特許第6088128号(P6088128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088128
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】電動アシスト台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20170220BHJP
   B62B 5/04 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   B62B3/00 G
   B62B5/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-225981(P2011-225981)
(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公開番号】特開2013-86547(P2013-86547A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年4月18日
【審判番号】不服2015-20343(P2015-20343/J1)
【審判請求日】2015年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】関根 伸一
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 修
【合議体】
【審判長】 島田 信一
【審判官】 一ノ瀬 覚
【審判官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−1426(JP,A)
【文献】 特開2006−168489(JP,A)
【文献】 特開平7−117674(JP,A)
【文献】 特開平9−240477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00
B62B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者によって付与される駆動力にアシスト力を付与して走行可能な電動アシスト台車であって、
荷物を載置可能な荷台が昇降可能に設けられる車体フレームと、
前記車体フレームに設けられる駆動輪と、
前記駆動輪にアシスト力を付与する電動モータと、
作業者によって押圧操作され、前記車体フレームに駆動力を入力可能な操作部と、
前記操作部が押圧操作されることによって前記車体フレームに作用する駆動トルクを検出するトルク検出部と、
前記駆動輪を制動するブレーキと、
前記荷台を昇降させる荷台昇降部と、
前記ブレーキによって前記駆動輪を制動/制動解除させるための作業者からの操作及び前記荷台を昇降させるための作業者からの操作を検出する操作検出部と、
前記電動モータ、前記ブレーキ及び前記荷台昇降部の動作を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記トルク検出部によって検出された前記駆動トルクに応じたアシスト力を演算し、演算されたアシスト力を前記駆動輪に付与するように前記電動モータを動作させ、
前記操作検出部が前記ブレーキによる制動の操作を検出した場合は、前記駆動輪を制動すると共に、前記トルク検出部の検出結果にかかわらず前記電動モータの動作を禁止し、
前記操作検出部が前記ブレーキによる制動の操作を検出しているときに前記操作検出部が前記荷台の昇降の操作を検出した場合は、前記荷台の昇降動作を可能にすることを特徴とする電動アシスト台車。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記操作検出部が前記ブレーキによる制動解除の操作を検出した場合は、前記駆動輪の制動を解除すると共に、前記操作検出部の検出結果にかかわらず前記荷台昇降部の昇降動作を禁止することを特徴とする請求項1に記載の電動アシスト台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力が電動モータによってアシストされる電動アシスト台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場などで使用される台車に重量のある荷物が載せられると、作業者は運搬開始時に大きな力で台車を押す必要があるため、重労働となっていた。
【0003】
この対策として、特許文献1には、台車を押す作業者の力を検出し、電動モータによって人力に応じた補助動力が与えられる電動アシスト手押し台車が提案されている。この電動アシスト手押し台車では、作業者による手押し枠体の操作に応じて前進時及び後進時における作業者の押す力をアシストしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−290319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電動アシスト手押し台車は、作業者が手押し枠体を操作しない場合は電動モータが回転せず、電動モータに連結された駆動輪がブレーキの役目を果たすように構成されている。
【0006】
引用文献1に記載の電動アシスト手押し台車は機械的に作用するブレーキを備える。一方で、重量のある荷物を載せた台車は慣性重量が大きいため、必要時に適切に作動するブレーキを備えることが要求される。すなわち、安全性を向上するためには、台車の動作と関連してブレーキを適切に動作させることが必要とされる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、電動アシスト台車の動作状態に関連して適切にブレーキを動作させて、安全性を向上させた電動アシスト台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、作業者によって付与される駆動力にアシスト力を付与して走行可能な電動アシスト台車であって、荷物を載置可能な荷台が昇降可能に設けられる車体フレームと、車体フレームに設けられる駆動輪と、駆動輪にアシスト力を付与する電動モータと、作業者によって押圧操作され、車体フレームに駆動力を入力可能な操作部と、操作部が押圧操作されることによって車体フレームに作用する駆動トルクを検出するトルク検出部と駆動輪を制動するブレーキと、荷台を昇降させる荷台昇降部と、ブレーキによって駆動輪を制動/制動解除させるための作業者からの操作及び荷台を昇降させるための作業者からの操作を検出する操作検出部と、電動モータ、ブレーキ及び荷台昇降部の動作を制御するコントローラと、を備える電動アシスト台車に適用されるものである。
【0009】
この電動アシスト台車において、コントローラは、トルク検出部によって検出された駆動トルクに応じたアシスト力を演算し、演算されたアシスト力を駆動輪に付与するように電動モータを動作させ、操作検出部が荷台の昇降の操作を検出した場合は、検出された操作に応じて荷台昇降部を昇降動作させ、操作検出部がブレーキによる制動の操作を検出した場合は、駆動輪を制動すると共に、トルク検出部の検出結果にかかわらず電動モータの動作を禁止し、操作検出部がブレーキによる制動の操作を検出しているときに操作検出部が荷台の昇降の操作を検出した場合は、荷台の昇降動作を可能にする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ブレーキの制動が指示された場合には、電動モータの動作を禁止するので、ブレーキが制動状態で電動モータに電流が供給されることによる電動モータに無駄な電流が流れたり故障の発生を未然に防止することができる。これにより、電動アシスト台車の信頼性、安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る電動アシスト台車の斜視図である。
図2図1における側面図である。
図3図1における正面図である。
図4】電動アシスト台車の制御ブロック図である。
図5】電動アシスト台車の運転動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の電動アシスト台車100の斜視図である。図2は、図1における電動アシスト台車100の側面図である。図3は、図1における電動アシスト台車100の正面図である。図4は、この電動アシスト台車100の制御ブロック図である。
【0014】
電動アシスト台車100は、例えば工場などにて、重量物を運搬するのに使用される。電動アシスト台車100は、作業者によって付与される駆動力に、後述する電動モータ15の回転によるアシスト力が付与されて走行するものである。
【0015】
なお、本実施形態の電動アシスト台車100は、作業者によって作業者によって駆動力が前進方向に付与された場合に前進走行するときの方向を前後方向とする。
【0016】
電動アシスト台車100は、車体フレーム1と、車体フレーム1上に設けられ荷物を載置可能な荷台3と、車体フレーム1の進行方向左右の二箇所から駆動力を入力可能な操作部としての操作ハンドル5と、車体フレーム1の進行方向の左右に間隔をあけて設けられる一対の駆動輪11と、車体フレーム1に装着され駆動輪11の後方に設けられる一対の自在輪12とを備える。駆動輪11は、電動アシスト台車100の前輪であり、自在輪12は、電動アシスト台車100の後輪である。
【0017】
車体フレーム1は、角形のパイプ材が略長方形に組み合わされたフレームである。車体フレーム1は、荷台3を介して荷物が載置される平面部1aと、平面部1aの下部に突設される下部突設部1bと、平面部1aの後端上部に立設される立設部1cとを有する。
【0018】
荷台3は、車体フレーム1における平面部1aの上方を覆うようにして設けられる縁付きの平板である。荷台3上には、荷物が直接載置される。荷台3は、縁なしの平板であってもよい。また、荷台3に代えて、車体フレーム1上にローラコンベアを設置し、ローラコンベアを介して荷物を載置してもよい。
【0019】
車体フレーム1と荷台3の間には、図2に示すように、昇降装置2が設けられる。昇降装置2は、X字状形に交差するリンク機構61と、このリンク機構61を拡縮する伝動昇降シリンダとが左右一対で設けられる。
【0020】
リンク機構61は、X字形に交差するリンク62、63によって構成される。リンク62、63は中央のピン64によって互いに連結され、リンク62、63の後端はピン65、66によって荷台3と車体フレーム1とにそれぞれ連結される。リンク62、53の前端にはスライド機構67、68を介して荷台3と車台フレーム1とにそれぞれ連結され、前後方向へのスライドが許容される。
【0021】
電動昇降シリンダ2aは、リンク62と車体フレーム1との間に連結される。後述するようにコントローラ30の制御によって電動昇降シリンダ2aを伸縮させることによってリンク機構61が拡縮し、昇降装置2が荷台3を昇降させることができる。例えば、荷台3に重量物が載置され、後述する懸架装置20によって駆動輪11及び自在輪12に対して車体フレーム1が沈み込んだ場合には、昇降装置2が荷台3を上昇させ、路面に対する荷台3の高さを一定に調節することが可能である。
【0022】
電動昇降シリンダ2aは、後述するコントローラ30と電気的に接続され、コントローラ30からの指令信号に基づいて伸縮する。電動昇降シリンダ2aは、例えば、モータによって駆動される油圧ポンプを備え、油圧ポンプから吐出される作動油の圧力によって伸縮する電動油圧式リニアアクチュエータである。
【0023】
操作ハンドル5は、図1に示すように、作業者によって操作されるハンドルである。操作ハンドル5は、作業者によって操作される水平の持ち手部分5aと、この持ち手部分の左右両端部から鉛直方向下側に延設されて、車体フレーム1における立設部1cに連結される連結部5b、5cとからなる逆U字形状を有する。このような構造により、作業者が操作ハンドル5を操作することによって入力される駆動力が、車体フレーム1に伝達される。
【0024】
駆動輪11は、車体フレーム1の前後方向に向かって転舵不能に設けられる小型の車輪である。駆動輪11は、車体フレーム1の前端部近傍の左右に一対設けられる。駆動輪11は、車体フレーム1の下部突設部1bに対して上下運動可能に連結される。
【0025】
自在輪12は、走行時に常に進行方向を向く小型の車輪である。自在輪12は、路面との間の摩擦抵抗によって旋回し、進行方向を向くように操舵される。自在輪12は、車体フレーム1の下部突設部1bに対して上下運動可能に連結される。
【0026】
電動アシスト台車100は、車体フレーム1に対して上下運動可能な四個のサブフレーム4と、サブフレーム4を介して駆動輪11と自在輪12とを懸架する懸架装置20とを備える。
【0027】
サブフレーム4は、一対の駆動輪11と一対の自在輪12との各々の車輪に対応して四個設けられる。サブフレーム4は、車体フレーム1の左右に二個ずつ配設される。各々のサブフレーム4の下面には、駆動輪11又は自在輪12が回転可能に連結される。
【0028】
懸架装置20は、車体フレーム1に左右のサブフレーム4を上下運動可能に支持する四本のサスペンションアーム22と、車体フレーム1と左右のサブフレーム4の間に設けられるスプリングダンパ23とを備える。
【0029】
サスペンションアーム22は、一個のサブフレーム4に対して四本ずつ設けられる。サスペンションアーム22は、それぞれの両端部が車体フレーム1と左右のサブフレーム4とに水平軸まわりに回動可能に連結され、車体フレーム1に対してサブフレーム4を平行移動可能に支持する平行リンク機構を構成する。
【0030】
これにより、車体フレーム1に対してサブフレーム4が昇降しても、サブフレーム4の姿勢が変化せず、駆動輪11と自在輪12との位置関係(アライメント)が一定に保たれる。よって、サブフレーム4が昇降しても、駆動輪11と自在輪12との一方が路面から浮くことが抑制される。
【0031】
スプリングダンパ23は、路面不整などによる駆動輪11及び自在輪12の上下振動を吸収して緩和し、路面からの振動が車体フレーム1に伝達されることを抑制するものである。スプリングダンパ23は、コイルスプリング23aとダンパ23bとを備え、サブフレーム4が昇降するのに伴って伸縮する。
【0032】
コイルスプリング23aは、そのバネ力によってサブフレーム4が受ける荷重を支持し、サブフレーム4が昇降するのに伴って伸縮する。
【0033】
ダンパ23bは、伸縮作動するのに伴ってこれに充填された作動油が減衰弁(図示省略)を通過し、サブフレーム4の振動を抑制する減衰力を発生する。
【0034】
なお、懸架装置20は、上述の構成に限らず、車体フレーム1に対するサブフレーム4の姿勢が保たれるならば、他の構成であってもよい。
【0035】
電動アシスト台車100は、操作ハンドル5が押圧操作されることによって車体フレーム1の左右二箇所の各々に作用する駆動トルクを検出する一対のトルク検出部としてのトルクセンサ6と、トルクセンサ6によって検出された駆動トルクに応じて各々の駆動輪11に付与するアシスト力を演算するコントローラ30と、コントローラ30によって演算されたアシスト力を各々の駆動輪11に付与する一対の電動モータ15と、各々の駆動輪11の回転を制動する一対のブレーキ16と、作業者によって操作可能な各種スイッチが設けられる操作盤29とを備える。
【0036】
トルクセンサ6は、コントローラ30に電気的に接続され、検出した駆動トルクに応じた電気信号をコントローラ30に出力する。トルクセンサ6は、操作ハンドル5と車体フレーム1とを連結して操作部から入力される駆動力によって捩れるとともに駆動力を車体フレーム1に伝達するトーションバー(図示省略)と、トーションバーの捩れに応じた電気信号を出力するポテンショメータ(図示省略)とを備え、トーションバーの捩れに基づいて駆動トルクを検出する。トルクセンサ6に設けられるトーションバーを変更することで、その他の部材を変更することなく、台車の積載荷重などに応じて作業者による操作感覚を変更することも可能である。
【0037】
電動モータ15は、コントローラ30に電気的に接続され、コントローラ30から入力される電気信号に応じて回転する。電動モータ15は、図3に示すように、駆動輪11の内側に配設され、駆動輪11にアシスト力を付与する。左右の電動モータ15は、互いに同軸に設けられ、一対の駆動輪11の間に直列に配設される。なお、電動モータ15は、回転を減速して駆動輪11に伝達する変速機を備えてもよい。
【0038】
コントローラ30は、左右の電動モータ15に実際に流れた電流の電流値をそれぞれ検出してフィードバックする電流検出部15a(図4参照)を有する。これにより、電動モータ15のフィードバック制御が可能となる。
【0039】
ブレーキ16は、電動モータ15の出力軸と駆動輪11との間に配設される。ブレーキ16は、制動状態と非制動状態とを切り換え可能なブレーキソレノイド16a(図4参照)を有する。ブレーキ16は、制動状態に切り換えられたときに駆動輪11を回転不能に固定する。
【0040】
ブレーキソレノイド16aは、コントローラ30に電気的に接続され、コントローラ30から供給される電流に応じて切り換えられる。ブレーキソレノイド16aにコントローラ30から電流が供給された場合には、ブレーキ16はブレーキソレノイド16aを動作させて、駆動輪11を非制動状態に切り換える。一方、ブレーキソレノイド16aに電流が流れていない状態では、ブレーキ16は駆動輪11を制動状態に維持する。
【0041】
すなわち、ブレーキソレノイド16aは、いわゆるノーマルクローズのアクチュエータとして構成されている。これにより、コントローラ30の故障やケーブルの断線等が発生した場合にはブレーキソレノイド16aにより必ずブレーキ16が制動状態となり、電動アシスト台車100が転動することを防止する。
【0042】
ブレーキソレノイド16aは、左右の電動モータ15の出力軸と駆動輪11との間にそれぞれ設けられる。また、ブレーキソレノイド16aの動作状態を検出するソレノイド動作検出器16bが、それぞれのブレーキソレノイド16aに設けられる。ソレノイド動作検出器16bは、ブレーキソレノイド16aに電流が供給されてブレーキ16が非制動状態であるか、ブレーキソレノイド16aの電流が遮断されてブレーキ16が制動状態であるか、を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。
【0043】
コントローラ30は、電源装置(図示省略)や他の電子機器(図示省略)とともに車体フレーム1に搭載される。コントローラ30は、電動アシスト台車100の制御を行うものであり、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAMなどをROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって電動アシスト台車100の制御が実現される。
【0044】
コントローラ30は、電源装置から供給される電源によって動作する。コントローラ30は、電源装置の電圧が急激に低下した場合には、全ての制御を停止してCPUをスリープ状態とする。電源装置が24Vのバッテリである場合には、例えば、電圧が18V程度まで低下したときにCPUをスリープ状態とする。これにより、電源装置の電圧の急激な低下から、コントローラ30を保護することができる。
【0045】
コントローラ30は、左右のトルクセンサ6によって検出された駆動トルクに応じたアシスト力を左右の電動モータ15にそれぞれ発生させる制御を行い、電動アシスト台車100を前進または後退させるとともに、直進、旋回、曲折させるアシスト力を付与する。
【0046】
コントローラ30は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御によって電動モータ15を駆動する。コントローラ30は、図4に示すように、電動モータ15に流れた電流の大きさとその電流が連続して流れた連続時間とを判定する電流判定部31と、電流判定部31の判定に基づいて電動モータ15への電流の供給を停止及び制限可能な電流制御部32とを備える。
【0047】
操作盤29は、図1に示すように、車体フレーム1における立設部1cの背面に配設され、コントローラ30に電気的に接続される。操作盤29は、作業者によって操作可能かつ視認可能な位置に設けられればよいため、この位置に限られるものではない。操作盤29は、ブレーキソレノイド16aを切り換えてブレーキ16の制動状態を指示するためのブレーキ解除スイッチ24と、電動昇降シリンダ2aを操作するための荷台昇降スイッチ25と、電動アシスト台車100の状態を表示するインジケータ27とを備える。
【0048】
ブレーキ解除スイッチ24は、作業者の操作によってブレーキソレノイド16aを切り換え可能なスイッチである。作業者がブレーキ解除スイッチ24を操作したときに、コントローラ30の制御によってブレーキソレノイド16aに電流が流れ、駆動輪11が非制動状態に切り換えられる。これにより、電動アシスト台車100は走行可能となる。
【0049】
ブレーキ解除スイッチ24は、例えば、ラッチ可能な押しボタンスイッチにより構成される。作業者がブレーキ解除スイッチ24を押し操作したときにラッチにより押し状態が維持される。このときのブレーキ解除スイッチ24からの信号がコントローラ30に伝達される。コントローラ30は、ブレーキ解除スイッチ24からの信号に基づいてブレーキソレノイド16aに電流を流し、ブレーキ16を非制動状態に切り替える。
【0050】
また、ブレーキ解除スイッチ24が押し状態に維持されているときに作業者がブレーキ解除スイッチ24を押し操作したときは、ラッチが解除されてブレーキ解除スイッチ24の押し状態が解除される。このときのブレーキ解除スイッチ24からの信号がコントローラ30に伝達される。コントローラ30は、ブレーキ解除スイッチ24からの信号に基づいてブレーキソレノイド16aへの電流を遮断し、ブレーキ16を制動状態に切り替える。
【0051】
なお、ブレーキ解除スイッチ24の押し状態に応じてブレーキ解除スイッチ24を赤や緑等に点灯させたり、ブレーキ16が制動状態か非制動状態かをインジケータ27によって表示してもよい。これにより、作業者は現在のブレーキ16の制御状態を目視により容易に把握することができる。
【0052】
荷台昇降スイッチ25は、作業者の操作によって電動昇降シリンダ2aを動作させるスイッチである。作業者が荷台昇降スイッチ25を操作すると、電動昇降シリンダ2aが伸縮する。これにより、荷台3が車体フレーム1に対して昇降する。
【0053】
荷台昇降スイッチ25は、例えば上昇ボタンと下降ボタンとを備え、作業者が上昇ボタンを押し操作したときは、荷台昇降スイッチ25から上昇を指示する信号がコントローラ30に伝達される。コントローラ30は、荷台昇降スイッチ25からの信号に基づいて電動昇降シリンダ2aに指令を伝達する。この指令に基づいて電動昇降シリンダ2aが伸張することによってリンク機構61が拡大し、荷台3が上昇する。
【0054】
また、作業者が下降ボタンを押し操作したときは、荷台昇降スイッチ25から下降を指示する信号がコントローラ30に伝達される。コントローラ30は、荷台昇降スイッチ25からの信号に基づいて電動昇降シリンダ2aに指令を伝達する。この指令に基づいて電動昇降シリンダ2aが縮退することによってリンク機構61が縮小し、荷台3が下降する。
【0055】
なお、安全のため、荷台3は、作業者が荷台昇降スイッチ25の押下を継続している間のみ昇降し、作業者が荷台昇降スイッチ25を離したときは昇降を停止するように制御される。また、荷台昇降スイッチ25が操作されている間は、荷台昇降スイッチ25を点灯させたり、インジケータ27を点灯させてもよい。
【0056】
インジケータ27は、電動アシスト台車100の状態を作業者が視認可能なように示すものである。インジケータ27はLEDによって構成される。例えば、後述するように、作業者が行った操作が動作禁止にあった場合に、コントローラ30がインジケータ27を点灯して動作禁止である旨を通知する。なお、インジケータ27は、点灯によるものだけでなく、音声や振動によって作業者に伝えるものであってもよい。
【0057】
次に、電動アシスト台車100における運転動作について説明する。
【0058】
作業者が操作ハンドル5を両手で平行に押した場合には、電動アシスト台車100は、真っ直ぐ前進することとなる。この場合、操作ハンドル5が押されることによって車体フレーム1に入力される駆動力は操作ハンドル5の左右両端で略同一である。よって、左右のトルクセンサ6によって検出される駆動トルクは、略同一となる。
【0059】
左右のトルクセンサ6が同一の駆動トルクを検出すると、コントローラ30は、左右の電動モータ15から左右の駆動輪11に同一のアシスト力を付与するように指令する。これにより、左右の駆動輪11には、同一のアシスト力が付与される。
【0060】
したがって、電動アシスト台車100は、作業者によって付与される駆動力に、電動モータ15のアシスト力が付与されて真っ直ぐ前進することとなる。
【0061】
なお、電動アシスト台車100を真っ直ぐ後退させる場合には、操作ハンドル5が押される方向が逆になり、トルクセンサ6が検出する駆動トルクが前進の場合と比較して逆方向となるので、コントローラ30は、これに応じて電動モータ15の回転方向を逆に制御する。その他の作用は真っ直ぐ前進する場合と同様である。
【0062】
一方、作業者が操作ハンドル5を押す左右の力を相違させた場合には、電動アシスト台車100は、左又は右に旋回走行することとなる。このとき、左右の駆動輪11に付与されるアシスト力は、左右の電動モータ15で相違する。
【0063】
具体的には、例えば電動アシスト台車100を左方向に旋回させる場合、作業者が右手で操作ハンドル5を押す力は、左手で操作ハンドル5を押す力と比較して大きくなる。よって、右側のトルクセンサ6が検出する駆動トルクは、左側のトルクセンサ6が検出する駆動トルクと比較して大きくなる。
【0064】
これにより、コントローラ30は、右側の電動モータ15から駆動輪11に付与するアシスト力が、左側の電動モータ15から駆動輪11に付与するアシスト力と比較して大きくなるように指令する。これにより、右側の駆動輪11に付与されるアシスト力は、左側の駆動輪11に付与されるアシスト力と比較して大きくなる。
【0065】
なお、左右のトルクセンサ6は、駆動トルクを無段階に検出可能であるため、作業者が操作ハンドル5を押圧操作する力に応じてアシスト力の大きさをコントロールすることができる。
【0066】
次に、電動アシスト台車100のブレーキ16と運転動作との関連について説明する。
【0067】
図5は、本発明の実施形態の運転動作のフローチャートである。
【0068】
図5に示すフローチャートは、電動アシスト台車100の動作が開始されたときに開始され、コントローラ30によって実行される。例えば操作盤29に電動アシスト台車100の動作開始のための操作ボタンを設け、作業者がこの操作ボタンを操作したときに、本フローチャートの動作が開始する。
【0069】
まず、コントローラ30は、ブレーキ16が制動状態であるか否かを判定する(ステップS11)。
【0070】
コントローラ30は、作業者によって操作されたブレーキ解除スイッチ25の状態に応じてブレーキ16を制動状態に制御したか非制動状態に制御したかを判定する。具体的には、コントローラ30は、ソレノイド動作検出器16bから出力された信号に基づいて、ブレーキソレノイド16aの動作状態を検出することによってブレーキ16が制動状態である非制動状態であるかを判定する。なお、ソレノイド動作検出器16bから出力された信号によらず、コントローラ30がブレーキソレノイド16aに電流を供給したか否かをもって、ブレーキ16が制動状態であるか非制動状態であるかを判定してもよい。
【0071】
ブレーキ16が制動状態であると判定した場合はステップS12に移行する。ブレーキ16が非制動状態であると判定した場合はステップS22に移行する。
【0072】
ブレーキ16が制動状態であると判定した場合は、コントローラ30は、電動モータ15によるアシスト力の付与を禁止する(ステップS12)。
【0073】
具体的には、アシスト力の付与を禁止した場合は、コントローラ30は、トルクセンサ6によって駆動トルクが検出されたか否かにかかわらず、電動モータ15の動作を禁止する。この制御より、作業者が操作ハンドル5を操作したとしても電動モータ15は駆動せず、アシスト力が付与されることが禁止される。
【0074】
従って、ブレーキ16が制動状態である場合は、作業者が操作ハンドル5を操作したとしても、ブレーキ16の制動力によって電動アシスト台車100は前進も後退もすることはない。
【0075】
次に、コントローラ30は、荷台昇降スイッチ25が操作されたか否かを判定する(ステップS13)。
【0076】
コントローラ30は、荷台昇降スイッチ25が作業者によって操作され、荷台昇降スイッチ25から上昇又は下降を指示する信号が送られてきたと判定した場合は、ステップS14に移行して、荷台昇降スイッチ25からの指示に基づいて、電動昇降シリンダ2aに指示を出力する。この指示に基づいて電動昇降シリンダ2aが伸縮することでリンク機構61が拡縮し、荷台3が車体フレーム1に対して昇降する。このステップS14の処理の後、ステップS11に戻る。
【0077】
荷台昇降スイッチ25が操作されない場合は、ステップS14の処理を行うことなく、ステップS11に戻る。
【0078】
ステップS11において、ブレーキ16が非制動状態であると判定した場合は、コントローラ30は、荷台3の昇降動作を禁止する(ステップS22)。
【0079】
具体的には、コントローラ30は、荷台3の昇降動作を禁止した場合は、荷台昇降スイッチ25の操作が検出されたか否かにかかわらず、電動昇降シリンダ2aの動作を制限して、荷台3が昇降動作しないように制御する。これにより、作業者が荷台昇降スイッチ25を操作しても電動昇降シリンダ2aは駆動せず、荷台3が昇降することはない。
【0080】
次に、コントローラ30は、トルクセンサ6によって駆動トルクが検出されたか否かを判定する(ステップS23)。
【0081】
トルクセンサ6によって駆動トルクが検出された場合は、コントローラ30は、前述のように、検出された駆動トルクに応じて電動モータ15の動作を制御して、電動アシスト台車100の前進又は後退に対してアシスト力を付与する(ステップS24)。このステップS24の処理の後、ステップS11に戻る。
【0082】
駆動トルクが検出されない場合は、ステップS24の処理を行うことなく、ステップS11に戻る。
【0083】
この図5に示すフローチャートのように、コントローラ30は、ブレーキ16が制動状態である場合は、アシスト力の付与を禁止して、荷台3の昇降動作のみを許可する。一方、ブレーキ16が非制動状態である場合は、荷台3の昇降動作を禁止して、アシスト力の付与のみを許可する。
【0084】
なお、図5に示すフローチャートは、ステップS11からS24が順次繰り返して実行される。例えばステップS14において電動昇降シリンダ2aを動作させた直後にステップS11において作業者がブレーキ解除スイッチ24を操作してブレーキ16の非制動が指示された場合は、ステップS22に移行して荷台3の昇降動作が禁止され、電動昇降シリンダ2aの動作が停止される。このときに、ブレーキ解除スイッチ24の操作に呼応して直ちに電動昇降シリンダ2aの動作を停止するのではなく、緩やかに動作を停止させるようにしてもよい。
【0085】
同様に、ステップS24において電動モータ15を動作させてアシスト力を付与している直後にステップS11において作業者がブレーキ解除スイッチ24を操作してブレーキ16の制動が指示された場合は、ステップS12に移行してアシスト力の付与動作が禁止され、電動モータ15の動作が停止される。このときに、ブレーキ解除スイッチ24の操作に呼応して直ちに電動モータ15の動作を停止するのではなく、緩やかに動作を停止させるようにしてもよい。
【0086】
また、このときのブレーキ16の制動、非制動の切換についても同様に、ブレーキソレノイド16aを緩やかに動作させて、走行中の電動アシスト台車100が急激に停止することを防ぐように制御してもよい。
【0087】
以上のように本発明の実施形態では、作業車の駆動力をトルクセンサ6により検出して、検出した駆動力に応じたアシスト力を電動モータ15によって付与する電動アシスト台車100であって、作業車の操作により荷台3を昇降させる昇降装置2の昇降動作を指示する荷台昇降スイッチ25と、作業車の操作によってブレーキ16の制動状態を指示するブレーキ解除スイッチ24と、を備えている。
【0088】
このような電動アシスト台車100において、ブレーキ解除スイッチ24が押下されずブレーキ16が制動状態である場合に電動モータ15を駆動させた場合は、電動モータ15は回転できず、供給した電流は全て熱に変換される。このため、電動モータ15に流れる電流が無駄となって、搭載されたバッテリ等の電力を無駄に消費するばかりか、熱により電動モータ15やコントローラ30が損傷する慮がある。
【0089】
そこで、ブレーキ16が制動状態である場合は、作業車が操作ハンドル5を操作することによりトルクセンサ6が駆動力を検出したか否かにかかわらず、電動モータ15によるアシスト力の付与を禁止する。これにより、ブレーキ16が制動状態で電動モータ15に電流が供給されることが禁止されて、電動モータ15が無駄な電力を消費することを防止できるほか、電動モータ15やコントローラ30等の故障を未然に防止する。
【0090】
また、ブレーキ解除スイッチ24が押下されてブレーキ16が非制動状態である場合には、電動アシスト台車100の駆動輪11がロックされていないので、操作ハンドル5の操作によらず電動アシスト台車100が自走してしまう可能性がある。この状態で荷台昇降スイッチ25が操作されて荷台3の昇降が行われたときは、荷台3の昇降により重心位置が変化するなどして電動アシスト台車100が自走し、荷台3に搭載した荷物が落下してしまうという慮がある。
【0091】
そこで、ブレーキ16が非制動状態である場合は、作業車が荷台昇降スイッチ25を操作したか否かにかかわらず、荷台3の昇降動作を禁止する。これにより、ブレーキ16が非制動状態で、電動昇降シリンダ2aが動作することが禁止され。荷台3の昇降により電動アシスト台車100が不用意に自走してしまうことを未然に防止する。
【0092】
従って、本発明の実施形態では、電動アシスト台車100の安全性、信頼性を向上することができる。
【0093】
また、ブレーキ解除スイッチ24の押し状態に応じて点灯状態が変化するLEDをより等の表示部をブレーキ解除スイッチ24に内蔵して、ブレーキ16が制動状態か非制動状態かを表示してもよい。これにより、作業者は現在のブレーキ16の制御状態を目視により容易に把握することができ、電動アシスト台車100を不用意に押圧しない等の措置を予め講じることができる。
【0094】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0095】
1 車体フレーム
2 昇降装置(荷台昇降部)
3 荷台
5 操作ハンドル(操作部)
6 トルクセンサ(トルク検出部)
11 駆動輪
12 自在輪
15 電動モータ
15a 電流検出器
16 ブレーキ
16a ブレーキソレノイド
24 ブレーキ解除スイッチ(ブレーキ解除指示検出部)
25 荷台昇降スイッチ(荷台昇降指示検出部)
27 インジケータ
29 操作盤(操作検出部)
30 コントローラ
100 電動アシスト台車
図1
図2
図3
図4
図5