特許第6087908号(P6087908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6087908組換えタンパク質および組換えウイルスを作製するための単純な2プラスミド哺乳動物発現系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087908
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】組換えタンパク質および組換えウイルスを作製するための単純な2プラスミド哺乳動物発現系
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170227BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20170227BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20170227BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N7/00
   !C12P21/02 C
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-514223(P2014-514223)
(86)(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公表番号】特表2014-516564(P2014-516564A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】IN2012000405
(87)【国際公開番号】WO2013046216
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年6月3日
(31)【優先権主張番号】1679/MUM/2011
(32)【優先日】2011年6月8日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】513309225
【氏名又は名称】ジョシ ヴィシュワス
【氏名又は名称原語表記】JOSHI Vishwas
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ ヴィシュワス
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−534514(JP,A)
【文献】 JOURNAL OF VIROLOGY, 2006, p.5708_5715
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルパーワクシニアウイルスまたは外来性RNAポリメラーゼの助け無しに、非分節型マイナス鎖RNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを使用して組換えタンパク質を作製するための2プラスミド系であって、
a.前記組換えタンパク質をコードする遺伝子を挿入するための少なくとも2つのマルチクローニングサイトを有する、操作可能なレプリコンを含む、前記組換えタンパク質を発現する1つのクローニングプラスミド、および
b.N、P及びLタンパク質をそれぞれ発現するN、P及びL遺伝子を含む、N、P及びLタンパク質を発現する1つのヘルパープラスミド
を含み、ここで、前記操作可能なレプリコンの配列が、配列番号1、配列番号2及び配列番号3からなる群から選択される、2プラスミド系。
【請求項2】
前記操作可能なレプリコンの配列が配列番号1に記載のものであり、クローニングプラスミドが、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択される、請求項1に記載の2プラスミド系。
【請求項3】
前記操作可能なレプリコンの配列が配列番号2に記載のものであり、クローニングプラスミドが、配列番号4及び配列番号7からなる群から選択される、請求項1に記載の2プラスミド系。
【請求項4】
前記操作可能なレプリコンの配列が配列番号3に記載のものであり、クローニングプラスミドが、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される、請求項1に記載の2プラスミド系。
【請求項5】
前記ヘルパープラスミドが、配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の2プラスミド系。
【請求項6】
請求項1に記載の2プラスミド系を使用して、組換えタンパク質を作製する方法であって、
a.請求項1〜5のいずれか1項に記載の2プラスミド系を取得する工程、
b.前記クローニングプラスミドおよび前記ヘルパープラスミドを宿主細胞に導入して、組換え宿主細胞を生産する工程、
ならびに、複製ヘルパーワクシニアウイルスまたは外来性RNAポリメラーゼの助け無しに、組換えタンパク質を作製する工程を含む、方法。
【請求項7】
複製ヘルパーワクシニアウイルスまたは外来性RNAポリメラーゼの助け無しに、非分節型マイナス鎖RNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを使用して感染性非分節型組換えマイナス鎖RNAウイルスを作製するための2プラスミド系であって、
a.操作可能なレプリコンを含む、前記マイナス鎖RNAウイルスの前記ウイルスゲノムRNA全体をコードするDNA断片を発現する、1つのクローニングプラスミドであって、ここで、前記操作可能なレプリコンが前記ウイルスゲノムRNA全体をコードするcDNA断片により置換される、クローニングプラスミド、および
b.前記N、P及びLタンパク質をそれぞれ発現する、前記工程aのRNAウイルス由来のN、P及びL遺伝子を含む、N、P及びLタンパク質を発現する、1つのヘルパープラスミド
を含み、ここで、前記操作可能なレプリコンの配列が、配列番号1、配列番号2及び配列番号3からなる群から選択される、2プラスミド系。
【請求項8】
前記操作可能なレプリコンの配列が配列番号1に記載のものであり、前記クローニングプラスミドが、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択される、請求項7に記載の2プラスミド系。
【請求項9】
前記操作可能なレプリコンの配列が配列番号2に記載のものであり、前記クローニングプラスミドが、配列番号4及び配列番号7からなる群から選択される、請求項7に記載の2プラスミド系。
【請求項10】
前記操作可能なレプリコンの配列が配列番号3に記載のものであり、前記クローニングプラスミドが、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される、請求項7に記載の2プラスミド系。
【請求項11】
請求項7に記載の2プラスミド系を使用して、非分節型組換えマイナス鎖RNAウイルスを作製する方法であって、
a.請求項7〜10のいずれか1項に記載の2プラスミド系を取得する工程、
b.前記クローニングプラスミドおよび前記ヘルパープラスミドを宿主細胞に導入して、組換え宿主細胞を生産する工程、
ならびに、複製ヘルパーワクシニアウイルスまたは外来性RNAポリメラーゼの助け無しに、非分節型組換えマイナス鎖RNAウイルスを作製する工程を含む、方法。
【請求項12】
複製ヘルパーワクシニアウイルスまたは外来性RNAポリメラーゼの助け無しに、組換え感染性麻疹ウイルスを作製するための2プラスミド系であって、
a.操作可能なレプリコンを含む、前記マイナス鎖RNAウイルスの前記麻疹ウイルスゲノムRNA全体をコードするDNA断片を発現する1つのウイルスクローニングプラスミドであって、ここで、前記操作可能なレプリコンが前記ゲノムRNA全体をコードするcDNA断片により置換される、1つのウイルスクローニングプラスミド、および
b.前記N、P及びタンパク質をそれぞれ発現する、N、P及びL遺伝子を含む、N、P及びタンパク質を発現する、1つのヘルパープラスミドであって、ここで、前記ヘルパープラスミドが配列番号8及び配列番号9からなる群から選択される、1つのヘルパープラスミド
を含む、2プラスミド系。
【請求項13】
前記操作可能なレプリコンの配列が配列番号1に記載のものであり、前記クローニングプラスミドが、配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7からなる群から選択される、請求項12に記載の2プラスミド系。
【請求項14】
前記操作可能なレプリコンの配列が配列番号2に記載のものであり、前記クローニングプラスミドが、配列番号4及び配列番号7からなる群から選択される、請求項12に記載の2プラスミド系。
【請求項15】
前記操作可能なレプリコンの配列が配列番号3に記載のものであり、前記クローニングプラスミドが、配列番号5及び配列番号6からなる群から選択される、請求項12に記載の2プラスミド系。
【請求項16】
請求項12に記載の2プラスミド系を使用して、組換え麻疹ウイルスを作製する方法であって、
a.請求項12〜15のいずれか1項に記載の2プラスミド系を取得する工程、
b.前記クローニングプラスミドおよび前記ヘルパープラスミドを宿主細胞に導入して、組換え宿主細胞を生産する工程、
ならびに、複製ヘルパーワクシニアウイルスまたは外来性RNAポリメラーゼの助け無しに、組換え麻疹ウイルスを作製する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2プラスミド哺乳動物発現系に関する。さらに、本発明は、組換えタンパク質および組換えウイルスの作製に関する。さらに、本発明は、マイナス鎖RNAウイルスのリボ核酸(RNA)依存性RNAポリメラーゼ酵素を再構成するために哺乳動物発現系を組み込む方法、ならびにタンパク質、RNA分子および組換えウイルスを作製するための哺乳動物発現系としてのその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学および遺伝子操作の進歩は、ウイルスゲノムのクローニングされた相補(complimentary)DNA(cDNA)コピーから組換えウイルスを作製するプロセスである「逆遺伝学」を発展させた。それは、ウイルスの弱毒化、組織親和性、病原性因子に関する分子決定因子を理解することを助け、近年は、そのcDNAの操作によるウイルスゲノムの容易な改変を可能にすることによってウイルスワクチンの開発を加速させた。逆遺伝学は、弱毒変異を有する組換えウイルス、または新しいウイルスワクチンもしくは治療薬として使用するための異種遺伝子を発現するキメラウイルスの作製を可能にした。
【0003】
モルビリウイルス(麻疹ウイルスおよび牛疫ウイルス)
MVおよびRPVは、パラミクソウイルス科のモルビリウイルス属のメンバーである。それらの遺伝情報は、アンチセンス極性の一本鎖RNAゲノムにコードされており、それぞれ15894ヌクレオチド(MV)および15882ヌクレオチド(RPV)を含む。それらのゲノムは、高度に保存されたユニークな3’および5’末端(それぞれリーダーおよびトレーラー(trailer)と呼ばれる)を有し、同様に保存された遺伝子間配列によって分断された6つの遺伝子、N(ヌクレオカプシドタンパク質)、P(リンタンパク質)、M(マトリックスタンパク質)、F(融合タンパク質)、H(赤血球凝集素)およびL(巨大タンパク質=ポリメラーゼ)をコードする。感染細胞では、ウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RDRP)が、リーダー配列内に存在するプロモーターからゲノムRNAの転写を開始し、細胞のリボソームによって対応するタンパク質に翻訳されるメッセンジャーリボ核酸(mRNA)分子を生成する。ウイルスの生活環のある時点およびウイルスタンパク質の適切なプールが合成された後において、RDRP酵素は、モードを切り替え、そのゲノムRNAのリーダー配列内に存在する別のプロモーターから複製を開始する。ウイルスRNAの転写または複製の開始および遺伝子の境界における転写の開始および停止を制御する正確な機序は、十分に理解されていないが、転写および複製のためのプロモーターとして働く保存配列ならびに各遺伝子の境界において転写の開始および終了を命令する配列は、ほとんどのマイナス鎖RNAウイルス全般の場合、特にMVおよびRPVにおいて、明確に定義されている。無関係な任意のRNA分子にこれらの配列を付加することによって、その同族のRDRPによって転写および複製され得る「ウイルスゲノム様レプリコン」が形成されることが十分に確認されている。
【0004】
MVは、乳児および低年齢小児において急性熱性疾病を引き起こす。その有病率は、ワクチン接種によって非常に効率的に制御され得る。Schwartz、MoratenおよびEdmonston−Zagreb株を含む現在使用されている弱毒生ワクチンの大部分が、非ヒト細胞における複数回の継代による(Enders、1962)最初のEdmonston株(Enders and Peebles、1954)に由来している。しかしながら、世界保健機関(WHO)の推定によると、主に開発途上国において、毎年100万人の低年齢小児が、麻疹が原因で死亡している。しかしながら、近年は、ワクチン接種の順守が不十分な米国などの先進国において、麻疹に関連する死亡が発生してきている(Clements and Cutts、1995)。将来動向を含むMVワクチン学の最近の考察については、Norrby(1995)を参照のこと。過去60有余年、麻疹ワクチンは、7億人を超える小児に投与され、非常に有効であると証明されており、通常、MVの再感染に対して一生続く免疫能を提供する。
【0005】
RPVは、ウシ、スイギュウおよび他の野生生物種の感染性ウイルス性疾患である牛疫を引き起こし、主に、インド、アフリカおよび他の熱帯諸国である。牛疫は、発熱、口腔びらん、下痢、リンパ系壊死および高死亡率を特徴とする。2つのワクチン、Plowright(Plowright and Ferris、1962)およびLapinized(Scot 1963)が、牛疫を防御するために広く使用されている。RPVのRBOK株の弱毒化によって得られたPlowrightワクチンは、最も有効であると証明されている(Baronら、2005)。これらのワクチンが広範に使用されることによって、2000年までにインドを含む数カ国からのRPVの根絶が助けられた。しかしながら、2003年の再出現によって、ウシおよび他の感受性動物の集団ワクチン接種が再開された(Kockら、2006)。
【0006】
これらのワクチンの証明された安全性および有効性のおかげで、異種遺伝子を発現させるための理想的なベクターとしてそれらを使用することが支持される。逆遺伝学は、人間および動物における無関係な疾患および/または治療薬に対する潜在的なワクチンとして有用な組換えMVまたはRPVを開発するための強力なアプローチを提供する。
【0007】
逆遺伝学は、ポリオウイルスにおいて、1981年にRacanielloおよびBaltimoreによってRNAウイルスを作製するために初めて使用された。続いて、いくつかの他のプラス鎖RNAウイルスが、クローニングされたcDNAからT7またはT3 RNAポリメラーゼによって生成された合成RNAを使用して作製された(Racaniello,V.R.&Baltimore,D.、1981)。しかしながら、マイナス鎖RNAウイルスの作製は、より困難であることが判明した。マイナス鎖ウイルスのゲノムは、プラス鎖RNAウイルスとは異なり、宿主細胞によって翻訳されることができず、感染性でない。それは、核タンパク質、ならびに転写および複製、その後のウイルス形成を可能にするウイルスRDRPタンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体の形態で供給されなければならない。Enamiら(1990)は、インフルエンザウイルス(9つのゲノムRNAサブユニットからなる)を作製する最初の逆遺伝学系を開発した。そのRNPは、小さいサイズであり、インビトロにおいてRNAから組み立てられ得、ウイルスタンパク質であるNおよびポリメラーゼ構成要素を必要とし得る。初めに、インフルエンザウイルスゲノムサブユニットのウイルス非コード末端配列に埋め込まれた、レポーター遺伝子であるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)配列を有する人工RNAが使用された(Luytjesら、1989)。後に、クローニングされたDNAからインビトロにおいて転写された単一の真の(authentic)または変更されたゲノムサブユニットRNAも使用された(Enami and Palese、1991)。組み立てられたRNPは、インフルエンザ感染細胞にトランスフェクションされた際に複製および転写した(それぞれCATの産生およびインフルエンザウイルスのレスキューによってモニターされる)。いくつかの場合において、莫大な過剰量のリアソートされていない(non−reassorted)ウイルスからの、導入されたサブユニットを含むウイルスの精製は、例えば、ヘルパーウイルスの同族のサブユニットによってコードされるタンパク質に対する特異的な中和抗体を使用した選択によって達成され得る。
【0008】
非分節型マイナス鎖RNAウイルス(モノネガウイルス目)のRNPは、Nタンパク質に加えて、組立およびポリメラーゼ補助因子リンタンパク質(P)ならびにウイルスRNAポリメラーゼ(巨大タンパク質L)を含み、インビトロにおいて合成RNAおよび個別のタンパク質から組み立てることがより困難である。ゆえに、多くの研究者は、ウイルスの生活環において生成されるウイルスゲノムの必須配列を含むより小さいサブゲノムRNA(ウイルスミニゲノム)を使用することを好んだ。次いで、それらは、レポーター遺伝子およびウイルスの必須の非コード配列を含むDNA構築物(レプリコン)から人工的に転写されたRNA分子によって置換された。CATコード配列およびウイルス非コード末端配列を有するそのようなレプリコンの複製は、センダイウイルス(Parkら、1991)、センダイウイルス(SeV)、呼吸器合胞体ウイルス(Collinsら、1993;Collinsら、1991)、ヒトパラインフルエンザウイルス3(Dimock and Collins、1993)、狂犬病ウイルス(RV)(Conzelmann and Schnell、1994)およびMV(Sidhuら、1995)において達成された。
【0009】
類似の系を使用することにより、水疱性口内炎ウイルス(VSV)(Lawsonら、1995;Schnellら、1994)および狂犬病ウイルス(RV)が、T7 RNAポリメラーゼプロモーターの支配下のウイルスゲノムの完全長cDNAクローンから完全にレスキューされた。核タンパク質(NP)を含むウイルスポリメラーゼ複合体の構成要素は、T7 RNAポリメラーゼプロモーターによって制御されるタンパク質発現プラスミドから提供された。すぐに他の研究者も、水疱性口内炎ウイルス(Whelanら、1995)、麻疹ウイルス(Radeckeら、1995)、呼吸器合胞体ウイルス(Collinsら、1995)、センダイウイルス(Garcinら、1995;Katoら、1996)、牛疫ウイルス(Baron&Barrett 1997)、ヒトパラインフルエンザウイルス(Hoffmanら、1997;Durbinら、1997)、サルウイルス(Heら、1997)、ニューカッスル病ウイルス(Peetersら、1999)およびヒト重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(Yountら、2003)に対するクローニングされたゲノムcDNAからの非分節型マイナス鎖RNAウイルスの作製を報告した。
【0010】
これらの実証、ならびにRNA依存性RNAポリメラーゼ(RDRP)酵素活性の再構成および対応するRNAウイルスまたは非ウイルスレポータータンパク質をミニレプリコンからレスキューすることができることについての他の研究によって、単独でまたはレスキューされたウイルスの欠くことのできない部分として組換えタンパク質を発現させるための強力な多用途の系としてのRDRP酵素が確立された。
【0011】
この目的のために使用されている最も一般的な方法は、複数のプラスミド(1つは、基質RNAを発現し(ウイルスゲノムをコードするcDNAまたは人工レプリコン)、他のものは、ウイルスのRDRP複合体タンパク質、すなわち、ヌクレオカプシド(NまたはNPタンパク質)、リンタンパク質(P)および巨大ポリメラーゼ(L)タンパク質を発現する)、ならびにこれらのプラスミドからの発現を可能にする外部のT7RNAポリメラーゼ(T7RNAP)のトランスフェクションを使用する。T7RNAPは、複数の理由、(1)その高効率、(2)ウイルスゲノムと同一の正しい5’末端を有するRNAを合成することができる点、ならびに(3)細胞質内でDNA分子を転写することができ、ゆえにRNAスプライシング、ポリアデニル化または他の機序によるvRNAの改変が排除される点のために使用される。
【0012】
T7RNAPは、哺乳動物の酵素ではない。ゆえに、Pattnaikら(1990)は、組換え弱毒化ワクシニアウイルス(VV)(例えば、MVA/T7)を使用した。それは、VSV(Lawsonら、1995)および狂犬病ウイルス(Conzelman、米国特許第6,033,886号)、RSV(Collinsら、1995)、SV5(Heら、1997)、HPIV−3(Durbinら、1997)、牛疫ウイルス(Barn and Barrett 1997)および麻疹ウイルス(Schneiderら、1997)、耳下腺炎ウイルス(Clarkeら、2000)、CDV(Gassenら、2000)、HPIV−2(Kawanoら、2001)およびBPIV−3(Schmidtら、2000)の回収のために使用された。同様に、T7RNAPを発現する組換え鶏痘ウイルスもまた、ニューカッスルウイルス(NDV)(Peetersら、1999)およびキメラ牛疫ウイルス(Dasら、2000)の回収のためのT7RNAPを供給するために使用された。
【0013】
このアプローチを用いて作製された組換えウイルスは、ワクシニアウイルスと混合されてしまい、精製することが困難であり、それは、特に、免疫原性組成物または遺伝子治療ベクターを調製するためにその組換えウイルスが必要とされる場合、主な問題となり得る。さらに、このヘルパーワクシニアウイルスは、宿主細胞を殺滅して、組換えウイルスの作製の効率を制限する。ゆえに、T7RNAポリメラーゼを供給するヘルパーウイルスの使用を排除することが望ましいだろう。外部から供給されるT7RNAPの使用を完全に排除するために、3つの異なるアプローチが使用された。
【0014】
Radeckeら(1995)は、T7RNAPならびに麻疹ウイルス(MV)のNおよびPタンパク質(WO97/06270)を構成的に発現するヘルパー細胞株を作出し、T7RNAPプロモーターに連結されたMVゲノムの(+)鎖配列全体をコードするプラスミドおよびMVのLタンパク質だけをコードする別のプラスミドを導入することが、組換えMVをレスキューするために十分である。しかしながら、このヘルパー細胞株の効率は、通常限定的であり、熱ショックを与えることによって増強される必要がある(Parksら、1999)。また、この細胞株は、MVのレスキューのためだけに有用である。対照的に、ヘルパーBHK−21細胞株(BSR T7/5)は、T7RNAPだけを安定的に発現し、BRSV(Buchholzら、2000)、狂犬病ウイルス(Finke and Conzelmann 1999)、VSV(Hartyら、2001)、NDV(Romer−Oberdorferら、1999)およびエボラウイルス(Volchkovら、2001)の場合に示されているように種々のウイルスをレスキューするために使用され得る。それは、適切なN、PおよびLタンパク質をコードするプラスミドでコトランスフェクトすることによって、任意のウイルスのRDRPを再構成するために使用され得る。
【0015】
第2のアプローチは、RNAポリメラーゼI(RNAPI)の使用を含む。RNAPIは、通常、哺乳動物細胞においてリボソーム遺伝子の転写に関与する。RNAPIによって合成されたRNAは、5’メチルキャップ構造および3’ポリAテイルを含まない。RNAPIに対する転写開始シグナルおよび転写終結シグナルは、正確に定義されており、ウイルスゲノムcDNA分子またはウイルスゲノム様cDNA分子をrRNAプロモーターシグナルとターミネーターシグナルとの間に挿入することによって生成されたRNA分子は、真のウイルス5’および3’末端を有し、さらなるプロセシングを必要とせず、発現された場合、ウイルスのRDRPによって直接、基質として使用され得る(Zobelら、1993,Nucleic acids research,21:3607−3612;Flick and Petterson,2001,J.Virol.75:1643−1655;)。ゆえに、RNAPI転写は、プラスミドからウイルスゲノムまたはゲノム様cDNAを合成するために使用され、インフルエンザウイルス(Neumannら、1999)、ボルナ病ウイルスおよびMV(Martinら、2006,J Virol.80:5708−5715)の場合ではウイルスをレスキューするために使用されている。
【0016】
より最近では、Martinら(2006)は、RNAポリメラーゼII(RNAPII)によって生成された転写物からウイルスゲノムRNAを発現させる第3のストラテジーを使用した。彼らは、ハンマーヘッド型リボザイムをそのウイルスゲノム配列のすぐ上流に配置し、ゲノムデルタ肝炎ウイルスリボザイムをそのウイルスゲノム配列のすぐ下流に配置した。これらのリボザイムは、RNAPIIによって転写されたRNAから、真の3’および5’末端を有するゲノムRNAを切断した。
【0017】
そのようなストラテジーは、ヘルパーウイルスの必要性を排除するが、なおも、ウイルスのN、PおよびLタンパク質を発現する別個のヘルパープラスミドが必要である。1つの細胞において同時に非常に多くのプラスミドのトランスフェクションを行うこと、およびRDRPの効率的な再構成のために、所望のタンパク質の有用なレベルの発現を保証することは、困難であり得る。所望のすべての遺伝子を発現する単一のヘルパープラスミドが使用可能であることは、トランスフェクトされたすべての細胞が、RDRP酵素活性の再構成のために必要なヘルパータンパク質の完全な補完を享受するのを保証することによって、ウイルスレスキューの効率を高めることを助ける。
【0018】
この複数のプラスミドの必要性は、ウイルスレスキューのためにRDRPに基づく系を使用することも制限している一方で、レポータータンパク質をコードする人工レプリコンを用いた研究から、RDRPによって媒介される発現系が、組換えタンパク質の高レベルの発現を可能にし得ることが示されている。必要とされるN、PおよびLタンパク質を供給するために単一のヘルパープラスミド/試薬が使用可能であることによって、組換えタンパク質の大規模発現のためのRDRP酵素の使用範囲の拡大が助けられる。ゆえに、RDRP活性の効率的な再構成、ならびに組換えタンパク質、RNA分子の発現および/または組換えウイルスのレスキューのためにその利用を可能にする新しいより単純な方法および試薬に対する必要性が当該分野に存在する。
【0019】
ここで、本発明者らは、RDRP酵素活性の再構成、ならびに組換えタンパク質、RNA分子の発現のためのそのレスキューおよび組換えウイルスのレスキューのために使用され得る容易に操作可能な単純なプラスミドベクター系の調製法および使用を記載する。この目的のために、本発明者らは、モデルとして2つのウイルス、麻疹ウイルス(MV)および牛疫ウイルス(RPV)のRDRP系を使用した。これらのプラスミドは、非ウイルスタンパク質、RNA分子またはウイルスゲノム全体を発現するように容易に改変され得る。このベクター系は、タンパク質の発現ならびに/あるいはワクチン接種もしくは他の治療目的にとって有用なさらなるタンパク質および/またはRNA分子を発現する改変された組換えウイルスの作製(ウイルスレスキュー)に関する応用法の開発において有用であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の主な目的は、組換えタンパク質および組換えウイルスを作製するための2プラスミド哺乳動物発現系を提供することである。
【0021】
別の目的は、RNA依存性RNAポリメラーゼを再構成するための方法および哺乳動物発現系としてのその利用の方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、組換えタンパク質、核酸、ウイルス、RNA分子を発現させるための哺乳動物発現系を提供することである。
【0023】
本発明のなおもさらなる目的は、アプタマー、アンチセンスRNA、miRNA、siRNA、リボザイムなどのようなRNA分子の細胞内発現のための哺乳動物発現系を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、ワクチンまたは治療薬として有用な組換えウイルスを作製するための試薬を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、そのような哺乳動物発現系を調製するプロセスを記載することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、哺乳動物細胞においてタンパク質、RNA分子の発現および組換えウイルスを作製するためのモルビリウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ酵素の使用を特徴とする。1つの態様において、これは、MVのN、PおよびLタンパク質を発現するプラスミドDNA分子を提供する。本発明の別の態様において、本発明は、任意のタンパク質、RNAまたは改変されたウイルスを作製するために使用され得るRDRPの容易に操作可能なRNA基質を発現する別のプラスミドを提供する。これらのプラスミドは、タンパク質もしくはRNA分子の発現または組換えウイルスの作製あるいはそれらの組み合わせのための試薬キットとして使用され得る。さらに、本発明は、細胞の遺伝子発現を調節するために有用であり得るRNA分子の細胞内発現のためにこれらのプラスミドを使用するための方法を提供する。これらのプラスミドは、クローニングキットの形式で使用され得る。
【0027】
本明細書において使用される以下の用語/省略形は、本明細書以後述べられるとき、それらに帰される意味を有する。
【0028】
MV:麻疹ウイルス、RPV:牛疫ウイルス、RNA:リボ核酸、DNA:デオキシリボ核酸、RDRP:RNA依存性RNAポリメラーゼ、cDNA:相補DNA、−VRNA:マイナス鎖ウイルスRNA、RNP:リボ核タンパク質、P:リンタンパク質、L:巨大ポリメラーゼタンパク質、N:ヌクレオカプシド、CMV:サイトメガロウイルス、IRES:内部リボソーム侵入部位、CHO細胞株:チャイニーズハムスター卵巣細胞株、RNA PolI−RNAポリメラーゼI、MOI:感染効率、siRNA:選択的干渉RNA、miRNA:マイクロRNA、GFP:緑色蛍光タンパク質、HGH:ヒト成長ホルモン
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】2つのレポーター遺伝子をコードする麻疹ミニレプリコンをコードするクローニングプラスミドの模式図。A.基本的なレプリコンのデザイン。B.構築物1:HH−レプリコン−HDV。C.構築物2:P1P−レプリコン−P1T。
図2】作製されたクローニングプラスミドの模式的表示。クローニングプラスミド1:ベクターpUC57を使用して、P1P_レプリコン_P1T構築物をクローニングした。クローニングプラスミド2:ベクターpIRESを使用して、pIRES_P1P_レプリコン_P1T構築物を調製した。クローニングプラスミド3:ベクターpIRESを使用して、pIRES_HH_レプリコン_HDVを調製した。
図3】MV−Eゲノム全体のcDNAの合成。図3a:MV−Eのアンチゲノム全体をコードするcDNAの作製:Genejet RNA精製キット(Fermentas)を使用してウイルスRNAを精製し、SuperscriptIIおよびランダムヘキサマープライマーを使用して逆転写した。これを使用することにより、7つの重複フラグメントを、SuperscriptIIIおよび特異的プライマーを用いて増幅し、マルチクローニングサイトがNheI_NotI_PacI_PmeIリンカーで置き換えられたpCDNA3.1にクローニングした。図3b:MV−EゲノムのcDNAをコードするプラスミド:MV−Eのアンチゲノム全体をコードするcDNAを、7つの重複PCR増幅フラグメントを組み立てることによって合成し、pCDNA3.1(−)のNotIおよびPmeI部位にクローニングした。
図4】作製されたヘルパープラスミドの2つのバリアントの模式的表示。ヘルパープラスミド1:ベクターpBiCMV−1を使用して、pBiCMV_MV−N_MV−P_IRES_MV−Lを調製した。ヘルパープラスミド2:ベクターpIRESを使用して、pIRES_MV−N_p2A_MV−P_MV−Lを調製した。
図5】Vero細胞を、eGFPおよびHGHをコードするクローニングプラスミドおよびHPV1またはHPV2でコトランスフェクトし、37℃で48時間インキュベートし、蛍光およびHGHについて観察した。A:pUC18のみ;B:pGFP(ポジティブコントロール);C:pUC_P1P−レプリコン−P1Tのみ;D:pUC−P1P−レプリコン−P1TおよびヘルパーHPV;E:pIRES−HH−レプリコン−HDVのみ;F:pIRES−HH−レプリコン−HDVおよびHPV。注意:ヘルパープラスミド1と2の両方が、N、PおよびLタンパク質を供給することができた。それらは似ていたので、HPV1のみの代表的な像が示されている。
図6】断片化されたMVのレスキュー:等量のプラスミドpCDNA−MVゲノム、クローニングプラスミド1(pIRES_HH−レプリコン−HDV)およびHPV1を、Xfectを使用してVero細胞にコトランスフェクトし、37℃でインキュベートし、合胞体の形成について毎日観察した。合胞体の形成が>80%〜90%をカバーした後にMV−Eを培養上清から回収し、TCID50を用いて力価測定した。同時にEGFPプラスミドの発現について細胞を観察した。A:pUC−P1P−rep−P1T、pCDNA−MVゲノムおよびヘルパープラスミドバリアント1でトランスフェクトされたVero細胞;B:pIRES−HH−rep−HDV、pCDNA−MVゲノムおよびヘルパープラスミドバリアント1でトランスフェクトされたVero細胞。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、組換えタンパク質の発現またはウイルスレスキューのためのRDRP酵素活性の細胞再構築のために容易に使用され得る発現系に関する。それは、2つのプラスミド(1.MVウイルスのN、PおよびLタンパク質を発現するヘルパープラスミドならびに2.容易に操作可能なウイルスRNAまたはウイルス様RNA分子(ミニレプリコン)を発現するクローニングプラスミド)を含む。クローニングプラスミドは、発現される標的分子をコードするDNAを容易に挿入するためのマルチクローニングサイト(MCS)を含む。ここで、MVおよびRPVは、モデル系として使用される。
【実施例】
【0031】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明されるが、この実施例は、請求項に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
1.細胞およびウイルス
Vero(アフリカミドリザル腎臓)細胞を、5%ウシ胎仔血清(FCS)が補充されたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)において単層として生育した。MRC5細胞を、10%FCSが補充されたDMEMにおいて単層として生育した。麻疹ウイルス(Edmonston)(MV−E)株を、Serum Institute of Indiaから購入した(MVAC、10TCID50/バイアル)。播種用ストック(seed stock)を調製するために、VeroまたはMRC5細胞を、25sq.cmフラスコに10細胞/フラスコで播種し、36時間インキュベートした。次いで、細胞をHBSSで洗浄し、0.1MOIのMV−Eとともに播種し、無血清DMEMを補充した。24時間間隔でウイルスを回収した。72時間にわたって回収されたウイルスを合わせてプールし、定量し、播種用ストックとして使用した。
【0033】
2.プラスミド構築
2.1 クローニングプラスミド
2.1.1 レプリコン構築物のデザイン
MVリーダー(ntd1〜107)、MVトレーラー(ntd15786〜15894)およびMV−Nタンパク質に対するタンパク質コード領域とMV−Pタンパク質に対するタンパク質コード領域との間の遺伝子間領域(ntd.No1686〜1806)を、GenbankからのAY486084.1配列(Baricevicら、2005)から選択した。レポータータンパク質として使用される緑色蛍光タンパク質(eGFP)およびヒト成長ホルモン(HGH)に対するコード領域を、それぞれU55762.1およびNM−000515.3から単離した。これらの配列のすべてを、インシリコにおいて、2つの遺伝子カセットを含むMV−Eゲノム様レプリコンに組み立てた。AfeI、AgeI、AscI、MluI、NruI、PciI、SacII、XhoI、EcoRI、PacI、PmeI、PmlI、SbfIおよびXbaIに対する認識部位に対応するヌクレオチド配列を、2つのオリゴヌクレオチドに整列させて2つのマルチクローニングサイト(MCS1およびMCS2)を合成し、上記レプリコン内のEGFPおよびHGH遺伝子の近傍に挿入した。結果として、EGFPタンパク質は、MCS1領域内のAscI部位に、HGHタンパク質は、MCS2内のPacI部位にクローニングされたとみられた(図1A)。レポーター遺伝子を含まないレプリコンの配列は、配列番号1に与えられている。
【0034】
5’ハンマーヘッド型リボザイムに対応する配列を、Combredetら(2003)から再構築し、上記レプリコンの5’末端に結合させた。同様に、3’デルタ肝炎ウイルスリボザイムに対する配列を、Walkerら(2003)から取り入れ、レプリコンの3’末端に付加することにより、HH−レプリコン−HDV構築物(図1B;配列番号2)が生成された。
【0035】
チャイニーズハムスターRNAポリメラーゼI(P1P)に対するプロモーターをコードする配列を、Towerら(1989)から選択し、マウスRNAポリメラーゼIターミネーター(P1T)に対するターミネーター配列を、Grummtら(1985、1986)によって報告された基本配列に対して選択した。そのP1P配列を、5’末端のすぐ上流に付加し(すぐ上流)、P1T配列をレプリコンの3’末端のすぐ下流に付加することにより、P1P−レプリコン−P1T構築物(図1C;配列番号3)を作製した。
【0036】
2.1.2 クローニングプラスミドの合成
HH−レプリコン−HDV(EcoRI部位とHindIII部位との間)およびP1P−レプリコン−P1T(SacI部位とHindIII部位との間)に対応する配列を、Young and Dong(2004)の遺伝子合成法を使用して合成し、pUC57にクローニングすることにより、それぞれpUC_HH−レプリコン−HDVおよびpUC_P1P−レプリコン−P1Tを作製した。次いで、それらを、Clonetech製のpIRESベクターのNheI部位とNotI部位との間にサブクローニングすることにより、pIRES_HH−レプリコン−HDVおよびpIRES_P1P−レプリコン−P1Tプラスミドを作製した。これらのプラスミドを、哺乳動物細胞においてRNA依存性RNAポリメラーゼ(RDRP)によって媒介されるGFPおよびHGHタンパク質の発現を試験するために使用した。
【0037】
これらのプラスミドが、RDRPの支配下においてGFPおよびHGHを発現したことを確かめた後、EGFPおよびHGHに対する遺伝子を、AscIおよびPacIを用いた連続的な消化およびライゲーションによって除去することにより、クローニングプラスミドの3つのバリアント(クローニングプラスミドバリアント1(HH−レプリコン−HDV)およびクローニングプラスミドバリアント2(P1P−レプリコン−P1T)およびクローニングプラスミドバリアント3(pUC_P1P−レプリコン−P1T))を作製した。作製された種々のプラスミドを表1に列挙する。
【0038】
【表1】
表1:作製された種々のミニレプリコンプラスミド。番号名称説明配列番号1クローニングプラスミド1(pUC−P1P−レプリコン−P1T)レポーター遺伝子を含まないpUC57におけるCHO細胞RNAポリメラーゼIプロモーターおよびマウスRNAポリメラーゼIターミネーターの支配下のレプリコン配列番号62pUC−HH−レプリコン−HDV5’および3’末端においてハンマーヘッド型リボザイムおよびデルタ肝炎ウイルスリボザイムに隣接し、レポーター遺伝子を含まないpUC57ベクターにクローニングされた、レプリコン配列番号73クローニングプラスミド2(pIRES−P1P−レプリコン−P1T)レポーター遺伝子を含まないClonetech製のpIRESベクターのNheIおよびNotI部位にサブクローニングされた、CHO細胞RNAポリメラーゼIプロモーターおよびマウスRNAポリメラーゼIターミネーターの支配下のレプリコン配列番号54クローニングプラスミド3(pIRES−HH−レプリコン−HDV)5’および3’末端においてハンマーヘッド型リボザイムおよびデルタ肝炎ウイルスリボザイムに隣接し、レポーター遺伝子を含まないClonetech製のpIRESベクターのNheIおよびNotI部位にサブクローニングされた、レプリコン配列番号45レポーター遺伝子を含むクローニングプラスミド1pUC57にクローニングされた、CHO細胞RNAポリメラーゼIプロモーターおよびマウスRNAポリメラーゼIターミネーターの支配下の、レポーター遺伝子eGFPおよびHGHを含むレプリコン6レポーター遺伝子を含むクローニングプラスミド2Clonetech製のpIRESベクターのNheIおよびNotI部位にサブクローニングされた、CHO細胞RNAポリメラーゼIプロモーターおよびマウスRNAポリメラーゼIターミネーターの支配下の、レポーター遺伝子eGFPおよびHGHを含むレプリコン 配列番号F7レポーター遺伝子を含むクローニングプラスミド35’および3’末端においてハンマーヘッド型リボザイムおよびデルタ肝炎ウイルスリボザイムに隣接し、Clonetech製のpIRESベクターのNheIおよびNotI部位にサブクローニングされた、レポーター遺伝子eGFPおよびHGHを含むレプリコン配列番号G
2.1.3 MV−Eゲノム全体のcDNAの合成
MV−E cDNAを、Serum Institute of India(Pune,India)から購入したあるバッチのMV−Eワクチンから精製されたウイルス粒子からクローニングした。製造者のプロトコルに従って製造者のRNA精製キットに従うGeneJet RNA精製キット(Fermentas)を使用して、10個の溶解ウイルス粒子からウイルスRNAを抽出した。そのウイルスRNAを、ランダムヘキサマーおよびSuperscriptII DNAポリメラーゼを使用してcDNAに逆転写した。ウイルスゲノム全体を網羅する7つの重複cDNAフラグメント(図3aに示されるような)を、PfuTurbo DNAポリメラーゼおよび以下のプライマーを使用するPCRによって作製した。
【0039】
(1)5’−GCGGCCGCACCAAAC−3’;(2)5’−CCTGACCGCGGATGC−3’;(3)5’−ACCTCGCATCCGCGG−3’;(4)5−CCTCCAGAGTAATCGATTAAGG−3’;(5)5’−AATCGATTACTCTGGAGGAGCAG−3’;(6)5’−CTTGCACCCTAAGTTTTAATTAACTAC−3’;(7)5’−GAACAATATCGGTAGTTAATTAAAAC−3’;(8)5’−TGAGGGACTCGAGCATACTC−3’;(9)5’−ATAAGATAGTAGCCATCCTGGAGTAT−3’;(10)5’−GTAGGGCCATGTGCTGGG−3’;(11)5’−CATAGCCGTAACAAAAAGGGTAC−3’;(12)5’−GAGCATCAAGTGAAGGACCATG−3’;(13)5’−GCATTGTGGTATTATAGAGCCTATC−3’;(14)5’−CGGTTTAAACCAGACAAAGCTG−3’
プラスミドpCDNA3.1(−)のマルチクローニングサイトを、NheIおよびPmeIを用いた消化によって除去し、それを、NheI−NotI−PacI−PmeI部位を含むリンカーpCDNA−Not_Pac_Pmeで置き換えた。種々のプライマー対7、8(PacI、XhoI)、9、10(XhoI、KpnI)、11、12(KpnI、NcoI)および13、14(NcoI、PmeI)を使用することによってフラグメントを作製し、PacI−PmeIで消化されたpCDNA−Not_Pac_Pmeにライゲートすることにより、pCDNA_Not_Pac_MVg_Pmeと呼ばれる、MV−EアンチゲノムのPacIから3’末端までのヌクレオチドを含むプラスミドを作製した。他の3つの対1、2(NotI、SacII)、3、4(SacII、ClaI)、5、6(ClaI、PacI)によって作製されたフラグメントを、NotI−PacIで消化されたpCDNA_Not_Pac_MVg_Pmeプラスミドにライゲートすることにより、pCDNA_MVゲノムを作製した(図3b)。
【0040】
2.2 ヘルパープラスミド
GeneJet RNA精製キット(Fermentas)を製造者のプロトコルに従って使用して、Serum Institute of India(Pune,India)から購入した精製されたMV−EウイルスからRNAを調製した。1μgのRNAを、ランダムヘキサマーを使用して逆転写し、標準的な分子クローニング法を使用して、Martinら(2006)およびCombredetら(2003)によって報告されているように、SuperscriptIII(Invitrogen)を使用し、N(F:5’−GCTAGCATGGCCACACTTTTAAGG−3’およびR 5’−GCGGCCGCCTAGTCTAGAAGATT−3’)、P(F 5’−GCTAGCATGGCAGAAGAGCAGG−3’、R 5’−GCGGCCGCCTACTTCATTATTATC−3’)およびL(F 5’−GCTAGCATGGACTCGCTATCTGTCAAC−3、R 5−GCGGCCGCTTAGTCCTTAATCAG−3)タンパク質コード領域に特異的なプライマーを使用して増幅した。増幅されたcDNAを、pIRESベクター(Clonetech)のNheI部位とNotI部位との間にクローニングすることにより、pIRES_N、pIRES_PおよびpIRES_Lプラスミドを作製した。
【0041】
2.2.1 ヘルパープラスミドバリアント1の合成
Nタンパク質遺伝子を、pIRES_Nから増幅し、pBiCMV1のEcoRIおよびPstI部位にサブクローニングすることにより、pBiCMV_Nプラスミドを作製した。次いで、Pタンパク質配列を増幅し、NheIおよびEagI部位にクローニングすることにより、pBiCMV_NP構築物を作製した。次いで、Lタンパク質配列を、pBiCMV_NPプラスミドのEagIおよびSalI部位にサブクローニングすることにより、pBiCMV_NPLプラスミドを作製した。このプラスミドは、二方向性CMVプロモーターを含み、NおよびPタンパク質を発現し得る。しかしながら、L配列は、PとともにバイシストロニックRNAとして転写され、翻訳されない。ゆえに、Chappellら(2000)によって初めて報告され、後にTouzletら(2008)によって効率的な翻訳を促進すると確かめられた哺乳動物ベータグロビンIRESエレメント(ires)を、Lコード領域のすぐ上流に挿入した。5’末端においてEagIに対する部位および3’末端においてLタンパク質の最初の10ヌクレオチドに隣接した五量体IRESエレメントをコードするオリゴヌクレオチド(5’GGCCGTTCTGACATCCGGCGGGTTTCTGACATCCGGCGGGTTTCTGACATCCGGCGGGTTTCTGACATCCGGCGGGTTTCTGACATCCGGCGGGTGACTCACAACGGATCCAACAGACATATGGACTCGC3’)を合成し、部位特異的突然変異誘発によってpBiCMV_NPLに挿入することにより、ヘルパープラスミドバリアント1(HPV1)(配列番号8)とも呼ばれるpBiCMV_NPiresLプラスミドを作製した。
【0042】
2.2.2 ヘルパープラスミドバリアント2の合成
Nタンパク質配列を、増幅し、NheI部位とXhoI部位との間にサブクローニングすることにより、pIRES_Nを得た。次いで、Pタンパク質配列を、pIRES_Pから増幅し、EcoRIおよびMluI部位にクローニングすることにより、pIRES_NPを作製した。最後に、L配列を、pIRES_Lから増幅し、SalI部位とNotI部位との間のpIRES_NPにクローニングすることにより、pIRES_NPLを得た。この形式では、このプラスミドは、NおよびLタンパク質を発現するが、Pを発現しない。ゆえに、最近報告された2Aペプチドベクターに基づくストラテジーを用いることにより、Pタンパク質の発現を促進した(szymczak and Vignali(2005))。5’末端においてMV Nタンパク質の終止コドンの直前のコドンに隣接し、3’末端においてMV Pタンパク質の最初の数コドンに隣接する、Szymczakら(2007)によって報告されたブタテッショウウイルス2Aペプチドをコードするオリゴヌクレオチド(5’ATCTTCTAGACGGCTCCGGAGCCACGAACTTCTCTCTGTTAAAGCAAGCAGGAGACGTGGAAGAAAACCCCGGTCCCATGGCAGAAGAGCA3’)を部位特異的突然変異誘発によって挿入することによって、pIRES_NPLのNおよびPのオープンリーディングフレームを融合し、それにより、NおよびPタンパク質領域が単一のN2AP融合タンパク質に融合され、ヘルパープラスミドバリアント2(HPV2)(配列番号9)とも呼ばれるpIRES_N2aPLプラスミドが得られた。
【0043】
プラスミドHPV1(pBiCMV_NPiresL)およびHPV2(pIRES_N2aPL)を図4に模式的に表す。
【0044】
2.2.3 他のマイナス鎖RNAウイルスのN、PおよびLタンパク質をコードする等価なヘルパープラスミドの合成
次いで、これらのヘルパープラスミドを作製するために使用されたクローニングストラテジーを、他のマイナス鎖RNAウイルス(主に、MV、牛疫(RPV)、小反芻動物病(PPRV)、イヌジステンパー(CDV)、ニューカッスル病(NDV)およびセンダイウイルス(SeV))に対するその適用性について試験した。ヌクレオカプシド、リンタンパク質および巨大タンパク質のコード領域を、制限酵素EcoRI、PstI、NheI、EagI、SalI、XhoI、MluIおよびNotIの存在について解析した。
【0045】
EcoRIおよびPstIに対する部位は、MVおよびCDVのヌクレオカプシドタンパク質に存在しなかった。同様に、NheIおよびXhoIに対する部位は、MVおよびSeVのヌクレオカプシドタンパク質に存在しなかった。しかしながら、他のウイルスのヌクレオカプシドでは、酵素EcoRI、PstI、NheIおよびXhoIに対する様々な数の部位が検出された(表2)。
【0046】
【表2】
表2:様々なマイナス鎖RNAウイルスのNタンパク質におけるEcoRI、PstI、NheIおよびXhoIに対する部位の存在。ウイルスGenBank登録番号EcoRIPstINheIXhoIMVAY486084.10000RPVAB547190.11310PPRVHQ197753.10201CDVAB687721.20120NDVHQ008337.10012SENDAINC_001552.10100

酵素EagI、SalIおよびNotIに対する部位は、MV、PPRV、CDVおよびNDVのLタンパク質には存在しなかった。RPVおよびSeVは、それらのLタンパク質にSalIに対する1つの部位を含んだ(表3)。
【0047】
【表3】
表3:様々なマイナス鎖RNAウイルスのLタンパク質におけるEagI、SalIおよびNotIに対する部位の存在ウイルスGenBank登録番号EagISalINotIMVAY486084.1000RPVAB547190.1011PPRVHQ197753.1000CDVAB687721.2000NDVHQ008337.1000SENDAINC_001552.1011
しかしながら、これらの両方のタンパク質に対する遺伝子の各々が、単一のタンパク質をコードする。ゆえに、それらのタンパク質のコード領域に同義変異を作製することおよびこれらの制限酵素に対する部位を除去することが容易に可能であり得る。ゆえに、同じクローニングストラテジーを使用することにより、ヘルパープラスミドバリアント1またはヘルパープラスミドバリアント2と類似のヘルパープラスミド構築物にヌクレオカプシドおよび巨大タンパク質のコード領域を容易にクローニングすることができる。
【0048】
上記の結果と同様に、これらのウイルスのリンタンパク質のコード領域の解析から、酵素NheI、EagI、EcoRIおよびMluIに対する様々な数の部位の存在が明らかになった(表4)。これらの酵素に対する部位は、MV、CDVおよびNDVのリンタンパク質のコード領域には存在しなかった。
【0049】
【表4】
表3:様々なマイナス鎖RNAウイルスのPにおけるNheI、EagI、EcoRIおよびMluIに対する部位の存在。ウイルスGenBank登録番号NheIEagIEcoRIMluIMVAY486084.10000RPVAB547190.11130RPVZ30697.20000PPRVHQ197753.10010CDVAB687721.20000NDVHQ008337.10000SENDAINC_001552.10010
RPVのPタンパク質(AB547190)配列は、NheIおよびEcoRIによって消化されるが、これらの酵素の認識部位に対応する領域は、RPVの種々の株(例えば、GenbankにおけるZ30697.2)ごとに異なる。他方、PPRVのPタンパク質におけるEcoRI部位は、ほとんどのPPRV株において高度に保存されているとみられる。しかしながら、Pタンパク質のコード配列のこの領域は、P遺伝子転写物によってもコードされるCおよびVタンパク質のコード領域と重複していない。したがって、MV、CDV、RPV、PPRVおよびNDVに対するヘルパープラスミドを調製するために本発明者らが提案するストラテジーを使用することを可能にする、RPVおよびPPRVのPタンパク質に同義変異を導入することが可能であり得る。
【0050】
ゆえに、同じ制限酵素を使用することにより、ヘルパープラスミドバリアント1およびヘルパープラスミドバリアント2として記載されているものと等価なヘルパープラスミド構築物が、他のマイナス鎖RNAウイルスのヌクレオカプシド(NまたはNP)、リンタンパク質(P)および巨大(L)タンパク質から合成され得る。そのようなバリアントは、対応するウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ酵素を再構成するためおよびタンパク質またはRNAの発現のためにそれを利用するため、ならびにまた、新規ワクチンおよび/または治療薬として組換えウイルスを作製するための、ヘルパープラスミドとして有用であり得る。
【0051】
3.プラスミドによってコードされるRDRPによる組換えタンパク質の発現
第1に、クローニングプラスミドが、MVのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RDRP)に対する基質として働き得るRNA分子を発現する能力を、Martinら(2006)によって報告された系と類似の系を使用して評価した。簡潔には、Vero細胞を、製造者のプロトコルに従って、リポフェクタミン(Invitrogen)において、クローニングプラスミドならびにMV−EのN、PおよびLタンパク質を発現する個別のプラスミドによって1:1:1:0.5の比でトランスフェクトした。細胞を37℃、5%COにおいて48時間インキュベートし、顕微鏡観察によっておよびマイクロプレートリーダーを使用した蛍光測定によって緑色蛍光タンパク質(eGFP)の発現について評価した。
【0052】
その後の実験では、Vero細胞を、リポフェクタミン(Invitrogen)またはxfect(Clonetech)において、等割合の1つのクローニングプラスミド(pUC−P1P−レプリコン−P1TまたはpIRES−HH−レプリコン−HDVまたはpIRES−P1P−レプリコン−P1T)および1つのヘルパープラスミド(ヘルパーバリアント1またはヘルパーバリアント2)でトランスフェクトし、37℃、5%COにおいて48時間インキュベートし、顕微鏡観察および蛍光によって緑色蛍光タンパク質(eGFP)の発現について評価した。
【0053】
4.MV−Eのレスキュー
ヘルパープラスミドがcDNAからMV−Eをレスキューする能力を試験した。プラスミドpCDNA_MVゲノムを、Xfectを使用してVero細胞においてヘルパープラスミドバリアント1またはヘルパープラスミドバリアント2とコトランスフェクトし、37℃において一晩インキュベートした。トランスフェクション培地を新鮮培地に置き換え、細胞をさらに2日間インキュベートした。合胞体が細胞層の80%〜90%に及んだら、感染細胞を掻き取り、細胞および培地を凍結融解し、遠心分離して、細胞残屑を除去することによって、ウイルスを回収した。TCID50力価測定(titration)法を用いて、回収されたウイルスの力価測定を行った。簡潔には、Vero細胞を、96ウェルプレートに播種し(7500細胞/ウェル)、5%DCSを含むDMEMにおけるウイルスサンプルの1:10段階希釈物によって感染させた。37℃での7日間のインキュベーションの後、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、試験単位の50%を感染させたウイルス希釈を測定した。組織培養感染量として記載される50%エンドポイント(TCID50)をKaber法によって計算した。pCDNA_MVゲノム+ヘルパープラスミドからレスキューされたウイルスは、10〜10TCID50/mLの力価を有した。
【0054】
5.プラスミドによってコードされるRDRPを使用した断片化MV−Eのレスキュー
ヘルパープラスミドが、断片化された組換えMV−EをcDNAからレスキューする能力を試験した。Vero細胞を、Xfectを使用して、pCDNA_MVゲノム、eGFPをコードするクローニングプラスミドおよびHPV1またはHPV2を等割合でコトランスフェクトし、37℃で一晩インキュベートした。トランスフェクション培地を新鮮培地で置き換え、合胞体の形成について毎日観察しながらインキュベートを続けた。合胞体が細胞層の80%〜90%に及んだら、感染細胞を掻き取り、細胞および培地を凍結融解し、遠心分離して、細胞残屑を除去することによって、ウイルスを回収した。TCID50力価測定法を用いて、回収されたウイルスの力価測定を行った。簡潔には、Vero細胞を、96ウェルプレートに播種し(7500細胞/ウェル)、5%DCSを含むDMEMにおけるウイルスサンプルの1:10段階希釈物によって感染させた。37℃での7日間のインキュベーションの後、細胞をクリスタルバイオレットで染色し、試験単位の50%を感染させたウイルス希釈を測定した。組織培養感染量として記載される50%エンドポイント(TCID50)をKaber法によって計算した。最初にトランスフェクトされた細胞からレスキューされたウイルスは、10〜10TCID50/mLの力価を有した。最初にトランスフェクトされたvero細胞から回収されたウイルスに感染した細胞もまた、eGFPを発現したことから、eGFPをコードするミニレプリコンがMV−Eゲノムとともにビリオンに首尾よくパッケージングされ、それが新しい細胞に移入したことが示唆される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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