特許第6087907号(P6087907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087907
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】エラストマーティータリングヒンジ
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/06 20060101AFI20170220BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20170220BHJP
   F16C 27/02 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   F03D1/06 A
   F16C11/04 R
   F16C27/02 Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-509856(P2014-509856)
(86)(22)【出願日】2012年5月10日
(65)【公表番号】特表2014-519571(P2014-519571A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】IB2012001183
(87)【国際公開番号】WO2012153197
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】61/484,343
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513279504
【氏名又は名称】コンドル ウインド エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カルーソー,シルベストロ
(72)【発明者】
【氏名】ジャクボウスキ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】カイオリ,ルチアーノ
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0194115(US,A1)
【文献】 特表2007−536454(JP,A)
【文献】 米国特許第04565929(US,A)
【文献】 国際公開第2010/128378(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/06
F16C 11/04
F16C 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティータリングヒンジ組立体であって、前記組立体は、
殻体を備えるハブと、
2つの角状部を有するタービンシャフトのT字形状のヘッド部と、
記殻体と前記角状部との間に配置された少なくとも2つの二重エラストマーティータリングベアリングであって、前記二重エラストマーティータリングベアリングのそれぞれは複数の金属−エラストマー要素を備え、前記二重エラストマーティータリングベアリングのそれぞれの複数の金属−エラストマー要素は、前記殻体と前記角状部との間で前記ハブ内に並列して据えられ、前記二重エラストマーティータリングベアリングは、1)1つ以上の金属−エラストマー要素の故障の場合に前記ティータリングヒンジ組立体の安定性を保持するために、および2)異常な外的負荷の場合にその径方向変形を限定することにより前記金属−エラストマー要素を保護するために、前記金属−エラストマー要素の径方向変位を前記殻体と前記角状部との間に限定するよう構成された1つ以上の径方向スライドベアリングをさらに備える、二重エラストマーティータリングベアリングと
を含む、ティータリングヒンジ組立体。
【請求項2】
前記金属−エラストマー要素のそれぞれは予荷重可能である、請求項1に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項3】
前記二重エラストマーティータリングベアリングは自己完結型である、請求項2に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項4】
前記二重エラストマーティータリングベアリングは前記ハブに予荷重を伝達しないよう動作可能に構成され、請求項3に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項5】
前記予荷重は保守作業により変更可能である、請求項2に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項6】
記殻体と前記金属−エラストマー要素との間で、および前記角状部と前記金属−エラストマー要素との間で、前記エラストマー要素を予荷重するために金属ウェッジまたは合成ウェッジをさらに備える、請求項に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項7】
前記ウェッジはネジにより前記殻体および前記角状部に固定され、前記金属−エラストマー要素のそれぞれは前記ネジを操作することにより独立的に予荷重可能である、請求項に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項8】
記金属−エラストマー要素のそれぞれは前記ハブから個別に取外可能であり、前記ティータリングヒンジ組立体の安定性に影響を及ぼすことなく新規の金属−エラストマー要素により置換可能である、請求項に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項9】
径方向予荷重と軸方向予荷重との間の比は期待される外的負荷鑑みて前記ウェッジの角度を設計することにより設定可能である、請求項に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項10】
前記金属−エラストマー要素のそれぞれは、互いから90度だけ異なる2つの対称的な径方向軸(X,Y)を有する、請求項に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項11】
前記金属−エラストマー要素のそれぞれはその長手方向軸に沿って90度だけ回転され、それにより、X軸およびY軸の位置を交換して前記金属−エラストマー要素の設計寿命を延長させる、請求項10に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項12】
前記金属−エラストマー要素の個数および寸法は、より大きい(数メガワット)タービン用のティータリングヒンジの製造が可能となるよう選択される、請求項1に記載のティータリングヒンジ組立体。
【請求項13】
前記金属−エラストマー要素の個数および寸法は、前記組立体の保守および修理が支援されるよう選択される、請求項1に記載のティータリングヒンジ組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年5月10日に出願された、米国仮特許出願第61/484,343号の優先権を主張するものである。なお、同仮特許出願の内容は参照することにより本願に援用される。
【0002】
本発明は全般的に洋上風力タービンおよび関連するティータリングヒンジに関する。
【背景技術】
【0003】
風力発電は風力エネルギーを電気等のより有用な形態のエネルギーエネルギーに変換することを指す。風力エネルギーは、豊富、再生可能であり、広範に分布し、クリーンで、温室効果ガスを放出しないため、化石燃料に対する魅力的な代替物である。風力エネルギーは、現在、全世界の電気使用量の約1.5%を占め、世界で約80の国々が商業ベースで風力発電を使用する(World Wind Energy Report 2008: Report, World Wind Energy Association, February 2009; and Worldwatch Institute: Wind Power Increase in 2008 Exceeds 10−year Average Growth Rate, May 2009)。さらに、世界の風力発電能力は2000年から2006年の間で4倍以上となり、約3年毎に倍増される。
【0004】
洋上風力タービンは深い海水に固有である強力な風力のエネルギーを利用して電力を提供する。エネルギー生産に必要とされるものであるが、これらの同じ強力な風が、タービンのロータブレードに作用する非対称的な負荷(曲げモーメントとして知られる)を生じさせてしまう。これらの高い負荷は引き続きタービンシャフトに、最終的にタービンのギヤボックスに伝達され、その結果、ギヤボックスが破損しタービンが利用不能となってしまう。曲げモーメントに関連する高い構造的負荷を緩和するための試みは、ロータブレードを、ティータリングヒンジとして知られる制限された枢動能力を有する可撓性構造物に取り付けることを含む。
【0005】
従来のティータリングヒンジはブッシングまたはボールベアリングを使用する機械的装置に基づくものである。これらの装置は剛性であるため、従来のティータリングヒンジは急激な動的負荷を吸収する実質的な能力に欠ける。さらに、高い負荷が継続的に加えられることと、ヒンジの屈曲能力が制限されていることと、が組み合わされると、陥凹(pitting)により金属ベアリングに劣化が生じてしまうこととなる。また、ロータブレード軸をシャフト軸に対して垂直な点に戻す必要性は、ベアリング自体の外側に位置する金属バネまたはエラストマーバネに基づく複雑な復心装置を必要とする。
【0006】
他のティータリングヒンジは単一の金属−エラストマーベアリングに基づくものである。これらの装置においては、予荷重は制御または調節が不可能である。むしろ、予荷重はハブおよびシャフトに永久的に負荷を伝達することにより得られる。これにより、不必要であり潜在的に危険な応力がシステムの寿命にわたって生じることとなる。機械的装置に基づく従来のティータヒンジのように、これらのヒンジもまた、その信頼性が最適化されているとは言いがたいものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、改善された信頼性、より良い耐久性、および高い構造的負荷の対処能力を有する、2ブレード風力タービンに対して好適なティータリングヒンジが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、全般には、2つの二重エラストマーティータリングベアリングを備えるティータリングヒンジ組立体に関する。2つの二重エラストマーティータリングベアリングを備えるティータリングヒンジ組立体は、ブッシングまたはボールベアリングに基づく既存のティータリングヒンジと比較して、改善された信頼性および負荷ピークに対処するための増強された能力を有することが知られている。金属ベアリングに基づく既存のティータリングヒンジとは異なり、本明細書に含まれるティータリングヒンジにおけるエラストマー要素の使用は、強力な風により生成される急激な動的負荷を吸収する能力と、通常のヒンジ組立体に劣化をもたらし得る小さいティータリング角度に対処する能力と、を与える。
【0009】
本発明においては金属シムにより離間される予荷重可能なエラストマー要素を含む二重エラストマーティータリングベアリングが採用され、それにより、従来型の組立体と比較して、特定の利点が提供される。エラストマー層は従来の機械的ヒンジに関する同一種類の摩耗および剪断を受けることがなく、さらに負荷ピークの減衰を向上させる。その結果、ロータおよびシャフトに印加される応力が低下することとなる。本発明の特定の態様において、径方向スライドベアリング等の安全性要素を備えることは、エラストマー層に伝達される応力を制限し、エラストマー層が破損した場合における代替手段として機能する。
【0010】
本発明に含まれる二重ティータリングベアリングは、ハブに組み込まれる前に予荷重により予め応力が印加されるよう設計され、さらに、予荷重が組立体の寿命期間にわたり調節可能であるよう設計される。加えて、考察されるティータリングベアリングは、複数の金属−エラストマー要素から構成される。各金属−エラストマー要素は、個別に予荷重可能であり、さらに、他の金属−エラストマー要素に影響を及ぼすことなくベアリングから個別に取外可能である。エラストマー要素に加えて、考察される組立体の他の多数の構成要素も、他の構成要素に影響を及ぼすことなく取外可能である。本発明に含まれるこれら構成要素が個別に取外可能であるため、ティータリングベアリングの保守作業および修理が容易となる。本発明は、タービンハブに組み込まれた場合でさえも、自己完結型ユニットであるティータリングベアリングも含む。本発明に含まれるティータリングベアリングが自己完結型ユニットとして機能し得るため、エラストマー要素の予荷重はティータリングシステムに限定されて、関連するハブには伝達されない。
【0011】
本発明の特定の実施形態において、組立体が提供される。この組立体は、ハブと、ハブの開口部に配置された少なくとも2つの二重エラストマーティータリングベアリングと、を備える。特定の態様において、ティータリングベアリングは予荷重可能なティータリングベアリングである。予荷重可能なティータリングベアリングは、ハブに組み込まれる前に予荷重可能である。ティータリングベアリングは、ハブからは分離した自己完結型ユニットも含み得る。本発明の他の実施形態において、自己完結型ティータリングベアリングは予荷重をハブに伝達しないよう動作可能に構成される。ティータリングベアリングは、いくつかの実施形態において、ハブの内側に配置されたT字形状のタービンシャフトヘッド部の対向端部に取り付けられる。特定の実施形態において、ティータリングベアリングは、その構成要素の中に複数の金属−エラストマー要素を有する。各金属−エラストマー要素は個別に予荷重可能であり、さらに、各金属−エラストマー要素は個別にティータリングベアリングから取外可能である。本発明の他の態様は、ティータリングベアリングによる担持が可能な定格力を超過する力を受容するよう、またはエラストマー要素の破損の際にロータハブの変位を限定するよう、動作可能に構成された、エラストマーティータリングベアリングに連結されたスライドベアリングを含む。これらの実施形態に加えて、本発明の追加的な態様は、本開示を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】異なる観点から見た本発明の1つの実施形態を示す図である。
図1B】異なる観点から見た本発明の1つの実施形態を示す図である。
図1C】異なる観点から見た本発明の1つの実施形態を示す図である。
図1D】異なる観点から見た本発明の1つの実施形態を示す図である。
図1E】異なる観点から見た本発明の1つの実施形態を示す図である。
図2A】異なる観点から見た本発明の他の実施形態を示す図である。
図2B】異なる観点から見た本発明の他の実施形態を示す図である。
図2C】異なる観点から見た本発明の他の実施形態を示す図である。
図2D】異なる観点から見た本発明の他の実施形態を示す図である。
図2E】異なる観点から見た本発明の他の実施形態を示す図である。
図3A】異なる観点から見た本発明のさらに他の実施形態を示す図である。
図3B】異なる観点から見た本発明のさらに他の実施形態を示す図である。
図3C】異なる観点から見た本発明のさらに他の実施形態を示す図である。
図3D】異なる観点から見た本発明のさらに他の実施形態を示す図である。
図3E】異なる観点から見た本発明のさらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ハブと2つの二重エラストマーティータリングベアリングとを備えるヒンジ組立体を提供する。金属ベアリングまたはブッシングを内蔵する従来の組立体とは対比的に、エラストマー要素を使用すると、組立体において、劣化に対する耐性が改善され、負荷ピークを減衰させる能力が向上し、タービンロータおよびシャフトに印加される応力が低減されることとなる。
【0014】
本発明の特定の実施形態において、ティータリングベアリングはハブの開口部に配置される。ティータリングベアリングのための開口部はハブ内の任意の場所でよい。しかしいくつかの実施形態においては、ベアリングのために2つの開口部が存在し、各開口部はハブ上で互いに対して直接的に対向して配置される。特定の実施形態において、ティータリングベアリングは、T字形状のタービンシャフトヘッド部すなわちシャフトヘッド部の角状部の対向端部に取り付けられるよう動作可能に構成される。シャフトヘッド部の角状部は、取り付けられたティータリングベアリングが開口部に配置されるよう、ハブ上の開口部に対応するであろう。
【0015】
各二重エラストマーティータリングベアリングは、2つのエラストマー層を、したがって1つの二重エラストマーティータリングベアリングを、備える。エラストマー層自体は複数のエラストマー要素からなる。したがって、これらの層を含む各エラストマーティータは複数のエラストマー要素を含む。エラストマー要素のために、本発明に含まれるティータリングベアリングは予荷重可能であり、特定量の圧縮がエラストマー要素に導入され得る。本発明により考察されるエラストマー要素は予荷重の制御を可能にする。以下の実施形態に詳細に説明されるように、各エラストマー要素の予荷重は互いに対して独立的に調節可能である。さらに、以下で詳細に説明されるように、ティータリングベアリング内の各エラストマー要素は、他のエラストマー要素から独立的に取外可能である。加えて、ティータ組立体の他の構成要素も、組立体内の他の構成要素に対して独立的に取外可能である。例えば、各エラストマー要素は、エラストマー要素の一方端上で、ベアリングの分化された内側部分と、エラストマー要素の他方端上で、分化された外側部分と、に連結され得る。各分化された区域(内側部分、外側部分、およびその間のエラストマー要素)は個別のウェッジと連合される。なお、この個別のウェッジは、締結装置(例えばネジ)との組み合わせにより、個別に予荷重を調節することを可能にする。弾力部分の予応力は、弾力部分とティータリングベアリングの外部殻体との間に配置されたウェッジのシステムを用いて一般に径方向(一般に外部負荷の方向)に弾力部分を圧縮することにより達成され得る。構成要素が独立していることは、ベアリングからの取り外しおよびベアリングへの設置も支援する。したがって、本発明の特定の実施形態に含まれる構成要素は、ヒンジ組立体の保守および修理のためのアクセスがより容易である。
【0016】
いくつかの実施形態において、ティータリングベアリングは、エラストマー要素から力を受け取るよう動作可能に構成されたスライドベアリングをさらに備える。スライドベアリングはエラストマーティータに連結され、過度の応力からエラストマー部分を保護し得る。その結果、ティータリングベアリングの全体的な信頼性が向上することとなる。以下の実施形態でさらに説明されるように、ティータリングベアリングは、エラストマー要素に生じ得る摩耗を早期検出することを可能にする監視センサの他にも、エラストマー部分の境界を視覚的に調査することを可能にする光学センサも、備え得る。さらに、ティータリングベアリングは、振動サイクルを経験する間に動作中のヒンジにおけるエラストマー要素の挙動を監視する能力を有するセンサを備え得る。他の実施形態において、ティータリングベアリングは、ベアリング内の構成要素を潜在的に腐食させる得る太陽および塩分を含む空気の効果からベアリングを保護するカバーを備え得る。
【0017】
本発明に係る組立体が図1A、1B、1C、1D、および1Eに表される。 図1Aは2ブレードロータおよび関連するハブの構成を示す。ハブ101は、実質的に、2本のブレード(図示せず)が取付ポイント102において取り付けられた殻体である。ハブ101は、シャフトヘッド部103のための開口部と、カバー105の下方に取り付けられたティータリングベアリング104(図1Aには図示せず)のための対向側面上に配置された2つの開口部と、を備える。図1Bはハブ組立体の断面図であり、シャフトヘッド部103およびシャフトヘッド部103の対向する角状部上に配置された2つのティータリングベアリング104とともに、ハブ101の内側を示す。
【0018】
図1Cはティータリングベアリング104の拡大図を表す。ティータリングベアリング104は外側殻体107と、内側殻体108と、中央スリーブ109と、互いに対して積み重ねられた2対の金属−エラストマー要素110および111と、からなる。なお、各金属−エラストマー要素は、交替する金属シム112およびエラストマー層113を含む。キー114がこれらの部品の相互回転を防ぐために設置されているが、他の回転防止装置も本発明において用いられ得る。ティータリングベアリング104はネジ115によりハブ101に固定される。なお、他の締結装置も用いられ得る。スライドベアリング116は、ティータリングベアリングを過度の応力から保護し、エラストマー層の破損の場合に支援するものであって、保持要素117によりシャフトヘッド部103の角状部の端部に固定される。特定の実施形態においては、複数のスライドベアリングが所望により取り付けられ得る。リング118は、径方向の間隙を制限し軸方向における自由な移動をスライドベアリングに与えるものであって、図示する差動変圧器119等の位置センサまたは環状センサを受容するために設置され得る。センサの個数および位置は所望により調節可能である。カバー105は洋上環境では一般的である太陽および塩分を含む空気の悪影響からティータリングベアリング104を保護する。
【0019】
図1Dは、ハブ101から取り外されてカバー105がない状態にあるティータリングベアリング104を示す。図示のように、ティータリングベアリング104は外側殻体107と、内側殻体108と、中央スリーブ109と、互いに対して積み重ねられた2対の金属−エラストマー要素110および111と、からなる。金属−エラストマー要素110および111のテーパ形状は中央スリーブ109、外側殻体107、および内側殻体108のテーパ形状と合致する。したがって、ティータリングベアリング104の予荷重は、関連する固定用ネジ115を締めることにより内側殻体108を外側殻体107に対して軸方向に付勢することにより得られる。本発明に含まれる構成要素の構成は、初期予荷重が製造業者において調整された状態で、ハブ101に設置される前に、ティータリングベアリング104を予め組み立てることを可能にする。
【0020】
図1Eは金属−エラストマー要素110および111を詳細に示す。図示のように、金属−エラストマー要素110および111の両方はテーパ形状である。係る金属−エラストマー要素の個数は必要に応じて変化され得る。さらに、金属−エラストマー要素は、1つの環状要素から構成されてもよく、または所望によりより多くの領域から構成されてもよい。キー114がこれらの部品の相互回転を防ぐために設置されているが、他の回転防止装置も用いられ得る。金属−エラストマー要素110および111のそれぞれは、交替する金属シム112とエラストマー結合層113とからなる。シム112およびエラストマー層113の個数および厚さは所望により調節可能である。
【0021】
本発明の他の態様が図2A、2B、2C、2D、および2Eに示される。図2Aは2ブレードロータおよび関連するハブの構成を示す。ハブ201は、実質的に、2本のブレード(図示せず)が取付ポイント202において取り付けられた殻体である。ハブ201は、シャフトヘッド部203のための開口部と、カバー205の下方に取り付けられたティータリングベアリング204(図1Aには図示せず)のための対向側面上に配置された2つの開口部と、を備える。
【0022】
図2Bはハブ組立体の断面図であり、シャフトヘッド部203およびシャフトヘッド部203の対向する角状部上に配置された2つのティータリングベアリング204とともに、ハブ201の内側を示す。図2Bは、ティータリングベアリング204、およびシャフトヘッド部203の角状部とハブ201との間にある構成要素の構成も示す。さらに、外側殻体211と、分化された内側殻体206と、分化された中央スリーブ207と、互いに対して積み重ねられた2対の金属−エラストマー要素208の詳細な図とともに、ティータリングベアリング204の断面も図示される。これらのパーツの相互回転を避けるために、金属−エラストマー要素208は、隣接部分に機械加工された対応する凹陥部に嵌合する正方形または準正方形の端部を有する。望ましくない相互回転は、キー、ピン、および同様の機能を有する他の装置を用いて防ぐことが可能である。ティータリングベアリング204はネジ209によりハブ201およびシャフトヘッド部203に固定される。なお、他の締結装置も用いられ得る。スライドベアリング210は、ティータリングベアリングを応力ピークから保護し、エラストマー層の破損の場合に支援するものであって、外側殻体211の内側端部に設置および固定される。スライドベアリング210の形状および位置は必要に応じて変更され得る。加えて、本発明は複数のスライドベアリングを含み、係るスライドベアリングは、必要に応じて、金属−エラストマー要素208の内部に、または金属−エラストマー要素208に平行に取り付けられうる。特定の実施形態において、位置センサは、作動中のティータリングベアリング204の変位を監視するために設置され得る。カバー205は洋上環境における太陽および塩分を含む空気の悪影響からティータリングベアリング204を保護する。
【0023】
図2Cはティータリングベアリング204の拡大図を表す。ティータリングベアリング204は外側殻体211と、分化された外側スリーブ206と、分化された中央スリーブ207と、互いに対して積み重ねられた2つの円形アレイに配列された2つの分化された金属−エラストマー要素208と、を備える。特定の実施形態において、外側スリーブ206、中央スリーブ207、および金属−エラストマー要素208の部分は、シャフトヘッド部203の角状部の軸に沿って径方向平面によりヒンジを切断することにより得られる。様々なスリーブにおける部分の個数は必要に応じて変更可能である。特定の実施形態において、スリーブは分化されない。中央スリーブ207の各要素は二重ウェッジ形状であり得、ネジ209によりシャフトヘッド部203の角状部に接合される。外側スリーブ206の各構成要素は簡単なウェッジ形状であり得、ネジ209により外側殻体211に接合される。さらに、金属−エラストマー要素208の各二重要素は、外側殻体211、中央スリーブ207の構成要素、および外側スリーブ206の構成要素の間の空間内に制約される。
【0024】
図2Dに示すように、金属−エラストマー要素208のそれぞれは、エラストマー結合層213により割り込まれる金属シム212から構成される。これらの層の個数および厚さは所望により調節可能である。各金属−エラストマー要素208の端部における金属シム212は、隣接部分に機械加工された対応する凹陥部に嵌合し、図2Eに示すように、正方形または準正方形の形状を有し得る。正方形の端部を凹陥部分に嵌合することは、金属−エラストマー要素208の望ましくない回転を防止することを支援する。キーまたはピンを含むがこれらに限定されない回転防止のための他の手段も用いられ得る。端部シム212の幾何学的形状は、図2Eに示すように、x軸がシャフトヘッド部203の角状部の軸に平行な状態またはY軸がシャフトヘッド部203の角状部の軸に平行な状態という2つの可能な姿勢で金属−エラストマー要素208を取り付けることを可能にする。金属−エラストマー要素208のテーパ形状は中央スリーブ207、外側殻体211、および外側スリーブ206のテーパ形状と合致する。したがって、ティータリングベアリングの各金属−エラストマー要素208は、金属−エラストマー要素208の内側アレイに対してはそのネジ209を締めることにより中央スリーブ要素207を付勢することにより、および金属−エラストマー要素208の外側アレイに対してはそのネジ209を締めることにより外側スリーブ要素206を外側殻体211に付勢することにより、個別に予荷重可能である。結果として生じる予荷重は、軸方向成分および径方向成分を有するであろう。特定の用途に応じて、金属エラストマー要素208のテーパ形状は、これら2つの成分の要求される比を満足するよう、設計され得る。図2Eは金属−エラストマー要素208のテーパ形状を示す。なお、金属−エラストマー要素208は、いくつかの実施形態において、剪断応力の最適な分布のために、より大きい直径が中央スリーブ207に対向する状態で取り付けられる。
【0025】
本発明の他の態様が図3A、3B、3C、3D、および3Eに示される。図3Aは2ブレードロータおよび関連するハブの構成を示す。ハブ301は、実質的に、2本のブレード(図示せず)が取付ポイント302において取り付けられた殻体である。ハブ301は、シャフトヘッド部303のための開口部と、カバー305の下方に取り付けられたティータリングベアリング304(この図面には図示せず)のための対向側面上に配置された2つの開口部と、を備える。
【0026】
図3Bはハブ組立体の断面図であり、シャフトヘッド部303およびシャフトヘッド部303の対向する角状部上に配置された2つのティータリングベアリング304とともに、ハブ301の内側を示す。図3Bは、ティータリングベアリング304、およびシャフトヘッド部303の角状部とハブ301との間にある構成要素の構成も示す。図3Bに示すように、ティータリングベアリング304は外側殻体306と、金属−エラストマー要素307の二重冠部と、金属−エラストマー要素307と外側殻体306との間のウェッジ308および309の冠部と、を備える。ハブ301にシャフトヘッド部303を配置し、外側殻体306を設置した後、金属−エラストマー要素307の内側冠部はシャフトヘッド部303の角状部と外側殻体306との間に設置され、ウェッジ309を挿入することにより、最終的な位置に固定される。金属−エラストマー要素307の外側冠部はシャフトヘッド部303の角状部とウェッジ309の上方端部との間に設置され、ウェッジ308の挿入により固定される。金属−エラストマー要素307の両方の冠部は、シャフトヘッド部303の角状部に沿って固定ピース311により軸方向に制限される。金属−エラストマー要素307のテーパ形状のために、予荷重は、ウェッジ固定用バネ310を締めることにより、内側の冠部に対しては金属−エラストマー要素307と外側殻体306との間のウェッジを付勢することにより、および外側冠部に対しては金属−エラストマー要素307とウェッジ309の上方部分との間のウェッジ308を付勢することにより、達成されることが可能である。ウェッジ固定用リップ部とその上部表面との間の間隙は、好適なシムにより充填されるよう、残しておくとよい。これにより、エラストマー化合物の弛緩を補償するために、後に予荷重の調節が可能となる。
【0027】
図3Bにさらに示されるように、ティータリングベアリング304の外側殻体306は、ネジ318の冠部によりハブ301において接合される。いくつかの実施形態において、シムは、誤差の連鎖に関連して外側殻体306のフランジの下方で用いられ得る。2つのスライドベアリング316および317がシャフトヘッド部303の各角状部上に存在する。スライドベアリング316および317は応力ピークからティータリングベアリング304を保護し、エラストマー層の破損の場合に支援する。スライドベアリング316および317は、シャフトヘッド部303の角状部と外側殻体306との間の自由な軸方向変位も可能にする。スライドベアリング316は固定ピース311上に設置され、保持要素318により固定される。スライドベアリング317は外側殻体306に螺入された領域からなる。これらのスライドベアリングの形状、個数、および位置は必要に応じて変動可能である。また、複数のスライドベアリングが、必要に応じて、内部に、または各金属シム上に、取り付けられ得る。さらに、特定の実施形態において、トランスデューサが径方向変位および角度変を監視するために設置され得る。加えて、キー319等の回転防止装置が、これらの部品の相互回転を防ぐために用いられ得る。同じ理由のために、金属−エラストマー要素307は、ウェッジ308および309と外側殻体306とにより、横方向に案内される。カバー305は洋上環境における太陽および塩分を含む空気の悪影響からティータリングベアリング304を保護する。
【0028】
図3Cは、ハブ301から取り外されてカバー305がない状態にあるティータリングベアリング304の拡大図を示す。図3Dは金属−エラストマー要素307をより詳細に示す。金属−エラストマー要素307は、テーパ形状を有し、シャフトヘッド部303の角状部に嵌合するウェッジ形状の金属ピース312と、ウェッジ308および309の凹陥部の内部に嵌合する外側プレート313と、エラストマー結合層315により割り込まれる金属シム314と、からなる。これらの層の個数および厚さは必要に応じて調節可能である。本発明のいくつかの実施形態において、金属−エラストマー要素307は両方の冠部に対して同一であり、一方、他の実施形態においては、金属−エラストマー要素307は異なる。さらに、金属−エラストマー要素の個数および形状は必要に応じて変更可能である。図3Eは、図3Dに示す金属−エラストマー要素307の上面図を提供する。
【0029】
上述の実施形態はヒンジ組立体を説明する。なお、このヒンジ組立体において、2ブレードタービンロータのハブとシャフトヘッド部との間のリンクは、ヨーイングおよび横方向運動を生じさせることなしにフラップ方向(flap−wise)のブレード回転を可能にするティータリングヒンジにより達成される。ヒンジ組立体は2つの予荷重された二重ティータリングベアリングを備える。各二重ティータリングベアリングは、外側金属部分とT字形状のシャフトヘッド部の正反対に対向する端部すなわち角状部との間に制約された金属−エラストマー要素の2つの冠部からなる。この組立体のねじり剛性は、平行して作動し径方向および軸方向の実質的な剛性を確保するティータにより提供される。金属−エラストマー層の個数は、ティータリングサイクルにより生じる剪断歪みが制限されるよう、および十分な圧縮弾性率が達成されるよう、変更されることが可能である。本発明に含まれる径方向スライドベアリングは、径方向変位と、その結果として生じ得るエラストマー要素の破損と、を制限する。スライドベアリングは、エラストマー要素が破損した場合に、径方向負荷に対処するよう機能する。上述の実施形態に示されるように、本発明に含まれる組立体は、洋上環境に一般的である太陽および塩分を含む空気の悪影響から下方にある組立体を保護するために、エラストマー部品およびティータカバーの径方向歪み、軸方向歪み、およびねじり歪みを検出する能力を有するセンサも備え得る。
【0030】
ヒンジ組立体において2つの二重エラストマーベアリングを用いることは、最終的にはギヤボックスの破損の原因となり得るドライブトレインの曲げモーメントを顕著に低減することが可能である。様々な実施形態で説明される他の要素は、考察されるヒンジ組立体の信頼性および耐久性の他にも、高いピーク負荷を勝利するヒンジ組立体の能力を、さらに向上させる。
【0031】
参照による援用
特許、特許出願、特許公報、刊行物、書籍、新聞、ウェブコンテンツ等の他の文献に対する参照および引用が、本開示を通じて行われている。係る全部の文献は、あらゆる目的のためにそれらの全体を参照することにより本明細書に援用される。
【0032】
等価物
本発明は、本発明の精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化され得る。したがって、前述の実施形態は、あらゆる側面において、本明細書に説明する本発明を限定するものとしてよりもむしろ例示として考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、むしろ前述の明細書によるよりも添付の請求項により示される。したがって、請求項の等価物の意味および範囲に含まれるすべての変更例は本発明に含まれることを意図するものである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E