(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087961
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】切替可能電子ビーム殺菌デバイス
(51)【国際特許分類】
A61L 2/08 20060101AFI20170220BHJP
H01J 3/02 20060101ALI20170220BHJP
H01J 37/06 20060101ALI20170220BHJP
H01J 37/065 20060101ALI20170220BHJP
H01J 1/46 20060101ALI20170220BHJP
G21K 5/04 20060101ALI20170220BHJP
B65B 55/08 20060101ALI20170220BHJP
B65B 55/04 20060101ALI20170220BHJP
G21K 5/00 20060101ALN20170220BHJP
【FI】
A61L2/08 108
H01J3/02
H01J37/06 Z
H01J37/065
H01J1/46 Z
G21K5/04 E
B65B55/08 B
B65B55/04 C
B65B55/04 A
!G21K5/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-5681(P2015-5681)
(22)【出願日】2015年1月15日
(62)【分割の表示】特願2011-530391(P2011-530391)の分割
【原出願日】2009年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-116490(P2015-116490A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2015年2月4日
(31)【優先権主張番号】0802101-6
(32)【優先日】2008年10月7日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】61/173,484
(32)【優先日】2009年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593205554
【氏名又は名称】テトラ・ラヴァル・ホールディングス・アンド・ファイナンス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】TETRA LAVAL HOLDINGS & FINANCE S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・クロエッタ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・ハーグ
(72)【発明者】
【氏名】クルト・ホルム
【審査官】
近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/145561(WO,A1)
【文献】
特開平08−211200(JP,A)
【文献】
特表2010−512284(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/050008(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/002973(WO,A1)
【文献】
特開平05−225934(JP,A)
【文献】
特開2002−255125(JP,A)
【文献】
特表2009−539718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00〜2/28
G21K 5/00〜5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子発生フィラメントと、
電圧源に接続されたグリッドと、
ビーム成形器と、
出力窓と、
電子の加速用に前記電子発生フィラメントと前記出力窓との間に高電圧を生成させる高電圧源と、を備える電子ビーム殺菌デバイスにおいて、
前記ビーム成形器が前記電子発生フィラメントと前記出力窓との間の電場に影響を与えることによって電子ビームをコリメートし、
前記電子発生フィラメント及び/又は前記グリッドが、出力電子ビームの電流及び/又はプロファイルを変更する少なくとも二つの個別の動作部分であって、半径方向内側の部分及び半径方向外側の部分になされた少なくとも二つの個別の動作部分を備え、
前記電子発生フィラメント及び/又は前記グリッドの前記半径方向外側の部分を作動させることで環状のビーム形状を形成し、前記電子発生フィラメント及び/又は前記グリッドの前記半径方向内側の部分を作動させることで小半径のビーム形状を形成し、前記電子発生フィラメント及び/又は前記グリッドの前記半径方向外側と内側の部分を作動させることでシリンダー状のビーム形状を形成することを特徴とする電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項2】
前記電子発生フィラメント及び/又は前記グリッドの周囲形状が、本質的に円形若しくはレーストラック状、又は丸い角を備えた若しくは備えていない方形若しくは矩形であることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項3】
前記グリッドが、前記電子発生フィラメントと追加的な加速グリッドとの間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項4】
前記電子発生フィラメントが、二つの動作部分を備えた前記グリッドと前記出力窓との間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項5】
前記電子発生フィラメントと前記出力窓との間に加速グリッドを更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項6】
容器を殺菌するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項7】
前記容器がポリマーを備えた製品接触表面を有することを特徴とする請求項6に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【請求項8】
前記環状のビーム形状は前記容器の本体部の殺菌に使用されるようになされ、前記シリンダー状のビーム形状は前記容器の肩部の殺菌に使用されるようになされ、前記小半径のビーム形状は前記容器の首部及び/又は開口具に使用されるようになされていることを特徴とする請求項6又は7に記載の電子ビーム殺菌デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ビーム殺菌デバイスに係り、特に容器の殺菌用に構成されたそのようなデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム殺菌デバイスは既知であり、殺菌されるパッケージ内に降下される。パッケージの壁に対する電子の放出がそのパッケージを殺菌する。殺菌レベルは、壁に与えられる照射線量によって決められる。与えられる照射線量が低過ぎると殺菌は十分なものではなく、与えられる照射線量が高過ぎると、パッケージ材料に悪影響がある。悪影響としては、パッケージ内の最終製品の味が影響されること(味が落ちる問題)や、パッケージ材料が変形及び/又は損傷することが挙げられる。パッケージが飲料等の食品用の容器として使用される場合には、味が落ちる問題が考慮しなければならない問題であることは明らかである。
【0003】
照射線量は、特に照射強度及び照射時間によって影響される。また、電子ビーム殺菌デバイス出口と照射されるパッケージの壁との間の距離によっても影響される。
【0004】
全てのパラメータが何ら制約無しに変更可能であるならば、電子ビームによってパッケージを殺菌することの問題は、難しいものではない。しかしながら、現代の食品処理工場では、膨大な数のパッケージが、速いペースで製造、殺菌、充填及び密封されていて、その条件は大きく異なるものである。例えば、要求されるペースが高いと、殺菌機器は高速で動作しなければならない。また、パッケージの形状が一様で無いことがあり、典型的なパッケージはキャップが位置する首部、テーパ状(先細り)肩部、容器の底で終わる本体部を有するので、パッケージの断面はその長さ方向に対して変化する。断面形状は、円形や、方形や、矩形であり得て、丸い角を備えたり備えなかったり、レーストラック状等であり得る。これは、パッケージの全表面に対する適切で均等な照射を得ることを難しくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5254911号明細書
【特許文献2】特開平8−211200号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/052109号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/283667号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第2777113号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、本願独立項に従った改良された電子ビーム殺菌デバイスを提供することによって、上述の問題を解消又は低減することである。好ましい実施形態については従属項に定められている。以下において、“ビーム形状”との用語は、伝播方向に垂直な方向におけるビーム強度プロファイル(ビームプロファイル)に対するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】パッケージ内に配置されてそのパッケージを照射する電子ビーム殺菌デバイスの断面図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態による殺菌デバイスの概略的な断面図である。
【
図4】
図3の部分図であり、異なる動作モードを示す。
【
図5】
図3の部分図であり、異なる動作モードを示す。
【
図6】
図3の部分図であり、異なる動作モードを示す。
【
図7】
図4〜
図6と同様の部分図であり、本発明の第二の実施形態による殺菌デバイス用の異なる動作モードを示す。
【
図8】
図4〜
図6と同様の部分図であり、本発明の第二の実施形態による殺菌デバイス用の異なる動作モードを示す。
【
図9】
図4〜
図6と同様の部分図であり、本発明の第二の実施形態による殺菌デバイス用の異なる動作モードを示す。
【
図10】
図7〜
図9と同様の部分図であり、本発明の第三の実施形態による殺菌デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1を参照して、電子ビーム殺菌について簡単に説明する。
図1は、パッケージ4内に配置された電子ビーム殺菌デバイス2つまりエミッタを示す。このエミッタは、基本的には電子銃として動作して、一般的には高電圧源8に接続された電子ビーム発生器6を備える。発生器6は、自由電子を発生させているフィラメント10を有し、そのフィラメントはそのためのフィラメント電源12に接続されている。フィラメントは一般的にタングステン製であり、その基本的な機能は、2000℃のオーダ等の高温に加熱された際に電子雲e
−を放出することである。
【0009】
フィラメント10にはグリッド14が隣接し、グリッド制御電源16によってグリッド14に正又は負の電圧を印加すること又は印加しないことによって、フィラメント10で発生した電子がグリッド14を出て行く又は出て行かない。これらの構成要素は真空チャンバ15内に配置されている。
【0010】
デバイス2の出力端に、出口窓18が配置されていて、出口窓に向かう間に、電子が高電圧電場において加速される。高電圧電場内の電位差は一般的に300kV以下であり、本発明の目的に対しては、70〜120kVのオーダであり、出口窓18を通過する前に、電子ビーム20の各電子に対して70〜120keVの運動エネルギーが与えられる。出口窓18は一般的にチタン等の金属箔であり、4〜12μmの厚さを有し、アルミニウム、銅又は他の適切な材料製の支持ネット(図示せず)によって支持されている。支持ネットは、デバイス内部の真空によって箔が壊れるのを防止する。更に、支持ネットは、ヒートシンク又は冷却素子として機能し、冷却液ライン等の冷却液に熱を伝えることによって、箔から熱を逃がす。アルミニウムは、製造プロセス中の条件下において劣化する傾向があるので、銅が本願の目的に対して好ましい代替物になるが、他の代替物も可能である。
【0011】
出口窓18から出て行くと、電子20は、上述のエネルギー範囲に対しては、空気中の通常圧力及び温度ではブラウン運動に従って、5〜50mmの最適作動距離(この場合は作動半径)を有する。特定の例では、略10μmの殺菌深度で、76kVの電圧に対して5mm、80〜82kVの電圧に対して17mmである。このことは、パッケージを殺菌する際に、適切な照射を達成するためにはエミッタをパッケージ内に降下させなければならないことを意味する。エミッタの周りの周囲環境の雰囲気を変更することによって、作動距離が変更され得る。圧力を50%低下させることは基本的に、作動距離を二倍にし、雰囲気中の気体を空気から窒素又はヘリウムに交換することも、予測可能に作動距離に影響する。
【0012】
以上の説明及び以下の説明においては、同様の構成要素は下二桁が同一の参照符号を共有し、その性質が同様であれば、繰り返して説明しない。
【0013】
図2は、本願において開示される解決策を示す。基本的な問題は、本願の場合のものと同様であり、非一様な断面を有するパッケージの殺菌の問題である。
図2のデバイスでは、殺菌されるパッケージ30は、所謂RTF(ready to fill)パッケージである。RTFパッケージは一般的に、キャップ34(つまり開放デバイス)を備えた肩部32を本体部36に取り付けた後に殺菌される。殺菌に続いて、パッケージ30を底(上向きにされている)から充填し、その後底を密封する。
図2から明らかなように、特定の殺菌デバイスは三つのエミッタ38、40、42を備える。各エミッタは、パッケージ30の特定部分を照射するように構成されている。左側の一つ38は本体部36を照射し、中央の一つ40は肩部32を照射し、右側の一つ42は開放デバイス34を照射する。このように、パッケージ30が十分な照射線量に晒される一方で、表面が多過ぎる照射にさらされることはない。
【0014】
図3は、本発明の第一の実施形態による電子ビーム殺菌デバイス102を示す。本デバイスは、
図1のデバイスと同様の構成を有し、主な構成要素は、フィラメント110と、グリッド114と、出力窓118に繋がる加速空間である。また、
図3には、カソード筐体の一部を形成可能な“ビーム成形器”128も示されている。ビーム成形器128でフィラメントと窓との間の電場に影響を与えることによって、電子ビームを適切にコリメート(又はフォーカス/デフォーカス)し得る。ビーム成形器128の機能は、当該分野においては周知であり、複数の異なる変形例が可能である。端的には、ビーム成形器の目的は、電子を加速する電場を成形すること、つまりは電子をその経路内に導くことである。ビーム成形器は、電子の経路の前に及び電子の経路に沿って配置された複数の構成要素を備え得て、これが同一の参照符号が複数の構成要素に付されている理由である。一般的に、カソード筐体及びその電場成形素子は以下の二つの目的を果たす: 第一に、形状、特に半径は電場強度が過度なものにならないように設計され、第二に、隆起素子128の形状及び幾何学的構成は、ビームプロファイルが最適なものになるように設計される。
【0015】
図3のデバイスと従来技術のデバイスの主な違いは、グリッド114が少なくとも二つの動作部分を備える点である。図示される実施形態では、半径方向に内側のグリッド114b(以下では内側グリッドとする)及び半径方向に外側のグリッド114a(以下では外側グリッドとする)が存在する。グリッド114a及び114bは電圧によって個別に制御可能である。このことは、変更可能な電圧をグリッド114a、114bのいずれか一方又は両方に印加して、好ましいビーム構成、例えば好ましいビームプロファイルを得ることができることを意味する。
【0016】
図示される実施形態では、内側グリッド114b及び外側グリッド114aを制御することによって、電子が外側グリッド114aを通ることを防止して小半径のビーム形状を生成すること(
図6を参照)、電子が内側グリッド114bを通ることを防止して環状のビーム形状(ドーナツ型プロファイル)を生成すること(
図5を参照)、又は両方のグリッドを通過することを許容して、シリンダー状ビーム形状(本質的に一様)を生成すること(
図4を参照)が可能になる。電子のビーム経路は、実線120によって示されている。グリッド114a、114bに印加される電圧は正又は負のいずれでもあり得る点に留意されたい。更に、グリッド114a、114bに印加される電圧は非常に高いものではなく、±100Vのオーダである点に留意されたい。図示される実施形態では、−30〜−40Vの電圧を用いて、電子の通過を効率的に遮断する。このことは、異なるビーム形状モード間の切替が、基本的には電圧が切替可能なのと同じ速さで実施可能であり、デバイスを多用途なものにすることを意味する。
【0017】
特定の程度の殺菌を達成する場合、電子ビームデバイスが状態間を移行するのに伴い、十分なビーム電流(つまりアノード電流)を得るためにフィラメントパワーを変更することが必要になり得る点は留意されたい。これに対する明らかな理由の一つは、放出ビームプロファイルの面積が異なるビーム形状間で変化し得て、例えば、小半径のビーム形状は、環状のビーム形状よりも小さな断面積を有するからである。電子ビームデバイスに対する実際的な例は、半径方向に内側のビームに対して0.3mAのアノード電流であり、半径方向に外側のビームに対して4mAのアノード電流である。
【0018】
グリッド114は、適切な導電性で機械加工可能な材料、一般的には金属製である。図示される実施形態では、ステンレス鋼が使用されている。グリッド114の形状は、結果物のビームの所望の形状に適合されていて、一般的には、グリッドは、電子の通過可能な孔を備えた金属プレート又はワイヤメッシュである。グリッド114のソリッド部分は、適切な特性の電場を発生させる目的と、フィラメント表面における電場強度を制御することによってフィラメント110からの電流を調節する目的とを有する。孔は、円形、楕円形、スリット状、六角形(グリッドをハニカム形状にするため)等であり得る。大き過ぎる孔では、電子が扇型に広がり、結果として、出口窓に届かず、又は分布を損なう。孔が小さ過ぎると、高電圧電場が、孔を介して“到達(reach in)”して所望の方法で電子を収集することができない。
【0019】
図7〜
図9は本デバイスの代替実施形態を示し、フィラメント210は、少なくとも二つの個別に制御可能な部分、半径方向に内側のフィラメント210b及び半径方向に外側のフィラメント210aを備える。これらの図面は、フィラメント210a、210b、グリッド214、及びビーム経路の第一の領域を含む部分図である。本実施形態は、上述の実施形態の二つのグリッド114a、114bで実施されるものと同様に、フィラメント210a、210bの制御によってビーム形状及びビーム電流の制御を可能にする。
図7は外側フィラメント210aを環状のビーム形状用に作動させる様子を示し、
図8は内側フィラメント210bを小半径のビーム形状用に作動させる様子を示し、
図9は両方のフィラメント210a、210bを完全なシリンダー状のビーム形状用に作動させる様子を示す。電子のビーム経路は実線220によって示されている。
【0020】
更に他の実施形態では、上述の二つの実施形態を組み合わせて、二つ以上のグリッド及び二つ以上のフィラメントを備え、更に優れた制御性を得ることができる。このようにして、本発明の一実施形態によって設計されたデバイスが空間効率的なものになり、高殺菌性能を限られた空間内に収めることができる。また、フィラメントを、サイクル間において最適な放出で一定の最適温度に保つことができる。
【0021】
本発明が二つのフィラメント及び/又はグリッドのものに限定される訳ではない点に留意されたい。個々の動作フィラメント及び/又はグリッドの数は、結果物の電子ビームの適切な性能が得られるようにデバイスの物理的制約内において変更可能である。特定の一例は、外側グリッド/フィラメントから内側グリッド/フィラメントへの段階的な移行によって、肩部等のパッケージの傾斜内壁に対してより一様な照射を得ることができる。傾斜壁が大きくなるほど、グリッド/フィラメントの数が多くなる。
【0022】
使用時には、これらの実施形態は、同じ目的で基本的には同じ方法で用いられる。ビーム形状を急速に変更可能であることは、パッケージの多様な部分に対して適切なビーム形状を選択することを可能にする。デバイスがパッケージの中又は外に並進移動されると、ビーム形状が、デバイスの通過するパッケージの特定部分を殺菌するように調節される。例えば、デバイスが本体部を通過する際には、外側グリッド及び/又は外側フィラメントを作動させることによって、環状のビーム形状が使用され得る。デバイスが肩部に近づくと、両方のグリッド及び/又はフィラメントを作動させることによって、ビーム形状を一様プロファイルに切り替える。ネック及び開放デバイスの殺菌用には、内側グリッド及び/又はフィラメントを使用する。このようにして、過度に露光すること無く、全ての箇所において十分な殺菌を達成することができる。
【0023】
異なるビームプロファイル間の移行を極めて高速に行うことができるので、製造ラインの流れに影響を与えること無く、殺菌デバイスが動作可能である。
【0024】
また、実施形態で図示されたような円対称では無い代わりのグリッド及びフィラメントの設計を用いることもできる。その設計は、所望のビーム形状に従い、また殺菌されるパッケージの形状の変化に従って適切に変更可能である。
【0025】
一般的な電子ビーム殺菌デバイスの技術的機能は既知であると思うが、以下において、第一の実施形態によるデバイスの機能についてより詳細に説明する。第一実施形態を参照しながら例を説明する。
【0026】
殺菌の前に、高電圧電場を印加する。略−40Vの負電圧を外側及び内側グリッドに印加して、自由電子がグリッドを通過するのを防止する。フィラメントを通る電流を供給して、自由電子の発生に十分な略2000℃にフィラメントを加熱する。デバイスを殺菌されるパッケージ内に挿入する。代替例では、デバイスを静止させたままで、パッケージをデバイスに通す。他の代替例では、デバイス及びパッケージの両方を並進移動させる。
【0027】
デバイスがパッケージ内に挿入されると、外側グリッドの電位をより高い値(それでも一般的には0V又はそれ以下である)に設定し、パッケージの本体部の内壁を殺菌するように環状ビームの電子を出力窓から放出する。デバイスがパッケージの肩部に近づくと、内側グリッドの電位をより高い値(それでも上記のように負であり得る)に設定し、外側グリッドの電位をより低い−40Vに再設定して、キャップ部の殺菌用に小半径のビームを生成する。ボトルのテーパ状肩部を殺菌するために必要であれば、一部期間にわたって両方のグリッドがより高い電位になるような重複が存在し得る点には留意されたい。デバイスの挿入の間において両方のグリッドがより高い電位であると、環状のビームの代わりに完全なシリンダー状のビームを生成可能である。デバイスが戻されると、上記プロセスを繰り返す。代替的な殺菌プロセスでは、デバイスは挿入又は戻しのいずれかの間のみ作動する。与えられる値は、電子ビームデバイスの設計に大きく依存するものであり、可能な値の構成例に過ぎずこれらに制約されるものではなく、予測可能な値のものとされる点は留意されたい。電子ビームデバイスの一設計では、低い電位及び高い電位に対する値はそれぞれ、−150V及び−80Vである。
【0028】
使用時には、本発明のデバイスは、照射チャンバ(つまり照射から周囲環境を保護する筐体)内に配置される。殺菌されるパッケージは、実際の照射設計に従って照射の漏れを防止するように照射チャンバ内に入れられる。このことは、ロックゲート、照射チャンバの内部設計及び内部の機能によって、又は単に照射チャンバ内のデバイスが電子を放出していない際にパッケージを入れることによって達成可能である。
【0029】
図10を参照して、本発明のデバイスの第三の実施形態を説明する。本実施形態では、切替可能グリッド314a及び314bが、フィラメント310と加速グリッド320(一定グリッド電圧のグリッド、又は変更可能グリッド電圧のグリッドであり得る)との間に配置されている。切替可能グリッドは、外側抽出グリッド314a及び内側抽出グリッド314を備える。いずれかのグリッド又は両方のグリッドにフィラメントに対して30〜100V(本実施形態では)の正の電圧を印加することによって、フィラメント310から放出される電子が、切替可能グリッドの一部に引き寄せられる一方で、共通に設定された部分は電子を引き寄せない。抽出グリッドの目的は、特定の空間領域に放出電子を分布させることである。電子が抽出グリッドを通過すると、電子は、加速グリッド320からの電場に晒されて、加速グリッド320に対して直角に加速される。一つ以上の電場成形素子(素子322が例示されている)を配置して、等電位線の分布に影響を与えることができる。この第三の実施形態による本発明のデバイスの機能は、上述の実施形態の説明から自明である。フィラメントグリッドの電位を変更することによって、電子の放出を制御することができる。この目的のためのフィラメントグリッドは、二つよりも多くの個別に制御される部分からなり得る点は留意されたい。切替可能グリッドの形状も上述のものとは異なり得る。例えば、切替可能グリッドは、フィラメント周囲の半円を基本的には形成するドーム形状を有し得る。
【0030】
図示しない第四の実施形態では、フィラメントグリッドが、フィラメントの奥に配置されて、切替可能グリッドが加速グリッドに向けて電子を引くのではなくて押す。
図10と比較すると、この構成は、切替可能グリッド314a、314bがフィラメント310の左側に配置されている状況に対応する。この構成の利点の一つは、電子が実際にはグリッドを通過せずその電場によって影響を受けるだけなので、切替可能グリッドの透明性が無限になる点である。
【0031】
図示しない更に他の実施形態では、一つのグリッドのみが使用される。そのグリッドは、一つのフィラメントを覆う二つの同心部分を有し、例えば、外側部分が、内側部分よりも下流にある。従って、グリッド電圧が無いと、両方のビームがオンになる(広いビーム)。負のグリッド電圧を増大させていくと、まず外側ビームが遮断されて、内側ビームはアクティブなままである(狭いビーム)。その後、内側ビームも遮断される(ビームオフ)。このような構成では、切り替え及び電流の制御機能を、一つのグリッド電源のみでなすことができる。
【0032】
パッケージの種類は任意であるが、本デバイスは、ポリマーを備えた製品接触表面(内面)を有するパッケージの殺菌に特に適している。RTFパッケージは一般的に、プラスチックのトップを備えた紙のラミネートスリーブで形成された本体部を備える。しかしながら、本デバイスを、医療機器等の他の物の殺菌に使用することもできる。本発明の殺菌デバイスの特徴は高度に順応性があり、多様な形状のパッケージに適した解決策が単純化されて、パッケージの各領域を適切な照射線量に晒すことができる。
【符号の説明】
【0033】
2 電子ビーム殺菌デバイス
4 パッケージ
6 電子ビーム発生器
8 高電圧源
10 フィラメント
12 フィラメント電源
14 グリッド
15 真空チャンバ
16 グリッド制御電源
18 出口窓
110 フィラメント
114a 外側グリッド
114b 内側グリッド
118 出力窓
128 ビーム成形器