(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
  本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
 
【0021】
<管理システム100の概要>
  
図1は、本実施形態に係る建設機械の管理システム100が適用される現場の一例を示す図である。建設機械の稼働状態管理システム(以下、適宜管理システムという)100は、管理装置40に、通信回線101又は通信衛星5を介して建設機械1の稼働情報を収集させたり、建設機械1が備える電子機器及び電子機器に制御される機器等(以下、適宜電子機器等という)に処理を実行させたり、電子機器等の設定を変更したりする。
 
【0022】
  図1に示す例において、管理システム100は、建設機械1であるダンプトラックMCD及び油圧ショベルMCSの通信端末装置20に管理装置40との通信を確立させたり、建設機械1の稼働情報を収集したり、建設機械1の電子機器等に何らかの処理を実行させたりする。本実施形態において、建設機械1はダンプトラックMCD及び油圧ショベルMCSに限定されない。例えば、管理システム100は、ホイールローダ、ブルドーザ又はフォークリフト等を管理してもよい。以下において、ダンプトラックMCD及び油圧ショベルMCSを、適宜建設機械1というものとする。
 
【0023】
  管理システム100は、例えば、管理装置40と建設機械1が備える通信端末装置20とが、携帯電話等の移動体通信に適用される無線通信システム、無線LAN(Local  Area  Network)又は通信衛星5を用いた衛星通信回線を介して通信する。管理装置40は、例えば、管理施設3内に設置されている。管理施設3は、建設機械1が稼働する現場内に設けられていてもよいし、建設機械1が稼働する現場から遠く離れた場所、例えば建設機械1の予防保全等を実行するサービスマン又は現場の管理者が滞在する場所に設けられていてもよい。また、管理装置40は、定められた場所に設置されたものでもよいし、無線通信の機能を備えた携帯端末のように、任意の場所に移動可能なものであってもよい。
 
【0024】
  本実施形態において、管理装置40は、通信装置103及びこれに接続された衛星通信用のアンテナ104を介して通信衛星5と通信する。管理装置40と建設機械1が備える通信端末装置20とは、通信衛星5を用いた衛星通信回線を通じて互いに通信して各種の情報をやり取りする。また、管理装置40は、通信装置103、これが接続される通信回線101及び通信回線101に接続される基地局6を介して、建設機械1が備える通信端末装置20と各種の情報をやり取りすることもできる。
 
【0025】
  建設機械1が備える通信端末装置20は、管理装置40からの処理要求指令を受信(取得)したり、建設機械1の稼働情報及び前述した処理要求指令に応答する各種情報又は信号を管理装置40に送信したりする。通信端末装置20は、通信用アンテナ34Aから情報を外部に送信する。管理装置40は、建設機械1の通信端末装置20から送信された各種情報を、基地局6、通信回線101及び通信装置103を介して受信(取得)する。管理装置40からの処理要求指令には、建設機械1の通信端末装置20が管理装置40との通信を確立できるようにする処理を通信端末装置20に実行させる処理を含む。
 
【0026】
  管理装置40は、建設機械1が備える電子機器等に処理を要求したり、電子機器等の機能の設定を変更したりする。この場合、管理装置40は、建設機械1に送信する命令又は情報を、通信装置103を介して通信衛星5又は通信回線101に送信する。この命令又は情報は、通信衛星5又は基地局6から電波の形で建設機械1に送信される。基地局6から送信された、前述した命令又は情報を含む電波は、建設機械1の通信用アンテナ34Aが受信する。
 
【0027】
  建設機械1の通信端末装置20は、通信用アンテナ34Aが受信した電波を、復調及び変換して、後述する通信端末装置20の処理部20Cが解読できる元の情報にする。このように、建設機械1、より具体的には通信端末装置20と管理装置40とは、無線通信によって相互に情報をやり取りすることができる。次に、建設機械1、管理装置40及び管理システム100について、より詳細に説明する。
 
【0028】
<管理システム100の詳細>
  
図2は、本実施形態に係る建設機械の管理システム100の一例を示す図である。
図3は、建設機械1が備えるモニタ22の一例を示す図である。
図2は、作業機械1と管理装置40とが衛星通信回線を通じて、互いに通信して各種の情報をやり取りする場合を例示しているが、
図1に示したように携帯電話等の移動体通信に適用される無線通信システムによって、作業機械1と管理装置40とが通信してもよい。建設機械の管理システム100は、管理施設3に備えられる管理装置40と、建設機械1が備える車載システム1Sとを含む。以下においては、管理装置40と車載システム1Sとが、通信装置103及び通信衛星5を介して情報をやり取りする例を説明するが、
図1に示した基地局6及び通信回線101を介して情報をやり取りしてもよい。この場合、通信回線101は、携帯電話等の移動体通信に適用される無線通信システムであってもよい。
 
【0029】
  管理システム100において、車載システム1Sの通信端末装置20は、通信衛星5を介して管理装置40から送信されてきた命令又は情報を受信する。通信端末装置20は、受信した命令を実行して、例えば、管理装置40との通信を確立する処理を実行したりする。また、通信端末装置20は、建設機械1の稼働情報を収集して、所定のタイミングで稼働情報を管理装置40に送信したりする。この他に、通信端末装置20は、受信した命令又は情報を車載システム1Sが備える信号線30を介して建設機械1の電子機器等に送信し、前述した命令を実行させる。
 
【0030】
  本実施形態においては、説明の便宜上、1つの建設機械1及び1つの車載システム1Sと1つの管理装置40とが通信回線101を介して接続されるが、建設機械1及び管理装置40の数は限定されない。次に、車載システム1Sについて説明する。
 
【0031】
(車載システム1S)
  車載システム1Sは、通信端末装置20と、モニタ22と、位置検出装置35と、各種制御装置36とを有する。これらは、建設機械1が備える電子機器であり、建設機械1が備える信号線30に電気的に接続されている。建設機械1が備える電子機器を、適宜車載電子機器と称する。信号線30に接続されている電子機器は、互いに通信できるようになっている。以下において、建設機械1が備える信号線30を、適宜車内信号線30という。車内信号線30は、例えば、CAN(Controller  Area  Network)であるが、CANに限定されるものではない。建設機械1に備えられ、車内信号線30に接続される車載電子機器は、前述したものには限定されない。
 
【0032】
  通信端末装置20は、通信機能、例えば、管理装置40との間で無線通信を行い、情報をやり取りする機能を有する。通信端末装置20は、処理部20Cと、記憶部20Mと、通信部34とを有する。処理部20Cは、例えば、CPU(Central  Processing  Unit)である。記憶部20Mは、例えば、RAM(Random  Access  Memory)、ROM(Read  Only  Memory)若しくはフラッシュメモリ等又はこれらを組み合わせたものである。記憶部20Mは、通信端末装置20が実行する処理の命令が記述されたコンピュータプログラム及び前述した処理に必要な情報等を記憶している。
 
【0033】
  記憶部20Mは、スプーラ20MSと、故障記憶部20MDとを有する。スプーラ20MSは、記憶部20Mの一部であって、通信端末装置20以外の車載電子機器から車内信号線30を介して送信された情報又は管理装置40から送信されてきた情報を一時的に記憶する。故障記憶部20MDは、記憶部20Mの一部であって、建設機械1に発生した故障の情報を記憶する。故障記憶部20MDは、故障の情報を蓄積して保持する。故障の情報は、車内信号線30を介して通信端末装置20によって収集される。故障の情報は、故障の種類及び故障した日時を含む。
 
【0034】
  通信部34は、モデム及び通信用アンテナ34Aを備えており、通信衛星5との間で無線通信、具体的には衛星通信を行う。通信部34は、通信衛星5及び通信装置103を介して、管理装置40と情報をやり取りすることができる。本実施形態では、衛星通信により通信端末装置20と管理装置40とが通信を行って情報をやり取りするが、前述したように、通信端末装置20と管理装置40とは、携帯電話等の移動体通信に適用される無線通信システムを介して情報をやり取りしてもよい。
 
【0035】
  通信部34は、キースイッチ32がOFFの場合でも起動している。キースイッチ32についての詳細は後述する。すなわち、通信端末装置20は、キースイッチ32がOFFの場合でも、通信機能は有効になっている。このため、通信部34は、管理装置40からの指令を受信したら、蓄電器24から処理部20Cの電力を供給して処理部20Cを起動させることができる。この場合、通信衛星5は、通信部34が前述した指令を受信するまで、前述した指令を予め定められた周期で通信部34に向けてリトライして送信するようにしてもよい。また、通信部34は、キースイッチ32がOFFの場合に、予め定められた時間毎に蓄電器24から通信端末装置20への電力供給と電力供給の遮断とを繰り返して、管理装置40と通信することもできる。キースイッチ32がOFFの場合に電力が供給された通信端末装置20は、管理装置40に建設機械1の稼働情報を送信することができる。
 
【0036】
  モニタ22は、建設機械1に関する各種の情報を画面22Pに表示したり、ID番号等を入力したり、建設機械1の稼働量を調整したりする入力装置として機能する表示装置である。この稼働量については後述する。
図2に示す例では、建設機械1の累積稼働時間47が画面22Pに表示されている。画面22Pに表示される情報は累積稼働時間47に限定されるものではなく、建設機械1の燃料の残量、建設機械1が備える図示しないエンジンの回転速度又はエンジンの冷却水温度等といった建設機械1の稼働状態に関する情報が表示される。モニタ22は、建設機械1の図示しない運転室内に設置される。
 
【0037】
  モニタ22は、入力装置としても機能するので、画面22Pの下方に、入力スイッチ22Sを備える。入力スイッチ22Sは、画面22Pの下方に限らず他の場所にあってもよいし、画面22Pとは別体であってもよい。入力スイッチ22Sが画面22Pと別体である場合、入力スイッチ22Sは、図示しない運転室内のコンソールに設けられてもよい。本実施形態において、入力スイッチ22Sは、複数の押しボタン式の入力スイッチ22Sが画面22Pの下方、かつ横方向に配列されている。建設機械1のオペレータが入力スイッチ22Sを操作することにより、モニタ22の画面22Pに表示される画像を切り替えたり、建設機械1に処理を実行させたり、建設機械1の動作に関する各種設定を変更したり、建設機械1が備える各種の電子機器の設定を変更したりすることができる。
 
【0038】
  モニタ22は、例えば、液晶表示装置であるが、これに限定されるものではない。モニタ22は入力装置としても機能するが、この入力装置としての機能をモニタ22に発揮させるため、モニタ22は画面22Pにタッチパネルを備えていてもよい。
 
【0039】
  モニタ22は、モニタ22の各種の機能を実現するための制御装置22CNTを備えている。制御装置22CNTは、処理部22C及び記憶部22Mを備えている。処理部22Cは、例えば、CPUである。記憶部22Mは、例えば、RAM、ROM若しくはフラッシュメモリ等又はこれらを組み合わせたものである。
 
【0040】
  記憶部22Mは、処理部22Cが実行する処理の命令が記述されたコンピュータプログラム及び前述した処理に必要な情報を記憶している。記憶部22Mは、稼働量記憶部22MOPと、故障記憶部22MDとを有する。稼働量記憶部22MOPは、記憶部22Mの一部であって、建設機械1の稼働量の累積値を記憶する。故障記憶部22MDは、記憶部22Mの一部であって、建設機械1に発生した故障の情報を記憶する。故障記憶部22MDは、故障の情報を蓄積し保持する。本実施形態において、モニタ22は、車内信号線30を介して、通信端末装置20と通信する。稼働量記憶部22MOP及び故障記憶部22MDは、例えば、不揮発メモリである。
 
【0041】
  建設機械1の稼働量としては、建設機械1が稼働した時間である稼働時間、建設機械1の走行距離、建設機械1が備えるエンジンへの燃料噴射量、建設機械1がダンプトラックである場合は積荷の積載量、建設機械1が油圧ショベルである場合はバケットが運んだ土砂類の量である積込量が例示される。建設機械1の稼働量は、例示したものに限定されない。建設機械1の走行距離は、例えば、建設機械1が前進するときの走行距離及び後進するときの走行距離のいずれも含む。稼働量及び稼働量の累積値は、建設機械1の稼働情報である。
 
【0042】
  モニタ22の画面22Pに表示される累積稼働時間47は、建設機械1の稼働量である稼働時間の累積値である。本実施形態においては、稼働量の累積値として累積稼働時間47がモニタ22の画面22Pに表示されているが、画面22Pには例示したいずれの稼働量の累積値が例示されてもよい。また、入力スイッチ22Sにより、累積値を表示させる稼働量の種類を切り換えてもよい。
 
【0043】
  モニタ22は、稼働量記憶部22MOPに記憶された建設機械1の稼働量の累積値を調整できる累積値記憶装置である。累積値記憶装置は、モニタ22とは別体のものとしてもよい。建設機械1のサービスマンは、稼働量記憶部22MOPに記憶された建設機械1の稼働量の累積値を、現時点で稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値とは異なる値に調整することができる。この調整では、モニタ22の入力スイッチ22Sが用いられる。稼働量の累積値を調整するためには、サービスマンは、例えば、特定の暗証番号等を入力スイッチ22Sから入力して、モニタ22の画面22Pに稼働量の累積値を調整するためのメニュー画面を表示させ、稼働量の累積値を現時点とは異なる値に調整する。
 
【0044】
  車内信号線30には、端子37が電気的に接続されている。端子37に、例えば、検査装置を接続することにより、通信端末装置20、モニタ22、位置検出装置35及び各種制御装置36の状態を診断したり、通信端末装置20の記憶部20M及びモニタ22の記憶部22Mに記憶された情報を書き換えたり読み出したりすることができる。検査装置は、例えば、専用ツール又は専用のアプリケーションがインストールされたパーソナルコンピュータ等の端末装置を用いることができる。
 
【0045】
  通信端末装置20と管理装置40とは、無線通信によって情報をやり取りすることができるが、通信端末装置20と管理装置40との間における情報のやり取りは、このような形態には限定されない。通信端末装置20と管理装置40との間における情報のやり取りは、例えば、パーソナルコンピュータ等の端末装置を、通信ケーブルを介して端子37に接続し、通信端末装置20の外部に稼働情報等を出力したり、管理装置40から通信端末装置20に各種情報等を送信したりするような形態であってもよい。そして、前記端末装置と管理装置40とを無線又は有線で接続して、前述した端末装置から管理装置40に稼働情報等を送信したり、管理装置40から前述した端末装置に各種情報等を送信したりするようにしてもよい。モニタ22の稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値は、端子37に接続された端末装置を介して調整されてもよい。
 
【0046】
  キースイッチ32は、建設機械1に備えられた運転席近傍に設けられている。建設機械1が備える電源である蓄電器24からの電力は、キースイッチ32を介して車載電子機器に供給される。キースイッチ32がONになると、蓄電器24から車載電子機器に電力が供給される。キースイッチ32がOFFになると、蓄電器24から車載電子機器に供給される電力が遮断される。このように、キースイッチ32は、蓄電器24と車載電子機器との間に設けられて、蓄電器24から車載電子機器に供給する電力を断続する。キースイッチ32は、イグニッションキーをスイッチに差し込んで操作される形式であってもよいし、例えば、プッシュボタンによって操作される形式であってもよい。このように、本実施形態において、キースイッチ32の形式は問わない。
 
【0047】
  位置検出装置35は、RTK−GNSS(Real  Time  Kinematic  -  Global  Navigation  Satellite  Systems、GNSSは全地球航法衛星システムをいう)を利用して建設機械1の現在位置を検出する。位置検出装置35には、アンテナ35Aが電気的に接続される。アンテナ35Aは、GNSSアンテナである。アンテナ35AがRTK−GNSS衛星7から受信したGNSS電波に応じた信号は、位置検出装置35に入力される。位置検出装置35は、アンテナ35Aの設置位置を検出する。位置検出装置35が検出したアンテナ35Aの設置位置が、建設機械1の位置を表す。位置検出装置35は、例えば、3次元位置センサを含む。位置検出装置35は、通信端末装置20の内部に組み込まれていてもよい。
 
【0048】
  各種制御装置36は、建設機械1が備える図示しないエンジンを制御するエンジン制御装置、図示しない油圧ポンプを制御するポンプ制御装置、図示しない制動装置を制御するブレーキ制御装置等であるが、これらに限定されるものではない。
 
【0049】
  通信端末装置20は、建設機械1の稼働中に位置検出装置35から建設機械1の位置情報を取得し、建設機械1の稼働情報の一つとして記憶部20Mに記憶する。また、通信端末装置20は、建設機械1の稼働情報として、建設機械1の各種センサ類から、建設機械1の稼働量、エンジンの回転速度、冷却水温度、排気ガスの温度、油圧ポンプから吐出される作業油の圧力及び作業油の温度状態といった建設機械1の状態に関する情報(稼働情報)を取得し、記憶部20Mに記憶する。通信端末装置20は、取得した稼働情報を定期的に、例えば1日に1回、管理装置40に送信する。また、通信端末装置20は、管理装置40からの要求に応じて、要求された情報を管理装置40に送信したり、要求された命令を実行したりする。
 
【0050】
  通信端末装置20は、モニタ22の稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値を、他の稼働情報とともに車内信号線30を介して取得し、スプーラ20MSに一時的に記憶する。通信端末装置20は、例えば1日の終わりに、稼働情報の累積値を、他の稼働情報とともにスプーラ20MSから読み出して、管理装置40に送信する。管理装置40は、受信した稼働情報の累積値を、他の稼働情報とともに記憶部42の稼働情報リストLTRに記述する。このように、稼働情報の累積値は、定期的に通信端末装置20から管理装置40へ送信される。本実施形態において、稼働情報の累積値が通信端末装置20から管理装置40に送信される回数は、例えば、1日あたり1回である。
 
【0051】
(管理装置40)
  管理装置40は、建設機械1の通信端末装置20から建設機械1の稼働情報を取得し、建設機械1の稼働状態を管理する。本実施形態において、管理装置40は、1台以上の建設機械1を管理するが、管理装置40に管理される建設機械1の数は限定されるものではない。
 
【0052】
  管理装置40は、処理部41と、記憶部42と、入出力部43とを含む。処理部41は、例えば、CPUである。記憶部42は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ若しくはハードディスクドライブ等又はこれらを組み合わせたものである。処理部41は、通信装置103を介して、各種の命令を建設機械1の通信端末装置20に送信する。入出力部43は、管理装置40に接続される通信装置103と処理部41との間における情報の入出力及び入出力装置44と処理部41との間における情報の入出力を行う。
 
【0053】
  記憶部42は、処理中リストLOPと、稼働情報リストLTRとを記憶している。処理中リストLOPは、建設機械1が備える通信端末装置20の処理が実行中であることを示す情報が書き込まれている。処理中リストLOPに書き込まれた情報は、通信端末装置20の処理が完了すると消去される。稼働情報リストLTRは、建設機械1の稼働量の累積値を含む、建設機械1の稼働情報が書き込まれている。稼働情報リストLTRに書き込まれている稼働情報が参照されることにより、建設機械1の状態が把握される。
 
【0054】
  管理装置40は、入出力部43に、通信装置103が電気的に接続されている。通信装置103は、通信衛星5と無線通信を行うアンテナ104が電気的に接続されている。管理装置40、より具体的には管理装置40の処理部41は、通信装置103、アンテナ104及び通信衛星5を介して、建設機械1の通信端末装置20に各種の命令を含む様々な情報を送信する。また、管理装置40の処理部41は、建設機械1の通信端末装置20から送信されてきた各種情報を、通信衛星5及び通信装置103を介して受信する。また、処理部41は、通信装置103及び通信回線101を介して、命令又は情報等を建設機械1に送信する。
 
【0055】
  入出力部43に接続される入出力装置44は、管理側表示装置44Mと、管理側入力装置44Iとを含む。管理側入力装置44Iは、管理装置40に各種の処理を実行させるための命令を管理装置40の処理部41に入力する。管理側入力装置44Iは、管理装置40及び衛星通信を介して、建設機械1の通信端末装置20に各種の処理を実行させるための命令を送信し、通信端末装置20に前述した処理を実行させることもできる。
 
【0056】
  モニタ22の稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値は、例えば、故障等によって新たなモニタ22に交換された場合等に、新たなモニタ22に記憶されている稼働量の累積値が、交換される前のモニタ22に記憶されていた稼働量の累積値に、サービスマン等の所定の作業によって調整される。その後、新たなモニタ22の稼働量記憶部22MOPに記憶された稼働量の累積値は、通信端末装置20から管理装置40へ送信されて、記憶部42の稼働情報リストLTRに記述される。新たなモニタ22に記憶されている稼働量の累積値が誤った値に調整されると、記憶部42の稼働情報リストLTRに誤った累積値が記述される結果、管理装置40は稼働量の累積値を正しく管理できない可能性がある。また、モニタ22を交換しない場合でも、意図的にモニタ22に記憶されている稼働量の累積値を変更する場合も想定される。このような場合も、管理装置40は稼働量の累積値を正しく管理できない可能性がある。
 
【0057】
  このため、本実施形態において、通信端末装置20は、モニタ22、より具体的には記憶部22Mの稼働量記憶部22MOPが記憶している稼働量の累積値が調整されると、稼働量の累積値が調整されたことを示す調整情報及び調整がされた時刻を、好ましくは調整がされる毎に管理装置40に送信する。通信端末装置20は、少なくとも稼働量の累積値が調整されたことを示す調整情報を管理装置40に送信するようにしてもよい。調整情報は、稼働量の累積値が調整された後の値又は稼働量の累積値の差分の少なくとも一方を含む。稼働量の累積値の差分は、稼働量の累積値が調整された後の値と、稼働量の累積値が調整される前の値と、の差分である。このようにすることで、稼働量の累積値が調整されると、調整情報及び調整された時刻が管理装置40に送信されるので、管理装置40側では、稼働量の累積値が調整されたことを把握することができる。その結果、稼働量の累積値が誤った値に調整されたことを迅速に把握して、後述するような方法によって、モニタ22に記憶されている稼働量の累積値を正しい値に補正することができる。稼働量の累積値が調整される毎に、調整情報及び調整された時刻が管理装置40に送信されるようにすれば、稼働量の累積値が調整されたことが管理装置40側でより確実に把握される。次に、モニタ22の稼働量の累積値が調整された場合における通信端末装置20及びモニタ22が実行する処理例を説明する。
 
【0058】
<モニタ22を用いて、稼働量の累積値が調整された場合における処理例1>
  
図3は、モニタ22を用いて、累積値が調整された場合における処理の処理手順を示すフローチャートである。ステップS101において、サービスマンSVが
図2に示すモニタ22を用いて、稼働量の累積値を調整する。ステップS102において、調整有無判断部であるモニタ22の処理部22Cは、稼働量の累積値の調整が行われたか否かを判断する。処理部22Cは、稼働量の累積値の調整が行われたと判断した場合、記憶部22Mの稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値を、調整された値に変更する。処理部22Cは、稼働量の累積値の調整が行われていないと判断した場合、処理を終了する。本実施形態において、稼働量の累積値が調整された回数(以下、適宜累積調整回数と称する)は、故障記憶部22MDに記憶されている。モニタ22の処理部22Cは、稼働量の累積値が調整されると、累積調整回数に1を加算する。
 
【0059】
  モニタ22の処理部22Cは、稼働量の累積値が調整された後の値と、稼働量の累積値が調整される前の値との差分を演算することにより、稼働量の累積値の差分を求める。以下において、稼働量の累積値の差分を、適宜累積値差分と称する。累積値差分は、稼働量の累積値が調整された量(以下、適宜調整量と称する)に相当する。また、処理部22Cは、これまでの調整量を加算した値である調整量累積値を求める。調整量及び調整量累積値は、故障記憶部22MDに記憶される。
 
【0060】
  処理部22Cは、ステップS103において、調整後における稼働量の累積値と、調整量と、調整量累積値と、累積調整回数とを、「調整に関する情報」として通信端末装置20に通知する。調整後における稼働量の累積値と、調整量とは、少なくとも一方が通信端末装置20に通知されればよい。次に、ステップS104において、車内信号線30を介して調整に関する情報を取得した通信端末装置20は、調整後における稼働量の累積値と、調整量と、調整量累積値と、累積調整回数とを「調整情報」として、少なくとも調整情報を管理装置40に送信する。調整情報は、累積値が調整されたことを示す情報である。このように、通信端末装置20は、調整有無判断部であるモニタ22の処理部22Cが稼働量の累積値の調整が行われたと判断した場合に、少なくとも調整情報を管理装置40に送信する。
 
【0061】
  ステップS104において、通信端末装置20は、調整情報に加えて、稼働量の累積値が調整された時刻を管理装置40に送信してもよい。本実施形態において、稼働量の累積値が調整された時刻は、通信端末装置20が調整に関する情報を取得した時刻とする。時刻は、例えば、
図2に示すRTK−GNSS衛星7から送信されるGNSS電波に含まれる時刻が用いられる。あるいは、モニタ22又は通信端末装置20に時計ICを組込み、時計ICを用いて時刻を取得するようにしてもよい。
 
【0062】
  次に、ステップS105において、管理装置40は、通信端末装置20から送信された調整情報を取得して、記憶部42の稼働情報リストLTRに書き込む。稼働情報リストLTRに記述された調整情報を、例えば管理装置40側の管理者が確認することにより、建設機械1の稼働量の累積値が調整された時刻、回数、調整量及び調整量累積値を速やかに把握することができる。
 
【0063】
  管理装置40の処理部41は、記憶部42の稼働情報リストLTRに調整情報が書き込まれたら、例えば、入出力装置44の管理側表示装置44Mの画面44MPに、稼働量の累積値が調整されたことを示す情報を表示してもよい。この場合、処理部41は、稼働量の累積値が調整された建設機械1の識別子とともに調整情報を表示することができる。このようにすれば、管理装置40側のサービスマンは、稼働量の累積値が調整された建設機械1及び調整された内容を速やかに知ることができる。
 
【0064】
  前述したステップS104において、通信端末装置20は、有線で接続されたパーソナルコンピュータ、携帯通信端末装置又はハンディターミナル等の端末装置に、調整情報を送信してもよい。この場合、例えば、
図2に示される車内信号線30に接続されている端子37と、端末装置とが通信ケーブルで接続される。端末装置は、車内信号線30と、端子37と、通信ケーブルとを介して、通信端末装置20から調整情報がダウンロードされる。この場合、端末装置は管理装置40に相当する。
 
【0065】
  ステップS106において、モニタ22の処理部22Cは、車内信号線30を介して通信端末装置20に故障通知を発報する。故障通知には、ステップS103で通信端末装置20に送信される調整に関する情報も含まれる。ステップS107において、通信端末装置20は、モニタ22からの故障通知を、
図2に示す記憶部20Mの故障記憶部20MDに記憶する。通信端末装置20は、故障記憶部20MDに故障通知が記憶されると、その内容を、例えば建設機械1のオーナー又は管理者の図示しない端末装置にも送信するようにしてもよい。このため、故障通知を受け取った建設機械1のオーナー又は管理者も、稼働量の累積値が調整されたことを、調整された後、速やかに把握することができる。
 
【0066】
  ステップS108において、モニタ22の処理部22Cは、ステップS103で通信端末装置20に送信される調整に関する情報を、故障記憶部22MDに記憶する。このとき、モニタ22の処理部22Cは、通信端末装置20から稼働量の累積値が調整された時刻を取得して、調整に関する情報とともに故障記憶部22MDに記憶する。このようにすることで、モニタ22は、稼働量が調整されたことの履歴を蓄積することができる。
 
【0067】
  処理例1において、モニタ22は、ステップS102、ステップS103、ステップS106、ステップS108の順に処理を実行する。通信端末装置20は、ステップS104、ステップS107の順に処理を実行する。管理装置40が実行する処理は、ステップS105である。
 
【0068】
  処理例1によれば、建設機械1側で稼働量の累積値が調整される毎に、調整情報及び調整された時刻が管理装置40に送信されるので、管理装置40側で稼働量の累積値が調整されたことを把握することができる。例えば、サービスマンSVが誤った調整をしたり、建設機械1のオペレータが稼働時間の累積値を増加させたりした場合でも、管理装置40側の管理者は、管理装置40の記憶部42に記憶された稼働情報リストLTRを見ることで、調整が行われたタイミング又は稼働時間の累積値が増加したこと等を把握して、速やかに対応することができる。
 
【0069】
<モニタ22を用いて、稼働量の累積値が調整された場合における処理例2>
  管理システム100において、管理装置40は、建設機械1が備えるモニタ22が有する、稼働量の累積値を調整する機能(以下、適宜累積値調整機能と称する)を制限することができる。稼働量の累積値が調整される頻度が高い建設機械1のモニタ22は、何らかの意図又は非定常な状況といったことを背景とした、稼働量の累積値の不要な調整がなされていると推測できるので、管理装置40からの遠隔操作により、例えば、モニタ22において累積値が調整できないようにするといった累積値調整機能の制限を行う。このようにすることで、何らかの意図をもったような、不要な累積値の調整を回避できる。
 
【0070】
  図4は、モニタ22での稼働量の累積値の調整に制限を与える処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5は、管理装置40の入出力装置44が備える管理側表示装置44Mの画面44MPを示す図である。ステップS201において、
図2に示す管理装置40側の管理者MNは、管理装置40側の入出力装置44から、モニタ22の累積値調整機能を制限する旨の指令を入力する。本実施形態において、累積値調整機能の制限には、累積値調整機能自体を無効にすることと、累積値を調整できる回数を制限することとの両方が含まれる。
 
【0071】
  図5に示すように、入出力装置44の管理側表示装置44Mの画面44MPには、制限設定画面として、対象選択アイコン50と、調整回数制限選択アイコン51と、調整機能無効選択アイコン52と、回数上限設定アイコン53と、設定アイコン54とが表示される。対象選択アイコン50は、累積値調整機能が制限される対象を選択する際に用いられる。調整回数制限選択アイコン51は、累積値を調整する回数を制限する際に選択される。調整機能無効選択アイコン52は、累積値調整機能自体を無効とすることを選択する際に用いられる。回数上限設定アイコン53は、累積値を調整する回数を制限する場合の回数の上限値を設定する。設定アイコン54は、累積値調整機能を制限する旨の指令を送信する際に選択される。
 
【0072】
  管理者MNは、対象選択アイコン50で、累積値調整機能が制限される対象を選択する。この例では、稼働時間の累積値を調整する機能が制限される。管理者MNは、調整回数制限選択アイコン51と、調整機能無効選択アイコン52とのいずれか一方を選択する。この例では、調整回数制限選択アイコン51が選択されているので、稼働時間の累積値を調整する回数が制限される。調整機能無効選択アイコン52が選択されると、稼働時間の累積値を調整する機能が無効になるので、モニタ22からは稼働時間の累積値を調整することができなくなる。
 
【0073】
  調整回数制限選択アイコン51が選択された場合、管理者MNは、回数上限設定アイコン53で、累積値を調整する回数を制限できる回数の上限値を設定する。この例では、上限値の制限をなしとするか又は上限値を最大3回とすることが選択できる。モニタ22から稼働時間の累積値を調整する回数は、回数上限設定アイコン53に制限される。すべての選択が終了したら、管理者MNは、設定アイコン54を選択する。すると、制限設定画面で選択された制限の内容がモニタ22の累積値調整機能を制限する旨の指令として管理装置40に入力される。
 
【0074】
  モニタ22の累積値調整機能を制限する旨の指令が入力されると、ステップS202において、管理装置40の処理部41は、累積値調整機能を制限する要求を受け付けて、
図2に示す通信装置103を介して建設機械1の通信端末装置20に累積値調整機能を制限する要求をするための指令(以下、適宜制限要求指令と称する)を送信する。制限要求指令は、制限設定画面で選択された制限の内容を含むので、通信端末装置20は、制限選択画面で選択された制限の内容に基づいてモニタ22の累積値調整機能を制限する。
 
【0075】
  ステップS203において、制限要求指令を受信(取得)した建設機械1の通信端末装置20は、管理装置40から受信した制限要求指令を
図2に示すスプーラ20MSに一時的に記憶させる。そして、通信端末装置20は、制限要求指令を受け付けたことの通知を管理装置40に送信する。この通知を管理装置40が受信(取得)すると、処理部41は、記憶部42の処理中リストLOPの内容を、通信端末装置20が累積値調整機能を制限する処理を実行中であることに書き換える。
 
【0076】
  次に、ステップS204において、通信端末装置20は、車内信号線30を介してモニタ22に制限要求指令を送信する。制限要求指令を受信(取得)したモニタ22の処理部22Cは、ステップS205において、制限要求指令にしたがって累積値調整機能を制限する。例えば、制限要求指令が累積値調整機能を無効とするものである場合、処理部22Cは、累積値が調整されるような操作がされても調整を受け付けない。あるいは、処理部22Cは、累積値が調整されるような操作そのものを受け付けない。制限要求指令が累積値調整機能の回数を制限するものである場合、処理部22Cは、制限要求指令で指定された上限値までは累積値の調整を受け付けるが、上限値を超えた累積値の調整は受け付けない。このように、モニタ22の処理部22Cは、管理装置40から送信された、累積値の調整ができない状態とする指令を取得すると、累積値の調整ができない状態とし、累積値を調整できる回数を制限する指令を取得すると、累積値の調整ができる回数を指令によって指定された回数に制限する。このようにすることで、何らかの意図をもったような不要な累積値の調整、例えば、累積値の改竄を回避できる。
 
【0077】
  次に、ステップS206において、モニタ22の処理部22Cは、累積値調整機能を制限したことを、車内信号線30を介して通信端末装置20に送信する。ステップS207において、モニタ22が累積値調整機能を制限したことを受信(取得)した通信端末装置20は、モニタ22が累積値調整機能を制限したことを管理装置40に送信する。この通知を管理装置40が受信(取得)すると、ステップS208において、処理部41は、記憶部42の稼働情報リストLTRに、建設機械1のモニタ22の累積値調整機能が制限されたことを示すような情報を加える。そして、処理部41は、記憶部42の処理中リストLOPの内容を、通信端末装置20が累積値調整機能を制限する処理を完了したことに書き換える。次に、ステップS209において、処理部41は、建設機械1のモニタ22の累積値調整機能が制限されたことを、入出力装置44に送信する。入出力装置44の管理側表示装置44Mは、累積値調整機能が制限されたことを表示する。
 
【0078】
  処理例2において、モニタ22は、ステップS205、ステップS206の順に処理を実行する。通信端末装置20は、ステップS203、ステップS204、ステップS207の順に処理を実行する。管理装置40は、ステップS202、ステップS208、ステップS209の順に処理を実行する。
 
【0079】
  処理例2によれば、管理装置40側からモニタ22の累積値調整機能を制限できるので、頻繁に稼働量の累積値が調整され、不要な累積値の調整が行われること又は行われるであろうことが疑われる建設機械1は、モニタ22の累積値調整機能を管理装置40側から遠隔操作で制限できる。このため、稼働量の累積値の不要な調整行為を未然に抑制できる。また、管理装置40と建設機械1との距離が離れている場合でも、管理装置40は、遠隔操作によりモニタ22の累積値調整機能を制限できるので、不要な調整行為を迅速に防止できる。
 
【0080】
  本実施形態においては、管理装置40側(外部)から、モニタ22の累積値調整機能を制限したが、モニタ22の累積値調整機能の制限は、モニタ22の外部から行われるものであればよい。例えば、
図2に示されるモニタ22の入力スイッチ22S(外部)から、モニタ22の累積値調整機能を制限する旨の指令が入力されることにより、モニタ22の累積値調整機能が制限されてもよい。この他にも、モニタ22に有線で接続されたパーソナルコンピュータ、携帯通信端末装置又はハンディターミナル等の端末装置等の端末装置からの入力によって、モニタ22の累積値調整機能が制限されてもよい。この場合、例えば、
図2に示される車内信号線30に接続されている端子37と、端末装置とが通信ケーブルで接続される。端末装置は、通信ケーブルと、端子37と、車内信号線30とを介して、モニタ22の累積値調整機能を制限する。この場合、端末装置は管理装置40に相当する。
 
【0081】
<モニタ22を用いて稼働量の累積値が調整された場合における処理例3>
  管理システム100において、管理装置40、通信端末装置20及びモニタ22は、稼働量の累積値が調整された場合、調整された稼働量の累積値を補正することができる。このようにすることで、調整された稼働量の累積値を調整される前の値に補正できるので、管理装置40は、稼働量の累積値を正しい値で管理することができる。すなわち、サービスマンが稼働量の累積値の調整を間違えた場合又は何らかの意図をもって稼働量の累積値が調整された場合であっても、管理装置40は、補正された正しい稼働量の累積値の値で管理することができる。
 
【0082】
  図6は、モニタ22において、稼働量の累積値が調整された場合における処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7は、管理装置40の入出力装置44が備える管理側表示装置44Mの画面44MPを示す図である。稼働量の累積値を補正するにあたり、ステップS301において、
図2に示す管理装置40側の管理者MNsは、管理装置40側の入出力装置44から、稼働量の累積値の補正値を入力する。補正値は、例えば、稼働量の累積値が調整される前の値である。
 
【0083】
  図7に示すように、入出力装置44の管理側表示装置44Mの画面44MPには、補正値設定画面として、補正値入力アイコン55と、設定アイコン56とが表示される。補正値入力アイコン55は、補正値を入力するために用いられる。
図7では、補正値として稼働時間の補正値を入力する場合が示されている。設定アイコン56は、補正値と、モニタ22の記憶部22Mの稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値を補正値に補正する旨の指令とを送信する際に選択される。
 
【0084】
  管理者MNsは、補正値入力アイコン55に補正値を入力する。補正値が入力されたら、管理者MNsは、設定アイコン56を選択する。すると、補正値入力アイコン55に入力された補正値が、モニタ22に記憶されている稼働量の累積値を補正値、すなわち管理装置40が指定する値に補正する旨の指令(以下、適宜補正要求、補正要求指令と称する)として管理装置40に入力される。
 
【0085】
  補正要求が入出力装置44から送信されると、ステップS302において、管理装置40の処理部41は、補正要求を受け付けて、
図2に示す通信装置103を介して建設機械1の通信端末装置20に補正要求を送信する。管理装置40が送信した補正要求は、補正値、すなわち管理装置40が指定した値を含む。通信端末装置20は、管理装置40からの補正要求を受信(取得)すると、モニタ22に、稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値を補正値に補正させる。管理装置40が補正要求を通信端末装置20に送信すると、管理装置40の処理部41は、記憶部42の処理中リストLOPの内容を、補正要求を通信端末装置20に送信した状態であることに書き換える(処理中リストを登録)。
 
【0086】
  ステップS303において、補正要求を受信した建設機械1の通信端末装置20は、管理装置40から受信した補正要求を
図2に示すスプーラ20MSに一時的に記憶させる。そして、通信端末装置20は、補正要求を受け付けたことの通知(受付返信)を管理装置40に送信する。この通知を通信装置103が受信(取得)すると、ステップS304において、管理装置40の処理部41は、記憶部42の処理中リストLOPの内容を、通信端末装置20が補正要求を実行中であることに書き換える(処理中リスト更新)。
 
【0087】
  次に、ステップS305において、建設機械1側の、例えばサービスマンSVmが建設機械1のキースイッチ32をONにする。すると、ステップS306においてモニタ22に蓄電器24から電力が供給されてモニタ22が起動し、ステップS307において通信端末装置20に蓄電器24から電力が供給されて通信端末装置20が起動する。
 
【0088】
  ステップS308において、通信端末装置20は、スプーラ20MSに一時的に記憶していた補正要求を、車内信号線30を介してモニタ22に送信する。補正要求を受信(取得)したモニタ22の処理部22Cは、ステップS309において、記憶部22Mに補正要求を一時的に記憶させる。補正要求は、記憶部22Mに記憶されている処理リストに書き込まれる。処理リストは、モニタ22の処理部22Cが実行する処理のリストであり、処理部22Cが処理リストに書き込まれた処理を終了すると、終了した処理は処理リストから削除される。モニタ22の記憶部22Mに補正要求が一時的に記憶されたら、ステップS310において、処理部22Cは、モニタ22が補正要求を受け付けた旨の通知を、車内信号線30を介して通信端末装置20に送信する。
 
【0089】
  ステップS311において、モニタ22が補正要求を受け付けた旨の通知を受信(取得)した通信端末装置20は、その旨の通知を管理装置40に送信する。この通知を管理装置40が受信(取得)すると、ステップS312において、処理部41は、記憶部42の処理中リストLOPの内容を、モニタ22が補正要求を受け付けた状態であることに書き換える。
 
【0090】
  ステップS313において、建設機械1側の、例えばサービスマンSVmが建設機械1のキースイッチ32をOFFにする。すると、ステップS314においてモニタ22への電力供給が停止されてモニタ22が停止し、ステップS315において通信端末装置20への電力供給が停止されて通信端末装置20が停止する。
 
【0091】
  ステップS316において、モニタ22が補正要求を受け付けた後、建設機械1側の、例えばサービスマンSVmが建設機械1のキースイッチ32を再びONにする。すると、ステップS317においてモニタ22に蓄電器24から電力が供給されてモニタ22が起動し、ステップS318において通信端末装置20に蓄電器24から電力が供給されて通信端末装置20が起動する。ステップS317におけるモニタ22の起動及びステップS318における通信端末装置20の起動は、モニタ22が補正要求を受け付けた後、初めての起動になる。
 
【0092】
  ステップS319において、モニタ22の記憶部22Mの稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値が補正される。具体的には、モニタ22の処理部22Cは、記憶部22Mに一時的に記憶されている補正要求を実行して、記憶部22Mの稼働量記憶部22MOPに、補正要求に含まれている補正値を記憶させる。この処理によって、記憶部22Mの稼働量記憶部22MOPに記憶されている現時点における稼働量の累積値は、補正要求に含まれている補正値に書き換えられて補正される。
 
【0093】
  このような処理により、モニタ22は、建設機械1のオペレータ又は建設機械1側のサービスマンSVmに調整され、稼働量記憶部22MOPに記憶されている現時点の稼働量の累積値を、調整される前の値に補正できる。その結果、稼働量の累積値を間違えて稼働量記憶部22MOPに記憶させた場合及び何らかの意図をもって不要な累積値が調整された場合でも、稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値を、管理装置40側、すなわち建設機械1の外部から正しい値に補正できる。
 
【0094】
  記憶部22Mの稼働量記憶部22MOPに、補正要求に含まれている補正値が記憶されたら、ステップS320において、処理部22Cは、稼働量記憶部22MOPに記憶されている新たな稼働量の累積値を、車内信号線30を介して通信端末装置20に送信する。ステップS320において送信される新たな稼働量の累積値は、補正値である。ステップS321において、新たな稼働量の累積値を受信(取得)した通信端末装置20は、新たな稼働量の累積値を管理装置40に送信する。
 
【0095】
  新たな稼働量の累積値を管理装置40が受信(取得)すると、ステップS322において、処理部41は、記憶部42が記憶する稼働情報リストLTRの稼働量の累積値を、新たな稼働量の累積値に書き換えて、稼働情報リストLTRを更新する。そして、処理部41は、記憶部42の処理中リストLOPの内容を、モニタ22及び通信端末装置20が稼働量の累積値を補正する処理を完了したことに書き換える。
 
【0096】
  次に、ステップS323において、モニタ22の処理部22Cは、車内信号線30を介して通信端末装置20に故障通知を発報する。故障通知には、ステップS320で通信端末装置20に送信される新たな稼働量の累積値、すなわち補正値も含まれる。ステップS324において、通信端末装置20は、モニタ22から送信された新たな稼働量の累積値を、
図2に示す記憶部20Mの故障記憶部20MDに記憶する。この故障通知を、例えば作業機械1のオーナー又は管理者の図示しない端末装置にも送信するようにしてもよい。この処理により、故障通知を受け取った建設機械1のオーナーは、モニタ22の稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値が正しい値に補正されたことを、速やかに把握することができる。
 
【0097】
  ステップS325において、モニタ22の処理部22Cは、新たな稼働量の累積値を、故障記憶部22MDに記憶する。このとき、モニタ22の処理部22Cは、通信端末装置20から、例えば、通信端末装置20が新たな稼働量の累積値を送信した時刻を取得して、新たな稼働量の累積値とともに故障記憶部22MDに記憶する。このようにすることで、モニタ22は、建設機械1の外部、例えば管理装置40からの補正要求によって稼働量が補正されたことの履歴を蓄積することができる。
 
【0098】
  建設機械1の稼働中に、稼働量が変化している状態で稼働量記憶部22MOPに記憶されている稼働量の累積値が補正値に書き換えられると、稼働量の累積値が誤差を含む可能性がある。本実施形態では、モニタ22は、建設機械1の稼働中かつモニタ22が起動しているときに補正要求を受け付けたら、キースイッチ32がOFFになって再びキースイッチ32がONになってから、稼働量記憶部22MOPの稼働量の累積値を補正値に書き換える。すなわち、キースイッチ32がONになった後、建設機械1のエンジンが運転を開始して建設機械1が稼働を開始する前に、モニタ22は、稼働量記憶部22MOPの稼働量の累積値を補正値に書き換える。このようにすることで、稼働量の累積値の誤差を低減することができる。
 
【0099】
  ステップS324において、通信端末装置20は、新たな稼働量の累積値、すなわち補正要求に含まれる補正値とともに、記憶する補正値の識別子を故障記憶部20MDに記憶する。同様に、ステップS325において、モニタ22の処理部22Cは、新たな稼働量の累積値、すなわち補正要求に含まれる補正値とともに、記憶する補正値の識別子を稼働量記憶部22MOPに記憶する。識別子は、今回の補正要求を、他の補正要求と区別するために用いられる。識別子は、複数の建設機械1毎に一意に定まるように、管理装置40で生成される。
 
【0100】
  通信端末装置20及びモニタ22は、補正値及び識別子を記憶した後、今回記憶した補正値及び識別子と同一の識別子を有する補正要求を受信(取得)した場合、再送であるとして、その補正要求を受け付けない。このような処理によって、稼働量の累積値が一度補正された場合、同じ補正値には補正されないので、管理装置40は、正しい稼働量の累積値を管理することができる。
 
【0101】
  処理例3において、モニタ22は、ステップS306、ステップS309、ステップS310、ステップS314、ステップS317、ステップS319、ステップS320、ステップS323、ステップS325の順に処理を実行する。通信端末装置20は、ステップS303、ステップS307、ステップS308、ステップS311、ステップS315、ステップS318、ステップS321、ステップS324の順に処理を実行する。管理装置40は、ステップS302、ステップS304、ステップS312、ステップS322の順に処理を実行する。
 
【0102】
  処理例3によれば、管理装置40側からモニタ22に記憶された稼働量の累積値を遠隔操作で補正できる。このため、不要な行為により稼働量の累積値が調整された場合又は建設機械1側のサービスマンSVmの間違いにより誤った稼働量の累積値に調整された場合であっても、モニタ22に記憶された稼働量の累積値を正しい値に補正できる。
 
【0103】
  本実施形態においては、管理装置40(外部)側から、調整された稼働量の累積値を補正したが、調整された稼働量の累積値の補正は、モニタ22の外部から行われるものであればよい。例えば、
図2に示されるモニタ22の入力スイッチ22S(外部)から、稼働量の累積値の補正値が入力されることにより、モニタ22に記憶された稼働量の累積値が補正されてもよい。この他にも、モニタ22に有線で接続されたパーソナルコンピュータ、携帯通信端末装置又はハンディターミナル等の端末装置等の端末装置からの入力によって、稼働量の累積値が補正されてもよい。この場合、例えば、
図2に示される車内信号線30に接続されている端子37と、端末装置とが通信ケーブルで接続される。端末装置は、通信ケーブルと、端子37と、車内信号線30とを介して、稼働量の累積値を補正する。この場合、端末装置は管理装置40に相当する。
 
【0104】
  以上、本実施形態を説明したが、前述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。