(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6087996
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】成形品取出機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/42 20060101AFI20170220BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
B29C45/42
B22D17/22 L
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-136159(P2015-136159)
(22)【出願日】2015年7月7日
(62)【分割の表示】特願2011-220361(P2011-220361)の分割
【原出願日】2011年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-171822(P2015-171822A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2015年7月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(72)【発明者】
【氏名】太田 遼
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−252845(JP,A)
【文献】
特開平5−38750(JP,A)
【文献】
特開平8−267555(JP,A)
【文献】
特開2002−67108(JP,A)
【文献】
特開2000−25078(JP,A)
【文献】
特開昭63−209914(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3101408(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
B22D 17/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機の金型の開閉方向と直交する直交方向に前記成形機と並んで配置され、
設置面に固定された設置用構造部材に取り付けられて前記開閉方向に延びる固定フレームと、
前記金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメントを移動させるために、前記固定フレームにガイドされて前記開閉方向に移動し且つ前記直交方向に移動する可動フレームとを備えて、前記成形機の金型から成形品を前記直交方向に取り出す成形品取出機であって、
前記固定フレームは、前記金型を交換する際に、前記成形機から離れて前記直交方向に全体的に位置が変えられることを可能にする取付機構を介して前記設置面に固定された前記設置用構造部材に取り付けられていることを特徴とする成形品取出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機の金型の横方向から成形品を取り出す成形品取出機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機の金型の横方向から成形品を取り出すいわゆるサイドエントリータイプの成形品取出機が販売されている。出願人も、非特許文献1に示すサイドエントリータイプの成形品取出機を製造販売している。この種の成形品取出機は、成形機の金型の開閉方向と直交する直交方向に成形機と並んで配置される。そして設置場所に設置される設置用構造部材に取り付けられて開閉方向に延びる固定フレーム(引抜フレーム)と、金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメントを移動させるために、固定フレーム(引抜フレーム)にガイドされて開閉方向に移動し且つ直交方向に移動する可動フレーム(横行フレーム)とを備えている。
【0003】
この種の成形品取出機では、成形機と成形品取出機とが並んで配置されることと、金型の開閉方向に固定フレーム(引抜フレーム)が存在するため、金型の交換スペースが十分に取れず、金型の交換作業が面倒になるという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.ype.co.jp/model/window/hs_robo/sxa_40ii_01.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の問題を解決するために、可動フレーム(横行フレーム)をできるだけ交換作業の邪魔にならない位置にスライドさせたり、固定フレームを固定端を中心にして成形機から離す方向に回動させて交換スペースを確保する解決手段が提案されている。しかしながら前者の解決手段では、十分な作業スペースを確保することができない。また後者の解決手段では、回動範囲を大きくしなければ十分な作業スペースを確保することができず、また回動機構は固定フレームを定位置に戻す際の位置決め精度が出し難いために、固定アームの位置の復元性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、金型の交換作業スペースを従来よりも広く確保することができて、しかも固定フレームを高い精度で定位置に戻すことができるいわゆるサイドエントリータイプの成形品取出機を提供することにある。
【0007】
上記目的に加えて、本発明の他の目的は、金型交換時における固定フレームの位置の変更作業が容易な成形品取出機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が対象とする成形品取出機は、成形機の金型の開閉方向と直交する直交方向に前記成形機と並んで配置される。そして成形品取出機は、
設置面に固定された設置用構造部材に取り付けられて前記開閉方向に延びる固定フレームと、金型から成形品を取り出す成形品取出アタッチメントを移動させるために、固定フレームにガイドされて開閉方向に移動し且つ直交方向に移動する可動フレームとを備えており、成形機の金型から成形品を直交方向に取り出す。本発明においては、特に、金型を交換する際に、固定フレームが、成形機から離れて直交方向に全体的に位置が変えられることを可能にする取付機構を介して
設置面に対して固定状態にある設置用構造部材に取り付けられている。このようにすると成形機から直交方向に離れた固定フレームと成形機との間に開閉方向全体に、従来よりも広い作業スペースを確保することができる。また固定フレームを直交方向に変位させることを可能にする取付機構は、安価なものでも回動機構と比べて位置決め精度が高いため、固定フレームを高い精度で定位置に戻すことができる。
【0009】
固定フレームを直交方向に変位させることを可能にする取付機構は、任意である。例えば、固定フレームが取り付けられる取付プレートと、取付プレートを直交方向にスライド可能に支持するスライド支持機構と、手動操作型の固定機構とを備えたものを用いることができる。手動操作型の固定機構は、手作業により操作される操作部を備え、取付プレートを所定位置に固定状態にすることと、固定状態を解除して取付プレートをスライド可能にすることを実現するものである。このような構造の取付構造は、構成がシンプルで、安価に構成することができる。
【0010】
なお取付機構は、固定フレームのスライドを許容する形状の開口部を備えたカバー部材によって覆うのが好ましい。カバー部材を用いる場合、前述の操作部は、固定フレームを直交方向にスライドさせた状態において、開口部を通して作業者の手で操作可能な位置に設けるのが好ましい。このようにするとカバー部材を外すことなく操作部を操作して、固定フレームをスライドさせることができるので、作業性が良好なものとなる。
【0011】
またスライド支持機構は、設置用構造部材に固定された2本のスライドレールと、該2本のスライドレールにスライド可能に保持されて取付プレートに固定された複数のスライダとからなるものを用いることができる。この場合、固定機構は、2本のスライドレールの間に位置するように設置用構造部材に固定された第1の取付部材と、取付プレートが固定状態にあるときに第1の取付部材と当接するように取付プレートに固定された第2の取付部材と、第1の取付部材と第2の取付部材とが当接している状態で、第1及び第2の取付部材を1本以上のネジ部材によりネジ止めする締結機構とから構成することができる。この構造では、2本のスライドレールにより取付プレートの位置が規制されているため、第1及び第2の取付部材が当接したときに、位置ずれが生じることがない。そのため締結機構のネジ止め作業ができなくなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態の成形品取出機の正面図である。
【
図2】本実施の形態の成形品取出機の平面図である。
【
図3】本実施の形態の成形品取出機の右側面図である。
【
図4】(A)は固定フレームが定位置にある状態を示しており、(B)はネジ部材を外して、取付プレートを成形機から離して移動させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して本発明の成形品取出機の実施の形態の一例について説明する。
図1〜
図3に示す本実施の形態のサイドエントリータイプの成形品取出機1は、
図2に破線で仮想的に示した成形機3の金型5A及5Bの開閉方向(Y方向)と直交する直交方向(X方向)に成形機3と並んで配置される。そこで成形品取出機1は、設置面GSに固定される設置用構造部材7を備えている。設置用構造部材7は、内部に支持構造体と電源部と制御部とを備えており、図示しないコントローラからの入力に応じて動作モードが指定される。成形品取出機1は、
設置面GSに固定された設置用構造部材7に取り付けられて開閉方向(Y方向)に延びる固定フレーム9と、金型5Bから成形品を取り出す成形品取出アタッチメント(図示せず)を移動させるために、固定フレーム9にガイドされて開閉方向(Y方向)に移動し且つ直交方向(X方向)に移動する可動フレーム11を更に備えている。図示しない成形品取出アタッチメント(チャックや吸着ノズル等)は、可動フレーム11に固定されて所定の角度範囲の回動動作をする回動モータ13に装着されて、金型5A,5Bの間に挿入されて、金型5Bから成形品を取り出す。可動フレーム11は、特開2008−247006号公報に詳しく説明されているようなベルト駆動機構により回動モータ13に装着された成形品取出アタッチメントをX方向に移動させる。
図3には、最も前方(成形機3側に最も近い位置)に移動したときの回動モータ13とその周辺部品を破線で示してある。
図4に示す第1のモータ15が、可動フレーム11のベルト駆動機構の駆動源であり、第2のモータ17が可動フレーム11を固定フレーム9に沿ってY方向に変位させる際の駆動力を発生する駆動源である。可動フレーム11を固定フレーム9に沿ってY方向に変位させる機構も、ベルト駆動機構である。
【0014】
可動フレーム11は、成形品を金型5Bから引き抜く動作をする際と、成形品を図示しない成形品回収部に搬送する動作する際にY方向に移動する。回動モータ13は、成形品回収部に成形品を積み上げる際に成形品を積み上げ易い姿勢にするために回動動作を行う。
【0015】
本実施の形態では、
図4(A)及び(B)に示すように、金型5A及び5Bを交換する際に、固定フレーム9が、成形機3から離れて直交方向(X方向)に位置が変えられるようにする取付機構19を介して設置用構造部材7に取り付けられている。なお
図3によく示されるように、取付機構19は、固定フレーム9のX方向へのスライドを許容する形状の開口部18Aを備えたカバー部材18によって覆われている。
【0016】
固定フレーム9を直交方向(X方向)に変位させることを可能にする取付機構19の構成は、任意である。本実施の形態では、固定フレーム9が取り付けられる取付プレート21と、取付プレート21を直交方向(X方向)にスライド可能に支持するスライド支持機構23と、手動操作型の固定機構25とを備えている。
【0017】
図5に模式的に示すように、スライド支持機構23は、設置用構造部材7に固定された2本のスライドレール27A及び27Bと、該2本のスライドレール27A及び27Bにスライド可能に保持されて取付プレート21に固定された4個のスライダ29とからなるものを用いている。なおスライド支持機構23としては、公知の種々の構造のものを用いることができるのは勿論である。
【0018】
図5に示すように、手動操作型の固定機構25は、手作業により操作される操作部を構成するネジ部材31を備えている。具体的には、2本のスライドレール27A及び27Bの間に位置するように設置用構造部材7に固定された第1の取付部材33と、取付プレート21が固定状態にあるときに第1の取付部材33と当接するように取付プレート21に固定された第2の取付部材35とを備えている。なお、理解を容易にするために
図5においては第2の取付部材35は、実線で示してある。第1の取付部材33には、ネジ部材31が螺合される雌ネジ孔37が形成されており、第2の取付部材35にはネジ部材31が挿入される貫通孔39が形成されている。第1の取付部材33と第2の取付部材35とが当接している状態で、第1及び第2の取付部材を1本以上のネジ部材31によりネジ止めする締結機構が構成されている。この構造では、2本のスライドレール27A及び27Bにより取付プレート21の位置が規制されているため、第1及び第2の取付部材33及び35が当接したときに、位置ずれが生じることがない。そのためネジ部材31によるネジ止め作業ができなくなることがない。本実施の形態の取付構造は、取付プレート21を所定位置(定位置)に固定状態にすることと、固定状態を解除して取付プレート21をスライド可能にすることを実現するものであり、この取付構造は構成がシンプルで、安価に構成することができる。
【0019】
図4(A)に示す状態は、成形品取出機1が動作可能状態にあるとき、すなわち固定フレーム9が定位置にある状態を示しており、
図4(B)は、ネジ部材31を外し、取付プレート21を成形機3から離してX方向に移動させた状態を示している。
図4(A)と
図4(B)を対比すると明らかなように、固定フレーム9がX方向にスライドした位置にあるときに成形品取出機1と成形機3との間に形成される空間S2は、固定フレーム9が定位置にあるときに成形品取出機1と成形機3との間に形成される空間S1と比べて、固定フレーム9のスライド量分だけ広くなっている。したがって金型の交換作業の際に、作業者は、広くなったスペースで楽に交換作業を行うことができる。
【0020】
本実施の形態では、カバー部材18を用いる場合でも、操作部を構成するネジ部材31は、固定フレーム9を直交方向にスライドさせた状態[
図4(B)の状態]において、開口部18Aを通して作業者の手で操作可能な位置に設けられている。そのためカバー部材18を外すことなくネジ部材31を操作して、固定フレーム9をスライドさせることができる。なおスライド機構等の保護のために、カバー部材18を外して、スライド作業をするように、開口部18Aの大きさを定めてもよい。
【0021】
固定フレーム9をスライドさせる場合には、可動フレーム11は
図4に示すように回動モータ13が成形機3から最も離れた位置に停止しているようにベルト駆動機構を動作させておくのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、成形機から直交方向に離れた固定フレームと成形機との間に開閉方向全体に、従来よりも広い作業スペースを確保することができる。また固定フレームを直交方向に変位させることを可能にする取付機構は、位置決め精度が高いため、固定フレームを高い精度で定位置に戻すことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 成形品取出機
3 成形機
5A,5B 金型
7 設置用構造部材
9 固定フレーム
11 可動フレーム
13 回動モータ
15 第1のモータ
17 第2のモータ
18 カバー部材
18A 開口部
19 取付機構
21 取付プレート
22 取付部材
23 スライド支持機構
25 固定機構
27A,27B スライドレール
29 スライダ
31 ネジ部材
33 第1の取付部材
35 第2の取付部材
37 雌ネジ孔
39 貫通孔