【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって本発明の目的は従来技術の欠点を克服することである。具体的には、外部の真空源を有する既知の真空混合システムの欠点を克服すべきである。本発明の目的は、具体的には、セメント成分が混合される直前のみに負圧が生成される真空混合システムを開発することである。このデバイスは、可能な限り簡素であるべきであり、周辺大気に対する負圧がセメントカートリッジ内で少なくとも1度生成されることを可能にするべきである。さらに真空混合システムは、モノマー液体をモノマー容器からセメント粉体で満たされたカートリッジに移動させることを可能にすることができる点で有利であり得る。さらにこの場合、完全に事前に詰められた真空混合システム内でのモノマーの移動および真空混合を可能にする方法が提供される。さらに開発すべき真空混合システムは主に、安価なプラスチックから作製される。
【0012】
さらに製造するのに費用がかからず、医療用セメントを混合し、適用可能であれが、出発成分を保管するように確実に機能するデバイスと、骨セメントを混合するための方法が考案され、そこでは、可能であれば外部のまたは追加のエネルギー源を使用する必要なしに、かつ混合材料内に空気の含有物が生じることなく、簡素な手動の操作を利用して出発成分を混合することができる。
【0013】
混合材料としてのポリメチルメタクリレート骨セメントの主な成分は、粉体であるべきであり、第2の成分は、液体の形態で存在すべきである。好ましくは、骨セメントの2つの出発成分を互いから隔てて真空混合システム内に保管し、本デバイスの利用を通してそれらを安全に混ぜ合わせることが可能である。
【0014】
本発明の目的は、骨セメントを混合するための排気可能な内部空間を有する少なくとも1つのカートリッジと、負圧を生成するためのポンプと、負圧を生成するために少なくとも1つのカートリッジの内部空間をポンプに接続するための接続導管とを備え、これにより真空混合システムは、ポンプを駆動することを目的とし、ポンプに接続されるまたは接続させることができ、その中に蓄積されたポンプの少なくとも1つの汲み上げプロセスのためのエネルギーを有する内蔵式のエネルギータンクを備え、これにより内蔵式のエネルギータンクからエネルギーを消費することによって汲み上げプロセスにおいてポンプを利用して負圧を生成することができ、そのためこの負圧を利用して少なくとも1つのカートリッジの内部空間から接続導管を通ってガスを排気することができるポリメチルメタクリレート骨セメントを混合するための真空混合システムによって満たされる。
【0015】
今のところ、負圧は、周辺大気圧より低い、周辺大気に関連する圧力を意味するように理解されるべきである。
【0016】
好ましくはポンプは、真空混合システム内に組み込まれるように設けることができる。
【0017】
好ましくはポリメチルメタクリレート骨セメントは、混合されるおよび/または少なくとも2つの成分から生成することができる。特に好ましくは、一方の成分は液体であり、他方の成分は粉末化されている。
【0018】
好ましくは本発明は、汲み上げプロセスによって少なくとも50%削減可能であるように、好ましくは少なくとも90%削減可能であるように少なくとも1つのカートリッジの内部空間に圧力を提供することができる。
【0019】
本発明によると、混合材料、詳細にはPMMA骨セメントの出発成分は、カートリッジ内に既に存在している。
【0020】
本発明によると、デバイスはまた、容器がデバイス内に挿入される際、または容器がデバイスの固定式の部品である場合に出発成分の保管にも十分に適合されることが好ましい。
【0021】
混合材料は、骨セメント、詳細にはPMMA骨セメントであることが好ましい。
【0022】
本発明の改善点はその上に、負圧によって少なくとも1つのカートリッジの内部空間から接続導管を通ってガスを排出させることができ、負圧によって内部空間と液体容器の間の導管からガスを排出させることができ、カートリッジ内のPMMA骨セメントの第1の成分と混合させるべき液体を、負圧によって液体容器からカートリッジの内部空間に引き込むことができることを実現することができる。
【0023】
真空混合システムの改善点は、ポンプが気密式の汲み上げ空間を備え、可動プランジャまたは可動式の壁がポンプ内に設けられることで汲み上げ空間の境界として機能し、これによりプランジャまたは壁を内蔵式のエネルギータンクのエネルギーによって一方向に、好ましくは一定方向に駆動させることができ、そのためプランジャまたは壁の動きが汲み上げ空間を拡大し、このようして汲み上げ空間内に生じる負圧によって、少なくとも1つのカートリッジの内部空間を接続導管を介して排気させることを可能にすることを提案する。
【0024】
あるいは、本発明はその上、ポンプを回転ホイール、周期的に作動するプランジャまたは周期的に作動する膜を備えるように設けることができる。しかしながら可動プランジャまたは可動式の壁を有する実施形態は、その設計が際立って簡素であり、間違い(回転部品が阻止される可能性がある)が起こりにくく、よって高価でなく、その一方でカートリッジの内部空間に負圧を簡単に生成するのに既に十分であるため、本発明によって好まれる。特有の要件のために、例えばカートリッジの内部空間の体積が小さいなどによって、より複雑なポンプシステムを生じさせる必要性は全くない。
【0025】
前記実施形態はまた、汲み上げ空間の体積の拡大をカートリッジの内部空間の自由な体積に少なくとも等しくなるように実現することができ、好ましくは汲み上げ空間の体積の拡大は、PMMA骨セメントの第1の粉末化した成分を含むカートリッジの内部空間の体積と、接続導管の体積と、内部空間と液体容器の間の導管の体積と、カートリッジの中でPMMA骨セメントの第1の成分と混合されるべきであり、これによりPMMA骨セメントの第2の成分である液体容器中の液体の体積との総量に少なくとも等しくなるべきである。
【0026】
これにより、ポンプがカートリッジの内部空間を排気することができることを保証する。この文脈において、汲み上げプロセスより前の汲み上げ空間の体積は、理想的な場合において可能な限り小さい。したがって本発明は好ましくは、汲み上げプロセス後の汲み上げ空間の体積を、汲み上げプロセス前の汲み上げ空間の体積より少なくとも5倍、具体的には好ましくは少なくとも汲み上げプロセス前の汲み上げ空間の体積より10倍大きくなるようにすることができる。
【0027】
改善点によって、本発明は、少なくとも1つのカートリッジの内容物を混合するための混合デバイスを備え、これにより混合デバイスは、カートリッジの内部空間内に配置されることが好ましい、ならびに/あるいは手動でまたはモータによって駆動させることができる真空混合システムを提供することができる。
【0028】
好ましくはカートリッジは、耐圧式の貫通接続部を備え、これを介してロッドまたは混合チューブが誘導され、このロッドまたは混合チューブを利用してカートリッジの外から混合デバイスを操作することができる。この目的のために、ロッドまたは混合チューブは、貫通接続部の中に適切に設置されることで、それは回転し長手方向に移動させることができることが好ましい。混合デバイスを使用してカートリッジの内容物を十分に混合することができる。
【0029】
さらに本発明は、真空混合システムの総重量を30kg未満、特に好ましくは総重量が10kg未満になるようにすることができる。
【0030】
内蔵式のエネルギータンクを有する混合デバイスおよびポンプの本発明による設計に従って、重量を規定されるように小さくすることが可能になる。重量が小さいことは、混合デバイス携帯することができ、供給導管へのいかなる接続もなしで、および予め大きな準備をせずに使用することができるという点で有利である。
【0031】
エネルギータンクからエネルギーを解放するように作動させることができ、これにより解放されたエネルギーがポンプを駆動し、駆動されたポンプがカートリッジの内部空間を排気する手動で操作可能な作動要素を備えるように真空混合システムを提供することによって、特に利用し易い真空混合システムを実現することができる。
【0032】
これにより、真空混合システムの操作が簡素化される。結果として、コンパクトな設計にも関わらず、操作が簡素であることを保証することができる。
【0033】
好ましい一実施形態によると、本発明は、充填されたガス圧カートリッジ、好ましくはCO
2ガスカートリッジ、または張力をかけた回復要素、好ましくは張力をかけたばね、特に好ましくは張力をかけた鋼ばねとなるようにエネルギータンクを提供することができる。
【0034】
前記エネルギータンクは、たとえ長期間にわたってもエネルギーを維持する。さらにこのように蓄積された少量のエネルギーは、カートリッジの内部空間を排気するのに十分な負圧を保証するのに十分である。
【0035】
実現可能であり、本発明によって使用することができる他のエネルギータンクには、蓄電池、充電式電池またはコンデンサが含まれ、これらを利用して、例えば電磁的相互作用を利用して短期間のパルスを引き出し、ポンプを駆動することができる。同様に、化学的な推進剤が、エネルギータンクとして機能してポンプを駆動する場合もある。しかしながら前記エネルギータンクは、ガス圧カートリッジよりも、詳細にはばねなどの回復要素よりも複雑であり実装するのが難しい。この目的のために、ガス圧カートリッジおよび張力をかけた回復要素、例えばばねが特に本発明によって好まれる。
【0036】
さらに本発明は、カートリッジの内部空間に配置されるべきカートリッジから混合した骨セメントを分配するための可動式分配プランジャを提案しており、これにより分配プランジャは好ましくは、所定の場所に脱着式にロックされる、またはロックすることができることで分配プランジャが負圧の作用に反応して移動しないようにする。
【0037】
分配プランジャによって真空混合システムの操作が簡素化される。
【0038】
さらに本発明は、張力をかけた回復要素、詳細には張力をかけたばね要素によって駆動されるようにポンプを準備することができ、これにより好ましくは回復要素、詳細にはばね要素の拡張または収縮が、カートリッジの内部空間において周辺大気に対する負圧を生成する。
【0039】
このような設計は特に簡素であり、実装するのにそれほど費用はかからない。しかしながらそれと同時に、前記設計によって、比較的故障しにくい確実に作動する真空混合システムを設計することが可能である。
【0040】
改善点によると、本発明は、セメント粉体で満たされたセメントカートリッジとなるカートリッジと、セメントカートリッジとは別個でありモノマー液体を中に含む容器を備え、これにより容器が、開放させることができる分離要素を介して液体不透過性になるようにセメントカートリッジの内部空間に接続され、セメントカートリッジの内部空間がガス透過性になるようにポンプに接続される、または接続させることができるような真空混合システムを提供することができる。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態は、
A)中空のシリンダであって、これにより中空のシリンダがカートリッジの内部空間に接続される、または接続させることができる中空のシリンダと、
B)中空のシリンダの一端における気密の栓と、
C)気密で軸方向に可動であるように中空のシリンダ内に配置されたプランジャと、
D)プランジャと栓の間に配置された内蔵式のエネルギータンクとしての少なくとも1つのばね要素と、
E)着脱式にプランジャに接続され、プランジャを中空のシリンダ内の所定の位置に保持し、ばね要素を張力をかけてまたは圧縮させて維持し、これにより接続要素が気密の貫通接続部を介して中空のシリンダから外に出るように誘導され、外部からプランジャから切り離すことができ、これにより接続要素の接続部を切り離した後、プランジャをばね要素の拡張によって栓の軸方向に反対側に移動させることができる接続要素とを備えるように設計されるポンプを提供することができる。
【0042】
前記設計は特に簡素であり、その部品は、射出成型によってプラスチックから製造することができる。
【0043】
この実施形態において、本発明は、保管状態において圧縮され、ロックされた接続要素を利用してポンプのプランジャによって圧縮状態に維持されるばね要素を提供することができる。
【0044】
さらにこの文脈において、本発明は、中空のシリンダ、栓およびプランジャによって形成される汲み上げ空間の体積が、排気すべきカートリッジの内部空間の体積に少なくとも等しくなるように、ばね要素が拡張した後、中空のシリンダの内部に適切に移動されるプランジャを提供することができる。
【0045】
体積を合致させる効果は、ポンプが、指定された目的のために十分であるように寸法が決められる点である。
【0046】
さらに、本発明は、中空のシリンダの端部に配置され、プランジャが中空のシリンダから出ることができないようにプランジャの動作を適切に制限する境界要素を提供することができる。
【0047】
改善点によると、本発明は、栓から離れるように向く側に、プランジャの最大の動作の後、真空混合システムの外部で目で見て確認することができ、これによりその最大の動作の後のプランジャの位置を指示する視覚的なマーカーを含むプランジャを提供することができる。
【0048】
その結果、ユーザは、外部から真空混合システムの状態を確認することができる。
【0049】
本発明の基礎を成す目的はまた、真空混合システム、詳細には本発明による真空混合システムのカートリッジの内部空間でポリメチルメタクリレート骨セメントを混合するための方法であって、真空混合システムに組み込まれたエネルギータンクに蓄積されたエネルギーを利用して真空混合システムのポンプを駆動し、これによりこうして駆動されたポンプを使用してカートリッジの内部空間を排気し、カートリッジの内部空間で骨セメントを混合する方法によって達成される。
【0050】
この文脈において、本発明は、内蔵式のエネルギータンクとして機能する回復要素の弛緩によって拡大するポンプの汲み上げ空間の体積と、このようにして生成される負圧によって排気されるカートリッジの内部空間とを実現することができる。
【0051】
改善点により、セメント粉体を中に含むカートリッジの内部空間と、カートリッジの内部空間からガスを排気するポンプと、カートリッジの内部空間へと誘導されるモノマー液体であって、排気された内部空間においてセメント粉体と混合されるモノマー液体とを提供することができる。
【0052】
この文脈において、本発明は、ポンプのプランジャから切り離される接続要素を提供することができ、その後圧縮された回復要素がプランジャをポンプの中空のシリンダ内で軸方向に移動させ、これを利用して周辺大気に対する負圧が生成され、これによりガスが接続導管を通ってカートリッジの内部空間から中空のシリンダへと吸引され、その後セメント粉体が手動でまたはモータ駆動式に混合デバイスを利用してモノマー液体と混合され、その後混合されたセメントドウを含むカートリッジが取り外され、分配プランジャを軸方向に移動させることによってセメントドウがカートリッジから押し出される。
【0053】
さらに本発明は、カートリッジ内に準備されるセメント粉体と、カートリッジとは別個の容器の中に準備されるモノマー液体とを提供することができ、これによりモノマー液体は、分離要素を利用してカートリッジ内のセメント粉体から隔てられ、分離要素は、接続要素がプランジャから切り離される前に開放されることで、カートリッジの内部空間と容器の間に液体透過性の接続が確立され、その後圧縮されたばね要素がプランジャを中空のシリンダ内を軸方向に移動させ、これにより周辺大気に対する負圧が生成され、これによりガスがカートリッジの内部空間から接続導管を通って中空のシリンダ内に吸引され、モノマー液体は、カートリッジの内部空間に形成された負圧によってカートリッジ内に吸引される。
【0054】
本発明は、ポンプと、カートリッジの内部空間を排気するのに十分な量のエネルギーがポンプのために貯蔵される一体式のエネルギータンクとを有する驚くべき発見によって、真空混合システムを外部のエネルギー源および他の供給導管から独立して設けることが可能になるということに基づいている。本発明による真空混合システムは、コンパクトで、軽量であり、スペースを削減するように設計することができる。ポンプは、真空混合システム全体を使い捨てシステムとして使用することができるような最も簡単な手段を含むように設計することができる。さらにおよび本発明によって好まれるように、エネルギーはまた、ポンプを利用してモノマー液体をセメント粉体へと移動させるのに使用される場合もある。PMMA骨セメントの2つの成分はこのとき、真空内および/または負圧で混合することができる。
【0055】
カートリッジから排気されたガスは、望ましくない要因(例えばメチルメタクリレート蒸気など)を取り除くためにこのようなガスをフィルタに掛ける必要がないため、周辺に放出されないことは本発明による真空混合システムの別の利点である。代わりに、ガスは単にポンプの内部および/または汲み上げ空間に留まるだけである。
【0056】
本発明によるセメンティングシステムは、ポリメチルメタクリレート骨セメントの粉体成分を液体モノマー成分と混合する前および混合する間の一次的な負圧の生成に適した真空および/または負圧を生成するためのデバイスを含む。
【0057】
本発明の基礎を成す根拠は、骨セメントの出発成分を負圧または真空で混合するのに必要とされるカートリッジ内の前記真空および/または負圧を生成するのに比較的少量のエネルギーしか必要としない発見に基づいている。モノマー液体をセメント粉体に移動させるのに必要なエネルギー量もまた小さい。これを利用してポンプが駆動される前記少量のエネルギーは、真空混合システムの内部エネルギータンクに貯蔵することができる。さらに張力をかけた鋼ばねまたは別の回復要素に貯蔵されるエネルギー量は、本発明によると、本発明による真空混合システムを駆動させるエネルギーを提供するのに十分である。
【0058】
本発明の別の例示の実施形態を、概略的な4つの図面に基づいて以下で例示するが、これは本発明の範囲を制限するものではない。