(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6088103
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】シャワー浴介助装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20170220BHJP
A47K 3/28 20060101ALI20170220BHJP
E03C 1/06 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
A61H33/00 310P
A47K3/22
E03C1/06
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-148438(P2016-148438)
(22)【出願日】2016年7月28日
【審査請求日】2016年8月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516016517
【氏名又は名称】株式会社REVO
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(74)【代理人】
【識別番号】100115451
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】久万 重仁
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−289280(JP,A)
【文献】
特開昭60−111621(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3133235(JP,U)
【文献】
特開2003−265575(JP,A)
【文献】
特開平4−332556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
A47K 3/28
E03C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風呂椅子に隣接して配置される、前記風呂椅子に対応する高さのシャワー浴介護装置であって、
気体を封入可能な密閉室又は発泡材からなる本体と、
前記本体に取り付けられていてシャワーヘッドが係止されるいくつかのシャワーフック部と、
前記本体の底部に位置していて前記シャワーヘッドに対応する重さの錘部と、
を備えるシャワー浴介護装置。
【請求項2】
前記シャワーフック部は、前記本体の側面又は上面に設けられている、請求項1記載のシャワー浴介護装置。
【請求項3】
前記錘部は、そこに注入された水又は湯である、請求項1記載のシャワー浴介護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー浴介助装置に関し、例えば、空気を入れることによって膨らませた起き上がりこぼしのようなシャワー浴介助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被介護者が入浴やシャワー浴を行う場合に、安全な移動、寒さの予防、他人の視線に晒されないようプライバシーの尊重、爽快感の維持、身体の保護などがより十分に図られる入浴介護用クロークが開示されている。具体的には、この入浴介護用クロークは、フード付でクローク形をして防水加工の施された外側部分に対して、内側部分は略相似状を有し、重ねて使用でき、交換可能であり、着脱可能なフード付で、吸湿性がよい。外側部分には、移動のための取手が複数取り付けられる。被介護者は、外側部分と内側部分を重ねて着用することで、顔の周りは開放され、後頭部から身体幹部から下半身の膝下までを覆われる。
【0003】
【特許文献1】特開2014−42762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている入浴介護用クロークは、寝たきり被介護者などを対象としている。したがって、寝たきりでない被介護者への利用は不向きである。具体的には、例えば、風呂椅子を利用してシャワー浴をする場合には、フード付でクローク形をしている入浴介護用クロークでは、体を洗う場合に寧ろ邪魔になることがあろう。
【0005】
そこで、本発明は、寝たきりでない被介護者にも好適なシャワー浴介護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、
風呂椅子に隣接して配置される、前記風呂椅子に対応する高さのシャワー浴介護装置であって、
柔性を有する本体と、
前記本体に接続される幾つかのシャワーフック部と、
前記本体の底部に位置していて前記シャワーフック部に係止されるシャワーヘッドに対応する重さの錘部と、
を備える。
【0007】
本発明によれば、風呂椅子に座った被介護者に対して、シャワーフック部に係止したシャワーヘッドから、シャワー浴を提供することができる。また、風呂椅子に座っている被介助者が本体に接触することで、ケガをするといった事態も生じないという利点がある。
【0008】
前記本体は、気体を封入可能な密閉室又は発泡材とすることができる。そうすると、前者の場合には、シャワー浴介護装置の使用時にのみ密閉室に空気などの気体を入れればよいので、運搬時の操作性及び保管時の省スペース性の点で利点がある。後者の場合にも、発泡材は相対的に軽量であるので、運搬時の操作性について利点がある。
【0009】
前記本体は、例えば、樹脂製とすることができる。こうすると、浴室で用いた場合にも、水又は湯に強いという利点がある。
【0010】
前記シャワーフック部は、前記本体の側面或いは上面、又は、これらの双方に設けることができる。シャワーフック部の数は、一つでもいいし、複数でもよい。シャワーフック部を複数設けると、被介護者の座高の高さに合わせて、シャワーヘッドの係止先を選択することができるし、例えば肩のあたりから湯をかけたい場合、腰のあたりから湯をかけたい場合での使い分けもできる。
【0011】
前記錘部は、そこに例えば浴室などで得られる水又は湯を注入することで実現することもできる。係る場合には、シャワー浴介護装置の未使用時の軽量化が図れるので、シャワー浴介護装置の運搬時、保管時の点で、更に利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1の模式的なシャワー浴介護装置の構成図である。
【
図2】本発明の実施形態2の模式的なシャワー浴介護装置の構成図である。
【
図3】本発明の実施形態3の模式的なシャワー浴介護装置の構成図である。
【符号の説明】
【0013】
100 シャワー浴介護装置
110 本体
120 シャワーフック部
130 錘部
140 栓部
150 開閉部
160 仕切部
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1の模式的なシャワー浴介護装置の構成図である。
図1には、以下説明する、シャワー浴介護装置100と、本体110と、シャワーフック部120と、錘部130と、栓部140と、開閉部150と、仕切部160と、を示している。
【0016】
シャワー浴介護装置100は、図示しない風呂椅子に隣接して配置される、風呂椅子に対応する高さで、全体的に、樹脂製の装置とすることができる。ここで、介護用の風呂椅子の座面までの高さは、概ね、35cm〜55cmであり、日本人の座高の中間値又は平均値は、男性で約80cm〜約100cm、女性で約75cm〜約95cmである。このため、シャワー浴介護装置100は、全体として、例えば、80cm〜155cmの高さとしている。
【0017】
なお、シャワー浴介護装置100は、上記の値よりも座高が高い又は低い人が用いる場合も考えられるので、上記の寸法は、単なる例示であると理解されたい。また、シャワー浴介護装置100の直径は、これに限定されるものではないが、約25cm〜35cmとしている。もっとも、シャワー浴介護装置100の概形は、略円筒状としているが、必ずしも略円筒状でなくてもよく、例えば、三角筒状、四角筒状などとしてもよい。
【0018】
本体110は、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォームなどの発泡材とすることができる。この場合、本体110には、装飾などを施してもよい。或いは、本体は、塩化ビニール樹脂製、ポリプロピレン製など、柔性のある樹脂製で、空気などの気体を封入可能な密閉室とすることもできる。以下、本実施形態では、本体110の例として、密閉室の場合を例に説明し、以下、符号110は密閉室にも付すこととする。
【0019】
ここでいう気体とは、密閉室110との間で反応しないものであれば、空気に限られるものではない。密閉室110は、シャワー浴介護装置100を浴室で用いることから、水及び湯に強い素材とすべきである。また、介護者又は被介護者が接触することによってけがをすることがないように、硬性がほとんど生じない素材とすべきである。
【0020】
シャワーフック部120は、密閉室110に取り付けられていて、図示しないシャワーヘッドが係止される部位である。ここでは、シャワーフック部120は、密閉室110に対して2つ接続されている例を示しているが、1つであっても、3つ以上であってもよい。なお、本明細書においては、シャワーフック部120が密閉室110と一体型とされている場合にも、密閉室110に取り付けられているものとする。
【0021】
また、密閉室110に対するシャワーフック部120の取付位置も、
図1に示すような位置に限定されるものではない。シャワーフック部120を複数設けると、被介護者の座高の高さに合わせて、シャワーヘッドの係止先を選択することができるし、例えば肩のあたりから湯をかけたい場合と、腰のあたりから湯をかけたい場合とで使い分けもできる。
【0022】
さらに、シャワーフック部120を複数設ける場合に、密閉室110の同一高さの位置を取付位置としてもよい。典型的には、2つのシャワーフック部120を同一高さに取り付けて、被介護者の両肩に向けて、シャワーからの湯をかけることができる。
【0023】
また、シャワーフック部120は、シャワーヘッドを受ける部分の角度が、それぞれ異なっていてもよいし、同一であってもよい。また、シャワーヘッドを受ける部分が、上下方向に、又は、ユニバーサルに可動としてもよい。さらに、シャワーフック部120は、密閉室110に例えば上下方向に延びる図示しないレールを設けて、当該レール上で可動としてもよい。こうすると、シャワーからの湯を被介護者の体格などに応じてカスタマイズすることができる。
【0024】
錘部130は、密閉室110の底部に位置していて、シャワーフック部120に係止されるシャワーヘッドに対応する重さをしている。これは、シャワーフック部120にシャワーヘッドを係止しても、シャワー浴介護装置100が倒れない構成とする意図である。
【0025】
具体的には、錘部130は、例えば、5kg〜15kg程度の重さをしていればよい。なお、
図1における、錘部130の高さと密閉室110の高さとの比率は、単なる例示であり、これとは異なる比率とすることもできる。
【0026】
なお、錘部130は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどのように、多少の剛性を有する素材からなるタンクとすることもできる。こうすると、典型的には、浴室などで得られる水又は湯を注入することで、錘部130を実現することもできる。なお、錘部130であるタンクに注入するものは、浴室以外で得られる水等としてもよいし、例えば、ゲル状のなんらかの物質などとすることもできる。
【0027】
栓部140は、密閉室110に設けられており、密閉室110に封入された空気が漏れないようにする部位である。栓部140は、特に限定されるものではなく、浮き輪などにも利用されている弁付きタイプのものとするとよい。
【0028】
係る場合には、栓部140を通じて密閉室110に空気を封入することが考えられる。密閉室110に対する栓部140の位置は、
図1に示すものに限定されず、これよりも上下いずれの位置としてもよい。
【0029】
本実施形態のシャワー浴介護装置は、密閉部110に空気等を入れて膨らませて状態で、被介護者が座る介護用風呂椅子に隣接させて配置すればよい。そして、シャワーフック部120に対して、シャワーヘッドのノズル先を被介護者に向ける態様で係止して、シャワーから湯を出せばよい。
【0030】
こうすると、被介護者は、介護用風呂椅子に座った状態でシャワー浴をすることができる。このため、典型的には、例えば冬場に、被介護者が洗髪する際には、被介護者の肩付近又は腰付近に湯をかけることで、被介護者の洗髪時に湯がかからないことによる体温低下を防止することができる。
【0031】
また、介護者は、例えば、被介護者の洗髪時後に、介護者の近傍に位置するシャワー浴介護装置100から、シャワーフック部12に係止されているシャワーヘッドを把持して、被介護者の頭部に湯をかけて、シャンプーを洗い流すことができる。
【0032】
こうすると、介護者が、洗髪後にわざわざ、シャワー付近まで移動し、蛇口をひねり、場合によって湯の温度調整をしなければならない、といった面倒な作業が不要となる。
【0033】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2の模式的なシャワー浴介護装置の構成図である。
図2に示すシャワー浴介護装置100は、
図1に示すシャワー浴介護装置100に対して、錘部130の構成を変更している。
図2には、
図1に示した部位の他に、以下説明する、開閉部150と仕切部160とを示している。
【0034】
開閉部150は、水又は湯などを密閉室110に注入する部位である。密閉室110に注入された水等は、以下説明する仕切部160を通過して、錘部130として機能することになる。開閉部150は、
図2の場合には、密閉室110の上部に設けられている。
【0035】
開口部150は、開口端から数cmほど離れた位置で、一方に凹部が設けられ、他方に凸部が設けられ、これらが相互に嵌合可能とされた構造とされている。これらが嵌合しているときは閉状態であり、密閉室110の密閉状態が維持される。一方、これらの嵌合が解除されたるときは開状態となる。開口部150には、開状態と閉状態とを切り替えるために、例えばスライド式の開閉つまみを設けてもよい。
【0036】
仕切部160は、密閉室110と錘部130とを仕切る部位である。仕切部160は、中央部分に貫通孔が形成された円盤状をしており、円周部は、シャワー浴介護装置100の内壁に接続されている。
【0037】
開閉部150を通じて注入された水等は、仕切部160に形成された貫通孔を通じて、錘部130に到達する。このため、当該水等が、錘部130として機能することになる。もっとも、仕切部160を設けることは必須ではなく、密閉室110と錘部130との境界部分に、水等の注入量の目安となる目印を付すことで仕切部160を割愛することもできる。
【0038】
また、開閉部150を設けることで、栓部140自体を割愛して、開閉部150に栓部の機能を持たすこともできる。係る場合には、開閉部150が開状態のときに、ここから空気等を入れて、その後に開閉部150を閉状態にして封止すればよい。
【0039】
(実施形態3)
図3は、本発明の実施形態3の模式的なシャワー浴介護装置の構成図である。
図3に示すシャワー浴介護装置100は、
図1に示すシャワー浴介護装置100に対して、シャワーフック部120の一方の取り付け位置を、密閉室110の上面としたものである。もっとも、
図1に示すシャワー浴介護装置100に対して、密閉室110の上面に3つ目のシャワーフック部120を設けることも可能である。
【0040】
図1に示すシャワー浴介護装置は、典型例として、被介護者の肩付近又は腰付近に湯をかける場合を例に説明した。これに加えて、
図3に示すシャワー浴介護装置は、被介護者の洗髪時後に、シャワーヘッドを密閉室110の上面に位置するシャワーフック部120に係止すれば、被介護者の頭部に湯があたり、介護者が両手を使ってシャンプーを洗い流すことができる。
【0041】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態では、種々のシャワー浴介護装置100について説明したが、例えば、背もたれのあるタイプの風呂椅子については、当該背もたれの裏側、すなわち、被介護者の背中の当たらない側に、吸盤、耐水性のある両面テープ、又は、耐水性のある接着剤などを取付部として、これを介して、シャワーフック部120を取り付けることもできる。
【0042】
或いは、当該背もたれの裏側とシャワーフック部120との一方を雄型とし、他方を雌型とした接続部を設けることで、これを通じてシャワーフック部120を当該背もたれに取り付けることも一法である。この際、シャワーフック部120は、高さ調整が可能なタイプとすると、被介護者の肩のあたりから湯をかけたい場合、腰のあたりから湯をかけたい場合で高さ調整をして使うこともできる。
【0043】
したがって、本発明の他の実施形態のシャワー浴介護装置100の場合は、シャワーフック部120と、シャワーフック部120を取付対象に取り付けるための取付部とを備えることになる。
【0044】
また、シャワーフック部120の取り付け対象は、風呂椅子の背もたれに限定されるものではなく、例えば、浴槽の側面、又は、縁の上面などとすることもできる。
【0045】
以上、本発明の各実施形態では、種々のシャワー浴介護装置100について説明したが、各実施形態の特定部分を、他の実施形態の対応部分と差し替えることもできる。
【要約】
【課題】寝たきりでない被介護者にも好適なシャワー浴介護装置を提供する。
【解決手段】風呂椅子に隣接して配置される、風呂椅子に対応する高さのシャワー浴介護装置100であって、柔性を有する本体110と、本体110に接続されるシャワーフック部120と、本体110の底部に位置していてシャワーフック部120に係止されるシャワーヘッドに対応する重さの錘部130と、を備え、本体110は、気体を封入可能な密閉室又は発泡材とし、シャワーフック部120は、本体110の側面又は上面に設け、錘部130は、そこに例えば浴室などで得られる水又は湯を注入することによって実現する。
【選択図】
図1