(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜部が二以上の傾斜部分からなり、各傾斜部分を含む水平方向の断面積はそれぞれ前記上面に向かって連続的に小さく、前記上面に近い傾斜部分を含む水平方向の断面積の方が前記上面に遠い傾斜部分を含む水平方向の断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
基板上に反射層と活性層を順に含む化合物半導体層とを備え、前記活性層は、下部クラッド層、下部ガイド層、発光層、上部ガイド層、上部クラッド層が順次積層された構造をしており、光射出孔から光を外部に射出する発光ダイオードの製造方法であって、
基板上に、反射層と活性層を含む化合物半導体層とを形成する工程と、
前記基板の反射層とは反対側に、平面視して形成予定の前記光射出孔に重なる範囲内に第2の電極膜を形成する工程と、
前記化合物半導体層に第1のウェットエッチングを行って、頂面に向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなるメサ型構造部と、該メサ型構造部の周囲に配置する、支持構造部の上面とを形成する工程と、
個片化用切断ラインに沿って第2のウェットエッチングを行って、支持構造部の側面の傾斜部を形成する工程と、
前記傾斜部と前記上面の少なくとも一部と、前記メサ型構造部の前記傾斜側面と、前記メサ型構造部の前記頂面の周縁領域とを少なくとも覆うとともに、平面視して前記周縁領域の内側であってかつ前記光射出孔の周囲に該光射出孔を囲繞するように配置して、前記化合物半導体層の表面の一部を露出する通電窓を有する保護膜を形成する工程と、
前記通電窓から露出された化合物半導体層の表面に直接接触すると共に、前記上面上に形成された保護膜の一部を少なくとも覆い、前記メサ型構造部の頂面上に光射出孔を有するように形成された連続膜である第1の電極膜を形成する工程と、
前記傾斜部を覆う保護膜上に光漏れ防止膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
前記第1及び第2のウェットエッチングを、リン酸/過酸化水素水混合液、アンモニア/過酸化水素水混合液、ブロムメタノール混合液、ヨウ化カリウム/アンモニアの群から選択される少なくとも1種以上を用いて行うことを特徴とする請求項20に記載の発光ダイオードの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記ピラー構造を形成する際、活性層等を成膜した後の、ピラー構造以外の部分の除去を異方性のドライエッチングによって実施するため、
図12に示すように、ピラー構造137の側面137bは基板131に対して垂直あるいは急傾斜に形成されてしまう。このピラー構造の側面には通常、蒸着法やスパッタ法によって保護膜が形成された後、蒸着法によって電極用金属(例えば、Au)膜を形成するが、この垂直あるいは急傾斜の側面に、保護膜や電極用金属膜を一様な膜厚で形成するのは容易ではなく、不連続な膜になりやすいという問題がある。保護膜が不連続な膜になった場合(
図12中の符号A)には、その不連続部分に電極用金属膜が入り込んで活性層等に接触してリークの原因になる。また、電極用金属膜が不連続な膜になった場合(
図12中の符号B)には、通電不良の原因になる。
【0008】
また、
図12で示した発光ダイオードでは、ピラー構造を支持する構造の側面132aが露出しているため、側面が大気や大気中の水分と接触して劣化してしまうという問題がある。特に、下部ミラー層132がAlの組成が高い半導体層の場合、側面が酸化して特性が低下してしまう。
【0009】
また、ピラー構造以外の部分の除去をドライエッチングで行うと、高価な装置が必要となり、エッチング時間も長くかかるという問題もある。
【0010】
さらに、
図12に示したようなピラー構造の頂面に光射出孔を有する点光源型の発光ダイオードでは、ピラー構造内の発光層全体に電流が流れるために、発光層のうち光射出孔の直下以外の部分で発光する光の量が多く、光射出孔の直下以外の部分で発光した光は光射出孔の直下で発光した光に比べて発光ダイオードの外部に射出する確率が低いことから、光取り出し効率の向上が阻まれていた。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、保護膜及びその上に形成された電極膜が均一な膜厚で形成されていると共に光取り出し効率が高い発光ダイオード、及び、リークや通電不良が低減して歩留まりが向上すると共に従来より低コストで製造可能な発光ダイオードの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、さらに、安定で高輝度の発光が担保されていると共に、側面の劣化が防止され、高信頼性及び長寿命化が図られた発光ダイオード、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の手段を提供する。
(1)基板上に反射層と活性層を順に含む化合物半導体層とを備え、光射出孔から光を外部に射出する発光ダイオードであって、上面及び側面を有する支持構造部と、該支持構造部上に配置し、傾斜側面及び頂面を有するメサ型構造部とからなり、前記メサ型構造部は少なくとも前記活性層の一部を含むものであって、前記傾斜側面はウェットエッチングによって形成されてなると共に前記頂面に向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなり、前記支持構造部及び前記メサ型構造部はそれぞれ、少なくとも一部は保護膜、第1の電極膜によって順に覆われてなり、前記保護膜は、前記上面の少なくとも一部と、前記メサ型構造部の前記傾斜側面と、前記メサ型構造部の前記頂面の周縁領域とを覆うとともに、平面視して前記周縁領域の内側であってかつ前記光射出孔の周囲に配置して、前記化合物半導体層の表面の一部を露出する通電窓を有し、前記第1の電極膜は、前記通電窓から露出された化合物半導体層の表面に直接接触すると共に、前記上面上に形成された保護膜の一部を少なくとも覆い、前記メサ型構造部の頂面上に光射出孔を有するように形成された連続膜であり、前記基板の反射層とは反対側に、平面視して前記光射出孔に重なる範囲内に第2の電極膜を備えた、ことを特徴とする発光ダイオード。
(2)基板上に反射層と活性層を順に含む化合物半導体層とを備え、光射出孔から光を外部に射出する発光ダイオードであって、上面及び側面を有する支持構造部と、該支持構造部上に配置し、傾斜側面及び頂面を有するメサ型構造部とからなり、前記支持構造部は少なくとも前記反射層の一部を含むものであって、その側面は、ウェットエッチングによって形成され、前記上面から前記基板側に少なくとも前記反射層を越える位置まで延在する傾斜部を含み、該傾斜部を含む水平方向の断面積が前記上面に向かって連続的に小さく形成されてなり、前記メサ型構造部は少なくとも前記活性層の一部を含むものであって、前記傾斜側面はウェットエッチングによって形成されてなると共に前記頂面に向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなり、前記支持構造部及び前記メサ型構造部はそれぞれ、少なくとも一部は保護膜、第1の電極膜によって順に覆われてなり、前記保護膜は、前記上面の少なくとも一部と、前記側面のうち少なくとも傾斜部と、前記メサ型構造部の前記傾斜側面と、前記メサ型構造部の前記頂面の周縁領域とを覆うとともに、平面視して前記周縁領域の内側であってかつ前記光射出孔の周囲に配置して、前記化合物半導体層の表面の一部を露出する通電窓を有し、前記第1の電極膜は、前記通電窓から露出された化合物半導体層の表面に直接接触すると共に、前記上面上に形成された保護膜の一部を少なくとも覆い、前記メサ型構造部の頂面上に光射出孔を有するように形成された連続膜であり、前記基板の反射層とは反対側に、平面視して前記光射出孔に重なる範囲内に第2の電極膜を備えた、ことを特徴とする発光ダイオード。
(3)前記反射層がDBR反射層であることを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載の発光ダイオード。
(4)前記活性層の基板とは反対側に上部DBR反射層を備えることを特徴とする(3)に記載の発光ダイオード。
(5)前記傾斜部が二以上の傾斜部分からなり、各傾斜部分を含む水平方向の断面積はそれぞれ前記上面に向かって連続的に小さく、前記上面に近い傾斜部分を含む水平方向の断面積の方が前記上面に遠い傾斜部分を含む水平方向の断面積よりも小さいことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(6)前記第1の電極膜及び/又は前記保護膜上に光漏れ防止膜を備えたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(7)前記化合物半導体層が、前記電極膜に接触するコンタクト層を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(8)前記メサ型構造部が前記活性層のすべてと、前記反射層の一部または全部を含むことを特徴とする(1)〜(7)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(9)前記メサ型構造部は平面視して矩形であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(10)前記メサ型構造部の各傾斜側面は前記基板のオリエンテーションフラットに対してオフセットして形成されていることを特徴とする(9)に記載の発光ダイオード。
(11)前記メサ型構造部の高さが3〜7μmであって、平面視した前記傾斜側面の幅が0.5〜7μmであることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(12)前記光
射出孔は平面視して円形又は楕円であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(13)前記光
射出孔の径が50〜150μmであることを特徴とする(12)に記載の発光ダイオード。
(14)前記第1の電極膜の前記上面上の部分にボンディングワイヤを有することを特徴とする(1)〜(13)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(15)前記活性層に含まれる発光層が多重量子井戸からなることを特徴とする(1)〜(14)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(16)前記活性層に含まれる発光層が((Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)、(Al
X2Ga
1−X2)As(0≦X2≦1)、(In
X3Ga
1−X3)As(0≦X3≦1))のいずれかからなることを特徴とする(1)〜(15)のいずれか一項に記載の発光ダイオード。
(17)基板上に反射層と活性層を順に含む化合物半導体層とを備え、光射出孔から光を外部に射出する発光ダイオードの製造方法であって、基板上に、反射層と活性層を含む化合物半導体層とを形成する工程と、前記基板の反射層とは反対側に、平面視して形成予定の前記光射出孔に重なる範囲内に第2の電極膜を形成する工程と、前記化合物半導体層をウェットエッチングして、頂面に向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなるメサ型構造部と該メサ型構造部の周囲に配置する上面とを形成する工程と、前記上面の少なくとも一部と、前記メサ型構造部の前記傾斜側面と、前記メサ型構造部の前記頂面の周縁領域とを少なくとも覆うとともに、平面視して前記周縁領域の内側であってかつ前記光射出孔の周囲に配置して、前記化合物半導体層の表面の一部を露出する通電窓を有する保護膜を形成する工程と、前記通電窓から露出された化合物半導体層の表面に直接接触すると共に、前記上面上に形成された保護膜の一部を少なくとも覆い、前記メサ型構造部の頂面上に光射出孔を有するように形成された連続膜である第1の電極膜を形成する工程と、を有することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
(18)基板上に反射層と活性層を順に含む化合物半導体層とを備え、光射出孔から光を外部に射出する発光ダイオードの製造方法であって、基板上に、反射層と活性層を含む化合物半導体層とを形成する工程と、前記基板の反射層とは反対側に、平面視して形成予定の前記光射出孔に重なる範囲内に第2の電極膜を形成する工程と、前記化合物半導体層に第1のウェットエッチングを行って、頂面に向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなるメサ型構造部と、該メサ型構造部の周囲に配置する、支持構造部の上面とを形成する工程と、個片化用切断ラインに沿って第2のウェットエッチングを行って、支持構造部の側面の傾斜部を形成する工程と、前記傾斜部と前記上面の少なくとも一部と、前記メサ型構造部の前記傾斜側面と、前記メサ型構造部の前記頂面の周縁領域とを少なくとも覆うとともに、平面視して前記周縁領域の内側であってかつ前記光射出孔の周囲に該光射出孔を囲繞するように配置して、前記化合物半導体層の表面の一部を露出する通電窓を有する保護膜を形成する工程と、前記通電窓から露出された化合物半導体層の表面に直接接触すると共に、前記上面上に形成された保護膜の一部を少なくとも覆い、前記メサ型構造部の頂面上に光射出孔を有するように形成された連続膜である第1の電極膜を形成する工程と、を有することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
(19)前記第1及び第2のウェットエッチングを、リン酸/過酸化水素水混合液、アンモニア/過酸化水素水混合液、ブロムメタノール混合液、ヨウ化カリウム/アンモニアの群から選択される少なくとも1種以上を用いて行うことを特徴とする(17)又は(18)のいずれかに記載の発光ダイオードの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発光ダイオードによれば、基板上に反射層と活性層を順に含む化合物半導体層とを備え、光射出孔から光を外部に射出すると共に、保護膜が周縁領域の内側であってかつ光射出孔の周囲に配置して、化合物半導体層の表面の一部を露出する通電窓を有し、第1の電極膜は、通電窓から露出された化合物半導体層の表面に直接接触すると共に、上面上に形成された保護膜の一部を少なくとも覆い、メサ型構造部の頂面上に光射出を有するように形成された連続膜であり、基板の反射層とは反対側に、平面視して光射出孔に重なる範囲内に第2の電極膜を備えた構成を採用したので、第1の電極膜のうち通電窓を埋めた部分と光射出孔に重なる範囲内に形成された第2の電極膜との間に電流が集中することにより、活性層のうち光射出孔の直下の部分で発光する光の量がその直下以外の部分で発光する光の量に比べて多くなり、その結果、光射出孔に向かう光の割合が高くなり、光取り出し効率の向上が図られている。
本発明の発光ダイオードによれば、上面及び側面を有する支持構造部と、該支持構造部上に配置し、傾斜側面及び頂面を有するメサ型構造部とからなる構成を採用したので、高い光出力が得られると共に射出させた光を光学部品等に効率良く取り込むことが可能である。
本発明の発光ダイオードによれば、メサ型構造部の傾斜側面はウェットエッチングによって形成されてなると共に頂面に向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなる構成を採用したので、垂直側面の場合に比べて側面に保護膜及びその上の電極膜を形成しやすいために均一な膜厚で連続な膜が形成されるため、不連続な膜に起因したリークや通電不良がなく、安定で高輝度の発光が担保されている。かかる効果は、ウェットエッチングによって形成されてなる傾斜側面を有するメサ型構造部を備えていれば奏する効果であり、発光ダイオードの内部の積層構造や基板の構成によらずに得られる効果である。
【0014】
本発明の発光ダイオードによれば、支持構造部は少なくとも反射層の一部を含むものであって、その側面は、ウェットエッチングによって形成され、上面から基板側に少なくとも反射層を越える位置まで延在する傾斜部を含み、該傾斜部を含む水平方向の断面積が上面に向かって連続的に小さく形成されてなる構成において、保護膜は、上面の少なくとも一部と、側面のうち少なくとも傾斜部と、傾斜側面と、頂面の周縁領域とを覆う構成を採用したので、支持構造部の反射層の側面は保護膜で被覆されており、反射層の側面が大気や水分と接触して劣化することが防止され、高信頼性及び長寿命化が図られている。かかる効果は、ウェットエッチングによって形成されてなる傾斜側面を有するメサ型構造部を備えていれば奏する効果であり、発光ダイオードの内部の積層構造や基板の構成によらずに得られる効果である。
【0015】
本発明の発光ダイオードによれば、反射層がDBR反射層である構成を採用することにより、発光スペクトル線幅が狭い発光が可能となる。また、さらに、活性層の基板と反対側に上部DBR反射層を備える構成を採用することにより、発光スペクトル線幅が狭く、出射光の指向性が高く、高速応答が可能となる。
【0016】
本発明の発光ダイオードによれば、傾斜部が二以上の傾斜部分からなり、各傾斜部分を含む水平方向の断面積はそれぞれ上面に向かって連続的に小さく、上面に近い傾斜部分を含む水平方向の断面積
の方が上面に遠い傾斜部分を含む水平方向の断面積よりも小さい構成を採用することにより、垂直側面の場合に比べて側面に保護膜及びその上の電極膜を形成しやすいために均一な膜厚で連続な膜が形成されるため、不連続な膜に起因したリークや通電不良がなく、安定で高輝度の発光が担保されている。
【0017】
本発明の発光ダイオードによれば、第1の電極膜及び/又は保護膜上に光漏れ防止膜を備えた構成を採用することにより、活性層で発光した光が第1の電極膜及び/又は保護膜を透過して素子外に漏れることを防止できる。
【0018】
本発明の発光ダイオードによれば、化合物半導体層が第1の電極膜に接触するコンタクト層を有する構成を採用することにより、オーミック電極の接触抵抗を下げて低電圧駆動が可能となる。
【0019】
本発明の発光ダイオードによれば、メサ型構造部は活性層のすべてと、反射層の一部または全部を含む構成を採用することにより、発光は全て、メサ型構造部内で生ずることになり、光取り出し効率が向上する。
【0020】
本発明の発光ダイオードによれば、メサ型構造部を平面視して矩形である構成を採用することにより、製造時のウェットエッチングにおける異方性の影響によりエッチング深さによりメサ形状が変化することが抑制され、メサ部面積の制御が容易なので、高精度の寸法形状が得られている。
【0021】
本発明の発光ダイオードによれば、メサ型構造部の各傾斜側面が基板のオリエンテーションフラットに対してオフセットして形成されている構成を採用することにより、矩形メサ型構造部を構成する4辺に対し基板方位による異方性の影響が緩和されているため、均等なメサ形状・勾配が得られている。
【0022】
本発明の発光ダイオードによれば、メサ型構造部の高さが3〜7μmであって、平面視した傾斜側面の幅が0.5〜7μmである構成を採用することにより、垂直側面の場合に比べて側面に保護膜及びその上の電極膜を形成しやすいために均一な膜厚で連続な膜が形成されるため、不連続な膜に起因したリークや通電不良がなく、安定で高輝度の発光が担保されている。
【0023】
本発明の発光ダイオードによれば、光射出孔が平面視して円形又は楕円である構成を採用することにより、矩形等の角を持つ構造に比べ均一なコンタクト領域を形成しやすく、角部での電流集中等の発生を抑制できる。また、受光側でのファイバー等への結合に適している。
【0024】
本発明の発光ダイオードによれば、光射出孔の径が50〜150μmである構成を採用することにより、50μm未満ではメサ型構造部での電流密度が高くなり、低電流で出力が飽和してしまう一方、150μmを超えるとメサ型構造部全体への電流拡散が困難であるため、やはり出力は飽和するという問題が回避されている。
【0025】
本発明の発光ダイオードによれば、第1の電極膜の上面上の部分にボンディングワイヤを有する構成を採用することにより、十分な荷重(及び超音波)をかけられる第1の電極膜の上面にワイヤボンディングがなされているので、接合強度の強いワイヤボンディングが実現されている。
【0026】
本発明の発光ダイオードによれば、活性層に含まれる発光層が多重量子井戸からなる構成を採用することにより、井戸層内に十分な注入キャリアが閉じ込められることにより、井戸層内のキャリア密度が高くなり、その結果、発光再結合確率が増大して、応答速度が高い。
【0027】
本発明の発光ダイオードの製造方法によれば、基板上に反射層と活性層を順に含む化合物半導体層とを備え、光射出孔から光を外部に射出する発光ダイオードの製造方法であって、基板上に、反射層と活性層を含む化合物半導体層とを形成する工程と、基板の反射層とは反対側に、平面視して形成予定の前記光射出孔に重なる範囲内に第2の電極膜を形成する工程を有する構成を採用したので、第1の電極膜のうち通電窓を埋めた部分と貫通電極との間に電流が集中することにより、活性層のうち光射出孔の直下の部分で発光する光の量がその直下以外の部分で発光する光の量に比べて多くなり、その結果、光射出孔に向かう光の割合が高くなり、光取り出し効率が向上した発光ダイオードを製造することができる。
本発明の発光ダイオードの製造方法によれば、化合物半導体層をウェットエッチングして、頂面に向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなるメサ型構造部と該メサ型構造部の周囲に配置する上面とを形成する工程と、メサ型構造部の周縁領域の内側であってかつ光射出孔の周囲に配置して、化合物半導体層の表面の一部を露出する通電窓を有するように保護膜を形成する工程と、通電窓から露出された化合物半導体層の表面に直接接触すると共に、上面上に形成された保護膜の一部を少なくとも覆い、メサ型構造部の頂面上に光射出孔を有するように形成された連続膜である第1の電極膜を形成する工程と、を有する構成を採用したので、高い光出力を有すると共に射出させた光を光学部品等に効率良く取り込むことが可能であると共に、垂直側面の場合に比べて傾斜斜面に保護膜及びその上の電極膜を形成しやすいために均一な膜厚で連続な膜が形成されるため、不連続な膜に起因したリークや通電不良がなく、安定で高輝度の発光が担保された発光ダイオードを製造することができる。従来の異方性のドライエッチングによりピラー構造を形成すると側面が垂直に形成されるが、ウェットエッチングによりメサ型構造部を形成することにより、側面を緩やかな傾斜の側面を形成することができる。また、ウェットエッチングによりメサ型構造部を形成することにより、従来のドライエッチングによってピラー構造を形成する場合に比べて形成時間が短縮することができる。
【0028】
本発明の発光ダイオードの製造方法によれば、個片化用切断ラインに沿って第2のウェットエッチングを行って、支持構造部の側面の傾斜部を形成する工程と、傾斜部を覆う保護膜を形成する工程と、を有する構成を採用したので、側面が大気や水分と接触して劣化してしまうことが防止された発光ダイオードを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を適用した発光ダイオード及びその製造方法について、図を用いてその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。例えば、一の実施形態で示した構成を他の実施形態に適用することもできる。
なお、本発明の効果を損ねない範囲で以下に記載していない層を備えてもよい。
【0031】
〔発光ダイオード(第1の実施形態)〕
図1に、本発明を適用した第1の実施形態の発光ダイオードの一例である共振器型発光ダイオードの断面模式図である。
図2は、
図1で示した発光ダイオードを含むウェハ上に形成された発光ダイオードの斜視図である。
【0032】
図1に示す発光ダイオード100は、基板1上に反射層2と活性層3を順に含む化合物半導体層とを備え、光射出孔9bから光を外部に射出する発光ダイオードであって、上面6a及び側面6bを有する支持構造部6と、該支持構造部6上に配置し、傾斜側面7a及び頂面7bを有するメサ型構造部7とからなり、メサ型構造部7は少なくとも活性層3の一部を含むものであって、傾斜側面7aはウェットエッチングによって形成されてなると共に頂面7bに向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなり、支持構造部6及びメサ型構造部7はそれぞれ、少なくとも一部は保護膜8、第1の電極膜9によって順に覆われてなり、保護膜8は、上面6aの少なくとも一部と、メサ型構造部7の傾斜側面7aと、メサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baとを覆うとともに、平面視して周縁領域7baの内側であってかつ光射出孔9bの周囲に配置して、化合物半導体層(コンタクト層5)の表面の一部を露出する通電窓8bを有し、第1の電極膜9は、通電窓8bから露出された化合物半導体層(コンタクト層5)の表面に直接接触すると共に、上面6a上に形成された保護膜8の一部を少なくとも覆い、メサ型構造部7の頂面7b上に光射出孔9bを有するように形成された連続膜であり、基板1の反射層2とは反対側に、平面視して光射出孔9bに重なる範囲内に第2の電極膜10を備えている。
また、本実施形態では、反射層2はDBR反射層(下部DBR反射層)であり、活性層3の基板1と反対側に上部DBR反射層4に備え、化合物半導体層は第1の電極膜9に接触するコンタクト層5を有するものである。
また、メサ型構造部7は、平面視して矩形であり、第1の電極膜9の光射出孔9bは平面視して円形である。メサ型構造部7の平面視は矩形に限定されず、また、光射出孔9bの平面視も円形に限定されない。
メサ型構造部7の第1の電極膜上に、側面からの光の漏れを防止するための光漏れ防止膜16を備えている。
【0033】
本発明の発光ダイオードは、
図2に示すように、ウェハ状の基板上に多数の発光ダイオード100を作製した後、各発光ダイオードごとにストリート(切断予定ライン)21(点線22はストリート21の長手方向の中心線)に沿って切断することにより製造することができる。すなわち、点線22に沿ってストリート21の部分にレーザーやブレード等を当てることにより、各発光ダイオードごとに切断することができる。
【0034】
メサ型構造部7は、支持構造部6の上面6aに対して上方に突出した構造であり、傾斜側面7aと頂面7b
とを有する。
図1で示した例の場合、傾斜側面7aは、活性層3の全層、上部DBR反射層4及びコンタクト層5
の傾斜断面からなり、傾斜側面7aの上に、保護膜8、第1の電極膜(おもて面電極層)9、光漏れ防止膜16が順に設けられている。頂面7bは、
コンタクト層5の表面からなり、頂面7bの上に、保護膜8(符号8ba及び符号8dの部分)と、第1の電極膜9(符号9ba、9bb及び9dの部分)とが設けられている。
【0035】
また、本発明のメサ型構造部7の内部は、コンタクト層5と、上部DBR反射層4と、活性層3の少なくとも一部とを含む。
図1で示した例の場合、メサ型構造部7の内部は、コンタクト層5と、上部DBR反射層4と、活性層3の全層とを含む。メサ型構造部7の内部には、活性層3の一部だけを含んでもよいが、活性層3の全層がメサ型構造部7の内部に含まれるのが好ましい。活性層3で発光した光を全てメサ型構造部内で生ずることになり、光取り出し効率が向上するからである。また、メサ型構造部7の内部に下部DBR反射層2の一部を含んでもよい。
【0036】
また、メサ型構造部7は、その傾斜側面7aはウェットエッチングによって形成されてなると共に、基板1側から頂面に向かって水平方向の断面積が連続的に小さく形成されてなる。傾斜側面7aはウェットエッチングによって形成されたものなので、下に凸状に形成されてなる。メサ型構造部7の高さhは3〜7μmであって、平面視した傾斜側面7aの幅wが0.5〜7μmであるのが好ましい。この場合、メサ型構造部7の側面が垂直若しくは急傾斜でなく、緩やかな傾斜であるために、保護膜や電極用金属膜を一様な膜厚で形成するのが容易となり、不連続な膜になるおそれがなく、そのため、不連続な膜に起因したリークや通電不良がなく、安定で高輝度の発光が担保されるからである。
また、高さが7μmを超えるまでウェットエッチングを行うと、傾斜側面がオーバーハング形状(逆テーパ状)になりやすくなるので好ましくない。オーバーハング形状(逆テーパ状)では保護膜や電極膜を均一な膜厚で不連続箇所なく形成することが垂直側面の場合よりもさらに困難になる。
なお、本明細書において、高さhとは、上面6a上の保護膜を介して形成された電極膜9(符号9cの部分)の表面から、保護膜8の符号8baの部分を覆う電極膜9(符号9baの部分)の表面までの垂直方向の距離(
図1参照)をいう。また、幅wとは、保護膜8の符号8baの部分を覆う電極膜9(符号9baの部分)のエッジからそのエッジにつながった傾斜側面の電極膜9(符号9aの部分)の最下のエッジの水平方向の距離(
図1参照)をいう。
【0037】
図3は、メサ型構造部7近傍の断面の電子顕微鏡写真である。
図3で示した例の層構成は、コンタクト層がAl0.3Ga0.7Asからなり、層厚が3μmである点以外は、後述する実施例と同様な構成である。
【0038】
本発明のメサ型構造部はウェットエッチングによって形成されてなるので、その頂面側から基板側へ行くほど(図で下方に行くほど)、メサ型構造部の水平断面積(又は、幅もしくは径)の増大率が大きくなるように形成されている。この形状によってメサ型構造部がドライエッチングではなく、ウェットエッチングによって形成されたものであることを判別することができる。
図3で示した例では、高さhは7μmであり、幅wは3.5〜4.5μmであった。
【0039】
メサ型構造部7は、平面視して矩形であるのが好ましい。製造時のウェットエッチングにおける異方性の影響でエッチング深さによりメサ形状が変化することが抑制され、メサ型構造部の各面の面積の制御が容易なので、高精度の寸法形状が得られるからである。
【0040】
発光ダイオードにおけるメサ型構造部7の位置は、
図1及び
図2に示すように、素子の小型化のためには発光ダイオードの長軸方向の一方に片寄っているのが好ましい。支持構造部6の上面6aはボンディングワイヤ(図示せず)を取り付けるのに要する広さが必要であるため、狭くするのには限界があり、メサ型構造部7をもう一方に寄せることにより、支持構造部6の上面6aの範囲を最小化でき、素子の小型化を図ることができるからである。
【0041】
支持構造部6は上面6aと側面6bを備える。支持構造部6の上面6aは、メサ型構造部7の周囲に配置する部分である。本発明では、十分な荷重(及び超音波)をかけることが可能な第1の電極膜の上面に位置する部分にワイヤボンディングがなされるので、接合強度の強いワイヤボンディングが実現できる。
【0042】
支持構造部6の上面6aの上には、保護膜8、第1の電極膜(おもて面電極層)9が順に形成されており、第1の電極膜9の上にはボンディングワイヤ(図示せず)が取り付けられる。上面6aの保護膜8の直下に配置する材料は、メサ型構造部7の内部の構成により決まる。
図1で示した例の場合、メサ型構造部7の内部はコンタクト層5と、上部DBR反射層4と、活性層3の全層とを含み、活性層3の直下の層である下部DBR反射層の最上面が支持構造部6の上面6aの保護膜8の直下に配置するので、上面6aの保護膜8の直下に配置する材料は下部DBR反射層の最上面の材料である。
【0043】
基板1の裏面1Aには、平面視して光射出孔9bに重なる範囲内に、第2の電極膜(裏面電極)10を備えている。
第1の電極膜のうち通電窓を埋めた部分(「コンタクト部分9bb」)と、平面視して、通電窓8bの内側に配置する光射出孔9bに重なる範囲内に形成された第2の電極膜10との間に電流が集中することにより、活性層3のうち光射出孔9bの直下の部分で発光する光の量がその直下以外の部分で発光する光の量に比べて多くなり、その結果、光射出孔に向かう光の割合が高くなり、光取り出し効率が向上する。
【0044】
第2の電極膜10の形状に特に制限はなく、その材料としては公知の電極材料を用いることができ、例えば、Au、AuBe合金、AuGe合金を用いることができる。
【0045】
保護膜8は、メサ型構造部7の傾斜側面7aを覆う部分8aと、支持構造部6の上面6aの少なくとも一部を覆う部分8c(メサ型構造部7を挟んで反対側の上面を覆う部分8ccも含む)と、メサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baを覆う部分8baと、前記頂面7bの中央部分を覆う部分8dとからなり、平面視して周縁領域7baの内側にコンタクト層5の表面の一部を露出する通電窓8bを有する。
本実施形態の通電窓8bは、メサ型構造部7の頂面7bにおいてコンタクト層5の表面のうち、周縁領域7baの下に位置する部分8baと中央部分を覆う部分8dの下に位置する部分との間の径の異なる2つの同心円間の領域を露出する。
通電窓8bの形状に制限はない。環状でなくてもよく、連続するものでなく離散する複数の領域からなってもよい。
【0046】
保護膜8の第1の機能は発光が生じる領域及び光を取り出す範囲を狭くするために、おもて面電極層9の下層に配置して、おもて面電極層9のうち、化合物半導体層20に接触して化合物半導体層20との間の電流の流入もしくは流出を頂面7bの通電窓8bの部分に制限することである。すなわち、保護膜8を形成した後、保護膜8を含む全面におもて面電極層を形成し、その後、おもて面電極層をパターニングするが、保護膜8を形成した部分についてはおもて面電極層を除去しなくても第2の電極膜(裏面電極)10との間に電流が流れることはない。第2の電極膜(裏面電極)10との間の電流を流したいところに保護膜8の通電窓8bを形成する。
従って、第1の機能を持たせるように、メサ型構造部7の頂面7bの一部に通電窓8bを形成する構成であれば、通電窓8bの形状や位置は
図1のような形状や位置に限定されない。
【0047】
保護膜8の第2の機能は、第1の機能は必須の機能であるのに対して必須の機能ではないが、
図1に示す保護膜8の場合、第2の機能として、平面視しておもて面電極層9の光射出孔9a内のコンタクト層5の表面に配置して、保護膜8越しに光を取り出すことができ、かつ、光を取り出すコンタクト層5の表面を保護することである。
なお、後述する第2の実施形態では、光射出孔の下に保護膜を有さず、保護膜を介さずに光射出孔9bから直接、光を取り出す構成であり、第2の機能を有さない。
【0048】
保護膜8の材料としては絶縁層として公知のものを用いることができるが、安定した絶縁膜の形成が容易であることから、シリコン酸化膜が好ましい。
なお、本実施形態では、この保護膜8(8d)越しに光を取り出すので、保護膜8は透光性を有する必要がある。
【0049】
また、保護膜8の膜厚は、0.3〜1μmが好ましい。0.3μm未満では絶縁が十分ではないからであり、1μmを超えると形成するのに時間がかかり過ぎるからである。
【0050】
第1の電極膜(おもて面電極層)9は、保護膜8のうち傾斜側面7aを覆う部分8aを覆う部分9aと、保護膜8のうち上面6aの少なくとも一部を覆う部分8cを覆う部分9cと、保護膜8のうちメサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baを覆う部分8baの部分を覆う部分9baと、保護膜8の通電窓8bを埋め込む部分9bb(以下適宜、「コンタクト部分」という)と、メサ型構造部7の頂面7bにおいて保護膜8のうち頂面7bの中央部分を覆う部分8dの外周縁部を覆う部分9dとからなる。
【0051】
第1の電極膜(おもて面電極層)9の第1の機能は第2の電極膜(裏面電極)10との間に電流を流すことであり、第2の機能は発光した光が射出される範囲を制限することである。
図1で示した例の場合、第1の機能はコンタクト部分9bbが担い、第2の機能は中央部分を覆う部分8dの外周縁部を覆う部分9dが担っている。
第2の機能については非透光性の保護膜を用いることにより、その保護膜に担わせる構成でもよい。
【0052】
第1の電極膜9は支持構造部6の上面6aの保護膜8全体を覆っていてもよいし、その一部を覆っても構わないが、ボンディングワイヤが適切に取り付けるためにはできるだけ広範囲を覆っているのが好ましい。コスト低減の観点から、
図2に示すように、各発光ダイオードごとに切断する際のストリート21には第1の電極膜を覆わないのが好ましい。
【0053】
第1の電極膜9はメサ型構造部7の頂面7bにおいてコンタクト部分9bbでしかコンタクト層5に接触していないので、第1の電極膜9と第2の電極膜(裏面電極)10とは、コンタクト部9bbと第2の電極膜(裏面電極)10との間でしか電流が流れない。そのため、発光層13において平面視して光射出孔9bと重なる範囲に電流が集中し、その範囲に発光が集中するため、効率的に光を取り出すことができる。
【0054】
第1の電極膜9の材料としては公知の電極材料を用いることができるが、良好なオーミックコンタクトが得られることから、AuBe/Auが最も好ましい。
また、第1の電極膜9の膜厚は、0.5〜2.0μmが好ましい。0.5μm未満では均一かつ良好なオーミックコンタクトを得ることが困難な上、ボンディング時の強度、厚みが不十分だからであり、2.0μmを超えるとコストがかかり過ぎるからである。
【0055】
図1に示すように、活性層で発光した光がメサ型構造部7の側面から素子外に漏れることを防止する光漏れ防止膜16を備えてもよい。
【0056】
光漏れ防止膜16の材料としては公知の反射材料を用いることができる。第1の電極膜9と同じAuBe/Auでもよい。
【0057】
本実施形態においては、光射出孔9bの下に保護膜8d(8)が形成されており、メサ型構造部7の頂面において保護膜8d(8)を介して光射出孔9bから光を取り出す構成である。
【0058】
光射出孔9bの形状は、平面視して円形又は楕円であるのが好ましい。矩形等の角を持つ構造に比べ均一なコンタクト領域を形成しやすく、角部での電流集中等の発生を抑制できる。また、受光側でのファイバー等への結合に適しているからである。
【0059】
光射出孔9bの径は、50〜150μmであるのが好ましい。50μm未満では射出部での電流密度が高くなり、低電流で出力が飽和してしまう一方、150μmを超えると射出部全体への電流拡散が困難であるため、注入電流に対する発光効率が低下するからである。
【0060】
基板1としては、例えば、GaAs基板を用いることができる。
【0061】
GaAs基板を用いる場合は、公知の製法で作製された市販品の単結晶基板を使用できる。GaAs基板のエピタキシャル成長させる表面は、平滑であることが望ましい。GaAs基板の表面の面方位は、エピ成長しやすく、量産されている(100)面および(100)から、±20°以内にオフした基板が、品質の安定性の面からのぞましい。さらに、GaAs基板の面方位の範囲が、(100)方向から(0−1−1)方向に15°オフ±5°であることがより好ましい。
【0062】
GaAs基板の転位密度は、下部DBR反射層2、活性層3及び上部DBR反射層4の結晶性を良くするために低い方が望ましい。具体的には、例えば、10,000個cm
−2以下、望ましくは、1,000個cm
−2以下であることが好適である。
【0063】
GaAs基板は、n型であってもp型であってもよい。GaAs基板のキャリア濃度は、所望の電気伝導度と素子構造から、適宜選択することができる。例えば、GaAs基板がSiドープのn型である場合には、キャリア濃度が1×10
17〜5×10
18cm
−3の範囲であることが好ましい。これに対して、GaAs基板がZnをドープしたp型の場合には、キャリア濃度2×10
18〜5×10
19cm
−3の範囲であることが好ましい。
【0064】
GaAs基板の厚さは、基板のサイズに応じて適切な範囲がある。GaAs基板の厚さが適切な範囲よりも薄いと、化合物半導体層の製造プロセス中に割れてしまうおそれがある。一方、GaAs基板の厚さが適切な範囲よりも厚いと材料コストが増加することになる。このため、GaAs基板の基板サイズが大きい場合、例えば、直径75mmの場合には、ハンドリング時の割れを防止するために250〜500μmの厚さが望ましい。同様に、直径50mmの場合は、200〜400μmの厚さが望ましく、直径100mmの場合は、350〜600μmの厚さが望ましい。
【0065】
このように、GaAs基板の基板サイズに応じて基板の厚さを厚くすることにより、活性層3に起因する化合物半導体層の反りを低減することができる。これにより、エピタキシャル成長中の温度分布が均一となることため、活性層3の面内の波長分布を小さくすることができる。なお、GaAs基板の形状は、特に円形に限定されず、矩形等であっても問題ない。
【0066】
反射層(下部DBR反射層2)及び化合物半導体層(活性層3、上部DBR反射層4、コンタクト層5)の構造には、公知の機能層を適時加えることができる。例えば、素子駆動電流を発光部の全般に平面的に拡散させるための電流拡散層、逆に素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層や電流狭窄層など公知の層構造を設けることができる。
【0067】
基板1上に形成される反射層(下部DBR反射層)及び化合物半導体層は、下部DBR反射層2、活性層3及び上部DBR反射層4が順次積層されて構成されている。
【0068】
DBR(Distributed Bragg Reflector)層は、λ/(4n)の膜厚で(λ:反射すべき光の真空中での波長、n:層材料の屈折率)、屈折率が異なる2種類の層を交互に積層した多層膜からなるものである。反射率は2種類の屈折率の差が大きいと、比較的少ない層数の多層膜で高反射率が得られる。通常の反射膜のようにある面で反射されるのでなく、多層膜の全体として光の干渉現象に基づき反射が起きることが特徴である。
DBR反射層の材料は発光波長に対して透明であることが好ましく、又、DBR反射層を構成する2種類の材料の屈折率の差が大きくなる組み合わせとなるよう選択されるのが好ましい。
【0069】
下部DBR反射層2は、屈折率の異なる2種類の層が交互に10〜50対積層されてなるのが好ましい。10対以下である場合は反射率が低すぎるために出力の増大に寄与せず、50対以上にしてもさらなる反射率の増大は小さいからである。
下部DBR反射層2を構成する屈折率の異なる2種類の層は、組成の異なる2種類の(Al
XhGa
1−Xh)
Y3In
1−Y3P(0<Xh≦1、Y3=0.5)、(Al
XlGa
1−Xl)
Y3In
1−Y3P;0≦Xl<1、Y3=0.5)の対であり、両者のAlの組成差ΔX=xh−xlが0.5より大きいか又は等しくなる組み合わせか、又は、GaInPとAlInPの組み合わせか、又は、組成の異なる2種類のAl
xlGa
1−xlAs(0.1≦xl≦1)、Al
xhGa
1−xhAs(0.1≦xh≦1)の対であり、両者の組成差ΔX=xh−xlが0.5より大きいか等しくなる組み合わせかのいずれかから選択されるのが効率よく高い反射率が得られることから望ましい。
組成の異なるAlGaInPの組み合わせは、結晶欠陥を生じやすいAsを含まないので好ましく、GaInPとAlInPはその中で屈折率差を最も大きくとれるので、反射層の数を少なくすることができ、組成の切り替えも単純であるので好ましい。また、AlGaAsは、大きな屈折率差をとりやすいという利点がある。
【0070】
上部DBR反射層4も、下部DBR反射層2と同様の層構造を用いることができるが、上部DBR反射層4を透過させて光を射出する必要があるので、下部DBR反射層2よりも反射率が低くなるように構成する。具体的には、下部DBR反射層2と同じ材料からなる場合、下部DBR反射層2よりも層数が少なくなるように、屈折率の異なる2種類の層が交互に3〜10対積層されてなるのが好ましい。2対以下である場合は反射率が低すぎるために出力の増大に寄与せず、11対以上にすると上部DBR反射層4を透過する光量が低下しすぎるからである。
【0071】
本発明の発光ダイオードは、活性層3を低反射率の上部DBR反射層4と高反射率の下部DBR反射層2で挟み、活性層3で発光した光が上部DBR反射層4と下部DBR反射層2と間で共振して定在波の腹が発光層に位置させる構成をとることにより、レーザ発振させないで、従来の発光ダイオードよりも指向性が高く、高効率の発光ダイオードとなっている。
【0072】
図4に示すように、活性層3は、下部クラッド層11、下部ガイド層12、発光層13、上部ガイド層14、上部クラッド層15が順次積層されて構成されている。すなわち、活性層3は、放射再結合をもたらすキャリア(担体;carrier)及び発光を発光層13に「閉じ込める」ために、発光層13の下側及び上側に対峙して配置した下部クラッド層11、下部ガイド層12、及び上部ガイド層14、上部クラッド層15を含む、所謂、ダブルヘテロ(英略称:DH)構造とすることが高強度の発光を得る上で好ましい。
【0073】
図4に示すように、発光層13は、発光ダイオード(LED)の発光波長を制御するため、量子井戸構造を構成することができる。すなわち、発光層13は、バリア層(障壁層ともいう)18を両端に有する、井戸層17とバリア層18との多層構造(積層構造)とすることができる。
【0074】
発光層13の層厚は、0.02〜2μmの範囲であることが好ましい。発光層13の伝導型は特に限定されるものではなく、アンドープ、p型及びn型のいずれも選択することができる。発光効率を高めるには、結晶性が良好なアンドープ又は3×10
17cm
−3未満のキャリア濃度とすることが望ましい。
【0075】
井戸層17の材料としては公知の井戸層材料を用いることができる。例えば、AlGaAs、InGaAs、AlGaInPを用いることができる。
【0076】
井戸層17の層厚は、3〜30nmの範囲が好適である。より好ましくは、3〜10nmの範囲である。
【0077】
バリア層18の材料としては、井戸層17の材料に対して適した材料を選択するのが好ましい。バリア層18での吸収を防止して発光効率を高めるため、井戸層17よりもバンドギャップが大きくなる組成とするのが好ましい。
【0078】
例えば、井戸層17の材料としてAlGaAs又はInGaAsを用いた場合にはバリア層18の材料としてAlGaAsやAlGaInPが好ましい。バリア層18の材料としてAlGaInPを用いた場合、欠陥を作りやすいAsを含まないので結晶性が高く、高出力に寄与する。
井戸層17の材料として(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)を用いた場合、バリア層18の材料としてよりAl組成の高い(Al
X4Ga
1−X4)
Y1In
1−Y1P(0≦X4≦1,0<Y1≦1,X1<X4)または井戸層(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)よりバンドギャップエネルギーが大きくなるAlGaAsを用いることができる。
【0079】
バリア層18の層厚は、井戸層17の層厚と等しいか又は井戸層17の層厚より厚いのが好ましい。トンネル効果が生じる層厚範囲で十分に厚くすることにより、トンネル効果による井戸層間への広がりが抑制されてキャリアの閉じ込め効果が増大し、電子と正孔の発光再結合確率が大きくなり、発光出力の向上を図ることができる。
【0080】
井戸層17とバリア層18との多層構造において、井戸層17とバリア層18とを交互に積層する対の数は特に限定されるものではないが、2対以上40対以下であることが好ましい。すなわち、活性層11には、井戸層17が2〜40層含まれていることが好ましい。ここで、活性層11の発光効率が好適な範囲としては、井戸層17が5層以上であることが好ましい。一方、井戸層17及びバリア層18は、キャリア濃度が低いため、多くの対にすると順方向電圧(V
F)が増大してしまう。このため、40対以下であることが好ましく、20対以下であることがより好ましい。
【0081】
下部ガイド層12及び上部ガイド層14は、
図4に示すように、発光層13の下面及び上面にそれぞれ設けられている。具体的には、発光層13の下面に下部ガイド層12が設けられ、発光層13の上面に上部ガイド層14が設けられている。
【0082】
下部ガイド層12および上部ガイド層14の材料としては、公知の化合物半導体材料を用いることができ、発光層13の材料に対して適した材料を選択するのが好ましい。例えば、AlGaAs、AlGaInPを用いることができる。
【0083】
例えば、井戸層17の材料としてAlGaAs又はInGaAsを用い、バリア層18の材料としてAlGaAs又はAlGaInPを用いた場合、下部ガイド層12および上部ガイド層14の材料としてはAlGaAs又はAlGaInPが好ましい。下部ガイド層12および上部ガイド層14の材料としてAlGaInPを用いた場合、欠陥を作りやすいAsを含まないので結晶性が高く、高出力に寄与する。
井戸層17の材料として(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)を用いた場合、ガイド層14の材料としてよりAl組成の高い(Al
X4Ga
1−X4)
Y1In
1−Y1P(0≦X4≦1,0<Y1≦1,X1<X4)または井戸層(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)よりバンドギャップエネルギーが大きくなるAlGaAsを用いることができる。
【0084】
下部ガイド層12及び上部ガイド層14は、夫々、下部クラッド層11及び上部クラッド層15と活性層11との欠陥の伝搬を低減するために設けられている。このため、下部ガイド層12および上部ガイド層14の層厚は10nm以上が好ましく、20nm〜100nmがより好ましい。
【0085】
下部ガイド層12及び上部ガイド層14の伝導型は特に限定されるものではなく、アンドープ、p型及びn型のいずれも選択することができる。発光効率を高めるには、結晶性が良好なアンドープ又は3×10
17cm
−3未満のキャリア濃度とすることが望ましい。
【0086】
下部クラッド層11及び上部クラッド層15は、
図4に示すように、下部ガイド層12の下面及び上部ガイド層14上面にそれぞれ設けられている。
【0087】
下部クラッド層11及び上部クラッド層15の材料としては、公知の化合物半導体材料を用いることができ、発光層13の材料に対して適した材料を選択するのが好ましい。例えば、AlGaAs、AlGaInPを用いることができる。
【0088】
例えば、井戸層17の材料としてAlGaAs又はInGaAsを用い、バリア層18の材料としてAlGaAs又はAlGaInPを用いた場合、下部クラッド層11及び上部クラッド層15の材料としてはAlGaAs又はAlGaInPが好ましい。下部クラッド層11及び上部クラッド層15の材料としてAlGaInPを用いた場合、欠陥を作りやすいAsを含まないので結晶性が高く、高出力に寄与する。
井戸層17の材料として(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)を用いた場合、クラッド層15の材料としてよりAl組成の高い(Al
X4Ga
1−X4)
Y1In
1−Y1P(0≦X4≦1,0<Y1≦1,X1<X4)または井戸層(Al
X1Ga
1−X1)
Y1In
1−Y1P(0≦X1≦1,0<Y1≦1)よりバンドギャップエネルギーが大きくなるAlGaAsを用いることができる。
【0089】
下部クラッド層11と上部クラッド層15とは、極性が異なるように構成されている。
また、下部クラッド層11及び上部クラッド層15のキャリア濃度及び厚さは、公知の好適な範囲を用いることができ、活性層11の発光効率が高まるように条件を最適化することが好ましい。なお、下部および上部クラッド層は設けなくてもよい。
また、下部クラッド層11及び上部クラッド層15の組成を制御することによって、化合物半導体層20の反りを低減させることができる。
【0090】
コンタクト層5は、第1の電極膜9との接触抵抗を低下させるために設けられている。コンタクト層5の材料は、発光層13よりバンドギャップの大きい材料であることが好ましい。また、コンタクト層5のキャリア濃度の下限値は、電極との接触抵抗を低下させるために5×10
17cm
−3以上であることが好ましく、1×10
18cm
−3以上がより好ましい。キャリア濃度の上限値は、結晶性の低下が起こりやすくなる2×10
19cm
−3以下が望ましい。コンタクト層5の厚さは、0.05μm以上が好ましい。コンタクト層5の厚さの上限値は特に限定されないが、エピタキシャル成長に係るコストを適正範囲にするため、10μm以下とすることが望ましい。
【0091】
〔発光ダイオード(第2の実施形態)〕
図5に、本発明を適用した第2の実施形態の発光ダイオードの一例である共振器型発光ダイオードの例を示した断面模式図を示す。
第1の実施形態では、支持構造部の側面は垂直であったが、第2の実施形態は、その側面がウェットエッチングによって形成され、支持構造部の上面から基板側に少なくとも反射層を越える位置まで延在する傾斜部を含む構成である。
以下では、主に第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0092】
図5に示す発光ダイオード200は、上面6a及び側面6bを有する支持構造部6と、該支持構造部6上に配置し、傾斜側面7a及び頂面7bを有するメサ型構造部7とからなり、支持構造部6は少なくとも反射層2の一部を含むものであって、その側面6bが、ウェットエッチングによって形成され、上面6aから基板1側に少なくとも反射層2を越える位置まで延在する傾斜部6baを含み、該傾斜部6baを含む水平方向の断面積が上面6aに向かって連続的に小さく形成されてなり、保護膜8は、第1の実施形態と同じ部分の他に、側面6bのうち少なくとも傾斜部6baを覆い、基板1の反射層2とは反対側に、平面視して光射出孔9bに重なる範囲内に第2の電極膜10を備えている。
本実施形態では、支持構造部6の側面6bは、傾斜部6ba(本実施形態では、反射層2の側面と基板1の側面とからなる)と、基板の側面の一部6bbとからなる。
本実施形態では、支持構造部6の側面6bの傾斜部6ba上に保護膜を介して光漏れ防止膜24を備えている。
【0093】
支持構造部6は、メサ型構造部7の下部に配置する構造であり、上面6a及び側面6bを外面として有する。その側面6bは、ウェットエッチングによって形成され、上面6aから基板1側に少なくとも反射層2を越える位置まで延在する傾斜部6baを含む。支持構造部6は、この傾斜部6baを含む水平方向の断面積は上面6a(上方)に向かって連続的に小さく形成されてなるものである。傾斜部6baを除く側面を含む水平方向の断面積は変わらない。
【0094】
傾斜部6baは、その高さが7μmを超えるまでウェットエッチングを行うと、オーバーハング形状(逆テーパ状)になりやすくなるので、7μm以下であることが好ましい。
【0095】
傾斜部6baは複数の傾斜部分からなってもよい。この場合、各傾斜部分を含む水平方向の断面積はそれぞれ上面(上方)に向かって連続的に小さく、上面に近い(上方側の)傾斜部分を含む水平方向の断面積ほど大きくなるように、各傾斜部分を形成する。特に、メサ型構造部を形成する際と同様に、傾斜部6baの高さが7μmを超える場合には一つの傾斜部分をウェットエッチングで形成すると、オーバーハング形状(逆テーパ状)になりやすくなるので、7μm以下の複数の傾斜部分で傾斜部6baを形成するのが好ましい。
また、ウェットエッチングによって傾斜部を深く(高く)形成すると、横方向にもエッチングが進むのでメサ型構造部が小さくなり発光面積が小さくなるという問題や、傾斜部において傾斜の角度が垂直に近い範囲が長くなるという問題や、エッチングの異方性の影響で平面視して縦と横のエッチング速度が異なるため一方向だけより深く形成されてしまうという問題もあるので、傾斜部を深く(高く)形成する場合には複数段の傾斜部分からなるのが好ましい。
【0096】
保護膜8は、上面6aの少なくとも一部を覆う部分8c(メサ型構造部7を挟んで反対側の上面を覆う部分8cc)も含む)と、側面6bのうち少なくとも傾斜部6baを覆う部分8fと、傾斜側面7aを覆う部分8aと、頂面7bの周縁領域7baを覆う部分8baとを有し、平面視して周縁領域7baの内側に化合物半導体層の表面の一部を露出する通電窓8bを有する。
本実施形態の通電窓8bは、メサ型構造部7の頂面7bにおいてコンタクト層5の表面のうち、周縁領域7baの下に位置する部分8baと中央部分を覆う部分8dの下に位置する部分との間の径の異なる2つの同心円間の領域を露出する。
保護膜8が側面6bのうち少なくとも傾斜部6baを覆う部分8fを備え、支持構造部の反射層の側面を被覆しているので、反射層の側面が大気や水分と接触して劣化することが防止され、高信頼性及び長寿命化が図られている。
【0097】
光漏れ防止膜24は、活性層で発光した光が支持構造部6の側面6bの傾斜部6ba上の保護膜8fを透過して素子外に漏れることを防止する。
図
5で示す光漏れ防止膜24は、傾斜部6ba上(保護膜8fを介して)及び上面6aの電極膜9c上の一部にのみ備えられているが、さらに、支持構造部6の上面6aの他の部分やメサ型構造部7上に形成されてもよい。
【0098】
光漏れ防止膜24の材料としては公知の反射材料を用いることができるが、第1の電極膜9と同時に形成可能であることから、AuBe/Auが好ましい。
【0099】
〔発光ダイオード(第3の実施形態)〕
図6に、本発明を適用した第3の実施形態の発光ダイオード一例である共振器型発光ダイオードの例を示した断面模式図を示す。
第1の実施形態では、光射出孔の下に保護膜が形成されており、メサ型構造部の頂面において保護膜を介して光射出孔から光を取り出す構成であったが、第3の実施形態は、光射出孔の下に保護膜を有さず、保護膜を介さずに光射出孔9bから直接、光を取り出す構成である。かかる構成を第2の実施形態に適用してもよい。
すなわち、第3の実施形態に係る共振器型発光ダイオード300では、保護膜28は、上面6aの少なくとも一部28cと、メサ型構造部7の傾斜側面7aと、メサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baとを覆うとともに、平面視して周縁領域7baの内側にコンタクト層5の表面を露出する通電窓28bを有し、電極膜29は、保護膜28を介して上面6aの少なくとも一部と、保護膜28を介してメサ型構造部7の傾斜側面7aと、保護膜28を介してメサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baとを覆い、さらに、メサ型構造部7の頂面において通電窓28bから露出するコンタクト層5の表面の一部だけを覆ってコンタクト層5の表面の他の部分5aを露出する光射出孔29bを有し、基板1の反射層2とは反対側に、平面視して光射出孔9bに重なる範囲内に第2の電極膜10を備えている。
【0100】
図6に示すように、第3の実施形態の保護膜28は、メサ型構造部7の傾斜側面7aを覆う部分28aと、上面6aの少なくとも一部を覆う部分28c(メサ型構造部7を挟んで反対側の上面を覆う部分28ccも含む)と、メサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baを覆う部分28baとからなり、平面視して周縁領域7baの内側にコンタクト層5の表面を露出する通電窓28bを有する。すなわち、通電窓28bはメサ型構造部7の頂面7bにおいてコンタクト層5の表面のうち、周縁領域7baの下に位置する部分以外を露出する。保護膜8の上に第1の電極膜(おもて面電極層)9を形成するが、この第1の電極膜9と第2の電極膜10との間において電流を流さない部分に保護膜8を形成している。
【0101】
また、
図6に示すように、第3の実施形態の第1の電極膜(おもて面電極層)29は、保護膜28のうち傾斜側面7aを覆う部分28aを覆う部分29aと、保護膜28のうち上面6aの少なくとも一部を覆う部分28cを覆う部分29cと、保護膜28のうちメサ型構造部7の頂面7bの周縁領域7baを覆う部分28baの部分を覆う部分29baと、メサ型構造部7の頂面7bにおいて保護膜28のうち符号28baの部分を越えて光射出孔29bを開口するようにコンタクト層5を覆う部分29bbとからなる。
第3の実施形態の第1の電極膜(おもて面電極層)29では、部分29bbが上記の第1の機能及び第2の機能の両方を担っている。
【0102】
第3の実施形態においても、第1の電極膜9のうち通電窓を埋めた部分(コンタクト部分9bb)と、平面視して、通電窓8bの内側に配置する光射出孔9bに重なる範囲内に形成された第2の電極膜10との間に電流が集中することにより、活性層3のうち光射出孔9bの直下の部分で発光する光の量がその直下以外の部分で発光する光の量に比べて多くなり、その結果、光射出孔に向かう光の割合が高くなり、光取り出し効率が向上する。
【0103】
〔発光ダイオード(第4の実施形態)〕
図7に、本発明を適用した第4の実施形態の発光ダイオード一例である発光ダイオードの例を示した断面模式図を示す。
第4の実施形態の発光ダイオード400は、第1の実施形態の発光ダイオードと比較すると、上部DBR反射層がなく、その替わりに電流拡散層40を備えた点が異なる。
本実施形態は上部DBR反射層を備えないので共振器型の発光ダイオードではない。
【0104】
本実施形態では、電流拡散層40の材料としては、例えば、AlGaAs等を用いることができる。
電流拡散層40の厚さとしては、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。
0.1μm未満では電流拡散効果が不十分だからであり、10μmを超えると効果に対しエピタキシャル成長に係わるコストが大きすぎるからである。
【0105】
本発明の発光ダイオードは、ランプ、バックライト、携帯電話、ディスプレイ、各種パネル類、コンピュータ、ゲーム機、照明などの電子機器や、それらの電子機器を組み込んだ自動車などの機械装置等に組み込むことができる。
【0106】
〔発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法〕
次に、本発明の発光ダイオードの製造方法の一実施形態として、第1の実施形態の発光ダイオードの製造方法を説明する。
図8は、発光ダイオードの製造方法の一工程を示す断面摸式図である。また、
図9は、
図8の後の一工程を示す断面摸式図である。
【0107】
(化合物半導体層の形成工程)
まず、
図8に示す化合物半導体層20を作製する。
化合物半導体層20は、基板1上に、下部DBR反射層2と、活性層3と、上部DBR反射層4と、コンタクト層5とを順次積層して作製する。
【0108】
基板1と下部DBR反射層2との間に、緩衝層(バッファ)を設けてもよい。緩衝層は、基板1と活性層3の構成層との欠陥の伝搬を低減するために設けられている。このため、基板の品質やエピタキシャル成長条件を選択すれば、緩衝層は、必ずしも必要ではない。また、緩衝層の材質は、エピタキシャル成長させる基板と同じ材質とすることが好ましい。
緩衝層には、欠陥の伝搬を低減するために基板と異なる材質からなる多層膜を用いることもできる。緩衝層の厚さは、0.1μm以上とすることが好ましく、0.2μm以上とすることがより好ましい。
【0109】
本実施形態では、分子線エピタキシャル法(MBE)や減圧有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)等の公知の成長方法を適用することができる。なかでも、量産性に優れるMOCVD法を適用することが、最も望ましい。具体的には、化合物半導体層のエピタキシャル成長に使用する基板1は、成長前に洗浄工程や熱処理等の前処理を実施して、表面の汚染や自然酸化膜を除去することが望ましい。上記化合物半導体層を構成する各層は、直径50〜150mmの基板1をMOCVD装置内にセットし、同時にエピタキシャル成長させて積層することができる。また、MOCVD装置としては、自公転型、高速回転型等の市販の大型装置を適用することができる。
【0110】
上記化合物半導体層20の各層をエピタキシャル成長する際、III族構成元素の原料としては、例えば、トリメチルアルミニウム((CH
3)
3Al)、トリメチルガリウム((CH
3)
3Ga)及びトリメチルインジウム((CH
3)
3In)を用いることができる。また、Mgのドーピング原料としては、例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(C
5H
5)
2Mg)等を用いることができる。また、Siのドーピング原料としては、例えば、ジシラン(Si
2H
6)等を用いることができる。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)等を用いることができる。
さらに、各層のキャリア濃度及び層厚、温度条件は、適宜選択することができる。
【0111】
このようにして作製した化合物半導体層は、活性層3を有するにもかかわらず結晶欠陥が少ない良好な表面状態が得られる。また、化合物半導体層20は、素子構造に対応して研磨などの表面加工を施しても良い。
【0112】
(第2の電極膜の形成工程)
次に、
図8に示すように、基板1の裏面に、平面視して形成予定の光射出孔9bに重なる範囲内に第2の電極膜(裏面電極)10を形成する。第2の電極膜(裏面電極)10は公知の方法によって形成することができる。
具体的には、例えば、基板1がn型基板である場合には、基板1の裏面1A全面に例えば蒸着法によって、Au膜、AuGe膜を順に成膜する。次に、フォトリソグラフィの手法を用いて、その膜をパターニングして、所定の位置に、n型オーミック電極の第2の電極膜10を形成する。
【0113】
第2の電極膜10はリフトオフによって形成してもよい。すなわち、基板1の裏面1A上に、第2の電極膜10の形成位置にその形状に対応する開口部を有するマスクを形成して、その上に蒸着法等によって第2の電極膜10を構成する材料からなる膜を成膜し、その後、マスクを除去することによって第2の電極膜10を形成してもよい。
【0114】
(メサ型構造部の形成工程)
次に、メサ型構造部(保護膜及び電極膜を除く)を形成するために、メサ型構造部以外の部分の化合物半導体層すなわち、コンタクト層5と活性層4の少なくとも一部と、又は、コンタクト層5と活性層4と接合(コンタクト)層3の少なくとも一部とをウェットエッチングする。
具体的には、まず、
図9に示すように、化合物半導体層の最上層であるコンタクト層上にフォトレジストを堆積し、フォトリソグラフィによりメサ型構造部以外に開口23aを有するレジストパターン23を形成する。
メサ型構造部の平面視形状はレジストパターン23の開口23aの形状によって決まる。レジストパターン23に所望の平面視形状に対応する形状の開口23aを形成する。
レジストパターンにおいてメサ型構造部形成予定箇所の大きさを、「メサ型構造部」の頂面より各辺上下左右10μm程度大きめに形成するのが好ましい。
また、エッチングの深さすなわち、化合物半導体層のうち、どの層までエッチング除去するかは、エッチャントの種類及びエッチング時間によって決まる。
ウェットエッチングを行った後に、レジストを除去する。
【0115】
次に、メサ型構造部以外の部分の化合物半導体層についてウェットエッチングを行う。
ウェットエッチングに用いるエッチャントとしては限定的ではないが、AlGaAs等のAs系の化合物半導体材料に対してはアンモニア系エッチャント(例えば、アンモニア/過酸化水素水混合液)が適しており、AlGaInP等のP系の化合物半導体材料に対してはヨウ素系エッチャント(例えば、ヨウ化カリウム/アンモニア)が適しており、リン酸/過酸化水素水混合液はAlGaAs系に、ブロムメタノール混合液はP系に適している。
また、As系のみで形成されている構造では燐酸混合液、As/P系が混在している構造ではAs系構造部にアンモニア混合液、P系構造部にヨウ素混合液を使用してもよい。
【0116】
化合物半導体層がAs系の化合物半導体層とP系の化合物半導体層とが順に積層されている場合は、As系の化合物半導体層と他のP系のAs系の化合物半導体層とでそれぞれにエッチング速度が高い、異なるエッチャントを用いることが好ましい。
例えば、P系の層のエッチングにはヨウ素系エッチャントを用い、As系のコンタクト層及び発光層のエッチングにはアンモニア系エッチャントを用いることが好ましい。
ヨウ素系エッチャントとしては例えば、ヨウ素(I)、ヨウ化カリウム(KI)、純水(H
2O)、アンモニア水(NH
4OH)を混合したエッチャントを用いることができる。
また、アンモニア系エッチャントとしては例えば、アンモニア/過酸化水素水混合液(NH
4OH:H
2O
2:H
2O)を用いることができる。
【0117】
例えば、化合物半導体層が最上層側から順に、AlGaAsからなるコンタクト層5、AlGaAsからなる上部DBR反射層4、活性層3(AlGaInPからなる上部クラッド層、AlGaAsからなる発光層、AlGaInPからなる下部クラッド層)、AlGaAsからなる下部DBR反射層2の順に積層された構造の場合に、好ましいエッチャントを用いてメサ型構造部以外の部分を除去する場合を説明する。
まず、メサ型構造部以外の部分のAlGaAsからなるコンタクト層5及びAlGaAsからなる上部DBR反射層4をアンモニア系エッチャントを用いてエッチング除去する。
このエッチングの際、次の層であるAlGaInPからなる上部クラッド層がエッチングストップ層として機能するので、エッチング時間を厳密に管理することは要しないが、例えば、コンタクト層及びAlGaAsからなる上部DBR反射層4を合わせた厚さを1.0μm程度とすると、100秒程度エッチングを行えばよい。
【0118】
次に、メサ型構造部以外の部分のAlGaInPからなる上部クラッド層をヨウ素系エッチャントを用いてエッチング除去する。
エッチング速度は、ヨウ素(I)500cc、ヨウ化カリウム(KI)100g、純水(H
2O)2000cc、水酸化アンモニア水(NH
4OH)90ccの比率で混合されたエッチャントを用いた場合、0.72μm/minだった。
このエッチングの際も、次の層であるAlGaAsからなる発光層がエッチングストップ層として機能するので、エッチング時間を厳密に管理することは要しないが、このエッチャントの場合、クラッド層63aの厚さが4μm程度とすると、6分間程度エッチングを行えばよい。
【0119】
次に、メサ型構造部以外の分のAlGaAsからなる発光層をアンモニア系エッチャントを用いてエッチング除去する。
このエッチングの際も、次の層であるAlGaInPからなる下部クラッド層がエッチングストップ層として機能するので、エッチング時間を厳密に管理することは要しないが、発光層の厚さを0.25μm程度とすると、40秒程度エッチングを行えばよい。
【0120】
次に、メサ型構造部以外の部分のAlGaInPからなる下部クラッド層をヨウ素系エッチャントを用いてエッチング除去する。
この下部クラッド層の下にはAlGaAsからなる下部DBR反射層2がエッチングストップ層として機能するので、エッチング時間を厳密に管理することは要しないが、下部クラッド層の厚さを0.5μmとすると、上記のヨウ素系エッチャントを用いた場合には、4分間以下でエッチングを行えばよい。
【0121】
また、 As系の化合物半導体層に対しては、リン酸/過酸化水素水混合液(例えば、H
2PO
4:H
2O
2:H
2O=1〜3:4〜6:8〜10)を用いて、上記エッチング除去を行うこともできる。
【0122】
図10に、H
2PO
4:H
2O
2:H
2O=2:5:9(100:250:450)、56%(H
2O)、液温30℃〜34℃のエッチャントを用いて、後述する実施例で示した化合物半導体層についてウェットエッチングを行った場合のエッチング時間に対する深さ及び幅の関係を示す。表1にその条件及び結果を数値で示す。
【0124】
図10及び表1から、エッチング深さ(
図1の「h」に相当)はエッチング時間(sec)にほぼ比例するが、エッチング幅はエッチング時間が長くなるほど増大率が大きくなることがわかる。すなわち、
図3に示すように、深くなるほど(図で下方に行くほど)、メサ型構造部の水平断面積(又は、幅もしくは径)の増大率が大きくなるように形成される。このエッチング形状はドライエッチングによるエッチング形状とは異なる。従って、メサ型構造部の傾斜斜面の形状から、メサ型構造部がドライエッチングで形成されたのか、又は、ウェットエッチングで形成されたのかを判別することができる。
【0125】
(保護膜の形成工程)
次に、全面に保護膜8の材料を成膜する。具体的には、例えば、SiO
2を全面にスパッタリング法により成膜する。
【0126】
(ストリートおよびコンタクト層の部分の保護膜の除去工程)
次に、全面にフォトレジストを堆積し、フォトリソグラフィによりコンタクト層上の通電窓8bに対応する部分とストリートに対応する部分と、を開口とするレジストパターンを形成する。
次いで、例えば、バッファードフッ酸を用いてウェットエッチングにより、メサ型構造部の頂面の通電窓8bに対応する部分とストリートに対応する部分の保護膜8の材料を除去して保護膜8を形成する。
図11に、保護膜8の通電窓8b近傍の平面図を示す。
その後、レジストを除去する。
【0127】
(おもて面電極層の形成工程)
次に、おもて面電極層9を形成する。すなわち、保護膜8上、及び、保護膜8の通電窓8bから露出しているコンタクト層5上に、光射出孔9bを有するおもて面電極層9を形成する。
具体的には、全面にフォトレジストを堆積し、フォトリソグラフィにより光射出孔9bに対応する部分と、ウェハ基板上の多数の発光ダイオード間の切断部分(ストリート)とを含む、電極膜が不要な部分以外を開口とするレジストパターンを形成する。次いで、電極層材料を蒸着する。この蒸着だけではメサ型構造部の傾斜側面には電極層材料が十分には蒸着されない場合は、さらに、メサ型構造部の傾斜側面に電極層材料を蒸着するために蒸着金属が回りこみやすいプラネタリタイプの蒸着装置を用いて蒸着を行う。
その後、レジストを除去する。
【0128】
光射出孔9bの形状はレジストパターン(図示せず)の開口の形状によって決まる。この開口形状を所望の光射出孔9bの形状に対応するものとしたレジストパターンを形成する。
【0129】
(個片化工程)
次に、ウェハ基板上の発光ダイオードを個片化する。
具体的には、例えば、ダイシングソーもしくはレーザーにより、ストリート部分を切断してウェハ基板上の発光ダイオード毎に切断して個片化する。
【0130】
(金属基板側面の金属保護膜形成工程)
個片化された発光ダイオードの切断された金属基板の側面にについて、上面及び下面の金属保護膜の形成条件と同様な条件で金属保護膜を形成してもよい。
【0131】
〔発光ダイオード(第2の実施形態)の製造方法〕
本発明の発光ダイオード(第2の実施形態)の製造方法は、化合物半導体層の形成工程、第2の電極膜の形成工程、及び、メサ型構造部の形成工程については本発明の発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法の工程と同様に行うことができる。メサ型構造部の形成工程のウェットエッチングについては、本実施形態の「第1のウェットエッチング」と読み替えて、以下、説明する。
【0132】
(支持構造部の傾斜部の形成工程)
メサ型構造部の形成工程の第1のウェットエッチングにより、ウェハ基板のメサ型構造部を除いた部分(ストリート及び支持構造部)は同程度の高さとなっている。
本工程では、個片化用切断ライン(
図2の点線22)に沿って第2のウェットエッチングを行って、支持構造部6の側面6aの傾斜部6baを形成する。
具体的には、まず、ウェハ基板の全面にフォトレジストを堆積し、フォトリソグラフィにより、ストリート21と支持構造部6の上面6aの外周から所定距離d(
図2参照)の範囲とに開口を有するレジストパターンを形成する。
第1のウェットエッチング及び第2のウェットエッチングは、同じエッチャントを用いて行うことができる。
【0133】
次いで例えば、リン酸/過酸化水素水混合液、アンモニア/過酸化水素水混合液、ブロムメタノール混合液、ヨウ化カリウム/アンモニアの群から選択される少なくとも1種以上を用いて第2のウェットエッチングを行う。
例えば、H
3PO
4:H
2O
2:H
2O=1〜3:4〜6:8〜10のリン酸/過酸化水素水混合液を用いて、ウェットエッチング時間を30〜60秒間として、支持構造部6の側面6aの傾斜部6baを形成することができる。
その後、レジストを除去する。
【0134】
傾斜部6baの傾斜角度や長さ、深さは、エッチャントの種類及びエッチング時間によって決まる。
【0135】
この後の工程は、発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と同様の方法によって行うことができる。
【0136】
〔発光ダイオード(第3の実施形態)の製造方法〕
本発明の発光ダイオード(第2の実施形態)は、発光ダイオード(第1の実施形態)と保護膜及び電極の配置構成が異なるだけであり、その製造方法は発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と同様に行うことができる。
【0137】
〔発光ダイオード(第4の実施形態)の製造方法〕
本発明の発光ダイオード(第4の実施形態)の製造方法において、発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と異なる点は、化合物半導体層の形成工程で、基板1上に、下部DBR反射層2と、活性層3とを積層した後、活性層3上に電流拡散層40を積層する点であり、その他は発光ダイオード(第1の実施形態)の製造方法と同様に行うことができる。
【実施例】
【0138】
以下に、本発明の発光ダイオード及びその製造方法を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例にのみ限定されるものではない。本実施例では、特性評価のために発光ダイオードチップを基板上に実装した発光ダイオードランプを作製した。
本実施例では、
図1及び
図4を参照して、通電窓8bの外径を166μm、その内径を154μm、光射出孔の径を150μm、第2の電極膜を平面視円形としその外径を100μmとした。
【0139】
(実施例)
実施例の発光ダイオードは、まず、Siをドープしたn型のGaAs単結晶からなるGaAs基板上に、化合物半導体層を順次積層してエピタキシャルウェハを作製した。GaAs基板は、(100)面を成長面とし、キャリア濃度を2×10
18cm
−3とした。また、GaAs基板の層厚は、約250μmとした。化合物半導体層とは、SiをドープしたGaAsからなるn型の緩衝層、SiをドープしたAl
0.9Ga
0.1AsとAl
0.1Ga
0.9Asの40対の繰り返し構造であるn型の下部DBR反射層、SiをドープしたAl
0.4Ga
0.6Asからなるn型の下部クラッド層、Al
0.25Ga
0.75Asからなる下部ガイド層、GaAs/Al
0.15Ga
0.85Asの3対からなる井戸層/バリア層、Al
0.25Ga
0.75Asからなる上部ガイド層、CをドープしたAl
0.4Ga
0.6Asからなるp型の上部クラッド層、CをドープしたAl
0.9Ga
0.1AsとAl
0.1Ga
0.9Asの5対の繰り返し構造であるp型の上部DBR反射層、Cドープしたp型Al
0.1Ga
0.9Asからなるコンタクト層である。
【0140】
本実施例では、減圧有機金属化学気相堆積装置法(MOCVD装置)を用い、直径50mm、厚さ250μmのGaAs基板に化合物半導体層をエピタキシャル成長させて、エピタキシャルウェハを形成した。エピタキシャル成長層を成長させる際、III族構成元素の原料としては、トリメチルアルミニウム((CH
3)
3Al)、トリメチルガリウム((CH
3)
3Ga)及びトリメチルインジウム((CH
3)
3In)を使用した。また、Cのドーピング原料としては、テトラブロモメタン(CBr
4)を使用した。また、Siのドーピング原料としては、ジシラン(Si
2H
6)を使用した。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)を使用した。また、各層の成長温度としては、700℃で成長させた。
【0141】
GaAsからなる緩衝層は、キャリア濃度を約2×10
18cm
−3、層厚を約0.5μmとした。下部DBR反射層はキャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約54nmとしたAl
0.9Ga
0.1Asと、キャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約51nmとしたAl
0.1Ga
0.9Asを交互に40対積層した。下部クラッド層は、キャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約54nmとした。下部ガイド層は、アンドープで層厚を約50nmとした。井戸層は、アンドープで層厚が約7nmのGaAsとし、バリア層はアンドープで層厚が約7nmのAl
0.15Ga
0.85Asとした。また、井戸層とバリア層とを交互に3対積層した。上部ガイド層は、アンドープで層厚を約50nmとした。上部クラッド層は、キャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を54nmとした。また、上部DBR反射層はキャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約54nmとしたAl
0.9Ga
0.1Asと、キャリア濃度を約1×10
18cm
−3、層厚を約51nmとしたAl
0.1Ga
0.9Asを交互に5対積層した。
Al
0.1Ga
0.9Asからなるコンタクト層は、キャリア濃度を約3×10
18cm
−3、層厚を約250nmとした。
【0142】
次に、基板裏面に、AuGe、Ni合金を厚さが0.5μm、Ptを0.2μm、Auを1μmとなるように真空蒸着法によって成膜し、形成予定の光射出孔に重なる範囲内に、外径100μmの平面視円形となるようにパターニングして、n型の第2の電極膜を形成した。
【0143】
次に、メサ型構造部を形成するため、パターニングしたレジスト(AZ5200NJ(クラリアント社製))を用いて、H
2PO
4:H
2O
2:H
2O=2:5:9のリン酸/過酸化水素水混合液を用いて、60秒間、ウェットエッチングを行って、メサ型構造部及び上面を形成した。このウェットエッチングによって、コンタクト層、上部DBR反射層及び活性層の全層を除去して、頂面の大きさが190μm×190μm、高さhが7μm、幅wが5μmの平面視矩形のメサ型構造部(保護膜及び電極膜を除く)を形成した。
【0144】
次に、保護膜を形成するため、SiO
2からなる保護膜を0.5μm程度形成した。
その後、レジスト(AZ5200NJ(クラリアント社製))によるパターニング後、バッファードフッ酸を用いて、平面視同心円形(外径dout:166μm、内径din:154μm)の開口(
図11参照)、および、ストリート部の開口を形成した。
【0145】
次に、おもて面電極(膜)を形成するため、レジスト(AZ5200NJ(クラリアント社製))によるパターニング後、Auを1.2μm、AuBeを0.15μmを順に蒸着し、リフトオフにより平面視円形(径:150μm)の光射出孔9bを有する、長辺350μm、短辺250μmに形成してなるおもて面電極(p型オーミック電極)を形成した。
その後、450℃で10分間熱処理を行って合金化し、低抵抗のp型およびn型オーミック電極を形成した。
【0146】
次に、メサ型構造部の側面に光漏れ防止膜16を形成するため、レジスト(AZ5200NJ(クラリアント社製))によるパターニング後、Tiを0.5μm、Auを0.17μmを順に蒸着し、リフトオフにより光漏れ防止膜16を形成した。
【0147】
次に、化合物半導体層側からダイシングソーを用いストリート部で切断し、チップ化した。ダイシングによる破砕層および汚れを硫酸・過酸化水素混合液でエッチング除去して、実施例の発光ダイオードを作製した。
【0148】
上記のようにして作製した実施例の発光ダイオードチップを、マウント基板上に実装した発光ダイオードランプを100個組み立てた。この発光ダイオードランプは、マウントは、ダイボンダーで支持(マウント)し、p型オーミック電極とp電極端子とを金線でワイヤボンディングした後、一般的なエポキシ樹脂で封止して作製した。
【0149】
この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)について、n型及びp型電極間に電流を流したところ、ピーク波長730nmとする赤外光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V
F)は1.8Vであった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は1.7mWであった。また、応答速度(立ち上がり時間:Tr)は12nsecだった。
【0150】
作製した100個の発光ダイオードランプのいずれについても、同程度の特性が得られ、保護膜が不連続な膜になった場合のリーク(短絡)や電極用金属膜が不連続な膜になった場合の通電不良が原因と思われる不良はなかった。
【0151】
(比較例)
比較例の発光ダイオードは、従来技術である液相エピタキシャル法で形成した。GaAs基板にAl
0.2Ga
0.8As発光層とするダブルヘテロ構造の発光部を有する発光ダイオードに変更したものである。
【0152】
比較例の発光ダイオードの作製は、具体的には、n型の(100)面のGaAs単結晶基板に、Al
0.7Ga
0.3Asからなるn型の上部クラッド層を20μm、Al
0.2Ga
0.8Asからなるアンドープの発光層を2μm、Al
0.7Ga
0.3Asからなるp型の下部クラッド層を20μm、発光波長に対して透明なAl
0.6Ga
0.4Asからなるp型の厚膜層を120μmとなるように液相エピタキシャル方法によって作製した。このエピタキシャル成長後にGaAs基板を除去した。次に、n型AlGaAsの表面に直径100μmのn型オーミック電極を形成した。次に、p型AlGaAsの裏面に直径20μmのp型オーミック電極を80μm間隔に形成した。次に、ダイシングソーにより350μm間隔で切断した後、破砕層をエッチング除去して比較例の発光ダイオードチップを作製した。
【0153】
n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ピーク波長を730nmとする赤外光が出射された。また、順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(V
F)は、約1.9ボルト(V)となった。また、順方向電流を20mAとした際の発光出力は、5mWであった。また、応答速度(Tr)は15.6nsecであり、本発明の実施例に比べて遅かった。