(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光電変換素子、前記浮遊拡散層、前記浮遊拡散層リセットトランジスタ、前記光電変換素子トランジスタおよび前記転送トランジスタをそれぞれが備える複数の画素からなる画素アレイ部を具備し、
前記画素アレイ部は、複数の領域に区分され、
前記変換部は、前記変換したデジタル信号を前記領域ごとに出力する
請求項1記載の撮像素子。
前記光電変換素子、前記浮遊拡散層、前記浮遊拡散層リセットトランジスタ、前記変換部、前記光電変換素子トランジスタおよび前記転送トランジスタをそれぞれが備える複数の画素が配置された撮像素子を複数具備し、
前記検出部は、前記撮像素子ごとに前記放射線が入射されたか否かを検出する
請求項6記載の放射線検出装置。
前記転送トランジスタは、前記放射線の検出頻度が所定頻度より高い場合には前記変換処理に要する時間より短い露光時間が前記所定のタイミングから経過したときに前記転送を行い、前記所定頻度が前記検出頻度より高い場合には少なくとも前記変換処理に要する時間が前記所定のタイミングから経過したときに前記転送を行う
請求項8記載の放射線検出装置。
光を電荷に変換して蓄積する光電変換素子から転送された前記電荷の量に応じた電圧を生成する浮遊拡散層において生成された前記電圧を浮遊拡散層リセットトランジスタが初期化する浮遊拡散層リセット手順と、
変換部が、前記電圧をデジタル信号に変換する変換処理を行う変換手順と、
光電変換素子リセットトランジスタが、前記電圧が初期化された後の所定のタイミングにおいて前記光電変換素子に蓄積された前記電荷の量を初期化する光電変換素子リセット手順と、
転送トランジスタが、前記変換処理に要する時間であるサンプリング期間より短い露光時間が前記所定のタイミングから経過したときに前記光電変換素子から前記浮遊拡散層への前記転送を行う転送手順と
を具備する撮像素子の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(サンプリング期間より短い露光時間により露光する例)
2.第2の実施の形態(サンプリング期間より短い露光時間により全区画で一斉に露光する例)
3.第3の実施の形態(積層された基板においてサンプリング期間より短い露光時間により露光する例)
【0029】
<1.第1の実施の形態>
[半導体光検出装置の構成例]
図1は、第1の実施の形態における放射線検出装置100の一構成例を示すブロック図である。この放射線検出装置100は、コリメータ110、シンチレータ120、光ガイド130、撮像素子200およびデータ処理部140を有する。
【0030】
コリメータ110は、撮像素子200に対して垂直に入射された放射線のみを通過させるものである。このコリメータ110は、例えば、鉛を用いて形成される。コリメータ110を通過した放射線は、シンチレータ120に入射される。
【0031】
シンチレータ120は、コリメータ110を通過した放射線を受けてシンチレーション光を発するものである。光ガイド130は、シンチレーション光を集光して撮像素子200に導くものである。また、この光ガイド130は光均一化機能を内蔵しており、撮像素子200の受光面にはシンチレーション光が略均一化されて照射される。
【0032】
撮像素子200は、微弱なシンチレーション光を検出するものである。この撮像素子200は複数の画素を備え、画素ごとに、シンチレーション光の光強度を測定する。撮像素子200は、光強度の測定結果をデジタルデータとして信号線149を介してデータ処理部140に供給する。
【0033】
データ処理部140は、各光強度結果をもとに放射線のエネルギー弁別を行うとともに、有意なデータの発生回数を計測し、放射線のフォトンカウンティングを実施するものである。なお、データ処理部140は、特許請求の範囲に記載の放射線検出部の一例である。
【0034】
[撮像素子の構成例]
図2は、第1の実施の形態における撮像素子200の一構成例を示すブロック図である。この撮像素子200は、駆動回路210と、画素アレイ部220と、検出回路240および260と、レジスタ285および286と、出力回路287とを備える。
【0035】
画素アレイ部220は、2次元格子状に配列された複数の画素230を備える。画素アレイ部220において、例えば、8行×32列の画素230が配列される。ここで、行は画素アレイ部220においてある一方向に複数の画素230が配列されたものであり、列は画素アレイ部220において行と直交する方向に複数の画素230が配列されたものである。これらの画素230の形状は長方形であり、その行方向のサイズと列方向のサイズとの比は約1:4である。したがって、これらの長方形の画素230を8行×32列配列した画素アレイ部220の形状は、略正方形となる。
【0036】
また、画素アレイ部220は、4区画に分割されている。1つ目の区画は、1行目および5行目の2行からなる区画であり、2つ目の区画は、2行目および6行目の2行からなる区画である。3つ目の区画は、3行目および7行目の行からなり、4つ目の区画は4行目および8行目の行からなる。各区画内の2行においては、駆動回路210により、同時により露光時間が制御され、検出回路240および260により、同時にデジタルデータの読出しが行われる。つまり、各区画は、露光制御および読出しの単位として用いられる。
【0037】
ここで、「露光」とは機械的にシャッターを開閉して撮像素子200に光を導くことではなく、駆動回路210が画素230を電子的に制御して、光から変換した電荷を蓄積させることを意味する。このような露光は、電子シャッターを用いた露光と呼ばれる。電子シャッターを用いる露光の制御においては、光電変換素子に蓄積された電荷の量の初期化により露光が開始し、光電変換素子から浮遊拡散層への電荷の転送により露光が終了する。
【0038】
なお、画素アレイ部220を2行単位で4つの区画に分割しているが、この分割方法に限定されない。例えば、2行以外の数の行を1つの区画として分割してもよいし、所定数の列を1つの区画として分割してもよい。
【0039】
画素230は、光を電荷に変換して、その電荷の量に応じた電圧を生成するものである。この画素230には、行方向および列方向に対して垂直な方向に沿ってシンチレーション光が入射光として入射される。画素230は、その入射光を電荷に変換(光電変換)して、その電荷の量に応じた電圧を生成する。
【0040】
また、画素230のそれぞれは、信号線217、218および219を介して駆動回路210に接続される。ここで、検出回路240および260は、列ごとに設けられる。1乃至4行目の行において、各列の画素230は、その列に対応する検出回路240に垂直信号線238を介して接続される。一方、5乃至8行目の行において、各列の画素230は、その列に対応する検出回路260に垂直信号線239を介して接続される。
【0041】
駆動回路210は、画素アレイ部220における4区画を順に選択するものである。この駆動回路210には、撮像素子200の外部からの制御信号が入力される。この制御信号は、ユーザの操作に従って生成される信号であり、露光時間を設定する設定信号や、フォトンカウンティングの開始および終了を指示する指示信号などを含む。駆動回路210は、フォトンカウンティングの開始が指示されると、4区画を順に選択して、選択した区画内の画素230を同時に露光させ、露光量に応じた電圧を出力させる。
【0042】
検出回路240は、画素230に蓄積された電荷量に応じた電圧を検出するものである。この検出回路240は、デジタルCDS(Correlated Double Sampling)回路を使用して、露光量に応じた電圧をデジタル信号に変換(言い換えれば、サンプリング)する。そして、検出回路240は、サンプリングした電圧に基づいて、画素230への光子の入射の有無を判定する。検出回路240は、判定結果をレジスタ285に保持させる。
【0043】
レジスタ285および286は、画素230への光子の入射についての判定結果を保持するものである。レジスタ285は、検出回路240ごとに配置され、それらの検出結果を保持する。また、レジスタ286は、検出回路260ごとに配置され、それらの検出結果を保持する。
【0044】
出力回路287は、レジスタ285および286に保持された判定結果をデジタルデータとして、順に出力するものである。
【0045】
[画素の構成例]
図3は、第1の実施の形態における画素230の一構成例を示す回路図である。この画素230は、PDリセットトランジスタ231と、ノード232および235と、フォトダイオード233と、転送トランジスタ234、FDリセットトランジスタ236と、アンプトランジスタ237とを備える。転送トランジスタ234、FDリセットトランジスタ236およびアンプトランジスタ237として、例えば、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタが用いられる。
【0046】
PDリセットトランジスタ231は、フォトダイオード233をリセットするスイッチング素子である。フォトダイオード233のリセットとは、フォトダイオード233によりノード232に蓄積された電荷の量を初期値にすることである。PDリセットトランジスタのゲートは信号線219に接続され、ドレインはノード232に接続される。なお、PDリセットトランジスタ231は、特許請求の範囲に記載の光電変換素子リセットトランジスタの一例である。
【0047】
ノード232は、光電変換された電荷を蓄積するものである。フォトダイオード233は、シンチレーション光を電荷に変換してノード232に蓄積するものである。埋込み型フォトダイオード、いわゆるHAD(Hole Accumulated Diode)を、フォトダイオード233として用いることが望ましい。なお、ノード232およびフォトダイオード233は、特許請求の範囲に記載の光電変換素子の一例である。
【0048】
転送トランジスタ234は、光電変換された電荷をノード232からノード235へ転送するものである。転送トランジスタ234のゲートは、信号線218に接続され、ソースはノード232に接続され、ドレインはノード235に接続される。
【0049】
ノード235は、転送された電荷を蓄積して蓄積した電荷量に応じた電圧を生成するものである。このノード235は、浮遊拡散層などにより形成される。
【0050】
FDリセットトランジスタ236は、浮遊拡散層をリセットするものである。ここで、浮遊拡散層のリセットとは、ノード235の電荷量を初期値にすることにより、その電荷量に応じた電圧を初期値にすることである。FDリセットトランジスタ236のゲートは、信号線217に接続され、ソースは電源VDDに接続され、ドレインは、ノード235に接続される。なお、FDリセットトランジスタ236は、特許請求の範囲に記載の浮遊拡散層リセットトランジスタの一例である。
【0051】
アンプトランジスタ237は、浮遊拡散層(ノード235)の電圧を増幅して、その増幅された電位に応じた信号を垂直信号線239に出力するためのものである。アンプトランジスタ237のゲートは、ノード235に接続され、ソースは電源VDDに接続され、ドレインは、垂直信号線239に接続される。この構成により、アンプトランジスタ237は、浮遊拡散層の電圧が初期値にリセットされている場合には、その初期値の電圧(以下、「リセットレベル」と称する。)に応じたリセット信号を、垂直信号線239に出力する。また、フォトダイオード233が蓄積した電荷がノード235に転送された場合には、アンプトランジスタ237は、その電荷の量に応じた電圧(以下、「信号レベル」と称する。)の蓄積信号を、垂直信号線239に出力する。
【0052】
ここで、駆動回路210は、転送トランジスタ234をオフ状態にしたまま、PDリセットトランジスタ231をオン状態に制御することにより、フォトダイオード233のリセットを開始する。これにより、ノード232に蓄積された電荷が全て電源VDDに引き抜かれる。そして、駆動回路210は、PDリセットトランジスタ231をオフ状態に制御することにより、フォトダイオード233のリセットを終了する。フォトダイオード233は、リセットにより完全空乏化され、リセット操作完了の直後から、新たな電荷蓄積を開始する。
【0053】
即ち駆動回路210はPDリセットトランジスタ231をオン状態からオフ状態することにより、フォトダイオード233に露光蓄積を開始させる。そして、駆動回路210は、転送トランジスタ234をオン状態に制御し、次いでオフ状態に制御することにより、露光蓄積を終了させる。
【0054】
また、駆動回路210は、転送トランジスタ234をオフ状態にしたまま、FDリセットトランジスタ236をオン状態に制御することにより、浮遊拡散層のリセットを開始する。そして、駆動回路210は、FDリセットトランジスタ236をオフ状態に制御することにより、浮遊拡散層のリセットを終了する。ここで注意すべきは、リセット完了状態における浮遊拡散層の電位は正確な電源電圧にあるのではなく、オフ時のフィードスルーやkTCノイズが含まれることである。さらに垂直信号線239に現れる出力信号には、アンプトランジスタ237のオフセットも含まれる。この出力信号(リセット信号および蓄積信号)は画素230ごとに、さらに浮遊拡散層のリセットのたびに変動するため、各画素の露光操作ごとに、検出回路260によりサンプリングして保存する必要がある。kTCノイズ等を低減した蓄積信号は、このリセット信号と蓄積信号との間の差分から求められる。このように、リセット信号および蓄積信号の差分を検出することにより、kTCノイズ等を低減する手法は、CDS(相間二重サンプリング)と呼ばれる。
【0055】
ところで、画素230以外の画素の中には、FDリセットトランジスタおよび転送トランジスタを両方ともオンにすることによりフォトダイオードに蓄積された電荷の引き抜きを行う構成のものが存在する。しかし、この構成では、電荷の引き抜き後に転送トランジスタをオフした時点でフォトダイオードのリセットが完了し、その時点から露光が開始される。一方、浮遊拡散層のリセットと、電圧の検出とはその後に改めて実施する必要がある。したがって、リセット信号のサンプリング期間中に、露光が継続することになり、蓄積信号の転送および検出は少なくとも、その後となる。このため、FDリセットトランジスタおよび転送トランジスタを両方ともオンにして電荷量の初期化を開始する構成では、露光時間を極端に短縮することが困難となる。
【0056】
[画素の制御例]
図4は、第1の実施の形態における画素230の制御の一例を示すタイミングチャートである。画素が選択されていない初期状態において、FDリセットトランジスタ236およびPDリセットトランジスタ231はオン状態であり、転送トランジスタ234はオフ状態であるものとする。初期状態では、PDリセットトランジスタ231がオン状態であるため、フォトダイオード233の電荷は全て排出されている。また、FDリセットトランジスタ236がオン状態であるため、浮遊拡散層の電位は、ほぼ電源電圧(例えば、3V)に初期化されている。
【0057】
駆動回路210は時刻T1において画素を選択したものとする。駆動回路210は、まず、FDリセットトランジスタ236をオフ状態に制御する。これにより、浮遊拡散層の電位は、浮遊状態となり、そのポテンシャルを反映した電位が垂直信号線239から出力される。
【0058】
時刻T1から一定時間が経過した時刻T2において、検出回路260は、そのときの電位をリセットレベルとして、そのサンプリングを開始する。ここで、浮遊状態となった浮遊拡散層の電位が安定するには、一定時間(例えば、100ナノ秒)が必要であり、その時間が経過した後に、サンプリングが開始されるものとする。また、リセットレベルのサンプリングに要するサンプリング期間は、例えば、1マイクロ秒(μs)である。なお、信号レベルのサンプリング期間も同程度であるものとする。
【0059】
そして、リセットレベルのサンプリング期間内の時刻T3において、駆動回路210は、PDリセットトランジスタ231をオフ状態に制御する。これにより、フォトダイオード233がリセットされて、信号電荷の露光蓄積、すなわち露光が開始される。
【0060】
時刻T3から、予め設定された露光時間が経過する時刻T4の直前において、駆動回路210は、転送トランジスタ234をオン状態に制御して、信号電荷を浮遊拡散層に転送させる。そして、露光時間が経過した時刻T4において、駆動回路210は、転送トランジスタ234をオフ状態に制御する。これにより、露光が完了する。また、この時刻T4において、リセットレベルのサンプリングが終了する。
【0061】
ここで、露光時間は、リセットレベルや信号レベルのサンプリング期間より短い時間に設定されているものとする。サンプリング期間が、1マイクロ秒(μs)である場合、露光時間は、例えば、100ナノ秒(ns)に設定される。
【0062】
なお、駆動回路210は、リセットレベルのサンプリング期間中に露光を開始させる構成としているが、この構成に限定されない。駆動回路210は、リセットレベルのサンプリング期間の経過と同時、または、サンプリング期間が経過した後に、露光を開始させてもよい。
【0063】
また、露光の終了と同時にサンプリングが終了する構成としているが、この構成に限定されない。露光の終了前に、サンプリングが終了するタイミングで駆動回路210が露光を開始してもよい。
【0064】
時刻T4から一定時間が経過して浮遊拡散層の電位が安定した時刻T5において、検出回路260は、浮遊拡散層に蓄積された信号電荷の量に応じた電圧を信号レベルとしてサンプリングする。そして、検出回路260は、保持しておいたリセットレベルと信号レベルとの差分を求めて、その差分の電圧の信号を、ノイズを低減した蓄積信号として出力する。
【0065】
信号レベルのサンプリングが終了した時刻T6において、駆動回路210は、PDリセットトランジスタ231をオン状態に制御してフォトダイオード233の電荷を全て排出する。なお、駆動回路210は、信号レベルのサンプリングが終了した後に、PDリセットトランジスタ231をオン状態に制御してもよい。
【0066】
上述の制御においては、露光開始前に浮遊拡散層がリセットされ、リセットレベルのサンプリングが開始されている。露光時間中にリセットレベルのサンプリングを行わないため、リセットレベルのサンプリングにかかるサンプリング期間以上に露光時間を長くする必要がない。この露光時間は、PDリセットトランジスタ231および転送トランジスタ234の制御タイミングと、フォトダイオード233から浮遊拡散層への電荷の転送に要する時間とにより規定されている。このため、上述の制御によれば、露光時間を数十ナノ秒(ns)あるいは、それ以下のオーダーに短縮することができる。
【0067】
なお、検出回路260がCDSを問題なく実行するためには、リセットレベルのサンプリングから、信号レベルのサンプリングまでの間において、浮遊拡散層において発生する暗電流が十分に小さくなければならない。一般に、浮遊拡散層の暗電流は、フォトダイオード233の暗電流より数桁多いため、このようなCDS手順は、短時間露光においてきわめて有効となる方法である。
【0068】
[検出回路の構成例]
図5は、第1の実施の形態における画素アレイ部220および検出回路260の一構成例を示す図である。同図の画素アレイ部220においては、1つの検出回路260に接続される4つの画素230のみが記載され、残りの画素230は省略されている。この検出回路260は、アナログCDS回路261、デジタルCDS回路265およびバイナリ判定部270を備える。
【0069】
アナログCDS回路261は、アナログCDSによりオフセット除去を行うものであり、スイッチ262と、キャパシタ263と、比較器264とを備える。
【0070】
スイッチ262は、垂直信号線239の接続先を切り替えるものである。このスイッチ262は、1つの入力端子と2つの出力端子とを備える。入力端子には垂直信号線239が接続される。2つの出力端子の一方は、基準電圧を出力する端子であり、キャパシタ263と比較器264の入力端子の一方と接続される。2つの出力端子の他方は、基準電圧と比較する対象の信号を出力するための端子であり、比較器264の入力端子の他方に接続される。
【0071】
このスイッチ262は、画素230のリセット信号を保持させる場合には、基準電圧を出力する端子(キャパシタ263が接続されている方の端子)に垂直信号線239を接続する。また、スイッチ262は、アナログCDSの結果を比較器264が出力する場合には、比較対象の信号を出力する端子(キャパシタ263が接続されていない方の端子)に垂直信号線239を接続する。
【0072】
キャパシタ263は、画素311のリセット信号を保持するための保持容量である。キャパシタ263は、スイッチ262の出力端子の一方と比較器264とに接続される。
【0073】
比較器264は、キャパシタ263に保持された信号と、比較対象の信号との差分を出力するものである。すなわち、比較器264は、保持されたリセット信号と、垂直信号線239から供給された信号(蓄積信号またはリセット信号)との差分を出力する。すなわち、比較器264は、kTCノイズなどの画素230において生じたノイズが除去された信号を出力する。比較器264は、例えば、ゲインが「1」のオペアンプにより実現される。比較器264は、差分の信号を、デジタルCDS回路265に供給する。なお、ここでは、リセット信号とリセット信号との差分の信号を無信号と称し、リセット信号と蓄積信号との差分の信号を正味の蓄積信号と称する。
【0074】
デジタルCDS回路265は、デジタルCDSによりノイズ除去を行うものであり、AD変換部266と、スイッチ267と、レジスタ268と、減算器269とを備える。
【0075】
AD変換部266は、比較器264から供給された信号をAD変換するものである。なお、AD変換部266は、特許請求の範囲に記載の変換部の一例である。
【0076】
スイッチ267は、AD変換部266が生成したAD変換後の信号の供給先を切り替えるものである。このスイッチ267は、1つの入力端子と2つの出力端子とを備える。入力端子は、比較器264に接続される。2つの出力端子の一方は、減算器269に接続され、他方はレジスタ268に接続される。
【0077】
スイッチ267は、AD変換部266が無信号のAD変換の結果(デジタルの無信号)を出力した場合には、この信号をレジスタ268に供給し、そのレジスタ268にラッチ(保持)させる。これにより、比較器264やAD変換部266のオフセットの値がリセットレベルとしてレジスタ268に保持される。また、スイッチ267は、AD変換部266が正味の蓄積信号のAD変換の結果(デジタルの正味の蓄積信号)を出力した場合には、この信号を減算器269に供給する。
【0078】
レジスタ268は、ノイズ成分が含まれる無信号のAD変換の結果を保持するものである。レジスタ268は、保持する無信号のAD変換の結果(デジタルの無信号)を減算器269に供給する。なお、レジスタ268は、特許請求の範囲に記載のノイズ成分保持部の一例である。
【0079】
減算器269は、デジタルの正味の蓄積信号の値からデジタルの無信号の値を減算するものである。減算器269は、減算した結果(正味のデジタル値)を、バイナリ判定部270に供給する。なお、減算器269は、特許請求の範囲に記載のノイズ成分除去部の一例である。
【0080】
バイナリ判定部270は、バイナリ判定(デジタル判定)を行うものである。このバイナリ判定部270は、減算器269の出力(正味のデジタル値)と、参照信号(REF)とを比較して、画素230への光子の入射の有無をバイナリ判定し、その判定結果をレジスタ268へ出力する。
図5における「BINOUT」は、この判定結果を示す。
【0081】
[検出回路の動作例]
図6は、第1の実施の形態における検出回路260の動作の一例を示すフローチャートである。同図に示すフローチャートの各手順の枠は、その手順を実行する構成を示す。すなわち、2重の枠で示す手順は画素230の手順を示し、長い線の破線の枠で示す手順はアナログCDS回路261の手順を示す。短い線の破線の枠で示す手順はデジタルCDS回路265の手順を示し、太い実線の枠で示す手順はバイナリ判定部270の手順を示す。なお、説明の便宜上、アナログCDS回路261によるアナログCDS処理については、図示を省略し、デジタルCDS回路265がAD変換を行う際の手順で一緒に説明する。
【0082】
まず、選択された行の画素230は、駆動回路210の制御に従って、浮遊拡散層(ノード235)の電位をリセットし、垂直信号線239にリセット信号を出力する(ステップS901)。
【0083】
続いて、画素230から出力されたリセット信号が、アナログCDS回路261のキャパシタ263によって保持される(ステップS902)。その後、保持されたリセット信号と、画素230から出力されたリセット信号との差分の信号(無信号)が、デジタルCDS回路265のAD変換部266によりAD変換される(ステップS903)。なお、このAD変換された無信号には、比較器264やAD変換部266によって発生するノイズが含まれており、これらのノイズを相殺(オフセット)するための値がデジタル検出されたものである。そして、この無信号のAD変換の結果が、オフセット値としてレジスタ268に保持される。一方、画素230は、露光を開始し、予め設定された露光時間の経過後に露光を終了する(ステップS904)。ここで、露光時間は、サンプリング期間より短い時間に設定される。
【0084】
続いて、画素230においてフォトダイオード233が蓄積した電子が浮遊拡散層(ノード235)に転送され、画素230は蓄積信号を出力する(ステップS905)。その後、サンプルホールドされたリセット信号と、画素230から出力された蓄積信号との差分の信号(正味の蓄積信号)が、デジタルCDS回路265のAD変換部266によりAD変換される(ステップS906)。なお、このAD変換の結果には、比較器264やAD変換部266によって発生するノイズが含まれている。
【0085】
そして、デジタルCDS回路265内の減算器269によって、正味の蓄積信号のAD変換の結果(2回目)の値から、レジスタ268に保持された無信号のAD変換の結果(1回目)の値が差し引かれた値が出力される(ステップS907)。これにより、比較器264やAD変換部266に起因するノイズ(オフセット成分)がキャンセルされ、画素230が出力した蓄積信号のみのデジタル値(正味のデジタル値)が出力される。
【0086】
その後、減算器269から出力された正味のデジタル値と、参照信号(REF)とが、バイナリ判定部270によって比較される。参照信号(REF)には、光子入射なしの時に画素230が出力する信号のデジタル値(例えば、「0」)と、光子入射ありの時に画素230が出力する信号のデジタル値(例えば、「100」)との中間値付近の値(例えば、「50」)が設定される。ステップS908の後、検出回路260は、1つの動作を終了する。
【0087】
減算器269が出力したデジタル値(画素230が出力した蓄積信号のみのデジタル値)の値が参照信号(REF)の値を超えている場合には、バイナリ判定部270は、「光子入射あり」として「1」の値の信号(BINOUT)を出力する。一方、減算器269が出力したデジタル値の値が参照信号(REF)の値を超えていない場合には、バイナリ判定部270は、「光子入射なし」として「0」の値の信号(BINOUT)を出力する。すなわち、撮像素子200からは、光子入射の有無がバイナリ判定結果のデジタル値(0か1)として出力される(ステップS908)。ステップS908の後、撮像素子200は、選択した区画におけるデジタル値の出力動作を終了する。
【0088】
なお、
図5および
図6では、「光子入射あり」と「光子入射なし」との2値判定(バイナリ判定)をすることを前提にして説明したが、複数系統の参照信号(REF)を用意することにより、2値以上の判定が可能となる。例えば、参照信号(REF)を2系統用意し、1系統を、光子数が「0」の時のデジタル値と、光子数が「1」の時のデジタル値との中間値にする。また、もう1系統を、光子数が「1」の時のデジタル値と、光子数が「2」の時のデジタル値との中間値にする。これにより、光子数が「0」、「1」、「2」の3つの判定が可能となり、撮像のダイナミックレンジが向上する。なお、このような多値判定は、画素ごとの変換効率のばらつき等による影響が大きくなるため、2値判定の製造より高い精度で製造を行う必要がある。しかしながら、画素が生成した信号をデジタル出力として扱う点においては、画素が生成した信号から光子入射の有無のみ(0か1)を判定するバイナリ判定と同様である。また、デジタルCDSにより、アナログ出力に伴う伝送中のノイズは完全に除去される。
【0089】
なお、各画素に平均数個あるいは、それ以上のレベルで光子が入射するような、比較的照度の高い環境下における光検出では、ステップS908のバイナリ判定のステップは省略し、その前のステップS907のデジタル値を各画素の受光光量値として採用しても良い。
【0090】
なお、デジタルCDS回路265は、検出器側のオフセットと同時に、垂直信号線239に現れる画素信号のランダムノイズに対しても、その低周波成分をキャンセルしているが、その高周波数成分をさらにキャンセルすることもできる。例えば、垂直信号線239に適切な帯域カット容量を接続する等でカットすることができる。このように、画素230は、画素信号のランダムノイズを低周波側と高周波側の双方から絞り込むことが可能であり、1光子レベルの高精度な検出を行うことができる。
【0091】
図7は、第1の実施の形態における、二次元画像を取得する際の露光制御の一例を示す図である。駆動回路210は、4区画を1区画ずつ順に選択して露光制御を行う。
【0092】
例えば、駆動回路210は、時刻T21において1行目および5行目からなる区画を最初に選択して、FDリセットトランジスタ236をオフにしてリセットレベルのサンプリングを開始させる。そして、駆動回路210は、サンプリング期間内に露光蓄積を開始させる。サンプリング期間の経過後、駆動回路は、信号レベルのサンプリングを開始させる。
【0093】
なお、厳密には、時刻T21において駆動回路210がFDリセットトランジスタ236をオフに制御した時点と同時にサンプリングが開始されるのでなく、前述したように、その時点から一定期間が経過したときにサンプリングが開始される。しかし、この一定期間は非常に短いため、記載の便宜上、
図7では、時刻T21にサンプリングが開始されるように図示している。2区画目以降についても同様である。
【0094】
時刻T22において、最初の区画のサンプリングが終了すると、検出回路260は、リセットレベルおよび信号レベルから得られる蓄積信号を出力する。また、駆動回路210は、2行目および6行目からなる2つ目の区画を選択して同様の露光制御を行う。
【0095】
このように、リセット信号のサンプリング、露光蓄積、信号レベルのサンプリングおよび出力の一連の露光制御が、循環的に行われる。その結果出力された差分信号は、一旦、レジスタ286に保持され、チップ内における差分信号の転送と出力とは、そのレジスタ286を介してパイプライン化されて実行される。
【0096】
時刻T23において2番目の区画のサンプリングが終了すると、駆動回路210は、3つ目の区画を選択して同様の露光制御を行い、時刻T24において3番目の区画のサンプリングが終了すると最後の区画を選択して同様の露光制御を行う。
【0097】
このように、複数の区画を順に選択して露光させる制御は、ローリングシャッター方式と呼ばれる。例えば、非常に明るい場所で、露光時間を極めて短い時間にして二次元画像を撮像する場合などに、
図7に例示した制御が行われる。
【0098】
一方、このような撮像素子200を単一の光検出器として使用し、シンチレーションによる発光パルス等を検出する場合には、各パルスにおいて露光されるのは最大1区画のみである。したがって、駆動回路210は、4区画のうち1区画のみを選択して、その区画における露光制御を繰り返し行ってもよい。
【0099】
図8は、第1の実施の形態における光検出を行う際の露光制御の一例を示す図である。例えば、駆動回路210は、1番目の区画(1行目および5行目)のみを選択する。そして駆動回路210は、その区画において、リセット信号のサンプリング、露光蓄積、信号レベルのサンプリングおよび出力の一連の露光制御を繰り返し行う。その結果出力された差分信号は、一旦、レジスタ286に保持され、チップ内における差分信号の転送と出力とは、そのレジスタ286を介してパイプライン化されて実行される。バイナリ判定は必要に応じて出力回路287またはチップ外で実行される。
【0100】
一般に、撮像素子内の全画素を同時に動作させ、同時に露光させる制御は、グローバルシャッター方式と呼ばれる。
図8においては、撮像素子内の全画素でなく、1つの区画内においてのみ、グローバルシャッター方式と同様の露光制御が行われている。この露光制御により、露光時間内に撮像素子200に入射された光パルスのみが検出される。なお、スキャナー用のラインセンサー型検出器に撮像素子200を使用した場合にも同様の駆動が行われる。
【0101】
1区画のアクセスにトータルで5マイクロ秒(μs)を要するとしても、
図8の露光制御では、露光時間を、例えば50ナノ秒(ns)に短縮できる。したがって、5マイクロ秒(μs)の周期で1区画についての露光が繰り返される中で、露光時間は、その1/100の50ナノ秒のみであり、露光時間外に入射した放射線が発する光パルスは検出されずに無視される。そこで、データ処理部140は、リセットレベルのサンプリング開始から信号レベルのサンプリング終了までの測定期間と、露光時間との比に応じて光パルス数を補正する。例えば、露光時間が測定期間の1/100である場合、データ処理部140は、露光時間中に検出された光パルス数を略100倍して、シンチレータに入射した放射線個数を推定する。このように、放射線検出装置100では、高頻度の放射線入射に対してもその計数が可能になる。
【0102】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、撮像素子200は、サンプリング期間より短い露光時間が経過したときに光電変換素子から浮遊拡散層への電荷を転送させるため、露光時間をサンプリング期間より短くすることができる。これにより、フォトンカウンティングの精度を向上させることができる。
【0103】
また、このような超短時間露光は一般のCMOSイメージャーにおいても高照度環境での撮像等に有用であるが、後述するように放射線フォトンカウンティングの時間分解能を飛躍的に高めることが可能になる。
【0104】
さらに本発明を用いた撮像素子200は、光通信の安価で簡易な受信機として利用することも可能である。
【0105】
また、この撮像素子200を放射線のシンチレーション光の検出に利用することにより、放射線検出装置100は、放射線計数において、検出のダイナミックレンジを飛躍的に向上させることができる。これによってガンマカメラのみならず、CT装置やマンモグラフィー等においても放射線計数(フォトンカウンティング)の導入が可能となり、エネルギーによる散乱線の分別や、放射線のエネルギー分析が可能になる。
【0106】
この放射線検出装置100を線量計に使用した場合、放射線のエネルギー検出とフォトンカウントとを同時に行うことができるため、例えば放射線のエネルギーに応じた計数率、即ち放射線のエネルギースペクトルを計測することができる。このため、例えば、特開2004−108796号公報に記載されたようなG関数法やDBM(Discrimination Bias Modulation)法等による線量補正を適切に実施することができる。しかも、放射線検出装置100の出力は既にデジタル化されているので、マルチチャンネルアナライザも不要であり、安価なワンチップマイコンで、補正を含めた全ての後段処理を行うことができる。これによって小型軽量かつ高精度で、しかも安価な線量計を実現することが可能になる。
【0107】
[第1の変形例]
上述の第1の実施の形態では、撮像素子200は、露光時間をサンプリング期間より短くして露光を行っていたが、その場合、測定期間において、光検出に用いられない不感期間(測定期間のうち露光時間以外の期間)が生じてしまう。しかし、低頻度の放射線入射に対しては、少ない入射回数を漏れなくカウントできるように、この不感期間は存在しない方が望ましい。そこで、通常のCMOSイメージャーに準じた動作制御により、露光時間を測定期間に近づけると、シンチレーション光のパルスをもれなく計測することができる。つまり、放射線の検出頻度に応じて、露光期間を変更することが望ましい。第1の実施の形態の第1の変形例の撮像素子200は、放射線の検出頻度に応じて露光時間を変更する点において第1の実施の形態と異なる。
【0108】
具体的には、第1の変形例の撮像素子200におけるデータ処理部140は、一定時間が経過するたびに、その一定時間内の放射線の検出回数から放射線の検出頻度を測定する。そして、データ処理部140は、その検出頻度が所定頻度よりも高いか否かを示す制御信号を撮像素子200に供給する。
【0109】
第1の変形例の撮像素子200は、FDリセットトランジスタ236をオフにするタイミング以前においても、PDリセットトランジスタ231をオフに制御することができる。FDリセットトランジスタ236をオフにするタイミング以前にPDリセットトランジスタ231をオフに制御することにより、撮像素子200は、サンプリング期間以上の時間に、露光時間を設定することができる。
【0110】
撮像素子200は、放射線の検出頻度が所定頻度より高い場合には、露光時間をサンプリング期間未満に設定し、そうでない場合には露光時間をサンプリング期間以上に設定して露光を行う。
【0111】
図9は、第1の実施の形態の第1の変形例における画素230の制御の一例を示すタイミングチャートである。駆動回路210は、例えば、リセットレベルおよび信号レベルのサンプリングを一定のタイミングおよび一定間隔により実施し、露光開始のタイミングのみを変更することで、露光時間の切り替えを行う。
【0112】
放射線の検出頻度が所定頻度以下である場合、駆動回路210は、時刻T11においてPDリセットトランジスタ231をオフにして露光を開始させ、その後の時刻T12においてFDリセットトランジスタ236をオフにする。その後の時刻T13において、検出回路260がリセットレベルのサンプリングを開始する。そして、時刻T14において駆動回路210は、転送トランジスタ234を制御して露光を終了させる。また、時刻T14においてリセットレベルのサンプリングが終了する。露光終了後の時刻T15において検出回路260は、信号レベルのサンプリングを開始し、時刻T16において信号レベルのサンプリングが終了する。
【0113】
一方、放射線の検出頻度が所定頻度より高い場合には、駆動回路210は、
図4に例示したように、露光時間をサンプリング期間より短くして露光を行う。
【0114】
図4および
図9に例示したように、第1の変形例の駆動回路210は、PDリセットトランジスタ231をオフにするタイミングを、FDリセットトランジスタ236をオフにするタイミングを跨いで変更することができる。信号レベルのサンプリングに3マイクロ秒(μs)を要し、測定期間が20マイクロ秒(μs)である場合、最長で16乃至17マイクロ秒(μs)程度の露光が可能となる。一方、最短では、数十ナノ秒(ns)オーダー、例えば、50ナノ秒の露光が可能である。放射線の検出頻度が所定頻度より高いときの露光時間と、そうでないときの露光時間とのそれぞれは、この50ナノ秒乃至16マイクロ秒の範囲内で、測定条件に基づいて任意に設定することができる。
【0115】
例えば、放射線検出装置100が一秒間に約百万回の光パルスを受光する場合について考える。この場合、パルス入射は、平均して、1マイクロ秒(μs)に1回である。この条件下において放射線検出装置100は、放射線の検出頻度が所定頻度より高いと判断して、露光時間を0.1マイクロ秒(すなわち、100ナノ秒)にする。この結果、露光時間内に平均0.1回のパルスが入射されることとなる。このため、放射線検出装置100は、異なる複数のパルスのそれぞれをほぼ正確に分別することができる。
【0116】
また、放射線検出装置100が、20マイクロ秒(μs)の周期で露光を繰り返すと、1秒間に5万回のデータを取得することができるため、約五千ものパルスをカウントすることができる。放射線検出装置100が、このカウント数に測定期間(20マイクロ秒)と、露光時間(0.1マイクロ秒)との比「200」を乗算すれば、単位時間当たりの入射パルス数を導出することができる。
【0117】
一方、1秒間に100回のパルスしか受光しない場合は、放射線検出装置100は、検出頻度が所定頻度以下であると判断して露光時間を最長の16μ秒とする。この結果、1秒当たり約80回のパルスが検出されるため、放射線検出装置100は、このパルス数にサイクル時間と露出時間の比(20/16=1.25)を掛けることにより、入射パルス数を導出することができる。
【0118】
図10は、第1の実施の形態の第1の変形例における長時間露光を行う際の露光制御の一例を示す図である。同図は、放射線の検出頻度が所定頻度以下であり、長時間に亘って露光を行う場合を想定している。この場合、駆動回路210は、例えば、1番目の区画(1行目および5行目)と2番目の区画(2行目および6行目)とを交互に選択して、選択した区画において露光蓄積およびサンプリングを行う。リセットレベルおよび信号レベルのサンプリングに約5マイクロ秒(μs)を要する場合、それぞれの区画は、約5マイクロ秒(μs)の間隔で選択される。また、露光期間もそれぞれ5マイクロ秒に設定される。このように、露光期間を設定すれば、常時いずれかの区画が露光されることとなり、撮像素子200全体では不感期間は存在しなくなる。また、光パルス検出の時間分解能は5マイクロ秒(μs)となる。
【0119】
図11は、第1の実施の形態の第1の変形例における各区画を順に選択する露光制御の一例を示す図である。同図は、放射線の検出頻度が所定頻度以下である場合を想定している。
【0120】
駆動回路210は、4つの区画を約5マイクロ秒(μs)の間隔で順に選択し、それぞれの露光時間は15マイクロ秒(μs)に設定されている。この設定では、常時、3区画が露光されることになる。
図10に例示した制御と比較して、時間分解能は15マイクロ秒(μ秒)に低下するものの、露光される画素数が3倍になるために光パルスに対する検出感度が高くなる。すなわち、
図11に例示した露光制御では、パルス強度の測定精度が向上する。このため、パルス強度の測定精度を時間分解能の向上より優先する際に、
図11に例示したように、全区画を順に選択する露光制御が行われる。
【0121】
このように、第1の変形例によれば、放射線の検出頻度に基づいて露光時間を変更するため、適切な露光時間により露光を行うことができる。
【0122】
[第2の変形例]
上述の第1の実施の形態の第1の変形例では、光ガイド130および撮像素子200のそれぞれを1つのみ設ける構成としていたが、複数の光ガイド130と複数の撮像素子200とを設けてもよい。第1の実施の形態の第2の変形例の放射線検出装置100は、複数の光ガイド130と複数の撮像素子200とを設けた点において第1の変形例と異なる。
【0123】
図12は、第1の実施の形態の第2の変形例における放射線検出装置100の一構成例を示すブロック図である。第2の変形例の放射線検出装置100では、1つのシンチレータ120に対して、例えば、3つの光ガイド130が設けられる。それぞれの光ガイド130には、撮像素子200が1つ設けられる。つまり、3つの光ガイド130と3つの撮像素子200とにより、1つのシンチレータ120が共用される。なお、第2の変形例の放射線検出装置100は、1つのシンチレータ120に対して、3つ以外の個数の複数の撮像素子200を設ける構成であってもよい。
【0124】
それぞれの撮像素子200は、第1の実施の形態と同様に、複数の区画に分割されているが、例えば、これらのうち1区画のみが放射線の検出に用いられる。
【0125】
データ処理部140は、撮像素子200の各々からの出力を受けて、個々の放射線(例えば、ガンマ線)についてノイズの弁別と位置判定を行なう。シンチレータ120が一枚板でなる場合、その発光は複数の撮像素子200によって同時に検出される。データ処理部140は、例えば同時発生したイベントの出力の総和からガンマ線のエネルギーを求め、その出力の重心からガンマ線の入射位置を特定する。こうしてプライマリ(すなわち、ノイズではない)と判定されたガンマ線のイベント回数がカウントされ、ガンマ線源の体内分布が同定される。
【0126】
複数の撮像素子200の出力から放射線のエネルギーと入射位置とを判定するデータ処理部140には、既存のガンマカメラにおけるデジタル処理に準じてさまざまなバリエーションが存在し得る。光電子増倍管と比較して、撮像素子200は小型軽量かつ安価なので、高密度に多数実装することが可能であり、放射線の入射位置の検出精度は、その分高くなる。あるいは複数のガンマ線がほぼ同時に異なる場所に入射した場合でも、撮像素子200が高密度実装されていれば出力の強度分布に顕れるので、パターンマッチング等を利用してそれを判別し、検出することが可能となる。
【0127】
また複数の撮像素子200を使用した撮像では、
図7に例示した露光制御を撮像素子ごとに行うことで、最良の画像を得ることができる。
【0128】
なお、撮像素子200ごとに、放射線の検出頻度に応じて露光時間を制御してもよい。例えば、データ処理部140は、撮像素子200ごとに放射線の検出頻度を測定し、放射線の検出頻度が所定頻度より高い撮像素子200は露光時間を短くし、放射線の検出頻度が所定頻度以下の撮像素子200は露光時間を長くする。
【0129】
このように、第2の変形例によれば、複数の撮像素子200により光を検出するため、フォトンカウンティングの精度を向上させることができる。
【0130】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では撮像素子200が複数の区画を1つずつ順に露光していたが、その場合、一度に露光される画素数は、2行分の64画素であり、その他の画素に入射された光は検出されない。あるいは、1回の露光に対して64画素の各々の検出結果をバイナリ判定した場合、64は2
6であることから、エネルギー検出において6ビットの階調しか得られない。すなわち、1区画ずつ順に露光を行う構成では、エネルギー検出のダイナミックレンジが貧弱であり、ダイナミックレンジは同時に露光する画素の個数により制限されることになる。
【0131】
したがって、複数の区画において同時に超短時間の露光を行うような機構の存在が求められる。これはCMOSイメージセンサにおいては、いわゆるグローバルシャッター動作に相当する。複数の区画において同時に露光を行うことにより、撮像素子200の回路規模を増加させることなく多くの画素を光検出に使用することができ、エネルギー検出におけるダイナミックレンジを向上させることができる。この第2の実施の形態の撮像素子200は、複数の区画を同時に露光する点において第1の実施の形態と異なる。
【0132】
また、この第2の実施の形態の撮像素子200は、画素アレイ部220において画素ごとに選択トランジスタ(不図示)をさらに備える。そして、第2の実施の形態の駆動回路210は、選択トランジスタを制御して各区画を順に選択して、選択した区画内の画素の出力信号を検出回路260に供給させる。
【0133】
[検出回路の構成例]
図13は、第2の実施の形態における検出回路260の一構成例を示す図である。第2の実施の形態の検出回路260は、デジタルCDS回路265が、スイッチおよびレジスタを複数備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0134】
第2の実施の形態のアナログCDS回路261は、第1の実施の形態と同様である。ただし、アナログCDS回路261は、1行目のリセットレベルの信号を基準信号として保持するとともに、1行目のリセット信号としてデジタルCDS回路265に供給する。また、アナログCDS回路261は、2行目以降の各行のリセット時の出力信号と、基準信号との差分を2行目以降の各行のリセット信号として、それぞれデジタルCDS回路265に供給する。
【0135】
デジタルCDS回路265は、デジタルCDS回路265に接続された行数と同じ個数のレジスタを備える。接続された行が4行である場合、デジタルCDS回路265は、スイッチ271、272、273、274および275と、レジスタ276、277、278および279と、スイッチ280、281、282および283とを備える。
【0136】
スイッチ271は、AD変換部266と減算器269との間の経路を開閉するものである。スイッチ271の一端はAD変換部266に接続され、他端は減算器269に接続される。スイッチ271は、信号レベルのサンプリング期間において閉状態となり、それ以外の期間に開状態となる。
【0137】
スイッチ272乃至275は、AD変換部266と対応するレジスタとの間の経路を開閉するものである。スイッチ272の一端は、AD変換部266に接続され、他端はレジスタ276に接続される。また、スイッチ273の一端は、AD変換部266に接続され、他端はレジスタ277に接続される。また、スイッチ274の一端は、AD変換部266に接続され、他端はレジスタ278に接続される。また、スイッチ275の一端は、AD変換部266に接続され、他端はレジスタ279に接続される。
【0138】
これらのスイッチ272乃至275は、対応する行のリセットレベルのサンプリング期間において閉状態となり、それ以外の期間において開状態となる。具体的には、スイッチ272は1行目のリセットレベルのサンプリング期間において閉状態となり、スイッチ273は2行目のリセットレベルのサンプリング期間において閉状態となる。また、スイッチ274は3行目のリセットレベルのサンプリング期間において閉状態となり、スイッチ275は4行目のリセットレベルのサンプリング期間において閉状態となる。
【0139】
レジスタ276乃至279は、対応する行のリセットレベルを保持するものである。レジスタ276は1行目のリセットレベルを保持し、レジスタ277は2行目のリセットレベルを保持する。また、レジスタ278は3行目のリセットレベルを保持し、レジスタ279は4行目のリセットレベルを保持する。
【0140】
スイッチ280乃至283は、対応するレジスタと減算器269との間の経路を開閉するものである。スイッチ280の一端は、レジスタ276に接続され、他端は減算器269に接続される。また、スイッチ281の一端は、レジスタ277に接続され、他端は減算器269に接続される。また、スイッチ282の一端は、レジスタ278に接続され、他端は減算器269に接続される。また、スイッチ283の一端は、レジスタ279に接続され、他端は減算器269に接続される。
【0141】
これらのスイッチ280乃至283は、対応する行の信号レベルのサンプリング期間において閉状態となり、それ以外の期間において開状態となる。具体的には、スイッチ280は1行目の信号レベルのサンプリング期間において閉状態となり、スイッチ281は2行目の信号レベルのサンプリング期間において閉状態となる。また、スイッチ282は3行目の信号レベルのサンプリング期間において閉状態となり、スイッチ283は4行目の信号レベルのサンプリング期間において閉状態となる。
【0142】
[撮像素子の動作例]
図14は、第2の実施の形態における画素の制御の一例を示すタイミングチャートである。初期状態において、FDリセットトランジスタ236およびPDリセットトランジスタ231はオン状態であり、転送トランジスタ234はオフ状態であるものとする。
【0143】
駆動回路210は時刻T1において全行のFDリセットトランジスタ236をオフ状態に制御する。これにより、浮遊拡散層の電位は、浮遊状態となり、そのポテンシャルを反映した電位が垂直信号線239から出力される。駆動回路210は、選択トランジスタを制御して、4行分のリセットレベルの信号を順に検出回路260に供給させる。
【0144】
なお、駆動回路210は、4行のFDリセットトランジスタ236を同時にオフ状態に制御しているが、順にオフ状態に制御してもよい。
【0145】
時刻T1から一定期間が経過した時刻T2において、検出回路260は、1行目のリセットレベルをサンプリングして保持する。そして、検出回路260は、2行目乃至4行目のリセットレベルを順にサンプリングして保持する。
【0146】
また、リセットレベルのサンプリング期間内の時刻T3において、駆動回路210は、全行のPDリセットトランジスタ231をオフ状態に制御する。これにより、フォトダイオード233がリセットされて、信号電荷の露光蓄積、すなわち露光が開始される。ここで、露光時間は、各行のリセットレベルのサンプリング期間より短い時間に設定されているものとする。
【0147】
時刻T3から、予め設定された露光時間が経過する時刻T4の直前において、駆動回路210は、全行の転送トランジスタ234をオン状態に制御して、信号電荷を浮遊拡散層に転送させる。そして、露光時間が経過した時刻T4において、駆動回路210は、全行の転送トランジスタ234をオフ状態に制御する。これにより、露光が完了する。また、この時刻T4において、4行目のリセットレベルのサンプリングが終了する。
【0148】
駆動回路210は、選択トランジスタを制御して、4行分の蓄積信号を順に検出回路260に供給させる。
【0149】
時刻T4から一定時間が経過した時刻T5において、検出回路260は、1行目の信号レベルをサンプリングする。次いで、検出回路260は、2行目乃至4行目の信号レベルを順にサンプリングする。
【0150】
4行目の信号レベルのサンプリングが終了した時刻T6において、駆動回路210は、全行のPDリセットトランジスタ231をオン状態に制御してフォトダイオード233の電荷を全て排出する。
【0151】
上述の制御において、T4の露光終了後に各行の信号レベルのサンプリングを順次実施する際、例えば1行目から3行目までがサンプリングされる間、4行目の信号電荷は浮遊拡散層に保持されている。例えば、各行のサンプリングに2マイクロ秒(μs)を要した場合、その間の保持期間は6マイクロ秒(μs)程度である。しかし、検出回路260を各行が共有する第2の実施の形態では、同時露光される画素数の増加に比例して、信号電荷を、最終行の浮遊拡散層が保持する時間が長くなり、浮遊拡散層の暗電流が問題になり始める。したがって、同時露光する画素数の上限は16個以下に留めるのが望ましい。
【0152】
図15は、第2の実施の形態における撮像素子200の動作の一例を示すフローチャートである。
【0153】
まず、全ての画素230は、駆動回路210の制御に従って浮遊拡散層(ノード235)の電位をリセットする(ステップS910)。駆動回路210は、いずれかの区画を選択し、選択された区画内の画素は、リセット信号を出力する(ステップS911)。
【0154】
駆動回路210は、選択した区画が最初の区画であるか否かを判断する(ステップS912)。最初の区画である場合には(ステップS912:Yes)、アナログCDS回路261(ACDS)はリセット信号を検出し、そのリセット信号を基準信号として保持する(ステップS902)。2つ目以降の区画が選択された場合には、ACDSにより、基準信号と、画素230からの出力信号との差分がリセット信号としてデジタルCDS回路265(DCDS)へ供給される。
【0155】
2つ目以降の区画である場合(ステップS912:No)、またはステップS902の後、DCDSにより、ACDSからのリセット信号がAD変換される(ステップS903)。
【0156】
そして、駆動回路210は、選択した区画が最後の区画であるか否かを判断する(ステップS913)。最後の区画でない場合には(ステップS913:No)、駆動回路210により、次の区画が選択される(ステップS914)。ステップS914の後、ステップS911が再度実行される。
【0157】
最後の区画である場合には(ステップS913:Yes)、全ての画素230は、露光を開始し、予め設定された露光時間の経過後に露光を終了する(ステップS915)。ここで、露光時間は、サンプリング期間より短い時間に設定される。
【0158】
露光が終了すると、駆動回路210により区画が選択され、その選択された区画内の画素230が蓄積信号を出力する(ステップS916)。その後、サンプルホールドされたリセット信号と、画素230から出力された蓄積信号との差分の信号(正味の蓄積信号)がDCDSによりAD変換される(ステップS906)。
【0159】
そして、DCDSによって、正味の蓄積信号のAD変換の結果(2回目)の値から、選択された区画のレジスタ268内のAD変換の結果(1回目)の値が差し引かれた値が出力される(ステップS907)。
【0160】
その後、減算器269から出力された正味のデジタル値と、参照信号(REF)とが、バイナリ判定部270によって比較され、光子入射の有無がバイナリ判定結果のデジタル値として出力される(ステップS908)。
【0161】
そして、駆動回路210は、選択した区画が最後の区画であるか否かを判断する(ステップS917)。最後の区画でない場合には(ステップS917:No)、駆動回路210は、次の区画を選択する(ステップS918)。ステップS918の後、ステップS916が再度実行される。最後の区画である場合には(ステップS917:Yes)、撮像素子200は、全区画の露光制御を終了する。
【0162】
このように、第2の実施の形態によれば、全区画の画素230がフォトダイオード233に蓄積された電荷量を初期化(露光を開始)し、全区画の画素230が電荷を転送(露光を終了)するため、多くの画素を光検出に使用することができる。これにより、放射線のエネルギー検出におけるダイナミックレンジを向上させることができる。
【0163】
[変形例]
上述の第2の実施の形態では、撮像素子200は、露光時間をサンプリング期間より短くして露光を行っていたが、放射線の検出頻度に基づいて露光期間をサンプリング期間以上にすることもできる。第2の実施の形態の変形例の撮像素子200は、放射線の検出頻度に基づいて露光時間を切り替えて露光を行う点において第2の実施の形態と異なる。
【0164】
具体的には、変形例の撮像素子200におけるデータ処理部140は、一定時間が経過するたびに、その一定時間内の放射線の検出回数から放射線の検出頻度を測定する。そして、データ処理部140は、その検出頻度が所定頻度よりも高いか否かを示す制御信号を撮像素子200に供給する。
【0165】
撮像素子200は、放射線の検出頻度が所定頻度より高い場合には露光時間をサンプリング期間未満に設定し、そうでない場合には露光時間をサンプリング期間以上に設定して露光を行う。
【0166】
図16は、第2の実施の形態の変形例における画素の制御の一例を示すタイミングチャートである。
【0167】
放射線の検出頻度が所定頻度以下である場合、駆動回路210は、時刻T11においてPDリセットトランジスタ231をオフにして露光を開始させ、その後の時刻T12においてFDリセットトランジスタ236をオフにする。その後の時刻T13において、検出回路260が全行のリセットレベルのサンプリングを開始する。時刻T14において駆動回路210は、転送トランジスタ234を制御して露光を終了させる。また、時刻T14において全行のリセットレベルのサンプリングが終了する。検出回路260は、時刻T15において全行の信号レベルのサンプリングを開始し、時刻T16において全行の信号レベルのサンプリングが終了する。
【0168】
このように、第2の実施の形態の変形例によれば、放射線の検出頻度に基づいて露光時間を変更するため、適切な露光時間により露光を行うことができる。
【0169】
<3.第3の実施の形態>
上述の第2の実施の形態では、同じ基板に画素230および検出回路260を設けていたが、シリコンの3次元積層技術により積層された2つの基板の一方に画素を配置し、他方に検出回路を設けることもできる。この第3の実施の形態の放射線検出装置100は、積層された2つの基板の一方に画素を配置し、他方に検出回路を配置した点において第1の実施の形態と異なる。
【0170】
図17は、第3の実施の形態における放射線検出装置100の一構成例を示す斜視図である。第3の実施の形態の放射線検出装置100は、シンチレータ120、光ガイド130および撮像素子200の代わりに、複数のシンチレータ素子121と撮像素子201とを備える点において第1の実施の形態と異なる。なお、同図において、コリメータ110およびデータ処理部140は省略されている。
【0171】
撮像素子201は、駆動回路210(不図示)と、積層された2つの基板とを備える。これらの2つの基板のうち、シンチレータ素子121に接続される方の基板に画素ブロック310が配置され、そうでない方の基板に検出ブロック320が配置される。
【0172】
それぞれの画素ブロック310には、2×2の4つの画素が設けられる。画素ブロック310内に配置する画素として、例えば、フォトダイオードが配置された裏面に光が照射される裏面照射型の画素が用いられる。
【0173】
検出ブロック320は、画素ブロック310内の画素に蓄積された電荷量に応じた電圧を検出するものである。それぞれの検出ブロック320は、画素ブロック310に1対1で対応付けて配置される。
【0174】
1つの画素ブロック310と、対応する検出ブロック320とは、例えばウエファーレベルで張り合わされて、1つの検出ユニットを構成する。このような検出ユニットが、1ミリ平方メートルのシリコンチップ上において、二次元格子状に一定数(例えば、20×20個)配置される。なお、検出ユニットの配置に関しては、透過型X線撮像やCT撮像におけるパルス計数等、用途に応じて柔軟な構成を取ることができる。
【0175】
放射線検出装置100は、前述したように、例えば100マイクロ秒(μs)のサイクルで放射線検出を実施し、10ナノ秒(ns)以下の超短時間露光を行うことができる。この場合、各ユニットは平均100ナノ秒の間隔で入射する放射線を分別して検出することができるため、1秒に1E7個の放射線をカウントすることができる。また、放射線検出装置100は、合計400のユニットを並列に動作させて、各々独立に放射線を検出することができる。したがって、1平方ミリメートルのモジュール(撮像素子200およびシンチレータ素子121)が1秒間に計数できる放射線数は4E9個となる。すなわち、4G/(s・mm^2)の放射線数が計測される。
【0176】
また、各検出ユニットの各々の露出期間を独立して制御することができるため、計測の予備測定から最適な露光設定を行うことができる。露光期間を延ばした不感期間の殆ど無いユニットは、1秒間に数個の放射線入射でもほぼ正確に計数することができる。
【0177】
CT撮像では例えばこの1平方ミリメートルのモジュールを単位検出器として放射線計数を行う。露光制御はモジュール単位でまとめて実行してもよい。
【0178】
X線撮像ではこのモジュールをさらに敷き詰めるか、あるいは、より多数の検出ユニットを敷き詰めたモジュールを用いて放射線計数を行う。この場合50平方マイクロメートルの各検出ユニットに1画素を配置し、検出ユニットごとに露光制御を実施するのが望ましい。このようにして実現された放射線検出装置は僅かな線量でも際立ったコントラストを実現することができ、低被ばくで高感度な放射線撮像を行うことが可能である。
【0179】
シンチレータ素子121は、柱状に形成されたシンチレータ素子である。それぞれのシンチレータ素子121は、反射材または低屈折率の物質(不図示)で区切られており、その反射材等により形成される柱の内部にシンチレーション光が閉じ込められる。シンチレータ素子121は、例えば、画素ブロック310ごとに設けられる。
【0180】
図18は、第3の実施の形態における画素ブロック310の一構成例を示す図である。画素ブロック310は、2行×2列に配置された4つの画素311と、4つの選択トランジスタ312と電極パッド313とを備える。選択トランジスタ312として、例えば、MOSトランジスタが用いられる。画素311の構成は、第1の実施の形態における画素230と同様である。
【0181】
選択トランジスタ312は、いずれかの画素230を選択して検出ブロック320に供給するトランジスタである。選択トランジスタ312は、画素311ごとに設けられる。
【0182】
また、選択トランジスタ312のゲートは、駆動回路210に接続され、ソースは画素311に接続され、ドレインは電極パッド313を介して検出ブロック320に接続される。
【0183】
駆動回路210は、選択トランジスタ312を制御して、4つの画素311のそれぞれの出力信号を順に検出ブロック320に供給させる。また、駆動回路210は、画素ブロック310内の4つの画素311において同時に露光を開始させ、同時に露光を終了させる。また、前述したように、駆動回路210は、画素ブロック310のそれぞれに、独立して露光時間を設定することができる。
【0184】
図19は、第3の実施の形態における検出ブロック320の一構成例を示すブロック図である。この検出ブロック320は、アナログCDS回路321、電極パッド322、定電流回路323、メモリ324、バイナリ判定部325およびデジタルCDS回路326を備える。
【0185】
アナログCDS回路321、デジタルCDS回路326およびバイナリ判定部325の構成は、
図14に例示した第2の実施の形態のアナログCDS回路261、デジタルCDS回路265およびバイナリ判定部270と同様である。
【0186】
バイナリ判定部325は、生成したデジタル値をメモリ324に保持させる。また、アナログCDS回路321は、電極パッド322を介して画素ブロック310から出力信号を受け取る。メモリ324に保持されたデジタル値は、データ処理部140により、適切なタイミングにおいて読み出される。
【0187】
定電流回路323は、一定の電流を供給するものである。この定電流回路323と、画素311内のアンプトランジスタとにより、ソースフォロワ回路が構成される。
【0188】
このように、第3の実施の形態によれば、積層した2つの基板の一方に画素を設け、他方に検出回路を設けたため、検出回路を同一基板上に配置する構成と比較して受光面積を広くすることができる。
【0189】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0190】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0191】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【0192】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)光を電荷に変換して蓄積する光電変換素子と、
前記光電変換素子から転送された前記電荷の量に応じた電圧を生成する浮遊拡散層と、
前記生成された電圧を初期化する浮遊拡散層リセットトランジスタと、
前記電圧をデジタル信号に変換する変換処理を行う変換部と、
前記電圧が初期化された後の所定のタイミングにおいて前記光電変換素子に蓄積された前記電荷の量を初期化する光電変換素子リセットトランジスタと、
前記変換処理に要する時間より短い露光時間が前記所定のタイミングから経過したときに前記光電変換素子から前記浮遊拡散層への前記転送を行う転送トランジスタと
を具備する撮像素子。
(2)前記光電変換素子、前記浮遊拡散層、前記浮遊拡散層リセットトランジスタ、前記光電変換素子トランジスタおよび前記転送トランジスタをそれぞれが備える複数の画素からなる画素アレイ部を具備し、
前記画素アレイ部は、複数の領域に区分され、
前記変換部は、前記変換したデジタル信号を前記領域ごとに出力する
前記(1)記載の撮像素子。
(3)前記初期化された電圧から変換されたデジタル信号をノイズ成分として保持するノイズ成分保持部を前記複数の領域のそれぞれに設けた保持部と、
前記転送が行われると前記電圧から変換された前記デジタル信号に対して前記保持されたノイズ成分を除去するノイズ除去処理を行うノイズ除去部と
をさらに具備し、
前記光電変換素子リセットトランジスタは、前記所定のタイミングに前記複数の領域の全てにおいて前記電荷の量を初期化し、
前記転送トランジスタは、前記露光時間が前記所定のタイミングから経過したときに前記複数の領域の全てにおいて前記転送を行い、
前記変換部は、前記初期化された電圧と前記転送が行われたときの前記電圧のそれぞれに対して前記変換処理を行って前記デジタル信号に変換する
前記(2)記載の撮像素子。
(4)前記初期化された電圧から変換されたデジタル信号を前記複数の領域のいずれかのノイズ成分として保持するノイズ成分保持部と、
前記転送が行われると前記電圧から変換された前記デジタル信号に対して前記保持されたノイズ成分を除去するノイズ除去処理を行うノイズ除去部と
をさらに具備し、
前記光電変換素子リセットトランジスタは、前記複数の領域のいずれかにおいて前記電荷の量を初期化し、
前記転送トランジスタは、前記複数の領域のいずれかにおいて前記転送を行う
前記(2)または(3)に記載の撮像素子。
(5)前記変換部が配置された変換部配置基板と、
前記光電変換素子、前記浮遊拡散層リセットトランジスタ、前記光電変換素子トランジスタおよび前記転送トランジスタが配置され、前記変換部配置基板に積層された画素配置基板と
を具備する前記(1)記載の撮像素子。
(6)放射線が入射されると光を生成するシンチレータと、
前記生成された光を電荷に変換して蓄積する光電変換素子と、
前記光電変換素子から転送された前記電荷の量に応じた電圧を生成する浮遊拡散層と、
前記生成された電圧を初期化する浮遊拡散層リセットトランジスタと、
前記電圧をデジタル信号に変換する変換処理を行う変換部と、
前記電圧が初期化された後の所定のタイミングにおいて前記光電変換素子に蓄積された前記電荷の量を初期化する光電変換素子リセットトランジスタと、
前記変換処理に要する時間より短い露光時間が前記所定のタイミングから経過したときに前記光電変換素子から前記浮遊拡散層への前記転送を行う転送トランジスタと、
前記ノイズが除去されたデジタル信号に基づいて露光時間内に放射線が入射されたか否かを検出する放射線検出部と
を具備する放射線検出装置。
(7)前記光電変換素子、前記浮遊拡散層、前記浮遊拡散層リセットトランジスタ、前記変換部、前記光電変換素子トランジスタおよび前記転送トランジスタをそれぞれが備える複数の画素が配置された撮像素子を複数具備し、
前記検出部は、前記撮像素子ごとに前記放射線が入射されたか否かを検出する
前記(6)記載の放射線検出装置。
(8)前記放射線検出部は、一定期間内の前記放射線の検出数から前記放射線の検出頻度を求め、
前記光電変換素子トランジスタは、前記放射線の検出頻度が所定頻度より高い場合には前記電圧が初期化された後の前記所定のタイミングにおいて前記電荷の量を初期化させ、前記所定頻度が前記検出頻度より高い場合には前記電圧が初期化される前に前記電荷の量を初期化させる
前記(6)または(7)に記載の放射線検出装置。
(9)前記転送トランジスタは、前記放射線の検出頻度が所定頻度より高い場合には前記変換処理に要する時間より短い露光時間が前記所定のタイミングから経過したときに前記転送を行い、前記所定頻度が前記検出頻度より高い場合には少なくとも前記変換処理に要する時間が前記所定のタイミングから経過したときに前記転送を行う
前記(8)記載の放射線検出装置。
(9)光を電荷に変換して蓄積する光電変換素子から転送された前記電荷の量に応じた電圧を生成する浮遊拡散層において生成された前記電圧を浮遊拡散層リセットトランジスタが初期化する浮遊拡散層リセット手順と、
変換部が、前記電圧をデジタル信号に変換する変換処理を行う変換手順と、
光電変換素子リセットトランジスタが、前記電圧が初期化された後の所定のタイミングにおいて前記光電変換素子に蓄積された前記電荷の量を初期化する光電変換素子リセット手順と、
転送トランジスタが、前記変換処理に要する時間より短い露光時間が前記所定のタイミングから経過したときに前記光電変換素子から前記浮遊拡散層への前記転送を行う転送手順と
を具備する撮像素子の制御方法。