(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明を採用したワイパモータの構造を示す平面図を、
図2は
図1のワイパモータのウォームホイールを示す斜視図を、
図3は
図2のA−A線に沿う部分拡大断面図をそれぞれ表している。
【0022】
図1は減速機構付モータとしてのワイパモータであって、当該ワイパモータ10は、本発明における駆動機構を構成している。ワイパモータ10は、図示しない自動車のリヤハッチに搭載される所謂リヤワイパモータであり、ワイパモータ10は、リヤハッチに装着されたウィンドシールドを払拭するワイパ部材(図示せず)を揺動駆動するようになっている。つまり、ワイパ部材は本発明における駆動対象物を構成している。
【0023】
ワイパモータ10は、モータ部20とギヤ部30とを備えており、当該モータ部20とギヤ部30とは、複数の締結ネジ11によって一体化(ユニット化)されている。
【0024】
モータ部20は、磁性材料よりなる鋼板をプレス加工等することにより有底筒状に形成されたヨーク21を備えており、ヨーク21の内部には、例えば、4つの永久磁石22(図示では2つのみ示す)がそれぞれ対向するよう配置されている。各永久磁石22の内側には、コイル23が巻装されるスロット(図示せず)を有するアーマチュアコア24が回転自在に設けられており、アーマチュアコア24の回転中心には、鋼材よりなるアーマチュア軸25が貫通して固定されている。
【0025】
アーマチュア軸25のアーマチュアコア24に近接する部分には、コンミテータ(整流子)26が固定されており、コンミテータ26には、アーマチュアコア24に巻装されたコイル23の端部が電気的に接続されている。コンミテータ26の外周部には、複数のブラシ27(図示では2つのみ示す)が摺接するようになっており、各ブラシ27はそれぞれバネ部材28によってコンミテータ26に所定圧で押圧されている。これにより、各ブラシ27にコントローラ(図示せず)から駆動電流を供給することでアーマチュアコア24に回転力(電磁力)が発生し、アーマチュア軸25が所定の回転数および回転トルクで回転するようになっている。
【0026】
アーマチュア軸25の先端側(図中左側)はヨーク21の外部にまで延ばされており、アーマチュア軸25の先端側には、減速機構を形成するウォーム29が一体に形成されている。このウォーム29は、例えば、アーマチュア軸25の先端側を、ロールダイスを備えた転造装置により転造加工することで、アーマチュア軸25に一体成形されている。
【0027】
ただし、ウォーム29は、上述のようにアーマチュア軸25の先端側に一体成形せずに別体としても良い。例えば、ウォームを有するウォーム軸(図示せず)をギヤケース31の内部に予めセットしておき、ギヤ部30とモータ部20とを連結する際に、ウォーム軸とアーマチュア軸とを連結部材(図示せず)を介して一体回転可能に連結するようにしても良い。
【0028】
ギヤ部30は、溶融したアルミ材料等を鋳造加工することにより有底状に形成されたギヤケース31を備えており、ギヤケース31の内部には、減速機構DSを形成するウォームホイール(ギヤ)40が回転自在に収容されている。
【0029】
図2,3に示すように、ウォームホイール40は、プラスチック等の樹脂材料によって形成され、円盤状の本体部41と、当該本体部41の径方向外側に設けられる歯部42とを備えており、さらに本体部41の軸方向一側(
図2中手前側/
図3中上側)には、導電部材としてのコンタクトプレート43(図中網掛部分)が設けられている。
【0030】
本体部41の回転中心には、支持孔41aが設けられ、当該支持孔41aは、ギヤケース31の底部に固定された支持ピン32(
図1参照)に回動自在に装着されている。これにより、ウォームホイール40は、ギヤケース31の内部で軸心Bを中心に回動自在となっている。
【0031】
本体部41の軸方向一側には、ウォームホイール40の軸方向に沿うよう窪んだ環状凹部41bが形成されており、当該環状凹部41bの径方向に沿う支持孔41a寄りには、深さ寸法T(例えば、0.2mm〜0.4mm)のコンタクトプレート収容凹部41cが形成されている。そして、このコンタクトプレート収容凹部41cの内部には、コンタクトプレート43が設けられるようになっている。ここで、コンタクトプレート43は、流動性を有する金属材料(材料)をコンタクトプレート収容凹部41cの内部に供給して定着させることで、これによりウォームホイール40に一体成形されるようになっている。当該製造方法については後述する。
【0032】
本体部41の軸方向他側(
図1中手前側/
図3中下側)には、支持孔41aの周囲を囲うようにして、複数の軸装着孔41dが形成されている。これらの各軸装着孔41dのうちの1つには、第2リンク部材52(
図1参照)の長手方向他端側を回動自在に支持する第2連結ピンP2(
図1参照)が装着されるようになっている。これにより、ギヤケース31の内部で第2リンク部材52が揺動運動するようになっている。
【0033】
また、本体部41の軸方向他側には、複数の大肉盗み部41eおよび1つの小肉盗み部41fがそれぞれ設けられている。大肉盗み部41eは、小肉盗み部41fに比して、深さ寸法および幅寸法がいずれも大きく設定され、
図1に示すように、軸装着孔41dと小肉盗み部41fとの間で、かつ本体部41の周方向に沿って等間隔で複数設けられている。一方、小肉盗み部41fは、大肉盗み部41eと歯部42との間で環状に設けられている。
【0034】
これらの各肉盗み部41e,41fは、ウォームホイール40の軽量化を実現しつつ、ウォームホイール40を射出成形した後に、所謂「ヒケ」や「ボイド」が発生するのを抑制して、歯部42,支持孔41a,各軸装着孔41d等の成形精度を向上させるようにしている。
【0035】
本体部41の径方向外側(外周部分)には、所定ピッチの歯部42が一体に形成されており、当該歯部42には、アーマチュア軸25に一体に設けたウォーム29が噛み合わされている。これにより、ウォームホイール40はウォーム29の回転を減速して高トルク化し、この高トルク化された回転を、第2リンク部材52に出力するようになっている。
【0036】
コンタクトプレート43は、コンタクトプレート収容凹部41cの形状に倣って略環状に形成されている。このコンタクトプレート43には、径方向外側に向けて突出する凸部(制動舌片)43aおよび径方向外側に向けて窪んだ凹部(遮断切欠)43bが形成されている。なお、凸部43aおよび凹部43bは、コンタクトプレート43の周方向に沿う同位置に配置されている。
【0037】
そして、コンタクトプレート43には、ウォームホイール40の回転に伴い、固定側であるコネクタユニットCU(
図1参照)に設けられた3つの固定コンタクト(詳細図示せず)CP1,CP2,CP3の先端側が摺接するようになっている。ここで、各固定コンタクトCP1〜CP3は、本発明における固定接触子を構成しており、例えば、黄銅等の導電性に優れた金属板により形成されている。
【0038】
このように、ウォームホイール40に凸部43aおよび凹部43bを有するコンタクトプレート43を装着し、当該コンタクトプレート43上を摺接するよう各固定コンタクトCP1〜CP3を設けることにより、各固定コンタクトCP1〜CP3の短絡状態(通電状態)や非通電状態が、図示しない車載コントローラに送られる。これにより、車載コントローラは、ウォームホイール40の回転状態、つまりワイパ部材(駆動対象物)の作動位置を検知し、ワイパ部材を所定の停止位置で停止させることができる。
【0039】
ここで、各固定コンタクトCP1〜CP3は、凸部43aおよび凹部43bを介して、環状凹部41b上とコンタクトプレート43上との双方に摺接するが、
図3に示すように、コンタクトプレート43をコンタクトプレート収容凹部41cの内部に密に設けて段差を無くしているので、各固定コンタクトCP1〜CP3のガタつきが抑えられている(静粛性向上)。
【0040】
図1に示すように、ギヤケース31のウォームホイール40から離れた部分(図中左側)には、断面が円形の鋼棒よりなる出力軸33が配置されており、当該出力軸33は、ギヤケース31に設けられたボス部(図示せず)に回動自在に支持されている。出力軸33の基端側はギヤケース31の内部に設けられ、出力軸33の先端側(図中奥側)はギヤケース31の外部に延出されている。そして、出力軸33の外部に延出した延出部分(図示せず)には、ワイパ部材を形成するワイパアーム(図示せず)の基端部が固定されている。
【0041】
ギヤケース31の内部で、ウォームホイール40と出力軸33との間には、ウォームホイール40の回転運動Rを出力軸33の揺動運動SWに変換する運動変換機構50が設けられている。運動変換機構50は、第1リンク部材51および第2リンク部材52を備えている。
【0042】
第1リンク部材51は、鋼板を打ち抜き加工等することで板状に形成され、第1リンク部材51の長手方向一端側は、出力軸33の基端側に固定されている。一方、第1リンク部材51の長手方向他端側は、第2リンク部材52の長手方向一端側に、第1連結ピンP1を介して回動自在に連結されている。
【0043】
第2リンク部材52の長手方向他端側は、第2連結ピンP2を介してウォームホイール40に設けた軸装着孔41dに回動自在に連結されている。ここで、第1リンク部材51の長さ寸法は第2リンク部材52の長さ寸法に対して略半分(略1/2)に設定されている。また、第2リンク部材52においても、第1リンク部材51と同様に鋼板を打ち抜き加工等することで板状に形成されている。
【0044】
このように、ウォームホイール40と出力軸33との間に運動変換機構50を設けることにより、ウォームホイール40の一方向への回転に伴い出力軸33を所定角度範囲で揺動できるようにしている。具体的には、ウォーム29およびウォームホイール40の回転により、減速して高トルク化された回転が第2連結ピンP2に伝達され、第2連結ピンP2が支持ピン32(軸心B)を中心に矢印R方向に回転する。すると、第2リンク部材52の長手方向他端側も支持ピン32を中心に回転し、これにより第2リンク部材52の長手方向一端側が、第1連結ピンP1を介して第1リンク部材51に規制された状態で、出力軸33を中心に矢印SW方向に揺動する。
【0045】
次に、以上のように形成したワイパモータ10を形成するウォームホイール40の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0046】
図4はウォームホイールの第1製造工程を説明する工程説明図を、
図5はウォームホイールの第2製造工程を説明する工程説明図を、
図6はウォームホイールの第3製造工程を説明する工程説明図を、
図7はウォームホイールの第4製造工程を説明する工程説明図を、
図8はウォームホイールの第5製造工程を説明する工程説明図を、
図9はウォームホイールの第6製造工程を説明する工程説明図をそれぞれ表している。
【0047】
本実施の形態においては、
図4に示すような射出成形装置100を用いて、コンタクトプレート43が一体成形されたウォームホイール40(
図2,3参照)を成形するようになっている。まず、各製造工程(第1製造工程〜第6製造工程)を説明する前に、射出成形装置100の概要について説明する。
【0048】
図4に示すように、射出成形装置100は、第1成形型としての上金型110と、第2成形型(成形型)としての下金型120とを備えている。上金型110は下金型120に対して、図示しない電動駆動機構等により、垂直方向に上下動するようになっている。一方、下金型120は、床等に設置された基台(図示せず)に対して、図示しない電動駆動機構等により、水平方向にスライド移動するようになっている。ここで、図中左側が入口側で、図中右側が出口側となっている。つまり、ウォームホイール40は、図中左側の入口側から成形されていき、図中右側の出口側から排出されるようになっている。
【0049】
上金型110は、図中破線部分を境界として、入口側にギヤ成形部111を備え、出口側に導電部材成形部112を備えている。
【0050】
ギヤ成形部111は、ウォームホイール40の軸方向一側を形成するものである。ギヤ成形部111の下金型120との対向部分には、ウォームホイール40の環状凹部41b(
図3参照)を形成するための第1凸部111aと、コンタクトプレート収容凹部41cを形成するための第2凸部111bとが設けられている。第2凸部111bは第1凸部111aから突出しており、その突出高さは高さ寸法Tとなっている。
【0051】
ギヤ成形部111の略中央部分には、位置決め凹部111cが形成されており、当該位置決め凹部111cには、下金型120の支持孔形成凸部121が差し込まれるようになっている。これにより、ギヤ成形部111および下金型120は、互いに正規の位置に正確に位置決めされるようになっている。
【0052】
ギヤ成形部111の第1凸部111aに対応する部分で、第2凸部111bを避けた部分には、第1ゲート部111dが設けられている。第1ゲート部111dの端部は、ギヤ成形部111と下金型120とを突き合わせることで形成されるギヤ形成空間S1(
図5参照)に開口されている。
【0053】
第1ゲート部111dには、射出成形装置100を形成する第1ディスペンサd1からの溶融樹脂W1(
図5参照)が供給され、これにより、ギヤ形成空間S1に溶融樹脂W1を充填できるようになっている。
【0054】
導電部材成形部112は、ギヤ成形部111によって形成されたコンタクトプレート収容凹部41cに、コンタクトプレート43(
図2,3参照)の基となる流動性を有する材料を供給するものである。導電部材成形部112の下金型120との対向部分で、かつコンタクトプレート収容凹部41cとの対向部分には、コンタクトプレート収容凹部41cの形状と略同じ横断面形状(詳細図示せず)に形成された第2ゲート部112aが、開口するよう設けられている。
【0055】
第2ゲート部112aには、射出成形装置100を形成する第2ディスペンサd2からの金属物質(材料)W2(
図8参照)が供給され、これによりコンタクトプレート収容凹部41cに金属物質W2が充填されるようになっている。ここで、金属物質W2としては、例えば、黄銅等の金属粉末とバインダー(結合剤)とを混合した流動性を有する材料が用いられ、本実施の形態においては、当該金属物質W2を第2ディスペンサd2から噴射することで、コンタクトプレート43となる金属物質W2を、コンタクトプレート収容凹部41cの内部に一体化するようにしている。
【0056】
また、導電部材成形部112の略中央部分には、位置決め凹部112bが形成されており、当該位置決め凹部112bには、下金型120の支持孔形成凸部121が差し込まれるようになっている。これにより、導電部材成形部112および下金型120は、互いに正規の位置に正確に位置決めされるようになっている。
【0057】
下金型120は、上金型110のギヤ成形部111および導電部材成形部112に対応する複数のブロックa,ブロックb,ブロックc・・・ブロックnを備えている。各ブロックa〜nは、図中破線部分を境界として分けられるが、各ブロックa〜nは何れも同様に形成されるため、
図4に示すブロックaを参照しつつ、その構造について説明する。
【0058】
下金型120を形成するブロックaの略中央部分には、ウォームホイール40の支持孔41a(
図2,3参照)を形成するための支持孔形成凸部121が設けられている。支持孔形成凸部121の先端側(図中上側)は、下金型120から上金型110に向けて大きく突出しており、ギヤ成形部111の位置決め凹部111cおよび、導電部材成形部112の位置決め凹部112bに差し込まれるようになっている。
【0059】
支持孔形成凸部121の径方向外側には、ウォームホイール40の各軸装着孔41d(
図1,3参照)を形成するための複数の軸装着孔形成凸部122が設けられている。各軸装着孔形成凸部122の突出高さは、支持孔形成凸部121の突出高さに比して略半分(略1/2)に設定されている。
【0060】
また、各軸装着孔形成凸部122の内の少なくとも2つには、
図4に示すように、駆動モータMにより昇降駆動される昇降ピンPNが摺動自在に設けられている。そして、各昇降ピンPNを上昇駆動することで、完成したウォームホイール40を下金型120から取り外せるようになっている。なお、駆動モータMは、下金型120の出口側のみに設けられている。
【0061】
各軸装着孔形成凸部122のさらに径方向外側には、ウォームホイール40の各大肉盗み部41e(
図1,3参照)を形成するための複数の大肉盗み部形成凸部123が設けられている。また、各大肉盗み部形成凸部123のさらに径方向外側には、ウォームホイール40の小肉盗み部41f(
図1,3参照)を形成するための環状の小肉盗み部形成凸部124が設けられている。
【0062】
小肉盗み部形成凸部124の径方向外側には、ウォームホイール40の歯部42(
図1,2参照)を形成するための歯部形成部125が設けられている。歯部形成部125の上金型110側には、ギヤ成形部111および導電部材成形部112が所定量嵌合するようになっている。これにより、
図5に示すように、各金型110,120を突き合わせた状態のもとで、ギヤ形成空間S1が密閉状態で形成されるようになっている。
【0063】
ウォームホイール40は、上述した射出成形装置100により、第1製造工程ないし第6製造工程を経て製造される。
【0064】
[第1製造工程]
まず、
図4に示すように、ウォームホイール40を形成する上金型110および下金型120を、電動駆動機構等(図示せず)を駆動して互いに対向させた状態のもとで初期位置となるようセットする。ここで言う初期位置とは、
図4に示す状態のことであり、具体的には、下金型120の各ブロックa〜nには何も無く、上金型110が下金型120から離間し、第1ディスペンサd1,第2ディスペンサd2および駆動モータMが停止している状態のことである。ここで、
図4に示すように各金型110,120を初期位置にセットする工程が、本発明における成形型セット工程を構成している。
【0065】
その後、射出成形装置100の操作スイッチ等を操作して、射出成形装置100を作動させると、図中破線矢印(1)に示すように、上金型110が下金型120に向けて下降し、その後、
図5に示すように、上金型110が下金型120に突き合わせられる。これにより、上金型110のギヤ成形部111と、下金型120のブロックbとの間には、ギヤ形成空間S1が形成される。これにより第1製造工程が完了する。
【0066】
[第2製造工程]
次に、各金型110,120が突き合わせられた後は、
図5に示すように、ギヤ成形部111に対応して設けられた第1ディスペンサd1のみが駆動される。すると、図中破線矢印(2)に示すように、第1ディスペンサd1から第1ゲート部111dに向けて溶融樹脂W1が供給される。第1ゲート部111dを通過した溶融樹脂W1は、ブロックbのギヤ形成空間S1に到達し、さらに第1ディスペンサd1を駆動することで、徐々にギヤ形成空間S1の内部が溶融樹脂W1で満たされていく。
【0067】
これにより、ブロックbの内部で円盤状の本体部41,コンタクトプレート収容凹部41c,本体部41の径方向外側に設けられる歯部42等を備えたウォームホイール40(
図2,3参照)が形成され、第2製造工程が完了する。ここで、
図5に示すように、各金型110,120を突き合わせてギヤ形成空間S1を形成し、コンタクトプレート43を備えないウォームホイール40(半製品)を成形する工程が、本発明におけるギヤ成形工程を構成している。
【0068】
[第3製造工程]
ウォームホイール40(半製品)が形成されると、次いで、第1ディスペンサd1が停止されるとともに、
図6の破線矢印(3)に示すように、上金型110が上昇し、上金型110が下金型120およびウォームホイール40から離間する。ここで、上金型110とウォームホイール40との接触面積は、下金型120とウォームホイール40との接触面積に比して小さいため、上金型110によってウォームホイール40が引き上げられることは無く、ウォームホイール40は下金型120に確実に残るようになっている。
【0069】
次いで、図中破線矢印(4)に示すように、下金型120が上金型110に対してスライド移動し、これにより、ウォームホイール40が装着された状態の下金型120のブロックbが、上金型110の導電部材成形部112と対向するようになる。これにより、第3製造工程が完了する。このように、本実施の形態においては、下金型120のブロックbからウォームホイール40(半製品)を取り外すこと無く装着した状態のもとで、上金型110のギヤ成形部111から導電部材成形部112に変更できるようになっている。つまり、下金型120を共通として別工程に移行できるようになっている。
【0070】
[第4製造工程]
その後、第3製造工程に引き続き、
図7の破線矢印(5)に示すように、上金型110が下金型120に向けて下降し、
図8に示すように、上金型110が下金型120に突き合わせられる。これにより、上金型110の導電部材成形部112と下金型120のブロックbとが突き合わされて、ウォームホイール40(半製品)のコンタクトプレート収容凹部41cと第2ゲート部112aとが対向し、導電部材形成空間S2が形成される。
【0071】
一方、上金型110のギヤ成形部111および下金型120のブロックcについても同様に突き合わされて、上述の第1製造工程と同様にギヤ形成空間S1が形成される。このとき、第1ディスペンサd1,第2ディスペンサd2および駆動モータMは、何れも停止した状態となっている。これにより第4製造工程が完了する。
【0072】
[第5製造工程]
次に、
図8に示すように、導電部材成形部112に対応して設けられた第2ディスペンサd2が駆動される。すると、図中破線矢印(6)に示すように、第2ディスペンサd2から第2ゲート部112aに向けて金属物質W2が噴射される。これにより、第2ゲート部112aを通過した金属物質W2は導電部材形成空間S2に供給され、ウォームホイール40のコンタクトプレート収容凹部41cに充填されていく。ここで、第2ディスペンサd2からの金属物質W2の噴射量は、コンタクトプレート収容凹部41cの容積等に基づいて設定される。
【0073】
その後、金属物質W2の噴射量が規定値に達したところで、第2ディスペンサd2は停止される。これにより、ウォームホイール40に対してコンタクトプレート43が一体成形され、第5製造工程が完了する。ここで、各金型110,120を突き合わせて導電部材形成空間S2を形成し、コンタクトプレート43が一体化されたウォームホイール40(完成品)を成形する工程が、本発明における導電部材成形工程を構成している。
【0074】
なお、第5製造工程においては、上金型110のギヤ成形部111と、下金型120のブロックcとが突き合わされて、両者間にギヤ形成空間S1が形成されるようになっている。そして、図中破線矢印(7)に示すように、第1ディスペンサd1が駆動されて、ブロックcのギヤ形成空間S1の内部に溶融樹脂W1が徐々に満たされていく。このように、本実施の形態においては、下金型120の複数のブロックa〜nによって、次々とウォームホイール40(半製品から完成品)が製造されるようになっている。
【0075】
[第6製造工程]
ウォームホイール40(完成品)が形成されると、次いで、第2ディスペンサd2および第1ディスペンサd1が停止されるとともに、
図9の破線矢印(8)に示すように、上金型110が上昇し、上金型110が下金型120およびウォームホイール40(半製品および完成品)から離間する。その後、下金型120の出口側にある駆動モータMが駆動されて、図中破線矢印(9)に示すように、各昇降ピンPNが上昇駆動される。これにより、図中破線矢印(10)に示すように、コンタクトプレート43が一体化されたウォームホイール40が、下金型120のブロックbから取り外されて、第6製造工程が完了する。ここで、各昇降ピンPNにより下金型120からウォームホイール40(完成品)を取り外す工程が、本発明におけるギヤ取り外し工程を構成している。
【0076】
以上詳述したように、第1実施の形態に係るウォームホイール40およびその製造方法によれば、ウォームホイール40の本体部41の軸方向一側に、各固定コンタクトCP1〜CP3が摺接するコンタクトプレート43を、流動性を有する金属物質W2を供給することで一体成形したので、ウォームホイールとコンタクトプレートとを別体として後で装着することで起こり得る従前のような問題点、つまり、互いにガタつくよう組み付けられて異音やチャタリングが発生する等の問題を解決することができる。これにより、歩留まりおよび静粛性の向上を図ることが可能となる。
【0077】
また、第1実施の形態に係るウォームホイール40およびその製造方法によれば、コンタクトプレート43は、本体部41に流動性を有する金属物質W2を供給することで、本体部41に一体成形されるので、コンタクトプレート43と本体部41とを強固に一体化して、外れ難くすることができる。
【0078】
さらに、第1実施の形態に係るウォームホイール40およびその製造方法によれば、ウォームホイール40を成形する下金型120にウォームホイール40(半製品)を装着した状態のもとで、コンタクトプレート43を形成するので、コンタクトプレート43を一体化したウォームホイール40(完成品)を容易に製造することができ、ひいては工数削減を図ることができる。
【0079】
また、第1実施の形態に係るウォームホイール40およびその製造方法によれば、ウォームホイール40は、ギヤ部30およびモータ部20を備えた減速機構付モータであるワイパモータ10を形成し、歯部42には、モータ部20のアーマチュア軸25により回転されるウォーム29が噛み合わされるので、車載用の駆動機構として小型化することができる。
【0080】
次に、本発明の第2実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述の第1実施の形態と同様の機能を有する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0081】
図10は第2実施の形態に係る
図8に対応する工程説明図を表している。
【0082】
図10に示すように、第2実施の形態においては、第1実施の形態に比して、上金型110における導電部材成形部130(出口側)の形状が異なっている。また、金属物質W3として、第1実施の形態における金属物質W2(
図8参照)と同じ材料で、より粘度が高い(粘性を有する)材料を用い、当該金属物質W3を、第3ディスペンサd3から導電部材形成空間S2に供給するようにした点が異なっている。
【0083】
導電部材成形部130の下金型120との対向部分で、かつコンタクトプレート収容凹部41cとの対向部分には、第3ゲート部131の端部が開口するよう設けられている。これにより、図中破線矢印(11)に示すように、第3ゲート部131から導電部材形成空間S2に金属物質W3が供給されるようになっている。そして、第3ディスペンサd3を続けて作動させることで、第3ゲート部131から供給された金属物質W3が、コンタクトプレート収容凹部41cの内部の全域に行き渡る。これにより、ウォームホイール40(半製品)に対して、金属物質W3よりなるコンタクトプレート43が一体成形され(
図2参照)、ウォームホイール40(完成品)が完成する。
【0084】
以上詳述したように、第2実施の形態に係るウォームホイール40およびその製造方法においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0096】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記第1,第2実施の形態においては、コンタクトプレート43を形成する流動性を有する材料として、黄銅等の金属粉末とバインダーとを混合した金属物質W2,W3を用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、コンタクトプレート43に必要とされる剛性等に応じて、他の導電性を有する金属粉末等を用いることもできる。
【0098】
さらに、上記各実施の形態においては、本発明におけるギヤを、自動車のリヤ側に搭載されるワイパモータ10に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、自動車のフロント側に搭載されるワイパモータや、航空機,鉄道車両,建設機械等に搭載されるワイパモータ、さらには他の用途に使用される減速機構付モータ等に適用することもできる。
【0099】
また、上記各実施の形態においては、ワイパモータ10のモータ部20として、一対のブラシ27を備えたモータ部20を採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、ブラシを備えないブラシレスのモータ部を採用することもできる。