特許第6088188号(P6088188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088188
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】めっき金属帯の製造設備及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/20 20060101AFI20170220BHJP
   C23C 2/00 20060101ALI20170220BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C23C2/20
   C23C2/00
   C23C2/40
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-213512(P2012-213512)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-65954(P2014-65954A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 満
(72)【発明者】
【氏名】尾田 佳亮
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−519519(JP,A)
【文献】 特開昭57−122963(JP,A)
【文献】 特開2003−321756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00−2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属めっき浴と、
前記溶融金属めっき浴の上方で対向配置された一対のワイピングノズルと、
前記溶融金属めっき浴から引上げられた金属帯の側方であって前記一対のワイピングノズル間に配置され、各ワイピングノズルから噴射されるガス流が前記金属帯の側方において互いに衝突することを回避するためのバッフルプレート
を備えためっき金属帯の製造設備であって、
前記バッフルプレートは、
平板状のプレート本体と、
前記プレート本体の幅方向に関して前記プレート本体の前記金属帯側の側端部から離れた位置に設けられ、前記プレート本体の下部端面から前記プレート本体の板厚方向に沿って突出された傾斜面と
を備え、
前記各ワイピングノズルから噴射されて前記プレート本体に衝突した後に前記プレート本体に沿って前記側端部と前記傾斜面との間を降下するガス流と、前記各ワイピングノズルから噴射されて前記プレート本体に衝突した後に前記傾斜面に沿って斜め下方に向かうガス流とを互いに衝突させ、鉛直方向下方に向かうガス流の流れを弱めるように構成されている
ことを特徴とするめっき金属帯の製造設備
【請求項2】
前記プレート本体の幅方向に沿う前記傾斜面の延在幅をAとし、
前記プレート本体の板厚方向に沿う前記傾斜面の延在幅をBとし、
前記傾斜面の水平に対する立ち上がり角度をαとし、
前記プレート本体の幅方向に関して前記傾斜面が前記側端部から離されている距離をCとし、
前記ワイピングノズルの高さ位置から前記傾斜面の下端までの距離をDとし、
前記ワイピングノズルの高さ位置から前記傾斜面の上端までの距離をEとし、
前記各ワイピングノズルから噴射されるガス流の噴射圧力が10kPa以上かつ80kPa以下の範囲内である場合、
前記A〜E及びαは下記の式を満たす
【数1】
ことを特徴とする請求項1記載のめっき金属帯の製造設備
【請求項3】
前記プレート本体は、前記側端部において前記ワイピングノズルの高さ位置から下方に12mm離れた位置を通るとともに鉛直方向に対して25°傾いた直線よりも下方の領域が切り欠かれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のめっき金属帯の製造設備
【請求項4】
平板状のプレート本体と、前記プレート本体の幅方向に関して前記プレート本体の側端部から離れた位置に設けられ、前記プレート本体の下部端面から前記プレート本体の板厚方向に沿って突出された傾斜面とを備えたバッフルプレートを用いるめっき金属帯の製造方法であって、
溶融金属めっき浴から引上げられた金属帯の側方であって対向配置された一対のワイピングノズル間に、前記側端部が前記金属帯側に位置するように前記バッフルプレートを配置し、前記各ワイピングノズルから噴射されて前記プレート本体に衝突した後に前記プレート本体に沿って前記側端部と前記傾斜面との間を降下するガス流と、前記各ワイピングノズルから噴射されて前記プレート本体に衝突した後に前記傾斜面に沿って斜め下方に向かうガス流とを互いに衝突させ、鉛直方向下方に向かうガス流の流れを弱め
ことを特徴とするめっき金属帯の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属めっき浴から引上げられた金属帯の側方であって対向配置された一対のワイピングノズル間に配置されることにより、各ワイピングノズルから噴射されるガス流が金属帯の側方において互いに衝突することを回避するためのバッフルプレートを用いるめっき金属帯の製造設備及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種のバッフルプレートとしては、例えば下記の特許文献1に示されている構成を挙げることができる。すなわち、従来のバッフルプレートには、平板状のプレート本体とガイド部材とが含まれている。ガイド部材の上面は、金属帯に近づくにつれて下がる傾斜面を構成している。傾斜面の下端は、プレート本体の幅方向に関してプレート本体の側端部と同じ位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−321756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来構成では、プレート本体の幅方向に関して傾斜面の下端がプレート本体の側端部と同じ位置に配置されているので、ワイピングノズルから噴射された後にプレート本体に衝突したガス流がすべて傾斜面に沿って金属帯側に向かう。このため、ワイピングノズルの近傍で飛散した微少な溶融金属がガス流に乗って再び金属帯に付着しやすい。飛散した溶融金属が金属帯に付着すると、製品の外観が悪化する。
また、金属帯への溶融金属の再付着を防止するために単純に傾斜面を省略してガス流が金属帯に向かわないようにすることも考えられるが、傾斜面を省略した場合、プレート本体に衝突したガス流がすべて鉛直方向に沿って降下する。この場合、溶融金属めっき浴の浴面で溶融金属が飛散しやすくなり、浴面で飛散した溶融金属が周辺機器に付着すると周辺機器の故障の原因になる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ワイピングノズルの近傍で飛散した溶融金属が金属帯に付着することを回避できるとともに、溶融金属めっき浴の浴面での溶融金属の飛散を抑制できるバッフルプレートを用いるめっき金属帯の製造設備及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るめっき金属帯の製造設備は、溶融金属めっき浴と、溶融金属めっき浴の上方で対向配置された一対のワイピングノズルと、溶融金属めっき浴から引上げられた金属帯の側方であって一対のワイピングノズル間に配置され、各ワイピングノズルから噴射されるガス流が金属帯の側方において互いに衝突することを回避するためのバッフルプレートとを備えためっき金属帯の製造設備であって、バッフルプレートは、平板状のプレート本体と、プレート本体の幅方向に関してプレート本体の金属帯側の側端部から離れた位置に設けられ、プレート本体の下部端面からプレート本体の板厚方向に沿って突出された傾斜面とを備え、各ワイピングノズルから噴射されてプレート本体に衝突した後にプレート本体に沿って側端部と傾斜面との間を降下するガス流と、各ワイピングノズルから噴射されてプレート本体に衝突した後に傾斜面に沿って斜め下方に向かうガス流とを互いに衝突させるように構成されている。
【0007】
また、本発明に係るめっき金属帯の製造方法は、平板状のプレート本体と、プレート本体の幅方向に関してプレート本体の側端部から離れた位置に設けられ、プレート本体の下部端面からプレート本体の板厚方向に沿って突出された傾斜面とを備えたバッフルプレートを用いるめっき金属帯の製造方法であって、溶融金属めっき浴から引上げられた金属帯の側方であって対向配置された一対のワイピングノズル間に、側端部が金属帯側に位置するようにバッフルプレートを配置し、各ワイピングノズルから噴射されてプレート本体に衝突した後にプレート本体に沿って側端部と傾斜面との間を降下するガス流と、各ワイピングノズルから噴射されてプレート本体に衝突した後に傾斜面に沿って斜め下方に向かうガス流とを互いに衝突させ、鉛直方向下方に向かうガス流の流れを弱める。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバッフルプレートを用いるめっき金属帯の製造設備及び製造方法によれば、各ワイピングノズルから噴射されてプレート本体に衝突した後にプレート本体に沿って側端部と傾斜面との間を降下するガス流と、各ワイピングノズルから噴射されてプレート本体に衝突した後に傾斜面に沿って斜め下方に向かうガス流とを互いに衝突させるので、ワイピングノズルの近傍で飛散した溶融金属が金属帯に付着することを回避できるとともに、溶融金属めっき浴の浴面での溶融金属の飛散を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1によるバッフルプレートが適用されるめっき金属帯製造設備を示す説明図である。
図2図1のワイピングノズル周辺をより具体的に示す斜視図である。
図3図2のバッフルプレートを拡大して示す斜視図である。
図4図3のバッフルプレートに衝突するガス流の流れを示す説明図である。
図5図3のバッフルプレートの各部の寸法の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるバッフルプレートが適用されるめっき金属帯製造設備を示す説明図である。図において、めっき金属帯が製造される場合、溶融金属めっき浴1に導入された金属帯2は、シンクロール3を介して鉛直方向上方に引上げられる。溶融金属めっき浴1の上方には金属帯2を挟むように対向配置された一対のワイピングノズル4が設けられており、各ワイピングノズル4から金属帯2の表面にガス流4aが吹き付けられることで金属帯2の表面における溶融金属の付着量が調整される。
【0011】
次に、図2図1のワイピングノズル4周辺をより具体的に示す斜視図であり、図3図2のバッフルプレート5を拡大して示す斜視図である。図2に示すように、金属帯2の側方かつワイピングノズル4間には、バッフルプレート5が配置されている。バッフルプレート5は、金属帯2の幅方向両側にそれぞれ配置されている。このようにバッフルプレート5が配置されていることで、各ワイピングノズル4から噴射されるガス流4aが金属帯2の側方において互いに衝突することが回避される。
【0012】
図2及び図3に示すように、バッフルプレート5は、プレート本体50とガイド部材51とを含んでいる。プレート本体50は、全体として平板状に形成された板体であり、幅方向50aに沿う金属帯2側において、その下部が一部切り欠かれた形状を有している。具体的には、プレート本体50の幅方向50aに沿う金属帯2側の側端部500は、鉛直方向に沿うように直線状に形成されている。プレート本体50の下辺501は、水平方向に沿うように直線状に形成されている。側端部500の下端と下辺501の一端との間は、下方に向かうにつれて幅方向50aに沿って金属帯2から離れるように傾斜された傾斜片502によって接続されている。すなわち、側端部500を鉛直方向に沿って延長した線、下辺501を水平方向に沿って延長した線及び傾斜片502によって囲まれる正面視略三角形の領域が切り欠かれている。このプレート本体50の切り欠きについては、後に詳しく説明する。
【0013】
ガイド部材51は、プレート本体50の表裏両側においてプレート本体50の下部に取付けられた部材である。幅方向50aに沿うガイド部材51の一端には、プレート本体50の下部端面からプレート本体50の板厚方向50bに沿って突出された傾斜面510が形成されている。傾斜面510は、下方に向かうにつれて幅方向50aに沿って金属帯2に近づくように傾斜された面である。すなわち、傾斜面510の下端は、傾斜面510のうち最も金属帯2に近い部分である。この傾斜面510の下端は、幅方向50aに関して側端部500から離れた位置に設けられている。
【0014】
次に、図4は、図3のバッフルプレート5に衝突するガス流4aの流れを示す説明図である。各ワイピングノズル4から噴射されたガス流4aは、プレート本体50に衝突した後にプレート本体50に沿って降下する。このとき、ガス流4aの一部は側端部500と傾斜面510との間を降下し、ガス流4aの一部は傾斜面510に沿って斜め下方に向かう。従って、バッフルプレート5の下方においてこれら2つのガス流4aが互いに衝突される。これにより、鉛直方向下方へのガス流4aの流れ及び金属帯2へのガス流4aの流れの両方がともに弱められ、ワイピングノズル4の近傍で飛散した溶融金属が金属帯2に向かうことを抑制してワイピングノズル4の近傍で飛散した溶融金属が金属帯2に付着することを回避しつつ、溶融金属めっき浴1の浴面で溶融金属が飛散することを抑制できる。
【0015】
次に、図5図3のバッフルプレート5の各部の寸法の関係を示す説明図であり、図5の(a)は正面視におけるバッフルプレート5の各部の寸法を示し、図5の(b)は左側面視におけるバッフルプレート5の各部の寸法を示している。図に示すように、
プレート本体50の幅方向50aに沿う傾斜面510の延在幅をAとし、
プレート本体50の板厚方向50bに沿う傾斜面510の延在幅をBとし、
傾斜面510の水平に対する立ち上がり角度をαとし、
プレート本体50の幅方向50aに関して傾斜面510が側端部500から離されている距離をCとし、
ワイピングノズル4の高さ位置40から傾斜面510の下端までの距離をDとし、
ワイピングノズル4の高さ位置40から傾斜面510の上端までの距離をEとする。
【0016】
このとき、各ワイピングノズル4から噴射されるガス流4aの噴射圧力が10kPa以上かつ80kPa以下の範囲内である場合、A〜E及びαは下記の式を満たすように設定される。
【数1】
【0017】
上記の式の左辺は、鉛直方向に沿って降下するガス流4aに対する傾斜面510の有効面積を示しており、傾斜面510に沿って斜め下方に向かうガス流4aの強さを近似するものである。
【0018】
上記の式の右辺のうち、(D+E)/2は、ワイピングノズル4の高さ位置40から傾斜面510の下端までの距離Dと、ワイピングノズル4の高さ位置40から傾斜面510の上端までの距離Eとの間の平均高さを示している。そして、この(D+E)/2にC及び(1/24)を乗じることで、側端部500と傾斜面510との間を降下するガス流4aの上記平均高さにおける強さを近似している。なお、(1/24)は、噴射圧力が10kPa以上かつ80kPa以下の範囲内であるときの調整係数であり、実験を繰り返すことにより導き出されたものである。
【0019】
そして、上記の式のように、左辺の大きさを右辺の大きさ以上とすることで、鉛直方向下方に向かうガス流4aの流れを十分に弱めることができ、溶融金属めっき浴1の浴面で溶融金属が飛散することをより確実に回避できる。
【0020】
また、図5に示すように、ワイピングノズル4の高さ位置40から傾斜片502の上端までの距離をFとし、鉛直方向に対する傾斜片502の傾斜角度をβとした場合、F≦12mmとし、β≧25°とする。すなわち、側端部500においてワイピングノズル4の高さ位置40から下方に12mm離れた位置を通るとともに鉛直方向に対して25°傾いた直線よりも下方の領域が必ず切り欠かれるようにする。実験を繰り返した結果、飛散した溶融金属がバッフルプレート5に付着するのはこの領域であり、この領域を切り欠くことで溶融金属がバッフルプレート5に付着することを回避できる。
【0021】
このようなバッフルプレート5及びめっき金属帯の製造方法によれば、各ワイピングノズル4から噴射されてプレート本体50に衝突した後にプレート本体50に沿って側端部500と傾斜面510との間を降下するガス流4aと、各ワイピングノズル4から噴射されてプレート本体50に衝突した後に傾斜面510に沿って斜め下方に向かうガス流4aとを互いに衝突させるので、ワイピングノズル4の近傍で飛散した溶融金属が金属帯2に付着することを回避できるとともに、溶融金属めっき浴1の浴面での溶融金属の飛散を抑制できる。これにより、製品の外観が悪化することを防止できるとともに、周辺機器の故障を防止できる。
【0022】
また、図4に示すA〜E及びαが上記の式を満たすように設定されるので、鉛直方向下方に向かうガス流4aの流れを十分に弱めることができ、溶融金属めっき浴1の浴面で溶融金属が飛散することをより確実に回避できる。
【0023】
さらに、プレート本体50は、側端部500においてワイピングノズル4の高さ位置40から下方に12mm離れた位置を通るとともに鉛直方向に対して25°傾いた直線よりも下方の領域が切り欠かれているので、溶融金属がバッフルプレート5に付着することを回避でき、メンテナンスに要する工数を低減できる。
【符号の説明】
【0024】
1 溶融金属めっき浴
2 金属帯
4 ワイピングノズル
4a ガス流
5 バッフルプレート
50 プレート本体
500 側端部
510 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5