特許第6087819号(P6087819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087819
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】単一の完全一体型の手持デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   A61B5/05 N
【請求項の数】27
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-529383(P2013-529383)
(86)(22)【出願日】2011年9月16日
(65)【公表番号】特表2013-537097(P2013-537097A)
(43)【公表日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】US2011052042
(87)【国際公開番号】WO2012037527
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】61/467,857
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/459,127
(32)【優先日】2010年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/516,944
(32)【優先日】2011年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/403,453
(32)【優先日】2010年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/571,203
(32)【優先日】2011年6月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506335938
【氏名又は名称】ニューロメトリックス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(72)【発明者】
【氏名】ベッチャー,ボニージーン
(72)【発明者】
【氏名】クライアン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ゴザニ,シャイ・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ハーブ,グレン
(72)【発明者】
【氏名】コン,スアン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フェンドロック,チャールズ
【審査官】 田邉 英治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05215100(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0129771(US,A1)
【文献】 特開昭60−194933(JP,A)
【文献】 米国特許第04121573(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0185409(US,A1)
【文献】 特開平11−099131(JP,A)
【文献】 特開2008−301938(JP,A)
【文献】 実開昭60−041851(JP,U)
【文献】 米国特許第05327902(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04− 5/05
G01R 27/00−27/32
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のいずれかの脚の腓腹神経伝導速度および振幅を測定するための単一の完全一体型の手持デバイスであって、
使用者が手持ちできるように適合されたハウジングであって、前記患者のいずれかの脚に前記デバイスを押し付け可能に前記使用者の手で握れるように適合されたハンドル、及びヘッドを備えた、ハウジングと、
前記患者のいずれかの脚にあるヒトの腓腹神経を電気的に刺激するために前記ハンドルに弾性的に装着された刺激手段と、
前記ヘッドに取外し可能に弾性的に装着され、前記患者のいずれかの脚で前記刺激手段によって誘発される腓腹神経応答を検出するための、第1及び第2の横方向に隔てられた記録チャネルとなるように前記ハウジングに対して物理的に配置された、複数の電極を備えたバイオセンサと、
前記ハウジングに搭載され、前記第1及び第2の横方向に隔てられた記録チャネルによって検出された前記腓腹神経応答を電気的に取得するために前記バイオセンサに電気的に接続された取得手段と、
前記第1及び第2の横方向に隔てられた記録チャネルのうちのどちらが前記腓腹神経応答の最適な信号を提供するかを決定するためのチャネル決定手段と、
前記ハウジングに搭載され、前記取得手段及び前記チャネル決定手段に電気的に接続された処理手段であって、前記取得手段から提供され、前記チャネル決定手段で前記腓腹神経応答についての前記最適な信号であると決定された、取得された腓腹神経応答をデジタル化し、処理し、格納するように構成された、処理手段と、
前記ハウジングに搭載され、前記処理手段から提供された処理された腓腹神経応答の前記伝導速度および振幅を計算するために前記処理手段に電気的に接続された計算手段と、
前記計算手段から提供された計算された腓腹神経伝導速度および振幅を表示するために前記ハウジングに搭載された表示手段とを備え、
前記刺激手段および前記バイオセンサは、前記使用者がいずれの脚が検査されているかに関わらず同じように前記ハンドルを用いて前記ハウジングを操作することによって、腓腹神経の付近の、前記患者のいずれかの脚に押し付けられるように構成された、
デバイス。
【請求項2】
前記刺激手段は、一対の刺激電極を備え、前記刺激電極の少なくとも1つは調節可能な高さを有し、これにより、電流を被験者に流して変化する表面解剖学的構造の下で末梢神経を刺激する請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ハウジングに装着された一対の刺激プローブをさらに備え、前記2つの伝導プローブのうちの少なくとも一方は、前記ハウジングと前記患者の解剖学的構造との間の距離に合わせて自動調節する可変の長さを有して、前記プローブの先端部と不均一な高さの皮膚表面との間の完全な接触を行うことを可能にする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記バイオセンサは、少なくとも2つの対の能動電極を備え、各対は独立した神経応答検出チャネルを形成する請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ハウジングは、接着剤でコーティングされた柔軟な材料のパッドを通して前記ハウジングに物理的に取り付けられた前記バイオセンサに電気的に接続するためのバイオセンサポートを備えて、前記ハウジングの剛性のある平坦な表面と人体の各場所の柔軟で凸凹した表面との間に物理的界面を形成する請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記デバイスは、最大刺激強度を決定するための決定手段を備えた請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記処理手段は、前記神経応答の前記開始、負のピーク、および正のピークの識別を行うように構成された請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
神経伝導検査の直前に、神経伝導検査を実行している間に、及び神経伝導検査の後に、前記神経の付近で前記患者の皮膚温度を測定するために前記ハウジングに装着された温度感知プローブをさらに備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記計算手段は、前記温度感知プローブによって測定された前記皮膚温度を使用して、それらの値が前記表示手段に表示される前に前記神経伝導速度および振幅に対する温度の影響を補償する請求項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記計算手段は、前記温度感知プローブによって測定された前記皮膚温度またはそれらの統計量を所定の温度範囲と比較し、前記測定された温度またはそれらの統計量が前記所定の温度範囲外である場合に、エラーメッセージが前記表示手段に表示される請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記計算手段は、前記皮膚温度の統計量を解析して前記温度測定結果の信頼度と検査条件の適切さを判定する請求項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記バイオセンサは、オス部材を備え、前記ハウジングは、メス部材を備え、これにより、前記オス部材が前記メス部材に挿入されたときに、前記バイオセンサは、前記取得手段に電気的に接続されて前記接続は前記デバイスによって登録される請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記バイオセンサは、あるビットパターンで符号化される請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記バイオセンサのビットパターンの最近の履歴は、前記デバイスによって検出され格納される請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記バイオセンサのビットパターンの前記最近の履歴がランダムに分布しているかどうかを判定する請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
ビットパターンの前記最近の履歴がランダムではない場合、前記デバイスにより前記表示手段に警告が表示されるまたは前記デバイスを使用不能にする請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
患者のいずれかの脚の腓腹神経伝導速度および振幅を測定するための単一の完全一体型の手持デバイスであって、
使用者が手持ちできるように適合されたハウジングであって、患者の前記脚に前記デバイスを押し付け可能に前記使用者の手で握れるように適合されたハンドル、及びヘッドを備えた、ハウジングと、
前記ヘッドに取外し可能に弾性的に装着され、前記ハウジングと連携して移動するように適合されたバイオセンサであって、前記患者のいずれかの脚で前記単一の完全一体型の手持デバイスによって誘発される腓腹神経応答を検出するための、第1及び第2の横方向に隔てられた記録チャネルとなるように前記ハウジングに対して物理的に配置された、複数の電極と、前記複数の電極を前記単一の完全一体型の手持デバイスに電気的に接続するための電気コネクタとを備えた、バイオセンサとを備えた、
デバイス。
【請求項18】
患者のいずれかの脚の腓腹神経伝導速度および振幅を測定するための単一の完全一体型の手持神経伝導検査デバイスであって、
前記デバイスは、手持コンポーネントおよび1人患者用バイオセンサコンポーネントを備え、複数の電極対から成る前記バイオセンサコンポーネントは、神経応答を取得するために前記手持コンポーネントに物理的に、かつ電気的に接続され、
前記手持コンポーネントは、使用者が手持ちできるように適合されたハウジングであって、前記患者のいずれかの脚に前記デバイスを押し付け可能に前記使用者の手で握れるように適合されたハンドル、及びヘッドを備えた、ハウジングと、前記患者のいずれかの脚にあるヒトの腓腹神経を電気的に刺激するために前記ハンドルに弾性的に装着された刺激手段とを備え、
前記1人患者用バイオセンサコンポーネントは、前記ヘッドに取外し可能に弾性的に装着されたバイオセンサユニットを備え、前記バイオセンサユニットは、前記患者のいずれかの脚で前記刺激手段によって誘発される神経応答を検出するための、第1及び第2の横方向に隔てられた記録チャネルとなるように前記ハウジングに対して物理的に配置された、複数の電極を備え、
前記手持コンポーネントはさらに、前記ハウジングに搭載され、前記第1及び第2の横方向に隔てられた記録チャネルによって検出された前記神経応答を電気的に取得するために前記バイオセンサユニットに電気的に接続された取得手段と、前記第1及び第2の横方向に隔てられた記録チャネルのうちのどちらが前記腓腹神経応答の最適な信号を提供するかを決定するためのチャネル決定手段と、前記ハウジングに搭載され、前記取得手段及び前記チャネル決定手段に電気的に接続された処理手段であって、前記取得手段から提供され、前記チャネル決定手段で前記腓腹神経応答についての前記最適な信号であると決定された、取得された腓腹神経応答をデジタル化し、処理し、格納するように構成された、処理手段と、前記ハウジングに搭載され、前記処理手段から提供された処理された神経応答の前記神経伝導速度および振幅を計算するために前記処理手段に電気的に接続された計算手段と、前記計算手段から提供された計算された神経伝導速度および振幅を表示するために前記ハウジングに搭載された表示手段とを備え、
前記刺激手段および前記バイオセンサユニットは、前記使用者がいずれの脚が検査されているかに関わらず同じように前記ハンドルを用いて前記ハウジングを操作することによって、前記神経の付近の、前記患者のいずれかの脚に押し付けられるように構成される、デバイス。
【請求項19】
前記バイオセンサコンポーネントは、個別の電極に接続されていない追加のトレースを備え、前記トレースは、間にさまざまな組み合わせパターンを形成し、前記手持コンポーネントに埋め込まれている電子回路によって復号化される請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記さまざまな組み合わせパターンは、前記バイオセンサコンポーネントと前記手持コンポーネントとの適切な接続、前記手持コンポーネントに接続された前記バイオセンサコンポーネントの種類、および前記バイオセンサコンポーネントの納入業者の識別、のうちの少なくとも1つを自動的に認識するための手段をもたらす請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
互換性のある前記バイオセンサコンポーネントと前記手持コンポーネントとの接続を自動的に検出し、前記バイオセンサコンポーネントの種類に基づき適切な検査設定を開始するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた請求項18に記載のデバイス。
【請求項22】
応答波形の特徴を解析することによって、かつその後の刺激強度レベルを制御することによって、最大神経応答を誘発するのに必要な刺激強度レベルを自動的に決定するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた請求項18に記載のデバイス。
【請求項23】
複数の電極対から取得された波形から導出される神経応答特徴の集まりに基づき好ましい記録電極対を選択するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた請求項18に記載のデバイス。
【請求項24】
刺激の開始前の波形セグメントに基づき雑音レベルを推定することによって、かつ最大刺激によって誘発される前記神経応答の振幅を推定することによって、平均された神経応答を形成するために必要な神経応答の数を予測するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた請求項18に記載のデバイス。
【請求項25】
複数の波形が平均された神経応答波形を形成することを目的として取得されるときに外れ値である波形を除去するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた請求項18に記載のデバイス。
【請求項26】
個別の波形は、波形の移動平均との相関が閾値より低い場合、または前記波形が複数の波形の時間的に同期した比較結果に基づき大きな割合の極値を保持する場合に、外れ値として分類される請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
電極のどの対が前記神経の上に載る可能性がより高いかを判定するために前回検査において好ましい対として選択されるそれぞれの電極対の度数分布を解析するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた請求項23に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
Bonniejean Boettcher
Marc Cryan
Shai N. Gozani
Glenn Herb
Xuan Kong
Michael Williams
Charles Fendrock
係属中の先行特許出願への参照
本特許出願は以下の利益を主張するものである。
【0002】
(i)NC−STAT(登録商標)SLのためにShai N. Gozaniによって2010年9月16日に出願された係属中の先行米国仮特許出願第61/403,453号(整理番号NEURO−50 PROV)、
(ii)NC−STAT(登録商標)SLのためにShai N. Gozaniによって2010年12月6日に出願された係属中の先行米国仮特許出願第61/459,127号(整理番号NEURO−53 PROV)、
(iii)NC−STAT(登録商標)SLのためにShai N. Gozaniらによって2011年3月25日に出願された係属中の先行米国仮特許出願第61/467,857号(整理番号NEURO−55 PROV)、
(iv)NC−STAT(登録商標)SLのためにBonniejean Boettcherらによって2011年4月11日に出願された係属中の先行米国仮特許出願第61/516,944号(整理番号NEURO−57 PROV)、
(v)NC−STAT(登録商標)DPNCHECK(商標)のためにShai N. Gozaniらによって2011年6月22日に出願された係属中の先行米国仮特許出願第61/571,203号(整理番号NEURO−58 PROV)。
【0003】
上記5件の特許出願は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0004】
本発明は、電気生理学的信号の評価を行うための装置および方法に関し、より詳細には、腓腹神経の伝導速度および振幅の評価に関する。
【背景技術】
【0005】
糖尿病(「DM」)は、血糖値の無効な調節を伴うよく見られる病気である。米国内でDMを患っている人々は2500万人を超え、最近の予測では、世界中でこの疾病を患っている人々は3億5000万人を超えると示唆している。DMには2つの主形態がある。I型のDMは、一般的に、子供と若年成人を侵し、インスリンホルモンの原発性欠乏症に関係している。II型のDMは、通常、成人、多くの場合、50歳以上の成人を侵すが、II型を患う若年成人も次第に増えてきている。これは、一般的に二次的インスリン欠乏症に進行する可能性のあるインスリン作用への抵抗として始まる複雑な疾病である。I型およびII型のDMの原因は、完全には知られていないが、遺伝、環境、および生活様式の危険要因が識別されている。
【0006】
血糖値の急な上昇または下降は危険であるけれども、DMに関連する疾病および死亡の主要な原因は、この病気の長期間の大血管および微小血管の合併症である。大血管合併症は、心筋梗塞(「心臓発作」)および脳卒中などの心臓血管系イベントを指す。微小血管合併症は、DMを患っている人々の神経、目、および腎臓への病理学的損傷を指す。
【0007】
DMの最も一般的な微小血管合併症は、神経障害、または神経損傷である。糖尿病性神経障害は、DMを患っている人々の60%以上を侵している。糖尿病性神経障害は、大きな有髄神経線維、小さな有髄および無髄神経線維、ならびに自律神経への損傷を含みうる。糖尿病性神経障害の最も一般的な形態は、糖尿病性末梢神経障害(「DPN」)と称されることが多い疾病の大径線維の形態である。DPNは苦痛と無力をもたらし、結果として下肢切断に至る可能性のある足部潰瘍の一次的誘因となっている。
【0008】
DPNの結果が重大であることから、DMのこの合併症の早期発見、および神経障害を防ぐか、または進行を遅くするためのインターベンションが、最も重要である。しかし残念なことに、DPNの検出は難しく、特にインターベンションの影響を最も受けやすいと思われる早期の段階においては難しい。DPNを検出し、監視する現行の方法は、臨床評価(単純な身体検査で得られる症状および徴候を含む)から、5.07/10−gモノフィラメント検査(1本の「釣り糸」を患者の足に圧し込む検査であり、目標は1本の「釣り糸」が曲がる前に患者が触れたことを感じ取れることを確認することである)、音叉検査(振動している音叉を患者の母趾にあてた検査であり、目標は音叉の振動を患者が感じ取れることを確認することである)、定量的振動知覚検査(電子機器を使用して患者が感じ取れる振動の大きさを測定する)を含むさまざまな検査まで多岐にわたる。これらの方法はすべて実用性を有するが、主観的であるか、感受性または特異性が不十分であるか、またはその両方であり、再現性が低い。DPNの評価のための「判断基準」の方法は、神経伝導検査である。神経伝導検査では、神経は、神経にそった第1の位置で電気的に刺激され、次いで、神経にそった第2の位置で神経の電気的応答が検出される。とりわけ、神経が信号を伝える速度(「神経伝導速度」)と誘発信号の大きさ(「振幅」)は、神経障害の信頼できる指標である。前述の技術とは異なり、神経伝導検査は、客観性、感受性、特異性、および再現性を有する。その結果、大半の臨床ガイドラインは、信頼できる診断のための神経伝導検査によるDPNの確認を示唆している。
【0009】
その技術的、臨床的特性があるにもかかわらず、神経伝導検査は、今のところ、DPNの検出および監視に広く使用されてはいない。これに対する理由として、従来の電気診断機器を使用して専門家、通常は、神経医が実施する場合に検査の利用範囲が限定されていること、複雑であること、コストが高いことが挙げられる。採用へのこれらの障害を克服するために、自動化および他の技術を通じて神経伝導検査を簡素化し、扱いやすさを向上させる多数のデバイスが開発されてきた。例えば、神経伝導検査の必要な技術的ステップを大幅に自動化する事前に加工されている神経特有の電極アレイを使用して神経伝導測定を実行するデバイスが開発されている(例えば、Gozaniらに発行されている米国特許第5,851,191号およびGozaniらに発行されている米国特許第7,917,201号を参照)。従来技術に見られる関連する解決手段(Spitzらに発行された米国特許第5,215,100号を参照)は、神経を刺激し記録するために必要なすべての電極がデバイスによって固定される手根管症候群(CTS)の評価を行うための装置である。
【0010】
これらの従来技術による解決手段には、多くの不備がある。従来技術で説明されているすべてのデバイスは、汎用(つまり、多神経、多用途)神経伝導検査デバイスであるか、またはCTSの評価を行うために正中神経の評価を行う専用設計となっている。汎用デバイスは、必然的に、神経のさまざまな解剖学的および電気生理学的側面に適応しなければならない。その結果、限られたカスタマイズしかできず、汎用デバイスの使用者には、個別の電極さらには事前構成された電極アレイの配置などを通して、バラツキの発生源に対処する負担がかかる。その結果、神経伝導測定は従来のアプローチに関して簡素化されているにも関わらず、汎用検査デバイスは、依然として、神経伝導検査手順を適切に実行するためにかなりの訓練を必要とする。また、正中神経の評価専用に設計されている従来技術のこれらのデバイスは、腓腹神経の評価である、本発明の要件に対してはほとんど関連性を有していない。これに対する一番の理由は、腓腹神経(DPNの評価に使用される)の解剖学的および電気生理学的特徴が正中神経(CTSの評価に使用される)のものと実質的に異なるという点である。したがって、正中神経の検査専用に設計されたデバイスは、腓腹神経の検査には使用することができない。汎用検査デバイスの別の問題点として、これらが2つのディスクリートコンポーネント、つまり、神経伝導検査を実行するために必要な電子回路を備えるデバイスと、検査される特定の神経の固有の特性と共通の検査デバイスの固有の特性とを結ぶ神経特有の電極アレイを必要とすることが挙げられる。この2つのコンポーネントからなるという要件は、検査コストを低減しようとする試みの制限要因となるが、これは、特に、神経伝導検査におけるコスト推進要因である電極アレイのサイズの縮小が制約されるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、完全一体型の手持腓腹神経伝導検査デバイスである。腓腹神経は、身体の下側腓腹および距腿部の領域内に配置されている知覚のみの神経である。腓腹神経伝導は、DPNの標準の定量的なバイオマーカーである。腓腹神経伝導検査では、高い診断鋭敏度でDPNを検出し、神経障害の臨床上の証拠が現れる前に異常を明らかにする。腓腹神経伝導は、有髄線維損失の形態学的重大性に相関し、したがって、足部潰瘍を生じる危険性を予測するものである。
【0012】
この新しいデバイスの目的は、2つの共通の腓腹神経伝導パラメータ、開始伝導速度(これ以降「CV」と略す)と感覚応答振幅(これ以降「振幅」と略す)の測定および報告を容易に、迅速に、正確に行うことである。「完全一体型」という用語は、腓腹神経の神経伝導検査を実行するために必要なすべてのコンポーネントが、2つまたはそれ以上の別個のコンポーネント(例えば,電極アレイおよびケーブルで接続された検査機器)ではなく、単一の物理的ユニット内に組み込まれていることを意味する。「ハンドヘルド」という用語は、患者が手足に付ける固定された装置ではなく、神経を検査するために資格のある使用者がデバイスを患者に貼り付けることを意味する。「完全一体型」および「ハンドヘルド」という特性は、新規性があり、かつ自明でない技術的進歩を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、従来技術の不備を解消するものである。まず、現在のデバイスは、腓腹神経の検査用に設計され最適化されている。その結果、検査手順は、30〜60分以内に誰かに教えることができ、その後正確な腓腹神経伝導結果を得られるようになるところまで、実質的に簡素化され、自動化されている。さらに、腓腹神経に集中的に適用するので、検査手順は、検査時間が典型的には15〜30秒の長さとなるところまで自動化されている。腓腹神経に集中的に適用する別の利点として、ハードウェアと使い捨てコンポーネントの両方のコストが従来技術で説明されている汎用デバイスに関して実質的に低減されていることが挙げられる。
【0014】
本発明の好ましい一形態において、腓腹神経の伝導速度および振幅を測定するための装置が提供され、この装置は、
ハウジングと、
ヒトの腓腹神経を電気的に刺激するためにハウジングに装着されている刺激手段と、
ハウジングに取外し可能に装着され、刺激手段によって誘発される腓腹神経応答を検出するための複数の電極を備えるバイオセンサと、
ハウジングに装着され、バイオセンサによって検出された腓腹神経応答を電気的に取得するためにバイオセンサに電気的に接続される取得手段と、
ハウジングに装着され、取得された腓腹神経応答をデジタル化し、処理し、格納するために取得手段に電気的に接続される処理手段と、
ハウジングに装着され、処理された腓腹神経応答の伝導速度および振幅を計算するために処理手段に電気的に接続される計算手段と、
腓腹神経の伝導速度および振幅を表示するためにハウジングに装着されている表示手段とを備え、
刺激手段およびバイオセンサは、ハウジングを操作することによって、腓腹神経の付近の、患者の解剖学的構造に配置されるように設計されている。
【0015】
本発明の別の好ましい形態において、腓腹神経の伝導速度および振幅を測定するための装置が提供され、この装置は、
ハウジングと、
ヒトの腓腹神経を電気的に刺激するためにハウジングに装着されている刺激手段と、
バイオセンサをハウジングに取外し可能に装着するためのハウジング上の座部であって、バイオセンサは、刺激手段によって誘発される腓腹神経応答を検出するための複数の電極を備えるタイプである、座部と、
座部上に装着されたバイオセンサに電気的に接続し、バイオセンサによって検出された腓腹神経応答を電気的に取得するためにハウジングに装着されている取得手段と、
ハウジングに装着され、取得された腓腹神経応答をデジタル化し、処理し、格納するために取得手段に電気的に接続される処理手段と、
ハウジングに装着され、処理された腓腹神経応答の伝導速度および振幅を計算するために処理手段に電気的に接続される計算手段と、
腓腹神経の伝導速度および振幅を表示するためにハウジングに装着されている表示手段とを備え、
刺激手段、および座部上に取外し可能に装着されたバイオセンサは、ハウジングを操作することによって、腓腹神経の付近の、患者の解剖学的構造に配置されるように設計されている。
【0016】
本発明の別の好ましい形態において、腓腹神経の伝導速度および振幅を測定するための装置が提供され、この装置は、
神経伝導検査デバイスのハウジングに取外し可能に装着され、ハウジングと連携して移動するように適合されているバイオセンサを備え、バイオセンサは、神経伝導検査デバイスによって誘発される腓腹神経応答を検出するための複数の電極と、それらの複数の電極を神経伝導検査デバイスに電気的に接続するための電気コネクタとを備える。
【0017】
本発明の別の好ましい形態において、腓腹神経の伝導速度および振幅を測定するための方法が提供され、この方法は、
バイオセンサを神経伝導検査デバイスのハウジングに、ハウジングと連携して移動するように、取外し可能に装着するステップと、
神経伝導検査デバイスがヒトの腓腹神経を電気的に刺激する位置に置かれ、バイオセンサが刺激手段によって誘発される腓腹神経応答を検出する位置に置かれるように神経伝導検査デバイスのハウジングの位置決めを行うステップと、
神経伝導検査デバイスを使用して腓腹神経を電気的に刺激し、バイオセンサによって検出された腓腹神経応答を取得するステップと、
取得された腓腹神経応答を処理して、処理された腓腹神経応答の伝導速度および振幅を決定するステップとを含む。
【0018】
本発明の別の好ましい形態において、手持コンポーネントおよび1人患者用バイオセンサを備える完全一体型の手持神経伝導検査装置が提供され、バイオセンサは、神経応答を取得するために手持コンポーネントに物理的に、かつ電気的に接続される。
【0019】
本発明の別の好ましい形態において、神経応答を検出するためのバイオセンサが提供され、このバイオセンサは、
基材と、
神経応答を検出するために基材に装着された複数の電極と、
バイオセンサの再利用を決定するために基材に搭載されるバイオセンサ再利用コードとを備え、バイオセンサ再利用コードは、そのバイオセンサにランダムに割り当てられる。
【0020】
本発明の別の好ましい形態において、キットが提供され、このキットは、
神経応答を検出するための複数のバイオセンサを備え、このバイオセンサはそれぞれ、基材と、神経応答を検出するために基材に装着された複数の電極と、バイオセンサの再利用を決定するために基材に搭載されるバイオセンサ再利用コードとを備え、
バイオセンサ再利用コードは、キット内のバイオセンサ同士でランダムに異なる。
【0021】
本発明の別の好ましい形態において、検査装置と接続するバイオセンサの再利用を決定するための方法が提供され、この方法は、
バイオセンサを検査装置に接続するステップであって、バイオセンサはそのバイオセンサにランダムに割り当てられたバイオセンサ再利用コードを備える、ステップと、
接続されているバイオセンサに関連するバイオセンサ再利用コードを識別するステップと、
識別されたバイオセンサ再利用コードを検査装置にすでに接続されているバイオセンサに関連するバイオセンサ再利用コードと比較するステップと、
比較結果が識別されたバイオセンサ再利用コードおよびすでに接続されているバイオセンサからのコードがバイオセンサ再利用コードのランダム分布からはありえそうもないパターンを形成することを示している場合にバイオセンサは再利用されていると判定するか、または前述のパターンがバイオセンサ再利用コードのランダム分布からありえる場合にバイオセンサは再利用されていないと判定するステップとを含む。
【0022】
本発明の別の好ましい形態において、検査装置と接続するバイオセンサの再利用を防ぐための方法が提供され、この方法は、
バイオセンサを検査装置に接続するステップであって、バイオセンサはそのバイオセンサにランダムに割り当てられたバイオセンサ再利用コードを備える、ステップと、
接続されているバイオセンサに関連するバイオセンサ再利用コードを識別するステップと、
識別されたバイオセンサ再利用コードを検査装置にすでに接続されているバイオセンサに関連するバイオセンサ再利用コードと比較するステップと、
比較結果が識別されたバイオセンサ再利用コードがバイオセンサ再利用コードのランダム分布の一部であることを示している場合に検査の続行を許可するか、または比較結果が識別されたバイオセンサ再利用コードがバイオセンサ再利用コードのランダム分布の一部でないことを示している場合に検査の続行を阻止するステップとを含む。
【0023】
本発明の別の好ましい形態において、バイオセンサを検査デバイスに接続するためのアダプタが提供され、このアダプタは、バイオセンサの再利用を決定するためにアダプタに搭載されるバイオセンサ再利用コードを備え、バイオセンサ再利用コードは、アダプタによって検査デバイスに提示される。
【0024】
本発明のこれらおよび他の目的ならびにこれらおよび他の特徴は、類似の番号が類似の部分を指す添付図面と併せて考察すべき、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明によってより完全に開示されるか、または明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明により形成される新規性のある完全一体型の手持腓腹神経伝導検査デバイスの概略図である。
図2】患者の肢に置かれている図1の検査デバイスを示す概略図である。
図3図1に示されている検査デバイスの底部の概略図である。
図3A図1に示されている検査デバイスのバネ仕掛けのカソードに対する好ましい構造詳細を示す概略断面図である。
図3B図1に示されている検査デバイスのバネ仕掛けのカソードに対する好ましい構造詳細を示す概略断面図である。
図4】バイオセンサ、発泡体パッド(foam pad)、デバイスヘッドを含む、図1の検査デバイスの選択された部分を示す概略図である。
図5図1に示されている検査デバイスの頂部の概略図である。
図6】バイオセンサの頂部の概略図である。
図6A図6に示されているバイオセンサの概略側面図である。
図6B図6に示されているバイオセンサの概略端面図である。
図7図6に示されているバイオセンサの頂部の別の概略図である。
図7A図6の7A−7A線に沿った概略断面図である。
図7B図6の7B−7B線に沿った概略断面図である。
図7C図6に示されているバイオセンサのトレースの選択された部分の拡大概略図である。
図8図1に示されている検査デバイスの高水準ハードウェア概略図である。
図9】2つの記録チャネルからの腓腹神経応答を示すグラフである。
図10】腓腹神経応答のアルゴリズム的解析の一例を示すグラフである。
図11】腓腹神経応答波形の特徴をいかに決定するかの一例を示すグラフである。
図12図1の検査デバイスに対する好ましい制御アルゴリズムの高水準機能概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
デバイスの説明
本発明は、完全一体型の手持腓腹神経伝導検査デバイスである。このデバイスは、下側腓腹および踝の領域内のヒトの腓腹神経の非侵襲的な神経伝導測定専用の設計となっている。腓腹神経は、脛骨および総腓骨神経(それ自体坐骨神経の枝である)の枝である内側および外側腓腹皮神経の合併から形成されるほとんど完全な知覚神経である。腓腹神経は、腓腹筋の遠位1/3のところに形成した後、後外側の脚を下り、次いで、外果の後側に進み、そこで、腓骨腱鞘に深く入り、第5趾の外側結節に到達し、そこで分岐する。腓腹神経は、脚の後外側隅、外側足、および第5趾からの知覚信号を伝達する。
【0027】
腓腹神経伝導は、DPNの標準の定量的なバイオマーカーである。腓腹神経伝導検査では、高い診断鋭敏度でDPNを検出し、神経障害の臨床上の証拠が現れる前に異常を明らかにする。腓腹神経伝導は、有髄線維損失の形態学的重大性に相関し、したがって、足部潰瘍を生じる危険性を予測するものである。
【0028】
腓腹神経を評価するためのさまざまな神経伝導方法がある。例えば、神経は、踝のところの神経を刺激して、腓腹までの知られている距離を伝導した後に神経応答を測定することによって順方向に検査されうるか、または神経は、腓腹内の神経を刺激して、踝までの知られている距離を伝導した後に神経応答を測定することによって逆方向に検査されうる。腓腹神経に対する神経伝導検査における別の方法論的要因として、刺激点と記録点との間の距離が挙げられ、この距離は一般的に約8cmから16cmまで変わる。腓腹神経の神経伝導検査に関連する別の方法論的要因は、記録電極の、その形状、サイズ、および電極間の距離を含む、構成である。本発明の好ましい実施形態では、腓腹神経は、9.22cmの刺激/記録間距離で順方向に検査される。好ましい記録電極構成は、以下のバイオセンサの説明に示されている。
【0029】
本発明の目的は、2つの共通の腓腹神経伝導パラメータ、開始伝導速度(これ以降「CV」と略す)と感覚応答振幅(これ以降「振幅」と略す)の測定および報告を容易に、迅速に、正確に行うことである。「完全一体型」という用語は、腓腹神経の神経伝導検査を実行するために必要なすべてのコンポーネントが、2つまたはそれ以上のディスクリートコンポーネント(例えば,電極アレイおよびケーブルで接続された検査機器)ではなく、単一の物理的ユニット内に組み込まれていることを意味する。「ハンドヘルド」という用語は、患者が手足に付ける固定された装置ではなく、神経を検査するために資格のある使用者がデバイスを患者に貼り付けることを意味する。「完全一体型」および「ハンドヘルド」という特性は、新規性があり、かつ自明でない技術的進歩を必要とする。
【0030】
本発明の全体図が、図1に示されている。図示されているように、本発明は、狭いハンドル2とヘッド3とを有する単一の完全一体型の手持デバイス1を備える。好ましい実施形態において、デバイス1は長さが19.0cm、ヘッド3上で最も広い位置で幅が11.5cmである。最も重要な寸法は、(神経刺激点である)デバイス1のカソード10(図3)とバイオセンサ30上の電極41、43の中心との間の距離である。バイオセンサ30がバイオセンサポート16(図3)内に置かれたときに、電極41、43は、カソード10に最も近い。その距離(つまり、カソード10と電極41、43との間の距離)は、カソード10を介した神経刺激点と電極41、43で誘発された神経インパルスの到来点との間の伝導距離を表す。この距離は、好ましい構造では9.22cmであり、以下で説明されるようにCVを計算するために使用される。
【0031】
本発明の好ましい使用が、図2に示されている。図示されているように、デバイス1は、患者の下肢5の外側面に押し当てられ、その際に、(i)刺激プローブ10、11(図3)が外側距骨(「外果」)6のすぐ後の脚と機械的に接触し、(ii)バイオセンサ30が患者の下側腓腹7と接触し、デバイス1の内端(肢に応じて、2つの側8または9のうちの一方)の位置はアキレス腱にほぼ合わされる。腓腹神経の神経伝導を確実に測定するために、デバイス1は、患者の下肢解剖学的構造に適合し、それにより、いくつかのデバイスコンポーネント(つまり、刺激電極および検出電極)と患者との堅牢な安定した接触を可能にする十分な自由度を有していなければならない。この堅牢な電気的接触を行うための手段について以下で詳しく説明する。
【0032】
図3は、デバイス1の好ましい実施形態の底面図である。この図は、患者に接触する表面を示している。デバイス1が図2に示されている仕方で患者に押し当てられたときに腓腹神経を電気的に刺激するための2つのステンレス製プローブ10、11がある。カソード10は、そのバネ仕掛け構造によりハンドル2に関して可変である高さを有する。好ましい実施形態では、この可変の高さは、ハンドル2から2.5cm(圧縮状態)から3.3cm(非圧縮状態)までの範囲内である。アノード11は、好ましくは、ハンドル2に関して固定された高さを有し、これは好ましい実施形態ではハンドルから2.3cmのところに固定される。長さが可変であるカソード10は、非平面状であり、患者毎に異なる局所解剖学的構造を有する、踝の付近の患者の解剖学的構造との両方の刺激プローブ10、11の堅牢な接触を可能にする自由度を与えるので、新規性を有する。患者の皮膚に直接接触させることによって刺激プローブ10、11を通じて腓腹神経を電気的に刺激することが可能であるが、プローブ/皮膚間の界面のインピーダンスを低減するためにそれぞれのプローブの外側先端部に少量の導電性ヒドロゲルを使用することが好ましい。
【0033】
図3Aおよび3Bは、バネ仕掛けのカソード10に対する好ましい一構造を示している。より具体的には、本発明のこの形態では、デバイス1は、デバイス1の本体部を形成するプラスチック製エンクロージャ300を備え、プラスチック製エンクロージャ300は中にカソード10を摺動可能に受け入れるための管状突出部305を備える。バネ310は、カソード10の近位端とプラスチック製エンクロージャ300上に形成された座部315との間に捕らえられる。必要ならばバネ310をカソード10の近位端に固定するために、締め具320が使用されうる。可撓ケーブル325がカソード10を刺激源に電気的に接続する。また図3Aおよび3Bには、固定されたアノード11が示されている。
【0034】
デバイス1は、距骨の付近の患者の皮膚表面温度の非接触測定を行うための赤外線放射温度計14(図3)を備える。以下で説明されるように、神経伝導結果に対する温度の影響を補償するためにこの温度測定結果が使用される。非接触温度測定デバイスの使用は、本発明の重要な一態様であるが、これを使用することで、腓腹神経に不随する不規則な皮膚表面局所解剖学的構造内で確実な温度測定を実行することが可能になるからである。
【0035】
デバイス1のヘッド3は、患者との生体電気的インターフェースをなす、バイオセンサ30を支持する。以下で詳細に説明されている、バイオセンサ30は、使い捨て型であり、患者毎に交換されるべきである。バイオセンサ30は発泡体パッドの両面に非永久的な接着剤を施した発泡体パッド31(図3および4)によってデバイス1に固定される、つまり、発泡体パッド31の内面上の接着剤は発泡体パッドをデバイス1のヘッド3に取外し可能に固定し、発泡体パッド31の外面上の接着剤はバイオセンサ30を発泡体パッドに取外し可能に固定する。発泡体パッド31は、使い捨て型であるが、患者と直接接触しないので複数の患者に使用することができる。発泡体パッド31は、図4にさらに詳しく示されている。発泡体パッドの一方の側32は、デバイス1のヘッド3の底面に付着し、他方の側33は、バイオセンサ30の患者と接触していない側に付着する。好ましい実施態様では、発泡体パッド31は、約2.2cmの厚さを有する。さまざまな種類の発泡体が使用されうるが、好ましい実施形態では、ポリウレタン発泡体が使用される。デバイス1が図2に示されているように患者の脚に押し当てられるときに、発泡体パッドは、バイオセンサ30が患者の皮膚と完全な接触を確立するように患者の解剖学的構造に適合しうる複数の自由度を備える。電極41、42、43、44、および45(図3)と患者の皮膚との間の均一な完全接触により、さまざまな患者の解剖学的構造に関して高品質の神経伝導信号を取得することが可能になる。電極と患者の皮膚との均一な完全接触を達成するために発泡体パッド31を使用するステップは、新規性を有し、また非自明である。バイオセンサ30は、バイオセンサポート16を介してデバイス1の内部電子回路に接続される。
【0036】
したがって、デバイス1は、(i)刺激電極と患者の皮膚との間の確実な電気的接触を実現するための新規性のある手段(つまり、バネ仕掛けのカソード10および固定位置のアノード11)と、(ii)検出電極と患者の皮膚との間の確実な電気的接触を実現するための新規性のある手段(つまり、バイオセンサ30を支持するための発泡体パッド31の使用)とを備えることがわかる。
【0037】
デバイス1のヘッド3は、電池109(図8)の交換のためにドアが取り外せるようになっている電池コンパートメント18(図3)を備え、電池は好ましい実施形態では広く使用されている3Vのリチウムイオン電池(CR123A)である。mini USBポート20(図3)により、標準のUSBプロトコルを使用してデバイス1と外部デバイス(PCなど)との通信を行うことができる。
【0038】
図5は、ユーザーインターフェースを備えるデバイス1の頂部を示している。好ましい実施形態では、ユーザーインターフェースは、1個のブッシュボタン式スイッチ22、LED24、およびLCD26からなる。プッシュボタン式スイッチ22は、デバイスの電源がオフの場合にデバイス1をオンにする。デバイス1の電源がオンになっている場合、スイッチ22は、神経伝導検査を開始する。LED24は、3色(緑色、琥珀色、および赤色)であり、デバイスステータスを示すために使用され、緑色は「検査可」を表し、琥珀色は「電池電圧低下」を表し、赤色は「エラー−検査実行不可」を表す。好ましい実施形態では、LCD26は、ドットインジケータが追加された2つの7セグメントディスプレイである。LCD26は、腓腹神経伝導検査の結果またはエラーステータスを使用者に対して表示するものである。検査が成功した場合、LCD上に、(i)CVの数値、および(ii)神経応答の振幅をトグル式に表示する(またはCVなしで振幅0、これは腓腹神経伝導が検出可能でないことを示す)。検査が不成功であれば、障害の考えられる原因を示すエラーステータスメッセージがLCD26に表示される。好ましい実施形態では、エラーステータスメッセージは、バイオセンサに関係するエラーに対する「Sn」、過度の筋肉干渉に関係するエラーに対する「Lr」、刺激プローブに関係するエラーに対する「Pr」、および患者の皮膚表面温度に関係するエラーに対する「℃」を含む。
バイオセンサの説明
バイオセンサ30の好ましい一実施形態は、図6、6A、6B、7、7A、および7Bに示されている。バイオセンサ30は、マイラー46、Ag(銀)トレース51、Ag−AgClパッド52、発泡体47、およびヒドロゲル48からなる多層構造である。バイオセンサ30は、患者接触面領域35およびデバイス接続テール34(図6)も備える。患者接触領域35は、好ましくは、幅8.77cmおよび高さ3.77cmを有する。テール34は、バイオセンサポート16を介してバイオセンサ30をデバイス1に電気的に接続する。バイオセンサ30は、Ag−AgClパッドの上に層化されたヒドロゲルからなる5つのディスクリート電極41、42、43、44、45からなる。4つのより小さな電極(41、42、43、および44)が計装用増幅器の差動入力(以下を参照)に電気的に接続され、したがって「能動」電極として機能する。単一の長い電極45が、計装用増幅器の基準入力に接続され、したがって、「基準」電極として機能する。バイオセンサ30の好ましい実施形態では、電極は、2つの異なる腓腹神経応答記録チャネルを形成するように接続される。特に、電極41および42は、1つの記録チャネルを備え、電極43および44は、第2の異なる記録チャネルを備える。本発明の代替的実施形態は、1つの記録チャネルのみからなるバイオセンサ、または3つまたはそれ以上の記録チャネルからなるバイオセンサを備える。基準電極45の代替的構成は、単一の共通基準電極ではなく複数の異なる基準電極を備える。
【0039】
図6に示されている好ましい実施形態では、能動記録電極41、42、43、および44は、それぞれ、2.5cm×0.5cmの寸法を有し、基準電極45は、0.5cm×7.0cmの寸法を有する。それぞれの記録チャネルを備える2つの能動電極(つまり、41、42と43、44)は、好ましくは、中心間で測定したときに2.0cmの距離だけ隔てられている。基準電極45は、好ましくは、中心間で測定したときに能動電極41、42、43、44のそれぞれから1.0cmだけ隔てられる。
【0040】
バイオセンサ30のテール34は、バイオセンサポート16を介してデバイス1とバイオセンサ30との間の電気的接続を確立する。テール34は、オスコネクタであり、バイオセンサポート16は、メスコネクタである。本発明の好ましい形態では、テール34は、8つの平行なトレース51を備える。これらのトレースのうちの5つ(51A、51B、51C、51D、および51E)は、電極41、42、43、44、45をそれぞれ前述の計装用増幅器の対応する入力に接続する。これらのトレースのうちの2つ(51Fおよび51G)は、バイオセンサ30のテール34がデバイス1のバイオセンサポート16に挿入されたときに電気回路が閉じられるように一緒に接続される。この閉じられた回路により、デバイス1はバイオセンサ30がデバイス1に接続されていることを検出し、それにより確認することができる。確認結果は、LED24上の緑色常時点灯によってユーザーに対して示される。1つのトレース(51H)は、バイオセンサ30が複数の患者で利用されているかどうかを判定するためにデバイスソフトウェアによって使用される1ビットバイオセンサコードを表す。このビットは、そのトレース(51H)が、テール34がデバイス1に挿入された後にグランドに接続される、他方のトレース(51F、51G)のうちの一方に(例えば、コネクタ53を介して(図7Cを参照))接続されているかどうかに応じて0または1として符号化される。所与のバイオセンサに関連する1ビットバイオセンサコードは、ランダムに分布することが意図されている、つまり、すべてのバイオセンサ30の1/2は「0」の1ビットバイオセンサコードを有することが意図され、すべてのバイオセンサ30の1/2が「1」の1ビットバイオセンサコードを有することが意図されている。バイオセンサの再利用を検出するためにこの1ビットバイオセンサコードを使用する仕方について、以下のソフトウェアの説明において論じる。
ハードウェアの説明
図8は、デバイス1の内部電子回路(ハードウェア)の好ましい一実施形態のブロック図である。ハードウェアは、2つの計装用増幅器(INA)100、101からなり、差動入力は2対の能動電極41、42および43、44から来る。好ましい実施形態では、これらのINAは、≧1010(10の10乗)オームである標準入力インピーダンス、および>90dBの同相除去比を有する。INA 100、101は、基準電極45から来る共通基準入力を共有する。INA 100、101の出力は、2つのチャネルのうちどちらが取得され、処理されるかを決定する2×1スイッチ102に供給される。スイッチ102は、マイクロコントローラ108によって制御され、チャネル選択は検査制御ソフトウェア(以下を参照)によって決定される。チャネル選択は、検査の異なる段階で異なりうる。スイッチ102の出力は、帯域通過フィルタ104に入力される。好ましい実施形態では、帯域通過フィルタ104は、2Hzと低い遮断周波数および4900Hzと高い遮断周波数を有する。次いで、帯域通過フィルタ104の出力が、A/Dコンバータ106によってデジタル化され、デジタル出力は格納および処理のためにマイクロコントローラ108内に入る。
【0041】
マイクロコントローラ108は、高電圧刺激装置116をトリガーして、カソード10およびアノード11を介して神経刺激を患者に送る。好ましい一実施形態では、高電圧刺激装置116は、50から100回の使用期間中に単相方形波DCパルスを発生する定電流刺激装置である。高電圧刺激装置の出力電圧は、400〜440Vであり、標準値は420Vである。高電圧刺激装置は、最大100mAまでの電流を3.3kΩの負荷に流すことができる。
【0042】
マイクロコントローラ108は、LED24、LCD26、および電力/検査ボタン22を備えるユーザーインターフェースコンポーネントを制御する。マイクロコントローラ108は、(PCなどとの)外部通信のために、分離されたUSBポート20(図3)とも通信する。デバイス1の内部電子回路は、単一の電池109から給電される。好ましい実施形態では、これは市販の3Vリチウム電池CR123Aである。
動作原理
神経伝導検査は、デバイス1を図2に示され上で説明されている方法により患者に押し当てることによって患者に対して実行される。このように配設したときに、カソード10は、腓腹神経が外果6(図2)の背後を通るときに腓腹神経の上に配置され、バイオセンサ30は、腓腹神経がアキレス腱にカソード10から約9cmまで接近するときに腓腹神経の上に(または最悪の場合、それに隣接して)配置される。本発明の重要な目的は、デバイス1が患者の左脚または右脚のいずれかの検査に自動的に適応するようにすることである。「肢独立」は、デバイス1が上で説明されているように患者に押し当てられたときにバイオセンサ30の2つの電極対41、42または43、44が患者の腓腹神経の上に載る(または直接隣接する)ので達成される。適切な電極対(つまり、41、42または43、44)は、腓腹神経が外果の近位約9〜11cmのところで腱と交差するのでアキレス腱に最も近い電極対である。この構成では、刺激カソード10からそれぞれの電極対(41、42または43、44)内の第1の電極(41または43)までの距離は、9.22cmであり、これは伝導速度を決定するために使用される距離である。
【0043】
図9は、2つの電極対(41、42および43、44)から得られる腓腹神経応答の一例を示している。右パネル80は、神経の上に載る電極対から記録された信号84を示し、左パネル82は、神経の上に載らない電極対から記録された信号86を示す。「非交差」電極対によって取得される電気信号86は、「交差」電極対によって取得される電気信号に比べて小さいことは理解されるであろう。これは、腓腹神経と「非交差」電極対との間の体積伝導の信号減衰効果による。対照的に、「交差」電極対からの信号84は、腓腹神経とこれらの電極との間の距離がかなり小さいため大きい。
【0044】
したがって、2つの平行な電極対41、42および43、44を備えることによって、デバイス1は、左脚または右脚のいずれかを検査するように自動的に適応し、適切な電極対がそれぞれの電極対によって取得される信号の大きさの比較によって容易に決定可能であることがわかる。
ソフトウェア
デバイス1は、マイクロコントローラ108上に(または代替として、関連する記憶装置ユニット上に)格納されているソフトウェアベースの制御アルゴリズムによって制御される。図12は、制御アルゴリズムのさまざまな機能ブロックの概要を示している。電源投入後、制御アルゴリズムは、状態150にあり、外部イベントの発生を待つが、これは、好ましい実施形態では、バイオセンサポート挿入、USBポート挿入、および検査ボタン押下のうちのいずれか1つとすることができる。
バイオセンサポート挿入
このイベントは、デバイス1のバイオセンサポート16内にバイオセンサ30を挿入することによってトリガーされる。このソフトウェアモジュールの主たる目的は、1つのバイオセンサが患者同士の間で使い回されていないことを確認することである。このイベントのトリガーの後、制御アルゴリズム152は、挿入されたバイオセンサに関連する1ビットバイオセンサコードを読み取り、このコードが、前のバイオセンサコードの最近の履歴とともに、ランダムに分布しているかどうかを判定する(バイオセンサはランダムに分布する1ビットバイオセンサコードを有するので、バイオセンサが再利用されていなければそうであるべきである)。制御アルゴリズムの好ましい実施形態では、ワルド・ウォルフォウィッツ検定とも称されるラン検定を使用して、一番最近の24個のバイオセンサコードの履歴のランダム性がチェックされる。この検定は、154に示されており、24ビット列内の一連の0と1があるレベルの特異性でランダムであるかどうかを判定する。好ましい実施形態では、標的特異性は、99%に設定される。24ビット列が、ランダムでないと判定された場合、デバイスのLCD26上に警告メッセージが表示され、24ビット列はリセットされる。第2の24ビット列が乱数検定に失敗した場合(機能ブロック156)、デバイス1は、機能ブロック158によってロックされ、デバイス1がメーカーによってリセットされるまでこれ以上検定は実行されない。
USBポート挿入
制御アルゴリズムのこの部分は、USBケーブルがUSBポート20内に挿入されたときに実行される。このイベントが検出されると、制御アルゴリズムは、デバイス1と外部デバイス(PCなど)との間の基本的なシリアル通信プロトコルを実装するUSB通信モジュールに入る。このUSB通信モジュールは、一番最近の検定データをアップロードするステップとソフトウェアアップグレードをダウンロードするステップとを含むいくつかの機能をサポートしている。
検定ボタン押下
制御アルゴリズムのこの部分は、検定ボタン22(図5)が押されたときに実行される。このイベントが検出されると(機能ブロック160)、制御アルゴリズムは、腓腹神経伝導検定を実装する検定制御モジュールに入る。腓腹神経伝導検定は、以下で説明されているようにいくつかの順次ステップからなる。
【0045】
ステップ1。神経伝導の適切な測定を行うには、神経が「最大」レベルで刺激される必要がある。この「最大」レベルは、刺激の強度をさらに高めても神経応答が増大しないような刺激強度として定義される。好ましい実施形態では(機能ブロック162)、これは、20mAから60mAまで10mAステップで刺激強度を順次高めてゆくことによって達成される。30mAから始め、刺激強度をそれぞれ続けて、最後の2つの神経応答同士を比較する。これらが、互いとの相関および一般的腓腹神経応答テンプレートとの相関によって決定されるように、振幅および形状の点で似ている場合、刺激強度は最大であると考えられる。好ましい実施形態では、相関は、2つの応答波形(または応答波形と一般的テンプレート)の積の総和を、それぞれの応答波形(または応答波形と一般的テンプレート)におけるエネルギーの積の平方根によって正規化したものとして実装される。しかし、必要ならば、上述の相関技術と異なる類似性測度も使用することができる。最大刺激強度が見つからない場合、その後のデータ収集が60mAで実行される。
【0046】
すでに説明されているように、本発明の重要な目的は、左脚または右脚からの測定に自動的に適応することである。これを達成するために、ステップ1において2つの電極対41、42および43、44からの腓腹神経応答80、82(図9)同士を比較し、2つの対のうちどのどちらが神経の上に載るか、したがって最適な記録チャネルを構成するかを判定する。好ましい実施形態では(機能ブロック164)、これは、同じ刺激強度条件の下で両方の電極対41、42および43、44から腓腹神経応答を取得し、選択された波形特性を比較することによって達成され、特に、これらの応答は、振幅125、推定信号対雑音比、および負のピーク124のタイミングに関して比較される。より大きな振幅、より高い信号対雑音比、およびより早い負のピークを持つ電極対が選択される。好ましい実施形態では、腓腹神経応答の比較が2つの刺激強度レベル、つまり、40mAと最大刺激強度レベルとで実行される。最大刺激強度レベルが見つからない場合、比較が60mAで行われる。次いで、ステップ2(以下)において、選択された電極対(つまり、41、42または43、44)からの神経応答が使用され、腓腹神経応答の振幅および伝導速度を決定する。
【0047】
それに加えて、好ましい実施形態の制御アルゴリズムもまた、前の検定からの選択された最適な記録チャネルの履歴をとる。より具体的には、デバイスが所定の検査環境において一方の脚を他方の脚より頻繁に検査するために優先的に使用される場合(例えば、使用者の選好、特定の検査台設定などにより)、対応するパターンは、前の検査の履歴から容易に検出することができる。次いで、制御アルゴリズムは、この情報を利用し、好ましい記録チャネルでデータ収集を開始することによって検査効率を改善することができる。一例として、次に図9を参照すると、検査が非最適な記録チャネルで開始した場合、波形85A、85B、85Cが収集される。得られた波形は最大刺激強度基準を満たさないので、他のチャネルからの波形85Dが、40mAの刺激強度で得られる。波形85Cおよび85Dを比較し、その後、第2の記録チャネルからデータ収集を行い、波形85Eおよび85Fが収集される。波形85Eおよび85Fは、最大刺激基準を満たす。したがって、検査が非最適な記録チャネルから開始する場合に上で説明されているようにステップ1を完了するために6つの波形(85A、85B、85C、85D、85E、および85F)が必要である。あるいは、また本発明の好ましい実施形態で実装されているように、制御アルゴリズムが前の検査履歴において優先パターンを検出した場合、これは優先記録チャネルで検査を開始する。そこでは、波形取得順序が異なる。より具体的には、これは、波形85Eおよび85Fを収集することによって開始する。これら2つの波形85E(20mAで取得された)および85F(30mAで取得された)は最大刺激基準を満たすので、制御アルゴリズムは、2つの記録チャネル同士を比較できるようにするために代替記録チャネルから波形85B(30mAで刺激される)を取得するだけでよい。したがって、制御アルゴリズムが前の検査の最適な記録チャネル履歴を利用し、優先記録チャネルを識別する場合にステップ1を完了するために3つの波形(85E、85F、および85B)のみが必要である。
【0048】
ステップ2。最大刺激強度レベルを決定した後、デバイス1は、最大刺激強度レベルで腓腹神経を繰り返し刺激し、神経応答の平均をとって平均神経応答を得る。好ましい実施形態では(機能ブロック166)、平均される波形の数は、最大刺激強度レベルで得られた第1の神経応答の推定信号対雑音比に応じて4または8のいずれかである。信号対雑音比が低い場合、8つの応答が平均され、信号対雑音比が高い場合、4つの応答が平均される。波形の平均をとるときに、デバイス1は、「外れ値」である応答を除外する。本発明の好ましい実施形態では、外れ値は、所定の応答を前の応答の移動平均と比較することによって決定される。
【0049】
ステップ3。図10は、デバイス1によって得られる平均腓腹神経応答120の一例を示している。好ましい実施形態では(機能ブロック174)、デバイス1は、3つの重要な波形特徴、つまり、神経応答開始122、応答の負のピーク124、および応答の正のピーク126を決定する。これらの神経応答の特徴は、信号処理アルゴリズムによって決定される。この信号処理アルゴリズムの好ましい実施形態は、図11に示されている例示的な波形を通して説明される。波形120は、1つまたは複数の腓腹神経応答を平均した結果である。一般的腓腹神経応答テンプレート130も、同じデータ収集条件(フィルタ帯域幅およびサンプリング周波数など)の下で複数の被験者から得られた波形の集まりから構築されている。テンプレート130が、左から右へスライドするので(時間のシフトを表す)、異なる時間シフトでシフトされたテンプレート130と平均した波形120との間の相関は、相関132として構成されうる。好ましい実施形態では、相関は、平均された波形とシフトされたテンプレートの積の総和を、平均された波形120とテンプレート130におけるエネルギーの積の平方根によって正規化したものとして実装される。しかし、他の形態の相関も、必要ならば使用可能である。アルゴリズムは、最初に、平均された応答120と固定された一般的腓腹神経応答テンプレート130との間の最大相関が得られる時刻133を決定する。相関ピーク133に最も近い平均された腓腹神経応答120の局所的最大値は、腓腹神経応答の負のピーク124として識別される。腓腹神経応答の正のピーク126は、波形120のその後の局所的最小値であり、負のピーク124に続く定義済みの窓を探索することによって識別される。開始122は、好ましくは、曲率と2直線当てはめ(two-line fit)の2つの方法の組み合わせによって決定される。曲率法では、負のピーク124に先行する平均された腓腹神経応答120の最大曲率点を識別する。2直線当てはめ法では、平均腓腹神経波形120のベースライン領域127と初期立ち上がりエッジ128とを近似する2本の直線の最良共通点を探索する。
【0050】
もちろん、当技術分野でよく知られている他の技法も、神経応答開始122、応答の負のピーク124、および応答の正のピーク126を決定するために使用することができることは理解されるであろう。
【0051】
デバイス1が、神経応答開始122、応答の負のピーク124、および応答の正のピーク126を決定した後、デバイスは、この情報を使用して、(i)CV=(92.2/0nset)として計算される、メートル/秒を単位とする、伝導速度(CV)、および(ii)負のピーク124と正のピーク126との間の振幅の差として計算される、マイクロボルトを単位とする、振幅を決定する。本発明の好ましい一実施形態では(機能ブロック176)、CVは、CVがLCD26(図5)に表示される前に伝導速度に対する温度のよく知られている影響を補償するように調節される。より具体的には、神経伝導検査において、患者の皮膚表面温度は、赤外線放射温度計14(図3)によって測定され、好ましくは、それぞれの刺激で1回測定が行われる。全体の温度は、個別の温度の中央値として定義される。温度中央値が23℃未満である場合、ユーザーに対してエラーメッセージが報告され、神経伝導の結果は表示されない。温度中央値が30℃以上である場合、温度補償は実行されない。23℃から29.5℃までの範囲の温度では、CVは式
CVDisplayed=CVCalculatedQ10(ΔT/10)
に従って補正され、ただし式中、Q10は温度係数であり、ΔTは30℃と温度中央値との間の温度の差である。Q10に対する好ましい値は、公開されている科学的研究に基づき1.5である。
バイオセンサのテールと検査デバイスのバイオセンサポートとの間に挟装されたアダプタ内に組み込まれたバイオセンサコード
必要ならば、1ビットバイオセンサコード(「再利用コード」とも称することができる)は、バイオセンサそれ自体に物理的に組み込まれるのではなく、バイオセンサのテールと検査デバイスのバイオセンサポートとの間に挟装されたアダプタ内に組み込まれうる。
この形態の発明では、バイオセンサは、バイオセンサの再利用を検出するために使用される1ビットバイオセンサコードを提供するために選択的に接続された/接続されていないトレース(例えば、トレース51Fおよび51G)を組み込む必要はない。その代わりに、1ビットバイオセンサコードを組み込んだトレースは、バイオセンサの作動トレースを検査デバイスに電気的に接続するためのパススルートレースも有するアダプタに搭載される。本発明のこの形態は、バイオセンサ再利用を検出することが望ましく、バイオセンサが1ビットバイオセンサコードを提供する手段をまだ備えていない場合に有利である可能性がある。
改良
本発明の特質を説明するために本明細書に記述され、例示されている細部、材料、ステップ、および部品の配置構成の多くの追加の変更は、本発明の原理および範囲内に収まっている限り当業者によってなされうることも理解されるであろう。
(項目1)
腓腹神経伝導速度および振幅を測定するための装置であって、
ハウジングと、
ヒトの腓腹神経を電気的に刺激するために前記ハウジングに装着された刺激手段と、
前記ハウジングに取外し可能に装着され、前記刺激手段によって誘発される腓腹神経応答を検出するための複数の電極を備えたバイオセンサと、
前記ハウジングに装着され、前記バイオセンサによって検出された前記腓腹神経応答を電気的に取得するために前記バイオセンサに電気的に接続された取得手段と、
前記ハウジングに装着され、前記取得された腓腹神経応答をデジタル化し、処理し、格納するために前記取得手段に電気的に接続された処理手段と、
前記ハウジングに装着され、前記処理された腓腹神経応答の前記伝導速度および振幅を計算するために前記処理手段に電気的に接続された計算手段と、
前記腓腹神経の伝導速度および振幅を表示するために前記ハウジングに装着された表示手段とを備え、
前記刺激手段および前記バイオセンサは、前記ハウジングを操作することによって、腓腹神経の付近の、患者の解剖学的構造に配置されるように設計された、
装置。
(項目2)
前記腓腹の伝導速度は、知覚神経の活動電位の開始までの速度である項目1に記載の装置。
(項目3)
前記腓腹の伝導速度は、知覚神経の活動電位の負のピークまでの速度である項目1に記載の装置。
(項目4)
前記腓腹の振幅は、知覚神経の活動電位の負のピークから正のピークまでの振幅である項目1に記載の装置。
(項目5)
前記腓腹の振幅は、知覚神経の活動電位の開始から負のピークまでの振幅である項目1に記載の装置。
(項目6)
前記刺激手段は、前記ハウジングに装着された2つの伝導プローブを備えた項目1に記載の装置。
(項目7)
前記2つの伝導プローブのうちの少なくとも一方は、前記ハウジングと前記患者の解剖学的構造との間の距離に合わせて自動調節する可変の長さを有する項目6に記載の装置。
(項目8)
前記バイオセンサは、少なくとも2つの独立した腓腹神経応答検出チャネルを備えた項目1に記載の装置。
(項目9)
前記バイオセンサは、前記ハウジングと前記患者の解剖学的構造との間の距離に合わせて自動調節する発泡体パッドによって前記ハウジングに取外し可能に装着された項目1に記載の装置。
(項目10)
前記発泡体パッドは、前記バイオセンサを前記発泡体パッドに取外し可能に装着するための接着剤を含む項目9に記載の装置。
(項目11)
前記発泡体パッドは、前記発泡体パッドを前記ハウジングに取外し可能に装着するための接着剤を含む項目9に記載の装置。
(項目12)
前記装置は、最大刺激強度を決定するための決定手段を備えた項目1に記載の装置。
(項目13)
前記決定手段は、2つの刺激強度での腓腹神経応答を比較し、第2の刺激強度は、第1の刺激強度より大きい項目12に記載の装置。
(項目14)
前記2つの刺激強度の間の差は、10ミリアンペアである項目13に記載の装置。
(項目15)
前記装置は、前記少なくとも2つの独立した腓腹神経応答記録チャネルのうちのどちらが最適であるかを決定するためのチャネル決定手段を備えた項目8に記載の装置。
(項目16)
前記最適な腓腹神経応答チャネルは、より大きな振幅を有し、したがって前記腓腹神経に物理的に最も近いチャネルである項目15に記載の装置。
(項目17)
前記処理手段は、前記知覚神経の活動電位の前記開始、負のピーク、および正のピークの識別を行うように構成された項目1に記載の装置。
(項目18)
前記腓腹神経の付近で前記患者の皮膚表面温度を測定するために前記ハウジングに装着された非接触温度センサをさらに備える項目1に記載の装置。
(項目19)
前記計算手段は、前記非接触温度センサによって測定された前記皮膚表面温度を使用して、前記伝導速度が前記表示手段に表示される前に前記伝導速度に対する温度の影響を補償する項目18に記載の装置。
(項目20)
前記計算手段は、前記非接触温度センサによって測定された前記皮膚表面温度を使用して、前記振幅が前記表示手段に表示される前に前記振幅に対する温度の影響を補償する項目18に記載の装置。
(項目21)
前記計算手段は、前記非接触温度センサによって測定された前記皮膚表面温度を所定の最低温度と比較し、前記測定された温度が前記所定の最低温度より低い場合に、エラーメッセージが前記表示手段に表示される項目18に記載の装置。
(項目22)
前記計算手段は、前記非接触温度センサによって測定された前記皮膚表面温度を所定の最高温度と比較し、前記測定された温度が前記所定の最高温度より高い場合に、エラーメッセージが前記表示手段に表示される項目18に記載の装置。
(項目23)
前記計算手段は、検査時に前記皮膚表面の温度のバラツキを計算し、前記計算されたバラツキを所定の最大値と比較し、前記計算されたバラツキが前記所定の最大値を超える場合に、エラーメッセージが前記表示手段に表示される項目18に記載の装置。
(項目24)
前記バイオセンサは、オス部材を備え、前記ハウジングは、メス部材を備え、これにより、前記オス部材が前記メス部材に挿入されたときに、前記バイオセンサは、前記取得手段に電気的に接続される項目1に記載の装置。
(項目25)
前記バイオセンサの前記オス部材を前記ハウジングの前記メス部材内への挿入は、電気的に検出される項目24に記載の装置。
(項目26)
前記バイオセンサは、あるビットパターンで符号化される項目1に記載の装置。
(項目27)
前記バイオセンサは、前記バイオセンサに搭載される少なくとも2つの伝導部材を選択的に接続するまたは接続しないことによってあるビットパターンで符号化される項目26に記載の装置。
(項目28)
前記ビットパターンは、単一ビットである項目26に記載の装置。
(項目29)
前記ビットパターンは、順次的バイオセンサとともにランダムに変化する項目26に記載の装置。
(項目30)
バイオセンサのビットパターンの最近の履歴は、前記装置によって検出され格納される項目1に記載の装置。
(項目31)
前記最近の履歴は、前記装置によって検出された24個の一番最近のビットパターンである項目30に記載の装置。
(項目32)
ランダム性の検定は、バイオセンサのビットパターンの前記最近の履歴に適用される項目30に記載の装置。
(項目33)
前記ランダム性の検定が、ビットパターンの前記最近の履歴がランダムではありえないことを示している場合、前記装置により前記表示手段に警告が表示される項目32に記載の装置。
(項目34)
前記警告が発せられ、ビットパターンのその後の最近の履歴に対するランダム性の第2の検定がランダム性の欠如を示している場合、前記装置は使用不可にされる項目33に記載の装置。
(項目35)
今後使用される前にメーカーによってリセットされなければならない項目34に記載の装置。
(項目36)
前記ランダム性の検定は、ラン検定である項目32に記載の装置。
(項目37)
前記表示手段は、前記伝導速度または振幅が前記計算手段によって決定されえない場合にエラーメッセージを表示するための手段を備えた項目1に記載の装置。
(項目38)
腓腹神経伝導速度および振幅を測定するための装置であって、
ハウジングと、
ヒトの腓腹神経を電気的に刺激するために前記ハウジングに装着された刺激手段と、
バイオセンサを前記ハウジングに取外し可能に装着するための前記ハウジング上の座部であって、前記バイオセンサは、前記刺激手段によって誘発される腓腹神経応答を検出するための複数の電極を備えるタイプである、座部と、
前記座部上に装着されたバイオセンサに電気的に接続し、前記バイオセンサによって検出された前記腓腹神経応答を電気的に取得するために前記ハウジングに装着された取得手段と、
前記ハウジングに装着され、前記取得された腓腹神経応答をデジタル化し、処理し、格納するために前記取得手段に電気的に接続された処理手段と、
前記ハウジングに装着され、前記処理された腓腹神経応答の前記伝導速度および振幅を計算するために前記処理手段に電気的に接続された計算手段と、
前記腓腹神経の伝導速度および振幅を表示するために前記ハウジングに装着された表示手段とを備え、
前記刺激手段、および前記座部上に取外し可能に装着されたバイオセンサは、前記ハウジングを操作することによって、腓腹神経の付近の、患者の解剖学的構造に配置されるように設計された、
装置。
(項目39)
腓腹神経伝導速度および振幅を測定するための装置であって、
神経伝導検査デバイスの前記ハウジングに取外し可能に装着され、前記ハウジングと連携して移動するように適合されたバイオセンサを備え、前記バイオセンサは、前記神経伝導検査デバイスによって誘発される腓腹神経応答を検出するための複数の電極と、前記複数の電極を前記神経伝導検査デバイスに電気的に接続するための電気コネクタとを備えた、
装置。
(項目40)
腓腹神経伝導速度および振幅を測定するための方法であって、
バイオセンサを神経伝導検査デバイスのハウジングに、前記ハウジングと連携して移動するように、取外し可能に装着するステップと、
前記神経伝導検査デバイスがヒトの腓腹神経を電気的に刺激する位置に置かれ、前記バイオセンサが前記刺激手段によって誘発される腓腹神経応答を検出する位置に置かれるように前記神経伝導検査デバイスの前記ハウジングの位置決めを行うステップと、
前記神経伝導検査デバイスを使用して腓腹神経を電気的に刺激し、前記バイオセンサによって検出された前記腓腹神経応答を取得するステップと、
前記取得された腓腹神経応答を処理して、前記処理された腓腹神経応答の伝導速度および振幅を決定するステップと
を含む方法。
(項目41)
手持コンポーネントおよび1人患者用バイオセンサを備えた完全一体型の手持神経伝導検査装置であって、前記バイオセンサは、神経応答を取得するために前記手持コンポーネントに物理的に、かつ電気的に接続される、完全一体型の手持神経伝導検査装置。
(項目42)
前記手持コンポーネントは、
一対の刺激電極を備え、前記刺激電極の少なくとも1つは調節可能な高さを有し、これにより、電流を被験者に流して変化する表面解剖学的構造の下で末梢神経を刺激する項目41に記載の装置。
(項目43)
前記手持コンポーネントは、接着剤でコーティングされた発泡体パッドを通して前記手持コンポーネントに物理的に取り付けられた前記バイオセンサに電気的に接続するためのバイオセンサポートを備えた項目41に記載の装置。
(項目44)
前記手持コンポーネントに装着された一対の刺激プローブをさらに備え、前記プローブのうちの少なくとも一方は、前記プローブの先端部と不均一な高さの皮膚表面との間の完全な接触を行うことが可能なようにバネが装着された項目41に記載の装置。
(項目45)
神経伝導検査を実行しながら皮膚温度測定を行えるように前記手持コンポーネント内に組み込まれた温度感知プローブをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目46)
前記手持コンポーネントの剛性のある平坦な表面と人体の各場所の柔軟で凸凹した表面との間に物理的界面を形成するように柔軟な材料から作られたパッドをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目47)
(i)前記パッドと手持コンポーネントとの間、および(ii)前記パッドと前記バイオセンサとの間に、確実な、ただし永久的ではない接着を形成する前記柔軟なパッドのいずれかの面に接着剤コーティングをさらに備えた項目46に記載の装置。
(項目48)
前記手持コンポーネントはメスコネクタを備え、前記バイオセンサはオスコネクタを備え、さらに、前記バイオセンサは、前記オスコネクタが前記メスコネクタ内に挿入されたときに前記手持コンポーネントに電気的に接続される項目41に記載の装置。
(項目49)
前記バイオセンサは、複数の対の能動電極を備えた項目41に記載の装置。
(項目50)
少なくとも一対の能動電極は、前記神経応答の有効な記録が行えるように前記神経経路の上に載る項目49に記載の装置。
(項目51)
前記電極対の相対的位置は、患者の左肢および右肢上の神経の各場所の対称性を利用していずれかの肢上の前記完全一体型の手持神経伝導検査装置の1つの一貫した位置により一対の電極をその肢上の前記神経の上に載せられるように構築された項目50に記載の装置。
(項目52)
前記バイオセンサは、個別の電極に接続されていない追加のトレースを備えた項目41に記載の装置。
(項目53)
前記追加のトレースは、間にさまざまな組み合わせパターンを形成し、前記手持コンポーネントに埋め込まれている電子回路によって復号化される項目52に記載の装置。
(項目54)
前記さまざまな組み合わせパターンは、バイオセンサと前記手持コンポーネントとの適切な接続、前記手持コンポーネントに接続されたバイオセンサの種類、および前記バイオセンサの納入業者の識別、のうちの少なくとも1つを自動的に認識するための手段をもたらす項目53に記載の装置。
(項目55)
互換性のあるバイオセンサと前記手持コンポーネントとの接続を自動的に検出し、バイオセンサの種類に基づき適切な検査設定を開始するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目56)
前記ソフトウェア制御モジュールは、前記バイオセンサの所定の特性を認識する項目55に記載の装置。
(項目57)
前記ソフトウェア制御モジュールは、前記バイオセンサの前記所定の特性を使用して、前記バイオセンサが複数の患者間で再利用されている可能性をそれぞれのバイオセンサ接続からの保持されているバイオセンサ特性履歴の解析を通じて判定する項目56に記載の装置。
(項目58)
応答波形の特徴を解析することによって、かつその後の刺激強度レベルを制御することによって、最大神経応答を誘発するのに必要な刺激強度レベルを自動的に決定するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目59)
複数の電極対から取得された波形から導出される神経応答特徴の集まりに基づき好ましい記録電極対を選択するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目60)
刺激の開始前の波形セグメントに基づき雑音レベルを推定することによって、かつ最大刺激によって誘発される前記神経応答の振幅を推定することによって、平均された神経応答を形成するために必要な神経応答の数を予測するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目61)
複数の波形が平均された神経応答波形を形成することを目的として取得されるときに外れ値である波形を除去するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目62)
個別の波形は、波形の移動平均との相関が閾値より低い場合、または前記波形が複数の波形の時間的に同期した比較結果に基づき大きな割合の極値を保持する場合に、外れ値として分類される項目61に記載の装置。
(項目63)
平均された神経応答波形を解析して重要な神経応答の特徴を識別するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目64)
前記重要な神経応答の特徴は、信号開始、負のピーク、および正のピークを含む項目63に記載の装置。
(項目65)
前記重要な神経応答の特徴は、開始伝導速度およびピークツーピーク振幅の神経伝導パラメータを決定するために使用される項目64に記載の装置。
(項目66)
刺激されている前記神経の近くの前記皮膚の温度測定を連続的にサンプリングするソフトウェア制御モジュールをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目67)
前記ソフトウェア制御モジュールは、前記温度統計量を解析して前記温度測定結果の信頼度と検査条件の適切さを判定する項目66に記載の装置。
(項目68)
皮膚温度が低い結果として測定された伝導速度を自動的に補償するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた項目41に記載の装置。
(項目69)
前記ソフトウェア制御モジュールは、ルックアップテーブルを使用して皮膚温度による伝導速度の変化を補償する項目68に記載の装置。
(項目70)
前記波形の特徴は、振幅、負のピーク時間、知られているテンプレートとの前記波形の類似度、およびより低い刺激強度で取得された波形との前記波形の類似度を含む項目58に記載の装置。
(項目71)
前記神経応答の特徴は、振幅、信号対雑音比、負のピーク時間、および知られているテンプレートへの波形適合度を含む項目59に記載の装置。
(項目72)
電極のどの対が前記神経の上に載る可能性がより高いかを判定するために前回検査において好ましい対として選択されるそれぞれの電極対の度数分布を解析するソフトウェア制御モジュールをさらに備えた項目59に記載の装置。
(項目73)
前記ソフトウェア制御モジュールは、全検査時間を短縮し、必要な刺激階数を減らすことを活かすために必要ならば既定の電極対を変更して新しい検査を開始する項目72に記載の装置。
(項目74)
前記ソフトウェア制御モジュールは、前記温度測定結果の標準偏差および中央値を含む統計量を計算する項目68に記載の装置。
(項目75)
前記標準偏差が高すぎる場合に、前記ソフトウェア制御モジュールは、前記温度測定結果の信頼性が低いことにより検査結果を破棄する項目74に記載の装置。
(項目76)
前記温度の中央値が閾値より低い場合、前記検査結果は補償の対象でないとみなされ、前記ソフトウェア制御モジュールは、前記検査結果も破棄する項目74に記載の装置。
(項目77)
神経応答を検出するためのバイオセンサであって、
基材と、
前記神経応答を検出するために前記基材に装着された複数の電極と、
前記バイオセンサの再利用を決定するために前記基材に搭載される、前記バイオセンサにランダムに割り当てられる、バイオセンサ再利用コードと
を備えたバイオセンサ。
(項目78)
前記バイオセンサ再利用コードは、電気的受動素子を使って前記バイオセンサにおいて符号化される項目77に記載のバイオセンサ。
(項目79)
前記受動素子は、前記基材に搭載された少なくとも2つの伝導部材を備え、さらに、前記バイオセンサ再利用コードは、前記少なくとも2つの伝導部材を選択的に接続するか、または接続しないかによって符号化される項目78に記載のバイオセンサ。
(項目80)
キットであって、
神経応答を検出するための複数のバイオセンサを備え、前記バイオセンサのそれぞれが、基材と、神経応答を検出するために前記基材に装着された複数の電極と、前記バイオセンサの再利用を決定するために前記基材に搭載されたバイオセンサ再利用コードとを備え、
前記バイオセンサ再利用コードは、前記キット内の前記バイオセンサ同士でランダムに異なる、
キット。
(項目81)
検査装置と接続するバイオセンサの再利用を決定するための方法であって、
バイオセンサを前記検査装置に接続するステップであって、前記バイオセンサはこのバイオセンサにランダムに割り当てられたバイオセンサ再利用コードを備えた、ステップと、
前記接続されているバイオセンサに関連する前記バイオセンサ再利用コードを識別するステップと、
前記識別されたバイオセンサ再利用コードを前記検査装置にすでに接続された前記バイオセンサに関連する前記バイオセンサ再利用コードと比較するステップと、
前記比較結果が前記識別されたバイオセンサ再利用コードおよび前記すでに接続されているバイオセンサからの前記コードがバイオセンサ再利用コードのランダム分布からはありえそうもないパターンを形成することを示している場合に前記バイオセンサは再利用されていると判定するか、または前述のパターンがバイオセンサ再利用コードのランダム分布からありえる場合に前記バイオセンサは再利用されていないと判定するステップと
を含む方法。
(項目82)
検査装置と接続するバイオセンサの再利用を防ぐための方法であって、
バイオセンサを前記検査装置に接続するステップであって、前記バイオセンサはこのバイオセンサにランダムに割り当てられたバイオセンサ再利用コードを備えた、ステップと、
前記接続されているバイオセンサに関連する前記バイオセンサ再利用コードを識別するステップと、
前記識別されたバイオセンサ再利用コードを前記検査装置にすでに接続された前記バイオセンサに関連する前記バイオセンサ再利用コードと比較するステップと、
前記比較結果が前記識別されたバイオセンサ再利用コードがバイオセンサ再利用コードのランダム分布の一部であることを示している場合に検査の続行を許可するか、または前記比較結果が前記識別されたバイオセンサ再利用コードがバイオセンサ再利用コードのランダム分布の一部でないことを示している場合に検査の続行を阻止するステップと
を含む方法。
(項目83)
バイオセンサを検査デバイスに接続するためのアダプタであって、前記バイオセンサの再利用を決定するために前記アダプタに搭載されたバイオセンサ再利用コードを備え、前記バイオセンサ再利用コードは、前記アダプタによって前記検査デバイスに提示される、アダプタ。
図1
図2
図3
図3A
図3B
図4
図5
図6
図6A
図6B
図7
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12