【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、酢酸ロイプロリドの徐放性移植物としての使用に適した、流動性組成物を提供する。この流動性組成物は、水性媒体または体液中において少なくとも実質的に不溶性である、生分解性熱可塑性ポリエステルを含む。この流動性組成物はまた、生体適合性極性非プロトン溶媒を含む。この生体適合性極性非プロトン溶媒は、アミド、エステル、カルボネート、ケトン、エーテル、またはスルホニルであり得る。この生体適合性極性非プロトン溶媒は、水性媒体または体液中において混和性から分散性までの性質である。この流動性組成物はまた、酢酸ロイプロリドを含む。この酢酸ロイプロリドは、好ましくは、この組成物の約2重量%〜約4重量%、または、この組成物の約4重量%〜約8重量%存在する。好ましくは、この流動性組成物は、注射可能な皮下送達系として処方される。この注射可能な組成物は、好ましくは、約0.20mL〜約0.40mLまたは約0.30mL〜約0.50mLの容量を有する。この注射可能な組成物は、好ましくは、1ヶ月につき約1回の投与、3ヶ月につき約1回の投与、または4ヶ月につき約1回の投与〜6ヶ月につき約1回の投与のために、処方される。好ましくは、この流動性組成物は、患者への注射に適した、液状組成物またはゲル組成物である。
【0008】
好ましくは、この生分解性熱可塑性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、それらのコポリマー、それらのターポリマー、またはそれらの任意の組み合わせである。より好ましくは、この生分解性熱可塑性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコリド、それらのコポリマー、それらのターポリマー、またはそれらの組み合わせである。より好ましくは、適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有する50/50ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)であるか、または、保護されたカルボキシ末端基を有する75/25ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)である。適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、任意の適切な量で存在し得るが、ただし、生分解性熱可塑性ポリエステルは、水性媒体または体液中において少なくとも実質的に不溶性である。適切な生分解性熱可塑性ポリエステルは、好ましくは、この流動性組成物の約30重量%〜約40重量%存在するか、または、この流動性組成物の約40重量%〜約50重量%存在する。好ましくは、この生分解性熱可塑性ポリエステルは、平均分子量約23,000〜約45,000または約15,000〜約24,000を有する。
【0009】
好ましくは、この生体適合性極性非プロトン溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカルボネート、カプロラクタム、トリアセチン、またはそれらの任意の組み合わせである。より好ましくは、この生体適合性極性非プロトン溶媒は、N−メチル−2−ピロリドンである。好ましくは、この極性非プロトン溶媒は、その組成物の約60重量%〜約70重量%存在するか、または、その組成物の約45重量%〜約55重量%存在する。
【0010】
本発明はまた、流動性組成物を形成するための方法を提供する。この流動性組成物は、徐放性移植物として有用である。この方法は、任意の順序で、生分解性熱可塑性ポリエステル、生体適合性極性非プロトン溶媒、および酢酸ロイプロリドを混合する工程を包含する。これらの成分、それらの性質、および好ましい量は、上記に開示されるとおりである。この混合は、徐放性移植物としての使用のための流動性組成物を形成するために有効な、十分な時間、実施される。好ましくは、この生体適合性熱可塑性ポリエステルおよびこの生体適合性極性非プロトン溶媒は、混合物を形成するために一緒に混合され、その後、この混合物は、この流動性組成物を形成するため、酢酸ロイプロリドと混合される。
【0011】
本発明はまた、患者においてインサイチュで形成された生分解性移植物を提供する。この生分解性移植物生成物は、患者の身体内で流動性組成物を注射するプロセスにより調製され、生分解性固体移植物を生成するように、この生体適合性極性非プロトン溶媒が分散することを可能にする。これらの成分、それらの性質、および好ましい量は上記に開示された通りである。好ましくは、この患者はヒトである。この固体移植物は、好ましくは、この固体移植物が患者において生分解する場合に、有効量のロイプロリドを放出する。
【0012】
本発明はまた、生きている患者において、生分解性移植物をインサイチュで形成する方法を提供する。この方法は、患者の身体内に本発明の流動性組成物を注射する工程、および、生分解性固体移植物を生成するように、その生体適合性極性非プロトン溶媒が分散することを可能にする工程を包含する。この流動性組成物は、有効量の生分解性熱可塑性ポリエステル、有効量の生体適合性極性非プロトン溶媒、および有効量の酢酸ロイプロリドを含む。これらの成分、それらの性質、および好ましい量は上記に開示された通りである。好ましくは、その生分解性固体移植物は、拡散、崩壊(erosion)、または、拡散と崩壊(erosion)との組み合わせにより、患者においてその固体移植物が生分解する場合に、有効量の酢酸ロイプロリドを放出する。
【0013】
本発明はまた、患者において、癌を処置するか、または予防する方法を提供する。この方法は、そのような処置または予防を必要とする患者に、有効量の本発明の流動性組成物を投与する工程を包含する。具体的には、この癌は、前立腺癌であり得る。さらに、この患者は、ヒトであり得る。
【0014】
本発明はまた、患者において、LHRHレベルを減少させる方法を提供する。この方法は、そのようなLHRH減少を必要とする患者に、有効量の本発明の流動性組成物を投与する工程を包含する。具体的には、LHRHレベルの減少は、子宮内膜症を処置するために有用であり得る。さらに、この患者は、ヒトであり得る。
【0015】
本発明はまた、キットも提供する。このキットは、第1容器および第2容器を含む。この第1容器は、生分解性熱可塑性ポリエステルおよび生体適合性極性非プロトン溶媒を含む、組成物を含む。この第2容器は、酢酸ロイプロリドを含む。これらの成分、それらの性質、および好ましい量は上記に開示された通りである。好ましくは、この第1容器はシリンジであり、そしてこの第2容器はシリンジである。さらに、その酢酸ロイプロリドは、好ましくは凍結乾燥されている。このキットは、好ましくは、指示書を含み得る。好ましくは、この第1容器はこの第2容器に連結され得る。より好ましくは、この第1容器およびこの第2容器は、互いに直接連結されるように、それぞれ構成されている。
本発明はまた、固体移植物を提供する。この固体移植物は、生体適合性熱可塑性ポリエステルおよび酢酸ロイプロリドを含む。この生体適合性熱可塑性ポリエステルは、水性媒体または体液中において少なくとも実質的に不溶性である。この固体移植物は、固形またはゲル状の細孔性マトリックス(microporous matrix)を有し、ここで、そのマトリックスは被膜(skin)に囲まれたコア(core)である。この固体移植物はさらに、生体適合性の有機溶媒を含み得る。この生体適合性有機溶媒は、好ましくは、水性液または体液中において混和性から分散性までの性質である。さらに、この生体適合性有機溶媒は、好ましくは、その熱可塑性ポリエステルを溶解する。この生体適合性有機溶媒の量は、存在する場合は、好ましくは、その組成物の0重量%〜約20重量%のように少量である。さらに、この生体適合性有機溶媒の量は、好ましくは、経時的に低下する。そのコアは、好ましくは、直径約1〜約1000ミクロンの細孔を含む。その被膜は、好ましくは、このコアの細孔の直径よりも、より小さな直径の細孔を含む。さらに、この被膜細孔は、好ましくは、そのコアと比較して、その被膜が機能上は無孔であるようなサイズである。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 徐放性移植物としての使用に適した流動性組成物であって、該組成物は、以下:
a)水性媒体または体液中において少なくとも実質的に不溶性である、生分解性熱可塑性ポリエステル;
b)アミド、エステル、カルボネート、ケトン、エーテル、およびスルホニルからなる群より選択される生体適合性極性非プロトン溶媒であって、ここで、該生体適合性極性非プロトン溶媒は、水性媒体または体液中において混和性から分散性までの性質である、生体適合性極性非プロトン溶媒;ならびに
c)酢酸ロイプロリド
を含む、組成物。
(項目2) 前記生分解性熱可塑性ポリエステルが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、それらのコポリマー、それらのターポリマー、またはそれらの任意の組み合わせである、項目1に記載の組成物。
(項目3) 前記生分解性熱可塑性ポリエステルが、ポリラクチド、ポリグリコリド、それらのコポリマー、それらのターポリマー、またはそれらの組み合わせである、項目1に記載の組成物。
(項目4) 前記生分解性熱可塑性ポリエステルが、カルボキシ末端基を有する50/50ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)である、項目1に記載の組成物。
(項目5) 前記生分解性熱可塑性ポリエステルが、カルボキシ末端基を有さない75/25ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)である、項目1に記載の組成物。
(項目6) 前記生分解性熱可塑性ポリエステルが、前記組成物の約30重量%〜約40重量%、または約40重量%〜約50重量%存在する、項目1に記載の組成物。
(項目7) 前記生分解性熱可塑性ポリエステルが、平均分子量約23,000〜約45,000または約15,000〜約24,000を有する、項目1に記載の組成物。
(項目8) 前記生体適合性極性非プロトン溶媒が、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカルボネート、カプロラクタム、トリアセチン、またはそれらの任意の組み合わせである、項目1に記載の組成物。
(項目9) 前記生体適合性極性非プロトン溶媒が、N−メチル−2−ピロリドンである、項目1に記載の組成物。
(項目10) 前記生体適合性極性非プロトン溶媒が、前記組成物の約60重量%〜約70重量%存在する、項目1に記載の組成物。
(項目11) 前記生体適合性極性非プロトン溶媒が、前記組成物の約50重量%〜約60重量%存在する、項目1に記載の組成物。
(項目12) 前記酢酸ロイプロリドが、前記組成物の約2重量%〜約4重量%存在する、項目1に記載の組成物。
(項目13) 前記酢酸ロイプロリドが、前記組成物の約4重量%〜約8重量%存在する、項目1に記載の組成物。
(項目14) 注射可能な皮下送達系として処方された、項目1に記載の組成物。
(項目15) 約0.2mL〜約0.4mLの容量を有する、項目14に記載の組成物。
(項目16) 約0.3mL〜約0.5mLの容量を有する、項目14に記載の組成物。
(項目17) 1ヶ月につき約1回の投与のために処方された、項目14に記載の組成物。
(項目18) 3ヶ月につき約1回の投与のために処方された、項目14に記載の組成物。
(項目19) 4ヶ月につき約1回の投与〜6ヶ月につき約1回の投与のために処方された、項目14に記載の組成物。
(項目20) 徐放性移植物としての使用のための流動性組成物を形成するための方法あって、任意の順序で、以下:
a)水性媒体または体液中において少なくとも実質的に不溶性である、生分解性熱可塑性ポリエステル;
b)アミド、エステル、カルボネート、ケトン、エーテル、およびスルホニルからなる群より選択される生体適合性極性非プロトン溶媒であって;ここで、該生体適合性極性非プロトン溶媒は、水性媒体または体液中において混和性から分散性までの性質である、生体適合性極性非プロトン溶媒;ならびに
c)酢酸ロイプロリド
を混合する工程を包含し、ここで、該混合する工程は、徐放性移植物としての使用のための該流動性組成物を形成するために有効な、十分な時間行われる、方法。
(項目21) 前記生体適合性熱可塑性ポリエステルと前記生体適合性極性非プロトン溶媒が一緒に混合されて混合物が形成され、その後、該混合物が、前記酢酸ロイプロリドと混合されて前記流動性組成物が形成される、項目20に記載の方法。
(項目22)
(a)組成物を患者の身体内に注射すること;および
(b)生体適合性極性非プロトン性溶媒を分散させて、生分解性固体移植物を形成すること、
を含む工程により、該患者においてインサイチュで形成された生分解性移植物であって、ここで、該組成物は、有効量の生分解性熱可塑性ポリエステルと;アミド、エステル、カルボネート、ケトン、エーテル、およびスルホニルからなる群より選択される、有効量の生体適合性極性非プロトン溶媒と;有効量の酢酸ロイプロリドとを含み、ここで、該生分解性熱可塑性ポリエステルは水性媒体または体液中において少なくとも実質的に不溶性であり、該生体適合性極性非プロトン溶媒は水性媒体または体液中において混和性から分散性までの性質である、生分解性移植物。
(項目23) 前記患者がヒトである、項目22に記載の生分解性移植物。
(項目24) 前記固体移植物が、前記患者において生分解する場合に、該固体移植物が有効量のロイプロリドを放出する、項目22に記載の生分解性移植物。
(項目25) 前記生分解性固体移植物が、前記患者の身体内の組織に付着する、項目22に記載の生分解性移植物。
(項目26) 生きている患者において生分解性移植物をインサイチュで形成する方法であって、以下:
(a)患者の身体内に流動性組成物を注射する工程;および
(b)生体適合性極性非プロトン溶媒を分散させて、生分解性固体移植物を生成する工程、
を包含し、ここで該流動性組成物は、水性媒体または体液中において少なくとも実質的に不溶性である、有効量の生分解性熱可塑性ポリエステルと;アミド、エステル、カルボネート、ケトン、エーテル、およびスルホニルからなる群より選択される、有効量の生体適合性極性非プロトン溶媒と;有効量の酢酸ロイプロリドとを含み、ここで、該生体適合性極性非プロトン溶媒は、水性媒体または体液中において混和性から分散性までの性質である、方法。
(項目27) 前記生分解性固体移植物が前記患者において生分解する場合に、拡散、崩壊、または、拡散と崩壊との組み合わせにより、該固体移植物が前記有効量の酢酸ロイプロリドを放出する、項目26に記載の方法。
(項目28) 患者の癌を処置する方法であって、そのような処置または予防を必要とする患者に、有効量の、項目1に記載の流動性組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目29) 前記癌が前立腺癌である、項目28に記載の方法。
(項目30) 前記患者がヒトである、項目28に記載の方法。
(項目31) 患者におけるLHRHレベルを減少させる方法であって、そのようなLHRHの減少を必要とする患者に、有効量の、項目1に記載の流動性組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目32) 前記LHRHレベルの減少が、子宮内膜症を処置するために有用である、項目31に記載の方法。
(項目33) キットであって、
(a)水性媒体または体液中において少なくとも実質的に不溶性である生分解性熱可塑性ポリエステルと、アミド、エステル、カルボネート、ケトン、エーテル、およびスルホニルからなる群より選択される生体適合性極性非プロトン溶媒とを含む組成物を含む、第1容器;ならびに
(b)酢酸ロイプロリドを含む、第2容器、
を含み、ここで、該生体適合性極性非プロトン溶媒は、水性媒体または体液中において混和性から分散性までの性質である、キット。
(項目34) 前記第1容器がシリンジである、項目33に記載のキット。
(項目35) 前記第2容器がシリンジである、項目33に記載のキット。
(項目36) 前記酢酸ロイプロリドが凍結乾燥されている、項目33に記載のキット。
(項目37) 指示書をさらに含む、項目33に記載のキット。
(項目38) 前記第1容器が、前記第2容器に連結され得る、項目33に記載のキット。
(項目39) 前記第1容器および前記第2容器が、互いに直接連結されるようにそれぞれ構成されている、項目33に記載のキット。
(項目40) 固体移植物であって、
(a)水性媒体または体液中において少なくとも実質的に不溶性である、生体適合性熱可塑性ポリエステル;および
(b)酢酸ロイプロリド;
を含み、ここで、
該固体移植物は、固体またはゲル状の細孔性マトリックスを有し、該マトリックスは、被膜に囲まれたコアである、固体移植物。
(項目41) 項目40に記載の固体移植物であって、生体適合性有機溶媒をさらに含み、該生体適合性有機溶媒は、水性液または体液において混和性から分散性までの性質であり、そして前記熱可塑性ポリエステルを溶解する、固体移植物。
(項目42) 前記生体適合性有機溶媒の量が最小である、項目41に記載の固体移植物。
(項目43) 前記生体適合性有機溶媒の量が経時的に低下する、項目41に記載の固体移植物。
(項目44) 前記コアが、直径約1〜約1000ミクロンの細孔を含む、項目40に記載の固体移植物。
(項目45) 前記被膜が、前記コアの細孔の直径より小さな直径の細孔を含む、項目40に記載の固体移植物。
(項目46) 前記被膜細孔は、前記コアと比較して前記被膜が機能上は無孔であるようなサイズである、項目40に記載の固体移植物。