特許第6088189号(P6088189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーNPC株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6088189-温度補償型発振回路 図000002
  • 特許6088189-温度補償型発振回路 図000003
  • 特許6088189-温度補償型発振回路 図000004
  • 特許6088189-温度補償型発振回路 図000005
  • 特許6088189-温度補償型発振回路 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088189
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】温度補償型発振回路
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   H03B5/32 A
   H03B5/32 E
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-219695(P2012-219695)
(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-72857(P2014-72857A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正敏
(72)【発明者】
【氏名】大高 泰昭
【審査官】 橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−123804(JP,A)
【文献】 特開昭58−090193(JP,A)
【文献】 特開昭62−076801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化に対応して発振周波数が変化する感温発振器と、ディジタルデータで発振出力の周波数を調整する周波数調整部を有する水晶発振回路と、前記水晶発振回路に設定される温度補償範囲において、前記感温発振器又は前記水晶発振回路のいずれか一方の出力により制御されるゲート回路によって他方の出力周波数をカウントするカウンタと、このカウンタのカウント値をアドレスとして前記周波数調整部を制御するディジタルデータを格納したメモリとを備え、このメモリのディジタルデータによって前記周波数調整部を制御して外部に出力される発振信号の周波数を調整する温度補償型発振回路であって、前記感温発振器の発振周波数を温度変化によらず調整する発振周波数調整手段と、前記ゲート回路のゲート時間を設定するゲート時間設定手段との少なくとも一方の手段を備え、前記少なくとも一方の手段によって、前記温度補償範囲の温度上限での前記カウンタのカウント数は前記カウンタの1サイクルのカウント数より多く、かつ前記温度補償範囲内においてカウントすべきパルス数は前記カウンタの1サイクルのカウント数以下となるよう設定されるとともに、前記温度補償範囲の中心温度に対応するパルスが前記カウンタの1サイクルのカウントの中間に来るよう前記カウンタの初期値を設定するカウンタ初期値設定手段を備えることを特徴とする温度補償型発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルコード化した温度情報を基にして温度変化による発振周波数の変動を補償する温度補償型発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度変化による発振回路の発振周波数を調整して安定した出力を得るための温度補償型発振回路としては、大別すると、いわゆるAD変換方式と感温発振器を利用した方式がある。AD変換方式は、例えば、温度センサ、ADコンバータ、ROMを備え,温度センサ出力電圧をAD変換することでROMアドレスを生成し、該当するROMアドレスに保持している水晶発振回路に対する制御データに基づき、水晶発振回路の発振周波数を調整するものである(特許文献1)。感温発振器を利用した方式は、例えば、感温発振器、カウンタ、分周回路、ROMを備え、感温発振クロック数をカウンタでカウントしてROMアドレスを生成し、該当するROMアドレスに保持している水晶発振回路に対する制御データに基づき、水晶発振回路の発振周波数を調整するものである(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−76801号公報
【特許文献2】特開平2−123804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のAD変換方式では、極端に小さな電圧変化はノイズの影響を受けて検出が困難であり、温度分解能が充分ではなく、精度において満足できないという不都合がある。一方、従来の温度に応じて周波数が変化する感温発振器を利用した方式では、精度において満足でき、また、量産適応性にも勝れている。しかしながら、これら従来のものは、いずれにしても、温度補償範囲があらかじめ固定設定されるとともに、設定温度範囲に応じた周波数精度も固定設定されている。このため、例えば、温度補償範囲が−40°C〜+85°Cで、周波数精度が±5ppmと固定設定されている場合に、温度補償範囲を−20°C〜+110°Cで使用したいという要望に応えることはできないという不都合がある。
本発明は、この不都合を解消し、温度補償範囲を自由に設定できる温度補償型発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため本発明に係る温度補償型発振回路は、温度変化に対応して発振周波数が変化する感温発振器と、ディジタルデータで発振出力の周波数を調整する周波数調整部を有する水晶発振回路と、前記水晶発振回路に設定される温度補償範囲において、前記感温発振器又は前記水晶発振回路のいずれか一方の出力により制御されるゲート回路によって他方の出力周波数をカウントするカウンタと、このカウンタのカウント値をアドレスとして前記周波数調整部を制御するディジタルデータを格納したメモリとを備え、このメモリのディジタルデータによって前記周波数調整部を制御して外部に出力される発振信号の周波数を調整する温度補償型発振回路であって、前記感温発振器の発振周波数を温度変化によらず調整する発振周波数調整手段と、前記ゲート回路のゲート時間を設定するゲート時間設定手段との少なくとも一方の手段を備え、前記少なくとも一方の手段によって、前記温度補償範囲の温度上限での前記カウンタのカウント数は前記カウンタの1サイクルのカウント数より多く、かつ前記温度補償範囲内においてカウントすべきパルス数は前記カウンタの1サイクルのカウント数以下となるよう設定されるとともに、前記温度補償範囲の中心温度に対応するパルスが前記カウンタの1サイクルのカウントの中間に来るよう前記カウンタの初期値を設定するカウンタ初期値設定手段を備えるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る温度補償型発振回路によれば、カウンタ初期値の設定と、感温発振器の発振周波数の調整及び/又はゲート時間の設定とを行なうことにより、温度補償範囲を自由に選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態における全体構成を示すブロック図。
図2】同じく発振周波数調整手段の動作を示すグラフ。
図3】同じくゲート時間設定手段の動作を示す説明図。
図4】同じくカウンタ初期値設定手段の動作を示す説明図。
図5】本発明の他の実施形態における全体構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、添付図面の図1に基づいて温度補償型発振回路の構成を説明する。温度補償型発振回路1は、温度変化に対応して発振周波数が変化するとともに、発振周波数を温度変化によらず調整する発振周波数調整手段2を備えた感温発振器3と、ディジタルデータで発振周波数を調整する周波数調整部としての容量アレイ4を有する水晶発振回路5を備えている。
【0009】
水晶発振回路5の出力は、分周回路6により分周されてゲート回路であるANDゲート7のゲート時間を設定するゲート時間設定手段8に入力する。前記ANDゲート7には感温発振器3の出力が入力する一方、前記ゲート時間設定手段8で設定されたゲート時間信号が入力する。前記ANDゲート7から、設定されたゲート時間に対応する前記感温発振器3の出力周波数が、8ビットのカウンタ9に入力して、カウンタ9はこの出力パルス数をカウントする。また、前記カウンタ9は、その初期値を設定するカウンタ初期値設定手段10を備えている。
【0010】
カウンタ9のカウント値はアドレスレジスタ11に入力して、所定ビットのアドレス信号に変換され、このアドレス信号がメモリたるROM12に入力する。このROM12には、アドレス信号をアドレスとしてそれぞれの温度に対応して出力すべき補償容量コードを表すディジタルデータがあらかじめ格納されている。前記ROM12は、入力したアドレス信号に応じて、各アドレスに格納しているディジタルデータを容量アレイ4に出力する。
【0011】
容量アレイ4は、入力したディジタルデータによってそのスイッチがオンオフ制御され、負荷容量値が切替られる。これによって、水晶発信回路5の出力周波数が調整される。このように、感温発振器3の出力周波数を水晶発振回路5の出力パルスによってカウントすることによって、温度情報を得て温度補償をするものである。
【0012】
次に、温度補償範囲を、例えば−40°C〜+80°Cに設定変更する動作について説明する。図2に示すように、感温発振器3における温度と出力周波数の関係は、電流を制御する抵抗の抵抗値が正の温度係数を有する場合は、温度が上がると抵抗値も上がるため、電流が減って周波数は低くなる。ここで、感温発振器3における−40度での周波数が1.2MHz、+80度での周波数が720KHzであるとし、ゲート時間が500μsecであるとすると、それぞれの出力パルス数は600、360となる。また、−40°C〜+80°Cの中心(中間)温度は+20°Cで、出力パルス数は480となる。
【0013】
したがって、−40°C〜+80°Cの温度範囲内において、カウントすべき感温発振器3の出力パルス数は、600−360=240であり、このパルス数を8ビットのカウンタ9の1サイクル256カウント内でカウントできるように、感温発振器3の発振周波数を発振周波数調整手段2で調整し、あるいはゲート時間をゲート時間設定手段8で設定するとともに、中心(中間)温度+20°Cに対応するパルス信号が256カウントの中間である128番目にカウントされるようにカウンタ初期値をカウンタ初期値設定手段10で設定すれば良いことになる。
【0014】
図2に示すように、感温発振器3の発振周波数は、電流制御により変化するが、この電流制御は、例えば感温発振器3の定電流回路を構成するトランジスタのサイズを変更することによって可能となる。一般にこの種のトランジスタは複数個を並列接続して一個のトランジスタ機能を果たすよう形成されているので、並列接続されている複数個のうち適宜なトランジスタの接続を切ることにより、サイズ変更が可能である。すなわち、前記トランジスタのサイズ変更が、発振周波数調整手段2である。そして、例えば発振周波数を2倍にすれば、同一ゲート時間におけるパルス信号のカウント数は2倍になる。
【0015】
また、図3に示すように、分周回路6における分周比を変えることで、ゲート時間設定手段8からゲート時間の設定制御信号がANDゲート7に出力され、ゲート時間の長短によりカウントするパルス数が制御される。すなわち、前記分周比の変更が、ゲート時間設定手段8である。そして、例えば、ゲート時間を2倍にすれば、同一発振周波数においてカウントするパルス信号数は2倍となる。
【0016】
さらに、図4(a)に示すように、8ビットのカウンタ9はカウント数が256毎に0に復帰するため、パルス信号カウントの初期値がカウンタの0に固定されていると、温度補償範囲であるパルス数360から600のカウントは、2つのサイクルにまたがってカウントされるので、512番目のパルスをカウントしたところで0に復帰してしまう。このため、温度補償範囲内の温度変化データをカウンタ9の出力とROM12のデータとから検証したい場合などには、対応関係がわかりにくいという不都合がある。
【0017】
これに対して、図4(b)に示すように、パルス信号カウントの初期値を、中心(中間)温度である+20°Cに対応する480番目のパルスが1サイクルのカウントの中間に来るよう調整すると、温度補償範囲であるパルス数360から600のカウントは、1サイクル内のカウントで収まるので、上述の検証等にあたって好都合である。このようなカウンタ9の初期値設定は、2サイクルのカウント値512から、中心(中間)温度でのパルスのカウント数480を引いたものに、中心にしたいカウンタ9のカウント値128を加えればよい。すなわち、カウンタ9のカウント値160(=512−480+128)をパルス信号カウントの初期値とすればよい。すなわち、カウンタ9のカウント数の書き換えがカウンタ初期値設定手段となる。
【0018】
このようにして、本実施形態によれば、発振周波数調整手段2と、ゲート時間設定手段8と、カウンタ初期値設定手段10とを、設定すべき温度補償範囲に対応するよう適宜調整して使用することにより、カウンタ9のビット数を変えることなく、温度補償範囲の変更設定を確実、かつ容易に行なうことができる。
【0019】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、例えば、発振周波数調整手段2とゲート時間設定手段8は、いずれか一方を設ければよいものである。
【0020】
また、上述の実施形態においては、発振回路5はスイッチにより制御される容量アレイ4を有し、周波数の調整は、感温発振器3からのディジタルデータによって発振回路5の発振周波数自体の調整により行なったが、周波数の調整は他の方式でも可能である。すなわち、論理緩急方式で出力周波数を調整する形態にも適用でき、この場合、感温発振器からのディジタルデータによって分周回路の一部でパルスを加減して調整する。図5は、論理緩急方式で出力周波数を調整する温度補償型発振回路の全体構成を示すブロック図である。温度補償型発振回路は、発振周波数調整手段を備えた感温発振器と、固定容量を有する水晶発振回路と、水晶発振回路の出力周波数を分周して出力する分周回路を備えている。この分周回路は、論理緩急による出力周波数の調整のために、感温発振器からのディジタルデータに基づきパルスを加減した周波数の発振信号を生成する機能を有する。
【符号の説明】
【0021】
1 温度補償型発振回路
2 発振周波数調整手段
3 感温発振器
4 容量アレイ
5 水晶発振回路
6 分周回路
7 ANDゲート
8 ゲート時間設定手段
9 カウンタ
10 カウンタ初期値設定手段
11 アドレスレジスタ
12 ROM
図1
図2
図3
図4
図5