特許第6088064号(P6088064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6088064電圧を印加することによってセンサ機能を最適化する方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088064
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】電圧を印加することによってセンサ機能を最適化する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1473 20060101AFI20170220BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20170220BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20170220BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20170220BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   A61B5/14 331
   G01N27/416 338
   G01N27/28 R
   G01N27/327 353F
   G01N33/66 A
【請求項の数】23
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2015-542747(P2015-542747)
(86)(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公表番号】特表2016-501070(P2016-501070A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】US2013069887
(87)【国際公開番号】WO2014078409
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2015年7月13日
(31)【優先権主張番号】13/675,813
(32)【優先日】2012年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595038051
【氏名又は名称】メドトロニック ミニメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴットリーブ レベッカ ケー
(72)【発明者】
【氏名】チュ チア−ハン
(72)【発明者】
【氏名】ラオ アシュウィン ケー
【審査官】 田邉 英治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−538745(JP,A)
【文献】 特表2009−521997(JP,A)
【文献】 特開2009−291643(JP,A)
【文献】 特表2002−541883(JP,A)
【文献】 特表2010−537198(JP,A)
【文献】 特表2009−521996(JP,A)
【文献】 特表2013−521942(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0230741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1468− 5/1495
G01N 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物センサを初期化する装置によって実行される方法であって、
前記センサがセンサ電子機器から切断されていた時間である切断時間を判断するステップと、
前記切断時間に基づいて初期化プロトコルを選択するステップであって、前記初期化プロトコルは、
(a)第1の電圧パルス列を含む第1の初期化方式と、
(b)第2の電圧パルス列を含む第2の初期化方式と、を含むグループから選択され、
前記切断時間が第1の時間範囲にある場合に前記第1の初期化方式が選択され、前記切断時間が第2の時間範囲にある場合に前記第2の初期化方式が選択される、ステップと、
前記選択された初期化プロトコルを前記センサに適用するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記グループが、さらに、
(c)前記センサに対して電圧を全く印加しない第3の初期化方式を含み、
前記第3の初期化方式は、前記切断時間が前記第1の時間範囲および前記第2の時間範囲よりも短い場合に選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
択された初期化電圧を印加した後で、前記センサに第1の安定化電圧を第1の安定化時間の間印加するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の安定化電圧を印加した後に、前記センサが安定しているかどうかを判断するステップと、
前記センサが安定していない場合に、前記センサに第2の安定化電圧を第2の安定化時間の間印加するステップと、をさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記センサが安定している場合に前記センサを較正するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記センサを較正するステップは、グルコース濃度測定装置を使用して血糖を測定するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記センサの較正は、前記切断時間が、前記第1または第2の時間範囲になったときだけ実行される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記センサが、所定の最大安定化時間後に安定していない場合、新しいセンサが前記センサ電子機器に接続されるように前記初期プロトコルが終了する、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の最大安定化時間が30分以上である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記切断時間を判断するステップが、前記センサの電流出力を測定するステップと、前記測定された電流出力を切断閾値と比較するステップとを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記切断時間を判断するステップが、前記電流出力を再接続閾値と比較するステップとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記切断閾値が、0.6nA以下である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の時間範囲が、120分より長い切断時間である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の時間範囲が、10分〜120分である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の初期化方式が、前記センサに少なくとも2つの電圧を所定の第2の初期化時間の間印加するステップを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも2つの電圧は、一連のステップダウン電圧である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記所定の第2の初期化時間は30分未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記選択された初期化プロトコルを適用するステップより先に、前記センサの水和を検出するステップをさらに備え、この水和を検出するステップが、
前記センサに一連の水和パルスを第1の水和時間の間印加するステップと、
前記一連の水和パルスの印加中に前記センサの電流応答を記録するステップと、
前記電流応答を所定の水和閾値と比較するステップと、を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記電流応答が前記所定の水和閾値に到達するかそれを超越した場合に、前記一連の水和パルスの印加が終了する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電流応答が前記第1の所定水和時間中に前記所定の水和閾値に到達しない場合、前記水和を検出するステップが、第2の一連の水和パルスを前記センサに第2の水和時間の間印加するステップをさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記所定の水和閾値は100nA以上である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
分析物センサを初期化する方法であって、
前記センサがセンサ電子機器から切断されていた時間である切断時間を判断するステップと、
前記切断時間に基づいて初期化プロトコルを選択するステップであって、前記初期化プロトコルは、
(a)第1の電圧パルス列を含む第1の初期化方式と、(b)第2の電圧パルス列を含む第2の初期化方式と、
(c)前記センサに対して電圧を全く印加しない第3の初期化方式と、からなるグループから選択され、前記切断時間が第1の時間範囲にある場合に前記第1の初期化方式が選択され、前記切断時間が第2の時間範囲にある場合に前記第2の初期化方式が選択され、前記切断時間が前記第1の時間範囲および前記第2の時間範囲よりも短い場合に前記第3の初期化方式が選択される、ステップと、
前記選択された初期化プロトコルを前記センサに適用するステップと、
安定化電圧を前記センサに第1の安定化時間の間印加するステップと、を含む方法。
【請求項23】
分析物センサを初期化するための装置であって、
前記分析物センサがセンサ電子機器から切断されていた時間を判断するように構成された切断タイマと、
前記切断時間に基づき初期化プロトコルを選択するように構成された初期化プロトコル選択器であって、
(a)第1の電圧パルス列を含む第1の初期化方式と、
(b)第2の電圧パルス列を含む第2の初期化方式と、を含むグループから選択するように構成された初期化プロトコル選択器と、を備え、
前記初期化プロトコル選択器は、前記切断時間が第1の時間範囲にある場合に前記第1の初期化方式を選択し、前記切断時間が第2の時間範囲にある場合に前記第2の初期化方式を選択するように構成され、
前記装置は、前記選択された初期化プロトコルを前記分析物センサに適用するように構成された、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2012年11月13日に出願された米国特許出願第13/675,813号による第120条に基づく優先権を主張し、該出願の内容は本明細書に参照として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、分析物センサ(例えば、糖尿病の管理に使用されるグルコースセンサ)およびそのようなセンサを製造して使用するための方法および材料の分野に存在する。特に、本発明は、分析物センサを初期化するための方法および装置に関する。
【0003】
バイオセンサなどの分析物センサは、生元素を使用して基質中の化学分析物を検出可能信号に変換するデバイスを含む。多様な分析物に使用される多種のバイオセンサが存在する。最も研究の進んでいる種類のバイオセンサは、電流測定グルコースセンサであり、このセンサは糖尿病のための有効なグルコースレベル制御にとって極めて重要である。
【0004】
一般的なグルコースセンサは、以下の化学反応にしたがって機能する。
グルコースオキシダーゼは、グルコースと酸素との間の反応を触媒してグルコン酸と過酸化水素とを生成するのに使用される(式1)。H22は式2に示されるように電気化学的に反応し、ポテンショスタットによって電流を測定することができる。当技術分野で周知の多様な酸化還元酵素において発生するこれらの反応は、多数の電流測定センサ設計で使用されている。
【0005】
分析物センサ技術は成熟しており、センサ技術の新たな応用が進展しているので、新たな技術的用途におけるセンサの使用を容易にする方法および材料の必要性が存在する。例えば、病院では、ICU環境などで連続グルコースセンサを使用して患者の生理機能を監視することが増えている。このような病院環境においては、例えば患者が磁気共鳴画像法(MRI)処置を受ける必要がある場合など、センサがセンサ電子回路から切断され再接続される必要がある状況が発生する。プロセッサはMRIと互換性がないため、センサ電子機器は、MRIが完了するまでセンサから切断される必要がある。
【0006】
従来のセンサの構成では、センサがセンサ電子機器から切断され、その後再接続される場合、センサが十分に安定して再び検知開始するまでに著しい遅滞があった。遅滞は、数分から数時間の間続くこともあり、それによって臨床現場での配慮が複雑になる。加えて、非病院環境で分析物センサを用いる個人(グルコースセンサを使用して自身の疾患を管理する糖尿病患者など)では、比較的長いセンサ初期化時間および/またはセンサ埋込み後の起動時間は、使用者とって不便であると同時に使用者の健康に関する情報の受領が遅延するという両方から問題となり得る。多くの糖尿病患者は医療訓練を受けていないため、例えば、2時間の起動時間などは、患者の活動的な日常生活という点から不便となる可能性があり、このような管理に付随する煩雑さゆえに患者が血中グルコースレベルの最適な監視および調整を行わない可能性がある。
【0007】
上記理由により、センサ初期化時間およびまたは起動時間を短縮するように設計された方法およびセンサシステムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第2005/0115832号
【特許文献2】米国特許第6,001,067号明細書
【特許文献3】米国特許第6,702,857号明細書
【特許文献4】米国特許第6,212,416号明細書
【特許文献5】米国特許第6,119,028号明細書
【特許文献6】米国特許第6,400,974号明細書
【特許文献7】米国特許第6,595,919号明細書
【特許文献8】米国特許第6,141,573号明細書
【特許文献9】米国特許第6,122,536号明細書
【特許文献10】米国特許第6,512,939号明細書
【特許文献11】米国特許第5,605,152号明細書
【特許文献12】米国特許第4,431,004号明細書
【特許文献13】米国特許第4,703,756号明細書
【特許文献14】米国特許第6,514,718号明細書
【特許文献15】米国特許第5,985,129号明細書
【特許文献16】米国特許第5,390,691号明細書
【特許文献17】米国特許第5,391,250号明細書
【特許文献18】米国特許第5,482,473号明細書
【特許文献19】米国特許第5,299,571号明細書
【特許文献20】米国特許第5,568,806号明細書
【特許文献21】米国特許第5,494,562号明細書
【特許文献22】米国特許第6,120,676号明細書
【特許文献23】米国特許第6,542,765号明細書
【特許文献24】米国特許第7,033,336号明細書
【特許文献25】国際公開第01/058348号
【特許文献26】国際公開第04/021877号
【特許文献27】国際公開第03/034902号
【特許文献28】国際公開第03/035117号
【特許文献29】国際公開第03/035891号
【特許文献30】国際公開第03/023388号
【特許文献31】国際公開第03/022128号
【特許文献32】国際公開第03/022352号
【特許文献33】国際公開第03/023708号
【特許文献34】国際公開第03/036255号
【特許文献35】国際公開第03/036310号
【特許文献36】国際公開第08/042,625号
【特許文献37】国際公開第03/074107号
【特許文献38】欧州特許出願第1153571号明細書
【特許文献39】米国特許出願第10/335,506号
【特許文献40】米国特許第5,427,912号明細書
【特許文献41】米国特許第5,149,630号明細書
【特許文献42】米国特許第6,410,251号明細書
【特許文献43】米国特許第4,402,819号明細書
【特許文献44】米国特許第6,703,210号明細書
【特許文献45】米国特許第5,981,203号明細書
【特許文献46】米国特許第5,705,399号明細書
【特許文献47】米国特許第4,894,253号明細書
【特許文献48】米国特許第5,212,050号明細書
【特許文献49】米国特許第6,319,540号明細書
【特許文献50】米国特許第5,882,494号明細書
【特許文献51】米国特許第5,786,439号明細書
【特許文献52】米国特許第5,777,060号明細書
【特許文献53】米国特許第5,771,868号明細書
【特許文献54】米国特許第4,562,751号明細書
【特許文献55】米国特許第4,678,408号明細書
【特許文献56】米国特許第4,685,903号明細書
【特許文献57】米国特許第4,573,994号明細書
【特許文献58】米国特許第6,770,729号明細書
【特許文献59】米国特許出願第12/184,046号
【特許文献60】米国特許出願第13/008,723号
【特許文献61】米国特許第7,291,497号明細書
【特許文献62】米国特許第7,027,478号明細書
【特許文献63】米国特許出願第2008/0015494号
【特許文献64】米国特許第5,320,725号明細書
【特許文献65】米国特許第6,251,260号明細書
【特許文献66】米国特許出願第2005/0161346号
【特許文献67】米国特許出願第09/334,996号
【特許文献68】米国特許出願第11/931,866号
【特許文献69】米国特許第4,114,627号明細書
【特許文献70】米国特許第4,373,531号明細書
【特許文献71】米国特許第4,858,610号明細書
【特許文献72】米国特許第4,991,583号明細書
【特許文献73】米国特許第5,170,806号明細書
【特許文献74】米国特許第5,486,201号明細書
【特許文献75】米国特許第6,661,275号明細書
【特許文献76】米国特許出願第2006/0195148号
【特許文献77】米国特許第6,558,351号明細書
【特許文献78】米国特許第6,551,276号明細書
【特許文献79】国際特許出願第US99/21703号
【特許文献80】国際特許出願第US99/22993号
【特許文献81】国際公開第2004/008956号
【特許文献82】国際公開第2004/009161号
【特許文献83】米国特許第6,413,393号明細書
【特許文献84】米国特許第6,368,274号明細書
【特許文献85】米国特許第5,390,671号明細書
【特許文献86】米国特許第5,165,407号明細書
【特許文献87】米国特許第4,890,620号明細書
【特許文献88】米国特許出願第2002/0090738号
【特許文献89】米国特許第4,940,858号明細書
【特許文献90】米国特許第4,678,868号明細書
【特許文献91】米国特許第6,472,122号明細書
【特許文献92】米国特許第5,755,939号明細書
【特許文献93】米国特許出願第2007/0163894号
【特許文献94】国際公開第2011/163294号
【特許文献95】米国特許第7,081,195号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】クリストファー アール ロウェによる論文 (Trends in Biotech ,1984,2(3),59−65)
【非特許文献2】ワード他による論文、(Biosensors and Bioelectronics 17(2002年)181−189)
【非特許文献3】チョイ他による論文、(Analytical Chimica Acta 461(2002年)252−260)
【非特許文献4】リチャード エフ テイラー(編)「タンパク質固定化:基礎と応用(Protein Immobilization: Fundamentals and Applications」(バイオプロセス技術(Bioprocess Technology)第14巻)15〜29ページの表1および/または111〜112ページの表18、Marcel Dekker社出版 1991年1月7日
【非特許文献5】ヤオ ティーによる論文、(Analytica Chim.Acta 1983年、148、27−33)
【非特許文献6】シチリ他、「ヒトボランティアにおける皮下グルコース濃度の針型グルコースセンサ測定のインビボ特性(In Vivo Characteristics of Needle−Type GlucoseSensor−Measurements of Subcutaneous Glucose Concentrations in Human Volunteers)」、Horm.Metab.Res.、Suppl.Ser.20: 17−20(1988年)
【非特許文献7】ブラッケル他、「酵素グルコースセンサおよびウィック法を用いた皮下グルコース濃度のインビボ測定(In Vivo Measurement of Subcutaneous Glucose Concentrations with an Enzymatic Glucose Sensor and a Wick Method)」、Klin.Wochenschr.67: 491−495(1989年)
【非特許文献8】ピックアップ他、「糖尿病におけるインビボ分子センシング:直接電子移動を備えた埋め込み可能なグルコースセンサ(In Vivo Molecular Sensing in Diabetes Mellitus: An Implantable Glucose Sensor with Direct Electron Transfer)」、Diabetologia 32: 213−217(1989年)
【非特許文献9】リーチ他、「埋め込み可能な装置の進歩(ADVANCES IN IMPLANTABLE DEVICES)」、A.Turner(編)、JAIプレス,ロンドン,第1章、(1993年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書に開示された発明は、分析物監視システムの電子部品から(一時的に)切断されていた分析物センサの初期化および/または性能を最適化するための方法およびシステムを提供する。本発明の各態様は、磁気共鳴画像法(MRI)処置などの病院の処置の間に分析物監視システムの電子部品から埋め込み可能な電気化学グルコースセンサが一時的に切断された状況などにおいて有用である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に開示された発明は、多数の態様を有する。本発明は、一般的に電気化学分析物センサである、分析物センサを初期化する方法を含み、該方法は、切断時間を判断するステップであって、切断時間はセンサがセンサ電子機器から切断されていた時間である、ステップと、次に切断時間に基づいて初期化プロトコルを選択するステップと、を含む。一般的に、初期化プロトコルは、(a)第1の電圧パルス列(a first series of voltage pulses)をセンサに印加するステップを含む第1の初期化方式と、(b)第2の電圧パルス列(a second series of voltage pulses)をセンサに印加するステップを含む第2の初期化方式と、からなり、切断時間が第1の時間範囲にある場合に第1の初期化方式が選択され、切断時間が第2の時間範囲にある場合に第2の初期化方式が選択される。選択された初期化プロトコルをその後センサに適用することができると好都合である。
【0012】
本発明は、また、分析物センサを初期化するための装置を含み、該装置は、分析物センサがセンサ電子機器から切断されていた時間を判断するように構成された切断タイマと、切断時間に基づき初期化プロトコルを選択するように構成された初期化プロトコル選択器とを備え、初期化プロトコル選択器は、(a)第1の電圧パルス列を含む第1の初期化方式と(b)第2の電圧パルス列を含む第2の初期化方式とを含むグループから選択するように構成され、初期化プロトコル選択器は、切断時間が第1の時間範囲にある場合に第1の初期化方式を選択し、切断時間が第2の時間範囲にある場合に前記第2の初期化方式を選択するように構成され、該装置は、選択された初期化プロトコルを分析物センサに適用するように構成される。
【0013】
初期化プロトコルのグループは、さらに、(c)センサに対して電圧を全く印加しないステップを含む第3の初期化方式を含むかまたはそれからなってよく、第3の初期化方式は、切断時間が第1の時間範囲と第2の時間範囲よりも短い場合に選択される。
【0014】
センサがセンサ電子機器から切断されている具体的な状況次第とすることができる異なる切断時間範囲を利用することが可能である。第1の時間範囲は、120分超(120分から少なくとも24時間の範囲など)などとすることもできる。同様に、第2の時間範囲は、10分〜120分の間などとすることができる。
【0015】
本方法は、選択した初期化電圧を印加した後にセンサに安定化電圧を第1の安定時間の間印加するステップをさらに含むことができるのが好ましい。本方法は、第1の安定化電圧を印加した後にセンサが安定しているかどうかを判断すること、また、センサが安定していない場合には、センサに第2の安定化電圧を第2の安定化時間の間印加するステップをさらに含んでもよい。安定化時間の例には、10分、16分、20分、26分、または30分などの40分より短い時間が含まれる。第2の安定化時間は、第1の安定化時間と同じ時間かまたは異なる時間でよい。
【0016】
本発明は、センサが安定している場合、センサの安定化後にセンサを較正するステップを含むことができる。較正は、血糖計を使用して血糖値を測定するステップと、取得された値をセンサ測定値に関連付けるステップと、を含んでよい。センサの較正は、切断時間が第1および第2の時間範囲になったときだけ実施されうるのが好ましい。センサが最大安定化時間後に安定しない場合は、新しいセンサがセンサ電子機器に接続されるように、初期化プロトコルが終了されるのが好都合である。所定の最大安定化期間は、30分以上でよい。35分または40分などの他の所定の最大安定化期間も可能である。
【0017】
切断時間を判断するステップは、センサの電流出力を測定するステップと、測定された電流出力を切断閾値と比較するステップとを含むのが都合がよい。取り得る閾値の範囲例は、1〜10nAである。タイマが切断時間を記録するのが好ましい。タイマは、プログラムに搭載されているのが好ましい。電流出力が4nAなどの再接続閾値を超えた場合、再接続イベントが検出される。
【0018】
第1の初期化方式は、少なくとも2つの電圧を第1の所定初期化時間の間印加するステップを含むのが好ましい。少なくとも2つの電圧は、パルス電圧、ステップ電圧、またはスイッチ電圧でよい。それらは反復配列形式で印加されてもよいし、それぞれが一回だけ印加されてもよい。同様に、第2の初期化方式は、少なくとも2つの電圧を第2の所定初期化時間の間印加するステップを含むのが好ましい。少なくとも2つの電圧は、パルス電圧、ステップ電圧、またはスイッチ電圧でよい。それらは反復配列形式で印加されてもよいし、それぞれが一回だけ印加されてもよい。第2の所定初期化時間は、30分未満でよい。
【0019】
本発明は、センサの水和を検出するための方法または装置を含んでよい。選択された開始プロトコルを適用する前にセンサの水和を検出するのが好ましく、センサに対して一連の水和パルスを第1の水和時間の間印加するステップと、一連の水和パルスの印加中にセンサの電流応答を記録するステップと、電流応答を所定の水和閾値と比較するステップとを含むのが好ましい。電流応答が所定の水和閾値に到達したかまたはそれを超えた場合、一連の水和パルスの印加を終了してもよい。電流応答が第1の所定の水和時間の間に所定の水和閾値に到達していない場合、水和を検出するステップは、センサに対して第2の一連の水和パルスを第2の水和時間の間印加するステップをさらに含んでよい。所定の水和閾値は、例えば、100nAまたは50nAなどでよい。水和パルスの例としては、例えば、20秒〜2分毎に0Vと2Vからなるパルス列でよい。
【0020】
分析物感知システムは、電子デバイスと通信状態にある監視デバイスをさらに備えるのが好ましく、監視デバイスは、分析物センサから受信した信号を監視し、信号から分析物の濃度を計算する回路を含む。監視デバイスは、センサおよび/またはセンサ電子機器に直接接続されてもよいし、無線でデータ受信してもよい。センサ電子機器は、モニタの一部であってもよいし、モニタから離間していてもよい。
【0021】
本発明の他の目的、特徴、利点は、以下の詳細な説明から当業者には明白になるだろう。しかし、詳細な説明および特定の例は、本発明のいくつかの実施形態を示すが、例として挙げられたものであって、限定ではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内の多くの変更および修正は、本発明の趣旨を逸脱することなく行われてもよく、本発明はこのような修正のすべてを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】グルコースとグルコースオキシダーゼとの間の周知の反応の概略図である。段階的に示されているように、この反応はグルコースオキシダーゼ(GOx)と、グルコースと、水中の酸素とを必要とする。還元半反応では、2個の陽子と電子とが1‐D‐グルコースから酵素へ移動してd‐グルコノラクトンを生成する。酸化半反応では、酵素が分子状酸素によって酸化されて過酸化水素を生成する。d‐グルコノラクトンは次に水と反応し、ラクトン環を加水分解してグルコン酸を発生させる。本発明のある特定の電気化学センサでは、この反応により発生される過酸化水素は作用電極で酸化される(H22→2H++O2+2e-)。
図2】本発明の典型的な層状分析物センサ構成の線図である。
図3】本発明の特徴を具現する、皮下センサ挿入セットと、遠隔測定法による特徴的モニタ送信デバイスと、データ受信デバイスとを図示する斜視図である。
図4】本発明の一実施形態による初期化方式の選択を示したフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態による初期化方式を示したフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態による初期化方式を示したフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態による初期化方式を示したフローチャートである。
図8A】本発明の一実施形態による電位(V)対時間(秒)を示したグラフである。
図8B】本発明の一実施形態による電位(V)対時間(秒)を示したグラフである。
図9A】センサが2時間の切断の後にプロセッサに再接続された場合の信号応答(iSig)を示すグラフである。
図9B】本発明の一実施形態による、センサが2時間の切断の後にプロセッサに再接続され初期化された場合の信号応答(iSig)を示すグラフである。
図10】本発明の一実施形態による初期化方式のグラフ図である。
図11】本発明の一実施形態による初期化方式のグラフ図である。
図12】本発明の一実施形態による初期化方式のグラフ図である。
図13】本発明の一実施形態による水和方式のグラフ図である。
図14】本発明の一実施形態による初期化方式のグラフ図である。
図15】本発明の一実施形態による初期化方式のグラフ図である。
図16】本発明の一実施形態による初期化方式のグラフ図である。
図17】本発明の一実施形態による初期化方式のグラフ図である。
図18】本発明によるある特定の初期化方式の回復時間のボックスプロットを示すグラフである。
図19】本発明の初期化方式における時間に基づく回復時間のボックスプロットを示すグラフである。
図20】本発明による電流を測定するために使用可能なポテンショスタットの概略図である。図20に示されるように、ポテンショスタット300は、2つの入力VsetおよびVmeasuredを有するように電気回路において接続されているオペアンプ310を含んでよい。図示されるように、Vmeasuredは、基準電極と作用電極との間の電圧の測定値である。一方、Vsetは、作用電極および基準電極の間の最適な所望の電圧である。カウンタと基準電極との間の電流が測定され、ポテンショスタットから出力される電流測定値(isig)を生成する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
非限定的例として添付の図面を参照して本発明をさらに説明する。他に定義されなければ、本明細書で使用される当技術の用語、記号、および他の科学用語または専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味を有するものとする。いくつかの事例では、一般に理解されている意味を持つ用語が、明瞭化のためおよび/または容易な参照のために本明細書において定義されており、このような定義を本明細書に含めることは、当技術で一般的に理解されているものとの実質的な相違を表すと必ずしも解釈されるべきではない。本明細書で記載または参照される技術および手順の多くはよく理解されており、従来の方法を使用して当業者により一般に採用されるものである。適切であれば、市販のキットおよび試薬の使用を必要とする手順は、概して、他に記されていなければ製造者による規定のプロトコルおよび/またはパラメータにしたがって実行される。いくつかの用語は以下で定義される。
【0024】
本明細書で言及されるすべての刊行物は、これらの刊行物が引用されている関連する方法および/または材料を開示および説明するために参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用される刊行物は、本出願の出願日に先立つ開示ゆえに引用されている。いずれも、本発明より早い優先日または前の日付のために刊行物に先行する権利を本発明者が持たないことを容認するものとして解釈されないものとする。さらに、実際の公開日が示されたものと異なっていることもあり、自主的な確認を必要とする。
【0025】
説明される特定の方法、プロトコル、装置、および試薬は当然変わることがあるので、本発明がこれらに限定されないことが理解されなければならない。本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の請求項のみによって限定される本発明の範囲を限定する意図はないことも理解されなければならない。
【0026】
本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形の「一つの(a)」、「および(and)」、「その(the)」は、明らかに逆を指す内容でないかぎり複数の指示対象も含む。ゆえに、例えば、「an oxidoreductase(酸化還元酵素)」との言及は、複数のこのような酸化還元酵素と、当業者に周知の同等物とを含むといった具合である。整数以外の値を数値的な特徴することができる値(溶液中の化合物の濃度など)に言及する明細書および関連の請求項に記載のすべての数字は、「約(about)」の語によって修飾されているものと理解される。
【0027】
本明細書で使用される「分析物」の語は広義語であって、分析され得る体液(例えば血液、間質液、脳脊髄液、リンパ液、または尿)などの流体中の物質または化学成分を限定することなく含む通常の意味で使用される。分析物は、自然発生的な物質、人工物質、代謝物、および/または反応生成物を含み得る。場合によっては、検知領域、デバイス、および方法により測定される分析物は、グルコースである。しかし、ラクタートを含むがこれに限定されない他の分析物も同様に考えられる。ある特定の実施形態では、血液または間質液で自然発生する塩、砂糖、タンパク脂肪、ビタミン、およびホルモンが、分析物を構成し得る。分析物は、体液中に自然に存在(つまり内在)し得るものであり、例えば、代謝産物、ホルモン、抗原、抗体、などである。あるいは、分析物は体内へ導入される(つまり外在)、例えば、撮像用の造影剤、放射性同位体、化学薬品、フッ化炭素ベースの合成血液、またはインシュリンを限定的でなく含む薬物または医薬組成物でもよい。薬物および医薬組成物の代謝産物も分析物と考えられる。
【0028】
本明細書で使用される「センサ」の語は広義語であって、分析物を検出する分析物監視デバイスの1つまたは複数の部分を限定ではなく含むものとして通常の意味で使用される。センサは、一般的に、作用電極と、基準電極と、任意で、センサ本体の一箇所に電気化学反応面を形成するセンサ本体を貫通してこの内側に固定される対向電極と、を有する電気化学電池と、本体の別の箇所の電子接続部と、本体に付着されて電気化学反応面を被覆する膜システムとを含む。センサの一般的な動作中に、生体試料(例えば、血液または間質液)、あるいはその一部分が、酵素(例えばグルコースオキシダーゼ)と(直接的に、または1つまたは複数の膜または領域を通過した後に)接触し、生体試料(またはその一部分)の反応は、生体試料の分析物レベルの判断を可能にする反応生成物の形成を結果的に招く。
【0029】
本明細書で使用される「電気電位」および「電位」の語は広義語であって、電流フローの原因である回路の2つの点の間の電気電位差を限定ではなく含む通常の意味で使用される。本明細書で使用される「システムノイズ」の語は広義語であって、例えば、ガウス、動作関連、フリッカ、運動、または他の白色ノイズなどを含み得る不要な電子または拡散関連のノイズを限定ではなく含む通常の意味で使用される。
【0030】
以下で詳細に説明されるように、本発明は、対象分析物の濃度または流体中の分析物の濃度または存在を示す物質を測定する電気化学センサの使用を含む。センサは、任意で、連続的なデバイス、例えば皮下的、経皮的、または血管内のデバイスであることが可能である。デバイスは、任意で、複数の間欠的血液試料を分析できる。本明細書に開示されるセンサは、侵襲性、低侵襲性、および非侵襲性の検知技術を含む任意の周知の技術を使用して、対象分析物の濃度を示す出力信号を提供することができる。一般的に、センサは、生体内または試験管内での分析物の測定値として酸素の存在下における分析物と酵素との間の酵素反応の生成物または反応物を検知するタイプのものである。このようなセンサは一般的に、分析物が中を移動する、酵素を囲繞する膜を含む。生成物はこの時、電気化学的な方法を使用して測定され、こうして電極システムの出力は分析物の測定値として機能する。
【0031】
本明細書に開示される本発明は、例えば、糖尿病患者の血中グルコースレベルの皮下的または経皮的な監視に使用されるタイプのセンサを含む。糖尿病および他の命にかかわる病気の治療のため、様々な埋め込み可能な電気化学バイオセンサが開発されている。多くの既存のセンサ設計は、何らかの形の固定化酵素を使用してその生体特異性を達成する。本明細書に記載される本発明は、例えば、特許文献1〜38に記載された電気化学センサを含む多様な周知の電気化学センサにより適応および実行されることが可能であり、これらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明は、グルコースおよび/またはラクタートセンサを含むことができるが、本明細書に開示される方法および装置は、当技術で周知の多様なセンサの任意の1つとの使用に適応可能である。本明細書に開示される分析物センサ要素、これらの要素を製作および使用するアーキテクチャおよび方法は、様々な層状センサ構造を確立するのに使用され得る。本発明のこのようなセンサは、驚くべき程度の柔軟性、多様性、および特徴を呈することができ、それらによって多様な分析種を検査するべく多様なセンサ構成を設計することが可能になる。
【0033】
一般的に、本発明によれば、処理可能信号への分析物濃度の変換は電気化学的手段によるものである。これらの変換器は、当技術分野で周知の多様な電流測定、電位差測定、または電気伝導ベースのセンサのいずれかを含むとよい。また、本発明のマイクロ加工センサ技術および材料は、実質的に非平面の、あるいは実質的平面状態に加工された他の種類の変換器(音響波検知デバイス、サーミスタ、気体検知電極、電界効果トランジスタ、光学およびエバネセント場導波管など)に適用されてもよい。バイオセンサにおいて使用されると同様に、各種の変換器かまたはバイオセンサが概して利用される種類の分析用途においても使用される、変換器についての有益な説明および表が、非特許文献1に見られる。
【0034】
本発明の特定の態様について以下の段落で詳細に説明する。
I.本発明の典型的要素、構成、および分析物センサの実施形態
A.本発明の実施形態に見られる典型的なアーキテクチャ
【0035】
図2は、本発明の典型的なセンサ実施形態100の断面を図示している。このセンサ実施形態は、一般的には当技術分野で許容されている方法および/または本明細書に開示される本発明の特定方法により互いの上に配置される様々な導電性および非導電性の構成要素による層の形である複数の構成要素から形成される。センサの構成要素は、図2に示されたセンサ構造の容易な特性評価を可能にするため、本明細書においては、典型的に、層としての特徴を持つ。しかし、センサ構成要素が1つまたは複数の異質な層を形成するようにこれらの構成要素が組み合わされ得ることを、熟練者は理解するだろう。これに関連して、層状の構成要素の順序が変更され得ることを当業者は理解するだろう。
【0036】
図2に示された実施形態は、センサ100を支持するベース層102を含む。ベース層102は、自己支持型であるか当技術分野で周知のように別の材料によってさらに支持される金属および/またはセラミックおよび/またはポリマー基板などの材料で製作され得る。本発明は、ベース層102に配置される、および/またはこれと組み合わされる導電層104を含んでよい。一般的に導電層104は1つまたは複数の電極を備える。作用センサ100は一般的に、作用電極、対向電極、基準電極などの複数の電極を含む。本発明は、また、複数の作用電極および/または対向電極および/または基準電極、および/または多数の機能を実施する1つまたは複数の電極であって例えば基準電極と対向電極の両方として機能する電極を含んでもよい。
【0037】
以下で詳細に説明されるように、ベース層102および/または導電層104は多くの周知の技術および材料を使用して生成され得る。配置された導電層104を所望パターンの導電経路にエッチングすることによってセンサの電気回路が画定されるのが好ましい。センサ100の一般的な電気回路は、接点パッドを形成する近位端部の領域とセンサ電極を形成する遠位端部の領域とをもつ2つ以上の隣接の導電経路を備える。ポリマーコーティングなどの電気絶縁カバー層106がセンサ100の部分に配置されることができる。絶縁保護カバー層106としての使用について許容可能なポリマーコーティングは、シリコン化合物など無毒性の生体適合性ポリマー、ポリイミド、生体適合性はんだマスク、エポキシアクリレートコポリマーなどを含むことができるが、これらに限定されるわけではない。本発明のセンサでは、1つまたは複数の露出領域または開口部108がカバー層106に形成されて、導電層104を外部環境に開放するとともに、例えば、グルコースなどの分析物がセンサの層に浸透して検知要素により検知されるようにする。開口部108は、レーザアブレーション、テープマスキング、ケミカルミーリングまたはエッチング、あるいはフォトリソグラフィー現像などを含むいくつかの技術によって形成され得る。製造中、二次フォトレジストが保護層106に塗着されて保護層の領域を画定し、該保護層は除去されると開口部108を形成する。露出した電極および/または接点パッドはまた、表面の用意および/または導電領域の補強を行う付加的めっき処理などの二次処理を(開口部108を通して)受けてもよい。
【0038】
図2に示されたセンサ構成では、(一般的にセンサ化学層であって、この層の材料が化学反応を受けると導電層により検知され得る信号を発生させる)分析物検知層110が、導電層104の1つまたは複数の露出電極に配置されている。一般的に、分析物検知層110は酵素層である。最も一般的には、分析物検知層110は、酸素および/または過酸化水素を発生および/または利用することが可能な酵素、例えばグルコースオキシダーゼ酵素を含む。必要に応じて、分析物検知層の酵素が、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンなどの第2担体タンパク質と組み合わされる。分析物検知層110のグルコースオキシダーゼなどの酸化還元酵素がグルコースと反応して、次に電極で電流を調整する化合物である過酸化水素を発生させるのが好ましい。この電流の調整は過酸化水素の濃度に左右され、過酸化水素の濃度はグルコースの濃度と相関し、グルコースの濃度はこの電流の調整を監視することにより判断され得る。(本明細書では陽極作用電極とも称される)陽極である作用電極で過酸化水素が酸化されるのが好ましく、その結果生じる電流は過酸化水素濃度に比例している。過酸化水素濃度を変更することにより生じるこのような電流の調整は、汎用センサ電流測定バイオセンサ検出器など、様々なセンサ検出装置のいずれか1つ、またはMedtronic Diabetes製のグルコース監視デバイスなど当技術分野で周知である他の多様な類似デバイスの1つによって監視され得る。
【0039】
分析物検知層110は、導電層のいくつかの部分にわたって、または導電層の領域全体にわたって形成され得る。一般的には、陽極または陰極である作用電極に分析物検知層110が配置される。必要に応じて、分析物検知層110が対向電極および/または基準電極に配置される。分析物検知層110は厚さが約1000ミクロン(μm)まででよいが、一般的に分析物検知層は、当技術分野ですでに記載されているセンサに見られるものと比較すると比較的薄く、例えば一般的には厚さが1ミクロンより小さく,0.5,0.25,または0.1ミクロンである。後で詳細に記すように、分析物検知層110を生成するためのいくつかの方法は、基材(白金黒電極の反応面など)への層のブラシ研磨とともに、スピンコーティングプロセス、浸漬および乾燥プロセス、低せん断噴霧プロセス、インクジェット印刷プロセス、シルクスクリーンプロセスなどを含む。(1)層の正確な局在化を可能にするためと、(2)電極(電着プロセスにより生成される白金黒など)の反応面のアーキテクチャへ層を深く押入するために、ブラシ研磨が使用される。
【0040】
一般的に、分析物検知層110はコーティングされるか、1つまたは複数の付加層に隣接して配置される。必要に応じて、1つまたは複数の付加層は、分析物検知層110の上に配置されるタンパク質層116を含む。一般的に、タンパク質層116はヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンなどのタンパク質を含む。一般的に、タンパク質層116はヒト血清アルブミンを含む。付加層は、分析物、検知層110の上方に配置されて分析物検知層110との分析物接触を調節する分析物調整層112を含むのが好ましい。例えば、分析物調整膜層112は、分析物検知層に存在するグルコースオキシダーゼなどの酵素と接触するグルコースの量を調節するグルコース制限膜を含むことができる。このようなグルコース制限膜は、ポリジメチルシロキサンなどのシリコン化合物、ポリウレタン、ポリ尿素セルロースアセテート、ナフィオン、ポリエステルスルホン酸(Kodak AQなど)、ヒドロゲル、または当業者に周知の他の適当な親水膜など、このような目的に適していることが知られている多様な材料から製作され得る。
【0041】
センサ層のアーキテクチャまたは厚さを使用してセンサの特性を最適化すると都合が良い。例えば、細長いベース層は、少なくとも100ミクロン厚さの誘電体またはポリイミドセラミック材料であってよい。分析物調整層は、少なくとも、6、7、8、9、10、15、20、25、または30ミクロンの厚さでよい。本発明は、分析物調整層の厚い層(25または30ミクロンなど)を使用してよいが、それは、この厚い層では、信号の範囲(グルコース濃度など)にわたって分析物信号の直線性を最適化することが観察されているためである。このような厚い層は、例えば(特別な材料などのために)分析物調整層の寿命が長いなどの望ましい特性、つまり長期センサに特に適したものにする特性をさらに有する。
【0042】
分析物調整層112と分析物検知層110の接触および/または接着を促進するために、図2に示されているように接着促進層114がこれらの間に配置される。分析物調整層112とタンパク質層116との接触および/または接着を促進するために、図2に示されているように接着促進層114がこれらの間に配置される。接着促進層114は、このような層の間の接合を促進する当技術分野で周知の多様な材料のいずれか1つから製作することができる。一般的に、接着促進層114はシラン化合物を含む。代替的には、接着促進層114が存在しない状態で分析物調整膜層112を分析物検知層110と直接接触させて配置することができるように、分析物検知層110のタンパク質または同様の分子が充分に架橋されるかまたは他の方法で準備されることが可能である。
後述する干渉拒絶層などの付加層を含むようにセンサは設計されることができる。
【0043】
B.本発明の実施形態で使用される一般的な分析物センサ構成要素
以下の開示は、本発明のセンサ実施形態で使用される一般的な要素/構成要素の例を提供する。これらの要素は離散ユニット(層など)として説明されるが、後述する要素/構成要素(支持ベース構成要素および/または導電性構成要素および/または分析物検知構成要素の基材として作用するとともに、センサの電極としても機能する要素)の材料特性および/または機能のいくつかまたはすべての組み合わせを有する要素を含むようにセンサが設計され得ることを、当業者は理解している。これらの薄膜分析物センサは後述するものなどいくつかのセンサシステムでの使用に適応可能であることを当業者は理解している。
【0044】
ベース構成要素
本発明のセンサは一般的に、ベース構成要素(図2の要素102などを参照)を含む。「ベース構成要素」の語は当技術分野で許容されている専門用語にしたがって本明細書で使用され、一般的には互いの上に積み重ねられて機能的センサを備える複数の構成要素のための支持マトリクスとなる装置の構成要素を指す。1つの形態において、ベース構成要素は、絶縁性(電気絶縁性および/または不浸透性)材料の薄膜シートを含む。このベース構成要素は、誘電特性、不浸透性、および密閉性など所望の品質を有する多様な材料で製作され得る。いくつかの材料は、金属、および/またはセラミック、および/またはポリマー基材などを含む。
【0045】
ベース構成要素は、自己支持型であっても、当技術分野で周知の別の材料によって支持されてもよい。図2に示されたセンサ構成では、ベース構成要素102はセラミックを含んでよい。あるいは、ベース構成要素はポリイミドなどのポリマー材料を含んでよい。例示的実セラミックベースは主としてAl23(96%など)である組成を含んでよい。埋め込み可能なデバイスとともに使用するための絶縁性ベース構成要素としてのアルミナの使用は、参照によりここに組み込まれる特許文献89〜91に開示されている。本発明のベース構成要素は、当技術分野で周知の他の要素、例えば密閉ビア(特許文献30などを参照)をさらに含み得る。特定のセンサ設計に応じて、ベース構成要素は比較的厚い(50,100,200,300,400,500、1000ミクロンより厚い)構成要素であり得る。代替的に、約30ミクロンより薄いものなどの薄い構成要素に、アルミナなどの非導電性セラミックを利用することもできる。
【0046】
導電性構成要素
本発明の電気化学センサは一般的に、検査される分析物またはその副産物(酸素および/または過酸化水素など)と接触するための少なくとも1つの電極を含むベース構成要素に配置される導電性構成要素を含む(図2の要素104を参照)。「導電性構成要素」の語は当技術分野で許容されている専門用語にしたがって本明細書で使用され、検出可能信号を測定してこれを検出装置へ伝導できる電極などの導電性センサ要素を指す。この例示的な一例は、導電性構成要素であって、分析物の濃度の変化を受けない基準電極と比較した分析物またはその副産物の濃度の変化などの刺激への露出に応じた電流の増減と、分析物検知構成要素110に存在する組成物(グルコースオキシダーゼ酵素など)と分析物が相互作用する時に使用される共反応物(酸素など)、またはこの相互作用の反応生成物(過酸化水素など)とを測定できる導電性構成要素である。このような要素の例示的な例は、過酸化水素または酸素などの分子が可変濃度で存在する状態で可変検出可能信号を発生させることのできる電極を含む。一般的に導電性構成要素のこれらの電極の1つは、耐食性金属または炭素で製作され得る作用電極である。炭素作用電極はガラス質または黒鉛状であるとよく、固体またはペーストから製作され得る。金属作用電極は、パラジウムまたは金を含む白金族金属、または二酸化ルテニウムなどの耐食性かつ金属導電性の酸化物から製作されるとよい。あるいは、電極は銀/塩化銀電極組成物を含んでもよい。作用電極は、ワイヤ、あるいは例えばコーティングまたは印刷により基板に塗着される導電性薄膜でよい。一般的に、金属または炭素導体の表面の一部分のみが、分析物含有溶液と電解接触状態にある。この部分は電極の作用面と呼ばれる。電極の残りの表面は一般的に、電気絶縁性のカバー構成要素106により溶液から絶縁されている。この保護カバー構成要素106を生成するのに有益な材料の例は、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、およびポリシロキサンなどのシリコンのようなポリマーを含む。
【0047】
作用電極に加えて、本発明の分析物センサは一般的に、基準電極または基準および対向の複合電極(準基準電極または対向/基準電極とも称される)を含む。センサが対向/基準電極を有していない場合には、作用電極と同じか異なる材料から製作されるとよい別の対向電極を含むとよい。本発明の典型的なセンサは、1つまたは複数の作用電極と、1つまたは複数の対向、基準、および/または対向/基準電極を有する。本発明のセンサの一実施形態は、2個、3個、4個、またはそれ以上の作用電極を有する。センサのこれらの作用電極は一体的に接続されても、分離したままであってもよい。必要に応じて、電極はセンサ構造体の単一の表面または側面に配置され得る。あるいは、電極が、センサ構造体の多数の表面または側面に配置され得る(例えば電極が配置されている表面にセンサ材料のビアによって接続され得る)。電極の反応面は異なる相対的なエリア/サイズのものであり、例えば1Xの基準電極と、2.6Xの作用電極と、3.6Xの対向電極である。
【0048】
一般的に、生体内の使用については、本発明のセンサは、血液などの哺乳類の体液との直接接触するため哺乳類の皮膚に皮下的に埋め込まれる。あるいは、腹腔内の空間など哺乳類の体内の他の領域にセンサが埋め込まれることが可能である。多数の作用電極が使用される時には、または体内で、一緒にまたは異なる位置に埋め込まれるとよい。対向、基準、および/または、対向/基準電極は、作用電極に近接して、または哺乳類の体内の他の位置に埋め込まれてもよい。
【0049】
本発明の実施形態は、ナノ構造材料から構築される電極を備えるセンサを含む。本明細書で使用されるように、「ナノ構造材料」は100nmより小さい寸法を少なくとも1つ有するように製造される物体である。例には、単壁ナノチューブ、複壁ナノチューブ、多壁ナノチューブ、ナノチューブ束、フラーレン、コクーン、ナノワイヤ、ナノファイバ、オニオンなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0050】
干渉拒絶構成要素
本発明の電気化学センサは、電極の表面と検査される環境との間に配置される干渉拒絶構成要素を必要に応じて含む。特に、センサは、定電位が印加される状態で作用電極の表面での酵素反応により発生される過酸化水素の酸化および/または還元に依存している。過酸化水素の直接酸化に基づく電流測定検出は比較的高い酸化電位を必要とするため、この検出方式を使用するセンサは、アスコルビン酸、尿酸、およびアセトアミノフェンなど、体液中に存在する酸化可能な種からの干渉を受けることがある。これに関して、「干渉拒絶構成要素」の語は、当技術分野で許容されている専門用語にしたがって本明細書で使用され、検知される分析物により発生される信号の検出を干渉するような、酸化可能な種により発生される偽信号を阻止するように機能するセンサのコーティングまたは膜を指している。ある特定の干渉拒絶構成要素は、サイズ排除(特定サイズの干渉種を排除することなどによる)を介して機能する。干渉拒絶構成要素の例は、親水性ポリウレタン、セルロースアセテート(ポリ(エチレングリコール)などの作用剤を取り入れたセルロースアセテートを含む)、ポリエーテルスルホン、ポリテトラ‐フルオロエチレン、全フッ素置換イオノマーであるNafion(登録商標)、ポリフェニレンジアミン、エポキシなどの化合物による1つまたは複数の層またはコーティングを含む。干渉除去成分はNAFION(スルホン化テトラフルオロエチレンコポリマーであり、分子式C7HF13O5S. C2F4、CAS番号[31175−20−9]を有する)および/またはセルロースアセテート組成物で構成することができる。このような干渉拒絶構成要素の例示的な説明は、例えば、参照により取り入られる非特許文献2、非特許文献3に見られる。他の干渉拒絶構成要素は例えば、分子量範囲に基づく化合物の移動を制限することが観察されているもの、例えば特許文献92に開示されているセルロースアセテートを含み、その内容は参照により組み込まれる。
【0051】
干渉拒絶膜(IRM)はNAFIONと、電流測定センサのアセトアミノフェノールにより発生され得る干渉信号を阻止する際のその有効性とを備える。一般的に、IRMは分析物検知層(グルコースオキシダーゼを包含するものなど)の下に配置される。電極の反応面と分析物検知層との間にIRMが配置される。これに関連して、本発明は、干渉化合物により発生される1つまたは複数の信号を(干渉拒絶層を使用することなどにより)阻止するための方法を含む。
【0052】
分析物検知構成要素
本発明の電気化学センサは、センサの電極に配置される分析物検知構成要素(図2の要素110などを参照)を含む。「分析物検知構成要素」の語は、当技術分野で許容された専門用語にしたがって本明細書で使用され、分析物センサ装置によりその存在が検出される分析物を認識するかこれと反応することのできる材料を含む構成要素を指す。一般的に分析物検知構成要素のこの材料は、一般的に導電性構成要素の電極を介して、検知対象の分析物との相互作用の後で検出可能信号を発生させる。これに関して、分析物検知構成要素と導電性構成要素の電極とが組み合わせて作用し、分析物センサと関連する装置により読み取られる電気信号を発生させる。一般的に、分析物検知構成要素は、導電性構成要素(酸素および/または過酸化水素など)、例えばグルコースオキシダーゼ酵素の電極での電流変化を測定することにより濃度変化が測定され得る分子と反応してこれを発生させることのできる酸化還元酵素を含む。過酸化水素などの分子を発生させることが可能な酵素は、当技術分野で周知のいくつかのプロセスにしたがって電極に配置されることができる。分析物検知構成要素は、センサの様々な電極のすべてまたは一部分をコーティングできる。この状況では、分析物検知構成要素は電極を同程度にコーティングするとよい。あるいは、分析物検知構成要素が異なる電極を異なる程度にコーティングしてもよく、例えば作用電極のコーティング面が対向および/または基準電極のコーティング面より広くてもよい。
【0053】
一般的に、本発明のセンサは、一定の比(グルコースオキシダーゼの安定化特性のために一般的に最適化されたものなど)で第2タンパク質(アルブミンなど)と結合されてから、電極表面に塗着されて薄い酵素構成要素を形成する酵素(グルコースオキシダーゼなど)を利用する。一般的に、分析物検知構成要素はGOxとHSAの混合物を含む。分析物検知構成要素がGOxを有する場合、GOxは、検知環境(哺乳類の体など)に存在するグルコースと反応して、図1に示された反応にしたがって過酸化水素を発生させ、こうして発生された過酸化水素は導電性構成要素の作用電極で陽極検出される。
【0054】
上記のように、酵素および第2タンパク質(アルブミンなど)は一般的な処理を受けて(タンパク質混合物に架橋剤を添加することなどにより)架橋マトリクスを形成する。当技術分野で周知のように、酵素の保有生物活性、その機械的および/または動作上の安定性などの要因を調整するため、架橋条件が操作されてもよい。例示的な架橋手順は、参照により組み込まれる特許文献39および特許文献29に記載されている。例えば、グルタルアルデヒドなどであるがこれに限定されることのないアミン架橋試薬がタンパク質混合物に添加され得る。タンパク質混合物への架橋試薬の添加はタンパク質ペーストを生成する。添加される架橋試薬の濃度は、タンパク質混合物の濃度にしたがって変化してもよい。グルタルアルデヒドは例示的な架橋試薬であるが、他の架橋試薬が使用されてもよいか、グルタルアルデヒドの代わりに使用されてもよい。当業者には自明であるように、他の適当な架橋剤が使用されてもよい。
【0055】
GOxおよび/または担体タンパク質の濃度が、変化してもよい。例えば、GOx濃度は50mg/ml(およそ10,000U/ml)からおよそ700mg/ml(およそ150,000U/ml)の範囲内でよい。一般的に、GOx濃度は約115mg/ml(およそ22,000U/ml)である。GOx濃度に応じて、HSA濃度が約0.5%〜30%(w/v)の間で変化するのが好ましい。一般的にHSA濃度は約1〜10%w/vであり、最も一般的には約5%w/vである。コラーゲンまたはBSAまたはこのような状況で使用される他の構造タンパク質が、HSAの代わりにまたはこれに加えて使用され得る。分析物検知構成要素の例示的酵素としてGOxが言及されたが、グルコースデヒドロゲナーゼまたはヘキソキナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ラクタートオキシダーゼ、その他を含むがこれらに限定されない他のタンパク質および/または酵素が使用されるか、GOxの代わりに使用されてもよい。当業者には自明であるように、他のタンパク質および/または酵素が使用されてもよい。また、例ではHSAが使用されるが、BSA、コラーゲンなど他の構造タンパク質がHSAの代わりに、またはこれに加えて使用されてもよい。
【0056】
上記のように、分析物検知構成要素は、導電要素(酸素および/または過酸化水素濃度の変化を検知する電極など)により検知され得る信号(酸素および/または過酸化水素濃度の変化など)を発生させることが可能な組成物(グルコースオキシダーゼなど)を含む。しかし、その存在が検出対象である目標分析物との相互作用の後で導電要素により検知され得る検出可能信号を発生させることが可能である任意の組成物から、他の有益な分析物検知構成要素が形成され得る。組成物は、検知される分析物との反応の際に過酸化水素濃度を調整する酵素を含む。あるいは、組成物は、検知対象分析物との反応の際に酸素濃度を調整する酵素を含む。これに関連して、生理学的分析物との反応で過酸化水素および/または酸素を使用するか発生させる多様な酵素が当技術分野では周知であって、これらの酵素は分析物検知構成要素組成物へ容易に取り入れられることができる。当技術分野で周知の他の様々な酵素は、本明細書に記載されるセンサ設計に組み込まれる電極などの導電要素により調整が検出され得る化合物を生成および/または利用できる。このような酵素は、例えば、非特許文献4に具体的に記載されており、これらの内容全体が参照により組み込まれる。
【0057】
他の有益な分析物検知構成要素は、その存在が検出対象である目標分析物と相互作用を行った後に導電要素により検知され得る検出可能信号を発生させることが目標分析物との相互作用により可能である抗体を含むように形成され得る。抗体ベース装置の例は、特許文献40〜47も参照されたく、これらは参照により組み込まれる。
【0058】
酵素と抗体に加えて、本明細書に開示されるセンサの分析物検知構成要素での使用のための他の例示的な材料は、特定タイプの細胞または細胞構成要素と結合するポリマー(ポリペプチド、炭水化物など)、一本鎖DNA、抗原などを含む。検出可能な信号は、例えば、所望の分析物(細胞など)の色変化または視認可能な蓄積など、視覚的に検出可能な変化であってもよい。検知要素は、実質上、非反応性の材料(つまり対照物)から形成されることもできる。上記の代替的センサ要素は、例えば、細胞選別検査または、ウィルス(HIV,C型肝炎など)、細菌、原生動物などの病原生物の存在についての検査に使用するためのセンサに含まれると有益である。
【0059】
加えて考えられるのは、外部環境に存在して、それ自体が電極の電流の測定可能な変化を引き起こし得る分析物を測定する分析物センサである。このような分析物を測定するセンサでは、分析物検知構成要素は任意でよい。
【0060】
タンパク質構成要素
本発明の電気化学センサは、分析物検知構成要素と分析物調整構成要素との間に配置されるタンパク質構成要素(図2の要素116などを参照)を必要に応じて含む。「タンパク質構成要素」の語は、当技術分野で許容された専門用語にしたがって本明細書で使用され、分析物検知構成要素および/または分析物調整構成要素との適合性のために選択される担体タンパク質などを含有する構成要素を指す。一般的に、タンパク質構成要素はヒト血清アルブミンなどのアルブミンを包含する。HSA濃度は約0.5%〜30%(w/v)の間で変動し得る。一般的にHSA濃度は約1〜10%w/vであり、最も一般的には約5%w/vである。これらの状況で使用されるコラーゲンまたはBSAまたは他の構造タンパク質が、HSAの代わりに、またはこれに加えて使用され得る。この構成要素は、一般的に、当技術分野で許容されているプロトコルにしたがって分析物検知構成要素に架橋される。
【0061】
接着促進構成要素
本発明の電気化学センサは、1つまたは複数の接着促進(AP)構成要素(図2の要素114などを参照)を含むことができる。「接着促進構成要素」の語は、当技術分野で許容されている専門用語にしたがって本明細書で使用され、センサの隣接構成要素の間の接着を促進する能力のために選択された材料を含む構成要素を指す。一般的に、接着促進構成要素は、分析物検知構成要素と分析物調整構成要素との間に配置される。一般的に、接着促進構成要素は、任意のタンパク質構成要素と分析物調整構成要素との間に配置される。接着促進構成要素は、このような構成要素の間の結合を促進する当技術分野で周知の多様な材料のいずれか1つから製作され、当技術分野で周知の多様な方法のいずれか1つによって塗布される。一般的に、接着促進構成要素は、γ‐アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン化合物を含む。
【0062】
R′が一般的には末端アミンを備える脂肪族基であってRが接着を促進する低級アルキル基であるシランカップリング試薬、特に式R′Si(OR)3の使用は、当技術分野で周知である(例えば、参照により組み込まれる特許文献48を参照)。例えば、γ‐アミノプロピルトリエトキシシランなどのシランとグルタルアルデヒドとが段階的プロセスで使用されてウシ血清アルブミン(BSA)およびグルコースオキシダーゼ(GOx)を電極表面に装着および同時架橋する化学修飾電極は、当技術分野でよく知られている(非特許文献5など参照)。
【0063】
接着促進構成要素は、分析物調整構成要素を通したグルコースなどの分析物の拡散を制限するように作用するポリジメチルシロキサン(PDMS)化合物などの隣接構成要素にも存在し得る1つまたは複数の化合物を含んでよい。配合は0.5〜20%のPDMS、一般的には5〜15%のPDMS、最も一般的には10%のPDMSを含んでよい。接着促進構成要素は層状のセンサシステムの中で架橋され、それに対応して、分析物調整構成要素などの近位の構成要素に存在する部分を架橋する能力のために選択される作用剤を含むのが好ましい。接着促進構成要素は、分析物検知構成要素および/またはタンパク質構成要素などの近位の構成要素に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部分、および/または分析物調整層などの近位の層に配置される化合物に存在するシロキサン部分を架橋する能力のために選択される作用剤を含むのが好ましい。必要に応じて、接着促進層の第1化合物は分析物検知層の第2化合物に架橋される。
【0064】
分析物調整構成要素
本発明の電気化学センサは、センサの上に配置される分析物調整構成要素(図2の要素112などを参照)を含む。「分析物調整構成要素」の語は、当技術分野で許容されている専門用語にしたがって本明細書において使用され、グルコースなどの1つまたは複数の分析物が構成要素を通して拡散するのを調整するように機能するセンサ上の膜を一般的に形成する構成要素を指す。分析物調整構成要素は、グルコースなどの1つまたは複数の分析物が構成要素を通して拡散するのを防止または制限するように機能する分析物制限膜であるのが好ましい。分析物調整構成要素は、構成要素における1つまたは複数の分析物の拡散を促進するように機能してよい。必要に応じて、このような分析物調整構成要素は構成要素を通して1つのタイプの分子(グルコースなど)の拡散を防止または制限するのと同時に、構成要素を通して他のタイプの分子(O2など)の拡散を許容または促進するように形成される。
【0065】
グルコースセンサに関して、周知の酵素電極では、血液からのグルコースおよび酸素は、アスコルビン酸および尿酸などの干渉物質とともに、センサの一次膜を通して拡散する。グルコース、酸素、および干渉物質が分析物検知構成要素に達すると、グルコースオキシダーゼなどの酵素が、過酸化水素およびグルコノラクトンへのグルコースの変換に触媒作用を及ぼす。過酸化水素は分析物調整構成要素を通して再び拡散するか、電極へ拡散し、ここで反応を受けて酸素および陽子を形成し、グルコース濃度に比例する電流を発生させる。センサ膜アセンブリは、グルコースの透過を選択的に許容することを含むいくつかの機能を果たす。これに関連して、例示的な分析物調整構成要素は、水、酸素、および少なくとも1つの選択性分析物の透過を許容するとともに、水を吸収する能力を有する半透膜であり、この膜は水溶性で親水性のポリマーを有する。
【0066】
例示的な様々な分析物調整構成要素が当技術分野で周知であり、例えば特許文献49〜53、特許文献17に記載され、各々の開示は参照により本明細書に組み込まれる。そこに記載されているヒドロゲルは、周囲の水構成要素を提供するのに好都合である様々な埋め込み可能なデバイスには特に有益である。分析物調整構成要素はPDMSを含むのが好ましい。分析物調整構成要素は、近位の構成要素に存在するシロキサン部分を架橋する能力のために選択される作用剤を含んでよい。これに関連して、接着促進構成要素は、近位の構成要素に存在するタンパク質のアミンまたはカルボキシル部分を架橋する能力のために選択される作用剤を含んでよい。
【0067】
親水性分析物調整層が、電極(導電性ワイヤなど)の反応面の少なくとも50%、75%または100%にわたってコーティングされるのが好ましい。
【0068】
カバー構成要素
本発明の電気化学センサは、一般的に電気絶縁性の保護構成要素である1つまたは複数のカバー構成要素(図2の要素106などを参照)を含んでよい。一般的に、このようなカバー構成要素はコーティング、シース、またはチューブの形とすることができ、分析物調整構成要素の少なくとも一部分上に配置される。絶縁性保護カバー構成要素としての使用のための許容可能なポリマーコーティングは、シリコン化合物などの無毒性の生体適合性ポリマー、ポリイミド、生体適合性はんだマスク、エポキシアクリレートコポリマーなどを含むことができるが、これらに限定されるわけではない。さらに、これらのコーティングは光画像形成可能で、導電性構成要素への孔のフォトリソグラフィー形成を促進することができる。一般的なカバー構成要素は、スパンオンシリコーン(spun on silicone)を備える。当技術分野で周知のように、この構成要素は市販のRTV(室温硬化)シリコン組成物でよい。これに関して、典型的な化学反応は、ポリジメチルシロキサン(アセトキシベース)である。
【0069】
C.本発明の典型的な分析物センサシステム実施形態
センサ要素およびセンサは、例えば様々な状況(哺乳類への埋め込みなど)での使用に適合させるため、一般的に分析物センサとともに使用される他の様々なシステム要素(穿孔部材、挿入セットなどの構造要素とともに、プロセッサ、モニタ、薬物注入ポンプなどの電子部品)に動作可能に結合されることができる。本発明は、使用者について検知される生理学的特性値に基づくセンサからの信号を受信できる入力要素と、受信した信号を分析するためのプロセッサとを含み、使用者の生理学的特徴を監視する方法を含む。一般的には、プロセッサは生理学的特性値の動的挙動を判断し、こうして判断された生理学的特性値の動的挙動に基づいて観察可能なインジケータを提供する。生理学的特性値は使用者の血中グルコース濃度の測定値である。例えば、センサ機能、分析物濃度測定値、干渉物の存在などについての確認情報を提供するように考案された手法でセンサ装置へ比較冗長性を取り入れるために、受信信号を分析して動的挙動を判断するプロセスは、生理学的特性値を反復的に測定して一連の生理学的特性値を求めることを含む。
【0070】
本発明は、デバイスの使用者が容易に監視でき、必要ならば、特徴値の生理学的状態を調節(例えば、インスリン投与による血中グルコース濃度の調節)できるように設定した方法および形式で、検知した生理学的特性値(例えば、血中グルコース濃度)の測定値からのデータを表示するデバイスが含まれる。本発明は、検知した使用者の生理学的特性値に基づく信号をセンサから受信できるセンサ入力部と、センサからの受信信号から、検知した使用者の生理学的特性値の複数の測定値を記憶するためのメモリと、検知した生理学的特性値の複数の測定値を、文字および/または図形表示(例えば、文字、線グラフなど、棒グラフなど、格子図形など、またはこれらの組み合わせ)で示すためのディスプレイとを含むデバイスを含む。一般的に、図形表示は、検知した生理学的特性値のリアルタイム測定値を表示する。このようなデバイスは、様々な状況で、例えば、他の医療装置と組み合わせて使用できる。デバイスは少なくとも1つの別の医療機器(例えば、グルコースセンサ)と組み合わせて使用することができる。
【0071】
本発明は、グルコースセンサと送信器とポンプ受信器とグルコース濃度測定装置とを提供する。このシステムでは、送信器からの無線信号が5分ごとにポンプ受信器へ送信されて実時間センサグルコース(SG)値を提供することができる。使用者が血中グルコースを自己監視し、自分のインシュリンポンプを使用してインシュリンを投与できるように、値/グラフがポンプ受信器のモニタに表示される。一般的に、本明細書に開示されるデバイスは、有線または無線接続を介して第2医療デバイスと通信する。無線通信としては、例えば、RF遠隔測定、赤外線伝送、光伝送、音波および超音波伝送などによる信号の伝達と共に起こる、放射無線信号の受信が挙げられる。必要に応じて、このデバイスは、薬剤注入ポンプ(例えば、インスリンポンプ)の一体化部分である。一般にこのようなデバイスでは、生理学的特性値に複数の血中グルコース測定値が含まれる。
【0072】
図3は、本発明の例示的な一実施形態による、皮下センサ挿入システムの一般化された実施形態の斜視図とセンサ電子機器装置のブロック図とを提示する。このようなセンサシステム実施形態とともに一般的に使用される追加要素は、例えば、参照により組み込まれる特許文献93に開示されている。図3は、使用者の身体の選択部位において可撓性センサ12などの作用部分を皮下的配置するために設けられる皮下センサセット10を含む、遠隔測定法による特徴的モニタシステム1を提示する。センサセット10の皮下または経皮部分は、尖端44を有する中空の溝穴付き挿入ニードル14と、カニューレ16とを含む。カニューレ16の内側には、カニューレ16に形成された窓部22を通して1つまたは複数のセンサ電極20を使用者の体液に露出させるセンサ12の検知部分18が設けられている。検知部分18は、絶縁層の1つを通してやはり露出されている導電性接点パッドなどを終端とする接続部分24に接合されている。接続部分24と接点パッドとは、センサ電極20から導出される信号に応答して使用者の状態を監視するためディスプレイ214に結合された適当なモニタ200への直接有線電気接続に概して適合している。参照により取り入れられる、可撓性回路コネクタ(FLEX CIRCUIT CONNECTOR)という名称の特許文献18に図示および説明されているコネクタブロック28(あるいは同様の部品)により、接続部分24がモニタ200または特徴的モニタ送信器100に電気接続されると都合がよい。一般的には、接点パッドと電極は、少なくとも、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25ミリメートル離間している。
【0073】
図3に示されているように、皮下センサセット10は、有線または無線の特徴的モニタシステムとともに機能するように構成または形成されるとよい。センサ12の近位部分は、使用者の皮膚上への配置に適合した取付ベース30内に取り付けられる。取付ベース30は、好適な感圧接着層32でコーティングされた下側面を有するパッドであるとよく、センサセット10が使用可能状態となるまで接着層32を覆って保護するために剥離紙片34が通常は設けられている。取付ベース30は上層36および下層38を含み、可撓性センサ12の接続部分24は層36、38の間に挟持されている。接続部分24は、下ベース層38に形成されるボア40を通って下向きに延出するような角度で曲げられたセンサ12の作用検知部分18に接合された前方部分を有する。必要に応じて、接着層32(または体内組織と接触している装置の別の部分)は、炎症反応を軽減する抗炎症剤および/または感染の機会を低下させる抗菌剤を含む。挿入ニードル14は、上ベース層36に形成されるニードルポート42を通じた、また下ベース層38の下方ボア40を通じた滑合による収容に適合しているのが好ましい。挿入後に、挿入ニードル14が引き抜かれると、検知部分18およびセンサ電極20とを備えるカニューレ16が選択挿入部位の所定位置に残る。遠隔測定法による特徴的モニタ送信器100は、センサセット10のコネクタ部分24のコネクタブロック28に電気結合されるコネクタ104を通してケーブル102によりセンサセット10に結合されるのが好ましい。
【0074】
図3に示された実施形態において、遠隔測定法による特徴的モニタ100は、プリント回路基板108を支持するハウジング106と、バッテリ110と、アンテナ112と、コネクタ104を備えるケーブル102とを含む。超音波溶接で密閉され防水性(耐水性)シールを形成し、水、クリーナ、アルコールなどによる浸漬(または塗布)による洗浄を可能にする上方ケース114および下方ケース116からハウジング106が形成されるのが好ましい。上方および下方ケース114、116は医療用プラスチックから形成されることができる。しかし、代替的に、上方ケース114と下方ケース116とが、スナップ嵌め、密閉リング、RTV(シリコンシーラント)など他の方法によって接続されて一緒に接合されるか、金属、複合体、セラミックなど他の材料から形成されてもよい。必要に応じて、離間したケースを除去することが可能であり、電子回路との適合性を有して妥当な防水性を持つエポキシまたは他の成形性材料にアセンブリを入れるだけでもよい。図示するように、下方ケース116は好適な感圧接着層118でコーティングされた下側面を有して、センサセットの遠隔測定法による特徴的モニタ送信器100が使用可能状態となるまで接着層118を覆って保護するために、剥離紙片120が通常設けられている。
【0075】
図3に示されたように、皮下的センサセット10が、使用者の状態を表す特定の血液パラメータを監視するのに使用されるタイプの可撓性薄膜電気化学的センサ12の正確な配置を容易にする。センサ12は体内の血中グルコースレベルを監視し、特許文献54〜57に記載されているような外部タイプまたは埋め込み可能タイプの自動または半自動薬剤注入ポンプとともに使用されて、糖尿病患者へのインシュリン投与を制御するとよい。
【0076】
図3に示されたように、センサ電極10は様々な検知用途で使用されてよく、様々な方法で構成されるとよい。例えば、いくつかのタイプの生体分子が触媒として使用される生理学的パラメータ検知用途でセンサ電極10が使用されるとよい。例えば、センサ電極20との反応に触媒作用を及ぼすグルコースオキシダーゼ酵素を有するグルコースおよび酸素センサにおいて、センサ電極10が使用されてもよい。センサ電極10は、生体分子または他のいくつかの触媒とともに、血管性または非血管性の環境で人体内に配置されてもよい。例えば、センサ電極20と生体分子とが血管に配置されて血流を受けてもよいし、あるいは人体の皮下または腹膜領域内に配置されてもよい。
【0077】
図3に示されたように、センサ信号200のモニタはセンサ電子機器装置200と呼ばれてもよい。モニタ200は、電源と、センサインタフェースと、処理電子機器(つまりプロセッサ)と、データフォーマット用電子機器と、を含むとよい。モニタ200は、接続部分24のコネクタブロック28に電気的に結合されるコネクタを通してケーブル102によりセンサセット10に結合されるとよい。代替的実施形態では、ケーブルが省略されてもよい。モニタ200はセンサセット10の接続部分104への直接接続のための適切なコネクタを含むとよい。センサセット10の上面など異なる位置に配置されたコネクタ部分104を有するようにセンサセット10を修正して、センサセットの上方でのモニタ200の配置を容易にしてもよい。
【0078】
D.本発明の実施形態および関連する特徴
本明細書に開示される本発明は(好ましくは埋め込み可能な)分析物センサおよびセンサシステムに焦点を当てるが、これら分析物センサおよびセンサシステムは、センサ初期化時間および/または(好ましくは生体内での)起動時間であって、例えば、センサが環境に設置される(つまり、適切に水和される)のにかかる時間であり、および/またはセンサが分析物濃度を検知しかつ/または有意義な情報の利用者への送信を開始する時間である、センサ初期化時間および/または起動時間を促進する要素および/または要素の構成を含むように設計されている。本明細書で説明されるように、センサ初期化および/または使用前の起動に要する時間量は比較的長い(例えば電流測定グルコースセンサでは、センサ起動初期化時間は2〜10時間の範囲である)ことは当技術分野では周知であり、これは、医療の投与においてこうしたセンサの使用を妨げる要因となっている。例えば、病院設定では、比較的長いセンサ初期化および/または起動期間が患者の健康に関する重要な情報(糖尿病患者の高血糖または低血糖など)の受理を遅らせることにより、このような情報の受理時に断定される治療(インスリン投与など)を遅らせる。
【0079】
加えて、病院設定での長いセンサ初期化および/または起動期間は病院スタッフによる反復的監視を必要とし、これは患者ケアコストを増加させる要因となっている。さらに、センサをセンサ電子機器から取り外して再接続する必要がある場合、例えば、センサ電子機器の互換性のないMRI処置の場合には、これらの長い初期化時間も問題となる可能性がある。これに関して、電子処理および/または遠隔測定は、一般的には電流測定センサとともに使用され、電流測定センサは、例えば、センサによって生成された電気信号をバッファリングし、送信のためにセンサ信号を処理し、リンクを介してバッファリングされた処理信号を監視ユニットなどへ通信するのに有用である。
【0080】
病院設定での初期化および/または生体内での起動時間を短くしたセンサと、長いセンサ初期化および/または起動時間を短縮する要素および/または要素構成を含むように設計されたセンサおよびセンサシステムが、非常に望ましい。例えばグルコースセンサでは、センサ初期化および/または起動時間の15〜30分の短縮が非常に望ましいが、それは、例えば、このような短い初期化時間によって(1)病院職員による患者の監視の必要性、つまり、このような医療機器のコストパフォーマンスに寄与する要因を削減することが可能であり、(2)患者の健康に関する重要な情報の受理の遅延を削減することができるからである。患者の体内に既にあるものの2時間未満などの短い時間の間センサ電子機器から切断されているセンサについてもさらに初期化時間を削減することがさらに望ましい。
【0081】
病院以外の設定(病気の管理にグルコースセンサを使用する糖尿病患者など)で分析物センサを使用する個人にとって、比較的長いセンサ初期化時間および/または起動時間は、使用者にとって不都合であるとともに使用者の健康に関する情報の受理の遅れのために、やはり問題である。多くの糖尿病患者は医療訓練を受けていないため、例えば、2時間の起動時間などは、患者の活動的な日常生活という点から不便となる可能性があり、このような管理に付随する煩雑さゆえに患者が血中グルコースレベルの最適な監視および調整を行わない可能性がある。これらの理由から、医療の訓練を受けていない糖尿病患者によって操作される状況においては、センサ初期化および/または起動時間を短縮できる要素および/または要素構成を含むように設計されたセンサおよびセンサシステムが非常に望ましく、それは、これらが、患者による自分の病気の簡便な管理、つまり慢性糖尿病に罹患している個人において観察される周知の罹患率および死亡率の問題を低下させることが分かっている行動を促進するためである。
【0082】
本明細書に開示される分析物センサおよびセンサシステムは一般的に、哺乳類の体内に埋め込み可能であるように設計されるが、本明細書開示される発明は特定の環境に限定されず、むしろ、例えば、間質液、全血、リンパ液、血漿、血清、唾液、尿、便、汗、粘液、涙、脳脊髄液、鼻水、子宮頸管または膣分泌物、精液、胸膜液、羊水、腹膜液、中耳液、関節液、胃吸引液、などの体液を含む大部分の体内および試験管内の液体試料の分析のための多様な状況で使用され得る。加えて、固体または乾燥試料は、分析に適した液体混合物を得るために適切な溶剤で分解されてよい。
【0083】
水和作用の欠如(遅鈍な起動初期化時間など)、流体停滞、患者の免疫応答等に起因して発生するセンサおよびセンサシステムの問題を克服するように設計された方法において分散型電極構成を使用することができる。例えば、このような分散型電極構成を備えたシステムは、特許文献58に示され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
分散型電極が存在する場合には、フレックス回路アセンブリ(つまり剛性材料ではなく可撓性材料を利用した回路アセンブリ)内に構築/配置されるのが好ましい。このようなフレックス回路アセンブリは、(例えば、パッド剛性および着用者の不快感を低減することによって)着用者の快適性とともにパラメータ測定性能を促進するように構成された要素(例えば、電極、電気導管、接点パッドなど)からなる相互接続アセンブリを提供し、特許文献59にさらに詳細に開示され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
一般的に、センサ内の電極は、長方形、すなわち、長辺および短辺を有している(長方形だが丸縁を有するものを含む)。電極構成は、分散型電極パターンの電極のうち少なくとも1個の長辺が、分散電極パターンの他の電極のうち少なくとも1個の電極の長辺と平行になるように(必要に応じて、分散型電極パターンのすべての電極の長辺と平行になるように)することができる。例示的センサが、特許文献59に示され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
開口部は、一般的に、センサの水和および/またはセンサの起動または初期化を促進するように、分析物を含む流体が、基準電極、作用電極、および対向電極と順番に接触するようにしてカバー層の上に配置される。開口部は、完全に開くことができ、すなわち、開口部は、センサ内の各電極と列になるまたはそれらの下になる開口端を有することにより電極を外部環境へと開く。最適化されたプロファイルが、特許文献59にさらに詳細に開示され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
水和欠如(つまりセンサ起動初期化時間の遅滞)および/または流体停滞に起因する埋め込み可能センサおよびセンサシステムに生じうる問題を克服するように設計された方法においてワイヤ電極を備えるセンサシステムが使用されてよく、該問題は、流体の流れを向上させるような、かつ気泡または流体の停滞プールがセンサ機能を損なう形で電極の上または付近に残存することを阻害するような方法で、埋め込まれた構成要素の屈曲および動きを強化することによって克服される。また、ワイヤ電極を備えたセンサは、水和作用の欠如、流体停滞、患者の免疫応答などに起因する問題をさらに克服するように、本明細書に開示された特定の補完的要素(例えば、分散型電極構成、フレックスセンサアセンブリ、複数の電極センサ、電圧パルス化法など)と組み合わせることができる。
【0088】
本明細書で説明されるように、センサは、センサ電子機器に直接接続されてもよく、センサ電子機器は、センサから受信された信号を監視する監視デバイスの一部であってもよいし、また監視デバイスと離間して(無線かまたはその他の直接接続を介して)接続されていてもよい。センサデバイスおよび/またはモニタの構造(センサデバイスと別であるか一緒であるか)に応じて、センサ電子機器およびモニタの一方または両方が、センサで感知された信号に基づいて計算を行い、信号を実際の分析物測定値に変換して受信されたデータの様々な特性を判断することができる。本明細書で説明されるように、多くの異なる特性を使用して、患者体内の実際の分析物のレベルのより正確な画像を得ることができる。これらの特性には、曲線の緩和時など異なる時間間隔における電流値、電流の変化、総電荷の変化、および/または計算済み緩和パラメータなどを含むことができる。
【0089】
本発明は、センサ機能の各態様を最適化する要素および/またはアーキテクチャの構成を有するセンサとセンサシステムとを含む。例えば、本発明は、複数のセンサセット、および/または複数の穿孔部材(例えば針)などのセンサシステム要素、および/または患者の生体内挿入部位で使用するための挿入装置上に構築されたカニューレなど複数かつ/または冗長な要素を含むように構築されることができる。例えば、センサセットは、参照により本明細書に組み込まれる特許文献60に開示されたように、二重穿孔部材を含むことができる。
【0090】
第1および第2の電気化学センサが、第1および第2の電気化学センサからの信号を受信することができるセンサ入力部に動作可能に結合されるのが好ましく、センサ入力部にはプロセッサが結合されており、プロセッサは、第1および第2の電気化学センサから受信した1つまたは複数の信号の特性を示すことができる。必要に応じて、パルス電圧を使用して電極から信号を取得する。プロセッサは、第1の作動電位に応答して作用電極から受信した第1の信号と、第2の作動電位に応答して作用電極から受信した第2の信号とを比較することができる。
【0091】
本発明が1個または2個の穿孔部材を含むことができる一方、必要に応じてこのようなセンサ装置は、ベース要素に結合されてそこから延伸し、3個または4個または5個またはそれ以上の電気化学センサに動作可能に結合されている3個または4個または5個またはそれ以上の穿孔部材を含むことができる(マイクロニードルアレイなどであって、その実施形態は、特許文献61〜63などに開示され、それらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)。また、本発明は、一般的に、複数の埋め込みセンサを配置して支持するベース要素を含んでよいが、本発明の代替的構成では、それらの複数のセンサはベース要素に結合されていない。
【0092】
上述のように、本発明は、感知プロセスの一部として電圧スイッチングを使用することができる。本発明は、干渉種および/または特定の分析物濃度の検出においてだけはなく、センサの水和および/または初期化を促進にするのにも電圧スイッチングを使用することができる。具体的には、初期化のための時間(「慣らし(“run−in“)」)は、センサごとに異なり、数時間もかかることがある。本発明は、高周波数初期化(電圧電位の切り替え)を含むセンサ初期化方式を含むことができる。例示的な一例では、トリプル初期化プロファイルが使用され、センサの電圧が、5、10、20、30または45秒、あるいは1、5、10または15分間かけて、0、280、535、635または1.070ミリボルトなどの第1電位と、0、280、535、635または1.070ミリボルトなどの第2電位との間で切り替えられる。ある特定の電圧スイッチングプロファイルは、さらに、分析物信号の検出において電圧パルス化を使用する。使用されるパルスの数は、一般的には、少なくとも2であり、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20またはそれ以上でもよい。パルスは、例えば、1、3、5、7、10、15、30、45、60、90または120秒間などの所定時間とすることができる。この例示的一例としては、6パルスが含まれ、1パルスが数秒間である。このような電圧スイッチングを使用することにより、使用者によるセンサの導入および起動を最適化する要因となるセンサ慣らしが、大きく加速される。これらの方法のいくつかは、当技術分野分野で公知の類似の方法で使用するように適合させることができる(特許文献64〜66を参照。これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0093】
パルス化された(例えば、短いバーストまたはパルスで生成または送信または変調された)電圧を使用して、センサの1つまたは複数の電極から信号を取得することができる。これに関連して、パルス化された電流などが用いられる。このようなパルス化を使用して、例えば、背景電流値を低減/補償することができる。パルス化により、センサは、より効率的により低いグルコース濃度を検出することが可能になり、グルコース切り替えに対して線形応答が存在するようになり、パルス化を使用して背景電流を低下させることおよび干渉物質の影響を減少させることの両方ができる。多様な異なるパルス電圧センサおよび/またはスイッチ電圧センサが考慮される。これに関して、センサシステムは、センサ電子機器内にあるかまたはセンサ電子機器から離間したプロセッサを含むことができ、このプロセッサは、例えば、電圧出力および/または作動電位および/またはパルスおよび/またはスイッチングなどの因子、および/またはこのような因子の時間を制御するソフトウェアアルゴリズムを含む。センサシステムは、例えば、放電回路素子用の電圧パルス化を容易にするように設計された様々なハードウェア機能を含むこともできる。特に、高周波スイッチングは、保持された電荷を各層が放電するように、放電回路素子を必要とすることがある(ここでは、各センサ層はコンデンサと類似である)。例示的な一例としては、2つの所定電位専用電極(例えば、280mvおよび535mv)を有するセンサがあり、このセンサは、それらの電極間のセンサスイッチとして両方の電極の読取値を取得するように設計されている。これに関して、広い電位範囲でセンサ読取値を取ることが当技術分野分野で知られている(特許文献64〜66、特許文献95を参照)。プロセッサを使用してパルス電圧を介してセンサ内の2つの作用電極の1つから得られる信号を観察し、第2の作用電極から得られる信号と比較することができ、ここでこの第2の作用電極はパルス電圧に晒されない。
【0094】
本明細書に開示された電圧パルス化および/またはスイッチングを利用するセンサシステムは、水和欠如(つまりセンサ起動初期化時間の遅滞)および/または流体停滞に起因する埋め込み可能センサおよびセンサシステムに生じうる問題を克服するように設計された方法において使用されるのが好ましく、該問題は、気泡または流体の停滞プールがセンサ機能を損なう形で電極の上または付近に形成されるおよび/または残存する可能性を阻害するような方法で、埋め込まれた構成要素の周囲を流体が流れる能力を向上させることによって克服される。また、電圧パルス化および/またはスイッチングは、水和作用の欠如、流体停滞、患者の免疫応答などに起因する問題をさらに克服するように、本明細書に開示された特定の補完的要素(例えば、分散型電極構成、複数の電極センサ、複数の埋め込み部位を有する複数のセンサ装置など)と組み合わせることができる。
【0095】
変動する電圧を用いてステップ電極電位の反復周期を適用させるのが好ましい。変動電圧の結果、連続グルコース感知モードになり、経時的グルコール監視の間により多くの情報が提供される。ステップ電圧方式などの変動電圧方式の使用には多くの利点がある。例えば、定電位アプローチに比べて、本来の自己相関が非常に大きくなる。
【0096】
ステップ電極電位を使用する場合、例えば、取得された信号緩和反応の各波形サイクルが複数の特徴的電極電流値(Isigs)を含む。これらの読取値は変化し、緩和時間はグルコース濃度と直接相関することになる。このようなサイクルの連続反復により、ロバストなグルコース連続監視システムがもたらされる。特徴的信号応答は、グルコースと相関させることによって、通常の条件下であらゆるグルコースの変化を通して、互いに相関する。したがって、この方法は、感知中に1つの特徴的電極電流読取値を返すだけの固定電位感知モードと比較して、より高いシステム信頼性を提供する。複数の電極電位に基づくシステム自己相関性の変化は、グルコース反応を妨害する可能性のある物質の存在を識別したり、干渉物質などを追跡したりするのに有用である。例えば、ステップ電極電位などの複数の電極電位を使用することができる。
【0097】
本明細書で説明されるように、検知データを使用して分析物読取値を判断する時間より前に、電圧スイッチングのような方法を使用してセンサを初期化することができる。このように、センサ継続時間より前に、初期化時間があってもよい。これに加えて、または代替的に、本明細書で説明されるように、センサ継続時間の前に水和期間があってもよい。
【0098】
場合によっては、センサをある期間センサ電子機器から切断し、その後再接続する必要がある。例えば、病院では、センサは特定の操作や処置の間に切断される必要があることがある。このような処置の1つに、プロセッサまたはセンサ電子機器と互換性がない、磁気共鳴イメージング(MRI)がある。このような場合には、センサは一定時間切断され、その後センサ電子機器に再接続される。残念ながら、従来技術の初期化プロセスは、2、3時間かかることがある。通常動作の間、センサは、通常、定常運転電位(例えば、0.535V)で電流測定検出モードで動作して、グルコース濃度に相当する定常ファラデー電流応答を提供する。短時間の間にセンサを切断して再接続する必要がある場合、センサは、非ファラデー性で実際のグルコース値に正確に対応していない過渡電流応答を受ける。典型的な応答曲線が図9Aに示され、これはある期間にわたるnAでの電流応答(iSig)を示している。埋め込みセンサでは、この過渡応答は、再接続後の起動遅延を引き起こし得る。センサが安定するまでに過渡電流応答が数分から数時間続く可能性がある。また、この過渡電流の時間の長さは、センサが切断されていた時間の長さに依存する。
【0099】
センサの再接続時に起動遅延を最小限にするために、本発明は、ソフト初期化方法を使用することができる。このソフト初期化方法では、電圧ステップまたは他の変量が順に適用されそれにより定常電流に達するまでの時間が最小になる。ソフト初期化後の典型的な応答曲線を図9Bに示す。図示されたように、また本明細書でさらに説明するように、正常化のための応答時間は、ソフト初期化方法がない場合よりもはるかに小さくなる。
【0100】
センサ電子機器プロセッサのセンサとの切断および再接続を検出するために、ある方法が提供されるのが好ましい。センサ電子機器プロセッサへの電流出力は、測定されるのが好ましい。電流出力が切断閾値未満である場合には、切断イベントが判断される。閾値は、例えば、0.6nAであってよい。切断イベントの後、センサ電子機器への電流出力レベルを測定し続ける。再接続閾値を超えて上昇した場合、再接続イベントが判断される。閾値は、切断レベルと同じであってもよいし、例えば、0.4nAのように小さくてもよい。本発明の実施形態では、閾切断レベルは、約1.0μAまでの任意のレベルであってよい。
【0101】
切断および再接続のイベントが測定された場合、切断時間も測定されてもよい。この切断時間がある特定の範囲内にある場合は、本発明のシステムは、初期化のタイプを選択することができる。例えば、2つまたは3つの切断時間範囲があってもよい。4つ目、5つ目、あるいはそれ以上の初期化タイプが所望される場合には、より多くの切断時間範囲を設けることもできる。
【0102】
典型的には、本発明は、切断時間を決定することによってセンサ(通常、グルコースセンサなどの分析物センサ)を初期化する方法を含み、ここで、切断時間とはセンサがセンサ電子機器から切断された時間である。その後、切断時間に基づいて初期化プロトコルを選択することができる。切断時間は、それが選択された時間範囲内に入るかどうかを判断することによって特徴付けることができる。時間範囲は、センサがセンサ電子機器から切断された特定の時点を超えたおよび/または未満の時間を含むことができ、例えば、センサは、少なくとも5、10、15、30、60、90または120分間(つまり、5分から無限までの時間範囲など)センサ電子機器から切断されたか、またはセンサは、5、10、15、30、60、90または120分間未満(つまり、0〜5分の時間範囲など)センサ電子機器から切断されていた。時間範囲は、センサがセンサ電子機器から切断された時間窓を含むことができ、例えば、センサがセンサ電子機器から切断された時間は、1〜5分間、1〜10分間、5〜10分間、5〜15分間、10〜30分間、10〜60分間、10〜90分間、または10〜90分間などである。
【0103】
一般的には、初期化プロトコルは、第1の電圧パルス列を含む第1初期化方式および第2の電圧パルス列を含む第2初期化方式からなるグループから選択され、切断時間が第1の時間範囲内にある場合に第1初期化方式が選択され、切断時間が第2の時間範囲内にある場合に第2初期化方式が選択される。選択されると、本発明の方法は、選択された初期化プロトコルをセンサに適用するステップを含むことができることが好ましい。該グループが、センサに電圧を印加しない第3初期化方式をさらに含み、切断時間が第1の時間範囲および第2の時間範囲よりも小さい場合に、第3初期化方式が選択される。あるいは、切断時間が第3の時間範囲内にある場合に、第3初期化方式が選択されてもよい。希望に応じて、追加の初期化方式および時間範囲があってもよい。第1初期化方式はハード初期化方式であり、第2初期化方式はソフト初期化方式であり、第3初期化方式が無電圧初期化方式であるのが好ましく、これら3つすべてが本明細書で説明される。
【0104】
上述のように、3つの切断時間範囲および3つの初期化タイプが存在することが可能である。これら3タイプの初期化は、2時間など一定時間以上にわたって切断されたセンサのためのハード初期化方式と、第1の時間よりも短いが10分などの短時間よりも長い時間切断されたセンサのためのソフト初期化方式と、上記短い時間よりも短い時間切断されたセンサのための無電圧初期化方式とを含んでよい。これにより、完全なハードの初期化を必要とするほど十分に長時間切断されたセンサと、中間的なソフト初期化を用いて初期化されうるセンサと、とても短い時間切断されたために初期化がほとんど不要なセンサとが認められる。実際には、ハード初期化方式および無電圧開始方式だけがあるか、またはハードとソフトだけ、またはソフトと無電圧初期化だけの可能性もある。
【0105】
3つの切断時間範囲およびそれぞれ3つの初期化タイプがあるのが好ましい。図4に示すように、センサがステップ401でセンサ電子機器に接続されたとき、システムは、センサが新しいセンサかまたは再接続センサであるかをステップ405で判断する。センサが新しいセンサの場合、システムは、ステップ430および図5で初期化方式1に進む。センサが新しいセンサでない場合、システムは、センサ切断時間が例えば10分未満などのある特定の範囲内にあるかどうかをステップ410で判断する。センサの切断時間がその範囲内である場合、次にステップ415および図7において初期化方式3が選択される。センサの切断時間がその範囲内でない場合、次にセンサ切断時間が10〜120分間などの第2の切断範囲内であるかどうかがステップ420で判断される。センサの切断時間がその範囲内である場合、次にステップ425および図6において初期化方式2が選択される。センサの切断時間がその範囲内でない場合、センサ切断時間は120分超などの残りの時間範囲ということになり、ステップ430および図5において初期化方式1が初期化される。
【0106】
具体的な選択プロセスは図4に示されているが、その具体的プロセスは、異なっていてもよい。例えば、切断時間は、ルックアップテーブルと比較することができるか、または異なる順序のステップとすることもできるが、プログラマは、切断時間範囲に基づいて3つの初期化方式のいずれかが選択されるように該プロセスを準備するのに適したものを確かめる。
【0107】
ハード初期化方式の実例(初期化方式1)が、図5に示されている。ハード初期化は、新しいセンサのために使用されるか、またはセンサが一定時間よりも長くセンサ電子機器から切断されたときに使用されるのが好ましい。最初に、センサの水和がステップ501で実行されてよい。水和技術は、従来技術であってもよいし、または本明細書に記載の他の技術であってもよい。水和後、ハード電圧初期化を実行する場合には、ステップ505で実行される。本明細書に記載のように、ハード電圧初期化は、電圧のスイッチング、パルス化、またはステッピングを用いて行われてよい。ハード電圧初期化の例が、図10に示されている。水和の最大5分後以降、電圧スイッチング方式が20分の印まで採用される。したがって、図10に図示された実施形態では、5分間の水和が行われた場合、1.07Vで2分間、−0.55Vで1分間で切り替えて15分のハード初期化電圧スイッチングが行われる。図中の特定の実施形態は例示であり、異なる電圧および時間を使用することもできる。例えば、追加の電圧は、正または負で、0、280、535、585、635、1.070mVであってもよい。
【0108】
ステップ505におけるハード初期化の後、ステップ510で安定化が実行される。安定化は、例えば、535mVの作動電圧を16分間などの一定時間印加することにより行うことができる。ステップ515において、システムは、センサが安定しているか否かを判断する。グルコースセンサ信号の安定性の指標は、当技術分野分野で周知であり、例えば、特許文献94に記載されている。センサの安定性は、例えば、センサが不変グルコース濃度の存在下で一定の電流分布を示すかどうかを判断することによって判断することができる。センサの安定性は、例えば、センサが不変グルコース濃度の存在下で最大の不変信号の90%に到達したかどうかを判断することによって、判断することができる。センサの安定性は、例えば、センサが不変グルコース濃度の存在下で限界電流を示すかどうかを判断することによって、判断することができる。
【0109】
センサが安定していない(つまり、不変グルコース濃度の存在下で一定の電流分布を示さない)場合、最大安定化時間または最大追加安定化時間(例えば、センサの安定化のために事前選択された時間であって、例えば、15、30、45、60、90、120、180分またはそれ以上の時間)に達するまで、システムが追加の安定化を行う。図5に示す例では、システムが、例えば、30分の最大安定化時間より短い時間で安定化がなされたか否かをステップ515において判断する。なされていない場合には、追加的な安定化が、ステップ510で実行される。追加的安定化は、元の安定化時間と同じ時間かまたは異なる時間とすることができる。例えば、より短い二次安定化時間であることが有用なこともありうるが、それは、センサがすでに一定期間安定化されており、短時間の安定化が必要なだけかもしれないからである。また、システムは、一連の1分または5分のような短い安定化時間とその後の安定化チェックを有するように設定することもできる。ループ型の安定化プロセスではなく、安定化が達成されるまで複数の安定化チェックを伴う継続的安定化を行うようにして、安定化期間の間安定化チェックを継続していくことが可能である。最大時間後もセンサが安定化しない場合は、センサは使用不可能となり、取り外し、交換される必要がある。これは、図5においてステップ525として示される。図5に示されるように、センサが安定している場合には、センサはステップ530で較正される。参照により本明細書に組み込まれる1999年6月17日に出願された米国特許出願第09/334,996号「Characteristic Monitor With A Characteristic Meter and Method of Using the Same」(特許文献67)に記載されているように、また、参照により本明細書に組み込まれる2007年10月31日に出願された米国特許出願第11/931,866号「Modified Sensor Calibration Algorithm」(特許文献68)に記載されているように、あるいは、他の較正方法に記載されているようにして、血糖計を用いて較正を実行することができる。従来の較正方法では、血糖計によって取得されたリアルタイムグルコース値を使用し、これは、従来のフィンガープリック法(およびそこから採取した血液の分析)を用いて、またその真値を用いて、体内にあるセンサおよび関連するセンサ電子機器によって取得された値を較正するために行われる。これらの方法または他の較正方法を、本発明では使用することができる。
【0110】
較正後、ステップ535で感知を開始することができる。効率的ではないかもしれないが、センサが安定しているか否かを安定化期間の終了時にチェックしない安定化期間があってもよい。
【0111】
ソフト電圧初期化方式の実例である初期化方式2が、図6に示されている。ソフト初期化は、センサ電子機器に以前接続されたことがあり、現在再接続されているセンサのために使用される。図4に示すように、ソフト初期化は、2時間などの所定時間より長く切断されていたセンサには使用されないのが理想的である。しかし、ソフト初期化時間は、最大切断時間を除いて、再接続されている切断された任意のセンサにとって有用であってもよい。最大切断時間の有無にかかわらず、ソフト初期化を使用するために10分などの最小切断時間があってもよい。
【0112】
図6に示す実施形態では、初期化方式2を選択すると、ソフト電圧初期化がステップ601で適用される。センサは使用者の体内にとどまっているはずなので、通常、ソフト電圧初期化の前に水和プロセスを含める必要はない。しかし、何らかの理由で使用者が体から交換可能なセンサを取り外し、その後再接続の前に交換する場合には、必要に応じて、水和プロセスを含むことができる。ソフト初期化手順は、プロセッサを使用したセンサへの一連の電位ステップを含んでよい。電位ステップ数は、2〜20ステップであってよい。より多くの電圧スイッチングタイプまたはパルス化タイプの初期化を有することも可能である。20以上のステップがあってもよいし、またはシーケンスとして繰り返す数個のステップがあってもよい(例えば、V1、V2、V3、V1、V2、V3などであって、V1、V2、V3はそれぞれステップ電圧(stepped voltages)である)。段階からなるシーケンスは、約1〜約10分間続くことがある。必要に応じて、例えば8分など、より長い時間またはより短い時間とすることが可能である。ソフト電圧初期化の一例が図8Aに示されている。図から分かるように、0.535Vの電位が2分間印加されている。次に、1.07Vの電位が2分間印加され、その後0.535Vの作動電位を印加することができる。ソフト電圧初期化の別の例が図8Bに示されている。8つの連続する電位ステップを使用して、1.07Vの初期電位から0.535Vの作動電位に徐々にステップダウンする。
【0113】
図9Aおよび図9Bは、本発明の一実施形態に係るソフト初期化がある場合とない場合との応答時間の差を示している。図9Aは、ソフト初期化が全くない状態で2時間の切断後にセンサがプロセッサとセンサ電子機器とに再接続されたときの、センサの信号応答(iSig)を示している。起動時間(つまり、期待される応答の90%に到達するまでの時間)は、60分以上である。図9Bは、センサが、2時間の切断後に図8Aに示されたソフト初期化を使用してプロセッサに再接続されたときの信号応答を示している。図9Bの場合、起動時間は30分未満であり、単純なソフト初期化方法を使用しても時間を大幅に短縮することができることを示している。
【0114】
本明細書に記載の、または、特許文献64〜66に記載された方法を含む、他のセンサ用ハード電圧初期化方法を使用してもよく、これらの記載の内容は、参照により組み込まれる。
【0115】
ソフト初期化の実例が、図11に示されている。図11に示された実施形態では、センサは、10〜120分間切断される。再接続されると、ソフト初期化が、0.535Vの電位で2分間、次に1.07Vで2分間で開始する。システムは、次に、0.535Vの動作電圧を開始する。図中の特定の実施形態は例示であり、異なる電圧および時間を使用することもできる。いくつかの追加例が図14〜17に示されている。図14は、0.535Vの電位ステップで2分間、−0.55の電位ステップで1分間、1.07Vの電位ステップで2分間を示し、その後、例えば、0.535Vの作動電位が続く。図15は、0.535Vで1分間、1.07Vで1分間、0.535Vで1分間、0.85Vで1分間、0.535Vで1分間、0.65Vで1分間、その後、例えば、0.535Vの作動電位が続くステップ電位シーケンスを示している。図16は、電圧を1.07Vから0.535Vの作動電位まで徐々にステップダウンさせる8つの連続する電位ステップを示している。図17は、0.535Vの電位ステップで2分間、次に1.07Vで2分間、その後0.535Vの作動電位が続くことを示す。
【0116】
図18、19は、ある特定のソフト初期化方式についての回復時間のボックスプロットを示し、それらの図では回復時間はセンサが限界電流の90%に到達するまでの時間として定義される。図18において、各方式は、10ステップのランプダウン(rampdown)で2分(1801)、0.535Vで2分および1.07Vで2分(1802)、1.07Vで2分(1803)、1.07Vで30秒(1804)、10ステップのランプダウンで4分(1805)、0.535Vで5分および1.07Vで2分(1806)、1.07Vで60秒(1807)、0.535Vで4分および−0.55Vで1分および1.07Vで2分(1808)、ステップダウン方式(1809)である。図19において、ボックスプロットは、使用されるソフト初期化シーケンスにかかわらず、ソフト初期化の時間に基づくセンサの回復時間を示す。
【0117】
図6を用いて続けると、ソフト電圧初期化がステップ601で適用された後、ステップ605で安定化が実行される。安定化は、例えば、10、16、20、または26分間などの一定時間の間、535mVなどの作動電圧を印加することにより実行することができる。ステップ610において、システムはセンサが安定しているかどうかを判断することができる。センサが安定していない場合、システムは、最大安定化時間または最大追加安定化時間に到達するまで、追加の安定化を行う。図6に示す例では、システムが、例えば、30分の最大安定化時間より短い時間で安定化がなされたか否かをステップ615で判断することができる。なされていない場合には、追加的な安定化がステップ605で実行される。初期化方式1と同様に、追加的安定化は、元の安定化時間と同じ時間かまたは異なる時間とすることができる。システムは、1分または5分のような連続する短い安定化時間を有するように設定することができ、その後安定化チェックが続く。システムは、一連の1分または5分のような短い安定化時間とその後の安定化チェックを有するように設定することもできる。ループ型の安定化プロセスではなく、安定化が達成されるまで複数の安定化チェックを伴う継続的安定化を行うようにして、安定化期間の間安定化チェックを継続していくことが可能である。最大時間後もセンサが安定化しない場合は、センサは使用不可能となり、取り外し、交換される必要がある。これは、図6においてステップ620として示される。図6に示されるように、センサが安定している場合には、センサはステップ625で較正される。較正は、上述のように血糖計を用いてあるいは他の較正方法によって、実行されてよい。較正後、ステップ625で感知を開始することができる。
【0118】
第3の方式である初期化方式3が、図7に示されている。短時間の間切断されたセンサが新しい初期化を受けないように所望される可能性もあり、それは、この限定的切断時間が、センサにとって何らかの初期化を必要とするには不十分であるためである。初期化方式3のグラフ例を図12に示されている。図12では、センサは10分未満の間切断されていたため、システムは作動電圧での感知に移行する前に、10分間の安定化期間に0.535Vの作動電圧を印加するだけである。この安定時間は、どのくらいの長さの安定期間が所望されるかによって、多くすることも少なくすることも可能である。初期化方式1および2と同様に、安定化チェックがあってもよい。図7に示すように、適切な切断時間の範囲内に入ったセンサは、ステップ701で安定化される。安定化は、例えば、10分間などの一定時間の間、535mVなどの作動電圧を印加することにより行うことができる。16分、20分、または26分などの他の時間範囲を使用することもできる。ステップ705で、システムは、センサが安定しているか否かを判断する。センサが安定していない場合、システムは、最大安定化時間または最大追加安定化時間に到達するまで、追加の安定化を行う。図7に示す例では、システムが、例えば、30分の最大安定化時間より短い時間で安定化がなされたか否かをステップ710において判断する。なされていない場合には、追加的な安定化が、ステップ701で実行される。追加安定化は、元の安定化時間と同じ時間かまたは異なる時間とすることができる。他の初期化方式と同様に、システムは、一連の1分または5分のような短い安定化時間とその後の安定化チェックを有するように設定することもできる。ループ型の安定化プロセスではなく、安定化が達成されるまで複数の安定化チェックを伴う継続的安定化を行うようにして、安定化期間の間安定化チェックを継続していくことが可能である。最大時間後もセンサが安定化しない場合は、センサは使用不可能となり、取り外し、交換される必要がある。これは、図7においてステップ715として示される。必要に応じて再較正することはもちろん可能だが、通常、この初期化方式に該当するセンサに必要には全く較正が必要ない。したがって、ステップ720で検知が開始される。
【0119】
各方法はさらに、例えば、選択された初期化電圧を印加した後、センサに安定化電圧(センサの安定性を高めるように設計された電圧)を第1の安定時間の間印加することをさらに含むことができる。本方法は、第1の安定化電圧を印加した後にセンサが安定しているかどうかを判断すること、また、センサが安定していない場合には、センサに第2の安定化電圧を第2の安定化時間の間印加することをさらに含んでもよい。安定化時間の例には、10、16、20、26、または30分などの40分より短い時間が含まれる。第2の安定化時間は、第1の安定化時間と同じ時間かまたは異なる時間とすることができる。
【0120】
本発明は、センサの水和を検出および/または促進する改良方法を含むことができる。水和(埋め込まれたセンサの水和のレベルまたは程度)を検出するために、電圧パルスが、センサ挿入の直後かつセンサ初期化前にセンサプロセッサを用いてセンサに印加されるのが好ましい。この電圧パルスに対する応答(iSig)は、水和の検出のために使用されることになる。水和を検出するための1つの事前初期化電圧パルス方式としては、2つの交流電圧、例えば、0.0Vと0.2Vからなるセットである。他の電位電圧、例えば、0.0Vと、0.1Vおよび0.535Vの間にある第2の電圧との間の交流電圧を使用することができる。センサ応答(iSig)は、1秒毎などの高速サンプリングレートで記録される。電圧パルスに対する応答が100nAなどのある特定の水和閾値を超える場合にセンサが水和したとみなされる。センサが水和したとみなされると、センサは初期化を受ける。閾値が、例えば5分または最大約20分などの一定時間後に満たされない場合、センサは準備ができていないとみなされ、初期化を受けない。その代わりに、閾値が満たされるまで、元のパルスと同一でもよいより多くの類似パルスが印加される。最大水和時間が存在してもよく、この時間の後になると、センサは非機能状態とみなされることになり、取り外されて新たなセンサと交換される必要がある。図13は、上に示した実施形態に係る水和検出時のセンサ応答を示すグラフ例である。
【0121】
本発明は、選択された開始プロトコルを適用する前にセンサの水和を検出するステップを含むことができ、ここで水和の検出は、一連の水和パルス(センサ水和を検出するかまたは促進するために選択された電圧)を第1の水和時間の間センサに印加するステップと、一連の水和パルスの印加中にセンサの電流応答を記録するステップと、電流応答を所定の水和閾値と比較するステップとを含む。電流応答が所定の水和閾値に到達したかまたはそれを超えた場合、一連の水和パルスの印加を終了してよい。電流応答が第1の所定の水和時間の間に所定の水和閾値に到達していない場合、水和を検出するステップは、第2の一連の水和パルスを第2の水和時間の間センサに印加するステップをさらに含んでよい。所定の水和閾値は、例えば、100nAまたは50nAでよい。水和パルスの例としては、例えば、20秒または2分毎に0Vと2Vからなる一連のパルスでよい。
【0122】
上述の水和検出は、同一または異なるセンサ用に、他の方法と組み合わせて使用することができきる。例えば、複数のセンサが使用されているいくつかの方法では、上述の水和検出を1つのセンサに対して使用し、異なる水和検出を他のセンサに対して使用することができる。各センサは、ほぼ同時に水和するはずなので、このことは、それらの水和の検出方法が、すべて適切に相関していることを確認するためのチェックとして機能するであろう。
【0123】
水和を判断するための別の方法の一例では、センサが分析物検出のために十分に水和されているかどうかを検出するプロセッサを使用するステップが含まれ、プロセッサは、このプロセッサに埋め込まれた少なくとも1つのコンピュータプログラムを含むコンピュータ使用可能媒体を備え、コンピュータプログラムは、インピーダンス値を計算してインピーダンス値を閾値と比較してセンサが分析物検出のために十分に水和しているかを判断することができる。これと関連する方法では、センサが分析物検出のために十分に水和されているかを判断するステップが、少なくとも2つのセンサの電極の間の開回路電位の値を計算し、開回路電位値を閾値と比較してセンサが分析物検出のために十分に水和されているかを判断するステップを含む。一般的には、開回路電位値は、インピーダンス値である(また必要に応じて、この値は分極抵抗と溶液抵抗との和の近似値となる)。必要に応じて、センサが分析物検出のために十分に水和されているかを判断するために、開回路電位値は、別の閾値と比較される。これにより、使用者が完全に水和されていないセンサを初期化しようとするときに発生する問題(センサの精度および/または寿命の犠牲など)を解決することができる。
【0124】
本発明は、参照により本明細書に組み込まれる特許文献59に開示されているように、装置内の電流の流れを遮断するように(すなわち、センサを無効化するように)、所定の期間またはイベントの後にトリガすることができるヒューズ素子を含んでいてもよい。
【0125】
本発明は、第1の作動電位に応じて作用電極から受信した第1の信号を第2作動電位に応じて作用電極から受信した第2の信号と比較することが可能なプロセッサを含んでいてもよく、ここで第1および第2の作業電位での第1の信号と第2の信号との比較を使用して、妨害化合物によって生成された信号を識別することができる。これらの方法は、特許文献59にさらに記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
センサは高電位から低電位の間を(例えば、3秒、2秒、または1秒未満の頻度で)切り替えてよい。このような場合、センサは、コンデンサの一種として機能するセンサ素子などがあるために放電することができない。この場合、本発明は(例えば、放電が535ミリボルトなどの具体的な電位に達するのに十分でない場合)センサ回路の放電を容易にする回路放電素子を含むことができる。当技術分野で周知であるこのような多様な回路放電素子を適合させて本発明のセンサの実施形態と共に使用することができる(特許文献69〜76参照)。必要に応じて、放電スイッチ素子および任意で放電用抵抗素子を介してセンサの電荷を接続することによりセンサ電荷を除去することができる。
【0127】
本発明のセンサは、当技術分野分野で周知の多種多様な医療システムに組み込むこともできる。本発明のセンサは、使用者の体内に注入される薬剤の速度を制御するように設計された閉ループ注入システムなどで使用することができる。このような閉ループ注入システムは、センサと、コントローラへの入力を生成し、ひいては送達システム(例えば、薬物注入ポンプによって送達される量を計算するシステム)を操作する関連計器とを含むことができる。このような状況では、センサに付随する計器も送達システムにコマンドを送信することができ、送達システムの遠隔制御に使用することができる。一般的に、センサは、間質液に接触する皮下センサであり、使用者の身体中のグルコース濃度を監視し、また、送達システムによって使用者の身体への注入される液はインスリンを含む。例示的システムが、特許文献77〜82などに開示され、その内容のすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
多くの記事、米国特許、および特許出願が、本明細書に開示された共通の方法と材料と共に最新技術の状況について記述し、本明細書に開示されたセンサ設計で使用することができる様々な要素(およびそれらの製造方法)についてさらに記述している。これらは、特許文献83〜88、51、52、16〜20、25、27〜35、37などを含み、これらの各々の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
糖尿病患者のグルコース濃度を監視するための典型的なセンサが、非特許文献6〜8で説明されている。他のセンサは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる非特許文献9で説明されている。
【0130】
様々な出版物の引用が、明細書を通して参照される。また、関連技術からの特定の記載は本明細書において再現され、発明の様々な実施形態を明確に描写する。本明細書における全ての引用の開示は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0131】
切断タイマおよび初期化プロトコルの選択器など、開示された本装置の様々な構成要素は、適切にプログラムされたコンピュータに常在するハードウェアまたはソフトウェアで実現されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図20
図9A
図9B
図18
図19