貯留パイプ16を有する。この熱搬送流体貯留パイプ16は、べた基礎2の底板2aの真下に位置させて地中1b内に水平に埋設されている。この熱搬送流体貯留パイプ16は底板2aに近接した位置に配置されていると共に、この熱搬送流体貯留パイプ16と底板2aとの間に上述した排水パイプ31の放熱パイプ部31bが配設されている。尚、放熱パイプ部31bは熱搬送流体貯留パイプ16に近接させて配置されている。
【0029】
この熱搬送流体貯留パイプ16には、例えば安価な塩化ビニール製の樹脂パイプが用いられるが、必ずしも塩化ビニール製の樹脂パイプを用いる必要はない。
【0030】
この熱搬送流体貯留パイプ16の地中1bへの埋設には例えばバックホウが用いられる。このバックホウは、油圧ショベルと総称される建設機械のうち、ショベル(バケット)をオペレータ側向きに取り付けた形態のもので、オペレータ側向きのショベルでオペレータは自分に引き寄せる(抱え込む)方向に操作するようになっている。このバックホウでは、地表面1aより低い場所の掘削に適している。
【0031】
また、バックホウはべた基礎2のための基礎工事の際に地盤1を掘り下げるのに用いられ、この基礎工事の際に掘り下げた地盤1の凹所にバックホウ(ユンボ)で掘れる幅・深さに熱搬送流体貯留パイプ16を埋設する。
【0032】
ここで熱搬送流体貯留パイプ16を埋設するパイプ埋設用溝とすると、熱搬送流体貯留パイプ16の埋設の上限や下限の施工条件としては、例えば次のように設定する。
<パイプ埋設用溝の深さの上限>
(a).熱搬送流体貯留パイプ16を地中に埋設したとき、べた基礎2の基礎砕石(図示せず)の下端から10cmの深さの位置が熱搬送流体貯留パイプ16の上端になるように、熱搬送流体貯留パイプ16を埋設するパイプ埋設用溝の深さを設定する必要がある。即ち、熱搬送流体貯留パイプ16の上部に10cm程度の被り厚の覆土が必要である。
(b).また、熱搬送流体貯留パイプ16の下には10cm程度の管基礎を設ける。
【0033】
従って、例えば、熱搬送流体貯留パイプ16の直径を15cmとしたとき、バックホウ(ユンボ)で掘るパイプ埋設用溝の掘削深さの上限は35cm(直径15cm+管基礎10cm+被り厚(覆土厚)10cm=35cm)とする。
【0034】
このようなバックホウ(ユンボ)で掘るパイプ埋設用溝の深さの上限は一例であって、必ずしも上述した数値に限定されるものではない。例えば、熱搬送流体貯留パイプ16の直径に応じて管基礎+被り厚の施工条件が変わる場合、パイプ埋設用溝の深さの上限は直径,管基礎,被り厚に応じて変える。
【0035】
<パイプ埋設用溝の深さの下限>
また、例えば、建物3の土留めを設ける必要がある場合、バックホウ(ユンボ)で掘る掘削深さの下限は例えば1.5mとする。
【0036】
このようなバックホウ(ユンボ)で掘るパイプ埋設用溝の深さは一例であって、必ずしもこの数値に限定されるものではない。
【0037】
このように基礎工事で用いるバックホウを考えると、バックホウ(ユンボ)で掘れる幅・深さに熱搬送流体貯留パイプ16を埋設する仕様とすれば、安価に施工できる。一般的なバックホウはバケット幅が550mmであるので、埋め戻し作業に必要な幅は熱搬送流体貯留パイプ16の左右に形成される部分である。この埋め戻し作業に必要な幅は、例えば150〜200mm程度、若しくは200mm〜300mm程度となるように熱搬送流体貯留パイプ16の直径を設定すると良い。
【0038】
従って、建物3の床部3aの床面積が例えば8m×8m程度の場合、熱搬送流体貯留パイプ16には例えば次のような仕様のものを用いると良い。即ち、熱搬送流体貯留パイプ16には、例えば直径が150φ〜250φで且つ長さLが20〜40m程度のものを用いると良い。尚、この数値は一例を示したもので、これに限定されるものではない。
【0039】
また、
図2に示したように熱搬送流体貯留パイプ16は、大径のパイプ本体17と、パイプ本体17の両端部をそれぞれ閉成するキャップ状の蓋体18,19を有する。この蓋体18,19の中央部には、小径の接続パイプ部18a,19aが外方に向けて突出するように一体に形成されている。
【0040】
そして、接続パイプ部18a,19aには、
図2、
図3に示したように、循環パイプ20,21の一端部がそれぞれ気密に接続されている。この循環パイプ20,21の他端部は
図2に示したように第1の熱交換部11の熱交換容器11bにそれぞれ接続されている。また、循環パイプ20の途中には循環ポンプ22が介装されている。この熱交換容器11b,熱搬送流体貯留パイプ16,循環パイプ20,21内には不凍液が熱搬送用流体として充填されている。
【0041】
この循環パイプ20,21には、床暖房付ヒートポンプの温水系を採熱用途に置換えるとすると、直径が例えば20mmのものが一般的ある。従って、上述した熱搬送流体貯留パイプ16の直径は、循環パイプ20,21の直径の15〜25倍となっている。ここで、床暖房付ヒートポンプとは、床部3aにパイプ(図示せず)を敷設して、このパイプの中をヒートポンプユニット7で加熱された温水を循環させるようにした構成を言う。この床部3aの暖房を行うことで、床部3a上の室内の空気の暖房を行うことができる。
【0042】
また、
図2に示したように、床下放熱器8の送風ファン8b,コンプレッサ14,循環ポンプ22は、制御手段(制御部)としての制御回路23により動作制御させられるようになっている。この制御回路23は、コントローラ34により動作制御させられるようになっている。
【0043】
[作用]
次に、このような構成の地中熱及びヒートポンプ利用の建物用空調システムの作用を説明する。
【0044】
コントローラ34の制御部34aには、温度センサ35からの温度検出信号が常時入力されている。この制御部34aは、スイッチ34bをオンさせると、開閉弁32を開弁させ、OFFさせると開閉弁32をON(閉弁)させる。この開閉弁32を開いた状態で、浴槽30内の残り湯を排水させると、この残り湯は排水パイプ31及び開閉弁32を介して汚水枡33内に排水される。
【0045】
これに伴い、排水センサ36は、残り湯の排水状態を検出して排水検出信号を出力し、この排水検出信号を制御部34aに入力する。この排水検出信号は、残り湯が汚水枡33に全て排水されると、排水センサ36が残り湯の排水流れを検出しなくなる。そして、制御部34aは、排水検出信号がなくなると、開閉弁32をOFF(閉弁)させる。
尚、このような開閉弁32のON・OFF時間をタイマー(図示せず)により設定しておくと、制御部34aは設定された時間に開閉弁32をON・OFFさせるようにできる。
【0046】
このような残り湯の排水に伴い、残り湯が排水パイプ31の放熱パイプ部31bを流れる際、残り湯の熱が放熱パイプ部31bから地中に放熱されて、地中に蓄熱されることになる。
【0047】
また、冬期等において、制御部34aは、排水センサ36からの排水検出信号や、温度センサ35からの温度検出信号に基づいて開閉弁32を開閉制御させることができる。
【0048】
例えば、排水センサ36からの排水検出信号が検出された状態で、温度センサ35からの温度検出信号から検出される放熱パイプ部31bの温度が所定温度以上の状態(例えば、地中の温度よりも高い状態)のとき、開閉弁32を一時的にOFF(閉弁)させて、放熱パイプ部31b内の残り湯の熱を地中に放熱させる。
【0049】
この放熱に伴い、温度センサ35からの温度検出信号から検出される放熱パイプ部31bの温度が低下していくと、単位時間あたりの温度降下率が所定値より低くなり、温度降下率が緩くなる。
この場合は、放熱量が少なくなるので、制御部34aは、開閉弁32をON(開弁)させる。これにより、浴槽30からの残り湯が更に排水させられて、最初に放熱パイプ部31b内に滞留させて温度が降下した残り湯が浴槽30からの高い温度の残り湯で汚水枡33内に押し出される。
【0050】
これに伴い、温度センサ35からの温度検出信号から検出される放熱パイプ部31bの温度が最初の残り湯の温度に近い温度になると、制御部34aは開閉弁32をOFF(閉弁)させて、残り湯の熱の地中への放熱を行わせる。このような開閉弁32のON・OFF制御は、浴槽30の残り湯が無くなるまで制御部34aにより繰り返し実行させる。
【0051】
このような残り湯の熱が地中に放熱されて地中の温度が上昇すると、この熱が熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液の温度を上昇させる。
【0052】
一方、冬期において床部3aおよび建物3の暖房を行う場合、制御回路23は、送風ファン8b,コンプレッサ14,循環ポンプ22を駆動制御させる。これに伴い、循環ポンプ22は、不凍液を循環パイプ20,21を介して熱搬送流体貯留パイプ16と第1の熱交換部11の熱交換容器11b内との間で循環させる。
【0053】
また、コンプレッサ14は、蒸発器11aからの冷媒を圧縮して凝縮器8a,膨張弁15,蒸発器11aの順に循環させる。
【0054】
この冷媒の循環に伴い熱交換容器11b内では、循環ポンプ22で循環させられる熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液からの地中熱と蒸発器11a内の冷媒との間で熱交換が行われ、蒸発器11a内の冷媒が加熱されて温度が上昇する。
【0055】
この際、地中の温度が浴槽30からの残り湯の排水で加熱されて温度が上昇している場合、熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液もこの残り湯の熱で加熱されて温度が上昇している。この結果、熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液の温度は、浴槽30の残り湯の熱を利用して熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液を加熱した場合、熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液を地中熱のみにより加熱する場合よりも上昇させることができる。
【0056】
この温度が上昇した冷媒は、コンプレッサ14で圧縮されることにより更に加熱されて、高温・高圧の冷媒となる。この圧縮加熱された冷媒は、第2の熱交換部である凝縮器8aに供給される。
【0057】
この際、床下放熱器8の送風ファン8bは駆動されている。従って、この送風ファン8bにより送風される空気は、凝縮器8aの周囲を流れて加熱されて床下空間4内に送風され、床下空間4を暖房する。これにより、床部3aが暖房される。尚、床部3aに空調の為のガラリ(図示せず)が設けられている場合には、床下空間4内の空調された空気をガラリを介して建物3内に供給して、建物3内を暖房することができる。
【0058】
上述したように、ヒートポンプシステムすなわち給湯排熱利用空調システムは、床下空調システムであって、ヒートポンプユニット7の熱源を地中に埋設された地中埋設管(熱搬送流体貯留パイプ16)内の循環液としての不凍液を用いて、この不凍液が地中埋設管(熱搬送流体貯留パイプ16)とヒートポンプユニット7の第1の熱交換部11との間で循環する構成としている。しかも、地中埋設管(熱搬送流体貯留パイプ16)は、基礎断熱された住宅の基礎(べた基礎2)の下に埋設されている。
【0059】
また、地中埋設管(熱搬送流体貯留パイプ16)には、一般的な部材として安価な塩ビ管を用いている。この地中埋設管(熱搬送流体貯留パイプ16)は、循環液(不凍液)を漏らさずに保持できれば、素材・形状にはこだわらない。しかし、地中埋設管(熱搬送流体貯留パイプ16)の素材・形状としては、塩化ビニール製の管であれば、ヒートポンプユニット7の能力にあわせて埋設長さを調整する事で、建物(住宅)3の暖冷房負荷に対応できる。
【0060】
このように、建物(住宅)3の基礎(べた基礎2)に近接させて基礎(べた基礎2)の真下に地中埋設管(熱搬送流体貯留パイプ16)を水平に埋設して、この地中埋設管(熱搬送流体貯留パイプ16)を一次側熱源としたヒートポンプシステムとすることで、地中熱を利用できるのに加え、住宅基礎(べた基礎2)の下へ逃げる熱も利用できる。これにより、ヒートポンプユニット7の能力や効率を左右する外気条件に関わらず、安定的に高効率で運転することができる。また、一般の地中熱ヒートポンプシステムの地中杭よりも安価な一次側熱源となる。
【0061】
(実施例2)
実施例1では、浴槽30の残り湯を自重で排水させるために、排水パイプ31の放熱パイプ部31bを傾斜させる一方、熱搬送流体貯留パイプ16を水平に配設した構成としているが、これに限定されるものではない。
【0062】
例えば、
図3に示した実施例2ように、熱搬送流体貯留パイプ16を放熱パイプ部31bに沿うように傾斜させて、この傾斜させた熱搬送流体貯留パイプ16と放熱パイプ部31bを接触させた構成としても良い。この構成では、放熱パイプ部31bに残り湯の熱が熱搬送流体貯留パイプ16に直接伝達できるので、放熱パイプ部31bと熱搬送流体貯留パイプ16との熱交換効率が向上する。
【0063】
(実施例3)
また、実施例3は、
図4に示したように、熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液を放熱パイプ部部31bからの熱で直接加熱できるようにした例を示したものである。このため、
図4において放熱パイプ部31bは、熱搬送流体貯留パイプ16の両端の端壁である蓋体18,19を貫通させられて、熱搬送流体貯留パイプ16内に傾斜して配設されている。これにより実施例4では、放熱パイプ部31bの残り湯の熱が放熱パイプ部31bの外周面全体から熱搬送流体貯留パイプ16内に放熱させられて、熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液が加熱される。この実施例3によれば、放熱パイプ部31bと熱搬送流体貯留パイプ16との熱交換効率が実施例2よりも向上する。
【0064】
(実施例4)
この実施例4において熱搬送流体貯留パイプ16は、
図5に示したように、水平に設けられた流入パイプ部16aと、この流入パイプ部16aと水平方向に間隔をおいて平行に設けられた戻りパイプ部16bと、この流入パイプ部16aと戻りパイプ部16bを連設する連設部からU字状(またはコ字状)に折曲形成されている。
【0065】
また、排水パイプ31の放熱パイプ部31bは、流入パイプ部16aと戻りパイプ部16bとの間を通すように傾斜した状態で配設されている。しかも、放熱パイプ部31bは、傾斜が小さく、流入パイプ部16aと戻りパイプ部16bに略沿うように設けられている。
【0066】
この実施例4では、放熱パイプ部31bから放射状に放熱される残り湯の熱が熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液を流入パイプ部16aと戻りパイプ部16bの2カ所で加熱することになる。これにより、放熱パイプ部31bから放射状に放熱される残り湯の熱が熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液を一カ所で加熱する実施例1よりも熱交換効率を向上させることができる。
【0067】
尚、湯利用部としては、浴槽30に限らず給湯装置(図示せず)から給湯される湯を利用するキッチンのシンクや洗面所のボウル等であっても良い。
【0068】
(その他)
尚、
図4では、流入パイプ部16aと戻りパイプ部16bの間隔を広くとっているが、流入パイプ部16aと戻りパイプ部16bの間隔を狭くして、放熱パイプ部31bとの熱を流入パイプ部16aと戻りパイプ部16bを近づけることにより、放熱パイプ部31bから熱搬送流体貯留パイプ16への熱伝達量を多くできるようにしても良い。
【0069】
また、
図4では、排水パイプ31の放熱パイプ部31bを、流入パイプ部16aおよび戻りパイプ部16bに略沿うように傾斜配設しているが、流入パイプ部16aおよび戻りパイプ部16bと平行に配設しても良い。この場合、流入パイプ部16aおよび戻りパイプ部16bは放熱パイプ部31bと同じ傾斜に設定すると良い。
【0070】
<実施の形態の作用・効果>
(1).この発明の実施の形態の給湯排熱利用空調システムは、建物内の湯利用部から建物外に排水される湯の排熱を利用している。そして、前記空調装置ヒートポンプシステム6は、地中に埋設された地中熱交換手段(熱搬送流体貯留パイプ16)と、第1の熱交換部11で熱交換される冷媒の熱を第2の熱交換部(凝縮器8a)で前記建物内の空調に用いるヒートポンプを有する。また、前記空調装置ヒートポンプシステム6は、前記第1の熱交換部11と前記地中熱交換手段(熱搬送流体貯留パイプ16)との間で熱搬送用流体を循環可能に前記第1の熱交換部11と前記地中熱交換手段(熱搬送流体貯留パイプ16)に接続された循環パイプ(20,21)と、前記熱搬送用流体を前記循環パイプ(20,21)を介して前記第1の熱交換部11と前記地中熱交換手段(熱搬送流体貯留パイプ16)との間で循環させる循環ポンプ22とを備えている。しかも、前記湯利用部(浴槽30)に接続された排水パイプ31が前記地中熱交換手段(熱搬送流体貯留パイプ16)に近接させて前記地中に埋設されて、前記排水パイプ31内を排水される湯の排熱で前記地中熱交換手段(熱搬送流体貯留パイプ16)の熱搬送流体が加熱可能に設けられている。
この構成によれば、少ない部品点数で、建物内の湯利用部(浴槽30)から建物外に排水される湯の熱を地中熱と共に有効に回収して、回収した熱を暖房に用いることができる。
【0071】
尚、この湯利用部から排水される湯は、実施例では建物外の汚水枡33を介して下水道に排水されるようになっている。しかし、湯利用部から排水される湯は、建物外の下水道以外の場所、例えば浄化槽に排水される構成であっても良いし、場所によっては建物外の排水溝等に直接排水することもできる。
【0072】
(2).また、この発明の実施の形態の給湯排熱利用空調システムにおいて、前記排水パイプ31は前記湯利用部(浴槽30)側から建物外に向かうに従って下方に傾斜させられた放熱パイプ部31bを有し、前記放熱パイプ部31bの下端に開閉弁32が介装されている。
【0073】
この構成によれば、残り湯が排水パイプ31を介して汚水枡33に排水される際に開閉弁32を開閉制御するにより、排水パイプ31の放熱パイプ部31bから地中への放熱および地中熱交換手段(熱搬送流体貯留パイプ16)へ伝達される熱量を多くできるので、残り湯の熱を熱搬送流体貯留パイプ16により多く伝達できる。
【0074】
(3).また、この発明の実施の形態の給湯排熱利用空調システムにおいて、前記建物のべた基礎2の真下に位置させて地表面1aから浅い位置に前記べた基礎2に沿う方向に向けて埋設され、前記排水パイプ31の放熱パイプ部31bに沿って接触するように配設された熱搬送流体貯留パイプ16である。
【0075】
この構成によれば、放熱パイプ部31bに残り湯の熱が熱搬送流体貯留パイプ16に直接伝達できるので、放熱パイプ部31bと熱搬送流体貯留パイプ16との熱交換効率が向上する。
【0076】
(4).また、この発明の実施の形態の給湯排熱利用空調システムにおいて、前記地中熱交換手段(熱搬送流体貯留パイプ16)は、前記建物のべた基礎2の真下に位置させて地表面1aから浅い位置に前記べた基礎2に沿う方向に向けて埋設され熱搬送流体貯留パイプ16であり、前記排水パイプ31の放熱パイプ部31bが前記熱搬送流体貯留パイプ16内に配設されている。
【0077】
この構成によれば、放熱パイプ部31bと熱搬送流体貯留パイプ16との熱交換効率が向上する。
【0078】
(5).また、この発明の実施の形態の給湯排熱利用空調システムにおいて、前記地中熱交換手段(熱搬送流体貯留パイプ16)は、前記建物のべた基礎2の真下に位置させて地表面1aから浅い位置に前記べた基礎2に沿う方向に向けて埋設された流入パイプ部16aと、この流入パイプ部16aに間隔をおいて平行に設けられた戻りパイプ部16bを備える形状に折曲された熱搬送流体貯留パイプ16であると共に、前記排水パイプ31の放熱パイプ部31bは前記流入パイプ部16aと前記戻りパイプ部16bとの間に配設されている。
【0079】
この構成によれば、放熱パイプ部31bから放射状に放熱される残り湯の熱が熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液を流入パイプ部16aと戻りパイプ部16bの2カ所で加熱することになるので、放熱パイプ部31bから放射状に放熱される残り湯の熱が熱搬送流体貯留パイプ16内の不凍液を一カ所で加熱する場合よりも熱交換効率を向上させることができる。