【文献】
Hassan A.N. et al,Microstructure and Rheology of Yogurt Made with Cultures Differing Only in Their Ability to Produce Exopolysaccharides,J. Dairy Sci.,米国,American Dairy Science Association,2003年 5月,Vol.86, Issue5,pp.1632-1638
【文献】
Hess S.J. et al,Rheological Properties of Nonfat Yogurt Stabilized Using Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus Producing Exopolysaccharide or Using Commercial Stabilizer Systems,J. Dairy Sci.,米国,American Dairy Science Association,1997年 2月,Vol.80, Issue.2,pp.252-263
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
受託番号DSM23590でドイツ微生物培養細胞コレクションセンターに寄託された、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株、及びPIM−1966株(受託番号DSM23590)に由来する突然変異体であって、前記突然変異体が、発酵乳製品における機械的剪断抵抗性の誘発に関して、PIM−1966株(受託番号DSM23590)と同じ又は改善された特性を有する突然変異体からなる群から選択される、乳酸菌株。
少なくとも1つの他の乳酸菌株が、少なくとも1つのストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、及び/又は少なくとも1つのラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)を含む、請求項6に記載の方法。
受託番号DSM23590でドイツ微生物培養細胞コレクションセンターに寄託された、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株、及びPIM−1966株(受託番号DSM23590)に由来する突然変異体であって、前記突然変異体が、発酵乳製品における機械的剪断抵抗性の誘発に関して、PIM−1966株(受託番号DSM23590)と同じ又は改善された特性を有する突然変異体からなる群から選択される少なくとも1つの乳酸菌株を含む、発酵乳製品。
受託番号DSM23590でドイツ微生物培養細胞コレクションセンターに寄託された、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株、及びPIM−1966株(受託番号DSM23590)に由来する突然変異体であって、前記突然変異体が、発酵乳製品における機械的剪断抵抗性の誘発に関して、PIM−1966株(受託番号DSM23590)と同じ又は改善された特性を有する突然変異体からなる群から選択される少なくとも1つの乳酸菌株を含む、乳酸発酵物。
【背景技術】
【0002】
食品産業は、食品の味やテクスチャを改善するために、及び食品の寿命を延長するために、無数の細菌、特に乳酸菌(LAB)を使用する。酪農産業の場合、乳の酸性化をするために(発酵により)、及び乳酸菌が取り込まれる製品にテクスチャを与えるために、乳酸菌が集中的に使用される。
【0003】
食品産業で使用される乳酸菌としては、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ラクトバシルス(Lactobacillus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属が挙げられる。これらの属の乳酸菌は、単独で、又は食品、特に発酵製品の生産のための他の細菌と組合せて、広く使用される。これらは特に、発酵した乳(例えばヨーグルト)の生産のために使用される発酵体の調製に使用される。これらのいくつかは、発酵製品のテクスチャの開発に主要な役割を果たしている。この特性は、多糖の生産に密接に関連している。
【0004】
発酵乳飲料(例えば、飲用ヨーグルト)は、大きくかつ増大するマーケットを形成し、しばしば、プレバイオティクス及びプロバイオティクスとして機能性成分のバックグランドとして機能する。攪拌ヨーグルトセグメントと発酵乳飲料セグメントのテクスチャの課題には、大きな差がある。発酵乳飲料については、滑らかで均一の飲用できる製品を得るために、発酵後にしばしば高剪断処理を適用して、タンパク質ネットワークが破壊される。しかし、このプロセスは、発酵乳飲料の口当たりに大きなコストがかかる。一方では滑らかさや均一性と、他方では口当たりとのバランスが、最適な感覚プロフィールを得ることを、困難にする。WO2008/092458号は、カゼイン:ホエータンパク質比が4:96〜12:88(w/w)の飲用ヨーグルトに関し、これは、発酵後に凝塊が発生することなく作成することができる。凝塊形成を省くことにより、カゼイン凝塊を分解するためのホモジナイズの必要が、省力できる。
【0005】
現在市場にある乳酸菌培養物は、典型的には、高剪断処理に抵抗性の粘度を誘導することは無い。その結果、口当たりを良くするために、例えばデンプンのような増粘剤が、発酵乳飲料にしばしば添加される。あるいは、高脂肪乳を使用して、許容されるレベルの口当たりを得ることができるが、全体の傾向は、「クリーンラベル」の低脂肪製品が好まれ、すなわち安定剤が添加されず、代わりの解決法に対する要求がある。その結果、デンプンの作用を代替する低脂肪の発酵乳飲料用の細菌培養物に対する要求がある。
【0006】
このような培養物は、剪断処理(最大、例えば7バール背圧)を受けることができる剪断抵抗性テクスチャを提供でき、かつ滑らかで均一なテクスチャと組合せても、必要な口当たりを維持できなければならない。
【0007】
近年、例えばセット型ヨーグルトのような多くの低脂肪及び無脂肪乳製品が、市場に入ってきた。しかし脂肪レベルの低下は、ヨーグルトの感覚性及び物性に大きな影響がある。大きな影響を受ける1つの因子は、そのテクスチャである。総固体含量が低いことにより引き起こされるヨーグルトゲルの弱体化のために、液相が分離し、ヨーグルトの上に層を形成する。これは、シネレシスと呼ばれ、製品の欠陥であると見なされる。シネレシスを減少させて総固体量を増やすために、より多くのタンパク質を加えるか、及び/又はデンプンやゼラチンのような増粘剤を加えることにより、異なる工程が行うことができる。しかし、これらの溶液は、コスト的にもラベル表示的にも好ましくない。従って、細菌培養物により引き起こされるシネレシスの減少が、最適であり、非常に好ましいであろう。
【0008】
従って、飲用ヨーグルトの沈降の減少として、そしてセット型ヨーグルトのシネレシスの減少として、測定することができる、改良された安定性を与える、追加の乳酸菌を得るための方法に対するニーズがある。このような乳酸菌は、発酵乳製品、例えばヨーグルト、特にデンプンやペクチンのような増粘剤の添加量が少ない、あるいは添加されていない、低脂肪もしくは無脂肪製品の生産において使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要約
本発明の目的は、乳酸菌株で発酵させる製品の、有意に増加した機械的剪断抵抗と改良された安定性を与える乳酸菌株を得る方法に関する。
【0010】
本発明の別の目的は、有意に増加した機械的剪断抵抗と、デンプンやペクチンのような増粘剤の作用を置換できる改良された安定性とを与える一方、所望の滑らかさとテクスチャ特性とを組合せた必要な口当たりを維持する、乳酸菌を提供することである。更に本発明の目的は、沈降とシネレシスが減少し、改良された滑らかさを有する発酵乳製品を調製する方法を提供する。
【0011】
さらなる目的は、以後明らかになり、更に別の目的は、本発明の分野の当業者には明らかであろう。
【0012】
本発明者は、上記目的を達成するために、広範なスクリーニングと研究を行い、第一の態様において、機械的剪断処理に対して大きな抵抗性を与える乳酸菌株を得るための方法に基づいて、この目的を解決し、この方法は、
a)スキムミルクベース(0.1%の脂肪、3。2%のタンパク質)を、適切な条件(例えば90℃で20分)で熱処理する工程;
b)乳を40℃〜43℃に冷却する工程;
c)乳に、0.01%〜0.03%のF−DVS(約1×10
6 CFU/g〜約3×10
6 CFU/g)の上記乳酸菌を接種する工程;
d)この乳酸菌株を40℃〜43℃でpH4.55まで発酵させる工程;
e)工程d)で得られた発酵乳を、プレート式熱交換器と背圧弁とを含む後処理ユニット中で後処理する工程であって、ここで、プレート式熱交換器は、プレート式熱交換器/背圧弁システム中を通過するヨーグルトを、10秒未満で25℃に冷却するように改変されており、背圧弁は、7バールの背圧を与えるように調整されており、ここで、発酵乳は、ヨーグルトが25℃に冷却されるように、プレート式熱交換器/背圧弁システム中を通過させられる工程;
f)後処理後の剪断応力を測定する工程;及び
g)7バールの背圧による後処理後の剪断応力が少なくとも約12Paなら、その乳酸菌株を選択する、
ことを含んでなる。
【0013】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に従う方法により得られる乳酸菌株、ならびにその細菌株を含有する生物学的に純粋な培養物及び培養物画分に関する。
【0014】
特に本発明者は、機械的剪断処理に対する大きな抵抗性と改良された安定性とを与える、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株とを同定した。テクスチャの大きな剪断抵抗は、飲用ヨーグルトの生産を可能にし、後処理プロセス後に魅力的な高粘度を与える。この改良された安定性は、飲用ヨーグルト用途における沈降の減少と、セット型ヨーグルト用途におけるシネレシスの減少として、測定することができる。
【0015】
これらの株の別の利点は、機械的剪断処理に対してより大きな抵抗性を与える変異株を得るための出発点として、これらを使用できる可能性があることである。機械的剪断処理に対して大きな抵抗性を与える、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株の突然変異体(mutant)と変異株(variant)もまた、本発明の一部である。
【0016】
従って、本発明の第3の態様は、機械的剪断処理に対して大きな抵抗性を与える、受託番号DSM23590を有するラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株、及び受託番号DSM22935を有するストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株、ならびにこれらの株の突然変異体及び変異株からなる群から選択される、新規の乳酸菌株に関する。
【0017】
本発明の第4の態様は、発酵乳製品を調製するための方法であって、
a)乳に、本発明の第2の態様又は第3の態様の乳酸菌株、又はその突然変異体もしくは変異株を、接種する工程;
b)乳を乳酸菌株により好適な条件下で発酵させる工程;
c)場合により、追加の微生物及び/又は添加物を乳に加える工程;
d)場合により、その乳を後処理する工程、及び;
e)場合により、その発酵乳製品を包装する工程、
を含んでなる方法に関する。
【0018】
第5の態様において本発明は、本発明の第4の態様の方法の実施により得られる発酵乳製品に関する。
【0019】
第6の態様において本発明は、受託番号DSM23590を有するラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株、及び受託番号DSM22935を有するストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株、ならびにこれらの株の突然変異体及び変異株からなる群から選択される、少なくとも1つの乳酸菌株を含む、発酵乳製品に関する。
【0020】
第7の態様において本発明は、本発明の第2の態様又は第3の態様の乳酸菌を含む乳酸菌発酵物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本明細書において用語「乳酸菌」は、グラム陽性、微好気性又は嫌気性細菌であって、主に産生される酸としての乳酸、酢酸、及びプロピオン酸を含む酸を産生して、砂糖を発酵させる細菌を示す。工業的に最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス(Lactococcus)属菌種、ストレプトコッカス(Streptococcus)属菌種、ラクトバシルス(Lactobacillus)属菌種、ロイコノストック(Leuconostoc)属菌種、シューロイコノストック(Pseudoleuconostoc)属菌種、ペディオコッカス(Pediococcus)属菌種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属菌種、エンテロコッカス(Enterococcus)属菌種、及びプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属菌種を含む、ラクトバシルス目(Lactobacillales)内に存在する。更に絶対嫌気性細菌の群に属する乳酸産生細菌であるビフィズス菌(bifidobacteria)、すなわちビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属菌種は、一般に乳酸菌の群に含まれる。これらはしばしば、食品培養物として、単独で、又は他の乳酸菌と組合せて使用される。ラクトバシルス(Lactobacillus)属菌種とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の細菌を含む乳酸菌は、通常、発酵乳製品のような酪農製品の生産のために、発酵容器又はバットに直接接種するための、バルクスターター増殖のための凍結もしくは凍結乾燥培養物、又はいわゆる「凍結直接バットセット(Frozen DIrect Vat Set)」(F−DVS)培養物として、酪農業界に供給される。このような培養物は、一般「スターター培養物」又は「スターター」と呼ばれる。
【0023】
用語「乳」は、任意の哺乳動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー、又はラクダの乳を搾ることにより得られる乳汁と理解すべきである。好適な実施態様において、乳はウシの乳である。乳という用語はまた、植物材料から作られるタンパク質/脂肪溶液、例えば豆乳も含む。
【0024】
用語「乳基質」は、本発明の方法に従って発酵を受けることができる、任意の生の及び/又は加工した乳材料でもよい。すなわち有用な乳基質には、特に限定されないが、全乳もしくは低脂肪乳、スキムミルク、バター乳、復元乳粉末、練乳、粉乳、ホエー、ホエー透過物、乳糖、乳糖の結晶化からの母液、ホエータンパク質濃縮物、またはクリーム、のようなタンパク質を含む乳又は乳様製品の溶液/懸濁物がある。明らかに乳基質は、いずれの哺乳動物に由来するものでもよく、例えば実質的に純粋な哺乳動物乳、又は復元された粉乳でもよい。
【0025】
発酵の前に、乳基質は、当該分野で公知の方法に従って、ホモジナイズされ、低温殺菌される。
【0026】
本明細書において「ホモジナイズ」は、可溶性懸濁物又はエマルジョンを得るための、激しい混合を意味する。ホモジナイゼーションが発酵の前に行われる場合、これは、それ以上乳脂肪が乳から分離することが無いように、乳脂肪を小さいサイズに分解するように行われる。これは、乳を高圧で小孔から押し出すことにより行われる。
【0027】
本明細書において「低温殺菌」は、微生物のような生きている生物の存在を減少させるか又は排除するための、乳基質の処理を意味する。好ましくは低温殺菌は、特定の時間、特定の温度を維持することにより行われる。特定の温度は、通常加熱により行われる。温度と持続時間は、有害な細菌のようなある種の細菌を死滅又は不活性化させるために、選択することができる。次に、急速な冷却工程が続く。
【0028】
本発明の方法において「発酵」は、微生物の作用による、炭水化物のアルコール又は酸への変換を意味する。好ましくは、本発明の方法において発酵は、乳糖から乳酸への変換を含む。
【0029】
発酵乳製品の生産に使用される発酵プロセスは、公知であり、適切なプロセス条件、例えば当業者は、温度、酸素、微生物の量と特性、及び処理時間を選択する方法を周知しているであろう。明らかに、発酵条件は、本発明の達成を支持するように、すなわち、固体型又は液体型の乳製品(発酵乳製品)を得るように行われる。
【0030】
用語「攪拌型製品」は特に、発酵後に機械的処理を受けて、発酵工程で形成された凝塊の破壊及び溶解を引き起こしている発酵乳製品を意味する。機械的処理は、典型的には(しかし排他的ではない)、ゲルを攪拌、ポンプ処理、ろ過、又はホモジナイズすることにより、又はこれを他の成分と混合することにより、行われる。攪拌型の製品は、典型的には(しかし排他的ではない)、乳固形分非脂肪含量が9〜15%である。
【0031】
用語「セット型製品」及び「セット型ヨーグルト」は、スターター培養物を接種された乳に基づき、接種工程後に包装され、次に包装物中で発酵された、それぞれ製品及びヨーグルトを含む。
【0032】
用語「飲用製品」は、「飲用ヨーグルト」などの飲料を含む。用語「飲用ヨーグルト」は典型的には、ラクトバシルス(Lactobacillus)種とストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の組合せによる発酵により製造される乳製品を含む。飲用ヨーグルトは典型的には、乳固形分非脂肪含量が8%又はそれ以上である。更に、飲用ヨーグルト飲料用の培養物の数は、典型的には少なくとも10
6 細胞形成単位/mlである。
【0033】
「機械的後処理」は、プレート式熱交換器と背圧弁とを特徴とする後処理ユニットで行われた。ヨーグルトは、プレート式熱交換器/背圧弁システムを、<10秒で通過する。後処理ユニットは、異なる温度(ここでは、25℃が適用された)と異なる背圧(ここでは、それぞれ0、7、及び15バールが適用された)で操作することができる。この処理の前に、ヨーグルト凝塊は、攪拌により分解されて液体ヨーグルトになる。
【0034】
この文脈で「高剪断処理」は、攪拌ヨーグルトに適した背圧より高い背圧、すなわち約3バールより上の背圧による機械的せん断処理を意味する。
【0035】
明細書において用語「剪断応力」は、粘度を決定する。粘度(単位はPaである)は、断応力(Pa)/ひずみ速度(1/s)として定義される。
剪断応力弁は、ここでは標準的に、ひずみ速度=300 1/sとして報告される。官能検査実験は、レオロジー測定値と感覚粘度/口粘度の最適の相関は、ひずみ速度300 1/sで測定した粘度を使用して見つけられることを、示している(データは示していない)。
【0036】
本明細書において用語「滑らかさ」は、テクスチャの粗さが無いことを意味し、実施例2で例示されるように、熟練した官能パネルにより与えられる滑らかさ官能検査スコアにより決定される。本明細書において「好ましい滑らかさ」は、滑らかさ官能検査スコアが7より大きいテクスチャを意味する。
【0037】
本文脈において用語「突然変異体」は、遺伝子操作、放射線照射、及び/又は化学的処理により、本発明の株から得られる株として理解すべきである。突然変異体は、機能的に同等の突然変異体、例えば母株と実質的に同じか、又は改良された性質(例えば、粘度、ゲル硬度、口の被覆、風味、後酸性化、酸性化速度、及び/又はファージ耐性)を有する突然変異体である、ことが好ましい。このような突然変異体は、本発明の一部である。特に用語「突然変異体」は、エタンメタンスルホネート(EMS)もしくはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトログアニジン(NTG)のような化学的変異誘発物質、紫外線による処理を含む、通常使用される突然変異誘発処理に、本発明の株を付すことにより得られる株、又は自然に発生する突然変異体を意味する。または、いくつかの突然変異誘発処理(1つの処理は、突然変異誘発工程とそれに続くスクリーニング/選択工程であると理解すべきである)に付してもよいが、本発明において、20以下の、又は10以下の、又は5以下の処理(又はスクリーニング/選択工程)を行うことが好ましい。本発明の好適な突然変異体において、母株と比較して、細菌ゲノム中の5%未満、又は1%未満、又は更に0.1%未満のヌクレオチドが、別のヌクレオチドで置換されているか、又は欠失されている。
【0038】
本文脈において用語「変異株」は、本発明の株と機能的に同等の株、例えば実質的に同じか、又は改良された性質(例えば、粘度、ゲル硬度、口の被覆、風味、及び/又は後酸性化)を有する株として理解すべきである。適切なスクリーニング法を使用して同定されるこのような変異株は、本発明の一部である。
【0039】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)において用語「a」、「an」、及び「the」と類似の参照物の使用は、特に別の指定がなければ、又は文脈により明らかに反対であることが記載されていない場合は、単数も複数も包含すると考えるべきである。用語「含んでなる」、「有する」、「含む」、及び「含有する」は、特に別の指定がなければ、制約の無い用語(すなわち、「含むが、特に限定されない」を意味する)と理解すべきである。本明細書において、値の範囲の記載は、特に別の指定がなければ、範囲内にある各別個の値を個々に言及する簡略法として機能し、各別個の値は、本明細書において個々に記載されているかのように本明細書に取り込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、特に別の指定がなければ、又は文脈により明らかに反対であることが記載されていない場合は、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書に記載されるいずれかの及びすべての例、又は例示表現(例えば、「のような」)の使用は、本発明をよりよく例示するためであり、特に別の指定がなければ、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書の用語は、クレームされていない要素を、本発明の実施に必須であると、考えてはならない。
【0040】
本発明の実施と態様
驚くべきことに本発明の発明者は、いくつかの乳酸菌が、機械的後処理に対して大きな抵抗性を有するテクスチャを与え、従ってデンプンやペクチンのような安定剤を加える必要無しで、高粘度、高レベルの口当たり、沈降の減少、シネレシスの減少、及び好ましい滑らかさを有する、飲用ヨーグルト又はセット型ヨーグルトのような発酵乳製品を、生産する能力を与えることを特定した。
【0041】
本発明の発明者は、研究の過程で非常に認識し易い方法で、機械的せん断処理に対して大きな抵抗性を与える乳酸菌を得る方法を、開発した。この方法は、スキムミルクに接種するのに乳酸菌が使用され、標準的発酵条件下で40℃〜43℃でpH4.55まで発酵される、スクリーニング法を含む。得られた発酵乳を7バールの背圧で剪断処理により後処理後、剪断応力として決定される粘度が測定される。発酵乳の剪断応力が少なくとも閾値の12Paである場合に、本発明の適切な乳酸菌株が選択される。
【0042】
従って、本発明の第1の態様は、機械的剪断処理に対して大きな抵抗性を与える乳酸菌株を得るための方法であって、
a)スキムミルクベース(0.1%の脂肪、3。2%のタンパク質)を、当業者に公知の適切な条件(例えば90℃で20分)で熱処理する工程;
b)乳を40℃〜43℃に冷却する工程;
c)乳に、0.01%〜0.02%のF−DVS(約1×10
6 CFU/g〜約3×10
6 CFU/g)の上記乳酸菌を接種する工程;
d)乳を該乳酸菌株により40℃〜43℃でpH4.55まで発酵させる工程;
e)工程d)で得られた発酵乳を、プレート式熱交換器と背圧弁とを含む後処理ユニット中で後処理する工程であって、ここで、プレート式熱交換器は、プレート式熱交換器/背圧弁中を通過するヨーグルトを、10秒未満で25℃に冷却するように改変されており、背圧弁は、7バールの背圧を与えるように調整されており、ここで、発酵乳は、ヨーグルトが25℃に冷却されるように、プレート式熱交換器/背圧弁システム中を通過させられる工程;
f)後処理後の剪断応力を測定する工程;及び
g)7バールの背圧による後処理後の剪断応力が少なくとも約12Paなら、その乳酸菌株を選択する、
ことを含んでなる、方法に関する。
【0043】
好適な実施態様において、7バールの背圧による後処理後の剪断応力は、少なくとも約13Pa、例えば少なくとも約14Paである。
【0044】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に従う方法により得られる乳酸菌株、ならびにその細菌株を含有する生物学的に純粋な培養物及び培養物画分に関する。
【0045】
本発明の第3の態様は、受託番号DSM23590を有するラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株、及び受託番号DSM22935を有するストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株、ならびに、それぞれ寄託株DSM23590又はDSM22935の剪断応力抵抗特性を与える、これらの突然変異体及び変異株、からなる群から選択される乳酸菌株に関する。
【0046】
好ましくは、この突然変異体又は変異株は、少なくとも約5〜40Pa、さらに好ましくは10〜20Paの剪断応力抵抗を与える。例えば、この突然変異体又は変異株は、約12Pa、13Pa、14Pa、15Pa、16Pa、17Pa、18Pa、又は19Paの剪断応力抵抗を有することができる。
【0047】
機械的せん断処理に対して大きな抵抗性を与える本発明のLAB株は、ヨーグルトのような発酵乳製品の調製に特に適している。特に、飲用ヨーグルト、攪拌ヨーグルト、及びセット型ヨーグルト用途では、このような株は、デンプンやペクチンのような安定剤の添加の必要性を減らしてくれる。
【0048】
従って本発明は、乳に、機械的せん断処理に対して大きな抵抗性を有するテクスチャを与えるLAB株を接種する工程と、この乳を好適な条件下で発酵させる工程とを、含んでなる発酵乳製品を産生するための方法に関する。
【0049】
当業者には公知のように、種々の乳製品は、乳を異なる乳酸菌とともに発酵させることにより得ることができる。好適な実施態様において、発酵乳製品は、ヨーグルト、飲用ヨーグルト、攪拌ヨーグルト、及びセット型ヨーグルト、及びヨーグルト様飲料、ビター乳、バター乳、酸乳、フレッシュチーズ、及びチーズからなる群から選択される製品である。ある好適な実施態様において、発酵乳製品は飲用ヨーグルトである。別の好適な実施態様において、発酵乳製品はセット型ヨーグルトである。
【0050】
一般に当業者は、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)やストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)のような、本発明に関連する細菌を用いて、乳を発酵させるための適切な発酵条件を周知している。本発明において適切な条件には、特に限定されないが、乳に細菌を接種し、38℃〜43℃で、pHが4.4〜4.6に達するまで(ほぼ8時間後)発酵させる場合を含む。乳を+6℃まで冷却すると、発酵と増殖が停止する。
【0051】
必要であれば、一般的知識に基づき、おそらくはルーチンの実験後、当業者が標準的発酵条件を修飾してもよい。培地は、関連する菌株を培養するための適切な媒体である。
【0052】
好適な実施態様において、乳に接種するのに使用される乳酸菌株は、受託番号DSM23590を有するラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株と、受託番号DSM22935を有するストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株、及びこれらの株の突然変異体と変異株からなる群から選択される。ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株、及びその突然変異体と変異株、及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株、ならびにその突然変異体及び変異株は、1×10
4 〜1×10
7 CFU(コロニー形成単位)の細菌/ml乳基質で接種される。
【0053】
生存活性のある細胞数の測定は、当該分野で公知の標準的方法に従って、寒天プレート上でコロニーを計測して、連続希釈物中の細菌のコロニー形成単位(CFU)の数を定量することにより、行われる。適切な媒体と接種条件は、当業者に公知であり、下記の実施例に示される。
【0054】
所望であれば、目的のある時点(例えば、発酵の完了後)で、追加の細菌(例えば、追加のラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株)を加えてもよい。
【0055】
工程a)において乳に、乳酸菌の少なくとも1つの他の株が接種される。乳には、各細菌種を別に/連続して、又は2種又はそれ以上の細菌種と同時に接種してもよいことを理解すべきである。乳には細菌種を同時に接種することが、好ましい。これは、細菌種を含むスターター培養物を乳に接種することにより、便利に行われる。
【0056】
好適な実施態様において、少なくとも1つの細菌株は、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバシルス(Lactobacillus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、シューロイコノストック(Pseudoleuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、及びプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の1つ又はそれ以上の細菌である。
【0057】
本発明の特に好適な実施態様において、乳酸菌の少なくとも1つの他の株は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の少なくとも1つの株、及び/又はラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)の少なくとも1つの株を含む。
【0058】
本明細書において、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の少なくとも1つの株は、任意の適切な(例えば、市販されている)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株でもよい。当業者に公知のように、最終的発酵乳製品中のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の充分量を得るために、株は充分な量で接種される。
【0059】
本明細書において、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)の少なくとも1つの株は、任意の適切な(例えば、市販されている)ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)株でもよい。当業者に公知のように、最終的発酵乳製品中のラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)の充分量を得るために、株は充分な量で接種される。
【0060】
好適な実施態様において、乳は、乳基質1ml当たり10
4 〜10
7 CFUの少なくとも1つのストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、及び/又は、乳基質1ml当たり10
4 〜10
7 CFUの少なくとも1つのラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)株が接種される。
【0061】
本発明の好適な実施態様において、乳は、25℃に冷却するように調整されたプレート式熱交換器と、適切な背圧を与えるように調整された背圧弁とを、特徴とする後処理ユニット中で、高剪断処理により後処理される。ヨーグルトは、<10秒でプレート式熱交換器/背圧弁システムを通貨する。
【0062】
好適な実施態様において、高剪断処理は、3〜15バールの背圧による処理である。更に好適な実施態様において、高剪断処理は、6〜8バールの背圧による処理である。好ましくは高剪断処理は、約7バールの背圧による処理である。
【0063】
別の実施態様において、乳は後処理されず、発酵後沈降するように放置される。
特に好適な実施態様において、乳に安定剤は加えられない。
【0064】
本発明の実施態様において、発酵乳製品は、10〜5000mlの製品、例えば25〜3000ml、又は50〜1000mlの製品を含む密封包装で、便利に包装される。包装の例は、10〜300ml、20〜200ml、又は30〜100mlを含んでよい。
【0065】
本発明のさらなる態様は、発酵乳製品を調製する方法により得られる発酵乳製品である。
本発明の別の態様は、本発明の第2の態様又は第3の態様に従う、少なくとも1つの乳酸菌株を含む発酵乳製品である。
【0066】
好適な実施態様において、このような発酵乳製品はヨーグルト、好ましくは飲用ヨーグルト、又はセット型ヨーグルトである。
本明細書に記載の発酵乳製品はまた、他の食用食品製品、例えば凝固チーズ、チョコレート、ジュース、肉製品、及び乳児用の乾燥乳製品(人工栄養乳)に入れられる添加物として使用することもできる。
【0067】
他の態様は、本発明の第2の態様又は第3の態様に従う少なくとも1つの乳酸菌株、又はその突然変異体もしくは変異株を含む、乳酸発酵物に関する。
【0068】
好適な実施態様において、乳酸発酵物は、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株、又はその突然変異体もしくは変異株を含む。別の好適な実施態様において、乳酸発酵物は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株、又はその突然変異体もしくは変異株を含む。
【0069】
本発明の好適な実施態様において、乳酸発酵物は、凍結型、凍結乾燥型、又は液体型である。
【0070】
本発明の実施態様は、非限定例により以下に説明される。
【実施例】
【0071】
実施例1
改良されたテクスチャを有するLb.デルブルエッキイ(Lb. delbrueckii)亜種ブルガリクスLB−1からのファージ耐性突然変異体の開発
母株であるLB−1から、ファージ耐性突然変異体を以下のように単離した。LB−1の一晩培養物0.1mlを、1ml当たり10
6 ファージ粒子を含有するCHPC658ファージ溶解物0.1mlとともに蒔いて、37℃で2日間嫌気的にインキュベーション後、10mM CaCl
2/10mM MgCl
2を含有するMRS寒天プレートから、突然変異体を取り上げた。
【0072】
30個の突然変異体を単離し、ファージ株CHPC658に対して、交差画線培養で試験した。交差画線試験で、29個の突然変異体が抵抗性であり、次に、MRS寒天プレート上で3倍コロニー精製した。
【0073】
この29個の突然変異体を、マイクロタイタープレート中で、酸性化プロフィールとファージ耐性について試験した。乳を用いて2個のマイクロタイタープレートを調製し、各プレートに、2%の各突然変異体を接種した。1つのプレートには、各ウェルに2%ペプトン−塩希釈物(対照)を加え、別のマイクロタイタープレートには、10
6 ファージ粒子を含有する2%CHPC658ファージ株を加えた。この2つのプレートを37℃で2日間インキュベートし、各ウェルのpHを12分毎に測定した。ファージ抵抗性突然変異体の大部分が酸性化プロフィールを示し、これは母株(24時間後、pH約5.5)に匹敵した。すべての突然変異体は、母株LB−1(これはファージCHPC658株により攻撃された)と比較してファージ耐性であった。
【0074】
菌株の酸性化プロフィール(母株に似ている)と粘度パラメータに基づいて、突然変異体LB−4を剪断処理耐性について試験した。
【0075】
実施例2
いくつかの乳酸菌株を用いて作成した発酵乳のテクスチャの、機械的後処理に対するせん断抵抗を、3つの異なるレベルの後処理(0、7、及び15バール背圧)を使用して、飲用ヨーグルト用途で調べた。ST−1とST−2は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株であり、LB−1とLB−2、及びPIM−1966は、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)株である。
【0076】
実験
この試験は、2つのレプリカで行い、平均値が与えられる。すべての試料について同等の発酵時間を得るために、すべての株をヘルパー株とともに発酵させた(表1を参照)。
【0077】
製造
スキムミルクベース(0.1%の脂肪、3.2%のタンパク質、8%のショ糖)を使用して、各培養物の4リットルのヨーグルトを製造した。乳を90℃で20分熱処理し、発酵温度43℃まで冷却した。次に乳に、全部で0.02%の表1のF−DVS培養物を接種した。同様の発酵時間を達成するために、ヘルパー株を使用した。CHCC−7018は、エキソ多糖(EPS)産生の無いタンパク質分解性ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株であり、従って、「迅速な」酸性化に寄与するが、テクスチャには影響しない。CHCC−4351はEPS産生の無いラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)株であり、酸性化に寄与するが、テクスチャには影響しない。乳をpH4.55まで発酵した。次にヨーグルトを後処理し、後処理ユニット(PTU)中で25℃まで冷却した。各ヨーグルトについて、それぞれ0、7、及び15バールの背圧で後処理後、試料を取った。
【表1】
【0078】
分析
ヨーグルトを以下について性状解析した:
レオロジー:自動サンプルチェンジャーを取り付けたAnton Paar MCR レオメーター(Anton Paar, Austia)で、BOB/COP測定系を用いて飲用ヨーグルト構成を使用。ひずみ速度(0 1/s−300 1/s−0 1/s)の関数として剪断応力を測定するフロー曲線を採取した。
官能性:7バールの背圧で後処理した試料が、「エキスパートパネル」により実験室で評価された。滑らかさスコア(スケール0〜9)が与えられた。
沈降に対する安定性:をタービスキャン(Turbiscan)を使用して調べた。
【0079】
結果
表2は、それぞれRepIとIIからの結果を示す。
【表2】
【0080】
図1は、2つの実験での繰り返しで、後処理背圧の関数としての剪断応力を示す。
図2は、4つの異なる株を用いて作成した飲用ヨーグルトの後処理の関数としての沈降を示す。沈降は、21日間の保存後に測定した。
【0081】
考察
せん断抵抗:
表2と
図1から明らかなように、10〜36Paまでの大きな初期テクスチャレベル(0バール後処理)の変動がある。しかし、7バール背圧の後処理後、この範囲は4〜14Paに縮まった。15バールの後処理後、この範囲は2〜8Paであった。PIM−1966株は、他の株からのテクスチャと比較して、機械的後処理に対して顕著に抵抗性のテクスチャを与えることが、明らかである。PIM−1966の存在は、後処理前(0バールの試料)に特に大きな剪断応力を与えないが、テクスチャは、それぞれ7バールと15バールの後処理後に、他のどの株より有意に大きく粘性である。
【0082】
安定性:
一般的に、高い後処理は、低い安定性を与える(多い沈降)。
最大の安定性はPIM−1966を用いて製造した飲用ヨーグルトで見られ、これは21日間の保存後に最も低レベルの沈降を有する。これは、7バールと15バールの両方に当てはまる。
【0083】
官能評価:
PIM−1966を用いて作成した飲用ヨーグルトは、官能専門家グループにより、非常に高い滑らかさを有すると評価された(スコアは9のうちの9)。
【0084】
結論
結論として、PIM−1966株は、機械的剪断応力に対して大きな抵抗性を与えるためにユニークであり、これはまた、7バールの背圧後処理後に12Paより小さい剪断応力を与えるLAB株と比較して、飲用ヨーグルト用途で高い滑らかさと沈降に対する安定性とを与える。
【0085】
実施例3
機械的剪断応力に対する大きな抵抗性を与える他のLAB株を同定するために、飲用ヨーグルト用途で、7バールの背圧による後処理後に、約12Paより上の剪断応力について、いくつかの株を本発明に従ってスクリーニングした。PIM−1966は、再度、陽性対照として含めた。
【0086】
実験
この試験は、二重測定で行った。すべての試料(表1を参照)について、同等の発酵時間と得るために、すべての株をヘルパー株とともに発酵させた。ST−1、ST−2、ST−4、ST−5、ST−6、ST−7、及びCHCC−11977は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株であり、LB−1、LB−4、LB−5、及びPIM−1966は、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)株である。
【0087】
製造
製造は実施例1のように行った。
【0088】
分析
ヨーグルトをレオロジーについて性状解析した:
試験的に、我々は、0〜300 1/sの範囲のひずみ速度の関数として剪断応力を測定した−これは、いわゆるフロー曲線を与える。
装置は、自動サンプルチェンジャーを取り付けたAnton Paar MCR レオメーター(Anton Paar, Austia)で、BOB/COP測定系を用いて飲用ヨーグルト構成を使用した。ひずみ速度(01/s−3001/s−0/s)の関数として剪断応力を測定するフロー曲線を採取した。
【表3】
【0089】
結果
図3と4は、2回の試験の繰り返し測定で、後処理背圧の関数としての剪断応力を示す。
図3は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株を示し、
図4は、ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)株を示す。
【0090】
結論
PIM−1966突然変異体であるLB−3は、PIM−1966より、機械的せん断処理に対する大きな抵抗性と、高い粘度を与えることがわかった。更に、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株もまた、本発明に従って、大きな機械的せん断抵抗を与えることがわかった。ST−11977は、飲用ヨーグルト用途で、高い粘度と高い滑らかさを与える。
【0091】
寄託と専門家の説明
本出願は、特許が付与される日までは、以下の寄託された微生物の試料は、専門家のみが利用できることを要求する。
【0092】
ラクトバシルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)PIM−1966株は、2010年5月6日に、ドイツ微生物培養細胞コレクションセンター(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweig)(DSMZ)に寄託され、受託番号DSM23590が与えられた。
【0093】
ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CHCC−11977株は、2009年9月8日に、。ドイツ微生物培養細胞コレクションセンター(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweig)(DSMZ)に寄託され、受託番号DSM22935が与えられた。
【0094】
寄託は、 特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)に従って、行われた。
【0095】
文献
WO2008/092458号