(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の説明において「%」は、特に説明がない場合「質量%」を示す。
【0057】
[(A)成分]
本発明における(A)成分は、γ−ラクタム骨格、δ−ラクタム骨格及びε−ラクタム骨格からなる群から選ばれる一種以上のラクタム骨格を有し、且つ酸性基を有する化合物(以下ラクタム化合物と称する)及び/又はその塩である。
【0058】
ラクタム化合物又はその塩は、上記特定の3種のラクタム骨格のいずれかを有し、かつ酸性基を有するラクタム化合物又はその塩であれば、特に限定されない。分子中に二種以上のラクタム骨格を有していてもよいし、二種以上の酸性基を有していてもよいし、二種以上のラクタム骨格及び二種以上の酸性基を有していてもよい。好適な一実施形態では、ラクタム骨格は、γ−ラクタム骨格である。
【0059】
ラクタム化合物又はその塩が有する酸性基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、及びスルホン酸基等が挙げられる。中でも、酸性基としてはカルボキシル基が好ましい。
【0060】
γ−ラクタム骨格を有し、かつ酸性基を有するラクタム化合物としては、例えば、ピロリドンカルボン酸、4−(3−ヒドロキシフェニル)−4−Aza−tricyclo(5.2.1.0(2,6))Dec−8−エン−3,5−ジオン、2−(3,5−ジオキソ−4−Aza−tricyclo(5.2.1.0(2,6))Dec−8−エン−4−yl)benzoic acid、及びそれらの塩が挙げられ、ピロリドンカルボン酸及びそれらの塩が好ましい。
【0061】
δ−ラクタム骨格を有し、かつ酸性基を有するラクタム化合物としては、例えば、6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸、4−(2−オキソ−1−ピペリジニル)ブタン酸、1−エチル−6−オキソ−3−ピペリジンカルボン酸、及びそれらの塩が挙げられ、6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸が好ましい。
【0062】
ε−ラクタム骨格を有し、かつ酸性基を有するラクタム化合物としては、例えば、3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸、3−(2−ブロモ−5−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−2−アゼパノン、及びそれらの塩が挙げられ、3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸が好ましい。
【0063】
ラクタム化合物の塩は、薬理学的に許容される塩であればよく、特に限定されない。薬理学的に許容される塩としては、例えば、酸付加塩、塩基付加塩及びアミノ酸塩が挙げられる。その具体例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩;トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩等の有機塩基塩;アルギニン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等のアミノ酸塩が挙げられる。
【0064】
ラクタム化合物は、ピロリドンカルボン酸、6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸、3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸であることが好ましく、ピロリドンカルボン酸又はその塩がより好ましい。
【0065】
ラクタム化合物及びその塩は、公知のスキームに従って合成することができる。ラクタム化合物及びその塩は市販品を用いてもよい。
【0066】
γ−ラクタム骨格を有するラクタム化合物(例えば、ピロリドンカルボン酸)の市販品としては、例えば、味の素株式会社から発売されている「AJIDEW A−100(登録商標)」が挙げられる。
【0067】
δ−ラクタム骨格を有するラクタム化合物(例えば、6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸)の市販品としては、例えば、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社から発売されている「(S)−6−Oxo−2−piperidine carboxylic acid(商品名)」が挙げられる。
【0068】
ε−ラクタム骨格を有するラクタム化合物(例えば、3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸)の市販品としては、例えば、シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社から発売されている「3−(2−Oxoazepan−1−yl)propanoic acid(商品名)」が挙げられる。
【0069】
本発明の組成物における(A)成分としてのラクタム化合物の種類は一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0070】
[(1−B)成分]
本発明における(1−B)成分は、フッ素化合物である。フッ素化合物としては、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化スズ、アミンフッ化物、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化ケイ素ナトリウム、及びフッ化ケイ素カルシウムが挙げられる。好ましいフッ素化合物は、フッ化ナトリウム及びモノフルオロリン酸ナトリウムである。
【0071】
フッ素化合物は市販品を用いてもよい。フッ化ナトリウムの市販品の例としては、ステラケミファ社から発売されている「フッ化ナトリウム」を挙げることができる。モノフルオロリン酸ナトリウムの市販品の例としては、ローディア日華社から発売されている「モノフルオロリン酸ナトリウム」を挙げることができる。
【0072】
[(1−C)成分]
本発明における(1−C)成分は、含硫アミノ酸残基を1.0〜6.0質量%含有するタンパク質である。
【0073】
含硫アミノ酸残基とは、含硫アミノ酸から水素を1つ以上除いて得られる残基を意味する。含硫アミノ酸とは、硫黄を含むアミノ酸であり、例えばメチオニン、システインが挙げられる。
【0074】
(1−C)成分は、リン酸基を含有することが好ましい。
【0075】
(1−C)成分において、タンパク質の数平均分子量は1000〜10万が好ましく、更に好ましくは1万〜10万である。数平均分子量が1000以上であることにより、象牙質との親和性を保つことができ、唾液により洗い流されにくく、十分な象牙質う蝕抑制効果を発揮することができる。一方、数平均分子量10万以下であることにより、歯牙への吸着性を保持することができ、象牙質う蝕抑制効果を十分に得ることができる。
【0076】
(1−C)成分において、タンパク質の数平均分子量の測定方法は以下の通りである。
【0077】
数平均分子量の算出方法の例としては、一般的には、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)を用いて算出する方法と、分析窒素値の計算によって算出する方法とが挙げられる。タンパク質、ポリペプチド化合物の数平均分子量の算出には、後者の方法を用いることが多い。(1−C)成分のタンパク質の数平均分子量も後者の方法にて測定することができる。
【0078】
(1−C)成分の数平均分子量は、例えば、分子中の総窒素量、アミノ態窒素量、構成アミノ酸の平均分子量をもとに、下記式(1−1)によって算出することができる。
【0080】
式(1)において、構成アミノ酸の平均分子量は、通常のアミノ酸分析により求めた構成アミノ酸の存在比率(%)に各アミノ酸の分子量を掛け合わせて算出される。総窒素量は、化粧品原料基準一般試験法の窒素定量法第一法あるいはガスクロマトグラフィー(GC)によって測定することができる。アミノ態窒素量は、ホルモール滴定法によって測定することができる。
【0081】
含硫アミノ酸残基を1.0〜6.0質量%含有する平均分子量1000〜10万のタンパク質」としては、例えば、ラクトフェリン、コラーゲン分解物、カゼインが挙げられる。
【0082】
ラクトフェリンは、動物の体内で広く分布している分子量約8万の鉄結合性の糖タンパク質である。ラクトフェリンの由来、製法は限定されない。例えば、哺乳類(例えばヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマなど)の初乳、移行乳、常乳、末期乳等、又はこれらの乳の処理物(例えば、脱脂乳、ホエーなど)から常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィーなど)により分離したラクトフェリンが挙げられる。公知の方法により調製したラクトフェリンを使用してもよい。ラクトフェリンとしてはウシ由来のラクトフェリンが好ましく使用される。
【0083】
ラクトフェリンとしては市販品を使用してもよい。ウシ由来のラクトフェリンの市販品の例としては、和光純薬工業株式会社から発売されている「ラクトフェリン(牛乳由来)(商品名)」、森永乳業株式会社から発売されている「MLF−1」「MLF−EX」、及び日本新薬株式会社から発売されている「ラクトフェリン」が挙げられる。(1−C)成分として、ラクトフェリンを1種類用いてもよく、由来又は分離条件の異なる2種類以上のラクトフェリンを組み合わせて用いてもよい。
【0084】
コラーゲン分解物の例としては、豚皮から製造されるコラーゲン分解物、魚鱗から製造されるコラーゲン分解物が挙げられ、このうち魚鱗から製造されるコラーゲン分解物が好ましい。(1−
C)成分において、コラーゲン分解物は1種類であってもよいし、原料の異なる2種類以上のコラーゲン分解物の組み合わせであってもよい。コラーゲン分解物としては市販品を使用してもよい。魚鱗から製造されるコラーゲン分解物の市販品の例としては、ゼ
ライス株式会社から販売されている商品名「HACP−U2」が挙げられる。
【0085】
カゼインは、牛乳、チーズなど乳製品に含まれ、牛乳に含まれる乳蛋白質の約80質量%を占めている。カゼインはリン酸基を含有するタンパク質、すなわちリンタンパク質(リン酸化タンパク質)の一種である。カゼインを構成するセリン残基の多くにリン酸が結合している。(1−
C)成分において、コラーゲン分解物は1種類であってもよいし、原料の異なる2種類以上のコラーゲン分解物の組み合わせであってもよい。カゼインとしては市販品を使用してもよい。牛乳由来のカゼインの市販品の例としては、和光純薬工業株式会社から発売されている商品名「カゼイン(乳由来)」が挙げられる。
【0086】
(1−C)成分におけるタンパク質の含硫アミノ酸残基の含有量は、タンパク質の質量あたり1.0〜6.0質量%である。含硫アミノ酸残基の含有量が1.0%以上であることにより、象牙質との親和性を向上させ、象牙質う蝕抑制効果を十分に得ることができる。一方、該含硫アミノ酸残基の含有量が6%以下であることにより、(1−C)成分が他の成分との間で立体構造障害を生じるほど嵩高になることがなく、象牙質への(1−C)成分又は他の成分の吸着性の低下が有効に防止され、象牙質う蝕抑制効果を十分に得ることができる。
【0087】
[(2−B)成分]
(2−B)成分は、リュウガン種子エキス、プロアントシアニジン、カテキン及びヘスペリジンからなる群から選ばれる一種以上のポリフェノール化合物である。
【0088】
リュウガン(Euphoria longana)は、熱帯アメリカや東南アジアで栽培されているムクロジ科の植物である。リュウガンの果肉は強壮や鎮静を目的とした漢方薬として重用されている。リュウガンはロンガンと呼ばれることもある。
【0089】
リュウガン種子エキスはリュウガンの種子から抽出されるエキスである。リュウガン種子エキスにはポリフェノールが含まれている(特開2003−327596号公報、The effect of Longan seed polyphenols on colorectal carcinoma cells.Eur J Clin Invest.(2010,40(8),p713−721)、Identification and quantification of polyphenolic compounds in Longan(Euphoria longana Lam.)fruit.J Agric Food Chem.(2005,53(5),p1387−1392))。
【0090】
リュウガン種子エキスの、リュウガンの種子からの抽出方法は特に限定されない。抽出方法の例としては、リュウガンの種子を破砕し、公知の抽出方法にて溶媒抽出する方法が挙げられる。溶媒としては、通常は水、1価アルコール、多価アルコール、これらの混合物等を用いることができ、溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級1価アルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0091】
リュウガン種子エキスとしては、溶媒抽出物をそのまま使用してもよいし、溶媒を溜去し濃縮して得られる濃縮物を使用してもよい。溶媒抽出物又は濃縮物を乾燥(例:凍結乾燥等)により溶媒を除去して得られる粉体を使用してもよい。更に、賦形剤等が加えられていてもよい。溶媒抽出物の凍結乾燥品等の粉体を、溶媒に再溶解させ適宜濃度に調整したものを使用してもよい。なお、リュウガン種子エキスを抽出する際の収率は特に限定されない。
【0092】
リュウガン種子エキスとしては、市販品を使用してもよい。市販品としては例えば、片倉チッカリン社製のエイジテクト、同社製のロンガン種子エキスパウダーSDなどが挙げられる。エイジテクトは、リュウガン種子粉砕物から抽出し、濃縮後に凍結乾燥したものを、エキス濃度が1.0%になるように1,3−ブチレングリコール及び水に溶解させて調製された溶液状の抽出物である(エイジテクト中のリュウガン種子エキス濃度は1.0%)。ロンガン種子エキスパウダーSDは、上記と同様に抽出し、凍結乾燥して得られた粉末に、賦形剤としてデキストリンを添加し、調製された粉末状の抽出物である(ロンガン種子エキスパウダーSD中のリュウガン種子エキス濃度は83%)。
【0093】
プロアントシアニジンは、カテキンの骨格が複数個結合した構造を有する、ポリフェノールの一種である。プロアントシアニジンの由来は特に限定されず、植物(例えば、果実類、麦類、豆類など)に由来していてもよいし、人工的な合成品であってもよい。中でも、植物に由来するプロアントシアニジンが好ましく、ブドウ種子に由来するプロアントシアニジンが好ましい。ブドウ種子にはプロアントシアニジンが豊富に含まれているためである。
【0094】
ブドウ種子由来のプロアントシアニジンの場合、ブドウ種子からのプロアントシアニジンの抽出方法は特に限定されない。抽出方法としては例えば、ブドウの種子を破砕し、公知の抽出方法にて溶媒抽出する方法が挙げられる。溶媒としては、通常は水、1価アルコール、多価アルコール、又はこれらの混合物が挙げられ、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級1価アルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0095】
プロアントシアニジンとしては、溶媒抽出物をそのまま使用することも可能であるが、溶媒を溜去し濃縮して得られる濃縮物を使用してもよい。溶媒抽出物又は濃縮物を乾燥(例:凍結乾燥等)により溶媒を除去して得られる粉体を使用してもよく、更に、賦形剤等が加えられていてもよい。そして、凍結乾燥品等の粉体を溶媒に再溶解させ適宜濃度に調整したものを使用してもよい。なお、プロアントシアニジンを抽出する際の収率は特に限定されない。
【0096】
プロアントシアニジンとしては、市販品を使用してもよい。例えば、キッコーマン社製のグラヴィノール−SL、同社製のグラヴィノール−Nなどを使用することができる。グラヴィノール−SLは、ブドウ種子の抽出精製物であり、主成分がプロアントシアニジンである茶褐色の粉末である(グラヴィノール−SL中のプロアントシアニジン濃度は82%)。グラヴィノール−Nも同様に、ブドウ種子の抽出精製物であり、淡茶褐色の粉末である(グラヴィノール−N中のプロアントシアニジン濃度は38%)。
【0097】
カテキンは、フラボノイドの一種(C
15H
14O
6)及びその誘導体の総称である。カテキンの例としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等が挙げられる。(2−B)成分においてカテキンは、これらのうちの1種であってもよいし、又は2種類以上であってもよい。カテキンの由来は特に限定されず、植物(例えば、茶など)に由来していてもよいし、人工的な合成品であってもよい。中でも、植物に由来するカテキンが好ましく、茶に由来するカテキンがより好ましく、茶葉に由来するカテキンが更に好ましい。茶葉にはカテキンが豊富に含まれているためである。
【0098】
茶葉由来のカテキンの場合、茶葉からのカテキンの抽出方法は特に限定されない。例えば、茶葉を破砕し、公知の抽出方法にて溶媒抽出することにより調製したものを使用することができる。溶媒としては、通常は水、1価アルコール、多価アルコール、又はこれらの混合物が挙げられ、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級1価アルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0099】
カテキンとしては、溶媒抽出物をそのまま使用することも可能であるが、溶媒を溜去し濃縮して得られる濃縮物を使用してもよい。溶媒抽出物又は濃縮物を乾燥(例:凍結乾燥等)により溶媒を除去して得られる粉体を使用してもよく、更に、賦形剤等が加えられていてもよい。そして、凍結乾燥品等の粉体を、溶媒に再溶解させ適宜濃度に調整したものを使用してもよい。なお、カテキンを抽出する際の収率は特に限定されない。
【0100】
カテキンとしては、市販品を使用してもよい。例えば、太陽化学社製のサンフェノンEGCG、サンフェノン90Sなどを使用することができる。サンフェノンEGCGは、緑茶の抽出生成物で、エピガロカテキンガレートを高純度に含む、白色〜淡灰色の粉末である(サンフェノンEGCG中のエピガロカテキンガレート濃度は95%)。サンフェノン90Sも緑茶の抽出精製物であり、淡黄色〜赤褐色の粉末である(サンフェノン90S中のカテキン濃度(種々のカテキンの合計濃度)は70%)。
【0101】
ヘスペリジンは、ビタミンPとも呼ばれるポリフェノールである。ヘスペリジンの由来は特に限定されず、植物(例えば、温州みかんやはっさく等の柑橘類)に由来していてもよいし、人工的な合成品であってもよい。中でも、植物に由来するヘスペリジンが好ましく、柑橘類に由来するヘスペリジンが好ましく、柑橘類の果皮に由来するヘスペリジンがより好ましい。柑橘類の果皮にはヘスペリジンが豊富に含まれているためである。
【0102】
果皮由来のヘスペリジンの場合、果皮からのヘスペリジンの抽出方法は特に限定されない。例えば、果皮を破砕し、公知の抽出方法にて溶媒抽出することにより調製したものを使用することができる。溶媒としては、通常は水、1価アルコール、多価アルコール、又はこれらの混合物が挙げられ、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級1価アルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0103】
ヘスペリジンとしては、溶媒抽出物をそのまま溶液状で使用することも可能であるが、溶媒を溜去し適宜濃度まで濃縮したものを使用してもよい。これらを凍結乾燥するなどして乾燥し、溶媒を除去して得られる粉体状のものを使用してもよく、更にそのまま、あるいは賦形剤等を加えて使用することもできる。凍結乾燥品等の粉体状のものを、溶媒に再溶解させ適宜濃度に調整したものを使用してもよい。なお、ヘスペリジンを抽出する際の収率は特に限定されない。
【0104】
ヘスペリジンとしては、市販品を使用してもよい。例えば、和光純薬工業社製のヘスペリジン、東京化成工業製のメチルヘスペリジンなどを使用することができる。ヘスペリジンは、果皮粉砕物から抽出精製したもので、黄色の粉末である(ヘスペリジン濃度は92%)。メチルヘスペリジンは、ヘスペリジンをジメチル硫酸でメチル化し水に可溶にしたもので、薄黄色〜赤黄色の粉末である(メチルヘスペリジン濃度は90%)。
【0105】
(2−B)成分は、リュウガン種子エキスを一種以上、プロアントシアニジンを一種以上、カテキンを一種以上、又はヘスペリジンを一種以上用いればよく、或いはこれらを複数適宜組み合わせて用いてもよい。(2−B)成分として好ましくはリュウガン種子エキス、及び/又はプロアントシアニジンが用いられ、更に好ましくはリュウガン種子エキスが用いられる。
【0106】
[(3−B)成分]
本発明における(3−B)成分は、乳酸アルミニウムである。
【0107】
(3−B)成分としては市販品を使用してもよい。例えば、乳酸アルミニウムの市販品としては、和光純薬株式会社製の商品名「乳酸アルミニウム」が挙げられる。
【0108】
乳酸アルミニウムは、口腔に使用した場合、えぐみ及び/又は金属味を感じる場合があるが、口腔用組成物(3)では(3−B)成分と共に(A)成分が配合されているので、えぐみ及び金属味の発生が防止され、使用感(味)の改善を図ることができる。
【0109】
[(3−C)成分]
(3−C)成分はモノフルオロリン酸塩である。
【0110】
モノフルオロリン酸塩としては、モノフルオロリン酸イオンを供給できればよく、水溶性のモノフルオロリン酸塩が好ましい。モノフルオロリン酸塩としては、モノフルオロリン酸のアルカリ金属塩、モノフルオロリン酸のアルカリ土類金属塩、モノフルオロリン酸のアンモニウム塩等が例示され、中でも、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、モノフルオロリン酸アンモニウム等が好ましく、モノフルオロリン酸ナトリウムがより好ましい。
【0111】
(3−C)成分としては市販品を用いてもよい。例えば、モノフルオロリン酸塩の市販品としては、ローディア日華社から発売されている「モノフルオロリン酸ナトリウム」が挙げられる。
【0112】
(3−C)成分は、一種類のモノフルオロリン酸塩でもよいし、二種以上のモノフルオロリン酸塩の組み合わせであってもよい。
【0113】
(3−C)成分であるモノフルオロリン酸塩は、成分中のフッ素が主に担っている。口腔用組成物(3)に含まれる総フッ素量は、口腔用組成物(3)の全量に対し、0.01質量%(100ppm)以上であることが好ましく、0.02質量%(200ppm)以上であることがより好ましい。上限は、1質量%(10000ppm)以下であることが好ましく、0.5質量%(5000ppm)以下であることがより好ましい。本発明の口腔用組成物(3)に含まれるフッ素量は、0.01〜1質量%(100〜10000ppm)が好ましく、0.02〜0.5質量%(200〜5000ppm)がより好ましい。
【0114】
[(3−D)成分及び(4−B)成分]
(3−D)成分及び(4−B)成分は、無機水溶性カリウム塩である。
【0115】
本発明において、「無機水溶性カリウム塩」とは、20℃の水100gに2g以上溶解することのできる無機カリウム塩をいう。
【0116】
無機水溶性カリウム塩としては、例えば、硝酸カリウム、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、及び炭酸水素カリウム、みょうばん等が挙げられる。中でも、知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果や使用感(味)の観点から、硝酸カリウム、塩化カリウムが好ましい。これら無機水溶性カリウム塩は、市販の試薬(和光純薬株式会社等の供給元から入手できる)を用いてよい。
【0117】
(3−D)成分及び(4−B)成分は、いずれも、一種単独であってもよく、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0118】
(4−B)成分は、知覚過敏による痛みに対する軽減効果が限定的であり、苦味をもたらし使用感(味)が不良であるという問題を有する。(4−B)成分の中でも、硝酸カリウムは、知覚過敏による痛み軽減に一定の効果を有するものの、苦味が強く使用感(味)に劣っている。口腔用組成物(4)においては、(4−B)成分と組み合わせて(A)成分を用いることにより、(4−B)成分の知覚過敏による痛みに対する軽減効果を顕著に向上させると共に、(4−B)成分由来の苦味を抑制し、たとえ硝酸カリウムを用いる場合であっても良好な使用感(味)を達成するに至ったものである。
【0119】
[(4−C)成分]
本発明において(4−C)成分は水溶性フッ素化合物である。「水溶性フッ素化合物」とは、20℃の水100gに2g以上溶解することのできるフッ素化合物をいう。
【0120】
水溶性フッ素化合物は、歯の再石灰化作用等を有するフッ化物イオンの供給源として、口腔用組成物に従来から使用されてきた公知の成分ではあるが、本発明者らは、斯かる水溶性フッ素化合物が、上記(A)成分の効果(すなわち知覚過敏による痛みに対する(B)成分の軽減効果の顕著な向上)をより一層高めることができることを見出した。
【0121】
(4−C)成分として好適に用いることのできる水溶性フッ素化合物としては、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化スズ、アミンフッ化物、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、フッ化ケイ素ナトリウム、及びフッ化ケイ素カルシウムが挙げられる。中でも、(A)成分の効果を高める観点から、水溶性フッ素化合物としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムが好ましい。これら水溶性フッ素化合物は、市販の試薬(例えば、ステラケミファ社、ローディア日華社等の供給元から入手できる)を用いてよい。
【0122】
[(5−B)成分]
(5−B)成分は、カチオン化セルロースである。
【0123】
カチオン化セルロースとしては、例えば、カチオン基が付加されているセルロース誘導体などが挙げられる。カチオン基としては例えば、ジメチルジアリルアンモニウム、2−ヒドロキシ−3(トリメチルアンモニオ)プロピルなどが挙げられる。カチオン基が付加されているセルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、これらの誘導体などが挙げられる。カチオン化セルロースは、窒素含有量が0.1〜3質量%であるものが好ましい。
【0124】
(5−B)成分は一種でもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
【0125】
(5−B)成分としては、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドが、歯牙のステイン形成抑制効果、光沢効果の点で優れていることから、好適に使用できる。
【0126】
[(6−B)成分]
(6−B)成分はポリフェノール化合物である。ポリフェノール化合物としては、フラボノイド、フェニルカルボン酸、クロロゲン酸、リグナン、クルクミン、及び上記(2−B)成分の各例が挙げられる。
【0127】
[本発明の組成物又は剤]
本発明の組成物又は剤は、(A)成分であるラクタム化合物及び/又はその塩を含む。ラクタム化合物及び/又はその塩を有効成分として含む。
【0128】
本発明の組成物又は剤における(A)成分の含有量は特に制限されない。
【0129】
本発明の組成物の有効成分が(A)成分単独の場合、(A)成分の含有量は、組成物の全量に対し0.3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。これにより、ラクタム化合物を配合することによる効果を十分に得ることができる。(A)成分がγ−ラクタム骨格及び/又はε−ラクタム骨格を有するラクタム化合物の場合は、配合量は1質量%以上であることが更に好ましい。
【0130】
本発明の組成物の有効成分が(A)成分単独である場合、(A)成分の配合量は、組成物の全量に対し10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。多量に配合しても各効果向上への寄与は限定的であるためである。
【0131】
本発明の剤における(A)成分の配合量は、組成物の全量に対し0.3〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0132】
以下、本発明の組成物が口腔用組成物である場合の好ましい態様を説明する。
【0133】
[口腔用組成物(1)]
本発明の口腔用組成物は、(A)成分と(1−B)成分を含有していてもよい。以下、(A)成分及び(
1−B)成分を含有する口腔用組成物を、口腔用組成物(1)と言う。
【0134】
[口腔用組成物(1)における(A)成分の含有量]
口腔用組成物(1)における(A)成分の含有量は特に制限されないが、口腔用組成物(1)の全量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上である。(A)成分の含有量が0.1質量%以上であることにより、象牙質う蝕抑制効果を十分に得ることができる。
【0135】
口腔用組成物(1)における(A)成分の含有量の上限は10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。これにより、口腔用組成物(1)中の増粘剤のゲル化能を保つことができ、経時による(A)成分の析出を防止することができ、良好な製剤安定性を保持することができる。それに伴って象牙質う蝕抑制効果を保持することができる。
【0136】
(A)成分の含有量は、口腔用組成物(1)全量の0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。(A)成分がδ−ラクタム骨格及び/又はε−ラクタム骨格を有するラクタム化合物である場合、(A)成分の含有量は1〜5質量%が更に好ましい。
【0137】
[口腔用組成物(1)における(1−B)成分の含有量]
本発明の口腔用組成物(1)においては、口腔内においてフッ化物イオンの供給源となる(1−B)成分と、(A)成分の両者の作用が相加的、相乗的に組み合わさって、従来にない優れた象牙質う蝕予防効果が発揮される。
【0138】
本発明に用いられる(1−B)成分の効果は、(1−B)成分中のフッ素が担っているので、(1−B)成分の配合量は、口腔用組成物(1)中のフッ素含有量に換算して規定する方が有用である。したがって、以下の説明では、口腔用組成物(1)中の(1−B)成分の含有量は、口腔用組成物(1)中のフッ素含有量で代替して示す。
【0139】
口腔用組成物(1)における(1−B)成分の含有量は、口腔用組成物(1)全量に対するフッ素含有量に換算して、0.01質量%(100ppm)以上が好ましく、0.02質量%(200ppm)以上がより好ましい。これにより、十分な象牙質う蝕抑制効果を得ることができる。
【0140】
一方、口腔用組成物(1)における(1−B)成分の含有量の上限は、口腔用組成物(1)全量に対するフッ素含有量に換算して、1質量%(10000ppm)以下が好ましく、0.5質量%(5000ppm)以下がより好ましい。フッ素量が1質量%(10000ppm)以下であることにより、製剤安定性を保つことができる。製剤安定性保持の例としては、口腔用組成物(1)中の増粘剤のゲル化能低下の防止が挙げられる。他の例としては、口腔用組成物(1)が液体製剤の場合、オリの発生の防止が挙げられる。
【0141】
本発明の口腔用組成物(1)における(1−B)成分の含有量は、口腔用組成物(1)の全量に対するフッ素含有量に換算して、0.01〜1質量%(100〜10000ppm)が好ましく、0.02〜0.5質量%(200〜5000ppm)がより好ましい。
【0142】
[口腔用組成物(1)における(A)成分/(1−B)成分]
本発明において、(A)成分と(1−B)成分の配合比には、好ましい範囲がある。口腔用組成物(1)中の(1−B)成分に対する(A)成分の質量比は、フッ素含有量に対する(A)成分の質量比[(A)成分/フッ素含有量]で表すことができる。(A)成分/フッ素含有量]は、1以上であることが好ましく、2以上であることが更に好ましい。これにより、(A)成分に対するフッ化物イオンの量が適度であるので、象牙質表面におけるフッ化物イオンの析出が防止され、十分な象牙質う蝕抑制効果を得ることができる。
【0143】
口腔用組成物(1)中のフッ素含有量に対する(A)成分の質量比の上限は250以下であることが好ましく、100以下であることが更に好ましい。これにより(A)成分に対しフッ化物イオンの量が適度な範囲であるため、顕著な象牙質う蝕抑制効果を得ることができる。
【0144】
口腔用組成物(1)中のフッ素含有量に対する(A)成分の質量比は1〜250であることが好ましく、2〜100であることが更に好ましい。
【0145】
本発明の口腔用組成物(1)は、(1−C)成分を更に含有していてもよい。これにより口腔用組成物(1)の象牙質う蝕予防効果が更に増大するので好ましい。
【0146】
[口腔用組成物(1)における(1−C)成分の含有量]
口腔用組成物(1)が(1−C)成分を含む場合、(1−C)成分の含有量は特に制限されないが、好ましくは、口腔用組成物(1)の全量に対し0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.1〜5質量%である。含有量が0.1質量%以上であることにより、象牙質う蝕抑制効果を十分に得ることができる。一方、10質量%以下であることにより、変色を防止することができ、(1−C)成分由来の基剤臭の発生による使用感低下を防止することができる。
【0147】
[口腔用組成物(1)における(1−C)成分/(1−B)成分]
口腔用組成物(1)が(1−C)成分を含む場合、(1−C)成分と(1−B)成分の質量比は、口腔用組成物(1)中のフッ素含有量に対する(1−C)成分の質量比、すなわち、(1−C)成分の質量/フッ素含有量で表すことができる。
【0148】
口腔用組成物(1)中のフッ素量に対する(1−C)成分の質量比[(1−C)成分/フッ素含有量]は、0.3〜800であることが好ましく、0.5〜80であることがより好ましい。質量比が0.3以上であることにより、(1−C)成分に対するフッ化物イオンの量が適度であるので、象牙質表面におけるフッ化物イオンの析出が防止され、十分な象牙質う蝕抑制効果を得ることができる。一方、質量比が800以下であることにより、(1−C)成分に対しフッ化物イオンの量が適度な範囲であるため、象牙質う蝕抑制効果に対して相乗効果を得ることができる。
【0149】
[口腔用組成物(2)]
本発明の口腔用組成物は、(A)成分と(2−B)成分を含有していてもよい。以下、(A)成分及び(
2−B)成分を含有する口腔用組成物を、口腔用組成物(2)と言う。
【0150】
[口腔用組成物(2)における(A)成分の含有量]
口腔用組成物(2)における(A)成分の含有量は特に制限されないが、本発明の口腔用組成物(2)の全量に対し0.5%以上であることが好ましく、より好ましくは1%以上である。これにより、(2−B)成分と併用することにより、保存後の象牙質コラーゲン分解抑制効果及び保存後の象牙質コラーゲン着色抑制効果を十分に発揮できる。口腔用組成物(2)における(A)成分の含有量の上限は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。これにより、製剤安定性が十分に発揮でき、それに伴い保存後の象牙質コラーゲン分解抑制効果も十分に発揮できる。(A)成分の含有量は、0.5〜10%であることが好ましく、1〜5%であることがより好ましい。
【0151】
[口腔用組成物(2)における(2−B)成分の含有量]
口腔用組成物(2)における(2−B)成分の含有量は特に制限されないが、口腔用組成物(2)の全量に対し、0.001%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましい。含有量が0.001%以上であることにより、(A)成分との併用により、象牙質コラーゲン分解抑制効果及び保存後の象牙質コラーゲン分解抑制効果が共に十分に発揮され得る。(2−B)成分の含有量の上限は0.5%以下であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましい。これにより、保存後の象牙質コラーゲンへの着色抑制効果及び製剤安定性が十分に発揮され得る。(2−B)成分の含有量は、0.001〜0.5%であることが好ましく、0.01〜0.2%であることがより好ましい。
【0152】
[口腔用組成物(2)における(A)成分/(2−B)成分]
口腔用組成物(2)において、(A)成分の(2−B)成分に対する質量比((A)/(2−B))は、特には限定されないが、通常は5以上、好ましくは10以上である。これにより保存後の象牙質コラーゲン着色抑制効果及び製剤安定性が十分に発揮され得る。(A)成分の(2−B)成分に対する質量比の上限は、通常は3000以下、好ましくは300以下である。これにより象牙質コラーゲン分解抑制効果を保存後も十分に発揮することができる。口腔用組成物(2)における(A)成分の(2−B)成分に対する質量比((A)/(2−B))は、5〜3000であることが好ましく、10〜300であることがより好ましい。
【0153】
[口腔用組成物(3)]
本発明の口腔用組成物は、(A)成分と(3−B)成分を含有していてもよい。以下、(A)成分及び(3−B)成分を含有する口腔用組成物を、口腔用組成物(3)と言う。
【0154】
[口腔用組成物(3)における(A)成分の含有量]
口腔用組成物(3)における(A)成分の含有量は特に制限されないが、本発明の口腔用組成物(3)の全量に対し0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。これにより、象牙細管早期封鎖効果及び痛み軽減効果を十分に得ることができる。(A)成分がγ−ラクタム骨格を有し且つ酸性基を有する化合物及び/又はε−ラクタム骨格を有し且つ酸性基を有する化合物である場合は、1質量%以上であることが更に好ましい。(A)成分の含有量の上限は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。10質量%を超えてもそれ以上象牙細管早期封鎖効果の向上が得られないおそれがあるためである。
【0155】
(A)成分の含有量は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。(A)成分がγ−ラクタム骨格を有し且つ酸性基を有する化合物及び/又はε−ラクタム骨格を有し且つ酸性基を有する化合物である場合は、(A)成分の含有量は、1〜5質量%であることが更に好ましい。
【0156】
[口腔用組成物(3)における(3−B)成分の含有量]
口腔用組成物(3)における(3−B)成分の含有量は特に制限されないが、本発明の口腔用組成物(3)の全量に対し0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上である。これにより、象牙細管早期封鎖効果及び痛み軽減効果を十分に得ることができる。(3−B)成分の含有量の上限は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。これにより、使用感(味)を良好に保ち、えぐみや金属味などの発生を防止することができる。(3−B)成分の含有量は、0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0157】
[口腔用組成物(3)における(A)成分/(3−B)成分]
口腔用組成物(3)における、(3−B)成分に対する(A)成分の質量比[(A)/(3−B)]は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。これにより、使用感(味)の改善効果がより十分に発揮され得る。上限は、500以下であることが好ましく、45以下であることがより好ましい。これにより、(3−B)成分の象牙細管封鎖効果が十分に発揮され、(A)成分及び(3−B)成分の相乗効果が顕著に発現され得る。(3−B)成分に対する(A)成分の質量比は、0.1〜500であることが好ましく、0.5〜45であることがより好ましい。
【0158】
[口腔用組成物(3)における(3−C)成分の含有量]
口腔用組成物(3)は、(3−C)成分を更に含有してもよい。
【0159】
口腔用組成物(3)が(3−C)成分を含む場合、口腔用組成物(3)中の(C)成分の含有量は、口腔用組成物(3)に含まれる総フッ素含有量
として、0.01〜1質量%(100〜10000ppm)が好ましく、0.02〜0.5質量%(200〜5000ppm)がより好ましい。
【0160】
口腔用組成物(3)中の(3−C)成分の含有量は、モノフルオロリン酸ナトリウムの場合0.076質量%以上であることが好ましく、0.15質量%以上であることがより好ましい。これにより、象牙細管早期封鎖効果及び痛み軽減効果を十分に得ることができる。口腔用組成物(3)中の(3−C)成分の含有量の上限は、7.6質量%以下であることが好ましく、3.8質量%以下であることがより好ましい。これにより、使用感(味)を良好に保つことができる。(3−C)成分の含有量は、0.076〜7.6質量%が好ましく、0.15〜3.8質量%がより好ましい。
【0161】
[口腔用組成物(3)における(3−D)成分の含有量]
口腔用組成物(3)は、(3−D)成分を更に含有してもよい。
【0162】
口腔用組成物(3)における(3−D)成分の含有量は特に制限されないが、本発明の口腔用組成物(3)の全量に対し0.005質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。これにより、痛み軽減効果を十分に得ることができる。上限は10質量%であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。これにより、使用感(味)を良好に保つことができる。(3−D)成分の含有量は、0.005〜10質量%であることが好ましく、0.1〜7質量%であることがより好ましい。
【0163】
[口腔用組成物(4)]
本発明の組成物は、(A)成分と(4−B)成分を含有していてもよい。以下、(A)成分及び(4−B)成分を含有する口腔用組成物を、口腔用組成物(4)と言う。
【0164】
[口腔用組成物(4)における(A)成分の含有量]
口腔用組成物(4)における(A)成分の含有量は、知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果並びに使用感(味)の改善効果の観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。(A)成分として、酸性基を有するδ−ラクタム化合物、酸性基を有するε−ラクタム化合物、又はそれらの塩を用いる場合、口腔用組成物における(A)成分の含有量は、知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果の観点から、1質量%以上であることが特に好ましい。
【0165】
口腔用組成物(4)における(A)成分の含有量の上限は特に制限されないが、多量でも知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果向上への寄与は限定的であることから、通常、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0166】
一実施形態において、口腔用組成物(4)における(A)成分の含有量は、口腔用組成物(4)の全量に対し、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。(A)成分として、酸性基を有するδ−ラクタム化合物又は酸性基を有するε−ラクタム化合物を用いる場合、口腔用組成物における(A)成分の含有量は、1〜5質量%が特に好ましい。
【0167】
[口腔用組成物(4)における(4−B)成分の含有量]
口腔用組成物(4)における(4−B)成分の含有量は、知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果の観点から、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。
【0168】
使用感(味)の観点から、口腔用組成物(4)における(4−B)成分の含有量は、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。
【0169】
一実施形態において、口腔用組成物(4)における(4−B)成分の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、1.0〜7質量%が特に好ましい。
【0170】
[口腔用組成物(4)における(A)成分/(4−B)成分]
知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果並びに使用感(味)の改善効果を高いレベルにて両立するにあたり、口腔用組成物(4)においては(A)成分と(4−B)成分の質量比には、好ましい範囲がある。すなわち、口腔用組成物(4)における、(4−B)成分に対する(A)成分の質量比[(A)成分/(4−B)成分]は、0.02〜80であることが好ましく、0.1〜10であることがより好ましく、0.1〜5であることが更に好ましい。
【0171】
[口腔用組成物(4)における(
4−C)成分の含有量]
口腔用組成物(4)は、更に(4−C)成分を含有していてもよい。
【0172】
本発明に用いられる水溶性フッ素化合物の効果は、(4−C)成分中のフッ素が担っているので、(4−C)成分の含有量は、口腔用組成物(4)中のフッ素含有量に換算して規定する方が有用である。したがって、以下の説明では、(4−C)成分の含有量は、口腔用組成物(4)中のフッ素含有量で代替して示す。
【0173】
口腔用組成物(4)における(4−C)成分の含有量は、上記(A)成分の効果をより一層高めて口腔用組成物(4)の知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果を更に高める観点から、口腔用組成物(4)の全量に対するフッ素含有量に換算して、0.01質量%(100ppm)以上が好ましく、0.02質量%(200ppm)以上がより好ましい。
【0174】
使用感(味)の観点から、本発明の口腔用組成物における(4−C)成分の含有量は、フッ素量で、口腔用組成物(4)の全量に対し、1質量%(10000ppm)以下が好ましく、0.5質量%(5000ppm)以下がより好ましい。
【0175】
一実施形態において、本発明の口腔用組成物における(4−C)成分の含有量は、フッ素含有量換算で、口腔用組成物(4)の全量に対し、0.01〜1質量%(100〜10000ppm)が好ましく、0.02〜0.5質量%(200〜5000ppm)がより好ましい。
【0176】
[口腔用組成物(4)における(4−C)成分/(A)成分]
(A)成分の効果をより一層高めて口腔用組成物(4)の知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果を更に高めるにあたり、(A)成分と(4−C)成分の質量比には、好ましい範囲がある。すなわち、口腔用組成物(4)における、(A)成分に対する(4−C)成分の質量比[(4−C)成分/(A)成分]は、0.002〜5であることが好ましく、0.005〜0.5であることがより好ましい(但し(C)成分の質量は、フッ素含有量換算値である)。
【0177】
[口腔用組成物(5)]
本発明の組成物は、(A)成分と(5−B)成分を含有していてもよい。以下、(A)成分及び(5−B)成分を含有する口腔用組成物を、口腔用組成物(5)と言う。
【0178】
[口腔用組成物(5)における(A)成分の含有量]
口腔用組成物(5)における(A)成分の含有量は特に制限されないが、本発明の口腔用組成物(5)の全量に対し0.1質量%以上であることが好ましい。これにより、ステイン除去効果及びステイン形成抑制効果が十分に得られる。口腔用組成物(5)における(A)成分の含有量は本発明の口腔用組成物(5)の全量に対し10質量%以下であることが好ましい。これにより、良好な溶解性及び外観が得られると共に、違和感が抑えられ使用感を向上させることができる。口腔用組成物(5)における(A)成分の含有量は、本発明の口腔用組成物(5)の全量に対し0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0179】
[口腔用組成物(5)における(5−B)成分の含有量]
口腔用組成物(5)における(5−B)成分の含有量は、口腔用組成物(5)の全量に対し0.005質量%以上であることが好ましい。これによりステイン形成抑制効果及び光沢効果が十分に発揮され得る。口腔用組成物(5)における(5−B)成分の含有量は、口腔用組成物(5)の全量に対し0.1質量%以下であることが好ましい。これにより、カチオン化セルロース由来の違和感を抑制し、良好な使用感を保持することができる。口腔用組成物(5)における(5−B)成分の含有量は、本発明の口腔用組成物(5)の全量に対し0.005〜0.1質量%であることが好ましく、歯牙のステイン形成抑制効果及び光沢効果の点で0.01〜0.05質量%であることがより好ましい。
【0180】
[口腔用組成物(5)における(A)成分/(5−B)成分]
口腔用組成物(5)において、(A)成分と(5−B)成分の質量比((A)/(5−B))は、特には限定されないが、通常は3以上、好ましくは15以上である。(A)成分と(5−B)成分の質量比は通常は600以下、好ましくは300以下である。当該比率が3以上であることによりステイン形成抑制効果及びステイン除去効果が十分に発揮され得る。600以下であることにより、ステイン形成抑制効果及び光沢効果が十分に発揮され得るほか、良好な使用感を保持することができる。(A)成分と(5−B)成分の比は、3〜600であることが好ましく、15〜300であることがより好ましい。
【0181】
[口腔用組成物(5)の作用]
口腔用組成物(5)は、(A)成分と(5−B)成分とが以下の作用により、ステイン形成抑制作用、ステイン除去効果、光沢効果及び優れた製剤使用感を発揮すると推測される。
【0182】
(5−B)成分は、ステインのエナメル質表面への付着を効果的に抑制し、歯牙に光沢を付与する。一方、(A)成分は、エナメル質表面に付着したステインに、又は、付着後更に石灰化したステインに、吸着後、石灰化物を軟化及び溶解させ除去する作用、及び、ステインの積層を抑える作用を有する。
【0183】
(A)成分と(5−B)成分との組み合わせにより、ステインの歯面への付着及び積層が強力に抑制されることが可能となり、これにより、口腔用組成物(5)は歯牙のステイン除去効果、ステイン形成抑制効果及び光沢効果を併せ持つことができる。(A)成分と(5−B)成分とはいずれも、従来技術である縮合リン酸、酵素、界面活性剤がもつ口腔粘膜への違和感や味の問題を全く有していないため、口腔用組成物(5)は優れた製剤使用感をも発揮することができる。
【0184】
[口腔用組成物(6)]
本発明の組成物は、(A)成分と(6−B)成分を含有していてもよい。以下、(A)成分及び(6−B)成分を含有する口腔用組成物を、口腔用組成物(6)と言う。なお、(6−B)成分:ポリフェノール化合物は(
2−B)成分の各化合物を含んでいるので、口腔用組成物(6)は口腔用組成物(
2)の上位概念と言うこともできるが、両者は効果の点で相違する。
【0185】
[口腔用組成物(6)における(A)成分の含有量]
口腔用組成物(6)における(A)成分の含有量は特に制限されないが、本発明の口腔用組成物(6)の全量に対し0.3質量%以上であることが好ましい。これにより、(6−B)成分によるコラーゲン着色抑制効果が十分に得られる。口腔用組成物(6)における(A)成分の含有量は本発明の口腔用組成物(6)の全量に対し10質量%以下であることが好ましい。これにより、良好な溶解性及び外観が得られると共に、違和感が抑えられ使用感を向上させることができる。口腔用組成物(6)における(A)成分の含有量は、本発明の口腔用組成物(6)の全量に対し0.3〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
【0186】
[口腔用組成物(6)における(6−B)成分の含有量]
口腔用組成物(6)における(6−B)成分の含有量は、口腔用組成物(6)の全量に対し0.001質量%以上であることが好ましい。これにより(6−B)成分がコラーゲン着色の原因となり、(A)成分と(6−B)成分の併用によるコラーゲン着色抑制効果を期待することができる。口腔用組成物(6)における(6−B)成分の含有量は、口腔用組成物(6)の全量に対し5質量%以下であることが好ましい。これにより、(A)成分によるコラーゲン着色抑制効果が十分に発揮され得る。口腔用組成物(6)における(6−B)成分の含有量は、本発明の口腔用組成物(6)の全量に対し0.001〜5質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましい。
【0187】
[口腔用組成物(6)における(A)成分/(6−B)成分]
口腔用組成物(
6)において、(A)成分と(6−B)成分の質量比((A)/(6−B))は、特には限定されないが、通常は0.5以上、好ましくは
、3以上である。(A)成分と(6−B)成分の質量比は通常は1000以下、好ましくは200以下である。この範囲であることにより、(A)成分によるコラーゲン着色抑制効果が十分に発揮され得る。(A)成分と(6−B)成分の比は、0.5〜200であることが好ましく、3〜1000であることがより好ましい。
【0188】
なお、本発明において、組成物中の各成分の含有量は、組成物を製造する際の各成分の仕込み量を基準とする。
【0189】
本発明の組成物の投与形態は特に限定されない。例えば、経口投与(例えば、口腔内投与、舌下投与など)、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与など)などが挙げられる。これらの中でも侵襲性の少ない投与形態が好ましく、経口投与であることがより好ましい。
【0190】
本発明の組成物の剤形は投与形態などに従って適宜決定することができ、特に限定されない。経口投与される際の剤形の例としては、液状(液剤)、シロップ状(シロップ剤)、錠(錠剤、タブレット)、カプセル状(カプセル剤)、粉末状(顆粒、細粒)、ソフトカプセル状(ソフトカプセル剤)、固形状、半固形状(グミ等)、フィルム状、半液体状、クリーム状、ペースト状、チューインガム等が挙げられる。これらのうち、粒状、カプセル状、粉末状、ソフトカプセル状、固形状が好ましく、粒状(錠剤)がより好ましい。経皮投与される際の剤形の例としては、エアゾール、クリーム状、ローション状、スプレー状、スティック状などが挙げられる。
【0191】
本発明の組成物が口腔用組成物の場合の剤形は、液体系(液体、液状、ペースト状)、固体系(固体、固形状、半固形状、フィルム状)であることが好ましい。
【0192】
[薬理学的に許容される担体(任意成分)]
本発明の口腔用組成物には、上記各成分に加えて、必要に応じて、薬理学的に許容される担体(任意成分)を配合することができる。任意成分としては、例えば、界面活性剤、粘結剤、粘稠剤、甘味剤、防腐剤、香料、酸味料、滑沢剤、研磨剤、着色剤、保存料、光沢剤、流動化剤、結合剤、崩壊剤、薬用成分、水等の溶剤(溶媒)、賦形剤を安定性及び脱灰抑制効果を損なわない範囲で配合し得る。以下に任意成分の具体例を示すが、本発明の組成物に配合可能な成分はこれらに制限されない。
【0193】
研磨剤としては、例えば、無水ケイ酸、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。
【0194】
研磨剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。研磨剤を配合する場合、その配合量は、歯磨剤においては組成物全体の2〜40%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。洗口剤においては、組成物全体の0〜10%であることが好ましく、0〜5%であることがより好ましい。
【0195】
粘結剤としては、例えば、増粘性シリカ、プルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘結剤は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。粘結剤を用いる場合の配合量は、通常、組成物の全量に対して0.01〜3%である。
【0196】
粘稠剤(湿潤剤)としては、例えば、ソルビトール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。粘稠剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。粘稠剤を用いる場合、その含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で定めることができ、通常、組成物の全量に対して1〜60%である。
【0197】
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等が挙げられる。
【0198】
アニオン界面活性剤としては、例えば、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸塩、POEアルキルスルホコハク酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、POEアルキルエーテルリン酸塩などが挙げられる。これらのうち、汎用性の点で、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩などが好ましく、発泡性・耐硬水性の点で、ラウロイルサルコシンナトリウム、アルキル鎖の炭素鎖長として炭素数が10〜16のα−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどがより好ましい。
【0199】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらのうち、汎用性の点で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキロールアミド、ソルビタン脂肪酸エステルなどが好適に用いられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、アルキル鎖の炭素鎖長が、炭素数で14〜18であることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、エチレンオキサイド平均付加モル数が15〜30であることが好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、エチレンオキサイド平均付加モル数(平均付加EO)が20〜100であることが好ましい。アルキロールアミドは、アルキル鎖の炭素鎖長が炭素数12〜14であることが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12〜18であることが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が16〜18であることが好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、エチレンオキサイド平均付加モル数が10〜40であることが好ましい。
【0200】
界面活性剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。界面活性剤を用いる場合の含有量は、通常、組成物の全量に対して0〜10%であり、0.01〜5%であることが好ましい。
【0201】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジンヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、p−メトキシシンナミックアルデヒド、ソーマチン、パラチノース、マルチトール、キシリトール、アラビトール等が挙げられる。甘味剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。甘味剤を用いる場合、含有量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
【0202】
防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸塩、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。防腐剤は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。防腐剤を用いる場合、含有量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
【0203】
香料としては、例えば、天然香料、合成香料(単品香料)、調合香料(油脂香料(油性香料)、粉末香料など)が挙げられる。香料は、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0204】
天然香料としては、例えば、マスティック油、パセリ油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、メントール油、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、コリアンダー油、オレンジ油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローレル油、カモミール油、カルダモン油、キャラウェイ油、ベイ油、レモングラス油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー、シトラス油、ミックスフルーツ油、ストロベリー油、シナモン油、クローブ油、グレープ油、タイム油、セージ油、ハッカ油、ローズマリー油、マジョラム油、オリガナム油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、シソ油等が挙げられる。
【0205】
単品香料としては、例えば、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルアンスラニレート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチノンアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルフェイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチル
チオアセテート、シネオール、オイゲノール、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール等が挙げられる。
【0206】
調合香料とは、単品香料及び/又は天然香料を調合して作られる香料である。例えば、メントールミクロン、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、フルーツミックスフレーバー、ハーブミントフレーバー等が挙げられる。
【0207】
香料の形態は限定されず、精油、抽出物、固形物、及びこれらのいずれかを噴霧乾燥した粉体のいずれでも構わない。上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。上記香料素材を使用した賦香用香料は、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0208】
薬用成分としては、例えば以下の成分が挙げられる:縮合リン酸塩、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤;塩化ナトリウム等の収斂剤;塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化亜鉛等の知覚過敏抑制剤など。薬用成分を使用する場合の含有量は、それぞれの薬用成分について薬剤学的に許容できる範囲で適宜設定することができる。
【0209】
着色剤としては、例えば、ベニバナ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、シソ色素、紅麹色素、赤キャベツ色素、ニンジン色素、ハイビスカス色素、カカオ色素、スピルリナ青色素、
タマリンド色素等の天然色素や、赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等の法定色素、リボフラビン、銅クロロフィ
リンナトリウム、二酸化チタン等が挙げられる。着色剤を含有する場合、その含有量は、組成物の全量に対して0.00001〜3%であることが好ましい。
【0210】
光沢剤としては、例えば、シェラック、カルナウバロウ、キャンデリラロウなどのワックス類、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。光沢剤を含有する場合、その含有量は、組成物の全量に対して0.01〜5%が好ましい。
【0212】
溶剤としては、例えば、水、及び、エタノール、プロパノールなどの炭素原子数3以下の低級アルコール等が挙げられる。溶剤は、液体系の口腔用組成物に通常含有される。溶剤として水を含有する場合、その含有量は、組成物の全量に対して20〜95%であることが好ましい。溶剤として低級アルコールを含有する場合、その含有量は、組成物の全量に対して1〜20%であることが好ましい。
【0213】
賦形剤としては、例えば、水飴、ブドウ糖、果糖、転化糖、デキストリン、オリゴ糖等などが挙げられる。口腔用組成物が食品製剤である場合、通常、賦形剤が含有される。賦形剤を含有する場合、その含有量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
【0214】
本発明の口腔用組成物のpH(20℃)は、通常、5〜10であり、好ましくは6〜10であり、より好ましくは6〜9であり、更に好ましくは6〜8又は7〜9である。pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタミン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸、アルカリ、緩衝剤が挙げられる。pH調整剤を含有する場合、その含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜定めることができる。
【0215】
[本発明の口腔用組成物の剤形]
本発明の口腔用組成物の形状、剤形は特に限定されない。例えば、液体系(液体、液状、ペースト状)、固体系(固体、固形状)などの各種形状に調製できる。剤形の例としては、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、粉歯磨などの歯磨剤組成物、洗口剤組成物、塗布剤組成物、口腔用パスタ、口中清涼剤組成物、食品形態(例えば、チューインガム、錠菓、キャンディ、グミ、フィルム、トローチなど)が挙げられる。食品形態においては、時間及び場所を問わず使用可能な簡便性、携帯性の点から、錠菓、キャンディ、チューインガム、グミ及びフィルムのいずれかが好ましい。
【0216】
キャンディの例としては、キャラメル、ヌガーなどのソフトキャンディ、ドロップ、タフィなどのハードキャンディなどが挙げられ、特に限定されないが、高い機能性実感付与の点でハードキャンディが好ましい。ハードキャンディは常法で製造することができ、特に限定されないが、例えば、機能成分及び香料以外の原料に水を加えて高温(例えば、140〜200℃)で煮詰めた後、冷却(例えば、70〜130℃まで)し、機能成分及び香料を添加し、更に冷却、成型する方法で製造することができる。機能成分の活性を保持したまま安定に配合するために、機能成分及び香料以外の原料に水を加えて高温(140〜200℃)で煮詰めた後に、冷却(例えば、70℃〜100℃まで)し、機能成分及び香料を添加し、更に冷却、成型する方法で製造することがより好ましい。
【0217】
チューインガムとは、ガムベースと糖質を主原料とする咀嚼弾性のある食品であり、糖衣を有していてもよい。チューインガムは常法で製造することができ、特に限定されない。例えば、板状チューインガムの場合は、(A)成分などの本発明における有効成分を含む各成分を混合し、成型することにより製造することができる。糖衣チューインガムの場合は、(A)成分などの本発明における有効成分は、糖衣及びガムベースのうちのいずれか、或いは両方に含まれていればよいが、糖衣に含まれていることが好ましい。これにより、糖衣チューインガムの保存安定性を向上させることができる。このような糖衣チューインガムの製造は、例えば、チューインガム主体の各原料を混合し成型した後に、(A)成分などの本発明における有効成分を含有する糖衣によりコーティングすることにより製造することができる。糖衣チューインガムの場合の糖衣層中の(A)成分などの本発明における有効成分の含有量は、糖衣の総量に対する上述の各成分の質量%であることが好ましい。
【0218】
チューインガム主体に配合されるガムベースとしては、チューインガムに通常用いられるものを使用できる。ガムベースは、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂(平均重合度が約100〜約1000)、天然樹脂類(チクル、ジェルトン、ソルバなど)、ポリイソブチレン、ポリブ
テン、エステルガム等のガムベース用樹脂(基礎剤)、乳化剤、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、充填剤(タルクなど)、ラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、グリセリルトリアセテート、グリセリンなどの可塑剤又は軟化剤、天然ワックス、石油ワックス、パラフィンなどから選ばれる成分を配合したものが挙げられる。ガムベースは市販品を使用でき、具体的には、ナチュラルベース株式会社製のガムベース、ユース株式会社製のガムベースが好適である。なお、上記ガムベースは、クチナシ、ベニバナ、ベニコウジ等の天然色素や二酸化チタン等の着色剤を含有していてもよい。
【0219】
ガムベースの含有量は、組成物の全量に対し10〜50%、特に15〜30%であることが好ましい。
【0220】
錠菓とは、糖質を主原料とし、打錠機などの機器で圧縮成型したものであり、糖衣を有していてもよい。錠菓は常法で製造することができ、特に限定されないが、例えば、各成分を混合し、打錠機などの機器で圧縮(例えば、5〜20kNの圧力条件で)することにより製造することができる。
【0221】
本発明の口腔用組成物のヒトへの適用量の例を挙げると、1日あたり3回適用する場合に、1回の使用量を0.5〜2g、好ましくは約0.5〜1gの量で適宜調整することができる。
【0222】
本発明の組成物の用途は特に限定されないが、適用部位の観点からは例えば、口腔用組成物(飲食品組成物も含む)が挙げられる。口腔用組成物としては例えば、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、粉歯磨などの歯磨剤組成物、洗口剤組成物、口中清涼剤組成物、飲食品組成物が挙げられる。
【0223】
本発明の組成物の別の例としては、コラーゲン着色抑制組成物、コラーゲン分解抑制組成物、象牙質う蝕抑制組成物、象牙細管封鎖組成物、知覚過敏による痛みの軽減組成物、ステイン形成抑制又はステイン除去組成物、歯面光沢付与組成物などが挙げられる。
【0224】
本発明の組成物の適用対象は特に限定されない。例えば、象牙質知覚過敏者、象牙質う蝕患者、象牙質知覚過敏及び象牙質う蝕には罹患していない、或いは罹患しているか否か確認していないが、象牙質知覚過敏及び象牙質う蝕を予防したいと考えている者などが挙げられる。
【0225】
本発明の組成物は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び飲食品のいずれであってもよい。
【0226】
[コラーゲン着色抑制剤]
(A)成分であるラクタム化合物又はその塩はコラーゲンへの着色を抑制する効果を有するので、コラーゲン着色抑制剤の有効成分として有用である。
【0227】
コラーゲンは動物の組織に存在する。ヒトのコラーゲンは数十種類に分類され、主なコラーゲンはI型である。本発明のコラーゲン着色抑制剤が対象とするコラーゲンは特に限定されないが、I型コラーゲンを含むコラーゲンであることが好ましい。
【0228】
コラーゲン着色とは、コラーゲンの本来の色から他の色への変化を意味する。コラーゲン着色抑制剤が対象とするコラーゲン着色は、生体において生じるコラーゲン着色が好ましく、象牙質コラーゲン層の着色であることがより好ましい。コラーゲン着色の例としては、薬剤、飲食物、口腔細菌による象牙質コラーゲン層の着色が挙げられる。象牙質う蝕に罹患した際、口腔細菌により象牙質が着色したり、象牙質う蝕の治療において、薬剤を適用することにより、象牙質コラーゲン層に着色が生じる場合がある。また、飲食物の摂取によっても同様の着色が生じる場合がある。本発明のコラーゲン分解抑制剤を適用することにより、上記着色を抑制することができる。コラーゲン着色の原因となる薬剤の主な例はポリフェノールである。ポリフェノールとしては、フラボノイド、フェニルカルボン酸、クロロゲン酸、リグナン、クルクミン、及び上記(2−B)成分の各例が挙げられる。また、上記ポリフェノールを多く含有する飲食物(例えば、カテキンを含む紅茶や緑茶、クロロゲン酸を含むコーヒー等)も着色の原因となりうる。
【0229】
本発明のコラーゲン着色抑制剤の投与形態は特に限定されない。例えば、経口投与(例えば、口腔内投与、舌下投与など)、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与など)などが挙げられる。これらの中でも侵襲性の少ない投与形態が好ましく、経口投与又は経皮投与であることがより好ましい。
【0230】
本発明のコラーゲン着色抑制剤の摂取対象者は、コラーゲン着色が既に発症しており改善したいと考えている対象者、コラーゲン着色は発症していないが予防したいと考えている対象者などが挙げられる。本発明の剤の投与時期は特に限定されない。
【0231】
[コラーゲン分解抑制剤]
(A)成分であるラクタム化合物又はその塩はコラーゲン分解抑制効果を有するので、コラーゲン分解抑制剤の有効成分として有用である。
【0232】
本発明のコラーゲン分解抑制剤が対象とするコラーゲンは特に限定されないが、I型コラーゲンを含むコラーゲンであることが好ましい。
【0233】
象牙質う蝕において象牙質のコラーゲン層が露出してコラゲナーゼにより破壊されると、歯の根本が実質的に欠損する。本発明のコラーゲン分解抑制剤を歯に適用することにより、コラーゲン分解を抑制又は改善することができるので、象牙質う蝕を予防することができる。
【0234】
歯周組織のコラーゲン分解は、歯肉退縮、歯槽骨吸収等の歯周組織のトラブルの原因となる。本発明のコラーゲン分解抑制剤によりコラーゲン分解を抑制することができるので、歯周組織のトラブルを防止することができる。
【0235】
本発明のコラーゲン分解抑制剤の投与形態は特に限定されない。投与形態の例及び好ましい例はコラーゲン着色抑制剤の説明中で挙げた例及び好ましい例と同様である。
【0236】
本発明のコラーゲン分解抑制又は改善剤の摂取対象者は、コラーゲンの分解に起因する症状(例えば、象牙質う蝕の進行、歯周組織のトラブル(歯肉退縮、歯槽骨吸収等))が既に発症しており改善したいと考えている対象者、これらの症状は発症していないが予防したいと考えている対象者などが挙げられる。本発明の剤の投与時期は特に限定されない。
【0237】
[象牙細管封鎖剤]
(A)成分であるラクタム化合物及び/又はその塩は、象牙細管早期封鎖効果を有するので、象牙細管封鎖剤として有用である。
【0238】
本発明の象牙細管封鎖剤の投与形態は特に限定されない。投与形態の例及び好ましい例はコラーゲン分解抑制剤の説明中で挙げた例及び好ましい例と同様である。
【0239】
本発明の象牙細管封鎖剤の摂取対象者は、象牙質知覚過敏症が既に発症しており、象牙細管を封鎖したいと考えている対象者、症状は発症していない或いは発症しているかどうか確認していないが、予防しておきたいと考えている対象者などが挙げられる。本発明の剤の投与時期は特に限定されない。
【0240】
[象牙質知覚過敏症の抑制又は改善剤]
(A)成分であるラクタム化合物及び/又はその塩は、象牙細管早期封鎖効果及び痛み軽減効果を有するので、象牙質知覚過敏症の抑制又は改善剤として有用である。
【0241】
本発明の象牙質知覚過敏症の抑制又は改善剤の投与形態は特に限定されない。投与形態の例及び好ましい例はコラーゲン分解抑制剤の説明中で挙げた例及び好ましい例と同様である。
【0242】
本発明の象牙質知覚過敏症抑制又は改善剤の摂取対象者は、象牙質知覚過敏症が既に発症しており症状を改善したいと考えている対象者、症状は発症していないが予防したいと考えている対象者などが挙げられる。本発明の剤の投与時期は特に限定されない。
【0243】
[ステイン除去剤]
(A)成分であるラクタム化合物又はその塩は歯の汚れであるステインを除去する効果を有するのでステイン除去剤の有効成分として有用である。
【0244】
本発明のステイン除去剤の摂取対象者は、歯の汚れであるステインが付着して汚れを除去したいと考えている対象者が挙げられる。本発明の剤の投与時期及び投与形態は特に限定されないが、上述の組成物の投与形態と同様としても良い。
【実施例】
【0245】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の各実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。下記例中の%はいずれも質量百分率を示す。
【0246】
実施例1−1〜1−30及び比較例1−1〜1−4
[使用した主な原料]
[(A)成分]
(1)ピロリドンカルボン酸(γ−ラクタム化合物):
味の素株式会社製、商品名「AJIDEW A−100(登録商標)」
(2)6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸(δ−ラクタム化合物):
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「(S)−6−Oxo−2−piperidine carboxylic acid」
(3)3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸(ε−ラクタム化合物):
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「3−(2−Oxoazepan−1−yl)propanoic acid」
[(A)成分の比較品]
(4)ポリビニルピロリドン(酸性基のないラクタム化合物):
和光純薬工業株式会社製、商品名「ポリビニルピロリドンK25」
(5)プロリン(環状アミノ酸):
和光純薬工業株式会社製、商品名「DL−プロリン」
[(1−B)成分]
(6)フッ化ナトリウム:
ステラケミファ社製、商品名「フッ化ナトリウム」
(7)モノフルオロリン酸ナトリウム:
ローディア日華社製、商品名「モノフルオロリン酸ナトリウム」
[(1−C)成分]
(8)カゼイン:
和光純薬工業株式会社製、商品名「カゼイン(乳由来)」
含硫アミノ酸含有率(%):3.0
平均分子量:88000
リン酸基:有
(9)ラクトフェリン:
和光純薬工業株式会社製、商品名「ラクトフェリン(牛乳由来)」
含硫アミノ酸含有率(%):5.4
平均分子量:86000
リン酸基:無
(10)加水分解コラーゲン:
ゼライス社製、商品名「HACP−U2」
含硫アミノ酸含有率(%):1.5
平均分子量:1500
リン酸基:無
(11)上記有効成分以外のその他の添加成分:
水酸化ナトリウム(pH調整剤)、クエン酸(pH調整剤)、ソルビット液(粘稠剤)、サッカリンナトリウム(甘味剤)、プロピレングリコール(粘稠剤)、ポリアクリル酸ナトリウム(粘結剤)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(粘結剤)、無水ケイ酸(研磨剤)、ラウリル硫酸ナトリウム(アニオン界面活性剤)、香料
【0247】
[歯磨剤の調製]
上述の有効成分を用いて、後出の表1〜9に示した質量比(質量部)に従って、下記慣用の歯磨剤の調製方法により、歯磨剤1.0kg(100質量部)を調製した。
【0248】
(歯磨剤の調製方法)
精製水中に下記「(i)A相用の有効成分」と「(ii)A相用の添加成分」を常温で混合溶解させ、A相を調製した。一方、プロピレングリコール中に、下記「(iii)B相用の添加成分」を常温で溶解又は分散させ、B相を調製した。次に、撹拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製した。最後に、C相中に、下記「(iv)C相用の添加成分」を、1.5Lニーダー(石山工作所製)を用い常温で混合し、4kPaまで減圧し脱泡を行い、歯磨剤1.0kg(100質量部)を得た。各成分の含有量は、表1〜9に示す通りとした。
【0249】
(A相、B相、C相に配合した有効成分及び添加成分)
(i)A相用の有効成分:ピロリドンカルボン酸、6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸、3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、カゼイン、ラクトフェリン、加水分解コラーゲン
(ii)A相用の添加成分:ソルビット液、サッカリンナトリウム、クエン酸、水酸化ナトリウム
(iii)B相用の添加成分:プロピレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム
(iv)C相用の添加成分:無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウム、香料
【0250】
上述のようにして得られた各歯磨剤を用いて、象牙質う蝕抑制効果及び製剤安定性を、以下のようにして評価した。
【0251】
(象牙質う蝕抑制効果の評価)
(1)牛歯根から表面にウィンドウを施した象牙質ブロックを作製し、酢酸100mmol/L、pH4.8の脱灰液に37℃、6時間浸漬し、う蝕歯サンプルを得た。
【0252】
(2)使用時に歯磨剤が唾液で希釈されることを想定して、各歯磨剤をそれぞれ蒸留水で3倍に希釈し、それぞれの歯磨剤処理液を得た。う蝕歯サンプルを、各歯磨剤処理液に3分間、室温で浸漬させ、その後軽く歯磨剤処理液を除いた。
【0253】
(3)CaCl
2:1.5mmol/L、KH
2PO
4:5.0mmol/L、酢酸:100mmol/L、NaCl:100mmol/L、1.0単位/mLのClostridium histolyticum由来のコラゲナーゼ(Type 1A,Sigma製)を含むpH6.5の再石灰化液を調製した。上記(2)の処理後の各う蝕歯サンプルを再石灰化液に、37℃、18時間の条件で浸漬した。
【0254】
(4)上記(3)の処理後の各う蝕歯サンプルを、再び各歯磨剤処理液に3分間、室温で浸漬させ、軽く歯磨剤処理液を除いた。酢酸100mmol/L、pH4.8の脱灰液に37℃、6時間浸漬し、軽く脱灰液を除いた。
【0255】
(5)上記(2)〜(4)の処理を1日各1回、合計3日間繰り返した。
【0256】
(6)上記3日間の処理後、各う蝕歯サンプルを蒸留水でよく濯ぎ、マイクロカッター(マルトー(株)製、「MC−201(商品名)」)にてサンプルのウィンドウに対して垂直方向に厚さ約200μmの切片を流水下で注意深く切り出した。
【0257】
(7)ウェット状態で切り出したサンプル薄片を軟X線用フィルム(コダック社製、「SO−343(商品名)」)の上に置き、その上から、軟X線発生装置(ソフテックス(株)製、「CMRII(商品名)」)により、軟X線(2.8mA、18kVp)を60分照射し、各薄片サンプルのTMR(Transverse Micro Radiography)像を取得した。
【0258】
(8)最後に、各薄片サンプルの脱灰程度を以下のようにして確認した。薄片サンプルとともに撮影した15枚のアルミニウムステップウェッジのTMR像から、画像解析装置(ピアス(株)製、「PIAS−V(商品名)」)を用いて、各薄片サンプルのTMR像のミネラルプロファイルを作成した。得られた各ミネラルプロファイルから、ミネラル損失量ΔZ(脱灰量)を算出した。
歯磨剤処理液による処理を行っていないサンプル(無処理群)の脱灰量についても同様に算出した。
【0259】
(9)上記一連の実験操作は、各群(実施例、比較例及び無処理群)につき、それぞれN=3で行なった。各群について、群を構成する各個体の平均値(平均ΔZ)を求め、「無処理群の平均ΔZ」、「実施例の平均ΔZ」及び「比較例の平均ΔZ」とした。「無処理群の平均ΔZ」を基準脱灰量とし、「実施例の平均ΔZ」又は「比較例の平均ΔZ」から下記式(1−2)により象牙質う蝕抑制率を求めた。
【0260】
【数2】
【0261】
各実施例及び比較例の象牙質う蝕予防効果は、以下5段階の基準に基づいて、評価した。下記評価点が3以上であれば、良好な象牙質う蝕予防効果があると考えてよい。
【0262】
〔評価基準〕
5点:象牙質う蝕抑制率が70%以上
4点:象牙質う蝕抑制率が50%以上70%未満
3点:象牙質う蝕抑制率が30%以上50%未満
2点:象牙質う蝕抑制率が10%以上30%未満
1点:象牙質う蝕抑制率が10%未満
【0263】
(製剤の安定性評価)
各実施例及び比較例の歯磨剤の製造直後の外観を目視で評価した。各実施例及び比較例の歯磨剤の製造直後の香味を官能評価した。その後、50℃環境下に1ヶ月間保管したサンプルを同様に評価した。
【0264】
評価は、下記基準により行った。
【0265】
〔評価基準〕
A:析出・沈殿がなく、変色せず、液分離・層分離がない。香味の劣化もない。
B:析出・沈殿、変色、液分離、香味の劣化のいずれか又は全てがわずかに見られるが、問題ないレベルである。
C:製造直後は問題ないが、50℃環境下に1ヶ月保管後、析出・沈殿、変色、液分離、香味の少なくとも一つが著しく悪化し問題がある。
D:析出・沈殿、変色、液分離、香味の少なくとも一つが製造直後から著しく悪く問題がある。
【0266】
上記評価方法及び評価基準に従って評価した各実施例及び比較例の象牙質う蝕抑制効果及び製剤安定性を、下記表1〜9に併記した。
【0267】
【表1】
【0268】
上記表1に示した実施例1−1〜1−5では、任意の有効成分である(1−C)成分を添加せず、(A)成分としてピロリドンカルボン酸を用い、(1−B)成分としてフッ化ナトリウムを用いている。
【0269】
実施例1−1〜1−5の象牙質う蝕抑制効果の評価は3以上であり、良好である。
【0270】
フッ素化合物がう蝕の抑制に効果があることは、周知である。しかし、後述の比較例1−1に示すように、フッ素化合物単独による象牙質う蝕抑制効果の評価は2であり、実用上は不十分である。
【0271】
これに対して、(A)成分と(1−B)成分とを同時に有効成分として用いている実施例の口腔用組成物の象牙質う蝕抑制効果の評価は3以上であり、中でも実施例1−1〜1−3は評価が4である。したがって、(A)成分と(1−B)成分とを同時に有効成分として用いることにより、(A)成分と(1−B)成分の相加的以上の効果、すなわち相乗的な効果が得られていることが分かる。
【0272】
【表2】
【0273】
上記表2に示した実施例1−6及び1−7では、(1−C)成分を添加せず、(1−B)成分としてフッ化ナトリウムを用いている。実施例1−6では(A)成分として6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸を用い、実施例1−7では(A)成分として3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸を用いている。
【0274】
実施例1−6及び1−7の象牙質う蝕抑制効果の評価は3であり、良好である。
【0275】
【表3】
【0276】
上記表3に示した実施例1−8〜1−11では、表1の実施例1−1〜1−5と同様に、(1−C)成分を添加せず、(A)成分としてピロリドンカルボン酸を用い、(1−B)成分としてフッ化ナトリウムを用いている。
【0277】
実施例1−8〜1−11の象牙質う蝕抑制効果の評価は3以上であり、良好である。中でも実施例1−8及び1−9の評価が4である。このことから、(A)成分と(1−B)成分の相乗的な効果が得られていることが分かる。
【0278】
【表4】
【0279】
表4に示した実施例1−12〜1−15では、(1−C)成分を添加せず、(A)成分としてピロリドンカルボン酸を用いている。実施例1−12及び1−13では(1−B)成分としてモノフルオロリン酸ナトリウムを用い、実施例1−14及び1−15ではフッ化ナトリウムを用いている。
【0280】
実施例1−12〜1−15の象牙質う蝕抑制効果の評価は3以上であり、良好である。中でも実施例1−12及び1−13は評価が4である。このことから(A)成分と(1−B)成分の相乗的な効果が得られていることが分かる。
【0281】
【表5】
【0282】
表5に示した実施例1−16〜1−19は、(1−C)成分としてカゼインを用い、(A)成分としてピロリドンカルボン酸を用い、(1−B)成分としてフッ化ナトリウムを用いている。
【0283】
実施例1−16〜1−19の象牙質う蝕抑制効果の評価は5である。このことから、(A)成分と(1−B)成分に(1−C)成分を添加することにより、高い象牙質う蝕抑制効果が得られることが分かる。
【0284】
【表6】
【0285】
表6に示した実施例1−20及び1−21は、(1−C)成分を添加している。実施例1−20では(1−C)成分としてラクトフェリンを用い、実施例1−21では(1−C)成分として加水分解コラーゲンを用いている。各実施例とも(A)成分としてピロリドンカルボン酸を用い、(1−B)成分についてはフッ化ナトリウムを用いている。
【0286】
実施例1−20及び1−21の象牙質う蝕抑制効果の評価は5であり、(A)成分と(1−B)成分に(1−C)成分を添加することにより、高い象牙質う蝕抑制効果が得られることが分かる。
【0287】
【表7】
【0288】
表7に示した実施例1−22〜1−26では、有効成分として複数種の化合物を併用している。
【0289】
実施例1−22では、(A)成分として、ピロリドンカルボン酸(γ−ラクタム化合物)と6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸(δ−ラクタム化合物)とを併用している。
【0290】
実施例1−23では、(A)成分として、ピロリドンカルボン酸(γ−ラクタム化合物)と3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸(ε−ラクタム化合物)とを併用している。
【0291】
実施例1−24では、(A)成分として、6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸(δ−ラクタム化合物)と3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸(ε−ラクタム化合物)とを併用している。
【0292】
実施例1−25では、(A)成分として、ピロリドンカルボン酸(γ−ラクタム化合物)と、6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸(δ−ラクタム化合物)と、3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸(ε−ラクタム化合物)とを併用している。
【0293】
実施例1−26では、(A)成分として、ピロリドンカルボン酸(γ−ラクタム化合物)を用い、(1−B)成分として、フッ化ナトリウムとモノフルオロリン酸ナトリウムとを併用している。
【0294】
【表8】
【0295】
表8に示した実施例1−27〜1−30では、有効成分として複数種の化合物を併用している。
【0296】
実施例1−27では、(1−C)成分として、カゼインと、ラクトフェリンとを併用している。
【0297】
実施例1−28では、(1−C)成分として、カゼインと、加水分解コラーゲンとを併用している。
【0298】
実施例1−29では、(1−C)成分として、ラクトフェリンと加水分解コラーゲンとを併用している。
【0299】
実施例1−30では、(1−C)成分として、カゼインと、ラクトフェリンと、加水分解コラーゲンとを併用している。
【0300】
【表9】
【0301】
比較例1−1は、(A)成分を用いずに、(1−B)成分としてフッ化ナトリウムを用いている。
【0302】
比較例1−2及び1−3は、(A)成分の比較品としてラクタム化合物及びラクタム化合物の類似物を用いている。比較例1−2では(A)成分の比較品としてポリビニルピロリドンを用いている。ポリビニルピロリドンは、酸性基を有しないラクタム化合物である。比較例1−3では(A)成分の比較品として代わりにプロリンを用いている。プロリンは環状アミノ酸である。
【0303】
比較例1−4は、(1−B)成分を用いずに、(A)成分としてピロリドンカルボン酸を用いている。
【0304】
比較例1−1は、(A)成分を用いずに、(1−B)成分としてフッ化ナトリウムを用いている。フッ素化合物がう蝕の抑制に効果があることは、周知である。しかし、このフッ素化合物単独による象牙質う蝕抑制効果の評価は2であり、実用上は不十分である。
【0305】
また、比較例1−4では、製剤安定性の評価は○であったが象牙質う蝕抑制効果の評価は1であった。
【0306】
上記比較例1−1及び1−4の評価結果と前述の実施例の評価結果から明らかなように、(A)成分と(1−B)成分とを同時に有効成分として用いることによって、各成分の相加的効果以上の効果を得ることができる。
【0307】
以下に、本発明に係る口腔用組成物の2種類の処方例を示す。かかる処方例においても、上述の実施例の口腔用組成物と同様な象牙質う蝕予防効果を得ることができる。
【0308】
【表10】
【0309】
【表11】
【0310】
実施例2−1〜2−36及び比較例2−1〜2−6
[使用した主な原料]
[(A)成分]
(1)ピロリドンカルボン酸(γ−ラクタム化合物):
味の素株式会社製、商品名「AJIDEW A−100(登録商標)」
(2)6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸(δ−ラクタム化合物):
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「(S)−6−Oxo−2−piperidine carboxylic acid」
(3)3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸(ε−ラクタム化合物):
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「3−(2−Oxoazepan−1−yl)propanoic acid」
【0311】
[(A)成分の比較品]
(4)ポリビニルピロリドン:
和光純薬工業株式会社製、商品名「ポリビニルピロリドンK25」
[(2−B)成分]
(5)リュウガン種子エキス(実施例2−12と2−13以外の実施例及び比較例で使用):
片倉チッカリン株式会社製、商品名「エイジテクト」
リュウガン種子エキス含有量:1%;
(6)リュウガン種子エキス(実施例12と13にて使用):
片倉チッカリン株式会社製、商品名「ロンガン種子エキスパウダーSD」
リュウガン種子エキス含有量:83%;
(7)プロアントシアニジン:
キッコーマン株式会社製、商品名「グラヴィノール−SL」
プロアントシアニジン含有量:82%
(8)カテキン:
太陽化学株式会社製、商品名「サンフェノンEGCg」
カテキン含有量:95%
(9)ヘスペリジン:
東京化成工業株式会社製、商品名「メチルヘスペリジン」
ヘスペリジン含有量:90%
【0312】
[(2−B)成分の比較品]
(10)ローズマリー抽出液:
丸善製薬株式会社製、商品名「RKC−87」
ローズマリー抽出液含有量:1.5%
【0313】
表12〜16に示す各ポリフェノール化合物の配合率は、各市販品に含まれるポリフェノールの、各組成物の原料中に占める配合率である。
【0314】
実験例2−1 象牙質コラーゲン分解抑制効果の評価
[歯磨剤の調製]
表12〜16に示す組成の各口腔用組成物を調製した。調製方法は、以下の通りである。70%ソルビットを含む精製水中に水溶性原料(ラクタム化合物、ポリフェノール化合物、リン酸水素二ナトリウム、サッカリンナトリウム)を混合したA相と、プロピレングリコールにアルギン酸ナトリウム、カラギーナン、メチルパラベンを加えたB相を混合した。得られる混合物に、1.5Lニーダー(石山工作所製)内で、無水ケイ酸、香料、ラウリル硫酸ナトリウムを常温で混合した。その後、4kPaまで減圧して脱泡を行い、更に混合を続けて組成物を得た。得られた組成物を室温保存1週間以内に使用して下記の評価を行った。
【0315】
[コラーゲン分解抑制評価]
牛歯根の表面を脱灰ウィンドウ用に約2mmの幅で研磨してセメント質を除去した後、マイクロカッターにより厚さ250μmの切片を切り出した。セメント質を除去した部分の内、約1.5mm×250μmを脱灰ウィンドウ用とし、それ以外の部分をマニキュア被覆した。マニキュアを室温で乾燥後、0.1mol/Lの酢酸水溶液(pH4.5)中に50時間浸漬してウィンドウ部にコラーゲンを露出させた根面う蝕サンプルを調製した。このサンプルを各実施例及び比較例の組成物の3倍水希釈液に5分間、室温で浸漬し、蒸留水で洗浄後、37℃の人工唾液(CaCl
2:2.2mmol/L、KH
2PO
4:2.2mmol/L、酢酸:0.1mol/L、Clostridium histolyticum由来のコラゲナーゼ(Type 1A,Sigma社製):1.0単位/mL、pH6.5)に浸漬した。組成物処置を朝、昼、夜と3回/日実施し、それ以外の時間はコラゲナーゼを含有する人工唾液に浸漬し、合計4日間繰り返した。実験終了後、根面う蝕サンプルを顕微鏡観察し、露出コラーゲンの深さを1サンプル当たり3箇所測定し平均化した。測定はn=3で実施し、平均値を算出した。下記の式によりコラーゲン分解抑制率を算出し、以下に示す基準で評価した。なお、下記の式中、実施例又は比較例群とは実施例又は比較例に示す組成物で処置をした群を示し、コントロール群とは実施例及び比較例に示す組成物で処置をしない群を示す。各実施例及び比較例において同様にn=3で評価した。これらの結果を表12〜16に示す。
【0316】
【数3】
【0317】
[象牙質コラーゲン分解抑制効果の評価基準]
A:象牙質コラーゲン分解抑制率が70%以上90%未満
B:象牙質コラーゲン分解抑制率が50%以上70%未満
C:象牙質コラーゲン分解抑制率が20%以上50%未満
D:象牙質コラーゲン分解抑制率が0%以上20%未満
【0318】
実験例2−2 保存後の象牙質コラーゲン分解抑制効果の評価(50℃1ヶ月保存後)
[組成物の調製]
実験例2−1と同様の表12〜16に示す組成の口腔用組成物を調製し、50℃の高温槽で1ヶ月保存して使用した。
【0319】
[保存後の象牙質コラーゲン分解抑制効果の評価]
保存品の組成物を使用し、保存後の象牙質コラーゲン分解抑制評価を実施した。評価方法、象牙質コラーゲン分解抑制率の算出法、評価基準は、全て実験例2−1と同様とした。
【0320】
実験例2−3 保存後の象牙質コラーゲン着色抑制効果の評価(50℃1ヶ月保存後)
[歯磨剤の調製]
実験例2−1と同様の表12〜16に示す組成の口腔用組成物を調製し、50℃の高温槽で1ヶ月保存して使用した。
【0321】
[保存後の象牙質コラーゲン着色抑制評価]
牛歯根をブロック上に切断し、表面研磨によりセメント質を除去した。セメント質を除去した部分の内、約3.5mm×3.5mmを脱灰ウィンドウ用とし、それ以外の部分をマニキュア被覆した。マニキュアを室温で乾燥後、0.1mol/Lの酢酸水溶液(pH4.5)中に72時間浸漬してウィンドウ部にコラーゲンを露出させた根面う蝕サンプルを調製した。最初に初期値として、色差(L
*0、a
*0、b
*0)を測定した。次に、このサンプルを各実施例及び比較例の組成物の3倍水希釈液に5分間、室温で浸漬し、蒸留水で洗浄後、37℃の人工唾液(CaCl
2:2.2mmol/L、KH
2PO
4:2.2mmol/L、酢酸:0.1mol/L、Clostridium histolyticum由来のコラゲナーゼ(Type 1A,Sigma社製):0.1単位/mL、pH6.5)に浸漬した。組成物処置を朝、昼、夜と3回/日実施し、それ以外の時間はコラゲナーゼを含有する人工唾液に浸漬し、合計4日間繰り返した。実験終了後、色差(L
*1、a
*1、b
*1)測定をn=3で実施し、平均値を算出した。色差は分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM−2022)を用いて測定し、着色抑制効果は、下記式(2−2)より算出した△E値から、下記評価基準に基づき評価した。これらの結果を表12〜16に示す。
△E値=((L
*1−L
*0)
2+(a
*1−a
*0)
2+(b
*1−b
*0)
2)
1/2【0322】
[評価基準]
A:0≦△E<2.0
B:2.0≦△E<4.0
C:4.0≦△E<6.0
D:6.0≦△E<8.0
【0323】
実験例2−4 製剤安定性の評価(50℃1ヶ月保存後)
実験例2−1と同様に、表12〜16に示す組成の歯磨剤を調製し、50℃の高温槽で1ヶ月保存した。保存後の外観を目視にて確認し、下記評価基準に基づき製剤安定性(変色及び保型性)の評価を行った。
【0324】
[評価基準]
A:チューブから抽出した組成物の変色が認められず、保型性に問題が無い
B:チューブから抽出した組成物の変色、及び保型性にほとんど問題が無い
C:チューブから抽出した組成物の変色、及び/又は保型性にやや問題がある
D:チューブから抽出した組成物に変色、及び/又は保型性にかなり問題がある。
【0325】
各実施例及び比較例の口腔用組成物についての実験例2−1〜2−4の結果を、表12〜16に示した。
【0326】
【表12】
【0327】
【表13】
【0328】
【表14】
【0329】
【表15】
【0330】
【表16】
【0331】
表12〜16から下記のことが分かる。(A)成分を使用した口腔用組成物(実施例2−34〜2−36)の製剤は、50℃で1時間保存後も、保存前と同等の優れた象牙質コラーゲン分解抑制効果を持続していた。また、口腔用組成物(実施例2−34〜2−36)の製剤の象牙質コラーゲン分解抑制効果は、ポリビニルピロリドンを使用した口腔用組成物(比較例2−5)よりも優れていた。(A)成分及び(2−B)成分を配合した口腔用組成物(実施例)は、成分(A)成分及び(2−B)成分をそれぞれ単独使用した、又は(A)成分及び(2−B)成分のそれぞれの比較品を使用した口腔用組成物(比較例)に比べて、顕著に高い象牙質コラーゲン分解抑制率を示し、製剤を50℃で1ヶ月保存した後も高い象牙質コラーゲン分解抑制効果を持続することが確認された。また、(A)成分を配合した、又は、(A)成分及び(2−B)成分を配合した口腔用組成物(実施例)は、ポリフェノール成分による象牙質コラーゲンへの着色が顕著に抑制されると共に、製剤保存後の変色も顕著に抑制されていた。これらの結果は、本発明の口腔用組成物が、象牙質コラーゲン分解抑制効果、保存後の象牙質コラーゲン分解抑制効果、保存後の象牙質コラーゲン着色抑制効果、及び製剤安定性をバランスよく、十分に発揮することを示している。これらの結果は、口腔用組成物(2)が、象牙質コラーゲン分解抑制効果、保存後の象牙質コラーゲン分解抑制効果、保存後の象牙質コラーゲン着色抑制効果、及び製剤安定性のいずれにも顕著に優れていることも示している。
【0332】
下記に更なる処方例を示す。かかる処方例においても、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0333】
【表17】
【0334】
【表18】
【0335】
【表19】
【0336】
【表20】
【0337】
【表21】
【0338】
【表22】
【0339】
【表23】
【0340】
【表24】
【0341】
実施例3−1〜3−26及び比較例3−1〜3−3
[使用した主な原料]
[(A)成分]
(1)ピロリドンカルボン酸(γ−ラクタム化合物):
味の素株式会社製、商品名「AJIDEW A−100(登録商標)」
(2)6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸(δ−ラクタム化合物):
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「(S)−6−Oxo−2−piperidine carboxylic acid」
(3)3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸(ε−ラクタム化合物):
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「3−(2−Oxoazepan−1−yl)propanoic acid」
【0342】
[(A)成分の比較品]
(4)ポリビニルピロリドン:
和光純薬工業株式会社製、商品名「ポリビニルピロリドンK25」、和光純薬工業(株)製
(5)プロリン:
和光純薬工業株式会社製、商品名「DL−プロリン」
【0343】
[(3−B)成分]
(6)乳酸アルミニウム:
和光純薬工業株式会社製、商品名「乳酸アルミニウム」
【0344】
[(3−C)成分]
(7)モノフルオロリン酸ナトリウム:
ローディア日華社より購入、商品名「モノフルオロリン酸ナトリウム」
【0345】
[(3−D)成分]
(8)硝酸カリウム:
和光純薬工業株式会社製、商品名「硝酸カリウム」
【0346】
精製水中に下記「(i)A相用の有効成分」と「(ii)A相用の添加成分」を常温で混合溶解させ、A相を調製した。一方、プロピレングリコール中に、下記「(iii)B相用の添加成分」を常温で溶解又は分散させ、B相を調製した。次に、撹拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製した。最後に、C相中に、下記「(iv)C相用の添加成分」を、1.5Lニーダー(石山工作所製)を用い常温で混合し、4kPaまで減圧し脱泡を行い、歯磨剤1.0kg(100質量部)を得た。各成分の配合量は、表25〜29に示す通りとした。
【0347】
(A相、B相、C相に配合した有効成分及びその他の添加成分)
(i)A相用の有効成分:ピロリドンカルボン酸、6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸、3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸、乳酸アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、硝酸カリウム
(ii)A相用の添加成分:70質量%ソルビトール、サッカリンナトリウム、水酸化ナトリウム
(iii)B相用の添加成分:プロピレングリコール、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルパラベン
(iv)C相用の添加成分:無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウム、香料
【0348】
上述のようにして得られた各歯磨剤の、象牙細管早期封鎖効果、痛み軽減効果及び使用感(味)の評価を、以下の実験例3−1〜3−3に従って行った。
【0349】
(実験例3−1) 象牙細管早期封鎖効果の評価
上記のごとく調製した歯磨剤を用いて、Pashleyらの方法(J.Dent.Res.57,187−193,1978)の変法により象牙細管の液の通過性を計測し、各歯磨剤の象牙細管早期封鎖効果を評価した。
【0350】
ヒト大臼歯の歯冠部より厚み3mmの象牙質ディスクを切り出し、耐水研磨紙#2000で研磨を行ない、更に37%リン酸水溶液でエッチングし、象牙細管を開口させたものをサンプルとした。各歯磨剤10gと1.5mM相当のCaCl
2、2.5mM相当のKH
2PO
4、0.1M相当のNaCl、0.1M相当の酢酸及び1.0単位/mLの酸性フォスファターゼを含むpH7.0の人工唾液20gとを混合し3倍希釈液とし、これを処置液とした。なお、3倍希釈とした理由は、歯磨時に歯磨剤が唾液によって3倍に希釈されることを想定したためである。この処置液にサンプルを3分間浸漬し、蒸留水で軽くすすいで余分な処置液を除去し上記人工唾液中に37℃で15時間浸漬した。サンプルを蒸留水でよく濯ぎ、水分を切った後装置に固定し一定圧下で5分間蒸留水を流し、サンプルを通過する単位時間(5分間)当たりの蒸留水の量を測定して、処置前の通過量に対する、各実施例及び比較例の通過性抑制率を算出した(式(3−1))。各実施例及び比較例とも、評価はN=5で行ない、各実施例を構成するサンプルの通過性抑制率の平均値を算出した、平均値が60%以上の場合、その実施例又は比較例は象牙細管早期封鎖効果があると評価した。
【0351】
【数4】
【0352】
式(3−1)中の脚注(*)
通過量とは、5分間に通過する蒸留水量(μL)を意味する。
【0353】
(実験例3−2) 痛み軽減効果の評価
歯磨後の水すすぎ時に一過性の痛みを感じる歯を有する知覚過敏症の有症者3名を被験者とした。実験例3−1と同様に調製した歯磨剤を用いて被験者は1日2回歯磨きを行った。2日後の歯磨き直後の水すすぎ時の痛みの程度を下記評点基準(1〜5点)に基づき点数をつけ、3名の点数の平均値から痛み軽減効果を評価した。なお、試験開始前の痛みの程度は、全被験者とも下記評点基準の1点であった。
【0354】
〔痛み程度の評点基準〕
5点:痛みを感じない
4点:ほとんど痛みを感じない
3点:わずかに痛みを感じるが問題ない
2点:やや痛みを感じる
1点:かなり痛みを感じる
【0355】
〔痛み軽減効果の評価基準〕
A:平均値5点
B:平均値4点以上5点未満
C:平均値3点以上4点未満
D:平均値2点以上3点未満
E:平均値2点未満
【0356】
(実験例3−3) 使用感(味)の評価
実験例3−2における3名の被験者に対し、痛み軽減効果の評価を行った際に、各歯磨剤のえぐみ、金属味、異味等を総合した使用感(味)についてアンケートを依頼した。アンケートでは、下記評点基準(1〜4点)に基づき点数をつけてもらった。被験者3名の点数の平均値から、各歯磨剤の使用感(味)を評価した。
【0357】
〔使用感(味)の評点基準〕
4点:良い
3点:やや良い
2点:やや悪い
1点:悪い
【0358】
〔使用感(味)の評価基準〕
A:平均値3.5点以上
B:平均値3.0点以上3.5点未満
C:平均値2.0点以上3.0点未満
D:平均値2.0点未満
【0359】
【表25】
【0360】
【表26】
【0361】
【表27】
【0362】
【表28】
【0363】
【表29】
【0364】
表25〜29に示した実験例3−1〜3−3の結果から下記のことが分かる。(A)成分を単独使用した歯磨剤(実施例3−26)の象牙細管早期封鎖効果、痛み軽減効果、使用感(味)は、(3−B)成分をそれぞれ単独使用した、又は(A)成分の比較品(ポリビニルピロリドン又はプロリン)を使用した歯磨剤(比較例1〜3)に比べて優れていた。(A)成分及び(3−B)成分を配合した歯磨剤(実施例3−1〜3−25)の象牙細管早期封鎖効果、痛み軽減効果、使用感(味)は、(A)成分及び(3−B)成分をそれぞれ単独使用した、又は(A)成分の比較品(ポリビニルピロリドン又はプロリン)を使用した歯磨剤(実施例3−26、比較例3−1〜3−3)に比べて顕著に優れていた。(A)成分及び(3−B)成分に加え、(3−C)成分を配合した歯磨剤(実施例3−16〜3−19)では象牙細管早期封鎖効果が非常に優れていた。また、(
3−D)成分を配合した歯磨剤(実施例3−24及び3−25)では痛み軽減効果に非常に優れていた。更に、(3−C)成分及び(3−D)成分を配合した歯磨剤(実施例3−20〜3−23)では、象牙細管早期封鎖効果及び痛み軽減効果が非常に優れていた。
【0365】
これらの結果は、本発明の口腔用組成物が、象牙細管早期封鎖効果、痛み軽減効果及び使用感(味)に優れることを示している。これらの結果は、本発明の口腔用組成物(3)が、象牙細管早期封鎖効果、痛み軽減効果及び使用感(味)に顕著に優れることも示している。
【0366】
下記に更なる処方例を示す。かかる処方例においても、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0367】
【表30】
【0368】
【表31】
【0369】
【表32】
【0370】
実施例4−1〜4−22及び比較例4−1
[使用した主な原料]
[(A)成分]
(A−1):ピロリドンカルボン酸
味の素株式会社製、「AJIDEW A−100(登録商標)」
(A−2):6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「(S)−6−Oxo−2−piperidine carboxylic acid」
(A−3):3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「3−(2−Oxoazepan−1−yl)propanoic acid」
【0371】
[(B)成分]
(B−1):硝酸カリウム
和光純薬株式会社製、試薬特級
【0372】
[(C)成分]
(C−1):フッ化ナトリウム
ステラケミファ社製、商品名「フッ化ナトリウム」
(C−2):モノフルオロリン酸ナトリウム
ローディア日華社製、商品名「モノフルオロリン酸ナトリウム」
【0373】
[その他の添加成分]
無水ケイ酸(研磨剤)、ラウリル硫酸ナトリウム(アニオン界面活性剤)、プロピレングリコール(粘稠剤)、70質量%ソルビトール(粘稠剤)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(粘結剤)、水酸化ナトリウム(pH調整剤)、サッカリンナトリウム(甘味剤)、香料、メチルパラベン(防腐剤)、精製水(溶媒)
【0374】
上述の成分を用いて、表33〜35に示す配合比(質量部)に従って、下記慣用の歯磨剤の調製方法により、歯磨剤1.0kg(100質量部)を調製した。
【0375】
(歯磨剤の調製方法)
精製水中に下記「(i)I相用の有効成分」と「(ii)I相用の添加成分」を常温で混合溶解させ、I相を調製した。一方、プロピレングリコール中に、下記「(iii)II相用の添加成分」を常温で溶解又は分散させ、II相を調製した。次に、撹拌中のI相の中にII相を添加混合し、III相を調製した。最後に、III相中に、下記「(iv)III相用の添加成分」を、1.5Lニーダー(石山工作所製)を用い常温で混合し、4kPaまで減圧し脱泡を行い、歯磨剤1.0kg(100質量部)を得た。各成分の配合量は、表33〜35に示す通りとした。
【0376】
(I相、II相、III相に配合した有効成分及びその他の添加成分)
(i)I相用の有効成分:ピロリドンカルボン酸、6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸、3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸、硝酸カリウム、フッ化ナトリウム
(ii)I相用の添加成分:70質量%ソルビトール、サッカリンナトリウム、水酸化ナトリウム
(iii)II相用の添加成分:プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルパラベン
(iv)III相用の添加成分:無水ケイ酸、ラウリル硫酸ナトリウム、香料
【0377】
上述のようにして得られた各歯磨剤について、知覚過敏による痛みに対する軽減効果並びに使用感(味)を以下のようにして評価した。
【0378】
(知覚過敏による痛みに対する軽減効果の評価)
歯磨後の水すすぎ時に一過性の痛みを感じる歯を有する知覚過敏症の有症者3名を1グループとして8グループ計24名を被験者とし、上記のごとく調製した23種の歯磨剤のうち8種(「実施例4−1」〜「実施例4−8」の歯磨剤)を各グループに割り当て、1日2回の歯磨きを3日間行った。4日目以降は、全てのグループについて、上記I相から有効成分を除いて調製したプラセボ歯磨剤を用いて、同様に1日2回の歯磨きを行った。プラセボ歯磨剤に切り替えてから1週間後の歯磨き直後の水すすぎ時の痛みの程度を下記スコア基準に基づきスコア(1〜5点)をつけ、有症者3名のスコアの平均値をグループ毎に算出した。
【0379】
約3週間の間隔をあけた後、上記8グループ計24名の被験者に対し、他の8種の歯磨剤(「実施例4−9」〜「実施例4−16」の歯磨剤)を各グループに割り当て、同様の評価試験を行った。
【0380】
再び3週間の間隔をあけた後、上記被験者のうち7グループ計21名に対し、他の7種の歯磨剤(「実施例4−17」〜「実施例4−22」、「比較例4−1」の歯磨剤)を各グループに割り当て、同様の評価試験を行った。
【0381】
各歯磨剤について算出したスコアの平均値から下記評価基準に基づき知覚過敏による痛みに対する軽減効果を評価した。なお、各評価試験開始前の痛みの程度は、全被験者とも下記スコア基準における1点であった。
【0382】
〔痛みの程度のスコア基準〕
5点:痛みを感じない
4点:ほとんど痛みを感じない
3点:わずかに痛みを感じるが問題ない
2点:やや痛みを感じる
1点:かなり痛みを感じる
【0383】
〔知覚過敏による痛みに対する軽減効果の評価基準〕
A:平均値4.5点以上5.0点以下
B:平均値4.0点以上4.5点未満
C:平均値3点以上4点未満
D:平均値2点以上3点未満
E:平均値2点未満
【0384】
(使用感(味)の評価)
知覚過敏による痛みに対する軽減効果に関する評価試験の際に、各グループの被験者に対し、その歯磨剤のえぐみ、金属味、異味等を総合した使用感(味)についてアンケートを行い、下記スコア基準に基づきスコア(1〜4点)をつけ平均値を算出した。算出したスコアの平均値から下記評価基準に基づき使用感(味)を評価した。
【0385】
〔使用感(味)のスコア基準〕
4点:良い
3点:やや良い
2点:やや悪い
1点:悪い
【0386】
〔使用感(味)の評価基準〕
A:平均値3.5点以上
B:平均値3.0点以上3.5点未満
C:平均値2.0点以上3.0点未満
D:平均値2.0点未満
【0387】
上記評価方法及び評価基準に従って評価した各実施例及び比較例の知覚過敏による痛みに対する軽減効果及び使用感(味)を、表33〜35に併記した。
【0388】
【表33】
【0389】
【表34】
【0390】
【表35】
【0391】
(A)成分を含有せず(4−B)成分を含有する比較例4−1の歯磨剤は、プラセボ歯磨剤に切り替えてから1週間後の歯磨き直後の水すすぎ時において、知覚過敏による痛みに対する軽減効果はほとんど奏さず、使用感(味)は不良であった(表35)。
【0392】
(4−B)成分を含有せず(A)成分を含有する実施例4−22の歯磨剤は、比較例4−1の歯磨き剤と比較して、プラセボ歯磨剤に切り替えてから1週間後の歯磨き直後の水すすぎ時における、知覚過敏による痛みに対する軽減効果及び使用感(味)に優れていた(表35)。
【0393】
一方、(4−B)成分と組み合わせて(A)成分を含有する実施例4−1〜4−21の歯磨剤は、プラセボ歯磨剤に切り替えてから1週間後の歯磨き直後の水すすぎ時においても、知覚過敏による痛みを効果的に減じており、知覚過敏による痛みに対し顕著な軽減効果を奏することが確認された(表33及び34)。実施例4−1〜4−21の歯磨剤は良好な使用感(味)を有することも確認された。
【0394】
(A)成分、(4−B)成分に加えて(4−C)成分を含有する実施例4−16〜4−21の歯磨剤は、プラセボ歯磨剤に切り替えてから1週間後の歯磨き直後の水すすぎ時においても、知覚過敏による痛みをほとんど感じないかあるいは全く感じない程度にまで減じており、(4−C)成分を含有することによって(A)成分の効果がより一層高まり、知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果が更に高まることが確認された(実施例4−11と実施例4−16〜4−19との対比、並びに実施例4−2と実施例4−20、4−21との対比による)。
【0395】
以下に、本発明に係る口腔用組成物の3種類の処方例を示す。斯かる処方例においても、上述の実施例の口腔用組成物と同様な知覚過敏による痛みに対する顕著な軽減効果と良好な使用感(味)が得られる。
【0396】
【表36】
【0397】
【表37】
【0398】
【表38】
【0399】
実施例5−1〜5−14及び比較例5−1〜5−5(歯磨剤)
表39〜41に示す組成の歯磨剤を調製した。すなわち、精製水中に水溶成分(成分(A)、成分(5−B)、フッ化ナトリウム、サッカリンナトリウム、ソルビトール等)を常温で混合溶解させたA相を調製した。一方、プロピレングリコール中に、メチルパラベン等の油溶性成分、粘結剤のポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等を常温で溶解又は分散させたB相を調製した。次に、撹拌中のA相の中にB相を添加混合し、C相を調製した。C相中に、香料、無水ケイ酸、その他の成分(ラウリル硫酸ナトリウム等)を、1.5Lニーダーを用い常温で混合し、4kPaまで減圧し脱泡を行って、各組成物を調製した。なお、表39〜41中の各成分の配合量の単位は、質量%である。
【0400】
[使用した主な原料]
[(A)成分]
(1)ピロリドンカルボン酸:
味の素株式会社製、商品名「AJIDEW A−100(登録商標)」
(2)6−オキソ−2−ピペリジンカルボン酸:
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「(S)−6−Oxo−2−piperidine carboxylic acid」
(3)3−(2−オキソ−1−アゼパニル)プロパン酸(ε−ラクタム化合物):
シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社製、商品名「3−(2−Oxoazepan−1−yl)propanoic acid」
【0401】
[(A)成分の比較品]
(4)ポリビニルピロリドン:
和光純薬工業株式会社製、商品名「ポリビニルピロリドンK25」
(5)プロリン:
和光純薬工業株式会社製、商品名「DL−プロリン」
【0402】
[(5−B)成分]
(6)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド:
日本エヌエスシー株式会社製、商品名「セルコートL−200」
(7)塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース:
ライオン株式会社製、商品名「レオガードGP」(低粘度品)
(8)塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース:
花王ケミカル株式会社製、商品名「ポイズC−150L」(高粘度品)
【0403】
[(5−B)成分の比較品]
(9)カチオン化グアーガム:
ローディア社製、商品名「JAGUAR C−13S」
【0404】
[その他の成分]
(10)フッ化ナトリウム:
ステラケミファ社製、商品名「フッ化ナトリウム」
【0405】
各実施例及び比較例の歯磨剤を、下記の実験例5−1〜5−4に供した。
【0406】
実験例5−1.ステイン形成抑制効果の評価
1.緑茶抽出液の調製
緑茶抽出液は、食品成分分析法に記載された抽出方法にて調製した。すなわち、約90℃の水道水100mLに3gの緑茶葉(農家の自家出し茶980、株式会社伊藤園製)を含むティーパックを加え、2分間抽出した。
【0407】
2.ハイドロキシアパタイト(HA)ディスクを用いたステイン形成抑制効果の評価
被試験面を#1,500のサンドペーパーで研磨したHAディスク(APP−735;ペンタックス株式会社製)の初期のHAの色差を分光測色計(CM2022、コニカミノルタ株式会社製)にて測定した。次に、HAディスク6個をマウスピースに装着し、ボランティア11名の下顎舌側に固定した。固定時間は1時間とし、蒸留水中で撹拌洗浄後、緑茶抽出液に5分間浸漬した。この口腔内固定と緑茶抽出液への浸漬を3回繰り返した後、各実施例の歯磨剤を蒸留水で3倍希釈し、その遠心上清液(室温、20分間、10,000回転)に、これらのHAディスクを5分浸漬した。その後蒸留水で軽くすすぎ、余分な水分をろ紙で吸い取った。なお、3倍希釈液とした理由は、歯磨き時に歯磨剤が唾液によって希釈されることを想定したためである。蒸留水によるすすぎを行った理由は、歯磨剤使用後の洗口を想定したためである。この口腔内固定、緑茶抽出液への浸漬及び処置液への浸漬を1日2回行い、他の時間は生理食塩水に浸漬した。この操作を14日間繰り返し、HAの色差を分光測色計にて測定し、L
*a
*b
*表色系のb
*値にて着色度を評価した。
Δb
*値は下記の式(5−0)により算出した。
【0408】
式(5−0):
(Δb
*値)=14日間処置後b
*値−初期b
*値
【0409】
[ステイン形成抑制効果の評価基準〕
一連の実験操作は各実施例及び比較例につきN=3で行ない、それぞれのΔb
*値の平均値を算出し、下記の評価基準にてステイン形成抑制効果を評価した。
A: Δb
*値が0.5未満
B: Δb
*値が0.5以上3.0未満
C: Δb
*値が3.0以上6.0未満
D: Δb
*値が6.0
以上
【0410】
実験例5−2.ステイン除去効果の評価
1.濃厚紅茶抽出液の調製
沸騰した200mLの蒸留水に、紅茶ティーバック(日東紅茶デイリークラブ、三井農林株式会社製)を3袋投入し、10分間抽出した。その後、抽出液をろ紙(No.5C、アドバンテック東洋株式会社製)にてろ過し、濃厚紅茶抽出液とした。
【0411】
2.モデルステインの作成
HA(ハイドロキシアパタイト)ディスク(APP−735;HOYA株式会社製)の表面をサンドブラストで粗面研磨した後、このHAディスクを0.5質量%アルブミン溶液に20分、上記項目1で調製した濃厚紅茶抽出液に20分、0.3質量%塩化第二鉄溶液に20分順次浸漬することを計20回繰り返し、モデルステインを作成した。
【0412】
3.モデルステイン除去試験
最初に基準値としてモデルステイン形成前のHAディスクの色度を分光測色計(CM2022、コニカミノルタ株式会社製)にて測定し、
実験例5−1と同様にL
*a
*b
*表色系のL
*値を計測し、L
*0とした。次に上記のように作成したモデルステインの色度を清掃前色度(L
*1)として測定した。
【0413】
このモデルステインを形成したHAディスクに対し、各実施例の歯磨剤を蒸留水で3倍希釈した液1mLを歯ブラシ(クリニカハブラシ4列、ライオン株式会社製)のヘッド部にしみこませ、3分間刷掃した。刷掃後HAディスクを蒸留水で軽くすすぎ、余分な水分をろ紙で吸い取った。HAディスクを乾燥させた後、刷掃後色度(L
*2)を測定した。これらの計測値から、ステイン除去率を以下の式(5−1)により求めた。
【0414】
【数5】
【0415】
[ステイン除去効果の評価基準〕
一連の実験操作は各実施例及び比較例につきN=3で行ない、それぞれのステイン除去率の平均値を算出し、下記の評価基準にてステイン除去効果を評価した。
A: ステイン除去率が80%以上
B: ステイン除去率が60%以上80%未満
C: ステイン除去率が30%以上60%未満
D: ステイン除去率が30%未満
【0416】
実験例5−3.光沢効果の評価
被試験面を#3,500のサンドペーパーで研磨したHAディスク(APP−735;ペンタックス株式会社製)に各実施例の歯磨剤を蒸留水で3倍希釈し、その遠心上清液(室温、20分間、10,000回転)に、これらのHAディスクを5分浸漬した。その後蒸留水で軽くすすぎ、余分な水分をろ紙で吸い取った。次に人工唾液(CaCl
2:1.0mmol/L、KH
2PO
4:3.0mmol/L、酢酸:100mmol/L、NaCl:100mmol/L、pH6.5)に37℃で浸漬した。この操作を一日3回、計3日間連続して行った。
【0417】
[光沢効果の評価基準〕
3日後HAディスクを取り出し、蒸留水でよくすすいだ後で自然乾燥し、5名により下記の評価者の評点の基準にて光沢効果の評価を行った。なお、実験は各実施例及び比較例ともにN=3で行った。最終的に評価者の評点の平均値を算出し、光沢効果を下記の平均値の基準にて評価した。
(評価者の評点の基準)
3:全面に光沢がある
2:一部を除き光沢がある
1:一部に光沢がある
0:光沢が無い(変化なし)
【0418】
(評価者の評点の平均値の基準)
A:2.5点以上
B:1.6点以上2.5点未満
C:0.5点以上1.6点未満
D:0.5点未満
【0419】
実験例5−4.製剤使用感の評価
各歯磨剤を、蒸留水で3倍希釈した処置液を、5名のパネラーに30秒間口に含んでもらった。
【0420】
〔製剤使用感の評価基準〕
下記の評点の基準にて、処置液使用後の製剤使用感の評価を行った。最終的に5名の平均値を算出し、製剤使用感を下記の平均値の基準にて評価した。
【0421】
(評価者の評点の基準)
3:良好な使用感である
2:やや苦味・いや味を感じる
1:苦味・いや味が感じられる
0:強い苦み・いや味が感じられる
【0422】
A:2.5点以上
B:1.6点以上2.5点未満
C:0.5点以上1.6点未満
D:0.5点未満
【0423】
【表39】
【0424】
【表40】
【0425】
【表41】
【0426】
(A)成分を含む実施例5−14の組成物は、ステイン除去効果及び製剤使用感に優れていた(表41)。(A)成分及び(5−B)成分を含む実施例5−1〜5−13の組成物は、ステイン形成抑制効果、ステイン除去効果、光沢効果及び製剤使用感にバランスよく優れていた(表39及び40)。これに対し、(
5−B)成分を欠く比較例の組成物の中には、前記4つの効果の全てを満たすものはなかった(表41)。この結果は、本発明の口腔用組成物が、(A)成分と(5−B)成分とを含有することにより、ステイン形成抑制効果、ステイン除去効果、光沢効果及び製剤使用感に優れていることを示している。
【0427】
実施例5−15〜5−17(洗口剤)
以下に洗口剤の実施例を示す。
【0428】
スリーワンモーターと回転羽根を有する撹拌機を装着したステンレス製容器に、規定量の精製水を投入し、各実施例の配合成分のうち(A)成分、(5−B)成分、ソルビトールなどの水溶性成分を撹拌しながら投入、溶解させた。一方、スリーワンモーターと回転羽根を有する撹拌機を装着した別のステンレス製容器に、規定量のエタノール等の有機溶剤を投入し、配合成分のうち香料、メチルパラベン等の油溶性成分を撹拌しながら投入、溶解させた。更に、水溶性成分を溶解させた容器に、油溶性成分を加えて30分撹拌し、均一溶液とし洗口剤を調製した。
【0429】
【表42】
【0430】
【表43】
【0431】
【表44】
【0432】
実施例6−1〜6−14及び比較例6−1〜6−2
実施例5−1において、組成を表45及び46に示す各組成に代えたほかは同様にして、歯磨剤を調製した。各歯磨剤の象牙質コラーゲン着色抑制評価を以下の条件で行った。
【0433】
[象牙質コラーゲン着色抑制評価]
牛歯根をブロック状に切断し、表面研磨によりセメント質を除去した。セメント質を除去した部分の内、約3.5mm×3.5mmを脱灰ウィンドウ用とし、それ以外の部分をマニキュア被覆した。マニキュアを室温で乾燥後、0.1mol/Lの酢酸水溶液(pH4.5)中に72時間浸漬してウィンドウ部にコラーゲンを露出させた根面う蝕サンプルを調製した。最初に初期値として、色差(L
*0、a
*0、b
*0)を測定した。次に、このサンプルを各実施例及び比較例の組成物の3倍水希釈液に3分間、室温で浸漬し、蒸留水で洗浄後、37℃の人工唾液(CaCl
2:2.2mmol/L、KH
2PO
4:2.2mmol/L、酢酸:0.1mol/L、Clostridium histolyticum由来のコラゲナーゼ(Type 1A,Sigma社製):0.2単位/mL、pH6.5)に5時間浸漬した。その後37℃の0.2%牛血清アルブミンへの20分間の浸漬と37℃の着色液(1)又は(2)への20分間の浸漬とを5回繰り返した。実験終了後、色差(L
*1、a
*1、b
*1)測定をn=3で実施し、平均値を算出した。色差は分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM−2022)を用いて測定し、着色抑制効果は、下記式(6−1)より算出した△E値から、下記評価基準に基づき評価した。これらの結果を表45〜46に示す。
【0434】
式(6−1):
△E値=((L
*1−L
*0)
2+(a
*1−a
*0)
2+(b
*1−b
*0)
2)
1/2
【0435】
[着色液]
着色液(1):0.3%インスタント紅茶(Kroger(登録商標) Instant Tea)水溶液
着色液(2):1.5%インスタントコーヒー(NESCAFE Excella:ネスレ日本株式会社)水溶液
【0436】
[評価基準]
A:0≦△E<2.0
B:2.0≦△E<4.0
C:4.0≦△E<6.0
D:6.0≦△E<8.0
【0437】
【表45】
【0438】
【表46】
【0439】
(A)成分を含まない比較例6−1〜6−2の組成物では象牙質コラーゲン着色
抑制効果が見られなかったのに対し、(A)成分を含む実施例6−1〜6−14の組成物は、象牙質コラーゲン着色抑制効果に優れていた。この結果は(A)成分が象牙質コラーゲン着色抑制剤の有効成分として有用であることを示している。また、この結果は、口腔用組成物(6)がコラーゲン着色抑制効果を発揮できることを示唆している。