【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。
【0018】
携帯情報端末10は、後述する手順で気象データサーバ50から、水平面内と高度方向に分布している気象データを取得する。気象データサーバ50には、レーダ観測結果により生成される例えば250mメッシュ、5分間隔の降水量(又は降水強度)とその予測の気象データが格納されている。ここでの気象データは、実況値及び予測値共に降雨中心の移動方向の情報を含み、予測値は予測降水量の分布を示す。メッシュサイズは実際には、緯度・経度で規定されており、表示に際して必要により距離値に換算される。気象データサーバ50は複数の携帯情報端末10からの気象データ要求に対応可能であり、先行して要求された部分の気象データを次の送信に備えてキャッシュしておく機能を有する。
【0019】
気象データサーバ50は、CPU52、主記憶としてのメモリ54、ハードディスク装置等からなる記憶装置56、及びインターネットに接続する通信装置58からなり、記憶装置56に気象データが、図示しない気象観測手段から逐次格納される。
【0020】
CPU52は、コンピュータプログラムにより、クライアントである携帯情報端末10から要求される地域の気象データを記憶装置56に記憶される気象データから抽出する抽出機能60と、データ量と通信量の低減のために気象データの階調度を低減する階調低減機能62を実現する。階調低減機能62は例えば、128階調を8階調とか4階調に低減する。階調低減機能62で階調度を低減して要求元である携帯情報端末10に送信することで、通信データ量を削減でき、携帯情報端末10での気象データの記憶に必要な記憶装置容量を削減できる。通信データ量を削減する必要度が低い場合、又は、携帯情報端末10において本来の階調度の気象データを時として必要とする場合には、階調低減機能62と同じ機能を携帯情報端末10側に装備すればよい。
【0021】
携帯情報端末10の制御装置12が、携帯情報端末10の全体を制御する。携帯情報端末10は、入力手段又は出力手段として、動画/静止画を撮影可能なカメラ14、測位手段としてのGPS(Global Positioning System)受信機16、方位・姿勢・加速度センサ18、LCD等からなるモニタ20、及びモニタ20の画面上(又は画面下)に設置されるタッチパネル22を具備する。
【0022】
カメラ14は、携帯情報端末10の背面に配置されており、携帯情報端末10正面に立てて持った状態で、カメラ14の撮影光軸は正面前方に水平に位置する。カメラ14が光学ズーム機能を持っていてもよい。
【0023】
GPS受信機16は、複数のGPS衛星からの電波信号を受信して携帯情報端末10の地上座標系での3次元位置を決定し、その3次元位置座標データを出力する。無線LANアクセスポイントの登録された位置を参照することで携帯情報端末の所在地を決定する技術も広く普及しており、その位置決定技術をGPS受信機16の測位結果と併用してもよいし、GPS受信機16の代替として使用しても良い。この場合、携帯情報端末10は無線LAN通信手段を具備する必要がある。GPS受信機16は、通常、1分間隔で測位を実行するので、その間の移動による現在位置の変化を別の手段で補間する必要があるが、例えば、方位・姿勢・加速度センサ18で得られる加速度から3軸又は2軸の移動距離を算出して、GPS受信機16の出力する位置座標を補間すれば良い。
【0024】
方位・姿勢・加速度センサ18はジャイロ、加速度センサ及び地磁気センサ等からなり、携帯情報端末10(より具体的には、カメラ14)の向く方向(方位)、姿勢(仰角又は俯角)と移動の加速度を検出し、出力する。なお、本実施例では、ユーザが垂直に起立し、携帯情報端末10を正面に立てて持った状態を仰角=俯角=0とし、携帯情報端末の表示面を見上げる状態での、表示面の垂線が水平面と成す角度を仰角とする。このとき、カメラ14は空を撮影する方向を向く。仰角90度は、携帯情報端末をその表示面を鉛直下向きにして水平に保持する状態である。逆に、携帯情報端末の表示面を見おろす状態での、表示面の垂線が水平面と成す角度を俯角とする。このとき、カメラ14は地面を撮影する方向を向く。俯角90度は、携帯情報端末をその表示面を鉛直上向きにして水平に保持する状態である。
【0025】
モニタ20は、VRAM24に格納される画像データを表示する。詳細は後述するが、VRAM24は、動画レイヤ24a、静止画レイヤ24b及びテキストレイヤ24cを具備し、これらレイヤの画像を合成した画像をモニタ20に出力する。動画レイヤ24aには、カメラ14により撮影されたカメラ映像の画像データが格納される。静止画レイヤ24bには、気象データサーバ50から取得した気象データを示すグラフィック画像データが格納される。テキストレイヤ24cには、メニューその他の補助情報が格納される。ユーザは、モニタ20の画面上(又は画面下)に配置されるタッチパネル22を指等でタッチ又はなぞることで、種々の指示を携帯情報端末10に与えることができる。
【0026】
一定時間周期で複数の静止画レイヤ24bを順番に静止画レイヤ24bに格納することにより、アニメーション表示が可能になる。このようなアニメーション表示には晴/曇/雨の程度を示すものがある。より一般的には、静止画レイヤ24bに格納する静止画像データを動画相当のレート、例えば30フレーム/秒で切り替えていくことで、カメラ映像に動画を重畳することができる。
【0027】
タイマ26は現在日時を計時し、制御装置12は、タイマ26の出力を参照して各部の動作を制御する。
【0028】
メモリ28には、制御装置12上で動作するプログラム、その動作上の定数・変数が格納され、また、気象データサーバ50から取得された気象データが一時的に格納される。
【0029】
記憶装置30は不揮発性メモリ、例えばフラッシュメモリからなる。記憶装置30には、必要なプログラム、定数、及び気象データサーバ50から取得し、表示用に保持する必要のある気象データが、格納される。
【0030】
通信装置32は、無線LAN又は携帯無線通信回線を介してインターネット上の気象データサーバ50と通信することができる。
【0031】
グラフィック化装置34は、気象データから降雨の分布状況を水平面内で展開し、降雨強度分布を背景となる空や雲を視認できる透過色又は明度で表現するグラフィック画像データを生成する。
【0032】
射影変換装置36は、気象データサーバ50から取得したメッシュ構成の気象データを、制御装置12からの方位角及び仰角に従い、所定高度(例えば、1km)の上空の想定スクリーンに三点透視投影したグラフィック画像データを生成する。別の方法として、グラフィック化装置34の出力を射影変換装置36に入力し、射影変換装置36は、グラフィック化装置34により生成されるグラフィック画像データを、制御装置12からの方位角及び仰角に従い、所定高度(例えば、1km)の上空の想定スクリーンに斜投影してもよい。
【0033】
グラフィック化装置34により生成されるグラフィック画像データと射影変換装置36により生成されるグラフィック画像データの何れか一方が、VRAM24の静止画レイヤ24bに書き込まれる。詳細は後述するが、地面を撮影する方向にカメラ14が向いているときには、グラフィック化装置34により生成されるグラフィック画像データがVRAM24の静止画レイヤ24bに書き込まれ、空を撮影する方向にカメラ14が向いているときには、射影変換装置36により生成されるグラフィック画像データがVRAM24の静止画レイヤ24bに書き込まれる。
【0034】
キャラクタジェネレータ(CG)38は、モニタ20に表示すべきメニューや説明文等の補助情報、更には、気象データの中心や移動方向を示す矢印等を示す文字画像データを生成し、VRAM24のテキストレイヤ24cに格納する。
【0035】
制御装置12、射影変換装置36、グラフィック化装置34及びキャラクタジェネレータ38の一部又は全部の機能は、携帯情報端末10のCPU40上で動作する気象データ表示プログラムにより実現可能である。その気象データ表示プログラムは、記憶装置30に格納されている。
【0036】
本実施例の動作を説明する。
図2は、携帯情報端末10の主動作のフローチャートを示す。携帯情報端末10のCPU40上で動作する表示制御プログラムが起動されると、制御装置12は、初期値をメモリ28にロードする(S1)。初期値は、例えば、カメラ14の水平と垂直の撮影視野角、及び、気象データを取得・保持する取得範囲(半径R)と階調等である。カメラ14がズーム機能を有する場合、制御装置12は、ズーム値に応じた画角により撮影視野角を決定する。気象データが等間隔のメッシュ構造になっている場合、取得範囲を半径Rでなく、メッシュ数で規定しても良いことは明らかである。取得範囲を半径Rで規定される円形ではなく、四角形、例えば、緯度経度で規定される四角形としても良い。
【0037】
制御装置12は、GPS受信機16及び方位・姿勢・加速度センサ18を有効にする(S2)。以後、制御装置12は継続的に、GPS受信機16の出力から現在位置座標を取得でき、方位・姿勢・加速度センサ18の出力から携帯情報端末10が向いている方位(現在方位)と姿勢(仰角・俯角)を取得できるようになる。
【0038】
制御装置12は、気象データサーバ50から気象データを取得するプロセスを開始する(S3)。これにより、以後、制御装置12は、表示に必要な気象データを、端末10の所在地を中心として半径Rの範囲内で逐次的に気象データサーバ50から取得する。
【0039】
図3は、携帯情報端末10が気象データサーバ50から気象データを取得するプロセスのシーケンス例を示す。
【0040】
携帯情報端末10の制御装置12は、現在位置を目標位置に、現在方位を目標方位に、現在仰角を目標仰角に設定する(S21)。これは、気象データ取得ルーチンを汎用化するためである。カメラ14が俯角状態にある場合には、現在仰角を0度、即ち、カメラ14が水平を向いているとする。
【0041】
制御装置12は、取得範囲(半径R)内で、目標位置、目標方位、目標仰角及び撮影視野角に従い、気象データを要求すべき範囲(要求範囲)を決定する(S22)。
図4は、カメラ14で上空を見上げた状態を横方向から見た図であって、仰角に対する気象データ要求範囲を示す。上空の想定スクリーンの撮影視野内に入る部分が最初の要求範囲となる。気象データサーバ50の気象データは所定時間間隔、例えば5分間隔で蓄積されるので、例えば、ステップS22で決定した要求範囲に対して既に気象データを取得している場合がありうる。そのような場合、気象データを取得済みのメッシュについては要求範囲から除外してもよい。
【0042】
制御装置12は、ステップS22で決定した要求範囲に対する気象データ要求信号を気象データサーバ50に送信する(S23)。階調を低減した気象データを要求する場合、制御装置12は、必要な階調を指定した気象データ要求信号を気象データサーバ50に送信する。また、直近の気象データでなく、ある程度、過去の気象データ又は将来の予測気象データを要求する場合には、現在時刻からの相対時刻指定を要求信号に引数として付加する。
【0043】
気象データサーバ50のCPU52は、通信装置58において携帯情報端末10からの気象データ要求信号を待機している。CPU52は、気象データ要求信号を受信すると、抽出機能60を使って要求範囲に入るメッシュ点の気象データを記憶装置56から抽出する(S31)。相対時刻指定がある場合、CPU52は、その相対時刻指定に対応する時刻の、要求範囲に入るメッシュ点の気象データを記憶装置56から抽出する。CPU52は、抽出した気象データの階調(例えば、128階調)を、階調低減機能62を使って要求された階調(例えば4〜8階調)に低減する(S32)。CPU52は、階調を低減した気象データを通信装置58から要求元の携帯情報端末10に送信する(S33)。なお、要求された気象データが高度別の分布データで構成される場合、気象データサーバ50は、要求範囲の各高度のデータを所定フォーマットで要求元の携帯情報端末10に送信する。携帯情報端末10に送信される気象データは、降雨の移動方向を示すデータを含む。
【0044】
携帯情報端末10は、気象データサーバ50から送信された気象データを記憶装置30に格納する(S24)。
【0045】
携帯情報端末10のユーザが携帯情報端末10の仰角と方位をそのままに維持することは考えにくく、仰角も方位も変更する可能性が高い。変更の都度、気象データを要求すると、モニタ20での表示が遅れてしまう。そこで、本実施例では、携帯情報端末10が取得済みの気象データの分布状況をモニタ20に表示する間にも、その後に表示することになる可能性の高い範囲の気象データを気象データサーバ50から先行的且つ逐次的に取得しておく(S25〜S28)。
【0046】
すなわち、現在の仰角では撮影視野内に入らなくても、目標方位の鉛直面内に入る範囲の気象データを先行取得する(S25,S26)。具体的には、制御装置12は、撮影視野角(特に、水平方向の視野角)に従い、目標方位の鉛直面内で未取得の気象データの範囲を要求範囲として決定し、その要求範囲の気象データ要求信号を気象データサーバ50に送信する(S25)。ステップS23と同様に、階調を低減した気象データを要求する場合、制御装置12は、必要な階調を指定した気象データ要求信号を気象データサーバ50に送信する。直近の気象データでなく、過去又は未来の特定日時の気象データを要求する場合には、現在時刻からの相対時刻指定を要求信号に引数として付加する。
【0047】
気象データサーバ50のCPU52は、ステップS31〜S33と同様に、抽出機能60を使って要求範囲に入るメッシュ点の気象データを記憶装置56から抽出し(S34)、抽出した気象データの階調を階調低減機能62により低減し(S35)、要求元の携帯情報端末10に送信する(S36)。
【0048】
携帯情報端末10は、気象データサーバ50から送信された気象データを記憶装置30に格納する(S26)。記憶装置30に気象データ格納用に確保された記憶領域に空きが無くなると、制御装置12は、最も遠隔地又は最も離れた時刻の気象データから順に記憶装置30から削除する。
【0049】
目標方位角を、気象データ要求範囲に隙間が空かない程度に水平プラス方向と水平マイナス方向に交互に変更して(S27)、ステップS22〜S26を実行する。これにより、携帯情報端末10のユーザが、カメラ映像に気象データのグラフィック画像を重畳した画像を表示させながら携帯情報端末の方位を変更する場合にも、気象データ取得を待たずに、その重畳表示を更新することができる。
【0050】
水平面内での全周方向について気象データを収集したら(S28)、制御装置12は、同様の手順により、過去方向及び/又は未来方向で逐次的に気象データを気象データサーバ50に要求し、送信された気象データを記憶装置30に格納する。過去の気象データは分布の時間的な動きの観察と算出に利用できる。未来方向の気象データはいわゆる短期的な予報値である。これらにより現在地近辺の気象分布状況の時間変化を視覚的に確認できるようになる。
【0051】
図5は、
図3に示すシーケンスによる気象データ取得範囲の変遷を示す。気象データのメッシュに対して、携帯情報端末10から見た半径R以内の気象データを取得する。メッシュ中の数字1〜7は、気象データ要求の順序を示しており、数字1を付加したメッシュの気象データが、最初に実行されるステップS23で気象データサーバ50に要求され、記憶装置30に格納される。数字2を付加したメッシュの気象データは、最初に実行されるステップS25で気象データサーバ50に要求され、記憶装置30に格納される。
【0052】
制御装置12は、ステップS27で目標方位を現在方向から所定角度θaだけ偏向した目標方位70に変更する。角度θaは撮影視野角が部分的に重なるように決定される。この目標方位70に対し、数字3を付加したメッシュの気象データが、ステップS23,S25で気象データサーバ50に要求され、記憶装置30に格納される。
【0053】
次に、制御装置12は、ステップS27で目標方位を現在方向から所定角度−θaだけ偏向した目標方位72に変更する。この目標方位72に対し、数字4を付加したメッシュの気象データが、ステップS23,S25で気象データサーバ50に要求され、記憶装置30に格納される。
【0054】
制御装置12は、ステップS27で目標方位を現在方向から所定角度2θaだけ偏向した目標方位74に変更する。この目標方位74に対し、数字5を付加したメッシュの気象データが、ステップS23,S25で気象データサーバ50に要求され、記憶装置30に格納される。
【0055】
以下、同様に、携帯情報端末10は、目標方位を目標方位76,78のように現在方位に対して交互に偏向しつつ、最終的に真後ろ方向まで、気象データを逐次的に要求し、取得する。数字6を付加したメッシュの気象データは、目標方位76に対してステップS23,S25で気象データサーバ50に要求され、記憶装置30に格納される気象データであり、数字7を付加したメッシュの気象データは、目標方位78に対してステップS23,S25で気象データサーバ50に要求され、記憶装置30に格納される気象データである。
【0056】
このようにバックグラウンドで現在方位に近接する部分から背中方向に向かって逐次的に気象データを先行取得しておくことにより、携帯情報端末10のユーザが携帯情報端末を別の方位に向けたときにも、気象データの取得を待たずに又は短時間の内に、気象データのカメラ映像に重畳した表示を開始できる。
【0057】
携帯情報端末10のユーザが例えば、右方向に又は左方向に回転、即ちパンしながら気象データの重畳表示を確認する傾向がある場合に、その傾向に従い、目標方位をそれぞれ右方向に又は左方向に回転しながら気象データを要求するようにしてもよい。このためには、ユーザの利用状況、特に携帯情報端末の方位や姿勢の変更の様子を蓄積記憶して、その平均的な傾向を把握できるようにし、その傾向に従ってステップS27における目標方位の変更を制御すればよい。
【0058】
図3、
図4及び
図5を参照して説明したように気象データサーバ50から気象データをバックグラウンドで先行取得しつつ、携帯情報端末10は、ステップS4以降を実行する。すなわち、制御装置12は、カメラ14とモニタ20の表示を有効にする(S4)。これにより、カメラ14の撮影映像の動画がVRAM24の動画レイヤ24aに逐次書き込まれる。モニタ20は、VRAM24の各レイヤ24a,24b,24cの画像を一緒に表示できる状態になり、この時点では、カメラ映像のみを表示する。
【0059】
制御装置12は、撮影視野範囲内に表示できる気象データを取得すると、カメラ14が地面方向を向いているか空方向を向いているかに従う表示態様で、気象データの分布状況を示す画像をモニタ20に表示させる(S5)。なお、本実施例では、地面を撮影する方向にカメラ14が向いているとき、即ち俯角状態では、俯角量を考慮せず、テレビ放送と同様に、気象データの強度分布状況を上空から見るように平面的に表示する。他方、空を撮影する方向にカメラ14が向いているとき、即ち仰角状態では、気象データの強度分布状況を仰角の大きさに応じて投影したグラフィック画像を生成し、カメラ映像に重畳して表示する。以下、前者を平面表示モードと呼び、後者を投影合成表示モードと呼ぶ。
【0060】
携帯情報端末10の位置、方位及び姿勢並びに気象データの時刻の何れかに実質的な変更があると(S6)、制御装置12は、変更後の状態でカメラ映像との重畳表示に必要な気象データが記憶装置30に格納されているかどうかを判定する(S7)。気象データが不足する場合には、その不足する気象データを気象データサーバ50に要求して補充取得する(S8)。この補充取得は、
図3に示す通信シーケンスと同様のフローに従って実行される。
【0061】
携帯情報端末10のユーザがタッチパネル22等で終了の指示を入力すると(S9)、制御装置12は、終了処理を実行して(S10)、
図2に示すフローを終了する。ステップS10の終了処理は、メモリ28の解放、気象データサーバ50への終了の通知、及び記憶装置30に記憶した気象データの削除を含む。
【0062】
図6は、気象データ表示処理(S5)のフローチャートを示す。制御装置12は、方位・姿勢・加速度センサ18の出力に従い携帯情報端末10の姿勢が下向きかどうかを判定する(S41)。下向きとは、方位・姿勢・加速度センサ18の出力が俯角を示し、カメラ14が地面方向を撮影する向きにある状態である。逆に、上向きは、方位・姿勢・加速度センサ18の出力が仰角を示し、カメラ14が空方向を撮影する向きにある状態である。
【0063】
上向き姿勢の場合(S41)、制御装置12は、投影合成表示モードになり、先ず、現在位置、現在方位及び姿勢に従い、表示に必要な気象データを記憶装置30から読み出し、射影変換装置36に供給する(S42)。現在位置は、前述の通りGPS受信機16の出力から得られ、現在方位及び姿勢は、方位・姿勢・加速度センサ18の出力から得られる。
【0064】
射影変換装置36は、供給される気象データを現在位置、現在方位及び姿勢に従い、所定高度(例えば、1km)の上空の想定スクリーンに三点透視投影したグラフィック画像データを生成する(S43)。生成されたグラフィック画像データはVRAM24の静止画レイヤ24bに書き込まれる。なお、グラフィック化装置34で生成されるグラフィック画像を斜投影する場合には、制御装置12は、グラフィック化装置34に気象データから水平面内の強度分布を示すグラフィック画像データを生成させ、射影変換装置36に、グラフィック化装置34により生成されるグラフィック画像データを、制御装置12からの方位角及び仰角に従い、所定高度(例えば、1km)の上空の想定スクリーンに斜投影させればよい。
【0065】
制御装置12はまた、メニュー、気象データの大きさの例示、付記すべきテキスト(例えば、警報・注意報の有無と内容や、他のユーザからの情報等)、及び降雨の中心方向又は移動方向を示す標識等の補助情報をキャラクタジェネレータ38に出力し、キャラクタジェネレータ38にそれぞれに対応する画像データを生成させる(S44)。キャラクタジェネレータ38により生成された画像データは、VRAM24のテキストレイヤ24cに書き込まれる。テキストレイヤ24cに書き込むことでモニタ20に表示する画像も、複数の静止画像を短期に切り替えていくことで、アニメーション表示対応させることができる。
【0066】
モニタ20は、一定周期でVRAM24の各画像データ、具体的には、動画像レイヤ24a、静止画レイヤ24b及びテキストレイヤ24cに書き込まれている各画像データを合成して表示する(S45)。静止画レイヤ24bの画像は半透明で表示され、テキストレイヤ24cの画像は目的に応じて透明又は不透明で表示される。
【0067】
例えば、
図7はカメラ映像の一例を示し、
図8は、
図7に示すカメラ画像に降水量を示す気象データを6段階で重畳表示する表示例を示す。
図8では、気象データがメッシュ構成であることが分かりやすいようにメッシュ境界を図示してあるが、モニタ20の画面上でも境界線を表示する。もちろん、メッシュサイズがモニタ20の画面サイズに比べて十分に小さい場合等には、境界線を表示しなくても良い。降水量データは6段階の階調で表示されており、モニタ20の画面下部に各階調部分の表示例を示す凡例スケール80を表示してある。階調例を示す凡例スケール80の元になるグラフィックは、キャラクタジェネレータ38により生成され、テキストレイヤ24cに書き込まれる。画面左上には、降雨中心までの距離、実況示すアイコン(傘マーク等)及び降雨中心への方向を示すテキスト情報82が表示されている。
図7に示す例では、現況として、750m先の地点で雨が降っていることを示す。テキスト情報82もまた、キャラクタジェネレータ38により生成されテキストレイヤ24cに書き込まれることでモニタ20に表示される。テキスト情報82による距離表示でなく、また、距離に代えて、最も近い降雨地点の降雨量や方向を表示しても良い。
【0068】
図9は、
図8に示す表示に加えて、表示範囲内の特定地点でユーザAからの報告をテキストで重畳表示する例を示す。当該テキストを、想定スクリーン上の関連する地点に吹き出し84として表示する。このテキストもまた、キャラクタジェネレータ38により生成されテキストレイヤ24cに書き込まれることでモニタ20に表示される。
【0069】
図10は、
図7に示す表示に更に、分布の移動方向を示す標識としての矢印アイコン86を追加した表示例を示す。取得した気象データ自体に移動方向を示すデータが含まれている場合、その移動方向データを利用する。雲の移動方向は、例えば、ドップラーレーダにより面的に計測可能である。移動方向データが含まれない場合、制御装置12が、異なる時刻の気象データから移動方向を算出する。矢印アイコン86は、キャラクタジェネレータ38により生成されテキストレイヤ24cに書き込まれることでモニタ20に表示される。同様の標識で、分布データの中心方向を示してもよい。中心方向と移動方向の両方を示す場合には、それぞれの標識を視覚的に識別できるように互いに異なる形状又は色で表示する。
【0070】
気象データが高度方向にも階層化されている場合、例えば、高度別のデータレイヤを有する場合、その高度別の分布状況を選択的に表示できるようにしてもよい。例えば、特定の高度範囲に降水が存在する場合があり、そのようなデータとしてはレーダによる立体観測データがある。
図11は、時間と高度を操作可能にした表示例を示す。気象データとカメラ映像の重畳表示に更に、時間軸を操作する横長のスライド式時間操作バー88と、表示すべき高度を指示する縦長のスライド式高度操作バー90を表示する。制御装置12は、複数の時刻の気象データを表示に使えるようになると、モニタ20にスライド式時間操作バー88を表示し、タッチパネル22による操作を有効化する。制御装置12はまた、複数の高度の気象データを表示に使えるようになると、モニタ20にスライド式高度操作バー90を表示し、タッチパネル22による操作を有効化する。
【0071】
スライド式時間操作バー88の移動子又はスライダを左右に操作することで、気象データの表示すべき時刻を制御装置12に指示できる。また、スライド式高度操作バー90の移動子又はスライダを上下に操作することで、気象データの表示すべき高度を制御装置12に指示できる。制御装置12は、気象データサーバ50から取得した気象データを使い、スライド式時間操作バー88により指示される時刻の、スライド式高度操作バー90で指示される高度の分布を示す斜投影のグラフィック画像を射影変換装置36に生成させる。生成されたグラフィック画像は、先に説明したように、モニタ20の画面にカメラ映像に重畳して表示される。高度を指定して降水量分布を表示できるようにすることで、例えば、地上への降雨にまでは至らないような上空の降水が実際に降雨になり得る可能性を容易に認識できるようになる。
【0072】
異なる時刻の気象データを取得できている場合、時間軸の順方向(及び逆方向)に自動再生してもよい。そのためには、再生開始/終了ボタンを設け、その操作に従い、制御装置12が、記憶装置30に記憶される気象データを時間順に読み出し、射影変換装置36及びVRAM24を介してモニタ20に表示する。これにより、分布の時間変化の様子を具体的に目で見て確認できる。
【0073】
他方、下向き姿勢の場合(S41)、制御装置12は、平面表示モードになり、先ず、現在位置と現在方位に従い、表示に必要な気象データを記憶装置30から読み出し、グラフィック化装置34に供給する(S46)。このとき、ユーザは表示の縮尺を指定できるようにしてもよい。
【0074】
グラフィック化装置34は、供給される気象データを現在位置と現在方位、更には表示縮尺に従い、水平面内での分布状況を示すグラフィック画像データを生成する(S47)。生成されたグラフィック画像データはVRAM24の静止画レイヤ24bに書き込まれる。
【0075】
平面表示モードでも、先に説明したように、制御装置12は補助情報をキャラクタジェネレータ38に出力して、キャラクタジェネレータ38に対応する画像データを生成させて、VRAM24のテキストレイヤ24cに書き込ませる(S48)。
【0076】
モニタ20は、一定周期でVRAM24の静止画レイヤ24b及びテキストレイヤ24cに書き込まれている画像データを合成して表示する(S49)。このとき、VRAM24の動画レイヤ24aのカメラ画像をも合成表示しても良い。カメラ画像が邪魔になる場合には、カメラ画像を隠蔽するサイズで気象データのグラフィック画像を表示すれば良い。
【0077】
図12は、平面表示モードの表示例を示す。携帯情報端末10を中心に周囲の最大半径R以内の気象データの分布状況92,94が、携帯情報端末10からの距離を示す円と共に、モニタ20の画面上に表示される。また、カメラ14の撮影視野角の範囲を扇96として他部分と識別できるように表示する。これにより、ユーザは、カメラ14をその場で上向きにしたときにどの部分の気象データが合成表示されるかを推測できるようになる。この平面表示モードでも、
図9に示す凡例スケール80及びテキスト情報82、
図10に示す吹き出し84のような補助情報を同時に表示しても良い。更には、
図11に示すスライド式時間操作バー88及びスライド式高度操作バー90のような操作手段を表示して、時間や高度を選択できるようにしてもよい。
【0078】
図13は、降雨分布を表示する場合で、現在地で降雨が開始するまでの時間と方向を表示する処理の制御装置12のフローチャートを示す。現在時刻(実際には、現在時刻の直前のレーダ計測値)は、
図3に示すシーケンスにより取得済みであるとする。また、気象データサーバ50は、降水強度の実況分布データのみならず、気象予報による予測強度分布データをも保持し、携帯情報端末10からの要求に応じて、要求された時刻及び取得範囲の実況値及び予測値を要求元の携帯情報端末10に送信する。もちろん、先に説明したように、何れの時刻の取得範囲の気象データでも未取得のデータについて、気象データサーバ50に送信を要求する。
【0079】
制御装置12は、取得時刻を現在の時刻から次の時刻に進める(S51)。取得時刻が、現在時刻に対して設定時間(例えば、1時間とか2時間とかのユーザが設定する時間)以上離れた場合には(S52)、設定時間内に降雨にならないことを意味するので、この処理を終了する。
【0080】
取得時刻が現在時刻から設定時間未満の場合(S52)、制御装置12は、気象データサーバ50に取得時刻の取得範囲内の予測データを要求する(S53)。気象データサーバ50は、
図3に示すシーケンスと同様に、取得時刻の取得範囲内の予測データ(予測降水量)を抽出し、降水の移動方向と共に携帯情報端末10に送信する。予測値がそもそも存在しない場合、気象データサーバ50は、予測データ無しを携帯情報端末10に送信し(S54)、携帯情報端末10は、
図13に示す処理を終了する。
【0081】
携帯情報端末10は、気象データサーバ50からの予測データを記憶装置30に記憶する(S55)。
【0082】
制御装置12は、以上の処理(S51〜S55)を、直上のメッシュ、即ち現在地を含むメッシュで降雨が予測されるまで(S56)、繰り返す。
【0083】
直上のメッシュが降雨を示すと(S56)、制御装置12は、取得時刻から現在時刻を減算して降雨開始までの時間を算出する(S57)。取得時刻が降雨開始の時刻に相当するので、現在時刻と取得時刻の差が降雨開始までの時間ということになる。
【0084】
制御装置12は、現在時刻から取得時刻の間の気象データに付加される移動方向データを参照して、取得時刻における降雨メッシュに対応するメッシュ(降雨対応メッシュという。)が現在時刻においてどこに位置するかを決定する(S58)。例えば、取得時刻における降雨メッシュの、直前の時刻における降雨対応メッシュを取得時刻の降雨メッシュに付加される移動方向データにより決定し、これを現在時刻に到るまで逐次的に繰り返すことで、現在時刻での降雨対応メッシュを決定する。
【0085】
降雨対応メッシュが現在の撮影視野範囲内に入る場合(S59)、制御装置12は、降雨対応メッシュ(又はその範囲)を示す点滅画像を生成して、カメラ映像及び気象データの分布状況を示すグラフィック画像に合成表示する(S60)。すなわち、降雨開始時刻の直上に来るメッシュの位置を点滅画像でユーザに知らせる。
図14は、この表示例を示す。
図14では、降雨対応メッシュ102を水平垂直のハッチング(実際にはメッシュ102全体で点滅する)で図示しており、降雨対応メッシュ102を指し示す形態の吹き出し104で、ステップS57で算出した降雨開始までの時間を表示している。
【0086】
他方、降雨対応メッシュが現在の撮影視野範囲内に入らない場合(S59)、制御装置12は、降雨対応メッシュの方向を示す矢印画像を生成して、カメラ映像及び気象データの分布状況を示すグラフィック画像に合成表示する(S61)。
図15は、この表示例を示す。
図15では、画面中央に、ステップS57で算出した降雨開始までの時間をテキスト106として表示し、降雨対応メッシュの方向を示す矢印画像108をテキスト表示106に隣接して表示する。
【0087】
図13、
図14及び
図15を参照して説明した表示態様を採用することで、本実施例では、近づきつつある降雨域の存在と方向及び到達時間(降雨開始時間)を分かりやすくユーザに知らせることができるようになる。
【0088】
本実施例では、携帯情報端末10の位置を決定できる限り、屋内で天井にカメラ14を向けることで、気象データの分布状況が天井の映像に重畳して表示される。すなわち、さながら屋外にいるのと同様に気象状況を視覚的に確認できることになる。
【0089】
上記実施例では、通信データ量と携帯情報端末10での記憶データ量の節減を目的として、気象データサーバ50が、要求された気象データの送信前に階調度を低減したが、気象データサーバ50の汎用性を維持するには、携帯情報端末10の側で階調度変換をするのが好ましい。この観点では、階調低減機能62に相当する手段を携帯情報端末10に配置しても良い。
【0090】
また、携帯情報端末10で時間変化や空間的な変化をある程度以上の精度で演算する必要がある場合には、携帯情報端末10は、そのような目的を満たせる程に精度の良い気象データを記憶装置30に保持する必要がある。この場合、そのような精度を必要とする演算を終えた結果に対して制御装置12が階調低減を適用することで、表示のために使用されるデータ量を削減できる。
【0091】
降水量気象データに適用した実施例を説明したが、本発明は、空間に分布し時間的にその分布状況が変動するデータ一般に適用可能である。そのような分布データには、花粉、黄砂及びPM2.5等の飛散状況を示すデータ、紫外線強度を示すデータ等がある。気象データとしては降雨量以外に、雲、気温及び気圧の分布状況にも適用可能であり、例えば、GPV(Grid Point Value)気象データが知られている。
【0092】
VRAM24とその動画レイヤ24a、静止画レイヤ24b及びテキストレイヤ24cは、カメラ映像に対する気象データ及び補助情報の合成機能を模式的に示すものであり、これらの構成の代わりにこれらのデータを適宜に合成する合成手段を用いても良いことは明らかである。
【0093】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。