【実施例1】
【0018】
図1に示す本例の光学異方性パラメータ測定装置1は、ステージ2に置かれた試料3の測定対象面4上の測定点Mに対して照射した入射光とその反射光の偏光状態の変化に基づいてその測定点Mにおける複素振幅反射率比Rpp≡tanΨpp・exp(iΔpp)、Rps≡tanΨps・exp(iΔps)、Rsp≡tanΨsp・exp(iΔsp)で定義されるΨpp、Ψps、Ψsp及びΔpp、Δps、Δspを測定するものである。
【0019】
この光学異方性パラメータ測定装置1は、レーザなどの光源5から測定対象面4上の測定点Mへ所定の測定方位から偏光子6を介して一定の入射角度で偏光を入射させ、測定点Mからの反射光に含まれる特定の偏光成分の光強度を検光子8を介して測定する受光素子9とを備えた光学系10と、前記ステージ2を測定点Mに立てた法線Vの周りに相対回転させて測定対象面4の測定方位を変更する測定方位調整装置11と、受光素子9で測定された光強度データに基づき、光学異方性パラメータを算出する演算装置12を備えている。
【0020】
測定方位調整装置11は、ステージ2又は光学系10のいずれか一方を測定点Mに立てた法線Vの周りに回転駆動することにより、測定方位を調整する。
例えば、ステージ2が回動可能に構成されている場合は、ステージ2を回転することにより測定方位が調整され、光学系10が回動可能に構成されている場合は、光学系10を前記法線Vの周りに回転させることにより調整される。
このとき理想的には、ステージ2又は光学系10を相対回転させる回転軸と法線Vが一致していることが望ましいが、測定点Mからの反射光を受光素子9の有効範囲内で受光できる程度の誤差であれば、法線Vと回転軸に多少のずれや傾きがあっても測定にはほとんど影響しない。
【0021】
なお、本明細書では、偏光についてP偏光というときは、測定対象面4を基準としてこれに直交し且つ入射光線を含む面内方向(P方向)で振動する直線偏光をいい、S偏光はこれに直交する面内方向(S方向)で振動する直線偏光をいう。
また、P±δ偏光というときは、P方向から角度±δだけ傾斜したP±δ方向の面内で振動する直線偏光をいい、S±δ偏光というときは、S方向から角度±δだけ傾斜したS±δ方向の面内で振動する直線偏光をいう。
【0022】
偏光子6は、光源5から照射されたレーザ光を、P偏光、P+δ偏光、P−δ偏光及びS偏光に偏光化し得るように図示しないモータ制御によりP方向、P+δ方向、P−δ方向及びS方向に位置決めされるように回動可能に配されている。
検光子8は、反射光のうち、S偏光成分及びP偏光成分を透過し得るように図示しないモータ制御によりS方向及びP方向に位置決めされるように回動可能に配されている。
また、測定点Mと検光子8との間には、波長板13が図示しないモータ制御により回転可能に配されている。
【0023】
図2は、演算装置12における測定処理手順を示すフローチャートである。
測定が開始されると、まず、ステップSTP1で測定方位調整装置11により測定方位φ=0となるように測定対象面4を位置決めする。
【0024】
ステップSTP2では、光源5からの光をP偏光に偏光化させるように偏光子6をP方向にセットし、反射光に含まれるS偏光成分の光強度を検出し得るように検光子8をS方向にセットした直交ニコルの状態で、波長板13を所定角度間隔(例えば3°間隔)で半回転又は一回転させ、その回転角θに対する反射光の光強度A11(θ)を受光素子9で測定し、そのデータを所定の記憶領域に記憶させる。
【0025】
ステップSTP3では、光源5からの光をP+δ(例えばδ=5°、0<δ<π/2)偏光に偏光化させるように偏光子6をP+δ方向にセットし、反射光に含まれるS偏光成分の光強度を検出し得るように検光子8をS方向にセットした不完全直交ニコルの状態で、波長板13を半回転又は一回転させる間に所定角度間隔(例えば3°間隔)の回転角θごとに測定された反射光の光強度B11(θ)を測定し、そのデータを所定の記憶領域に記憶させる。
なお、光強度B11(θ)は、偏光子6をS+δ方向にセットし、検光子8をP方向にセットした不完全直交ニコルの状態で測定しても同様である。
【0026】
ステップSTP4では、光源5からの光をP−δ偏光に偏光化させるように偏光子6をP−δ方向にセットし、反射光に含まれるS偏光成分の光強度を検出し得るように検光子8をS方向にセットした不完全直交ニコルの状態で、波長板13を半回転又は一回転させる間に所定角度間隔(例えば3°間隔)の回転角θごとに測定された反射光の光強度B12(θ)を測定し、そのデータを所定の記憶領域に記憶させる。
なお、光強度B12(θ)は、偏光子6をS−δ方向にセットし、検光子8をP方向にセットした不完全直交ニコルの状態で測定しても同様である。
【0027】
ステップSTP5では、光源5からの光をS偏光に偏光化させるように偏光子6をS方向にセットし、反射光に含まれるP偏光成分の光強度を検出し得るように検光子8をP方向にセットした直交ニコルの状態で、波長板13を半回転又は一回転させる間に所定角度間隔(例えば3°間隔)の回転角θごとに測定された反射光の光強度C11(θ)を測定し、そのデータを所定の記憶領域に記憶させる。
【0028】
そして、ステップSTP6では、ステージ2が一回転されたかを判断する。
測定方位φ=360°(あるいは355°)でない場合は一回転されていないと判断してステップSTP7に移行し、測定方位φ=φ+5とセットしてステージ2を+5°回転させて、ステップSTP2に戻り、ステージ2が一回転されるまで測定が繰り返される。
【0029】
図3は、このように測定された6種類の光強度に基づいて、光学異方性パラメータを算出する演算装置12の処理手順である。
例えば、測定方位φ=0°における光強度の測定が終了した時点で、演算処理が実行開始され、ステップSTP21でφ=0°とし、ステップSTP22で方位角φの光強度A11(θ)、B11(θ)、B12(θ)、C11(θ)を読み出し、ステップSTP23で、以下の式に基づき、和と差を算出して所定の記憶領域に記憶させる。
T
A(θ)=A11(θ)+A11(−θ)
D
A(θ)=A11(θ)−A11(−θ)
T
B(θ)=B11(θ)+B12(−θ)
T
C(θ)=C11(θ)+C11(−θ)
D
C(θ)=C11(θ)−C11(−θ)
【0030】
ここで、θの符号は回転方向を示し、回転開始位置から正方向(右回転)の角度をプラスとしたときに、回転終了位置から逆方向(左回転)の角度をマイナスとして表す。
例えば、波長板13を半回転(180°)させる場合、T
A(θ)は、
T
A(0)=A11(0)+A11(−0)=A11(0)+A11(180)
T
A(30)=A11(30)+A11(−30)=A11(30)+A11(150)
T
A(60)=A11(60)+A11(−60)=A11(60)+A11(120)
で算出され、波長板13を一回転(360°)させる場合は、
T
A(0)=A11(0)+A11(−0)=A11(0)+A11(360)
T
A(30)=A11(30)+A11(−30)=A11(30)+A11(330)
T
A(60)=A11(60)+A11(−60)=A11(60)+A11(300)
で算出される。他の和分データ及び差分データも同様である。
なお、回転角−θにおける光強度A11(−θ)及び光強度C11(−θ)は、波長板13を逆転することにより実測してもよい。
【0031】
ここで、和Tx(θ)と差Dx(θ)は、一般に、
式1:Tx(θ)=I
0[T1+T2*sin(2θ)+T3*sin(4θ)+T4*cos(4θ)]
式2:Dx(θ)=I
0[D1+D2*sin(2θ)+D3*sin(4θ)+D4*cos(4θ)]
で表される。
そこで、ステップSTP24で、算出された和Tx(θ)及び差Dx(θ)の各データに基づいて、各係数D1〜D4及びT1〜T4をそれぞれ決定する。この場合、和Tx(θ)及び差Dx(θ)のグラフが、実測された光強度に基づいて算出された和及び差のデータと一致するようにフーリエフィッティングをかけることにより行う。
【0032】
ステップSTP25では、以下の式3及び式4により、測定方位φにおけるΨpsとΔpsを算出する。
Ψps及びΔpsは、Tc(θ)及びDc(θ)の係数T4、D2、D4を用いて、以下のように表される。
式3:tan(Δps)=D2/D4
式4:4tan(Ψps)sin(Δps) /(1-tan
2Ψps)=D2/T4
ここで、未知数は、ΨpsとΔpsのみであるから、この式3及び式4により、測定方位φにおける複素振幅反射率比のΨps及びΔpsを算出できる。
【0033】
次いで、ステップSTP26で、以下の式5〜8により、測定方位φにおける複素振幅反射率比のΨpp及びΨspと、Δpp及びΔspを算出する。
まず、T
B(θ)の係数T1〜T4を用いて、式5及び6が成り立つ。
式5:[tanΨpp・sinΔpp+tanΨps・tanΨsp・sin(Δps−Δsp)]/[tanΨpp・cosΔpp
+tanΨps・tanΨsp・cos(Δps−Δsp)]=T2/2T3
式6:(tan
2Ψpp+tan
2Ψps・tan
2δ+3tan
2Ψsp+3tan
2δ)/(−tan
2Ψpp−tan
2Ψps
・tan
2δ+tan
2Ψsp+tan
2P)=T1/T4
また、T
A(θ)、D
A(θ)の係数D2、D4、T4を用いて、式7及び8が成り立つ。
式7:tan(Δpp−Δsp)=D2/D4
式8:4[tanΨsp/tanΨpp]sin(Δpp−Δsp)/(1−tan
2Ψsp/tan
2Ψpp)=D2/T4
式5〜8中、Ψps及びΔpsは式3及び4で算出されて既知であるから、未知数は、Ψpp、Ψspと、Δpp、Δspの四つとなり、これら各式5〜8により、測定方位φにおける複素振幅反射率比のΨpp及びΨspと、Δpp及びΔspを算出できる。
【0034】
なお、式5の分子、分母の第2項は、サファイア基板のように異方性が小さい場合、tanΨpp >> tanΨps・tanΨspより第1項に比べて影響は十分小さい。これは、Δppを精度良く測定することができることを意味する。
同様に式6の分子、分母の第2項、第3項は、サファイア基板のように異方性が小さい場合、tan
2Ψpp >> tan
2Ψps,tan
2Ψspより第1項に比べて影響は十分小さい。これは、Ψppを精度良く測定することができることを意味する。
【0035】
次いで、ステップSTP27に移行し、測定方位φ=360°(あるいは355°)であるか否かが判断され、NOの場合はステップSTP28で測定方位φ=φ+5と置き換えてステップSTP22に戻り、YESの場合はステップSTP29に移行する。
ステップSTP29では、算出されたΨxy及びΔxyに基づいて、必要に応じて光学異方性に依存する物理量を算出し、処理を終了する。
【0036】
次いで、本発明方法を用いて、サファイア薄膜を試料としてその表面の複素振幅反射率比のΨpp、Ψsp、Ψps及びΔpp、Δsp、Δpsを算出する場合について説明する。
まず、測定方位調整装置11により測定方位φ=0となるようにステージ2を位置決めし、その測定方位で、波長板13の回転角に対応した各光強度A11、B11、B12、C11を測定する。
【0037】
光強度A11は、偏光子6をP方向にセットし、検光子8をS方向にセットした状態で、波長板13を回転しながら測定する。
光強度B11は、偏光子6をP+δ(又はS+δ)方向にセットし、検光子8をS(又はP)方向にセットした状態で、波長板13を回転しながら測定し、光強度B12は、偏光子6をP−δ方向にセットし、検光子8をS方向にセットした状態で、波長板13を回転しながら測定する。
光強度C11は、偏光子6をS方向にセットし、検光子8をP方向にセットした状態で、波長板13を回転しながら測定する。
【0038】
なお、
図1の表中、偏光子及び検光子の向きを( )内に示すようにして、光強度B11は、偏光子6をS+δ方向にセットし、検光子8をP方向にセットした不完全直交ニコルの状態で測定し、光強度B12は、偏光子6をS−δ方向にセットし、検光子8をP方向にセットした不完全直交ニコルの状態で測定しても同様である。
【0039】
一方、各測定方位φについて測定が終了するたびに、測定されたデータに基づいて光学異方性パラメータを上述した手順で算出する。
すなわち、光強度C11(θ)及びC11(−θ)の和及び差に基づいてその測定方位におけるΨps及びΔpsを算出し、光強度A11(θ)及びA11(−θ)の和及び差と、光強度B11(θ)及びB12(−θ)の和に基づいてその測定方位におけるΨpp、Ψsp及びΔpp、Δspを算出する。
このようにして、各測定方位φ=0〜360°(あるいは355°)に対するΨxy及びΔxyを算出することができる。
【0040】
図4〜9が測定方位φ=0°における測定結果/算出結果を示すグラフである。
図4はP偏光を照射しS偏光の強度を測定したときのグラフで、
図4(a)が波長板13の回転角θに対する光強度A11(θ)、
図4(b)はA11(θ)とA11(−θ)の和T
A(θ)、
図4(c)はその差D
A(θ)である。
そして、算出された和T
A(θ)及び差D
A(θ)のデータを式1及び式2でフーリエフィッティングし、その係数T4、D2、D4を求める。
【0041】
図5はP+δ偏光及びP−δ偏光を照射しS偏光の強度を測定したときのグラフで、
図5(a)がP+δ偏光を照射し波長板13の回転角θに対する光強度B11(θ)、
図5(b)がP−δ偏光を照射し波長板13を逆方向に回転させたときの回転角−θに対する光強度B12(−θ)、
図5(c)はこれらの和T(B1)である。
そして、算出された和T
B(θ)のデータを式1でフーリエフィッティングし、その係数T1〜T4を求める。
【0042】
図6はS偏光を照射しP偏光の強度を測定したときのグラフで、
図6(a)が波長板13を正方向に回転させたときの回転角θに対する光強度C11(θ)、
図6(b)がC11(θ)とC11(−θ)の和T
C(θ)、
図6(d)はその差D
C(θ)である。
そして、算出された和T
C(θ)及び差D
C(θ)のデータを式1及び式2でフーリエフィッティングし、その係数T4、D2、D4を求める。
【0043】
このようにして求められた各係数と、式3〜式8により、複素振幅反射率比Rpp、Rps、Rspを特定するΨpp、Ψps、Ψsp及びΔpp、Δps、Δspが測定方位ごとに算出される。
【0044】
図7は、サファイアのm面について、0〜360°の各測定方位φについて算出された複素振幅反射率比のΨxy及びΔxyのグラフである。
図7(a)及び(b)が測定方位φに対するΨpp及びΔpp、(c)及び(d)が測定方位φに対するΨsp及びΔsp、(e)及び(f)が測定方位φに対するΨps及びΔpsであり、いずれも、○印が算出された値である。
【0045】
また、
図8は、サファイアのr面について、0〜360°の各測定方位φについて算出された複素振幅反射率比のΨxy及びΔxyのグラフである。
図8(a)及び(b)が測定方位φに対するΨpp及びΔpp、(c)及び(d)が測定方位φに対するΨsp及びΔsp、(e)及び(f)が測定方位φに対するΨps及びΔpsであり、いずれも、○印が算出された値である。
【0046】
このようにして算出された複素振幅反射率比のΨpp、Ψsp、Ψps及びΔpp、Δsp、Δpsの各値は、「配向方位」「光学軸の傾斜角」「常光屈折率」「異常光屈折率」の四つの光学異方性パラメータの関数として表すことができるので、測定されたΨpp、Ψps、Ψsp及びΔpp、Δps、Δspの六つの値に基づき、コンピュータを用いてフィッティングを行う従来公知の手法により、例えば非線形最小二乗法(修正マーカット法)により最も測定値に近い値を選択すれば、前記4つの光学異方性パラメータを高精度で算出することができる。
また、薄膜の場合は、「膜厚」をパラメータとする従来公知の関数を立てることもできるので、コンピュータを用いてフィッティングを行う従来公知の手法により、同様にその値を測定することができる。
【0047】
測定精度を確認するために、m面及びr面に対して平行にカッティングされたサファイアを用いて、本発明方法でΨpp、Ψsp、Ψps及びΔpp、Δsp、Δpsに基づき、常光屈折率no、異常光屈折率ne、m面及びr面の傾斜角度について、これらの値を算出した。
既知のデータとして、サファイアの常光屈折率no=1.772、異常光屈折率ne=1.764、m面の傾斜角度90°、r面の傾斜角度61.2°であった。
本発明による測定値は、m面については、
常光屈折率no=1.772
異常光屈折率ne=1.764
傾斜角度89.6°
であり、r面については、
常光屈折率no=1.774
異常光屈折率ne=1.765
r面の傾斜角度61.0°
であった。
屈折率は誤差2/1000以下の精度で測定することができ、光学軸の傾斜角度は誤差5/1000以下の精度で測定することができた。
【実施例2】
【0048】
図9は、本発明の他の実施形態を示す説明図である。なお、
図1と重複する部分については同一符号を付して詳細説明を省略する。
【0049】
本例の光学異方性パラメータ測定装置21は、光学系10の波長板13が偏光板6と測定点Mの間に配されている。
すなわち、偏光子6は、光源5から照射されたレーザ光を、P偏光及びS偏光に偏光化し得るように図示しないモータ制御によりP方向及びS方向に位置決め可能に配されており、偏光子6と測定点Mとの間には、波長板13が図示しないモータ制御により回転可能に配されている。
検光子8は、反射光のうち、S偏光成分、S+δ偏光成分、S−δ偏光成分及びP偏光成分を透過し得るように図示しないモータ制御によりS方向、S+δ方向、S−δ方向及びP方向に位置決め可能に配されている。
【0050】
演算装置12における測定処理手順を、
図2に示すフローチャートを参照して説明する。
測定が開始されると、ステップSTP1で測定方位φ=0となるようにステージ2を位置決めし、ステップSTP2〜7で光強度A21、B21、B22、C21を測定する。
【0051】
光強度A21は、偏光子6をP方向にセットし、検光子8をS方向にセットした直交ニコルの状態で、波長板13を正方向に回転しながら測定して、測定結果を所定の記憶領域に記憶させる(ステップSTP2)。
【0052】
光強度B21は、偏光子6をP方向にセットし、検光子8をS+δ方向にセットした状態で、波長板13を正方向に回転しながら測定して、測定結果を所定の記憶領域に記憶させ(ステップSTP3)、光強度B22は、検光子8をS+δ方向にセットした状態で、波長板13を逆方向に回転しながら測定して、所定の記憶領域に記憶させる(ステップSTP4)。
なお、
図9の表中、偏光子及び検光子の向きを( )内に示すようにして、光強度B21(θ)は、偏光子6をS方向にセットし、検光子8をP+δ方向にセットした不完全直交ニコルの状態で測定し、光強度B22(θ)は、偏光子6をS方向にセットし、検光子8をP−δ方向にセットした不完全直交ニコルの状態で測定しても同様である。
【0053】
光強度C21は、偏光子6をS方向にセットし、検光子8をP方向にセットした直交ニコルの状態で、波長板13を正方向に回転しながら測定して、測定結果を所定の記憶領域に記憶させる(ステップSTP5)。
そして、ステージ2が一回転するまで、測定を繰り返す(ステップSTP6〜7)。
なお本例も、実施例と同様、上記各ステップSTP2〜7において、波長板13は、正方向及び逆方向に180°又は360°回転され、各光強度は波長板13が例えば3°回転するごとに測定される。
【0054】
このように測定された6種類の光強度に基づいて、演算装置12で各測定方位φにおける光学異方性パラメータを算出する手順を、
図3を読み替えて説明する。
この演算処理は、例えば、測定方位φ=0°における光強度の測定が終了した時点で実行開始され、ステップSTP21でφ=0°とし、ステップSTP22で方位角φの光強度A21、B21、B22、C21を読み出し、ステップSTP23で光強度の和及び差を以下のように算出する。
T
A(θ)=A21(θ)+A21(−θ)
D
A(θ)=A21(θ)−A21(−θ)
T
B(θ)=B21(θ)+B22(−θ)
T
C(θ)=C21(θ)+C21(−θ)
D
C(θ)=C21(θ)−C21(−θ)
【0055】
次いで、ステップSTP24で、算出された和Tx(θ)及び差Dx(θ)の各データに基づいて、実施例1と同様、式1及び式2の各係数D1〜D4及びT1〜T4をそれぞれ決定する。
【0056】
ステップSTP25では、式9及び式10により、測定方位φにおける複素反射比率比のΨspとΔspを算出する。
ΨspとΔspは、T
A(θ)及びD
A(θ)の係数T4、D2、D4を用いて、以下のように表される。
式 9:tan(Δsp)=D2/D4
式10:4tan(Ψsp)sin(Δsp)/(1−tan
2Ψsp)=D2/T4
ここで、未知数は、ΨspとΔspのみであるから、この式9及び10により、測定方位φにおける複素振幅反射率比のΨspとΔspを算出できる。
【0057】
次いで、ステップSTP26で、式11〜14により、測定方位φにおける複素振幅反射率比のΨpp及びΨspと、Δpp及びΔspを算出する。
まず、T
B(θ)の係数T1〜T4を用いて、式5及び6が成り立つ。
式11:[tanΨpp・sinΔpp+tanΨps・tanΨsp・sin(Δsp−Δps)]/[(tanΨpp・cosΔpp
+tanΨsp・tanΨps・cos(Δsp−Δps)]=T2/2T3
式12:(tan
2Ψpp+tan
2Ψps・tan
2δ+3tan
2Ψsp+3tan
2δ)/(−tan
2Ψpp−tan
2Ψps
・tan
2δ+tan
2Ψsp+tan
2δ)=T1/T4
【0058】
また、T
C(θ)及びD
C(θ)の係数T4、D2、D4を用いて、式13及び14が成り立つ。
式13:tan(Δpp−Δps)=D2/D4
式14:4[tanΨps/tanΨpp]sin(Δpp−Δps)/(1−tan
2Ψps/tan
2Ψpp)=D2/T4
式11〜14中、Ψsp及びΔspは式3及び4で算出されて既知であるから、未知数は、Ψpp、Ψpsと、Δpp、Δpsの四つとなり、これら各式11〜14により、測定方位φにおける複素振幅反射率比のΨpp及びΨpsと、Δpp及びΔpsを算出できる。
【0059】
次いで、ステップSTP27に移行し、測定方位φ=360°(あるいは355°)であるか否かが判断され、NOの場合はステップSTP28で測定方位φ=φ+5と置き換えてステップSTP22に戻り、YESの場合はステップSTP29に移行する。
ステップSTP29では、算出されたΨxy及びΔxyに基づいて、必要に応じて光学異方性に依存する物理量を算出し、処理を終了する。
【0060】
そして、実施例1と同様、各測定方位φ=0〜360°(あるいは355°)についてΨxy及びΔxyを算出し(ステップSTP28〜29)、算出されたΨxy及びΔxyに基づいて、必要に応じて光学異方性に依存する物理量を算出し(ステップSTP30)、処理を終了する。
【0061】
本実施例によっても、実施例1と同程度の精度で、「常光屈折率」「異常光屈折率」「傾斜角度」などの物理量を算出することができた。