特許第6087911号(P6087911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087911
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】有機化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20170220BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170220BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170220BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20170220BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20170220BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20170220BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170220BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170220BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20170220BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C07D401/12CSP
   A61P43/00 111
   A61P35/00
   A61P11/00
   A61P39/02
   A61P31/18
   A61P35/04
   A61P25/28
   A61P25/00
   A61P25/34
   A61K31/454
【請求項の数】38
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-517231(P2014-517231)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公表番号】特表2014-517078(P2014-517078A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012043880
(87)【国際公開番号】WO2012178112
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年6月19日
(31)【優先権主張番号】PCT/US2011/041866
(32)【優先日】2011年6月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/501,207
(32)【優先日】2011年6月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA−CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】ポン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ヨウイ・ポン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・トメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ピー・ウェノグル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・チアン
【審査官】 小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/000821(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/037274(WO,A1)
【文献】 特表2006−525355(JP,A)
【文献】 特表2011−514906(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0179186(US,A1)
【文献】 特表2004−526788(JP,A)
【文献】 Y. Peng et al,Discovery of novel a7 nicotinic receptor antagonists,Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,2010年,20,4825-4830
【文献】 Rodriguez Loaiza, Pilar; Loeber, Stefan; Huebner, Harald; Gmeiner, Peter,Click Chemistry on Solid Phase: Parallel Synthesis of N-Benzyltriazole Carboxamides as Super-Potent G-Protein Coupled Receptor Ligands,Journal of Combinatorial Chemistry,2006年,8(2),252-261
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 5月29日,RN:1302490-94-3
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 5月24日,RN:1299716-67-8
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 5月18日,RN:1296508-55-8
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 5月 5日,RN:1290550-37-6
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 5月 5日,RN:1290321-74-2
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 5月 5日,RN:1290321-69-5
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 5月 3日,RN:1289322-69-5
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 5月 2日,RN:1288944-52-4
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 4月29日,RN:1287554-44-2
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 4月13日,RN:1279270-42-6
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 4月12日,RN:1279078-00-0
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 4月10日,RN:1277798-76-1
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 4月10日,RN:1277737-34-4
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 4月10日,RN:1277736-60-3
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 4月10日,RN:1277529-93-7
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 1月28日,RN:1260998-72-8
【文献】 REGISTRY [STN online],2010年 9月17日,RN:1241973-12-5
【文献】 REGISTRY [STN online],2010年 3月25日,RN:1214456-33-3
【文献】 REGISTRY [STN online],2010年 2月22日,RN:1207057-14-4
【文献】 REGISTRY [STN online],2010年 2月22日,RN:1207020-03-8
【文献】 REGISTRY [STN online],2009年 7月30日,RN:1170376-73-4
【文献】 REGISTRY [STN online],2009年 4月15日,RN:1135071-68-9
【文献】 REGISTRY [STN online],2008年11月 2日,RN:1069822-46-3
【文献】 REGISTRY [STN online],2008年 9月26日,RN:1053148-42-7
【文献】 REGISTRY [STN online],2008年 6月 1日,RN:1024146-34-6
【文献】 REGISTRY [STN online],2008年 3月13日,RN:1007754-83-7
【文献】 REGISTRY [STN online],2007年10月26日,RN:951602-39-4
【文献】 R. H. Henchman et al,Ligand-induced conformational change in the a7 nicotinic receptor ligand binding domain,Biophysical Journal,2005年,88(4),2564-2576
【文献】 M. Pohanka,Alpha7 nicotinic acetylcholine receptor is a target in pharmacology and toxicology,International Journal of Molecular Sciences,2012年,13,2219-2238
【文献】 REGISTRY [STN online],2012年 2月28日,RN:1357976-51-2
【文献】 REGISTRY [STN online],2011年 9月11日,RN:1330886-72-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,A61K
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IV
【化1】
式IV
[式中、RおよびRは、独立して、ハロゲン、−SONH−COOHまたはHであり;
式中、RおよびRである]
の化合物またはその薬学的に許容される塩
【請求項2】
およびRが、独立して、Cl、−SONH、−COOHまたはHである、請求項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
【請求項3】
および/またはRが、パラ−(4−)位にある、請求項または請求項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
【請求項4】
式IVの化合物が、化合物17
【化2】
または化合物18
【化3】
である、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
請求項ないし請求項のいずれかに記載の化合物の第四アンモニウム塩
【請求項6】
ニコチン性アセチルコリン受容体に、高い親和性で結合する、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
【請求項7】
ニコチン性アセチルコリン受容体に、10nM未満のK結合親和性で結合する、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
【請求項8】
ニコチン性アセチルコリン受容体に、1nM未満のK結合親和性で結合する、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩
【請求項9】
薬学的に許容される希釈剤または担体と共に、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項10】
求項1ないし請求項のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、アセチルコリン受容体経路の活性化を特徴とする疾患または障害の処置または予防のための医薬組成物。
【請求項11】
該疾患または障害が、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、有機リン神経ガス中毒、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染、後天性免疫不全症候群(AIDS)、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、胸膜中皮腫、固形腫瘍の癌、認知障害、アルツハイマー病、精神病およびそれらの組合せからなる群から選択されるか、または、処置が認知の改善もしくは禁煙に向けたものである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
該疾患または障害が小細胞肺癌である、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
該疾患または障害が非小細胞肺癌である、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
該疾患または障害が有機リン神経ガス中毒である、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
該疾患または障害がヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染である、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
該疾患または障害が後天性免疫不全症候群(AIDS)の結果である、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項17】
該疾患または障害が転移性癌細胞を特徴とする、請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
該疾患または障害が良性癌細胞を特徴とする、請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
該疾患または障害が、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌および胸膜中皮腫からなる疾患または障害の群から選択され得る癌細胞の存在を特徴とする、請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項20】
該疾患または障害が固形腫瘍の癌である、請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項21】
癌に罹患しているか、発症するリスクにある患者に投与するための、請求項10ないし請求項20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
求項1ないし請求項のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩が、カペシタビン、トラスツマブ、ペルツズマブ、シスプラチンおよびイリノテカンからなる群から選択される癌処置剤と同時に投与される、請求項10ないし請求項21のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項23】
該疾患または障害が、認知障害および/または認知障害に関連する疾患または障害である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項24】
認知障害が、聴覚処理および/または注意の障害、空間構成の障害、言語学習の障害、意味および/または言語記憶の障害、および/または、実行機能の障害である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
認知障害に関連する疾患または障害が軽度認知障害である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
求項1ないし請求項のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩が、認知障害の症状の少なくとも1つの処置に使用される、請求項10、請求項11、請求項23、請求項24または請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
認知障害の症状が、聴覚処理および/または注意の障害、空間構成の障害、言語学習の障害、意味および/または言語記憶の障害および/または実行機能の障害である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
認疾患または障害がアルツハイマー病である、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項29】
アルツハイマー病の少なくとも1つの症状を処置するための、請求項10、請求項11または請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
アルツハイマー病の症状が、認知障害である、請求項11、請求項28または請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
アルツハイマー病の症状が、聴覚処理および/または注意の障害、空間構成の障害、言語学習の障害、意味および/または言語記憶の障害、および/または、実行機能の障害である、請求項11、請求項28、請求項29または請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
精神病を処置するための、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項33】
精神病が、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害、躁病または双極性障害におけるものである、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
精神病の少なくとも1つの症状を処置するための、請求項10、請求項11、請求項32または請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
精神病の症状が認知障害である、請求項11、請求項32、請求項33または請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
認知障害が、聴覚処理および/または注意の障害、空間構成の障害、言語学習の障害、意味および/または言語記憶の障害、および/または、実行機能の障害である、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
処置が患者の禁煙に向けたものである、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項38】
認知を改善するための、請求項10または請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願:
本願は、2011年6月24日に出願されたPCT/US2011/041866および2011年6月25日に出願された米国仮出願番号61/501,207に優先権を主張し、各々の内容の全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
技術分野:
分野は、概して、ニコチン受容体アンタゴニストとして作用する有機化合物に関する。分野は、さらに、小細胞性および非小細胞肺癌、HIV、認知障害、アルツハイマー病、禁煙、統合失調症および様々な神経毒への哺乳動物の暴露の予防および/または処置として使用するための、ニコチン受容体アンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景:
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、五量体のリガンド開口型イオンチャネルのCysループサブファミリーに属し、筋肉型および神経型サブタイプに分類できる。神経型nAChRは、様々な配置の12個のサブユニット(α2−α10およびβ2−β4)を含み、一方、筋肉型は、α1γα1β1δ(cは、成体ではeにより置き換えられる)の単一の配置の4個のサブユニットからなる。(Lukas, R. J. et al., Pharmacol. Rev. 1999, 51, 397)2種の主要な神経受容体a4b2およびa7が、中枢神経系で同定された。(Flores, C. et al., Mol. Pharmacol. 1992, 41, 31; Lindstrom J. et al., Prog. Brain Res. 1996, 109, 125)神経型α7nAChRは、アルツハイマー病、統合失調症、不安および癲癇を含む幅広い神経変性および精神疾患の可能性のある治療標的として提唱されてきた。α7nAChRの様々な選択的部分および完全アゴニストが、潜在的な治療剤として開発された。(Jensen A. et al., Prog., Brain Res. 1996)いくつかのα7nAChR選択的アゴニスト(例えば、TC−5619およびMEM−3454)は、アルツハイマー病および統合失調症の臨床試験へ進んだ。(Arneric, S.P. et al., Biochem. Pharmacol. 2007, 74, 1092; Mazurov A. et al., Curr. Med. Chem. 2006, 13, 1567; Olincy A., Arch. Gen. Psychiatry 2006, 63, 630)選択的α7nAChRアゴニストを同定するために多大な努力がなされたが、α7選択的アンタゴニストの開発は、比較的限定的である。いくつかの研究は、ある種の天然由来の化合物が、α7選択的アンタゴニストとして導入され得ると報告した。例えば、アマガサヘビ(Bungarus multicinctus)由来ペプチド毒素α−ブンガロトキシン(α−BTX)およびデルフィニウム属の種子で単離された非ペプチド毒素メチルリカコニチン(MLA)は、2つの頻繁に使用されるα7選択的アンタゴニストである。(Chang, C. C., et al. J. Biomed. Sci. 1999, 6, 368; Davies, A. R., et al. Neuropharmacology 1999, 38, 679)
【0004】
残念ながら、α−BTXは筋肉型nAChRの強力なアンタゴニストでもあり、両化合物はnAChRサブタイプα9およびα9a10も阻害する。(Jensen, A. A., et. al. J. Med. Chem. 2005, 48, 4705)それでもやはり、サブタイプ選択的アンタゴニストは、生理的および病態生理的過程においてα7nAChRにより果たされる役割を定義する手段として、本来的な価値を有し得る。
【0005】
実際に、そして、これらの同じ路線に沿って、ニコチン性アセチルコリン受容体は、無数の様々な疾患状態の潜在的な薬物の標的として、そして、テロ対策を目的とする潜在的な手段として使用するために、意味付けられてきた。
【0006】
例えば、様々な疾患状態に関して、nAChRは、かなり以前から、受容体の標的化と小細胞肺癌(SCLC)の処置の間の潜在的なつながりを見出そうとして、研究されてきた。(Sciamanna, J. Neurochem. 69, 2302-2311 1997)。SCLCは、新たに診断される肺癌の少数、概算で4分の1を占める神経内分泌腫瘍であるが、非常に致命的であり、患者は、一般的に、診断されてからわずか1年以内に死亡する。従って、SCLCの疾患状態を緩和するか、または完全な除去を達成するための、患者に投与できる処置の開発または予防の手段に対し、直接関連する要望がある。
【0007】
この付随する要望にも拘わらず、あるとしても少数しか、SCLCに利用できる特異的処置はない。しかしながら、この分野で利用できる最新のデータは、2つのタイプのnAChRが、NAおよびCAの流入を調節できることを示す。そのようなカルシウムおよびナトリウムの流入の調節は、神経内分泌腫瘍の処置において、生物学的および治療的な派生効果を有する。従って、そのようなチャネルを効果的かつ特異的に標的化できる利用可能な化合物の不足に照らして、依然として、そのような受容体を標的化する能力を有する合理性に基づく化合物への明白な要望がある。
【0008】
SCLCを標的化するためのより有効な手段を開発することに加えて、より幅広いジレンマである非小細胞肺癌(NSCLC)の処置に使用し得る化合物への付随する要望もある。これに関して、中皮腫および非小細胞肺癌が機能的nAChRを発現することが観察された。(Paleari, et al. Int. J. Cancer: 125, 199-211 2009)従って、ニコチンが、Aktシグナル伝達などの細胞増殖経路の活性化により、または、他の自然の細胞のアポトーシス機構を阻害することにより、肺癌の病因に貢献する何らかの未知の役割を果たし得るという推測が今までにある。(前出)しかしながら、いくつかの研究は、ニコチンが、そのような細胞において増殖性応答を活性化することにより、NSCLC腫瘍細胞で発現されるnAChRに作用することを示した。(前出)
【0009】
次に、疾患の病理は明確に異なるにも拘わらず、癌およびAIDSなどの疾患状態は、nAChRを介する共通の関連を有することが発見された。しかしながら、小細胞および非小細胞肺癌の両方の処置を開発する必要性に加えて、これも世界中で公衆衛生に対する非常に深刻な脅威を提起する疾患状態であるHIVおよびAIDSと効果的に戦う能力を有する化合物または処置メカニズムへの要望もある。実際に、4000万人を超える人々が世界中でHIV−1に感染しており、推定で14,000人の新たな感染が毎日生じている。AIDSの最初の症例が1981年に同定されて以来、2500万人を超える人々の死亡が、HIV/AIDSによるものであった。
【0010】
上述の通り、アルファ−7nAChRは肺癌細胞において見出され、天然の分子またはタバコの煙に含まれる化合物による活性化が癌の増殖を促進すると示された。この同じアルファ−7nAChRが、AIDSの免疫細胞において上方調節されていることが見出された。これは、AIDSウイルスタンパク質によるマクロファージ中のアルファ−7受容体の過剰な活性化が、成熟前の細胞の死亡を引き起こし得ることを示唆する。従って、かつ、最低限でも、nAChRに対するアンタゴニストは、癌、AIDSとnAChRの活性の関連を活用し続け、かくしてこれらの疾患状態の処置を提供するために、必要とされる。
【0011】
加えて、ニコチン性アセチルコリン受容体は、神経変性疾患および認知疾患または障害において役割を果たすことも示唆されてきた。例えば、ニコチン性アセチルコリン受容体は、アルツハイマー病などの疾患との関わりを示唆されてきた。Buckingham et al., Pharmacological Reviews March 2009 vol. 61 no, 1 39-61。さらに、α7nAChRは、アルツハイマー病の病因および/または病理に、ある種の役割を果たすと特異的に同定された。Jones IW, et al., J Mol Neurosci. 2006;30 (1-2):83-4。
【0012】
ニコチン性アセチルコリン受容体は、ある種の神経変性および認知障害においても役割を果たすと示唆されてきた。アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、アルツハイマー病および統合失調症に伴う認知機能不全の処置の対象として考えられてきた。J Pharmacol Exp Ther. 2009 May;329(2):459-68. Epub 2009 Feb 17。
【0013】
しかしながら、これらの数々の異種の疾患および障害への関連が示唆されるにも拘わらず、ニコチン性アセチルコリン受容体に付随する問題がある。例えば、ニコチン性アセチルコリン受容体は、複雑かつ多様な受容体サブタイプのセットである。加えて、長期使用は、受容体の脱感作を導き得る。Papke, et al., Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, May 2009 vol. 329 no. 2 791-807。
【0014】
これらの後者の要素が、ニコチン性アセチルコリン受容体を用いる研究、および、短期および長期の両方で有効な化合物の開発を困難にしてきた。
【発明の概要】
【0015】
発明の要旨:
本発明の一態様は、本明細書で開示する新規ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストが、多くの臨床的、医学的または医薬的側面(facet)において使用し得ることである。
【0016】
本明細書で開示する化合物および式が新規のアルファ7(α7)ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストとして作用し得ることが、本発明により企図されている。
【0017】
本発明の目的は、本明細書で開示するニコチン受容体アンタゴニストが可逆的な結合特性を有すると確信されることである。さらに、本発明の化合物は、α7nAChRに選択的である。例えば、本発明の化合物は、α4β2nAChR神経筋受容体に結合しないと確信される。
【0018】
本発明のある態様では、本明細書で開示する新規ニコチン受容体は、先行技術で過去に開示または公知とされたニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストより親油性が低く、極性が高い。当分野で知られている他のニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストと比較して、そして、いかなる理論にも縛られずに、本明細書で開示するニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストの極性置換基は、これらの化合物を血液脳関門を通過しにくいものにし、かくして、有害な中枢神経系の副作用を持ちにくくする。
【0019】
さらに、本発明の新規ニコチン受容体アンタゴニストは、末梢神経系において、強力なニコチン受容体アンタゴニストとして活性であると企図されている。本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストの多くの利点の中で、1つの利点は、該アンタゴニストが末梢神経系でそれらの強力な活性を保持し、同時に中枢神経系の毒性を欠くことである。
【0020】
例えば、本発明のニコチン受容体アンタゴニストを使用して、非小細胞肺癌細胞の増殖サイクルを阻害し得ることが企図されている。
【0021】
本発明のニコチン受容体アンタゴニストは、多くの潜在的な神経毒への暴露または暴露可能性を処置するための対抗手段として使用されることも企図されている。AChRは、アセチルコリン(ACh)により活性化され、それはアセチルコリンエステラーゼ(AChE)によりコリンに加水分解される。DFPおよびサリンのような有機リン神経ガスによりAChEが不可逆的に阻害されると、末梢および中枢のムスカリン性AChR(mAChR)およびnAChRでのAChの無制御な蓄積が、コリン作動性症候群を引き起こす。この症候群は、発汗、瞳孔の収縮、痙攣、頻脈および最終的な死亡を特徴とする。
【0022】
現在認知されている神経ガス中毒の処置は、AChEのオキシム再賦活薬(例えば、プラリドキシム)と合わせて使用される、mAChRアンタゴニストのアトロピンである。しかしながら、この処置レジメンはニコチン受容体を直接標的化しないが、mAChRおよびnAChRの両方が神経ガスの毒性に関与する。
【0023】
本発明の新規ニコチン受容体アンタゴニストは、DFPに誘導される発作様の挙動に対する神経保護を提供し得、従って、有機リン神経ガス中毒の処置に有用であり得ると企図されている。さらに、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、正常な神経型α7nAChRの生理学的役割と疾患状態のものとを識別する手段を提供し、有機リン神経ガス中毒の潜在的な治療を発見するために使用される診断手段として使用され得ることも企図されている。
【0024】
しかしながら、いかなる理論にも縛られずに、本発明の化合物は選択的α7nAChRアンタゴニストである一方で、このことは化合物の活性が全体的に抗コリン作動性であることを意味しないとも企図される。実際に、そして、再びいかなる理論にも縛られずに、これらの選択的アンタゴニストが、特に低用量で、おそらく認知を増強すると理論づけされる。理論により縛られずに、低用量または長期間では、本明細書で開示する化合物は、アセチルコリンに対する脱感作を低減させ得、それによりおそらく内在性アセチルコリンの効果を増強すると仮定される。
【0025】
本発明のまた他の態様では、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、単独で、または他の医薬と組み合わせて、アルツハイマー病の処置に使用し得る。本発明は、アルツハイマー病の症状も処置し得ると企図されている。ある態様では、本発明を使用して、アルツハイマー病の少なくとも1つの症状を処置し得ると企図されている。
【0026】
本明細書で開示する化合物は、パーキンソン病および/またはパーキンソン病の症状を処置するのに使用し得ることが、本発明により企図されている。認知の減少または低下は、パーキンソン病の症状であり得るか、または、その症状の軽減またはパーキンソン病の処置のために取られた薬物療法の症状であり得ることが企図されている。
【0027】
本明細書で開示するニコチン受容体アンタゴニストは、少なくとも1つのアルツハイマー病の症状を処置し得、ここで、アルツハイマー病の症状は認知障害に関連することが、本発明により企図されている。
【0028】
本発明の他の態様では、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、オピオイド、コカイン、ニコチンおよびメタンフェタミンの使用の処置または再発の防止に使用し得ることが企図されている。例えば、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、禁煙に向けた処置に使用し得ると企図されている。
【0029】
また他の態様では、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、認知および/または認知関連疾患または障害の処置および/または改善のために使用し得ると企図されている。
【0030】
さらに、本発明の化合物は、認知症の処置に使用し得ると企図されている。ある実施態様では、本発明の化合物は、精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害、躁病または双極性障害におけるものの処置に使用し得る。
【0031】
本発明の化合物は、認知障害の処置に使用し得、ここで、認知障害は、精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害、躁病または双極性障害におけるものの結果および/または症状であるとも企図されている。
【0032】
本発明のまた他の態様では、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、敗血症を防止するために、患者に対する保護的効果を有するように使用し得る。
【0033】
同様に、本発明のニコチン受容体アンタゴニストは、HIVおよび/またはAIDSの予防または処置の手段として使用し得るとも企図されている。好ましい態様では、新規α7nAChR選択的アンタゴニストは、有効な治療的用量で投与され、ある程度の総体症状の減少または疾患状態の総合的な除去を引き起こす。
【0034】
本発明の他の態様では、さらに、新規α7nAChR選択的アンタゴニストは、研究または診断手段として使用し得ると企図されている。さらに、新規α7nAChR選択的アンタゴニストは、神経組織でのシグナル伝達の解明における研究手段として使用し得ると企図されている。また、新規アルファ7nAChR選択的アンタゴニストは、非神経組織でのシグナル伝達経路の解明における研究手段として、同様に使用し得ると企図されている。
【0035】
本発明の他の態様では、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、患者における創傷治癒の改善に使用し得ると企図されている。本発明により、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、糖尿病における創傷治癒の改善に使用し得ると企図されている。
【0036】
本発明のまた他の態様では、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、敗血症を防止するために、患者に対する保護的効果を有するように使用し得る。
【0037】
本発明の他の態様では、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、オピオイド、コカイン、ニコチンおよびメタンフェタミンの使用の処置または再発の防止に使用し得ると企図されている。例えば、本明細書で開示する新規ニコチン受容体アンタゴニストは、禁煙へ向けた処置に使用し得ると企図されている。
【0038】
本発明の化合物は、遊離形または塩形で、例えば酸付加塩として存在し得る。本明細書では、特記しない限り、化合物または式または本発明の化合物などの用語は、任意の形態の化合物、例えば、遊離形または酸付加塩形、または、化合物が酸の置換基を含む場合、塩基付加塩形を包含すると理解される。または、化合物が塩基の置換基を含む場合、酸付加塩形。本明細書で開示する化合物は、医薬としての使用を意図されており、従って、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬的使用に適さない塩は、例えば、本発明の遊離化合物、式または化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩の単離または精製に有用であり得、従って、これらも包含される。
【0039】
本明細書で開示する化合物は、患者の認知の改善に使用し得、ここで、低下または減少した認知は、一次的な病気の処置に使用した薬物療法(即ち、統合失調症の処置に使用した薬物療法)の結果または副作用であることが企図されている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
詳細な説明で提供される例示は、単なる例示であり、いかなる請求項の構築または解釈においても、特許請求の範囲を限定するために使用すべきではない。
【0041】
本発明は、遊離または薬学的に許容される塩形態の式I:
【化1】
式I
[式中、
およびRは、独立して、ハロゲン(例えばCl)、−SONHまたは−COOHであり、例えば、パラ−(4−)位にあり、または、Hであり(即ち、フェニルは非置換である);
YおよびZは、独立して結合または−CH−であり;
Xは、NまたはCRであり;
、RおよびRは、独立して、H、アリールまたは低級(例えばC1−4)アルキル、例えばメチル、エチルまたはプロピルであり;
は、低級アルキル、例えば、メチルであるか、または、Rは存在しない]
のニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを企図し、
但し、Rが低級アルキルであるとき、化合物は第四アンモニウム塩を形成し、付随する薬学的に許容される陰イオン、例えば、ハロゲン化物、例えば、塩化物、臭化物またはヨウ化物が存在する。
【0042】
例えば、本発明は、以下の式1の化合物を提供する:
1.1. 式中、RがHである、式Iの化合物。
1.2. 式中、Rが−SONHである、式Iの化合物。
1.3. 式中、Rが−COOHである、式Iの化合物。
1.4. 式中、Rが−SONHである、先行する範囲のいずれかの化合物。
1.5. 式中、RがHである、式Iまたは1.1、1.2または1.3の化合物。
1.6. 式中、Rが−COOHである、式Iまたは1.1、1.2または1.3の化合物。
1.7. 式中、XがNであり、Yが1,2,3−トリアゾール環の2−窒素に結合している、先行する範囲のいずれかの化合物。
1.8. XがNであり、Yが1,2,3−トリアゾール環の1−窒素に結合している、式Iまたは1.1−1.6のいずれかの化合物。
1.9. XがCであり、Yが1,2,3−トリアゾール環の2−窒素に結合している、式Iまたは1.1−1.6のいずれかの化合物。
1.10. XがCであり、Yが1,2,3−トリアゾール環の1−窒素に結合している、式Iまたは1.1−1.6のいずれかの化合物。
1.11. 式中、RがHである、式Iまたは先行する範囲のいずれかの化合物。
1.12. 式中、Rがアリールである、式Iまたは1.1−1.10のいずれかの化合物。
1.13. 式中、Rがフェニルまたはトリルである、式Iまたは1.1−1.10、1.12のいずれかの化合物。
1.14. 式中、Rがフェニルである、式Iまたは1.1−1.10、1.12−1.13のいずれかの化合物。
1.15. 式中、Rがトリルである、式Iまたは1.1−1.10または1.12−1.13のいずれかの化合物。
1.16. 式中、Rが低級(例えばC1−4)アルキルである、式Iまたは1.1−1.1.10のいずれかの化合物。
1.17. 式中、Rがメチル、エチルまたはプロピルである、式Iまたは1.1−1.1.10、1.16のいずれかの化合物。
1.18. 式中、Rが存在しない、式Iまたは先行する範囲のいずれかの化合物。
1.19. 式中、Rが低級アルキルである、式Iまたは1.1−1.1.17のいずれかの化合物。
1.20. 式中、Rがメチルである、式Iまたは1.1−1.1.17または1.19のいずれかの化合物。
1.21. 式中、RがHである、式Iまたは先行する範囲のいずれかの化合物。
1.22. 式中、Rがアリールである、式Iまたは1.1−1.20のいずれかの化合物。
1.23. 式中、Rがフェニルまたはトリルである、式Iまたは1.1−1.20または1.22のいずれかの化合物。
1.24. 式中、Rがフェニルである、式Iまたは1.1−1.20または1.22−1.23のいずれかの化合物。
1.25. 式中、Rがトリルである、式Iまたは1.1−1.20のいずれかの化合物。
1.26. 式中、Rが低級(例えばC1−4)アルキルである、式Iまたは1.1−1.20のいずれかの化合物。
1.27. 式中、Rがメチル、エチルまたはプロピルである、式Iまたは1.1−1.20のいずれかの化合物。
1.28. 式中、Rがメチルである、式Iまたは1.1−20または1.27のいずれかの化合物。
1.29. 式中、Rがエチルである、式Iまたは1.1−20または1.27のいずれかの化合物。
1.30. 式中、Rがプロピルである、式Iまたは1.1−20または1.27のいずれかの化合物。
1.31. 式中、RがHである、式Iまたは1.1−1.30のいずれかの化合物。
1.32. 式中、Rがアリールである、式Iまたは1.1−1.30の化合物。
1.33. 式中、Rがフェニルまたはトリルである、式Iまたは1.1−1.30または1.32のいずれかの化合物。
1.34. 式中、Rがフェニルである、式Iまたは1.1−1.30または1.32−1.33のいずれかの化合物。
1.35. Rがトリルである、式Iまたは1.1−1.30または1.32−1.33のいずれかの化合物。
1.36. Rが低級(例えばC1−4)アルキルである、式Iまたは1.1−1.35のいずれかの化合物。
1.37. Rがメチル、エチルまたはプロピルである、式Iまたは1.1−1.36のいずれかの化合物。
1.38. Rがメチルである、式Iまたは1.1−1.37のいずれかの化合物。
1.39. Rがエチルである、式Iまたは1.1−1.37のいずれかの化合物。
1.40. Rがプロピルである、式Iまたは1.1−1.37のいずれかの化合物。
1.41. Yがメチレンである、先行する範囲のいずれか。
1.42. Zがメチレンである、先行する範囲のいずれか。
【0043】
例えば、本発明は、式中、Rがハロゲンである式Iまたは1.1−1.42の化合物を提供する。
【0044】
例えば、本発明は、式中、Rが塩素である式Iまたは1.1−1.42の化合物を提供する。
【0045】
例えば、本発明は、式中、Rがフッ素である式Iまたは1.1−1.42の化合物を提供する。
【0046】
例えば、本発明は、式中、Rがハロゲンである式Iまたは1.1−1.42または[0042]−[0044]のいずれかの化合物を提供する。
【0047】
例えば、本発明は、式中、Rが塩素である式Iまたは1.1−1.42または[0042]−[0044]のいずれかの化合物を提供する。
【0048】
例えば、本発明は、式中、Rがフッ素である式Iまたは1.1−1.42または[0042]−[0044]のいずれかの化合物を提供する。
【0049】
例えば、式Iの化合物は、ジアゾール化合物、例えば、化合物1−6を含む:
化合物1
【化2】

化合物2
【化3】

化合物3
【化4】

化合物4
【化5】

化合物5
【化6】

化合物6
【化7】
【0050】
式Iの化合物は、トリアゾール化合物、例えば、化合物7−18も含む:
化合物7
【化8】

化合物8
【化9】

化合物9
【化10】

化合物10
【化11】

化合物11
【化12】

化合物12
【化13】

化合物13
【化14】

化合物14
【化15】

化合物15
【化16】

化合物16
【化17】

化合物17
【化18】
、および、
化合物18
【化19】
【0051】
例えば、式Iの化合物は、遊離または、第四アンモニウム塩形態、例えば、メチルハライドを含む薬学的に許容される酸または塩基付加塩形態の式IIの化合物を含む:
【化20】
式II
[式中、Rはハロゲン(例えばClまたはF)、−SONHまたは−COOHである]。
【0052】
例えば、本発明は、以下の式IIの化合物を提供する:
1.43式中、Rがハロゲンである、式II。
1.44式中、RがClである、1.34の式II。
1.45式中、RがClである、式IIまたは1.34。
1.46式中、Rが−SONHである、式II。
1.47式中、Rが−COOHである、式II。
【0053】
本発明は、遊離または塩形態の、式IIIのニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを企図する:
【化21】
式III
[式中、
およびRは、独立して、(例えばC1−4)アルキル、アリールアルキル(例えばベンジル)、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはヘテロアリール(ハロゲン(例えばCl)、−SONHまたは−COOHで置換されていることもある)であり;
式中、R、RおよびRは、独立して、H、低級(例えばC1−4)アルキルまたはアリール(例えばフェニル)である]。
【0054】
例えば、本発明は、以下の式IIIの化合物を提供する:
1.48. 式中、Rがアリールアルキルである、式IIIの化合物。
1.49. 式中、Rがベンジルである、式IIIの化合物。
1.50. 式中、Rがアリールアルキルである、先行する範囲のいずれかの化合物。
1.51. 式中、Rがベンジルである、先行する範囲のいずれかの化合物。
1.52. 式中、RがHである、先行する範囲のいずれかの化合物。
1.53. 式中、Rがアリールである、式IIIまたは1.48−1.51のいずれかの化合物。
1.54. 式中、Rがフェニルまたはトリルである、式IIIまたは1.48−1.51または1.53のいずれかの化合物。
1.55. 式中、Rがフェニルである、式IIIまたは1.48−1.51または1.53のいずれかの化合物。
1.56. 式中、Rがトリルである、式IIIまたは1.48−1.51または1.53のいずれかの化合物。
1.57. 式中、Rが低級(例えばC1−4)アルキルである、式IIIまたは1.48−1.51のいずれかの化合物。
1.58. 式中、Rが、メチル、エチルまたはプロピルである、式IIIまたは1.57のいずれかの化合物。
1.59. 式中、Rがメチルである、式IIIまたは1.48−1.51または1.57のいずれかの化合物。
1.60. 式中、Rがエチルである、式IIIまたは1.48−1.51または1.57のいずれかの化合物。
1.61. 式中、Rがプロピルである、式IIIまたは1.48−1.51または1.57のいずれかの化合物。
1.62. 式中、RがHである、式IIIまたは先行する範囲のいずれかの化合物。
1.63. 式中、Rがアリールである、式IIIまたは1.48−1.61のいずれかの化合物。
1.64. 式中、Rがフェニルまたはトリルである、式IIIまたは1.48−1.61または1.63の化合物。
1.65. 式中、Rがフェニルである、式IIIまたは1.48−1.61または1.63の化合物。
1.66. 式中、Rがトリルである、式IIIまたは1.48−1.61または1.63の化合物。
1.67. 式中、Rが低級(例えばC1−4)アルキルである、式IIIまたは1.48−1.61の化合物。
1.68. 式中、Rが、メチル、エチルまたはプロピルである、式IIIまたは1.48−1.62または1.67の化合物。
1.69. 式中、Rがメチルである、式IIIまたは1.48−1.62または1.68の化合物。
1.70. 式中、Rがエチルである、式IIIまたは1.48−1.62または1.68の化合物。
1.71. 式中、Rがプロピルである、式IIIまたは1.48−1.62または1.68の化合物。
1.72. 式中、RがHである、式IIIまたは先行する範囲の化合物。
1.73. 式中、Rがアリールである、式IIIまたは1.48−1.71の化合物。
1.74. 式中、Rがフェニルまたはトリルである、式IIIまたは1.48−1.71または1.73の化合物。
1.75. 式中、Rがフェニルである、式IIIまたは1.48−1.71または1.73の化合物。
1.76. 式中、Rがトリルである、式IIIまたは1.48−1.71または1.73の化合物。
1.77. 式中、Rが低級(例えばC1−4)アルキルである、式IIIまたは1.48−1.71または1.73の化合物。
1.78. 式中、Rが、メチル、エチルまたはプロピルである、式IIIまたは1.48−1.71の化合物。
1.79. 式中、Rがメチルである、式IIIまたは1.48−1.71または1.78の化合物。
1.80. 式中、Rがエチルである、式IIIまたは1.48−1.71または1.78の化合物。
1.81. 式中、Rがプロピルである、式IIIまたは1.48−1.71または1.78の化合物。
1.82. 式中、Rがハロゲンで置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.81の化合物。
1.83. 式中、Rが、塩素で置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.82の化合物。
1.84. 式中、Rがフッ素で置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.82のいずれかの化合物。
1.85. 式中、Rが、ハロゲンで置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.84のいずれかの化合物。
1.86. 式中、Rが、塩素で置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.84のいずれかの化合物。
1.87. 式中、Rが、塩素で置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.84のいずれかの化合物。
1.88. 式中、Rが、−SONHで置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.81のいずれかの化合物。
1.89. 式中、Rが−SONHで置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.81または1.88のいずれかの化合物。
1.90. 式中、Rが−COOHで置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.81のいずれかの化合物。
1.91. 式中、Rが−COOHで置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.81または1.90のいずれかの化合物。
1.92. 式中、Rが、ハロゲンで置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.81の化合物。
1.93. 式中、Rが、塩素で置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.82の化合物。
1.94. 式中、Rが、フッ素で置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.82のいずれかの化合物。
1.95. 式中、Rが、ハロゲンで置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.84のいずれかの化合物。
1.96. 式中、Rが、塩素で置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.84のいずれかの化合物。
1.97. 式中、Rが、フッ素で置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.84のいずれかの化合物。
1.98. 式中、Rが、−SONHで置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.81のいずれかの化合物。
1.99. 式中、Rが、−SONHで置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.81または1.88のいずれかの化合物。
1.100. 式中、Rが、−COOHで置換されていることもあるアリールアルキルである、式IIIまたは1.48−1.81のいずれかの化合物。
1.101. 式中、Rが、−COOHで置換されていることもあるベンジルである、式IIIまたは1.48−1.81または1.90のいずれかの化合物。
【0055】
例えば、式IIIの化合物は、遊離または、第四アンモニウム塩形態、例えば、メチルハライドを含む薬学的に許容される酸または塩基付加塩形態の式
【化22】
式IV
[式中、RおよびRは、独立して、H(即ちフェニルは非置換である)、ハロゲン(例えばCl)、(例えばC1−4)アルキル、SONH、COOR(例えばCOOH)、COR、CONR、CONR、SR、SOR、SO
ここで、RおよびRは、独立して、H、(例えばC1−4)アルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり;
式中、RおよびRは、独立して、H、低級(例えばC1−4)アルキルまたはアリール(例えばフェニル)である]
の化合物を含む。
【0056】
例えば、本発明は、以下の式IIIの化合物を提供する:
1.102. 式中、RがHである、式IVの化合物。
1.103. 式中、Rが−SONHである、式IVの化合物。
1.104. 式中、Rが−COOHである、式IVの化合物。
1.105. 式中、Rがハロゲンである、式IVの化合物。
1.106. 式中、RがClである、式IVの化合物。
1.107. 式中、RがFである、式IVの化合物。
1.108. 式中、RがHである、式IVまたは1.102−1.07の化合物。
1.109. 式中、Rが−SONHである、式IVまたは1.102−1.07の化合物。
1.110. 式中、Rが−COOHである、式IVまたは1.102−1.07の化合物。
1.111. 式中、Rがハロゲンである、式IVまたは1.102−1.07の化合物。
1.112. 式中、RがClである、式IVまたは1.102−1.07の化合物。
1.113. 式中、RがFである、式IVまたは1.102−1.07の化合物。
1.114. 式中、Rがアルキル(例えばC1−4)である、式IVまたは先行する範囲のいずれかの化合物。
1.115. 式中、Rがメチルである、式IVまたは先行する範囲のいずれかの化合物。
1.116. 式中、Rがアルキル(例えばC1−4)である、式IVまたは先行する範囲のいずれかの化合物。
1.117. 式中、Rがメチルである、式IVまたは先行する範囲のいずれかの化合物。
1.118. 式中、RがHである、式IVまたは1.102−1.117の化合物。
1.119. 式中、Rがアリールである、式IVまたは1.102−1.117の化合物。
1.120. 式中、Rがフェニルまたはトリルである、式IVまたは1.102−1.117または1.119の化合物。
1.121. 式中、Rがフェニルである、式IVまたは1.102−1.117、1.119または1.120の化合物。
1.122. 式中、Rがトリルである、式IVまたは1.102−1.117、1.119または1.120の化合物。
1.123. 式中、Rがメチル、エチルまたはプロピルである、式IVまたは1.102−1.117の化合物。
1.124. 式中、Rがメチルである、式IVまたは1.102−1.117または1.123のいずれかの化合物。
1.125. 式中、Rがエチルである、式IVまたは1.102−1.117または1.123のいずれかの化合物。
1.126. 式中、Rがプロピルである、式IVまたは1.102−1.117または1.123のいずれかの化合物。
1.127. 式中、RがHである、式IVまたは1.102−1.126の化合物。
1.128. 式中、Rがアリールである、式IVまたは1.102−1.126の化合物。
1.129. 式中、Rがフェニルまたはトリルである、式IVまたは1.102−1.126または1.128の化合物。
1.130. 式中、Rがフェニルである、式IVまたは1.102−1.126または1.128の化合物。
1.131. 式中、Rがトリルである、式IVまたは1.102−1.126または1.128の化合物。
1.132. 式中、Rが低級(例えばC1−4)アルキルである、式IVまたは1.102−1.126の化合物。
1.133. 式中、Rがメチル、エチルまたはプロピルである、式IVまたは1.102−1.126または1.132の化合物。
1.134. 式中、Rがメチルである、式IVまたは1.102−1.126または1.132の化合物。
1.135. 式中、Rがエチルである、式IVまたは1.102−1.126または1.132の化合物。
1.136. 式中、Rがプロピルである、式IVまたは1.102−1.126または1.132の化合物。
【0057】
式I、II、IIIおよびIVの化合物は、好ましくは、ニコチン性アセチルコリン受容体に高い親和性で、例えば、10nM未満、好ましくは1nM未満のK結合親和性で結合する。
【0058】
例えば、化合物1−18は、0.7nM以下のK結合親和性を有する。
【0059】
本発明のある態様では、式中、Rが低級アルキルである式Iの化合物の一般的合成は、例示的スキーム1で描写される。Rが存在しない化合物11mgおよびヨウ化メチル(CHI)6μLを、アセトン1.0mLに室温で溶解する。撹拌下、KCO8.0mgを添加し、混合物を終夜室温で撹拌する。白色固体を濾過し、溶液を濃縮し、残渣を無色油状物として残す。記載の例では、残渣をHPLCで精製し、生成物9.0mgを無色油状物として、>98%の純度および約79%の収率で得る。
【0060】
用語「アルキル」は、直鎖および分枝鎖の両方のアルキル基を含む。「プロピル」などの個々のアルキル基への言及は、直鎖のもののみに特有であり、「イソプロピル」などの個々の分枝鎖アルキル基への言及は、分枝鎖のもののみに特有である。例えば、「C1−6アルキル」は、C1−4アルキル、C1−3アルキル、プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルを含む。同様の慣行を他の基にも適用し、例えば、「フェニルC1−6アルキル」は、フェニルC1−4アルキル、ベンジル、1−フェニルエチルおよび2−フェニルエチルを含む。「Cアルキル」は、Cアルキルが末端であるとき、水素の末端を表し、「Cアルキル」が架橋であるとき、直接結合を表す。用語「Cアルキル」は、例えば、「C1−6アルキル」の定義の範囲に「Cアルキル」を加えることを表す。従って、「C1−6アルキル」に許される置換基は、「C0−6アルキル」の範囲内で、「C1−6アルキル」に許されることが理解される。
【0061】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを表す。
【0062】
場合による置換基が、例えば、置換基のリストからの「1個ないし5個の独立した」置換基から選択される場合、この定義は、特定された群の1つから選択されるすべての置換基、または、リスト中の2個またはそれ以上の特定された群から選択される置換基のすべてを含むと理解される。置換基が分子(親)の名称を使用して記載される場合、置換基は、ラジカルまたはそのような分子の親であると理解される。
【0063】
本発明のさらなる態様によると、本明細書で既に定義した、遊離または薬学的に許容される塩の式I、式II、式IIIまたは式IV、例えば、1.1−1.136のいずれかの化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む医薬組成物が提供される。
【0064】
組成物は、例えば錠剤またはカプセル剤として経口投与に、滅菌液剤、懸濁剤または乳剤として非経腸注射(静脈内、皮下、筋肉内または点滴を含む)に、軟膏またはクリームとして局所投与に、または、坐薬として直腸投与に、適する形態であり得る。
【0065】
一般に、上記の組成物は、常套の添加物を使用して、常套の方法で製造し得る。
【化23】
【0066】
本発明の他の態様では、式Iのトリアゾール化合物の一般的合成を、スキーム2に示す。この例では、スキーム2の化合物1を、スキーム2の化合物2と、活性化剤BOPの存在下でカップリングし、スキーム2の生成物3を得、次いで、それをスキーム2の置換臭化ベンジル4でアルキル化し、スキーム2の所望の生成物6およびスキーム2の副生成物5を産生する。スキーム2の化合物6を、シリカゲルカラムにより精製し、次いで、TFAと反応させ、Boc基を切り離す。スキーム2の化合物7を臭化ベンジルでアルキル化し、反応混合物をHPLCにより精製し、最終生成物の式Iの化合物を得、それは、例示したスキームでは、純度>98%、包括的な収率約32%の白色固体である。
【0067】
スキーム2
【化24】
【0068】
本発明の他の態様では、式Iのトリアゾール化合物の一般的な合成をスキーム3に示す。工程1では、BOP、PyBOP、HBTU、HBPyU、DCCおよびEDCなどのカップリング剤を使用できる。工程2では、N2で置換されたトリアゾール中間体を主生成物として得る。N1で置換された同位体を精製中に除去できる。TFAによるBoc脱保護(工程3)の後、得られた中間体をRXと塩基性条件下で反応させ、N2で置換された最終生成物を得る。Rは、塩基の存在下で中間体2(R=H)をRXでアルキル化することによっても導入し得る。
【0069】
スキーム3
【化25】
【0070】
式IおよびIIIの他の化合物は、同様に製造される。
【0071】
本発明は、また、患者に有効量の式I、式II、式IIIまたは式IV(例えば1.1−1.137;[0042]−[0046])のα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストまたは薬学的に許容される塩を投与することを含む、アセチルコリン受容体経路の活性化を特徴とする疾患または障害の処置または予防方法Iを提供し、例えば:
1.1該疾患または障害が小細胞肺癌である、方法I。
1.2該疾患または障害が非小細胞肺癌である、方法I。
1.3該疾患または障害が有機リン神経ガス中毒である、方法I。
1.4該疾患または障害がヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染である、方法I。
1.5該疾患または障害が自己免疫不全症候群(AIDS)の結果である、方法I。
1.6患者がヒトである、方法Iまたは方法1.1−1.5のいずれか。
1.7疾患または障害が転移性癌細胞を特徴とする、方法Iまたは方法1.1−1.6のいずれか。
1.8疾患または障害が良性癌細胞を特徴とする、方法Iまたは方法1.1−1.7のいずれか。
1.9該疾患または障害が、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌および胸膜中皮腫からなる疾患または障害の群から選択され得る癌細胞の存在を特徴とする、方法Iまたは方法1.1−1.8のいずれか。
1.10該疾患または障害が固形腫瘍の癌である、方法Iまたは方法1.1−1.9のいずれか。
1.11患者が癌に罹患しているか、発症するリスクにある、方法Iまたは方法1.1−1.10のいずれか。
1.12患者が薬学的に許容される担体中の有効量の新規の式I、II、IIIまたはIVのα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを投与される、方法Iまたは方法1.1−1.11のいずれか。
1.13新規の式Iのα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストが、カペシタビン、トラスツマブ、ペルツズマブ、シスプラチンおよびイリノテカンからなる群から選択される第2の癌処置剤と同時に投与される、方法Iまたは方法1.1−1.12のいずれか。
1.14疾患または障害が、認知障害および/または認知障害に関連する疾患または障害である、方法Iまたは1.12。
1.15認知関連疾患または障害が、軽度認知障害である、方法Iまたは1.12、1.14。
1.16式Iまたは式IIのα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストが、認知障害の症状、例えば、聴覚処理および注意の障害、空間構成の障害、言語学習の障害、意味および言語記憶の障害、実行機能の障害の少なくとも1つの処置に使用される、方法Iまたは1.12、1.14−1.15。
1.17疾患または障害がアルツハイマー病である、方法Iまたは1.12、1.13−1.16のいずれか。
1.18有効量のα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを使用してアルツハイマー病の少なくとも1つの症状を処置する、方法Iまたは1.12、1.13−1.17のいずれか。
1.19アルツハイマー病の症状が、認知障害、例えば、聴覚処理および注意の障害、空間構成の障害、言語学習の障害、意味および言語記憶の障害、実行機能の障害である、方法Iまたは1.12または1.18。
1.20処置が患者の禁煙に向けたものである、方法Iまたは先行する方法のいずれか。
1.21精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害、躁病または双極性障害におけるものを処置するためにα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを使用する、方法Iまたは方法1.12、1.13−1.16のいずれか。
1.22認知障害が、例えば、聴覚処理および注意の障害、空間構成の障害、言語学習の障害、意味および言語記憶の障害、実行機能の障害のいずれかである、方法Iまたは先行する方法のいずれか。
1.23認知障害が、精神病、例えば、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、精神病性障害、妄想性障害、躁病または双極性障害の症状である、方法Iまたは先行する方法のいずれか。
1.24患者が有効量の式Iのα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを投与される、方法Iまたは先行する方法のいずれか。
1.25患者が有効量の式IIのα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを投与される、方法Iまたは先行する方法のいずれか。
1.26患者が薬学的に許容される担体中の有効量の新規の式Iのα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを投与される、方法Iまたは先行する方法のいずれか。
1.27患者が、例えば化合物1−18から選択される有効量の式Iのα7ニコチン性アセチルコリン受容体アンタゴニストを投与される、方法Iまたは先行する方法のいずれか。
1.28投与された有効量の式I、II、IIIまたはIV(例えば1.1−1.136)のいずれかの化合物が認知を改善する、方法Iまたは先行する方法のいずれか。
【0072】
再度、任意の本明細書で開示する式I、II、IIIまたはIVの化合物(例えば1.1−1.136;[0043]−[0048])を、任意の本明細書で開示する方法(例えば方法Iまたは1.1−1.28)で使用し得ると企図されている。
【0073】
これらの化合物の選択性を、神経型α4β2および筋肉型nAChRで、当分野で公知の方法を使用して測定する。10μMで、すべての試験化合物は、他の2種のニコチン受容体よりもα7nAChRに選択性を示す。化合物16は、例えば、α7受容体に92%の結合を示し、神経型α4β2および筋肉型nAChRに検出可能な結合を示さない。
【0074】
化合物の薬物動態学的(PK)研究を、10mg/kgの経口投与後に雄のC57B1/6マウスで実施し(n=3/時点)、脳浸透性を評価する。脳および血漿中の代表的な化合物16の濃度は、t=2hで各々0.15μMおよび0.2μMである。化合物Qのtmaxは、おそらく2hより長い。
【0075】
ヒトα7nAChRの三次元構造モデルを、既知のアンタゴニストを結合したA−AChBPの結晶構造に基づくホモロジーモデリングを使用して開発した。ドッキング研究を実施し、これらの新規ニコチンアンタゴニストの結合ポーズを予測する。
【0076】
この詳細な説明に従って、以下の省略形および定義を適用する。本明細書で使用するとき、単数形の「ある(a)」「および(and)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうではないことを示さない限り、複数への参照を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「ある化合物」への言及は、複数のそのような化合物を含み、「その投与量」への言及は、1またはそれ以上の投与量および当業者に知られているその均等物などを含む。
【0077】
用語「処置すること」、「処置」などは、一般的に、所望の薬理学的および生理学的効果を得ることを意味するために使用される。癌の対象を処置するために使用される本明細書に記載の新規α7nAChRは、一般的に、以下の1つまたはそれ以上を達成する治療的有効量で提供される:腫瘍増殖の阻害、腫瘍質量の減少、転移性病変の喪失、処置開始後の新たな転移性病変の発生の阻害、または、検出可能な疾患(例えば、放射線学的イメージング、生物学的流体分析、細胞遺伝学、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、免疫細胞化学、コロニーアッセイ、多パラメータフローサイトメトリーまたはポリメラーゼ連鎖反応により評価される)がないような腫瘍の減少。本明細書で使用される用語「処置」は、当業者に公知の任意の哺乳動物、特にヒトにおける、疾患の任意の処置を包含する。
【0078】
用語「対象」または「患者」は、本明細書で使用するとき、哺乳動物を含むことを意図する。本発明の好ましい態様では、哺乳動物はヒトである。他の好ましい本発明の態様では、哺乳動物は飼育動物である。
【0079】
用語「薬学的に有効な」は、本明細書で使用するとき、特定の処置レジュメの有効性を表す。薬学的効力は、例えば、腫瘍増殖の阻害、腫瘍の質量または増殖速度の減少、検出可能な腫瘍関連抗原の欠如、および、当分野で公知の任意の他の診断的測定手段などの特徴に基づいて測定できる。薬学的効力は、例えば、HIVウイルスの阻害、および/または、AIDS関連症状の低減および根絶などの特徴に基づいて測定することもできる。さらに、薬学的効力は、有機リン神経ガス中毒の誘導に関連する症状の開始の減少に基づいて測定することもできる。
【0080】
「薬学的有効量」は、本明細書で使用するとき、哺乳動物に投与されると処置の目的である癌またはHIV/AIDSに対して十分に有効であると判定される、本明細書で開示する物質、薬剤、化合物、組成物または薬剤の組合せの量を表す。薬学的有効量は、当業者に公知である。
【0081】
用語「腫瘍」は、良性および悪性の増殖または癌の両方を含むと意図する。用語「癌」は、特記しない限り、良性および悪性の増殖の両方を包含すると意図する。本発明の好ましい態様では、言及される腫瘍は悪性である。腫瘍は、黒色腫などの固形組織腫瘍、または、リンパ腫、白血病もしくは骨癌などの軟組織腫瘍であり得る。用語「原発腫瘍」は、独自の新生物であり、患者の身体の他の組織または器官に位置する転移性病変ではないことを意図する。用語「転移性疾患」、「転移」および「転移性病変」は、原発腫瘍に対して遠隔の部位に移動した細胞群を意図する。
【0082】
「AIDS」は、HIV感染:症候性および無症候性の両方の、AIDS、ARC(AIDS関連症候群)、および、HIVへの実際の暴露または暴露可能性を意図する。従って、AIDSの処置は、HIVウイルスの阻害、HIVによる感染の予防または処置、および、AIDSなどの結果的な病的状態の開始の予防、処置または遅延を表す。AIDSの予防、AIDSの処置、AIDS発症の遅延、HIVによる感染の予防、または、HIVによる感染の処置は、HIV感染:症候性および無症候性の両方の、AIDS、ARC(AIDS関連症候群)、および、HIVへの実際の暴露または暴露可能性の幅広い状態の処置を含むと定義されるが、これらに限定されない。
【0083】
用語「ニコチン性アセチルコリン受容体」は、アセチルコリンの結合部位を有し、ニコチンにも結合する内在性アセチルコリン受容体を表す。用語「ニコチン性アセチルコリン受容体」は、用語「神経型ニコチン性アセチルコリン受容体」を含む。
【0084】
用語「ニコチン性アセチルコリン受容体のサブタイプ」および「ニコチン性アセチルコリン受容体サブタイプ」は、ニコチン性アセチルコリン受容体の様々なサブユニットの組合せを表し、また、ある特定のホモまたはヘテロ複合体を表しても、複数のホモまたはヘテロ複合体を表してもよい。
【0085】
用語「アゴニスト」は、受容体と相互作用し、生理学的応答を増加または延長する(即ち、受容体を活性化する)物質を表す。
【0086】
用語「部分アゴニスト」は、アゴニストよりも低い程度で受容体と相互作用し、活性化する物質を表す。
【0087】
用語「アンタゴニスト」は、受容体と相互作用し、受容体の生理学的応答の程度または期間を減少させる物質を表す。
【0088】
用語「障害」、「疾患」および「症状」は、包括的に使用され、正常から逸脱するいかなる状態も表す。
【0089】
用語「中枢神経系関連障害」は、脳の正常な神経伝達物質の放出の変化を伴う障害などの、異常または病的な神経シグナル伝達を引き起こす任意の認知的、神経学的および精神的障害を含む。
【実施例】
【0090】
実施例
様々な本発明の化合物の合成方法を、下記に例示説明する。他の本発明の化合物およびそれらの塩は、下記と同様の方法を使用して、かつ/または、詳細な説明において一般的に説明したものと同様の方法により、そして、化学の分野で公知の方法により、製造し得る。
【0091】
実施例1
N−((1−ベンジルピペリジン−4−イル)メチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
【化26】
(a)tert−ブチル4−((1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド)メチル)ピペリジン−1−カルボキシレート
DMF(1.5mL)中の1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボン酸(113mg、1.0mmol)およびtert−ブチル4−(アミノメチル)ピペリジン−1−カルボキシレート(256mg、1.2mmol)の溶液に、BOP(530mg、1.2mmol)を加え、続いてDIPEA(0.48mL)を加える。反応混合物を室温で終夜撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、残渣を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で処理し、続いて、メチレンおよびメタノール(10:1、v/v)で抽出する。合わせた有機相を蒸発乾固し、粗生成物を得、さらに精製せずに次の段階で使用する。MS (ESI) m/z 210.1 [M-Boc+H]+
【0092】
(b)tert−ブチル4−((2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド)メチル)ピペリジン−1−カルボキシレート
DMF(8mL)中の粗製tert−ブチル4−((1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド)メチル)ピペリジン−1−カルボキシレート(350mg)、4−(ブロモメチル)ベンゼンスルホンアミド(340mg、1.4mmol)および炭酸カリウム(312mg、2.3mmol)の懸濁液を、室温で終夜撹拌する。日常的な後処理の後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、生成物222mgを白色固体として得る。MS (ESI) m/z 379.1 [M-Boc+H]+
【0093】
(c)N−(ピペリジン−4−イルメチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
10%TFA/CHCN(3mL)中のtert−ブチル4−((2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド)メチル)ピペリジン−1−カルボキシレート(116mg、0.24mmol)を、室温で2時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、高真空ポンプで残渣をさらに乾燥させ、粗生成物170mgをTFA塩として得、それをさらに精製せずに次の段階で使用する。MS (ESI) m/z 379.1 [M+H]+
【0094】
(d)N−((1−ベンジルピペリジン−4−イル)メチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
DMF(2mL)中の粗製のN−(ピペリジン−4−イルメチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド(45mg)、臭化ベンジル(22μL)および炭酸カリウム(82mg)の懸濁液を、室温で2時間撹拌する。反応混合物をマイクロフィルターで濾過し、濾液を分取HPLCで精製し、純粋な生成物17mgを白色固体として得た。MS (ESI) m/z 469.2 [M+H]+
【0095】
実施例2
N−((1−(4−フルオロベンジル)ピペリジン−4−イル)メチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
【化27】
この化合物は、実施例1と同様の方法を使用して、段階(d)で臭化ベンジルの代わりに4−フルオロ臭化ベンジルを添加して製造する。生成物を白色固体として純度98%(収率:81%)で得る。MS (ESI) m/z 487.2 [M+H]+.
【0096】
実施例3
N−((1−(2,4−ジクロロベンジル)ピペリジン−4−イル)メチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
【化28】
この化合物は、実施例1と同様の方法を使用して、段階(d)で臭化ベンジルの代わりに2,4−ジクロロベンジルブロミドを添加して製造する。生成物を白色固体として純度95%(収率:62%)で得る。MS (ESI) m/z 537.2 [M+H]+.
【0097】
実施例4
N−((1−(2−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル)メチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
【化29】
この化合物は、実施例1と同様の方法を使用して、段階(d)で臭化ベンジルの代わりに2−クロロベンジルブロミドを添加して製造する。生成物を白色固体として純度98%(収率:55%)で得る。MS (ESI) m/z 503.2 [M+H]+.
【0098】
実施例5
N−((1−(4−メチルベンジル)ピペリジン−4−イル)メチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
【化30】
この化合物は、実施例1と同様の方法を使用して、段階(d)で臭化ベンジルの代わりに4−メチルベンジルブロミドを添加して製造する。生成物を白色固体として純度96%(収率:73%)で得る。MS (ESI) m/z 483.2 [M+H]+.
【0099】
実施例6
N−((1−(4−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル)メチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
【化31】
この化合物は、実施例1と同様の方法を使用して、段階(d)で臭化ベンジルの代わりに4−クロロベンジルブロミドを添加して製造する。生成物を白色固体として純度97%(収率:84%)で得る。MS (ESI) m/z 503.2 [M+H]+.
【0100】
実施例7
N−((1−(3−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル)メチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
【化32】
この化合物は、実施例1と同様の方法を使用して、段階(d)で臭化ベンジルの代わりに3−クロロベンジルブロミドを添加して製造する。生成物を白色固体として純度95%(収率:70%)で得る。MS (ESI) m/z 503.2 [M+H]+.
【0101】
実施例8
N−((1−(3−クロロベンジル)ピペリジン−4−イル)メチル)−2−(4−スルファモイルベンジル)−2H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド
【化33】
この化合物は、実施例1と同様の方法を使用して、段階(d)で臭化ベンジルの代わりに3−メチルベンジルブロミドを添加して製造する。生成物を白色固体として純度97%(収率:83%)で得る。MS (ESI) m/z 483.2 [M+H]+.
【0102】
実施例9
4−((4−((1−ベンジルピペリジン−4−イル)メチルカルバモイル)−2H−1,2,3−トリアゾール−2−イル)メチル)安息香酸
【化34】
この化合物は、実施例1と同様の方法を使用して、段階(b)で4−(ブロモメチル)ベンゼンスルホンアミドの代わりに4−(ブロモメチル)安息香酸を添加して製造する。生成物を白色固体として純度98%で得る。MS (ESI) m/z 434.2 [M+H]+.
【0103】
実施例10−α7受容体結合
当分野で公知の以前に確立された方法を使用して、受容体結合アッセイを実施する。簡潔に述べると、α7受容体への結合親和性を、ラットの脳の膜で、放射性リガンドとしての[125I]α−ブンガロトキシン(α−BTX)を用いて測定する。代表的なデータを、図1に見ることができる。α4β2受容体への結合親和性を、ラットの皮質の膜で、[H]エピバチジンを放射性リガンドとして使用して実施する。筋肉型nAChR結合は、ヒトTE671細胞を使用して、[125I]α−BTXを放射性リガンドとして用いて測定する。化合物を、最初に単一の濃度(10μM)でスクリーニングし、次いで、予備的スクリーニングで有望な受容体結合を示したら、複数の濃度でスクリーニングし、IC50を決定する。
【0104】
α7nAChR結合を以下で論じる。
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
以前に開示され、当分野で公知の方法を使用して、これらの化合物の選択性を神経型α4β2および筋肉型nAChRで測定する。10μMで、すべての被験化合物は、他の2種のニコチン受容体よりもα7nAChRに選択性を示した。
【0107】
実施例11−α7受容体機能アッセイ
受容体機能アッセイは、以前に確立された当分野で公知の蛍光アッセイを使用する。簡潔に述べると、内在性ニコチン受容体を発現するヒト神経芽腫細胞株をこの研究で使用し得る。Ca2+−感受性染料を使用して、被験化合物に起因するCa2+シグナルの変化をモニターする。エピバチジンおよびメカミラミンを、各々アゴニストおよびアンタゴニスト測定アッセイ用の正の対照として使用する。
【0108】
代表的な化合物の機能的活性を、内在性ニコチン受容体を発現するヒト神経芽腫細胞株の細胞でのカルシウム(Ca2+)蛍光シグナルの測定により決定する。アゴニストに誘導されるニコチン受容体の活性化は、細胞内Ca2+レベルの上昇を導き得、一方、ニコチンアンタゴニストは、細胞内Ca2+濃度の低下をもたらし得る。Ca2+感受性染料のfluo−3は、ニコチンリガンドに起因する細胞内Ca2+濃度の変化をモニターし、アゴニズム対アンタゴニズムを同定するのに広く使用されている。開示される化合物は、エピバチジンに惹起されるCa2+蛍光応答を用量依存的に阻害できる。これは、主題の化合物がnAChRアンタゴニストであることを示唆する。
【0109】
実施例12−薬物動態学
雄の8−10週齢のC57/BLCマウスをこの実験で使用する。すべての取り扱いおよび使用は、NIHのガイドラインに従うコロンビア大学動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee of Columbia University)のプロトコールに従う。媒体は、5%DMSO、5%Tween−20、15%PEG400および75%dH20を含む。化合物を、動物(N3)に、10mg/kgの用量で、経口(p.o.)投与で同時に注入(co-injected)する。様々な期間(0.25、0.5、1、2、4時間)の後、動物を殺し、血液および脳を回収する。全脳を回収し、予め秤量したエッペンドルフチューブ中で、−80℃で凍結させる。脳のホモジネートを、PBSバッファー(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mMリン酸バッファー)で、pH7.4で、2mL/g(v/w)のホモジネートを使用して超音波処理する。血液サンプルを後眼窩静脈からVWRパスツールピペットを使用して回収する。血液サンプルを60,000rpmで40分間、4℃で遠心分離し、血漿の画分を分離し、−80℃で保存する。脳のホモジネートおよび血漿を、2倍の体積のアセトニトリルでのボルテックスにより抽出し、12,000gで20分間の遠心分離により清澄にし、次いで、HPLC/MS/MSにより分析する。HPLC/MS/MSのシステムは、Waters Alliance 2675 分離モジュールおよび Micromass Quattro-Micro Mass Spectrometer を含んだ。分離は、Synergi 4μ Fusion-RP のカラム(2.1x50mm)上で、3分間でメタノール中の10mM酢酸アンモニウム40%〜100%への勾配を用いて達成する。サンプル注入量は10μlであり、流速は0.6ml/分であった。抽出効率を決定するために、対照実験を実施する。
【0110】
実施例13. 新規物体の認識/物体認識試験
動物を個別の標準的ケージの中で、おがくずの床で、空調された部屋(約20℃)で飼育する。それらを12/12時間の明/暗サイクル(19.00から07.00まで点灯)下で維持し、食物および水に自由に接近させる。ラットを同じ部屋で飼育し、試験する。穏やかに鳴るラジオが、部屋の暗雑音を提供する。すべての試験を09.00ないし17.00時に行う。
【0111】
本明細書で開示する化合物を、0、0.3、1および3mg/kgで、時間依存的記憶欠損モデルで、即ち、24時間の試行間隔で試験する。化合物を、腹腔内注射(i.p.注射)により、最初の試行の15分間−2時間前に投与し得る。処置の順番は、動物の潜在的な物体および左右の好みによりデータが損なわれることを防止するように釣り合わせる。
【0112】
他の文献(例えば、Ennaceur and Delacour, 1988)に記載された通りに物体認識試験を実施する。器具は、直径約83cmの円状の活動領域からなる。約40cmの高さの活動領域壁の後半分は、灰色のポリ塩化ビニル製であり、前半分は、透明のポリ塩化ビニルからなる。赤い蛍光灯が約20ルクスの一定の照射を器具の床に提供するので、器具の異なる部分で光強度は同等である。2個の物体を、壁から約10cmの対称的な位置に、活動領域の左側から右側への直径上に置く。各物体は、トリプリケートで利用できる。4つの異なる物体の組を使用する。異なる物体は:1)上部にアルミニウム製の襟のある灰色のポリ塩化ビニルの基部(最大直径18cm)からなる円錐(全体の高さ約16cm)、2)水を満たした標準的な1Lの透明ガラスビン(直径約10cm、高さ約22cm)、3)2個の穴(直径約1.9cm)のある塊状の金属の立方体(約10.0x5.0x7.5cm)、および4)上部が細くなったアルミニウムの立方体(13.0x8.0x8.0cm)。ラットが物体を動かすことはできない。
【0113】
試験セッションは、2回の試行からなる。各試行の期間は3分間である。最初の試行(T1)中、器具は2個の同一の物体(サンプル)を含む。ラットを器具中に、壁に向けて、前(透明)の部分の中央に置く。最初の探索期間の後、ラットをその元のケージに戻す。その後、24時間の遅延間隔の後、2回目の試行(T2)のためにラットを器具に入れる。動物がT1およびT2の間に各物体の探索に費やした総時間を、パーソナルコンピュータを用いて手作業で記録する。
【0114】
探索を、以下の通りに定義する:2cm以下の距離で鼻を物体に向けること、および/または、鼻で物体に触れること。物体に乗ることは、探索行動とはみなされない。信頼し得る物体の識別を達成するには最小限の物体との相互作用が必要とされるので、T1で7秒および/またはT2で9秒未満で探索するラットは、分析から除外する。嗅覚的な手がかりの存在を回避するために、物体を各試行の後に常に徹底的に洗浄する。すべての物体の組合せおよび新規物体の位置(左または右)が釣り合うように使用し、特定の位置または物体への好みによる潜在的な偏りを回避する。
【0115】
最初の2週間で、動物を毎日扱い、2日間の試験のセットアップに慣れさせる。即ち、それらに各日2回、3分間、器具(物体なし)を探索させる。それらが安定した識別成績(即ち、1時間間隔での良好な識別および各日3分間で2回では識別なし)を示した後に、ラットを試験のルーチンに適応させる。それらが安定した識別成績(即ち、1時間間隔での良好な識別および各日3分間で2回では識別なし)を示すまで、ラットを試験のルーチンに適応させる。
【0116】
基礎的測定は、ラットがT1およびT2の間に物体の探索に費やす時間である。2つの同一サンプルの探索に費やす時間を、「a1」および「a2」と表す。T2でサンプルおよび新しい物体の探索に費やす時間を、各々「a」および「b」と表す。以下の変数を算出する:e1=a1+a2、e2=a+b、およびd2=(b−a)/e2。E1およびe2は、各々、T1およびT2における両物体の総探索時間の測定値である。d2は、試験試行(e2)における探索活動について補正した識別の相対的測定値である。従って、たとえ処置が探索行動に影響しても、d2の指数は各条件間で比較できるであろう。
【0117】
本明細書で開示する化合物による処置は、T1の15分前に化合物を投与した動物において、処置された動物における認知を、約10mg/kgまで用量依存的に、有意に増強する。より高い用量の化合物は、T1の1時間後の処置投与で、認知を低下させ得る。