特許第6087985号(P6087985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6087985ポリメチルメタクリレート骨セメントを混合するための真空混合システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087985
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ポリメチルメタクリレート骨セメントを混合するための真空混合システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/48 20060101AFI20170220BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20170220BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20170220BHJP
   B01F 11/00 20060101ALI20170220BHJP
   B01F 15/02 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   A61L27/48
   A61B17/56
   A61F2/28
   B01F11/00 A
   B01F15/02 A
   B01F15/02 C
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-117684(P2015-117684)
(22)【出願日】2015年6月10日
(65)【公開番号】特開2016-26545(P2016-26545A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2015年8月18日
(31)【優先権主張番号】10 2014 108 569.8
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06536937(US,B1)
【文献】 特開2013−135833(JP,A)
【文献】 特表平11−507295(JP,A)
【文献】 特開2011−005255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
A61B 17/00−17/94
A61F 2/28
B01F 11/00
B01F 15/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨セメントを混合するための排気可能な内部空間を有する少なくとも1つのカートリッジ(4、54)と、
負圧を生成するためのポンプ(18、68)と、
負圧を生成するために前記少なくとも1つのカートリッジ(4、54)の内部空間を前記ポンプ(18、68)に接続するための接続導管(12、62)とを備えるポリメチルメタクリレート骨セメントを混合するための真空混合システムであって、
前記ポンプ(18、68)を駆動することを目的とし、前記ポンプ(18、68)に接続されるまたは接続させることができ、その中に蓄積された前記ポンプ(18、68)の少なくとも1つの汲み上げプロセスのためのエネルギーを有する張力をかけた回復要素からなる内蔵式のエネルギータンク(28、78)、及び前記エネルギータンク(28、78)に蓄積されたエネルギーを解放するように作動させることができる、手動で操作可能な作動要素(30、80)を備え、これにより前記内蔵式のエネルギータンク(28、78)からエネルギーを解放することによって解放されたエネルギーが前記ポンプ(18、68)を駆動し、前記汲み上げプロセスにおいて前記ポンプ(18、68)を利用して負圧を生成することができ、そのため前記負圧を利用して前記少なくとも1つのカートリッジ(4、54)の内部空間から前記接続導管(12、62)を通ってガスを排気することができることを特徴とする真空混合システム。
【請求項2】
前記ポンプ(18、68)が、気密式の汲み上げ空間(26、76)を備え、可動プランジャ(22、72)または可動式の壁が前記ポンプ(18、68)内に設けられることで前記汲み上げ空間(26、76)の境界として機能し、これにより前記プランジャ(22、72)または壁を前記内蔵式のエネルギータンク(28、78)のエネルギーによって一方向に駆動させることができ、そのため前記プランジャ(22、72)または壁の動きが前記汲み上げ空間(26、76)を拡大し、このようして前記汲み上げ空間(26、76)内に生じる負圧によって、前記少なくとも1つのカートリッジ(4、54)の内部空間を前記接続導管(12、62)を介して排気させることを可能にすることを特徴とする、請求項1に記載の真空混合システム。
【請求項3】
前記汲み上げ空間(26、76)の体積の拡大が、前記カートリッジ(4、54)の内部空間の自由な体積に少なくとも等しいことを特徴とする、請求項2に記載の真空混合システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのカートリッジ(4、54)の内容物を混合するための混合デバイス(6、56)を備え、これにより前記混合デバイス(6、56)が、前記カートリッジ(4、54)の内部空間に配置されること、ならびに/あるいは手動でまたはモータを介して駆動させることができることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の真空混合システム。
【請求項5】
前記真空混合システムの総重量が30kg未満であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の真空混合システム。
【請求項6】
前記エネルギータンク(28、78)が張力をかけたばね(28、78)であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の真空混合システム。
【請求項7】
前記カートリッジ(4、54)から混合した骨セメントを分配するための可動式分配プランジャ(9、10、59、60)が、前記カートリッジ(4、54)の内部空間に配置され、これにより前記分配プランジャ(9、10、59、60)が、所定の場所に脱着式にロックされる、またはロックすることができることで前記分配プランジャ(9、10、59、60)が負圧の作用に反応して移動しないようにすることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の真空混合システム。
【請求項8】
前記ポンプ(18、68)は、張力をかけたばね要素(28、78)によって駆動させることができ、これにより前記ばね要素(28、78)の拡張または収縮が、前記カートリッジ(4、54)の内部空間において周辺大気に対する負圧を生成することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の真空混合システム。
【請求項9】
前記カートリッジ(4、54)がセメント粉体で満たされたセメントカートリッジ(4、54)であり、前記真空混合システムが、前記セメントカートリッジ(4、54)とは別個でありモノマー液体を中に含む容器(2)を備え、これにより前記容器(2)が、開放させることができる分離要素(44)を介して液体不透過性になるように前記セメントカートリッジ(4、54)の内部空間に接続され、前記セメントカートリッジ(4、54)の内部空間がガス透過性になるように前記ポンプ(18、68)に接続される、または接続させることができることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の真空混合システム。
【請求項10】
前記ポンプ(18、68)は、
中空のシリンダ(20、70)であって、前記カートリッジ(4、54)の内部空間に接続される、または接続させることができる中空のシリンダ(20、70)と、
前記中空のシリンダの一端における気密の栓と、
気密で軸方向に可動であるように前記中空のシリンダ(20、70)内に配置されたプ
ランジャ(22、72)と、
前記プランジャ(22、72)と前記栓の間に配置された内蔵式のエネルギータンク(
28、78)としての少なくとも1つのばね要素(28、78)と、
着脱式に前記プランジャ(22、72)に接続され、前記プランジャ(22、72)を前記中空のシリンダ(20、70)内の所定の位置に保持し、前記ばね要素(28、78)を張力をかけてまたは圧縮させて維持し、これにより接続要素(30、80)が気密の貫通接続部を介して前記中空のシリンダ(20、70)から外に出るように誘導され、外部から前記プランジャ(22、72)から切り離すことができ、これにより接続要素(30、80)の接続部を切り離した後、前記プランジャ(22、72)を前記ばね要素(28、78)の拡張によって前記栓の軸方向の反対側に移動させることができる接続要素(30、80)とを備えるように設計されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の真空混合システム。
【請求項11】
前記ばね要素(28、78)が、保管状態において圧縮され、ロックされた接続要素(30、80)を利用して前記ポンプ(18、68)の前記プランジャ(22、72)によって圧縮状態に維持されることを特徴とする、請求項10に記載の真空混合システム。
【請求項12】
前記プランジャ(22、72)が、前記ばね要素(28、78)が拡張した後、前記中空のシリンダ(20、70)の内部を適切に移動されることで、前記中空のシリンダ(20、70)、前記栓および前記プランジャ(22、72)によって形成される前記汲み上げ空間(26、76)の体積が、排気すべき前記カートリッジ(4、54)の内部空間の体積と少なくとも等しいことを特徴とする、請求項10または11に記載の真空混合システム。
【請求項13】
前記中空のシリンダ(20、70)の端部に境界要素が配置され、前記プランジャが前記中空のシリンダ(20、70)から出ることができないように前記プランジャ(22、72)の動きを適切に制限することを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の真空混合システム。
【請求項14】
前記プランジャ(22、72)が、前記栓から離れるように向く側に、前記プランジャ(22、72)の最大の動作の後、前記真空混合システムの外部で目で見て確認することができ、これによりその最大の動作の後の前記プランジャ(22、72)の位置を指示する視覚的なマーカー(34、87)を含むことを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の真空混合システム。
【請求項15】
真空混合システムのカートリッジ(4、54)の内部空間でポリメチルメタクリレート骨セメントを混合するための方法であって、
前記真空混合システムに組み込まれた張力をかけた回復要素からなるエネルギータンク(28、78)に蓄積されたエネルギーを利用して前記真空混合システムのポンプ(18、68)を駆動し、これによりこうして駆動された前記ポンプ(18、68)を使用して前記カートリッジ(4、54)の内部空間を排気し、前記カートリッジ(4、54)の内部空間で骨セメントを混合することを特徴とする方法。
【請求項16】
前記ポンプ(18、68)の汲み上げ空間(26、76)の体積は、内蔵式のエネルギータンク(28、78)として機能する張力をかけたばね要素(28、78)の弛緩によって拡大され、前記カートリッジ(4、54)の内部空間は、このようにして生成される負圧によって排気されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カートリッジ(4、54)の内部空間はセメント粉体を中に含み、前記ポンプ(18、68)は、前記カートリッジ(4、54)の内部空間からガスを排気し、モノマー液体が前記カートリッジ(4、54)の内部空間へと誘導され、前記モノマー液体は、前記カートリッジ(4、54)の排気された内部空間において前記セメント粉体と混合されることを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
接続要素(30、80)は、前記ポンプ(18、68)のプランジャ(22、72)から切り離され、
その後圧縮された張力をかけたばね要素(28、78)が前記プランジャ(22、72)を前記ポンプ(18、68)の中空のシリンダ(20、70)内で軸方向に移動させ、これを利用して周辺大気に対する負圧が生成され、
これによりガスが前記カートリッジ(4、54)の内部空間から接続導管(12、62)を通って前記中空のシリンダ(20、70)へと吸引され、
その後、セメント粉体が手動でまたはモータ駆動式に混合デバイス(6、56)を利用してモノマー液体と混合され、
その後混合されたセメントドウを含む前記カートリッジ(4、54)が取り外され、
分配プランジャ(9、10、59、60)を軸方向に移動させることによって前記セメントドウが前記カートリッジ(4、54)から押し出されることを特徴とする、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
セメント粉体が前記カートリッジ(4、54)内に準備され、
モノマー液体が、前記カートリッジ(4、54)とは別個の容器(2)の中に準備され、これにより前記モノマー液体は、分離要素(44)を利用して前記カートリッジ(4、54)内の前記セメント粉体から隔てられ、
前記分離要素(44)は、接続要素(30、80)がプランジャ(22、72)から切り離される前に開放されることで、前記カートリッジ(4、54)の内部空間と前記容器(2)の間に液体透過性の接続が確立され、
その後圧縮されたばね要素(28、78)が前記プランジャ(22、72)を中空のシリンダ(20、70)内を軸方向に移動させ、これにより周辺大気に対する負圧が生成され、
これによりガスが前記カートリッジ(4、54)の内部空間から前記接続導管(12、62)を通って前記中空のシリンダ(20、70)内に吸引され、モノマー液体は、前記カートリッジ(4、54)の内部空間に形成された負圧によって前記カートリッジ(4、54)内に吸引されることを特徴とする、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの出発成分からポリメチルメタクリレート骨セメント(PMMA骨セメント)を混合するための真空混合システムに関し、詳細には、医療用の骨セメントを混合し、出発成分を保管するための真空混合システムに関する。
【0002】
本発明はさらに、ポリメチルメタクリレート骨セメントを混合するための方法に関する。
【0003】
したがって本発明の主題は、ポリメチルメタクリレート骨セメントの保管、混合および適用可能であれば分配することを目的とした真空混合システムである。本発明はさらに、モノマー液体を真空混合システム内に移動させるための方法およびポリメチルメタクリレート骨セメントの成分を混合するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)骨セメントは、Sir Charnleyの先駆けとなる研究に基づいている。PMMA骨セメントは、液体モノマー成分と、粉体成分で構成される。モノマー成分は一般に、モノマー、メチルメタクリレートおよびその中に溶解した活性化剤(N,N−ジメチル−p−トルイジン)を包含する。粉体成分は、骨セメント粉体とも呼ばれ、1つまたは複数のポリマー、放射線不透過物質および開始剤の過酸化ジベンゾイルを含む。粉体成分のポリマーは、メチルメタクリレートと、コモノマー、例えばスチレン、メチルアクリレートまたは同様のモノマーをベースに重合を利用して、好ましくは懸濁重合によって生成される。粉体成分とモノマー成分を混合する際、メチルメタクリレート内の粉体成分のポリマーが膨張することで、塑性的に成形することができ、実際の骨セメントであるドウを生成する。粉体成分とモノマー成分を混合する際、活性化剤、すなわちN,N−ジメチル−p−トルイジンが、過酸化ジベンゾイルと反応し基を形成する。このようにして形成された基は、メチルメタクリレートのラジカル重合を誘発する。メチルメタクリレートの重合が進む間、セメントドウの粘度は、セメントドウが固化するまで上昇する。
【0005】
メチルメタクリレートは、ポリメチルメタクリレート骨セメントにおいて大抵共通して使用されるモノマーである。レドックス開始剤系は通常、過酸化物、促進剤および適用可能であれば好適な還元剤で構成される。基は、レドックス開始剤系の全ての原材料が一斉に作用する場合のみ形成される。この理由のために、別個の出発成分におけるレドックス開始剤系の原材料は、これらがラジカル重合を誘発することができないように適切に用意される。出発成分は、その組成が適当であるならば、保管される間安定している。2つの出発成分が混合されてセメントドウを生成する場合のみ、2つのペースト、液体または粉体内に予め別々に保管されたレドックス開始剤系の原材料が、互いに反応し、少なくとも1つのモノマーのラジカル重合を誘発する基を形成する。ラジカル重合はその後、モノマーを消費する間ポリマーの形成をもたらし、これによりセメントドウが硬化する。
【0006】
PMMA骨セメントは、セメント粉体とモノマー液体を好適な混合ビーカーの中で好適なスパチュラの助けを借りて混合することによって混ぜ合わせることができる。前記手順の1つの欠点は、こうして形成されたセメントドウ内に空気の含有物が存在する場合があり、骨セメントを後に不安定にする可能性がある点である。この理由のために、真空内で混合することによりセメントドウから空気の含有物を大幅に取り除き、これにより最適なセメントの品質が達成されることから、骨セメント粉体とモノマー液体を真空の混合システムの中で混合することが好ましい。真空において混合された骨セメントは明らかに、多孔性が低下しており、よって機械的特性の改善を示す。多数の真空のセメンティングシステム開示されており、以下のものを、例示の目的で列記する。特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13。このように規定された真空セメントシステムでは、負圧を生成するのに外部の真空ポンプを接続する必要がある。これらは一般に、ベンチュリ原理を利用して圧縮空気によって作動される。真空ポンプの作動に必要とされる圧縮空気は、静置式の圧縮空気設備または電気的に作動するコンプレッサのいずれかによって供給される。さらに、電気的に作動する真空ポンプを利用して真空を生成することも実現可能である。
【0007】
セメンティングシステムは、セメント粉体とモノマー液体の両方が既に混合システムの別々の区画に詰め込まれており、セメントを適用する直前になって初めてセメンティングシステム内で互いに混合されるものであり、このシステムはセメンティング技術の成果である。前記完全に事前に詰め込まれる混合システムは、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18および特許文献19を通して提案された。前記混合システムもまた外部の真空源を必要とする。この文脈において、特許文献15は、本発明による真空混合デバイスにも使用することができる2つの部分の分配プランジャを有する一般的な真空混合デバイスを開示している。
【0008】
真空混合システムがセメンティングに使用される場合、外部の真空ポンプを設ける必要がある。前記真空ポンプは、高価であり、使用後に清掃する必要がある。さらに真空ポンプを真空混合システムに接続するための真空ホースが必要である。前記真空ホースは、真空混合システムで囲む必要がある。したがって真空混合システムを使用して混合する前に、真空ポンプを手術室(OR)内で組み立てる必要があり、圧縮空気または電力などのエネルギー源に接続する必要がある。この場合、真空ポンプは、真空ホースを利用して真空混合システムに接続される。前記設置ステップは、OR時間を取るために犠牲が大きく、間違いの元となる可能性がある。真空ポンプ、真空混合システムおよび外部のエネルギー源への接続導管ならびに供給導管は、スペースを塞ぎ、手術中に往々にして非常に忙しい処置を妨害する可能性のあるつまづく危険や、けつまずく妨害物となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,033,105A号
【特許文献2】米国特許第5,624,184A号
【特許文献3】米国特許第4,671,263A号
【特許文献4】米国特許第4,973,168A号
【特許文献5】米国特許第5,100,241A号
【特許文献6】国際公開第99/67015A1号
【特許文献7】欧州特許第1020167A2号
【特許文献8】米国特許第5,586,821A号
【特許文献9】欧州特許第1016452A2号
【特許文献10】独国特許第3640279A1号
【特許文献11】国際公開第94/26403A1号
【特許文献12】欧州特許第1005901A2号
【特許文献13】米国特許第5,344,232A号
【特許文献14】欧州特許第0692229A1号
【特許文献15】独国特許出願公開第102009031178B3号
【特許文献16】米国特許第5,997,544A号
【特許文献17】米国特許第6,709,149B1号
【特許文献18】独国特許第69812726T2号
【特許文献19】米国特許第5,588,745A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
興味深い概念が、EP1886647A1によって提案されている。ここではセメント粉体は、排気されたカートリッジの中に保管され、モノマー液体は別個の容器の中に位置している。カートリッジは、負圧で維持されており、開放されることで、いかなる空気の侵入もなしにモノマー液体がカートリッジ内に吸引される。空気のない骨セメントドウがこのようにして生成される。前記概念は、カートリッジを使用する前に保管する間、真空気密になるように閉鎖したままの状態にする必要があり、そのため滅菌されない空気がカートリッジに進入する可能性は全くない。この目的のために、カートリッジを安定した気密式に密閉する必要がある。したがって1つの関連する欠点は、この設計が極めて複雑であり、混合ロッドまたは混合管のための貫通接続部は、容易には永続的に真空気密にならないため、モノマーを吸引した後でカートリッジの内容物を外部から操作される混合システムによって混合することができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって本発明の目的は従来技術の欠点を克服することである。具体的には、外部の真空源を有する既知の真空混合システムの欠点を克服すべきである。本発明の目的は、具体的には、セメント成分が混合される直前のみに負圧が生成される真空混合システムを開発することである。このデバイスは、可能な限り簡素であるべきであり、周辺大気に対する負圧がセメントカートリッジ内で少なくとも1度生成されることを可能にするべきである。さらに真空混合システムは、モノマー液体をモノマー容器からセメント粉体で満たされたカートリッジに移動させることを可能にすることができる点で有利であり得る。さらにこの場合、完全に事前に詰められた真空混合システム内でのモノマーの移動および真空混合を可能にする方法が提供される。さらに開発すべき真空混合システムは主に、安価なプラスチックから作製される。
【0012】
さらに製造するのに費用がかからず、医療用セメントを混合し、適用可能であれが、出発成分を保管するように確実に機能するデバイスと、骨セメントを混合するための方法が考案され、そこでは、可能であれば外部のまたは追加のエネルギー源を使用する必要なしに、かつ混合材料内に空気の含有物が生じることなく、簡素な手動の操作を利用して出発成分を混合することができる。
【0013】
混合材料としてのポリメチルメタクリレート骨セメントの主な成分は、粉体であるべきであり、第2の成分は、液体の形態で存在すべきである。好ましくは、骨セメントの2つの出発成分を互いから隔てて真空混合システム内に保管し、本デバイスの利用を通してそれらを安全に混ぜ合わせることが可能である。
【0014】
本発明の目的は、骨セメントを混合するための排気可能な内部空間を有する少なくとも1つのカートリッジと、負圧を生成するためのポンプと、負圧を生成するために少なくとも1つのカートリッジの内部空間をポンプに接続するための接続導管とを備え、これにより真空混合システムは、ポンプを駆動することを目的とし、ポンプに接続されるまたは接続させることができ、その中に蓄積されたポンプの少なくとも1つの汲み上げプロセスのためのエネルギーを有する内蔵式のエネルギータンクを備え、これにより内蔵式のエネルギータンクからエネルギーを消費することによって汲み上げプロセスにおいてポンプを利用して負圧を生成することができ、そのためこの負圧を利用して少なくとも1つのカートリッジの内部空間から接続導管を通ってガスを排気することができるポリメチルメタクリレート骨セメントを混合するための真空混合システムによって満たされる。
【0015】
今のところ、負圧は、周辺大気圧より低い、周辺大気に関連する圧力を意味するように理解されるべきである。
【0016】
好ましくはポンプは、真空混合システム内に組み込まれるように設けることができる。
【0017】
好ましくはポリメチルメタクリレート骨セメントは、混合されるおよび/または少なくとも2つの成分から生成することができる。特に好ましくは、一方の成分は液体であり、他方の成分は粉末化されている。
【0018】
好ましくは本発明は、汲み上げプロセスによって少なくとも50%削減可能であるように、好ましくは少なくとも90%削減可能であるように少なくとも1つのカートリッジの内部空間に圧力を提供することができる。
【0019】
本発明によると、混合材料、詳細にはPMMA骨セメントの出発成分は、カートリッジ内に既に存在している。
【0020】
本発明によると、デバイスはまた、容器がデバイス内に挿入される際、または容器がデバイスの固定式の部品である場合に出発成分の保管にも十分に適合されることが好ましい。
【0021】
混合材料は、骨セメント、詳細にはPMMA骨セメントであることが好ましい。
【0022】
本発明の改善点はその上に、負圧によって少なくとも1つのカートリッジの内部空間から接続導管を通ってガスを排出させることができ、負圧によって内部空間と液体容器の間の導管からガスを排出させることができ、カートリッジ内のPMMA骨セメントの第1の成分と混合させるべき液体を、負圧によって液体容器からカートリッジの内部空間に引き込むことができることを実現することができる。
【0023】
真空混合システムの改善点は、ポンプが気密式の汲み上げ空間を備え、可動プランジャまたは可動式の壁がポンプ内に設けられることで汲み上げ空間の境界として機能し、これによりプランジャまたは壁を内蔵式のエネルギータンクのエネルギーによって一方向に、好ましくは一定方向に駆動させることができ、そのためプランジャまたは壁の動きが汲み上げ空間を拡大し、このようして汲み上げ空間内に生じる負圧によって、少なくとも1つのカートリッジの内部空間を接続導管を介して排気させることを可能にすることを提案する。
【0024】
あるいは、本発明はその上、ポンプを回転ホイール、周期的に作動するプランジャまたは周期的に作動する膜を備えるように設けることができる。しかしながら可動プランジャまたは可動式の壁を有する実施形態は、その設計が際立って簡素であり、間違い(回転部品が阻止される可能性がある)が起こりにくく、よって高価でなく、その一方でカートリッジの内部空間に負圧を簡単に生成するのに既に十分であるため、本発明によって好まれる。特有の要件のために、例えばカートリッジの内部空間の体積が小さいなどによって、より複雑なポンプシステムを生じさせる必要性は全くない。
【0025】
前記実施形態はまた、汲み上げ空間の体積の拡大をカートリッジの内部空間の自由な体積に少なくとも等しくなるように実現することができ、好ましくは汲み上げ空間の体積の拡大は、PMMA骨セメントの第1の粉末化した成分を含むカートリッジの内部空間の体積と、接続導管の体積と、内部空間と液体容器の間の導管の体積と、カートリッジの中でPMMA骨セメントの第1の成分と混合されるべきであり、これによりPMMA骨セメントの第2の成分である液体容器中の液体の体積との総量に少なくとも等しくなるべきである。
【0026】
これにより、ポンプがカートリッジの内部空間を排気することができることを保証する。この文脈において、汲み上げプロセスより前の汲み上げ空間の体積は、理想的な場合において可能な限り小さい。したがって本発明は好ましくは、汲み上げプロセス後の汲み上げ空間の体積を、汲み上げプロセス前の汲み上げ空間の体積より少なくとも5倍、具体的には好ましくは少なくとも汲み上げプロセス前の汲み上げ空間の体積より10倍大きくなるようにすることができる。
【0027】
改善点によって、本発明は、少なくとも1つのカートリッジの内容物を混合するための混合デバイスを備え、これにより混合デバイスは、カートリッジの内部空間内に配置されることが好ましい、ならびに/あるいは手動でまたはモータによって駆動させることができる真空混合システムを提供することができる。
【0028】
好ましくはカートリッジは、耐圧式の貫通接続部を備え、これを介してロッドまたは混合チューブが誘導され、このロッドまたは混合チューブを利用してカートリッジの外から混合デバイスを操作することができる。この目的のために、ロッドまたは混合チューブは、貫通接続部の中に適切に設置されることで、それは回転し長手方向に移動させることができることが好ましい。混合デバイスを使用してカートリッジの内容物を十分に混合することができる。
【0029】
さらに本発明は、真空混合システムの総重量を30kg未満、特に好ましくは総重量が10kg未満になるようにすることができる。
【0030】
内蔵式のエネルギータンクを有する混合デバイスおよびポンプの本発明による設計に従って、重量を規定されるように小さくすることが可能になる。重量が小さいことは、混合デバイス携帯することができ、供給導管へのいかなる接続もなしで、および予め大きな準備をせずに使用することができるという点で有利である。
【0031】
エネルギータンクからエネルギーを解放するように作動させることができ、これにより解放されたエネルギーがポンプを駆動し、駆動されたポンプがカートリッジの内部空間を排気する手動で操作可能な作動要素を備えるように真空混合システムを提供することによって、特に利用し易い真空混合システムを実現することができる。
【0032】
これにより、真空混合システムの操作が簡素化される。結果として、コンパクトな設計にも関わらず、操作が簡素であることを保証することができる。
【0033】
好ましい一実施形態によると、本発明は、充填されたガス圧カートリッジ、好ましくはCOガスカートリッジ、または張力をかけた回復要素、好ましくは張力をかけたばね、特に好ましくは張力をかけた鋼ばねとなるようにエネルギータンクを提供することができる。
【0034】
前記エネルギータンクは、たとえ長期間にわたってもエネルギーを維持する。さらにこのように蓄積された少量のエネルギーは、カートリッジの内部空間を排気するのに十分な負圧を保証するのに十分である。
【0035】
実現可能であり、本発明によって使用することができる他のエネルギータンクには、蓄電池、充電式電池またはコンデンサが含まれ、これらを利用して、例えば電磁的相互作用を利用して短期間のパルスを引き出し、ポンプを駆動することができる。同様に、化学的な推進剤が、エネルギータンクとして機能してポンプを駆動する場合もある。しかしながら前記エネルギータンクは、ガス圧カートリッジよりも、詳細にはばねなどの回復要素よりも複雑であり実装するのが難しい。この目的のために、ガス圧カートリッジおよび張力をかけた回復要素、例えばばねが特に本発明によって好まれる。
【0036】
さらに本発明は、カートリッジの内部空間に配置されるべきカートリッジから混合した骨セメントを分配するための可動式分配プランジャを提案しており、これにより分配プランジャは好ましくは、所定の場所に脱着式にロックされる、またはロックすることができることで分配プランジャが負圧の作用に反応して移動しないようにする。
【0037】
分配プランジャによって真空混合システムの操作が簡素化される。
【0038】
さらに本発明は、張力をかけた回復要素、詳細には張力をかけたばね要素によって駆動されるようにポンプを準備することができ、これにより好ましくは回復要素、詳細にはばね要素の拡張または収縮が、カートリッジの内部空間において周辺大気に対する負圧を生成する。
【0039】
このような設計は特に簡素であり、実装するのにそれほど費用はかからない。しかしながらそれと同時に、前記設計によって、比較的故障しにくい確実に作動する真空混合システムを設計することが可能である。
【0040】
改善点によると、本発明は、セメント粉体で満たされたセメントカートリッジとなるカートリッジと、セメントカートリッジとは別個でありモノマー液体を中に含む容器を備え、これにより容器が、開放させることができる分離要素を介して液体不透過性になるようにセメントカートリッジの内部空間に接続され、セメントカートリッジの内部空間がガス透過性になるようにポンプに接続される、または接続させることができるような真空混合システムを提供することができる。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態は、
A)中空のシリンダであって、これにより中空のシリンダがカートリッジの内部空間に接続される、または接続させることができる中空のシリンダと、
B)中空のシリンダの一端における気密の栓と、
C)気密で軸方向に可動であるように中空のシリンダ内に配置されたプランジャと、
D)プランジャと栓の間に配置された内蔵式のエネルギータンクとしての少なくとも1つのばね要素と、
E)着脱式にプランジャに接続され、プランジャを中空のシリンダ内の所定の位置に保持し、ばね要素を張力をかけてまたは圧縮させて維持し、これにより接続要素が気密の貫通接続部を介して中空のシリンダから外に出るように誘導され、外部からプランジャから切り離すことができ、これにより接続要素の接続部を切り離した後、プランジャをばね要素の拡張によって栓の軸方向に反対側に移動させることができる接続要素とを備えるように設計されるポンプを提供することができる。
【0042】
前記設計は特に簡素であり、その部品は、射出成型によってプラスチックから製造することができる。
【0043】
この実施形態において、本発明は、保管状態において圧縮され、ロックされた接続要素を利用してポンプのプランジャによって圧縮状態に維持されるばね要素を提供することができる。
【0044】
さらにこの文脈において、本発明は、中空のシリンダ、栓およびプランジャによって形成される汲み上げ空間の体積が、排気すべきカートリッジの内部空間の体積に少なくとも等しくなるように、ばね要素が拡張した後、中空のシリンダの内部に適切に移動されるプランジャを提供することができる。
【0045】
体積を合致させる効果は、ポンプが、指定された目的のために十分であるように寸法が決められる点である。
【0046】
さらに、本発明は、中空のシリンダの端部に配置され、プランジャが中空のシリンダから出ることができないようにプランジャの動作を適切に制限する境界要素を提供することができる。
【0047】
改善点によると、本発明は、栓から離れるように向く側に、プランジャの最大の動作の後、真空混合システムの外部で目で見て確認することができ、これによりその最大の動作の後のプランジャの位置を指示する視覚的なマーカーを含むプランジャを提供することができる。
【0048】
その結果、ユーザは、外部から真空混合システムの状態を確認することができる。
【0049】
本発明の基礎を成す目的はまた、真空混合システム、詳細には本発明による真空混合システムのカートリッジの内部空間でポリメチルメタクリレート骨セメントを混合するための方法であって、真空混合システムに組み込まれたエネルギータンクに蓄積されたエネルギーを利用して真空混合システムのポンプを駆動し、これによりこうして駆動されたポンプを使用してカートリッジの内部空間を排気し、カートリッジの内部空間で骨セメントを混合する方法によって達成される。
【0050】
この文脈において、本発明は、内蔵式のエネルギータンクとして機能する回復要素の弛緩によって拡大するポンプの汲み上げ空間の体積と、このようにして生成される負圧によって排気されるカートリッジの内部空間とを実現することができる。
【0051】
改善点により、セメント粉体を中に含むカートリッジの内部空間と、カートリッジの内部空間からガスを排気するポンプと、カートリッジの内部空間へと誘導されるモノマー液体であって、排気された内部空間においてセメント粉体と混合されるモノマー液体とを提供することができる。
【0052】
この文脈において、本発明は、ポンプのプランジャから切り離される接続要素を提供することができ、その後圧縮された回復要素がプランジャをポンプの中空のシリンダ内で軸方向に移動させ、これを利用して周辺大気に対する負圧が生成され、これによりガスが接続導管を通ってカートリッジの内部空間から中空のシリンダへと吸引され、その後セメント粉体が手動でまたはモータ駆動式に混合デバイスを利用してモノマー液体と混合され、その後混合されたセメントドウを含むカートリッジが取り外され、分配プランジャを軸方向に移動させることによってセメントドウがカートリッジから押し出される。
【0053】
さらに本発明は、カートリッジ内に準備されるセメント粉体と、カートリッジとは別個の容器の中に準備されるモノマー液体とを提供することができ、これによりモノマー液体は、分離要素を利用してカートリッジ内のセメント粉体から隔てられ、分離要素は、接続要素がプランジャから切り離される前に開放されることで、カートリッジの内部空間と容器の間に液体透過性の接続が確立され、その後圧縮されたばね要素がプランジャを中空のシリンダ内を軸方向に移動させ、これにより周辺大気に対する負圧が生成され、これによりガスがカートリッジの内部空間から接続導管を通って中空のシリンダ内に吸引され、モノマー液体は、カートリッジの内部空間に形成された負圧によってカートリッジ内に吸引される。
【0054】
本発明は、ポンプと、カートリッジの内部空間を排気するのに十分な量のエネルギーがポンプのために貯蔵される一体式のエネルギータンクとを有する驚くべき発見によって、真空混合システムを外部のエネルギー源および他の供給導管から独立して設けることが可能になるということに基づいている。本発明による真空混合システムは、コンパクトで、軽量であり、スペースを削減するように設計することができる。ポンプは、真空混合システム全体を使い捨てシステムとして使用することができるような最も簡単な手段を含むように設計することができる。さらにおよび本発明によって好まれるように、エネルギーはまた、ポンプを利用してモノマー液体をセメント粉体へと移動させるのに使用される場合もある。PMMA骨セメントの2つの成分はこのとき、真空内および/または負圧で混合することができる。
【0055】
カートリッジから排気されたガスは、望ましくない要因(例えばメチルメタクリレート蒸気など)を取り除くためにこのようなガスをフィルタに掛ける必要がないため、周辺に放出されないことは本発明による真空混合システムの別の利点である。代わりに、ガスは単にポンプの内部および/または汲み上げ空間に留まるだけである。
【0056】
本発明によるセメンティングシステムは、ポリメチルメタクリレート骨セメントの粉体成分を液体モノマー成分と混合する前および混合する間の一次的な負圧の生成に適した真空および/または負圧を生成するためのデバイスを含む。
【0057】
本発明の基礎を成す根拠は、骨セメントの出発成分を負圧または真空で混合するのに必要とされるカートリッジ内の前記真空および/または負圧を生成するのに比較的少量のエネルギーしか必要としない発見に基づいている。モノマー液体をセメント粉体に移動させるのに必要なエネルギー量もまた小さい。これを利用してポンプが駆動される前記少量のエネルギーは、真空混合システムの内部エネルギータンクに貯蔵することができる。さらに張力をかけた鋼ばねまたは別の回復要素に貯蔵されるエネルギー量は、本発明によると、本発明による真空混合システムを駆動させるエネルギーを提供するのに十分である。
【0058】
本発明の別の例示の実施形態を、概略的な4つの図面に基づいて以下で例示するが、これは本発明の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】汲み上げプロセスの前の滅菌状態における本発明による真空混合システムの概略断面図である。
図2】カートリッジを排気する準備が整った閉鎖した2つの部分のプランジャシステムを備える、図1による真空混合システムを示す図である。
図3】汲み上げプロセスの後の起動後のポンプと排気後のカートリッジを有する図1および図2による真空混合システムを示す図である。
図4】本発明による別の代替の真空混合システムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1から図3は、汲み上げプロセスの前の本発明による真空混合システムの概略断面図である。真空混合システムは基本的に3つの部分から成り、カートリッジシステム1と、液体容器2と、フット部3である。この文脈において、カートリッジシステム1は、フット部3を介して液体容器2に接続される。この文脈において、フット部3はとりわけ、コンパクトな真空混合システムのベースを形成する。
【0061】
カートリッジシステム1は、フット部3に垂直に締結された円形のベース面を有する円筒形のカートリッジ4を備える。この目的のために、フット部3にあるソケット(これは雄ねじを有する)にねじ込まれるカートリッジ4の前方側に雌ねじを有する開口が設けられる。セメント粉体(図示せず)が、カートリッジ4の内部にある。さらに、混合チューブ8に対して締結される2つ以上の混合羽根6を有する混合デバイス6が、カートリッジ4の内部に配置される。混合チューブ8は、それが回転し長手方向に移動することができるように滅菌プランジャ9を貫通して誘導される。この目的のために、貫通接続部は耐圧性で気密である。滅菌プランジャ9は、滅菌ガスに対しては透過性であるが、セメント粉体に対しては不透過性である膜(図示せず)を備える。滅菌プランジャ9は、セメント粉体が充填されカートリッジ4の内部空間を外部に対して閉鎖した後、カートリッジ4に挿入される。その後、カートリッジ4の内容物をエチレン二酸化物を使用して透過性の膜を通して滅菌することができる。
【0062】
密閉プランジャ10を滅菌プランジャ9に押し込むことができ、気密で耐圧式になるようにこれに接続することができる。プランジャ9、10は、互いに締結され、その後協働して、カートリッジ4の内容物を床側の開口を通って押し出すことができる分配プランジャ9、10を形成する。
【0063】
しかしながら滅菌プランジャ9は最初、反対側で(図1から図3における頂部で)ロックされており、これによりロック作用を外すことができる。
【0064】
ハンドル部11がカートリッジ4の外側で混合チューブ8に装着され、これを利用してカートリッジ4の内部にある、すなわちカートリッジ4の内部空間にある混合羽根6を手動で回転させ、カートリッジ4の長手方向に移動させることができる。
【0065】
可撓性の真空導管12の形態の接続導管12に接続された貫通接続部が、密閉プランジャ10内に設けられる。これとは別に、密閉プランジャ10は緊密である。カートリッジ4の前方側(図1から図3における底部にある)は、液体導管14を経由してフット部3を介して液体容器2に耐圧式に接続される。サイフォン16が液体導管14内に設けられ、これを利用して液体容器2に含まれるモノマー(図示せず)が偶発的にカートリッジ4内に進むのを阻止する。真空導管12はまた、フット部3へと誘導され、フット部3内でポンプ18まで誘導されることで、密閉プランジャ10にある貫通接続部が、耐圧式にポンプ18に接続され、真空導管12を経由して固有であるポンプ18の内部空間へと接続される。
【0066】
ポンプ18は、プランジャ22を利用して耐圧式に2つの部分に分離される安定性のある中空のシリンダ20を備える。真空導管12のための出口24および/またはコネクタ24が、中空のシリンダ20における内部空間の後部(図1から図3における左側にある)に設けられる。中空のシリンダ20の内部空間のこの部分は、汲み上げ空間26を形成する。汲み上げ空間26内の負圧はしたがって、密閉プランジャ10が図2および図3に示されるように滅菌プランジャ9に接続される際、真空導管12を通ってカートリッジ4の内部空間内へと作用する、および/またはカートリッジ4の内部空間からガスを排気することができる。
【0067】
真空混合システムは、汲み上げ空間26内でねじ30の周りに、およびプランジャ22の円筒形の延長部の周りに配置された張力をかけた鋼ばね28によって特徴付けられる。ねじ13は、気密および耐圧式にかつ回転可能に貫通接続部を介して汲み上げ空間26へと誘導される。この目的のために、ねじ30は汲み上げ空間26および/または中空のシリンダ20の内部空間の栓を形成する。このような手段によって、汲み上げ空間26は、コネクタ24を除けば厳重に気密である。ねじ30は、雄ねじ32を利用してプランジャ22の円筒形の延長部にある雌ねじ33にねじ込まれ、これによりプランジャ22を所定の位置に維持する。鋼ばね28が、プランジャ22と、ねじ30のための貫通接続部を有する(この側は図1から図3における中空のシリンダ20の左側に描かれる)中空のシリンダ20の側部(ベース面)の間で圧縮および/または張力をかけられる。したがって鋼ばね28は、圧縮ばね28として利用される。圧縮ばね28の張力は、カートリッジ4の内部空間、真空導管12および液体導管14をポンプ18を利用して排気し、モノマー液体を液体容器2から液体導管14を通ってカートリッジ4の内部空間へと引き込むのに十分な量のエネルギーを蓄える。
【0068】
ピン34の形態の突起34が、ねじ28と反対側のプランジャ22の側部に配置され、中空のシリンダ20から、ねじ30のための貫通接続部を有するベース面から反対側に位置する中空のシリンダ20のベース面にある開口36を通って出て行くことができる。突起34が開口36を通って突き出る際、ポンプ18が起動され、汲み上げプロセスが完了したことを外から直接認識することができる。
【0069】
壊すことができるヘッド42を有するガラスアンプル40が、液体容器2内に配置される。ガラスアンプル14は、モノマー液体を中に含んでいる。ガラスアンプル40のヘッド42は、回転レバー44を回転させることによって破壊させる、または切断させることができる。回転レバー44はこれにより接続部を開放し、こうしてモノマー液体と液体導管14の間に接続部を確立する。加えて、回転レバー44によって開放させることができる弁要素(図示せず)を液体容器2の入口に液体導管14に進入するように設けることもできる。液体容器2は、ガラスアンプル40が液体容器2に挿入された後、蓋46によって気密および耐圧式に閉鎖される。ガラスアンプル40を壊して開放した後、液体容器内のモノマー液体が利用可能になり、アンプル4の内部空間における負圧を利用して液体導管14を通ってアンプル4の内部空間へと誘導させ、液体容器2からアンプル4の内部空間へとモノマー液体を吸引することができる。モノマー液体はその後、骨セメントおよび/または骨セメントペーストを生成するために真空状態および/または負圧での混合デバイス6を利用してアンプル4の内部空間でセメント粉体と混合させることができる。
【0070】
本発明によると、真空混合システムは、以下の手順によって特徴付けられる。ポンプ18は、ねじ30をその雄ねじ28をプランジャ22の雌ねじ33から出るように回転させることによって起動される。これは、カートリッジ4が図2に示されるように密閉プランジャ10を挿入することによって使用する準備ができたときに行われる。ねじ30がほどけた後、圧縮された鋼ばね28のエネルギーが解放され、プランジャ22が開口36の方向に加速される。この動きは汲み上げ空間26を拡大させる。結果として、汲み上げ空間26における圧力が減少する。ガスが真空導管12、カートリッジ4の内部空間および液体導管14から汲み上げ空間へと流れ込む。カートリッジ4の内部空間はよって排気される。
【0071】
プランジャ22は、ピン34が開口36から突き出すまで、中空のシリンダ20の端部(図1から図3における右側にある)まで加速される。このような構成は図3に示される。汲み上げ空間26の体積の増加は、真空導管12、カートリッジ4の内部空間および液体導管14からガスを排気し、モノマー液体を液体容器2からカートリッジ4の内部空間へと引き込むのに十分である必要がある。この目的のために、図3に示される拡大した汲み上げ空間26は、カートリッジ4の内部空間の導管12、14の体積およびモノマー液体の液体体積より大きくなることが好ましい。この文脈において、図1から図3は、汲み上げ空間26とその他の体積の大きさの関係を単に概略的に示していることに留意されたい。
【0072】
ひとたび出発成分がカートリッジ4の内部空間内で混合されると、混合チューブ8は、それが消えるまで遠くにカートリッジ4の内部空間の外に出るように上向きに引っ張られ、その後所定の破損箇所で折り取ることができる。密閉プランジャ10は、滅菌プランジャ9に対して回転され、これにより密閉プランジャ10を通るガス貫通接続部が閉鎖される。真空導管12はこのとき、密閉プランジャ10から引き離される。カートリッジ4は、フット部3から緩められ、混合された骨セメントを適用することができる分配チューブ(図示せず)が雌ねじへとねじ込まれる。滅菌プランジャ9と、密閉プランジャ10で構成される搬送プランジャまたは分配プランジャが、ロックを解除され、適用デバイス(図示せず)を利用してカートリッジ4の内部へと推し進めることができる。結果として、カートリッジ4の内容物、すなわち負圧で混合された骨セメントが反対側の開口から、ねじ込まれた分配チューブを通って押し出される。
【0073】
ガラスアンプル40および鋼ばね28および骨セメントの出発成分は別として、真空混合システムの要素は、射出成型を利用してプラスチック材料から作製することができる。導管12、14は、様々なプラスチック材料で構成することができる。真空導管12は、密閉プランジャ10を可動式になるように混合チューブ8上に配置することができるように可撓性でなければならない。
【0074】
ねじ30のヘッドを除いて、導管12、14およびポンプ18は、真空混合システムを水平支持体の上に設置することができるように水平な底部を備えるプラスチック材料でできた筐体の中に配置される。
【0075】
上記に述べた真空混合システムを使用して、骨セメントの2つの出発成分を保管することができ、所定の時間のいずれかの後の時点で真空状態で混合させることができる。真空混合システムは、この文脈において何らかの外部の供給源(粉体、水または圧縮ガス)に接続される必要はない。負圧を生成するのに必要とされるエネルギーは、エネルギータンクとして機能する張力をかけた鋼ばね28に蓄えられる。圧縮ばね28と1つの代替として、中空のシリンダ20内部空間において開口36とプランジャ22の間で引っ張るために張力をかけた張力ばねが使用される場合もある。しかしながら鋼ばね28、特に圧縮ばね28を含めた設計は、より簡素であり、より費用が少なくて済む。
【0076】
図4は、簡素化された設計を有する本発明による別の真空混合システムの概略断面図を示す。真空混合システムは、ベース53にねじ込まれたカートリッジシステム51を備える。カートリッジシステム51は、円筒形の内部空間を有するカートリッジ54を備える。カートリッジ54の内部空間は、前方側(図4における底部にある)において閉鎖され、これにより前方の分配開口は雌ねじを備え、カートリッジ54は、雌ねじによってベース53にある雄ねじにねじ込まれる。
【0077】
混合デバイス56の混合羽根56が、カートリッジ54の内部空間内を長手方向に可動であり、軸方向に回転可能である混合チューブ58に接するように内部空間に配置される。この目的のために、混合チューブ58は、滅菌プランジャ59と、密閉プランジャ60とで構成される2つの部分の分配プランジャ59、60を貫通するように誘導される。2つの部分の分配プランジャ59、60の機能は、第1の例示の実施形態による分配部分プランジャ9、10の機能と等しい。混合チューブ58はハンドル部61において終端しており、このハンドル部を利用して混合デバイス56はカートリッジ54の外から操作することができる。
【0078】
図1から図3による実施形態とは対照的に、この実施形態は、接続領域(図4における底部にある)においてカートリッジ54に合流する必要がある液体導管を持たない。図4による実施形態では、骨セメントの全ての成分は、カートリッジ54の後部側に充填されカートリッジ54の内部空間(図4における頂部にある)に進入するだけである。この目的のために、2つのプランジャ部分59、60は最初、カートリッジ54から切り離される。出発成分が充填された後、滅菌プランジャ59が最初に挿入され、その後内容物が簡単に滅菌され(滅菌プランジャ59は、この目的のためにエチレン二酸化物に対して透過性である)、その後可撓性の接続導管62および/または真空導管62が接続された密閉プランジャ60が、滅菌プランジャ59に挿入され、スナップ嵌合ロック機構を利用してそれに接続される。密閉プランジャ60を挿入することで、真空導管62に対するコネクタを除いてカートリッジ54の内部空間を外部に対して気密および耐圧式に密閉する。
【0079】
真空導管62は、中空のシリンダ70を含むように設計されたポンプ68に接続され、この中空のシリンダの領域はベース53に直交するように接続される側で開放している(図4では底部で開放している)。さらにポンプ68は、プランジャ72を備え、これは、非ロック状態で(図4には示されない)、中空のシリンダ70内を軸方向に可動であり、中空のシリンダ70の内部空間を互いに対して気密かつ耐圧である2つの部分にさらに分割する。真空導管62は、コネクタ74を介して気密および耐圧式になるように外部に向かって密閉される汲み上げ空間76に合流する。張力をかけた圧縮ばね78が、汲み上げ空間76内でプランジャ72と中空のシリンダ70の上部の内張ベース面(図4における頂部にある)の間に配置され、プランジャ72をベース53に面する中空のシリンダ70のベース面の方向に押す。プランジャ72が、圧縮ばね78の作用の下にロック状態に移動しないことについての理由は、プランジャ72が、外から手動で操作することができるねじ80を利用して固定されるためである。この目的のために、ねじ80は、プランジャ72の軸方向の管セクションにある雌ねじ83と係合し、これによりプランジャを所定の位置に維持する雄ねじ82を備える。ねじ80は、気密で耐圧式かつ回転可能であるように中空のシリンダ70の上部の内張ベース面を貫通するように誘導される。ねじ80を回転させることによって、ねじをプランジャ72から切り離し、ポンプ68を起動することが可能になる。したがってねじ80は、エネルギータンクとして機能する圧縮ばね78からエネルギーを解放するために手動で操作する要素として機能する。
【0080】
圧縮ばね78は、ロックを解除されたおよび/または切り離されたプランジャ72をベース53の方向に加速させる。空気がベース53に面する中空のシリンダ70の内部空間の一部から開口86を通って逃げるのと同時に、拡大する汲み上げ空間76における圧力が低下する。結果として、ガスが真空導管62から、および真空導管62を通ってカートリッジ54の内部空間から排気される。圧縮ばね78は、プランジャ72をベース53に面する中空のシリンダ70の底面に当たるよう押す。この文脈において、ベース53に面するプランジャ72の側部にある突起84は、開口86を通り抜けるように押され、この場所でロッカーレバー87を傾ける。ロッカーレバー87の動きおよび位置によって、ポンプ68が汲み上げプロセスを完了したかどうかを外から確認することができる。汲み上げプロセスによる汲み上げ空間76の体積の増加は、カートリッジ54の内部空間に十分な真空を生成するのに十分である。カートリッジ54の内部空間における圧力は、少なくとも50%削減されるならば、好ましくは少なくとも90%削減されるのが好ましいが、真空は既に十分であり得る。
【0081】
カートリッジ54の内部空間が排気された後、その中に充填された出発成分を混合チューブ58をハンドル61によって移動させることによって混合デバイス56を利用して混ぜ合わせることができる。その後、密閉プランジャ60が滅菌プランジャ59に対して回転され、これによりガス貫通接続部が、密閉プランジャ60によって閉鎖される。真空導管62が密閉プランジャ60から離れるように引っ張られる、および/または密閉プランジャ60から取り外される。カートリッジ54がベース53から緩められ、混合された骨セメントをカートリッジ54から適用することができる分配チューブ(図示せず)が、雌ねじにねじ込まれる。滅菌プランジャ59と、密閉プランジャ60で構成される分配プランジャ59、60は、ロックを解除され、適用デバイス、すなわち共通の押出しデバイス(図示せず)を利用してカートリッジ54の内部に推し進めることができる。このような手段によって、カートリッジ54の内容物、すなわち負圧で混合された骨セメントは、反対側の開口からそこにねじ込まれた分配チューブを介して押し出される。
【0082】
骨セメント出発成分を除いて、真空混合システムの要素は、射出成型によってプラスチック材料から製造することができる。しかしながら圧縮ばね78はまた鋼で構成されることも好ましい。
【0083】
真空導管62は、様々なプラスチック材料で構成することができる。真空導管62は、密閉プランジャ60を可動式に混合チューブ58上に配置することができるように可撓性でなければならない。
【0084】
真空混合システムを完璧に機能するために何らかの外部の供給源(粉体、水または圧縮ガス)に接続する必要は全くない。結果として、真空混合システムは、従来の真空混合システムと比べて混乱することが少なく、可動式の用途で常に利用することができる。負圧および/または真空を生成するのに必要なエネルギーは、エネルギータンクとして、ねじ80を操作することによって容易に起動させることができる張力をかけた圧縮ばね78に蓄えられる。圧縮ばね78の1つの代替として、張力をかけた張力ばねまたは張力をかけたガスばねをまさに同様に使用することができる。鋼でできた圧縮ばね78を含めた設計は、より簡素であり、費用が少なく、よって好ましい。
【0085】
上述の記載ならびにクレーム、図面および例示の実施形態に開示される本発明の特徴は、単独で、およびいずれかの組み合わせの両方で本発明の種々の実施形態を実装するのに不可欠であり得る。
【符号の説明】
【0086】
1,51 カートリッジシステム
2 液体容器
3 フット部
4,54 カートリッジ
6,56 混合羽根
8,58 混合チューブ
9,59 滅菌プランジャ
10,60 密閉プランジャ
11,61 ハンドル部
12,62 接続導管/真空導管
14 液体導管
16 サイフォン
18,68 ポンプ
20,70 中空のシリンダ
22,72 プランジャ
24,74 出口/コネクタ
26,76 汲み上げ空間
28,78 ばね
30,80 接続要素/ねじ
32,82 雄ねじ
33,83 雌ねじ
34,84 突起/ピン
36,86 開口
40 ガラスアンプル
42 ガラスアンプルのヘッド
44 回転レバー
46 蓋
53 ベース
87 ロッカーレバー
90 ねじ込み式装着具
図1
図2
図3
図4