(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術のように、無線通信機能を備える計測機器側の事情で、無線データの有効性を判断することは可能である。しかし、特許文献1に開示された技術は、あくまでもシステム全体の下位側(計測機器側)で無線データの有効性を判断しようとするものなので、下位側で把握できない事情により無線データが不確実になる場合に対しては不十分である。ゆえに、さらなるデータ管理の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、無線データを送信する側でデータの有効性を判断する場合と比較して、無線データの信頼性低下の可能性の有無を確実に判断することができる無線データ管理装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明
は、一定周期でデータ収集するための無線データ管理装置において、第1の計測データを無線データとして送信する無線データ送信機器から前記無線データを受信
して一時的に保持する先入れ先出し方式の無線データ受信手段と、第2の計測データおよび制御指示データのうち少なくとも一方を有線データとして送信する有線データ送信機器から前記有線データを受信
して一時的に保持する先入れ先出し方式の有線データ受信手段と、
前記無線データ受信手段と前記有線データ受信手段とから前記無線データと前記有線データとを一定時間毎に読み出し、計測対象における
前記各データの発生箇所の隣接関係から予め規定された、前記無線データと前記有線データとの関係を示す関係情報に基づいて、前記
無線データ受信手段から読み出した無線データと前記
有線データ受信手段から読み出した有線データとの整合性を
一定時間毎に判定する整合性判定手段と、不整合と判定された無線データに信頼性低下の可能性を示す信頼性低下情報を加えるデータ加工処理手段と、このデータ加工処理手段によって加工された無線データ、および加工されることなく前記データ加工処理手段を通過した無線データを記憶する記憶手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の無線データ管理装置の1構成例は、さらに、データ処理の際に前記記憶手段からデータを取得するデータ取得手段と、前記記憶手段から取得したデータに信頼性低下の可能性があるか否かを前記信頼性低下情報に基づいて確認し、取得したデータのうち信頼性低下の可能性があるデータを削除するデータ削除手段と、前記記憶手段から取得したデータのうち削除されていないデータを外部のデータ処理装置に出力するデータ出力手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の無線データ管理装置の1構成例は、さらに、前記記憶手段からデータを取得するデータ取得手段と、前記記憶手段から取得したデータを対象とし、信頼性低下の可能性有りとして加工されたデータの量の割合を算出する割合算出手段と、この割合算出手段によって算出された割合を提示する割合提示手段と、前記割合算出手段によって算出された割合が予め規定された閾値を超える場合に、無線使用の不適を通知する無線適性通知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の無線データ管理装置の1構成例において、前記第1の計測データは、前記無線データ送信機器によって計測される計測対象の部屋の室温データであり、前記第2の計測データは、前記有線データ送信機器によって計測される計測対象の部屋の室温データであり、前記制御指示データは、計測対象の部屋の室温を制御する空調制御系に関する制御指示データである。
また、本発明の無線データ管理装置の1構成例において、前記第1の計測データは、前記無線データ送信機器によって計測される計測対象のプラントの流量データであり、前記第2の計測データは、前記有線データ送信機器によって計測される計測対象のプラントの液面位置データあるいは流量データであり、前記制御指示データは、計測対象のプラントの液面位置あるいは流量を制御する制御系に関する制御指示データである。
また、本発明の無線データ管理装置の1構成例において、前記第1の計測データは、前記無線データ送信機器によって計測される計測対象の装置の温度データであり、前記第2の計測データは、前記有線データ送信機器によって計測される計測対象の装置の温度データであり、前記制御指示データは、計測対象の装置の温度を制御する加熱制御系に関する制御指示データである。
【0010】
また、本発明
は、一定周期でデータ収集するための無線データ管理方法において、第1の計測データを無線データとして送信する無線データ送信機器から前記無線データを受信
して先入れ先出し方式で無線データ受信手段に一時的に格納する無線データ受信ステップと、第2の計測データおよび制御指示データのうち少なくとも一方を有線データとして送信する有線データ送信機器から前記有線データを受信
して先入れ先出し方式で有線データ受信手段に一時的に格納する有線データ受信ステップと、
前記無線データ受信手段と前記有線データ受信手段とから前記無線データと前記有線データとを一定時間毎に読み出し、計測対象における
前記各データの発生箇所の隣接関係から予め規定された、前記無線データと前記有線データとの関係を示す関係情報に基づいて、前記
無線データ受信手段から読み出した無線データと前記
有線データ受信手段から読み出した有線データとの整合性を
一定時間毎に判定する整合性判定ステップと、不整合と判定した無線データに信頼性低下の可能性を示す信頼性低下情報を加えるデータ加工処理ステップと、このデータ加工処理ステップで加工した無線データ、および加工されることなく前記データ加工処理ステップを終えた無線データを記憶手段に格納する記憶ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の無線データ管理方法の1構成例は、さらに、データ処理の際に前記記憶手段からデータを取得するデータ取得ステップと、前記記憶手段から取得したデータに信頼性低下の可能性があるか否かを前記信頼性低下情報に基づいて確認し、取得したデータのうち信頼性低下の可能性があるデータを削除するデータ削除ステップと、前記記憶手段から取得したデータのうち削除されていないデータを外部のデータ処理装置に出力するデータ出力ステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の無線データ管理方法の1構成例は、さらに、前記記憶手段からデータを取得するデータ取得ステップと、前記記憶手段から取得したデータを対象とし、信頼性低下の可能性有りとして加工されたデータの量の割合を算出する割合算出ステップと、この割合算出ステップで算出した割合を提示する割合提示ステップと、前記割合算出ステップで算出した割合が予め規定された閾値を超える場合に、無線使用の不適を通知する無線適性通知ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、計測対象における各データの発生箇所の隣接関係から予め規定された、無線データと有線データとの関係を示す関係情報に基づいて無線データと有線データとの整合性を判定することにより、無線データを受信する上位側で無線データの信頼性の低い状況を検出し、信頼性低下の可能性がある無線データの加工処理を行なうので、信頼性の高いデータと信頼性の低いデータとを識別できるようにすることが可能となる。
【0013】
また、本発明では、無線データが統計処理などのデータ処理に利用されるときに、信頼性低下の可能性がある無線データを削除するようにしたので、データ処理に信頼性の低いデータが混入する恐れを低減することができる。
【0014】
また、本発明では、信頼性低下の可能性有りとして加工されたデータの量の割合を算出することにより、無線使用の適否を判定することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[発明の原理1]
安全管理や操業効率管理に細心の注意が必要なプラントでは、多くの計測点や制御点がある。外気の影響を受けながら最適なエネルギー管理を目指す建物では、多くの計測点や制御点がある。究極的な微細化要求の進んだ半導体製造装置では、多くの計測点や制御点がある。そして、有線機器(計測機器、制御機器など)の設置が可能な箇所には、有線機器が既設されている。
すなわち、無線機器(特に計測機器)は有線機器の設置が困難であった箇所に補間的(つまり後付的)に設置されるケースが多い。発明者は、このような場合、信頼性(安定性)の高い有線機器が無線機器に隣接するように配置される(有線機器で計測されるデータと無線機器で計測されるデータに隣接関係がある)ことに着眼した。
【0017】
そして、発明者は、無線機器から送信されるデータについては、隣接する有線機器から送信されるデータとの不整合を検出することで、無線機器からのデータを異常や欠損として処理できることに想到した。例えば、バルブポジショナ(制御機器)によって計測されるバルブ開度(有線データ)の上昇と、圧力発信器(計測機器)によって計測されるタンクの液面位置(有線データ)の上昇とが確認されているにもかかわらず、バルブとタンクとの間を流れる液体の流量(無線データ)が更新されずに一定であれば、不整合と判定して、異常な流量データ(無線データ)に信頼性低下を示すフラグを付けるなどのデータ加工(データ処理)ができる。
【0018】
[発明の原理2]
信頼性低下を示すフラグを付けるデータ加工は、計測データを適正値に修正するわけではないので、計測データを有効利用することはできない。フラグが付けられたデータを例えば統計処理などに用いてしまうと、統計処理の信頼性が低下してしまうので、統計処理などに際して、フラグが付けられたデータを削除する(あるいは、統計処理における加重を自動的に小さくする)のが好ましい。
【0019】
[発明の原理3]
プラント内、建物内、製造装置内のいずれについても、無線経路がほぼ恒常的に確保でき難い場所はある。上記のようにデータ加工することにより、信頼性の低いデータの量の割合を確認することも可能になる。そして、この割合に基づき、無線使用の適否を判断することができる。
【0020】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は、上記発明の原理1、発明の原理2、発明の原理3に対応するものであり、無線データの信頼性低下時の現象としては、無線経路が人などの障害物により遮断され、上位側のデータ取得部に登録されるデータが更新されずに一定値のままになる現象を仮定する。
【0021】
図1は本実施の形態に係る無線データ管理装置の構成を示すブロック図である。無線データ管理装置100は、無線通信機能を備える計測機器等の無線データ送信機器1から無線データを受信して保持する無線データ受信部2と、有線通信機能を備える計測機器や制御機器等の有線データ送信機器3から有線データを受信して保持する有線データ受信部4と、計測対象における各データの発生箇所の隣接関係から予め規定された、無線データと有線データとの関係を示す関係情報に基づいて、無線データと有線データとの整合性を判定する整合性判定部5と、不整合と判定された無線データに信頼性低下の可能性を示す信頼性低下情報を加えるデータ加工処理部6と、データ加工処理部6によって加工された無線データ、および加工されることなくデータ加工処理部6を通過した無線データを記憶する記憶手段となるデータベース部7と、統計処理などのデータ処理の際にデータベース部7からデータを取得するデータ取得部8と、データベース部7から取得したデータに信頼性低下の可能性があるか否かを信頼性低下情報に基づいて確認し、取得したデータのうち信頼性低下の可能性があるデータを削除するデータ削除部9と、削除されていないデータを外部のデータ処理装置(不図示)に出力するデータ出力部10と、データベース部7に記憶されたデータを対象とし、信頼性低下の可能性有りとして加工されたデータの量の割合を算出する割合算出部11と、割合算出部11によって算出された割合を提示する割合提示部12と、割合算出部11によって算出された割合が予め規定された閾値を超える場合に、無線使用の不適を通知する無線適性通知部13とを備えている。
【0022】
なお、
図1では、無線データ管理装置100の内部に無線データ受信部2を設けているが、無線データ管理装置100が適用されるシステムが無線受信機を備えている場合には、この無線受信機が無線データ受信部2として利用される。同様に、
図1では、無線データ管理装置100の内部に有線データ受信部4を設けているが、無線データ管理装置100が適用されるシステムが有線受信機を備えている場合には、この有線受信機が有線データ受信部4として利用される。
【0023】
無線データ送信機器1と無線データ受信部2と有線データ送信機器3と有線データ受信部4と整合性判定部5とデータ加工処理部6とデータベース部7とは、発明の原理1に対応し、データ取得部8とデータ削除部9とデータ出力部10とは、発明の原理2に対応し、割合算出部11と割合提示部12と無線適性通知部13とは、発明の原理3に対応している。
【0024】
以下、計測機器などの無線データ送信機器1と無線データ受信部2との間で実際に無線通信が行なわれるときの無線データ管理装置100の動作を
図2を用いて説明する。
無線データ送信機器1は、例えば差圧発信機、温湿度センサ、温度センサなどで計測した計測データを無線データとして無線送信する。
無線データ受信部2は、無線データ送信機器1から送信された無線データを受信して一時的に保持する(
図2ステップS100)。なお、無線データ受信部2は、先入れ先出し(Fast-In Fast-Out)方式で無線データを格納する。
【0025】
有線データ送信機器3は、温度センサなどで計測した計測データあるいは制御指示データを有線データとして有線送信する。有線データ送信機器3は、複数個あってもよいし、隣接関係に基づいて信頼性の高い整合性判定が可能であるならば、1個のみであってもよい。
有線データ受信部4は、有線データ送信機器3から送信された有線データを受信して一時的に保持する(
図2ステップS101)。無線データ受信部2と同様に、有線データ受信部4は、先入れ先出し方式で有線データを格納する。
【0026】
整合性判定部5は、無線データ送信機器1の無線データ(計測データ)と有線データ送信機器3の有線データ(計測データあるいは制御指示データ)との予め規定された関係を示す関係情報に基づいて、無線データ受信部2から読み出した無線データと有線データ受信部4から読み出した有線データとの整合性を判定する(
図2ステップS102)。関係情報は、無線データ送信機器1の無線データの変化方向と、有線データ送信機器3の有線データの変化方向との関係を示す情報である。
【0027】
例えば無線式流量計測器(無線データ送信機器1)の計測データである流量データ(無線データ)よりも上流側のバルブポジショナ(有線データ送信機器3)で制御指示データである流量制御バルブの開度指示データ(有線データ)が発生し、無線式流量計測器の計測データ(無線データ)よりも下流側のタンクの圧力発信器(有線データ送信機器3)で計測データである液面位置データ(有線データ)が発生するという計測対象における各データの発生箇所の隣接関係がある。このような隣接関係を基に、バルブ開度指示データと液面位置データとが共に上昇するときに流量データも上昇し、バルブ開度指示データと液面位置データとが共に下降するときに流量データも下降するというような関係を関係情報として規定しておく。このような関係情報は、プラント運転者などのオペレータにより適宜設定される。
【0028】
整合性判定部5は、
図3(A)、
図3(B)に示すようにバルブ開度指示データと液面位置データが共に上昇したのに対して、
図3(C)に示すように流量データも上昇すれば、整合性有りと判定する。また、整合性判定部5は、
図3(D)に示すように液面位置データの上昇を確認できた時刻t1から時刻t2まで流量データの上昇を確認できない場合には、時刻t1から時刻t2までの間、不整合と判定する。
【0029】
データの上昇あるいは下降は、各々のデータに固有の閾値を予め規定しておくことにより検出すればよい。具体的には、データの単位時間当たりの増加が、このデータの予め規定された上昇閾値を超える場合にはデータが上昇していると判定し、データの単位時間当たりの減少が、このデータの予め規定された下降閾値を超える場合にはデータが下降していると判定すればよい。
【0030】
なお、関係情報は、変化方向だけでなく、変化のタイミングも規定するようにしてもよい。すなわち、関係情報は、無線データ送信機器1の無線データの変化方向および変化のタイミングと、有線データ送信機器3の有線データの変化方向および変化のタイミングとの関係を示すようにしてもよい。
【0031】
データ加工処理部6は、不整合と判定された場合(
図2ステップS102においてNO)、不整合と判定された無線データに信頼性低下の可能性を示す信頼性低下情報を加えるデータ加工を行なう(
図2ステップS103)。具体的には、データ加工処理部6は、信頼性低下情報として無線データに付加されている不整合フラグを“0”(信頼性低下の可能性無し)から“1”(信頼性低下の可能性有り)に更新すればよい。
【0032】
データベース部7は、無線データ受信部2から読み出されデータ加工処理部6によって加工された無線データおよび無線データ受信部2から読み出され加工されることなくデータ加工処理部6を通過した無線データを記憶する(
図2ステップS104)。
無線データ受信部2と有線データ受信部4とは、無線データと有線データを随時受信して保持し、整合性判定部5とデータ加工処理部6とデータベース部7とは、無線データ受信部2と有線データ受信部4とから無線データと有線データを一定時間毎に読み出して、ステップS102〜S104の処理を一定時間毎に行う。
【0033】
次に、無線データが統計処理などに利用されるときの無線データ管理装置100の動作を
図4を用いて説明する。
データ取得部8は、データベース部7からデータを取得する(
図4ステップS200)。データ削除部9は、データベース部7から取得したデータに信頼性低下の可能性があるかどうかを確認し(
図4ステップS201)、取得したデータのうち信頼性低下の可能性があるデータを削除する(
図4ステップS202)。データ削除部9は、データベース部7から取得したデータに信頼性低下情報が付加されている場合(不整合フラグが“1”の場合)、当該データに信頼性低下の可能性があると判断する。
【0034】
そして、データ出力部10は、データベース部7から取得したデータのうちデータ削除部9によって削除されていないデータを、統計処理などを行なう外部のデータ処理装置(不図示)に出力する(
図4ステップS203)。
【0035】
次に、無線使用の適否を検証するときの無線データ管理装置100の動作を
図5を用いて説明する。
データ取得部8は、データベース部7からデータを取得する(
図5ステップS300)。割合算出部11は、信頼性低下の可能性有りとして加工されたデータの量の割合を算出する(
図5ステップS301)。具体的には、割合算出部11は、例えば不整合フラグが“0”のデータの量αに対する不整合フラグが“1”のデータの量βの割合β/αを算出すればよい。
【0036】
割合提示部12は、割合算出部11によって算出された割合をオペレータが認識できるように提示(例えばデータベース部7を操作するための操作画面に表示)する(
図5ステップS302)。
無線適性通知部13は、割合算出部11によって算出された割合が予め規定された閾値を超えているか否かを判定し(
図5ステップS303)、割合が閾値を超えている場合、無線使用は不適の可能性があるものとして、判定結果をオペレータに通知する(
図5ステップS304)。
【0037】
以上のように、本実施の形態では、計測対象における各データの発生箇所の隣接関係から予め規定された、無線データと有線データとの関係を示す関係情報に基づいて無線データと有線データとの整合性を判定することにより、無線データを受信する上位側で無線データの信頼性の低い状況を検出し、信頼性低下の可能性がある無線データの加工処理を行なうので、信頼性の高いデータと信頼性の低いデータとを識別できるようにすることが可能となる。
【0038】
また、本実施の形態では、無線データが統計処理などに利用されるときに、信頼性低下の可能性がある無線データを削除するようにしたので、データ処理に信頼性の低いデータが混入する恐れを低減することができる。
また、本実施の形態では、信頼性低下の可能性有りとして加工されたデータの量の割合を算出することにより、無線使用の適否を判定することが可能となる。
【0039】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、建物の空調システムに第1の実施の形態の無線データ管理装置100を適用した場合の例を示すものである。
図6は本実施の形態の空調システムの構成を示すブロック図である。空調システムは、空調機21と、部屋20の温度を計測する室温センサ22と、建物のエネルギー最適化を目的として、建築後に設置された無線式の室温センサ23と、室温センサ23が計測した室温の計測データを無線データとして送信する無線データ送信部24と、空調機21を制御する空調管理システム25と、建物のエネルギー管理を行なうエネルギー管理システム26とから構成される。
【0040】
空調管理システム25は、室温センサ22によって計測された室温が室温設定値と一致するように空調機21を制御する。本実施の形態では、室温センサ22のみによる制御では、例えば冷やし過ぎや暖め過ぎが発生してエネルギー管理が不十分であり、別のセンサによる計測データが必要であるとして建物の建築後に室温センサ23が設置されたものとする。この室温センサ23と無線データ送信部24とが
図1の無線データ送信機器1を構成している。本実施の形態では、無線データ送信部24から送信される無線データを受信するために設けられた受信機を無線データ受信部2として利用する。
【0041】
エネルギー管理システム26は、室温センサ22,23からのデータを基に空調機21の制御を最適化する。
空調機21に設けられた熱媒熱交換器流量制御部などの制御指示装置(不図示)と有線式の室温センサ22とが、それぞれ
図1の有線データ送信機器3を構成している。室温センサ22は、空調機21の給気口から供給される給気の流路上において無線式の室温センサ23よりも下流側に位置するように設けられている。本実施の形態では、空調機21の制御指示装置から送信される制御指示データ(例えば空調機21の熱交換器を流れる熱媒の流量を制御するバルブの開度を指示するデータ)を受信するために設けられた受信機と、室温センサ22から送信される計測データを受信するために設けられた受信機とをそれぞれ有線データ受信部4として利用する。
【0042】
本実施の形態では、無線式の室温センサ23の計測データ(無線データ)よりも上流側で制御指示装置の制御指示データ(有線データ)が発生し、無線式の室温センサ23の計測データ(無線データ)よりも下流側で有線式の室温センサ22の計測データ(有線データ)が発生するという計測対象における各データの発生箇所の隣接関係がある。このような隣接関係を基に、制御指示データが下降し且つ室温センサ22の計測データが上昇するときに室温センサ23の計測データが上昇し、制御指示データが上昇し且つ室温センサ22の計測データが下降するときに室温センサ23の計測データが下降するというような関係が関係情報として予め規定されている。
【0043】
ただし、この関係情報は、冷房運転の場合で、制御指示データが上昇するとバルブの開度が大きくなって熱交換器を流れる熱媒の流量が増えることを前提にしている。暖房運転の場合には、例えば制御指示データが上昇し且つ室温センサ22の計測データが上昇するときに室温センサ23の計測データが上昇し、制御指示データが下降し且つ室温センサ22の計測データが下降するときに室温センサ23の計測データが下降するというような関係を関係情報として予め規定しておけばよい。
【0044】
無線データ管理装置100の動作は第1の実施の形態で説明したとおりである。外部のデータ処理装置(不図示)が行なう統計処理などのデータ処理の典型例としては、エネルギー最適化の運用状況実績の集計がある。
第1の実施の形態で説明したとおり、無線データ管理装置100を使用すれば、無線使用の適否を判定することができるので、無線経路が人(居住者)などの障害物により遮断されやすい位置に設置されていると判断される無線式の室温センサ23については、ビル管理者などのオペレータが設置位置を再検討したり有線化を検討したりすることができる。
【0045】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、工場のプラントに第1の実施の形態の無線データ管理装置100を適用した場合の例を示すものである。
図7はプラントの構成を示すブロック図である。プラントは、原料を入れるタンク30と、タンク30に入れる原料の量を制御するタンク制御装置31と、タンク30内の液面位置を計測する圧力発振器32と、タンク30に流入する原料の流量を計測する流量計測器33と、工場生産システムの健常性維持管理を目的として、生産システム稼働後に追加設置された無線式の流量計測器34と、流量計測器34が計測した原料の流量の計測データを無線データとして送信する無線データ送信部35と、原料の流量を制御するバルブ36と、バルブポジショナ37と、工場全体の製品の生産を管理するトータル生産管理システム38と、トータル生産管理システム38の下にあってプラントにおける製品の生産を管理するタンク制御システム39とから構成される。
【0046】
タンク制御システム39は、圧力発振器32によって計測された液面位置が液面位置設定値と一致するように、あるいは流量計測器33によって計測されや流量が流量設定値と一致するように、タンク制御装置31とバルブポジショナ37とを介してバルブ36の開度を制御する。本実施の形態では、圧力発振器32あるいは流量計測器33による制御では、健常性維持が不十分であり、別のセンサによる計測データが必要であるとして生産システム稼働後に流量計測器34が設置されたものとする。この流量計測器34と無線データ送信部35とが
図1の無線データ送信機器1を構成している。本実施の形態では、無線データ送信部35から送信される無線データを受信するために設けられた受信機を無線データ受信部2として利用する。
【0047】
トータル生産管理システム38は、流量計測器33からのデータを基にプラントが正常に稼働しているかどうかをチェックする。
バルブポジショナ37(制御指示装置)と有線式の圧力発信器32と有線式の流量計測器33とが、それぞれ
図1の有線データ送信機器3を構成している。圧力発信器32および流量計測器33は、バルブ36からタンク30への原料の流路上において無線式の流量計測器34よりも下流側に位置するように設けられている。本実施の形態では、バルブポジショナ37から送信される制御指示データ(バルブ36の開度を指示するデータ)を受信するために設けられた受信機と、圧力発信器32から送信される計測データを受信するために設けられた受信機と、流量計測器33から送信される計測データを受信するために設けられた受信機とをそれぞれ有線データ受信部4として利用する。
【0048】
本実施の形態では、無線式の流量計測器34の計測データ(無線データ)よりも上流側でバルブポジショナ37の制御指示データ(有線データ)が発生し、無線式の流量計測器34の計測データ(無線データ)よりも下流側で有線式の圧力発信器32の計測データ(有線データ)および流量計測器33の計測データ(有線データ)が発生するという計測対象における各データの発生箇所の隣接関係がある。このような隣接関係を基に、制御指示データが上昇し且つ圧力発信器32の計測データが上昇するときに流量計測器34の計測データが上昇し、制御指示データが下降し且つ圧力発信器32の計測データが下降するときに流量計測器34の計測データが下降するというような関係が関係情報として予め規定されている。
【0049】
あるいは圧力発信器32の代わりに流量計測器33を用いる場合には、制御指示データが上昇し且つ流量計測器33の計測データが上昇するときに流量計測器34の計測データが上昇し、制御指示データが下降し且つ流量計測器33の計測データが下降するときに流量計測器34の計測データが下降するというような関係を関係情報として予め規定しておけばよい。
【0050】
無線データ管理装置100の動作は第1の実施の形態で説明したとおりである。外部のデータ処理装置(不図示)が行なう統計処理などのデータ処理の典型例としては、健常性維持管理の効果確認のための集計がある。
第1の実施の形態で説明したとおり、無線データ管理装置100を使用すれば、無線使用の適否を判定することができるので、無線経路が移動物(搬送装置)などの障害物により遮断されやすい位置に設置されていると判断される無線式の流量計測器34については、生産管理者などのオペレータが設置位置を再検討したり有線化を検討したりすることができる。
【0051】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、半導体製造装置に第1の実施の形態の無線データ管理装置100を適用した場合の例を示すものである。
図8は半導体製造装置の構成を示すブロック図である。半導体製造装置は、処理対象の被加熱物を加熱する加熱チャンバー40と、電気ヒータ41と、加熱チャンバー40内の温度を計測する温度センサ42と、半導体製造装置の稼働状態改善を目的として、半導体製造装置稼働後に被加熱物位置付近に追加設置された無線式の非接触温度センサ43(例えば放射温度計など)と、温度センサ43が計測した加熱チャンバー40内の温度の計測データを無線データとして送信する無線データ送信部44と、加熱チャンバー40内の温度を制御する温度制御装置45と、電力調整器46と、電力調整回路47と、半導体製造装置全体を制御するPLC(Programmable Logic Controller)/PC(Personal Computer)モジュール48とから構成される。
【0052】
温度制御装置45は、温度センサ42が計測した温度が温度設定値と一致するように操作量MVを算出する。電力調整器46は、操作量MVに応じた電力を決定し、この決定した電力を電力供給回路47を通じて電気ヒータ41に供給する。こうして、温度制御装置45は、加熱チャンバー40内の被加熱物の温度を制御する。本実施の形態では、温度センサ42のみによる制御では、半導体製造装置の稼働状態改善が不十分であり、別のセンサによる計測データが必要であるとして製造装置稼働後に温度センサ43が設置されたものとする。この温度センサ43と無線データ送信部44とが
図1の無線データ送信機器1を構成している。本実施の形態では、無線データ送信部44から送信される無線データを受信するために設けられた受信機を無線データ受信部2として利用する。
【0053】
PLC/PCモジュール48は、温度センサ43からのデータを基に加熱チャンバー40内の温度を制御して半導体製造装置の稼働状態を改善する。
温度制御装置45(制御指示装置)と有線式の温度センサ42とが、それぞれ
図1の有線データ送信機器3を構成している。温度センサ42は、電気ヒータ41によって加熱された熱風が循環する加熱チャンバー40内において無線式の温度センサ43よりも気流の下流側に位置するように設けられている。本実施の形態では、温度制御装置45から送信される制御指示データ(操作量MV)を受信するために設けられた受信機と、温度センサ42から送信される計測データを受信するために設けられた受信機とをそれぞれ有線データ受信部4として利用する。
【0054】
本実施の形態では、無線式の温度センサ43の計測データ(無線データ)よりも上流側で温度制御装置45の制御指示データ(有線データ)が発生し、無線式の温度センサ43の計測データ(無線データ)よりも下流側で有線式の温度センサ42の計測データ(有線データ)が発生するという計測対象における各データの発生箇所の隣接関係がある。このような隣接関係を基に、制御指示データが上昇し且つ温度センサ42の計測データが上昇するときに温度センサ43の計測データが上昇し、制御指示データが下降し且つ温度センサ42の計測データが下降するときに温度センサ43の計測データが下降するというような関係が関係情報として予め規定されている。
【0055】
無線データ管理装置100の動作は第1の実施の形態で説明したとおりである。外部のデータ処理装置(不図示)が行なう統計処理などのデータ処理の典型例としては、稼働状態改善の効果確認のための集計がある。
第1の実施の形態で説明したとおり、無線データ管理装置100を使用すれば、無線使用の適否を判定することができるので、無線経路が移動物(被加熱物)などの障害物により遮断されやすい位置に設置されていると判断される無線式の温度センサ43については、オペレータが設置位置を再検討したり有線化を検討したりすることができる。
【0056】
第1〜第4の実施の形態で説明した無線データ管理装置100は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第4の実施の形態で説明した処理を実行する。