特許第6088256号(P6088256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088256
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】部品供給システム
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20170220BHJP
   B23P 19/00 20060101ALI20170220BHJP
   B65G 35/08 20060101ALI20170220BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   B23P21/00 307P
   B23P19/00 302G
   B23P21/00 303Z
   B65G35/08 A
   B62D65/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-6632(P2013-6632)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-136293(P2014-136293A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和明
(72)【発明者】
【氏名】坂口 竜太
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−228276(JP,A)
【文献】 特開平10−291473(JP,A)
【文献】 特開2008−221421(JP,A)
【文献】 特開平10−100029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 21/00
B23P 19/00
B62D 65/00
B65G 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を組み立てる組立ラインに部品を供給する部品供給システムであって、
第1部品群が積載される第1台車と、
第2部品群が積載される第2台車と、
前記組立ライン側方の台車搬送経路に沿って、前記第1台車及び/又は前記第2台車を搬送する自走式搬送車と、
前記第1部品群が前記第1台車に積載され、前記第2部品群が前記第2台車に積載される、部品積載ステーションと、
前記台車搬送経路上の、部品積載状態の前記第1及び第2台車を分離するための第1及び第2分離ステーションと、
前記台車搬送経路上の、部品供給が終了した空の前記第1及び第2台車を連結するための第1及び第2連結ステーションと、を備えており、
前記各ステーションにおいて、前記第1及び前記第2台車が分離又は連結されるように構成されており、
前記第1分離ステーションは、前記組立ラインの一側方に配置され、
前記第2分離ステーションは、前記組立ラインの他側方に配置され、
前記第1及び第2連結ステーションは、前記第1及び前記第2分離ステーションに対して前記組立ラインの下流側に配置され、
前記自走式搬送車は、
前記部品積載ステーションから、部品積載状態の前記第1台車及び前記第2台車を連結した状態で、前記第1分離ステーションに搬送した後、前記第1台車を分離し、
さらに、前記第2台車を前記第1連結ステーションに搬送した後、前記第2台車と部品供給が終了した空の第1台車とを連結し、
さらに、前記第2台車と前記空の第1台車とを連結した状態で、前記第2連結ステーションに搬送した後、部品供給が終了した空の第2台車をさらに連結し、
さらに、前記空の第1台車と前記第2台車と前記空の第2台車とを連結した状態で、前記第2分離ステーションに搬送した後、前記第2台車を分離し、
前記空の第1台車と前記空の第2台車とを連結した状態で、前記部品積載ステーションに搬送するように構成されている部品供給システム。
【請求項2】
車両を組み立てる組立ラインに部品を供給する部品供給システムであって、
第1部品群が積載される第1台車と、
第2部品群が積載される第2台車と、
前記組立ライン側方の台車搬送経路に沿って、前記第1台車及び/又は前記第2台車を搬送する自走式搬送車と、
前記第1部品群が前記第1台車に積載され、前記第2部品群が前記第2台車に積載される、部品積載ステーションと、
前記台車搬送経路上の、部品積載状態の前記第1及び第2台車を分離するための第1及び第2分離ステーションと、
前記台車搬送経路上の、部品供給が終了した空の前記第1及び第2台車を連結するための第1及び第2連結ステーションと、を備えており、
前記各ステーションにおいて、前記第1及び前記第2台車が分離又は連結されるように構成されており、
前記第1分離ステーションは、前記組立ラインの一側方に配置され、
前記第2分離ステーションは、前記第1分離ステーションに対して前記組立ラインの下流側に配置され、
前記第1及び第2連結ステーションは、前記第1及び前記第2分離ステーションに対して前記組立ラインの下流側に配置され、
前記自走式搬送車は、
前記部品積載ステーションから、部品積載状態の前記第1台車及び前記第2台車を連結した状態で、前記第1分離ステーションに搬送した後、前記第1台車を分離し、
さらに、前記第2台車を前記第1連結ステーションに搬送した後、前記第2台車と部品供給が終了した空の第1台車とを連結し、
さらに、前記第2台車と前記空の第1台車とを連結した状態で、前記第2分離ステーションに搬送した後、前記第2台車を分離し、
さらに、前記空の第1台車を前記第2連結ステーションに搬送した後、前記空の第1台車と部品供給が終了した空の第2台車とを連結し、
前記空の第1台車と前記空の第2台車とを連結した状態で、前記部品積載ステーションに搬送するように構成されている部品供給システム。
【請求項3】
前記車両は、自動二輪車であって、
前記第1及び前記第2部品群は、自動二輪車用の部品群である、
請求項1又は2に記載の、部品供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立ラインにおける部品供給システム、特に車両を組み立てる組立ラインに部品を供給する部品供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
組立ラインへの部品供給を省人化するために、自走式搬送車を用いて、部品を積載した台車を組立ラインへ供給し、組立ラインへの部品供給を終えた空の台車を組立ラインから回収することが、一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、組立ラインで組み付ける部品を予め積載した台車を、自走式搬送車によって組立ラインを流れるワークに沿って移動させる、組立ラインにおける部品を供給する方法が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−65934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたものでは、組立ラインを流れるワーク毎に自走式搬送車が必要となるので、組立ラインのコストが高くなると共に、自走式搬送車専用の走行経路を自走式搬送車毎に設ける必要があり、組立ライン内に膨大なスペースを必要とするという課題があった。
【0006】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、すなわち、部品を搬送する台車の組立ラインの複数箇所への供給、及び組立ラインへの部品供給を終えた空の台車の組立ラインの複数箇所からの回収を、1台の自走式搬送車、且つ、1つの搬送経路によって、可能とする部品供給システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
本発明は、車両を組み立てる組立ラインに部品を供給する部品供給システムであって、第1部品群が積載される第1台車と、第2部品群が積載される第2台車と、前記組立ライン側方の台車搬送経路に沿って、前記第1台車及び/又は前記第2台車を搬送する自走式搬送車と、前記第1部品群が前記第1台車に積載され、前記第2部品群が前記第2台車に積載される、部品積載ステーションと、前記台車搬送経路上の、部品積載状態の前記第1及び第2台車を分離するための第1及び第2分離ステーションと、前記台車搬送経路上の、部品供給が終了した空の前記第1及び第2台車を連結するための第1及び第2連結ステーションと、を備えており、前記各ステーションにおいて、前記第1及び前記第2台車が分離又は連結されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、1台の自走式搬送車によって、部品積載ステーションから部品を積載した第1台車及び第2台車を第1及び第2分離ステーションへ供給できると共に、組立ラインへの部品供給を終えた空の第1台車及び第2台車を第1及び第2連結ステーションから回収して、部品積載ステーションに搬送することができる。すなわち、組立ラインの複数箇所への台車供給、及び組立ラインの複数箇所からの台車回収を、1台の自走式搬送車によって実現できるので、自走式搬送車を複数台用意する必要がなく、部品供給システムのコストを低減できる。
【0010】
また、自走式搬送車及び第1台車及び第2台車の台車搬送経路を1系統で構成できるので、複数の台車搬送経路を設ける必要がなく、組立ラインの周辺に台車搬送経路を短い距離で構成できると共に、台車搬送経路の占有面積を低減できる。
【0011】
本発明は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
【0012】
(1)前記第1分離ステーションは、前記組立ラインの一側方に配置され、前記第2分離ステーションは、前記組立ラインの他側方に配置され、前記第1及び第2連結ステーションは、前記第1及び前記第2分離ステーションに対して前記組立ラインの下流側に配置され、前記自走式搬送車は、前記部品積載ステーションから、部品積載状態の前記第1台車及び前記第2台車を連結した状態で、前記第1分離ステーションに搬送した後、前記第1台車を分離し、さらに、前記第2台車を前記第1連結ステーションに搬送した後、前記第2台車と部品供給が終了した空の第1台車とを連結し、さらに、前記第2台車と前記空の第1台車とを連結した状態で、前記第2連結ステーションに搬送した後、部品供給が終了した空の第2台車をさらに連結し、さらに、前記空の第1台車と前記第2台車と前記空の第2台車とを連結した状態で、前記第2分離ステーションに搬送した後、前記第2台車を分離し、前記空の第1台車と前記空の第2台車とを連結した状態で、前記部品積載ステーションに搬送するように構成されている。
【0013】
(2)前記第1分離ステーションは、前記組立ラインの一側方に配置され、前記第2分離ステーションは、前記第1分離ステーションに対して前記組立ラインの下流側に配置され、前記第1及び第2連結ステーションは、前記第1及び前記第2分離ステーションに対して前記組立ラインの下流側に配置され、前記自走式搬送車は、前部品積載ステーションから、部品積載状態の前記第1台車及び前記第2台車を連結した状態で、前記第1分離ステーションに搬送した後、前記第1台車を分離し、さらに、前記第2台車を前記第1連結ステーションに搬送した後、前記第2台車と部品供給が終了した空の第1台車とを連結し、さらに、前記第2台車と前記空の第1台車とを連結した状態で、前記第2分離ステーションに搬送した後、前記第2台車を分離し、さらに、前記空の第1台車を前記第2連結ステーションに搬送した後、前記空の第1台車と部品供給が終了した空の第2台車とを連結し、前記空の第1台車と前記空の第2台車とを連結した状態で、前記部品積載ステーションに搬送するように構成されている。
【0014】
(3)前記車両は、自動二輪車であって、前記第1及び前記第2部品群は、自動二輪車用の部品群である。
【0015】
前記構成(1)によれば、1台の自走式搬送車によって、部品積載ステーションから部品を積載した第1台車及び第2台車を組立ラインの搬送方向の左右両側へ供給できると共に、組立ラインの両側から組立ラインへの部品供給を終えた空の第1台車及び第2台車を回収して、部品積載ステーションに搬送することができる。すなわち、組立ラインの2箇所への部品供給及び2箇所からの台車回収を1台の自走式搬送車によって実現できるので、自走式搬送車を複数台用意する必要がなく、部品供給システムのコストを低減できる。
【0016】
前記構成(2)によれば、1台の自走式搬送車によって、部品積載ステーションから部品を積載した第1台車及び第2台車を組立ラインの一側方の2箇所に供給できると共に、組立ラインへの部品供給を終えた空の第1台車及び第2台車を組立ラインの一側方の2箇所から回収して、部品供給ステーションに搬送することができる。すなわち、組立ラインの2箇所への部品供給及び2箇所からの台車回収を、1台の自走式搬送車によって実現できるので、自走式搬送車を複数台用意する必要がなく、部品供給システムのコストを低減できる。
【0017】
前記構成(3)によれば、本発明を、自動二輪車の組立ラインに適用する場合に、好適に実施することができる。
【発明の効果】
【0018】
要するに本発明によると、台車の組立ラインの複数箇所への供給、及び空の台車の組立ラインの複数箇所からの回収を、1台の自走式搬送車を用いて、1系統の台車搬送経路によって構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る部品供給システム1を示す構成図である。
図2】自走式搬送車20の平面図である。
図3】自走式搬送車20の側面図である。
図4】台車30の側面図である。
図5図4のV−V線における断面図である。
図6】台車30の前面図である。
図7】台車30の後面図である。
図8】第1連結装置38の平面図である。
図9図8のIX−IX線における断面図である。
図10】第2連結装置40の平面図である。
図11図10のXI−XI線における断面図である。
図12】分離装置44の側面図である。
図13】台車30を連結する動作を説明する図であり、(a)は一方の台車30が前方の台車30の後部に近接する様子を示し、(b)は一方の台車30が他方の台車30に接触する様子を示し、(c)は一方の台車30の第1連結装置38が他方の台車30の第2連結装置40に係合する様子を示し、(d)は一方の台車30と他方の台車30とが連結された様子を示す。
図14】第1凸部142によって、台車30を分離する動作を説明する図であり、(a)互いに連結された台車30が第1凸部142に近接する様子を示し、(b)は一方の台車30と他方の台車30との連結が分離された様子を示す。
図15】第2凸部144と分離装置44によって、台車30を分離する動作を説明する図であり、(a)互いに連結された台車30が第2凸部142に近接する様子を示し、(b)は一方の台車30と他方の台車30との連結が分離された様子を示す。
図16】自走式搬送車20と台車30との連結を示す側面図である。
図17】第1分離ステーション6において台車30Lを分離する動作を示す図であり、(a)は台車群300が第1分離ステーション6に近接する様子を示し、(b)は台車群300が第1分離ステーション6に到着した様子を示し、(c)は台車群300が第1連結ステーション10に向けて搬送される様子を示す。
図18】第1連結ステーション10において空の台車30Laを連結する動作を示す図であり、(a)は台車群300が第1連結ステーション10に近接する様子を示し、(b)は台車群300が第1連結ステーション10に到着した様子を示し、(c)は台車群300が第2連結ステーション12に向けて搬送される様子を示す。
図19】第2連結ステーション12において空の台車30Raを連結する動作を示す図であり、(a)は台車群300が第2連結ステーション12に近接する様子を示し、(b)は台車群300が第2連結ステーション12に到着した様子を示し、(c)は台車群300が第2分離ステーション8に向けて搬送される様子を示す。
図20】第2分離ステーション8において台車30Rを分離する動作を示す図であり、(a)は台車群300が第2分離ステーション8に近接する様子を示し、(b)は台車群300が第2分離ステーション8に到着した様子を示し、(c)は台車群300が部品積載ステーション4に向けて搬送される様子を示す。
図21】自走式搬送車20が台車30の下方に潜り込む動作を説明する側面図である。
図22】自走式搬送車20が台車30の下方に潜り込む動作を説明する前面図である。
図23】本発明の他の実施形態に係る部品供給システム100を示す図である。
図24】第1分離ステーション6において台車30#1を分離する動作を示す図であり、(a)は台車群300が第1分離ステーション6に近接する様子を示し、(b)は台車群300が第1分離ステーション6に到着した様子を示し、(c)は台車群300が第1連結ステーション10に向けて搬送される様子を示す。
図25】第1連結ステーション10において空の台車30#1aを連結する動作を示す図であり、(a)は台車群300が第1連結ステーション10に近接する様子を示し、(b)は台車群300が第1連結ステーション10に到着した様子を示し、(c)は台車群300が第2分離ステーション8に向けて搬送される様子を示す。
図26】第2分離ステーション8において台車30#2を分離する動作を示す図であり、(a)は台車群300が第2分離ステーション8に近接する様子を示し、(b)は台車群300が第2分離ステーション12に到着した様子を示し、(c)は台車群300が第2連結ステーション12に向けて搬送される様子を示す。
図27】第2連結ステーション12において空の台車30#2aを連結する動作を示す図であり、(a)は台車群300が第2連結ステーション12に近接する様子を示し、(b)は台車群300が第2連結ステーション8に到着した様子を示し、(c)は台車群300が部品積載ステーション4に搬送される様子を示す。
図28】第1凹部242によって、台車30を分離する動作を説明する図である。
図29】第2凹部244と分離装置44によって、台車30を分離する動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は本発明の実施形態に係る部品供給システム1を示す構成図である。部品供給システム1は、部品が積載された台車30を自動二輪車Wの組立ライン200に供給するものであり、本実施形態では、組立ライン200は略直線状に形成されている。そして、本実施形態で用いる方向の概念は、組立ライン200の上流側から下流側を見る方向を前方とする方向の概念に一致するものとして説明する。
【0022】
組立ライン200は、自動二輪車Wが載置されるパレット220と、パレット220を搬送する搬送コンベア210と、を備えている。組立ライン200の左右両側には、部品供給システム1から組立ライン200に供給された台車30を、搬送コンベア210上のパレット220の動きに同期させて搬送する、台車搬送チェーン230が設けられている。
【0023】
部品供給システム1は、部品積載ステーション4と、第1分離ステーション6と、第2分離ステーション8と、第1連結ステーション10と、第2連結ステーション12と、台車搬送経路14と、自走式搬送車20と、複数の台車30と、を含んでいる。台車搬送経路14は、自走式搬送車20が台車30を搬送する経路であり、台車搬送チェーン230の側方外方に設けられ、1つのループを形成するようになっている。そして、台車搬送経路14上に、部品積載ステーション4、第1分離ステーション6、第1連結ステーション10、第2連結ステーション12及び第2分離ステーション8が、搬送経路順に配置されている。
【0024】
部品供給システム1は、台車搬送経路14上において、自走式搬送車20によって、台車30を搬送するようになっている。さらに、部品供給システム1は、部品積載ステーション4において、部品が積載された台車30を複数連結し、第1分離ステーション6及び第2分離ステーション8において、部品が積載された台車30を分離し組立ライン200に供給し、第1連結ステーション10及び第2連結ステーション12において、組立ライン200への部品供給を終えた空の台車30を組立ライン200から回収するようになっている。自動二輪車W用の部品としては、車体フレーム、エンジン(トランスミッション)、操舵装置、電装品、タイヤ、カウリング、排気装置、シート等が供給される。本実施形態では例えば、最初に部品供給システム1とは異なる供給手段によりエンジン(トランスミッション)を供給し、その後、順次、部品供給システム1により作業手順に合わせて前記部品等を供給する。
【0025】
以下、部品供給システム1の各構成要素について詳細に説明する。
【0026】
部品積載ステーション4は組立ライン200の上流(後方)側に配設されており、自動二輪車Wを組み立てるのに必要な部品を台車30に積載し、部品が積載された台車30を自走式搬送車20に連結するステーションである。
【0027】
第1分離ステーション6は、組立ライン200の上流側において搬送方向に対して左側に配設され、組立ライン200の左側から組み付けられる部品(第1部品群)を積載した台車30L(第1台車)を、自走式搬送車20により搬送される複数の連結された台車群300から分離するステーションである。
【0028】
第2分離ステーション8は、組立ライン200の上流側において搬送方向に対して右側に配設され、組立ライン200の右側から組み付けられる部品(第2部品群)を積載した台車30R(第2台車)を、自走式搬送車20により搬送される台車群300から分離するステーションである。
【0029】
第1連結ステーション10は、組立ライン200の下流(前方)側において搬送方向に対して左側に配設され、組立ライン200の左側への部品供給を終えた空の台車30Laを、自走式搬送車20により搬送される台車群300に連結するステーションである。
【0030】
第2連結ステーション12は、組立ライン200の下流側において搬送方向に対して右側に配設され、組立ライン200の右側への部品供給を終えた空の台車30Raを、自走式搬送車20により搬送される台車群300に連結するステーションである。
【0031】
台車搬送経路14は、自走式搬送車20が台車30を搬送するための経路であり、搬送路面に敷設された磁気テープ等で構成されている。台車搬送経路14は、部品積載ステーション4から、第1分離ステーション6と第1連結ステーション10と第2連結ステーション12と第2分離ステーション8とを順に接続し、最後に部品積載ステーション4へ戻るようなループ状に構成されている。
【0032】
第1分離ステーション6内の台車搬送経路14上には台車群300から台車30を分離するための第1凸部142が設けられ、第2分離ステーション8内の台車搬送経路14の側方には第2凸部144を設けられている。第1凸部142は台車30の左右の両車輪36が通過する位置に設けられ、第2凸部144は後述する台車30Lの検知部440aが検知する位置に、それぞれ設けられている。
【0033】
自走式搬送車20は、台車搬送経路14に敷設された磁気テープ等に沿って自動的に移動する周知の車両である。図2図3を参照して自走式搬送車20について具体的に説明する。図2は自走式搬送車20の平面図であり、図3は同側面図である。図2図3に示すように、自走式搬送車20は、上部の搬送路面からの高さが22Hで左右方向の幅が22Wである矩形状の筐体22と、昇降することにより筐体22から上方へ突き出す係合部材24と、を備えている。
【0034】
図4〜7を参照して台車30について具体的に説明する。図4は台車30側面図であり、図5図4中のV−V線における断面図であり、図6は同前面図であり、図7は同後面図である。図4図7に示すように、台車30は棒状部材で区画された複数の部品収納部32を備えた地上高34Hの本体部34を有し、自動二輪車Wを組み立てるために必要な部品を収容可能に構成されている。さらに、台車30は下部に複数の車輪36と、前部に台車搬送チェーン230(図1参照)に係合する昇降可能に構成されたピン46と、を備える。複数の車輪36は左右方向に36Wの幅を隔て、2列に配列されている。
【0035】
台車30は、第1及び第2分離ステーション6、8(図1参照)に供給された後、組立ライン200(図1参照)の側方の搬送路面に形成された溝内を組立ライン200(図1参照)上のパレット220(図1参照)の動きに同期して駆動される台車搬送チェーン230(図1参照)に受け渡される。次に、台車30はピン46を下降させ、台車搬送チェーン230(図1参照)にピン46を係合させることによって、組立ライン200(図1参照)上のパレット220(図1参照)の動きに同期して搬送される。
【0036】
台車30は、台車30L(図1参照)と、台車30R(図1参照)と、から構成されている。なお、図面上では、空の台車30La、30Ra(図1参照)と区別するために、部品が積載された台車30L、30R(図1参照)を×印(図1参照)を用いて示している。
【0037】
台車30は、その前部に第1連結装置38と、その後部に第2連結装置40と、を備え、後方の台車30の第1連結装置38と前方の台車30の第2連結装置40とが係合することによって、搬送方向に沿って互いに台車30、30同士が連結可能に構成されている。また、前方の下部に自走式搬送車20(図3参照)の係合部材24(図3参照)に係合可能な開口部42を備えている。さらに台車30L(図1参照)のみ後方に連結された台車30を分離する分離装置44を備えている。
【0038】
図8図9を参照して、第1連結装置38について説明する。図8は第1連結装置38の平面図であり、図9図8中のIX―IX線における断面図である。図8図9に示すように、第1連結装置38は、台車30(図4参照)の前部より前方に延びるベース部材380と、ベース部材380に対して摺動可能に左右方向に挿通されるピン382と、ピン382に連結された第1連結部材384と、第1連結部材384の前部に当接するストッパ部材386と、第1連結部材384を前後方向に付勢する付勢部材388と、を備えている。
【0039】
図8に示すように、ベース部材380は左右方向の略中央部に上下方向の開口部を備え、該開口部に第1連結部材384が上下方向に延びるように配置されている。第1連結部材384は、上部を付勢部材388によって図9中に矢印で示す方向に付勢され、その前部がストッパ部材386に当接して、ストッパ部材386によって上下方向に延びるように支持されている。
【0040】
第1連結部材384は、その下端部を前方から押し付けられた場合に付勢部材388に抗して後方へ時計回りに回動し、逆に後方から引っ張られた場合にストッパ部材386によって支持されて上下方向に延びる姿勢を維持する。
【0041】
次に、図10図11を参照して、第2連結装置40について説明する。図10は第2連結装置40の平面図であり、図11図10中のXI−XI線における断面図である。図10図11に示すように、第2連結装置40は、台車30(図4参照)の後部より後方に延びるベース部材400と、ベース部材400に対して摺動可能に左右方向に挿通されピン402と、ピン402に連結された回動プレート404と、回動プレートの上部に当接するストッパ部材406と、回動プレート404に固定され係合孔408aを備えた第2連結部材408と、回動プレート404を前後方向に付勢する付勢部材410と、を備えている。
【0042】
図10に示すように、回動プレート404は、その後部にコの字状の上下方向の開口部404aを備え、該開口部404aにベース部材400が挿通されている。ベース部材400と回動プレート404とはピン402を介して連結され、回動プレート404に固定された第2連結部材408は、その上部を付勢部材410によって図11中に矢印で示す方向に付勢され、その上部がストッパ部材406に当接して、ストッパ部材406によって前後方向に延びるように支持されている。
【0043】
第2連結部材408は、その上端部を上方から押し付けられた場合に付勢部材410に抗して下方へ回動し、係合孔408aを第1係合部材384によって後方から引っ張られた場合にストッパ部材406によって支持されて前後方向に延びる姿勢を維持する。
【0044】
次に、図12を参照して、台車30L(図1参照)にのみ備えられた分離装置44について説明する。図12は分離装置44の側面図である。図12に示すように、分離装置44は、路面に当接する検知レバー440と、左右に延びて検知レバー440の一端に連結された回動軸442と、回動軸442に連結された押し下げレバー444と、を備える。
【0045】
検知レバー440は、路面に設けられた第2凸部144(図1参照)を検知するためのものであり、棒状の形態を有し、一端部が回動軸442に連結され、他端部が搬送路面に当接する検知部440aを備えている。検知部440aは車輪から構成され、路面上の第2凸部144(図1参照)に倣って上方に移動する。このとき、検知レバー440の一端部が連結された回動軸442が回転し、回動軸442の回転に伴い回転軸442に一端が連結された押し下げレバー444は下方向に動作する。押し下げレバー444は棒状の形態を有し、一端が回動軸442に連結され、他端部に第2連結装置40(図11参照)の第2連結部材408(図11参照)に当接又は上方に位置する押し下げ部444aを有する。検知部440aが第2凸部144を通過すると、検知部440aは下方へ移動すると共に、回転軸442が回転して押し下げレバー444が上方向に移動し、図12に示すように、分離装置44は元の状態に戻る。
【0046】
図13図15を参照して、第1及び第2連結装置38、40、及び分離装置44が互いに協働して台車30、30同士を連結する動作、及び連結された台車30、30同士を分離する動作を以下に説明する。図13は第1連結装置38と第2連結装置40とを連結する動作を示す説明図であり、図14は連結された第1連結装置38及び第2連結装置40を搬送路面に設けた第1凸部142によって分離する動作を示す説明図であり、図15は連結された第1連結装置38及び第2連結装置40を、分離装置44と第2凸部144によって、分離する動作を示す説明図である。
【0047】
まず、複数の台車30を連結する場合の動作を説明する。図13の(a)に示すように、自走式搬送車20によって一方の台車30を前進させて他の台車30の後部に接触させる。これによって、図13の(b)に示すように、一方の台車30の前部に備えられた第1連結装置38が他方の台車30の後部に備えられた第2連結装置40に押し込まれる。この結果、第1連結装置の第1連結部材384は第2連結装置40の第2連結部材408に押し込まれて後方に回動する。図13の(c)に示すように、さらに第1連結部材384が第2連結部材408によって後方に押し込まれて、第2連結装置の係合孔408aに落ち込む。これによって、図13の(d)に示すように、第1連結部材384と第2連結部材408とが係合するので、台車30、30同士が連結される。
【0048】
次に、互いに連結された台車30、30同士を分離する動作を説明する。図14の(a)に示すように、互いに連結された台車30、30が搬送路面上に設けられた第1凸部142に近づく。次に、図14の(b)に示すように、後方に連結された台車30が路面上に設けられた第1凸部142を通過することによって、台車30が上方へ持ち上げられ、この結果、後方に連結された台車30の第1連結装置38が前方に連結された台車30の第2連結装置40の上方へ位置することになる。これによって、互いに係合した第1連結部材384及び第2連結部材408が上下に分離されるので、互いに連結された台車30、30同士の連結が分離される。なお、前方に連結された台車30が第1凸部142を通過するとき、前方に連結された台車30の第2連結装置40が後方に連結された台車30の第1連結装置38に近接するように上方に移動する。このため、互いに係合した第1連結部材384と第2連結部材408とは上下に離間しないので、第1連結部材384と第2連結部材408との係合は分離されない。
【0049】
次に、分離装置44を用いて互いに連結された台車30、30同士を分離する動作を説明する。図15の(a)に示すように、互いに連結された台車30、30が搬送路面上に設けられた第2凸部144に近づく。次に、図15の(b)に示すように、前方に連結された台車30の側方に備えられた分離装置44の検知部440aが、路面上に設けられた第2凸部142を検知することによって、検知レバー440が回動軸442を中心に上方へ回動し、回動軸442に連結された押し下げレバー444が下方へ回動する。この結果、押し下げ部444aが第2連結装置40の第2連結部材408の上部を下方へ押し下げる。これによって、互いに係合した第1連結部材384と第2連結部材408が分離されるので、互いに連結された台車30、30同士の連結が分離される。
【0050】
次に、図16を参照して、自走式搬送車20と台車30との連結について説明する。図16は自走式搬送車20と台車30との連結部を示す側面図である。図16に示すように、自走式搬送車20の係合部材24の位置と台車30の開口部42の位置とを合わせた状態で、自走式搬送車20の係合部材24を上昇させる。これによって、自走式搬送車20の係合部材24と台車30の開口部42とは係合し、自走式搬送車20は台車30を搬送できるようになる。
【0051】
このような部品供給システム1による、台車30L、30Rを組立ライン200へ供給し、空の台車30La、30Raを組立ライン200から回収する動作を、図17図22を参照して以下に説明する。図17は第1分離ステーション6において台車30Lを分離する動作を説明する図であり、図18は第1連結ステーション10において空の台車30Laを連結する動作を説明する図であり、図19は第2連結ステーション12において空の台車30Raを連結する動作を説明する図であり、図20は第2分離ステーション8において台車30Rを分離する動作を説明する図であり、図21は自走式搬送車20が台車30の下方に潜り込む動作を示す側面図であり、図22は自走式搬送車20が台車30の下方に潜り込む動作を示す前面図である。
【0052】
図17の(a)に示すように、まず、部品積載ステーション4において自動二輪車Wを組み立てるのに必要な部品が台車30L、30Rにそれぞれ積載される。その後、部品を積載した台車30L、30Rは、自走式搬送車20の後方に台車30R、30Lの順に連結されて、台車搬送経路14に沿って第1分離ステーション6へ向けて搬送される。
【0053】
自走式搬送車20と台車30との連結は、上述したように、前方の台車30Rの下部に設けられた開口部42へ、自走式搬送車20の係合部材24を突出させて、係合部材24と開口部42とを係合させることによって行われる。
【0054】
台車30L、30R間の連結は、上述したように、台車30Lの前部と台車30Rの後部とを接触させて、台車30Lの第1連結装置38に設けられた第1連結部材384と、台車30Rの第2連結装置40に設けられた第2連結部材408と、を係合させることによって行われる。
【0055】
次に、図17の(b)に示すように、自走式搬送車20及び台車30R、30Lは第1分離ステーション6に到着すると、台車30R、30Lは第1分離ステーション6に設けられた第1凸部142を順に通過する。前方の台車30Rが第1凸部142を通過した後に後方の台車30Lの車輪36が第1凸部142に差し掛かると、図14の(b)に示すように後方の台車30Rは上方に持ち上げられる。
【0056】
これによって、台車30Lの前部に設けられた第1連結装置38と、台車30Rの後部に設けられた第2連結装置40とは、互いに上下方向に離間するので、上述したように台車30L、30R間の連結が分離される。
【0057】
この結果、図17の(c)に示すように、台車30Lは第1分離ステーション6に供給された後、組立ライン200の左側に位置する台車搬送チェーン230に引き渡されて組立ライン200上のパレット220の動きに同期して搬送される。一方、台車30Rは、自走式搬送車20によって、台車搬送経路14に沿って第1連結ステーション10へ向けて搬送される。
【0058】
次に、図18の(a)に示すように、台車30Rは自走式搬送車20によって第1連結ステーション10に搬送される。第1連結ステーション10には、組立ライン200の左側への部品供給を終えた空の台車30Laが台車搬送チェーン230から引き渡され、配置されている。次に、自走式搬送車20は空の台車30Laに接近する。図21に示すように自走式搬送車20の筐体上部の地上高22Hは自走式搬送車30の本体下部の地上高34Hよりも低く、且つ、図22に示すように筐体20の左右幅22Wは空の台車30Laの左右の車輪内幅36Wよりも短いので、自走式搬送車20は台車30Laに干渉することなく空の台車30Laの下方の左右の車輪36の間に潜り込む。
【0059】
次に、図18の(b)に示すように、自走式搬送車20によって搬送されている台車30Rは第1連結ステーション10内に配置されている空の台車30Laに接触する。この結果、台車30Rの前部に設けられた第1連結装置38が空の台車30Laの後部に設けられた第2連結装置40に押し込まれることになり、上述したように空の台車30Laが台車30Rの前方に連結される。
【0060】
次に、自走式搬送車20は係合部材24を下降させて台車Rとの係合を解除し、空の台車30Laの下方を台車搬送経路14に沿って前進する。その後、自走式搬送車20は係合部材24を上昇させて、空の台車30Laの開口部42に係合部材を係合させることによって、空の台車30Laを連結する。この結果、図18の(c)に示すように、自走式搬送車20は、空の台車30Laを第1連結ステーション10から回収し、台車搬送経路14に沿って組立ライン200の左側から右側へと移動して、空の台車30La及び台車30Rが第2連結ステーション12へ向けて搬送される。
【0061】
次に、図19の(a)に示すように、空の台車30La及び台車30Rは自走式搬送車20によって第2連結ステーション12に搬送される。第2連結ステーション12には組立ライン200の右側への部品供給を終えた空の台車30Raが台車搬送チェーン230から引き渡され、配置されている。第1連結ステーション10で説明した動作と同様に、空の台車30Raは空の台車30Laの前方に連結される(図19の(b)参照)。
【0062】
次に、自走式搬送車20は、空の台車30Laとの係合を解除し、先頭に位置する空の台車30Raの開口部42に係合部材24を係合させて、空の台車30Raを連結する。この結果、図19の(c)に示すように、自走式搬送車20は、空の台車30Raを第2連結ステーション12から回収し台車搬送経路14に沿って移動し、空の台車30Ra、30La及び台車30Rが第2分離ステーション8へ向けて搬送される。
【0063】
次に、図20の(a)に示すように、空の台車30Ra、30La及び台車30Rは自走式搬送車20によって第2分離ステーション8に順に搬送される。分離装置44を備えた空の台車30Laが第2分離ステーション8に到着すると、図20の(b)に示すように、分離装置44の検知部440aは、第2分離ステーション8内に設けられた第2凸部144を検知する。この結果、上述したように検知レバー440が回動軸442を中心に上方に回動し、回動軸442に連結された押し下げレバー444を下方へと回動させる。
【0064】
これによって、押し下げ部444aが空の台車30Laの後部に設けられた第2連結装置40の第2連結部材408を下方へと押し下げる。この結果、空の台車30Laの後部に設けられた第2連結装置40の第2連結部材408は、台車30Rの前部に設けられた第1連結装置38の第1連結部材384の下方へと移動して、第1連結部材384と第2連結部材408との係合が分離される。
【0065】
この結果、図20の(c)に示すように、台車30Rは第2分離ステーション6に供給された後、組立ライン200の右側に位置する台車搬送チェーン230に引き渡されて組立ライン200上のパレット220の動きに同期して搬送される。一方、空の台車30Ra、30Laは、自走式搬送車20によって、台車搬送経路14に沿って部品積載ステーション4へ向けて搬送される。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、1台の自走式搬送車20によって、部品積載ステーション4から部品を積載した台車30L、30Rを第1及び第2分離ステーション6、8に供給できると共に、組立ライン200への部品供給を終えた空の台車30La、30Raを第1及び第2連結ステーションから回収して、部品積載ステーション4に搬送することができる。すなわち、組立ライン200の2箇所への台車30の供給及び2箇所からの空の台車30の回収を、1台の自走式搬送車20によって実現できる。この結果、自走式搬送車20を複数用意する必要がないので、部品供給システム1のコストを低減できる。
【0067】
また、自走式搬送車20及び台車30専用の台車搬送経路14を1系統で構成できるので、複数の台車搬送経路14を設ける必要がなく、組立ラインの周辺に台車搬送経路14を短い距離で構成できると共に、台車搬送経路14が占有する面積を低減できる。
【0068】
しかも、自走式搬送車20により一方の台車30の前部を他方の台車30の後部に押し付けることによって、自動的に一方の台車30と他方の台車30とを連結できると共に、連結された複数の台車30は、搬送路面に設けられた第1凸部142を通過するか、又は第2凸部144を検知することによって、自動的に台車30、30同士の連結を分離することができる。すなわち、自走式搬送車20によって搬送される台車30の動作によって、複数の台車30、30同士を自動的に連結できると共に、連結された複数の台車30、30同士を分離することができる。
【0069】
つまり、台車30、30同士を連結し、連結された台車30、30同士を分離する作業を、他の動力を必要とすることなく、自走式搬送車20の走行によって自動的に行うことができるので、台車30の組立ライン200への供給作業、及び空の台車30の組立ライン200からの回収作業を省人化できる。
【0070】
また、本実施形態によれば、連結された台車30、30同士を分離する2種類の異なる方法を実現している。つまり、第1凸部142を利用する第1の台車分離方法では、第1凸部142を通過する台車30の前方で連結を分離することができる。また、第2凸部144と分離装置44とを利用する第2の台車分離方法では、第2凸部144を検知した台車30の後方で連結を解除することができる。すなわち、第1凸部142と第2凸部144を設ける場所と分離装置44を備える台車30を組み合わせることによって、任意のステーションにおいて、連結された台車群300から任意の台車30を、他の動力を必要とすることなく自動的に分離できる。これによって、台車を供給するステーションを設ける数及び設置場所の自由度を増大できる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、図23図27を参照して、本発明に係る部品供給システムの他の実施形態を説明する。図23は部品供給システム100を示す構成図であり、図24は第1分離ステーション6において台車30#1を分離する動作を説明する図であり、図25は第1連結ステーション10において空の台車30#1aを連結する動作を説明する図であり、図26は第2分離ステーション8において台車30#2を分離する動作を説明する図であり、図27は第2連結ステーション12において空の台車30#2aを連結する動作を説明する図である。
【0072】
部品供給システム100は、部品供給システム1と同様に自動二輪車Wの組立ライン200に部品を供給するためのものであるが、組立ライン200の左右両側から台車30を供給し、空の台車30回収する部品供給システム1とは異なり、組立ライン200の一側方から台車30を供給し、空の台車30回収するように構成されている。また、台車搬送チェーン230は組立ライン200の一側方にのみ設けられている。
【0073】
部品供給システム100は、部品積載ステーション4と、第1分離ステーション6と、第2分離ステーション8と、第1連結ステーション10と、第2連結ステーション12と、台車搬送経路140と、自走式搬送車20と、複数の台車30と、を含んでいる。台車搬送経路140は、自走式搬送車20が台車30を搬送する経路であり、台車搬送チェーン230の側方外方に設けられ、1つのループを形成するようになっている。そして、台車搬送経路140上に、部品積載ステーション4、第1分離ステーション6、第1連結ステーション10、第2分離ステーション8及び第2連結ステーション12が、搬送経路順に配置されている。
【0074】
部品供給システム100は、台車搬送経路140上において、自走式搬送車20によって、台車30を搬送するようになっている。さらに、部品供給システム100は、部品積載ステーション4において、部品が積載された台車30を複数連結し、第1分離ステーション6及び第2分離ステーション8において、部品が積載された台車30を分離し組立ライン200に供給し、第1連結ステーション10及び第2連結ステーション12において、組立ライン200への部品供給を終えた空の台車30を組立ライン200から回収するようになっている。
【0075】
部品積載ステーション4と自走式搬送車20は、第1実施形態と同じである。
【0076】
第1分離ステーション6は、組立ライン200の上流側において搬送方向に対して一側方に配設され、組立ライン200の前半部に組み付けられる部品(第1部品群)を積載した台車30#1(第1台車)を、自走式搬送車20により搬送される複数の連結された台車群300から分離するステーションである。
【0077】
第2分離ステーション8は、第1分離ステーション6の下流側に配設され、組立ライン200の後半部に組み付けられる部品(第2部品群)を積載した台車30#2(第2台車)を、自走式搬送車20により搬送される台車群300から分離するステーションである。
【0078】
第1連結ステーション10は、第1分離ステーション6の下流側に配設され、組立ライン200の前半部への部品供給を終えた空の台車30#1aを、自走式搬送車20により搬送される台車群300に連結するステーションである。
【0079】
第2連結ステーション12は、第2分離ステーション8の下流側に配設され、組立ライン200の後半部への部品供給を終えた空の台車30#2aを、自走式搬送車20により搬送される台車群300に連結するステーションである。
【0080】
台車30は、台車30#1と、台車30#2と、から構成されている。なお、図面上では、空の台車30#1a、30#2aと区別するために、部品が積載された台車30#1、30#2を×印を用いて示している。
【0081】
台車30#1、#2は、その前部に第1連結装置38と、その後部に第2連結装置40とを、それぞれ備えている。分離装置44は備えていない。他の構成は、第1の実施形態にて説明した台車30L、30Rと同じである。
【0082】
台車搬送経路140は自走式搬送車20が台車群300を搬送するための経路であり、搬送路面に敷設された磁気テープ等で構成されている。台車搬送経路140は、部品積載ステーション4から、第1分離ステーション6と第1連結ステーション10と第2分離ステーション8と第2連結ステーション12とを順に接続し、最後に部品積載ステーション4へ戻るようにループ状に構成されている。
【0083】
さらに、第1及び第2分離ステーション6、8内の台車搬送経路140上には台車群300から台車30を分離するための第1凸部142が設けられている。第1凸部142は台車30の車輪36の左右両輪共が通過する位置に設けられている。
【0084】
このような部品供給システム100による、台車30#1、30#2を組立ライン200へ供給し、空の台車30#1a、30#2aを組立ライン200から回収する動作を、図24図27を参照して以下に説明する。
【0085】
図24の(a)に示すように、まず、部品積載ステーション4において自動二輪車Wを組み立てるのに必要な部品が台車30#1、30#2にそれぞれ積載される。その後、部品を積載した台車30#1、30#2は、自走式搬送車20の後方に台車30#2、30#1の順に連結されて、台車搬送経路140に沿って第1分離ステーション6へ向けて搬送される。
【0086】
次に、図24の(b)に示すように、自走式搬送車20及び台車30#2、30#1は第1分離ステーション6に到着すると、台車30#2、30#1は第1分離ステーション6に設けられた第1凸部142を順に通過する。前方の台車30#2が第1凸部142を通過した後に後方の台車30#1の車輪36が第1凸部142に差し掛かると、図14の(b)に示すように後方の台車30#1は上方に持ち上げられ、上述したように、台車30#2と台車30#1との連結が分離される。
【0087】
この結果、図24の(c)に示すように、台車30#1は第1分離ステーション6に供給された後に台車搬送チェーン230に引き渡され組立ライン200上のパレット220の動きに同期して搬送される。一方、台車30#2は、自走式搬送車20によって、台車搬送経路140に沿って第1連結ステーション10へ向けて搬送される。
【0088】
次に、図25の(a)に示すように、台車30#2は自走式搬送車20によって第1連結ステーション10に搬送される。第1連結ステーション10には組立ラインの前半部への部品供給を終えた空の台車30#1aが台車搬送チェーン230から引き渡され、配置されている。まず、自走式搬送車20は空の台車30#1aに接近し、空の台車30#1aの下方に潜り込む。
【0089】
次に、図25の(b)に示すように、自走式搬送車20によって搬送されている台車30#2は第1連結ステーション10内に配置されている空の台車30#1aに接触し、上述したように、空の台車30#1aは台車30#2の前方に連結される。
【0090】
次に、自走式搬送車20は台車30#2との係合を分離し、前方に移動して、前方に位置する空の台車30#1aを連結する。この結果、図25の(c)に示すように、自走式搬送車20は、空の台車30#1aを第1連結ステーション10から回収し、台車搬送経路140に沿って移動して、空の台車30#1a及び台車30#2は第2分離ステーション8へ向けて搬送される。
【0091】
次に、図26の(a)に示すように、空の台車30#1a及び台車30#2は自走式搬送車20によって第2分離ステーション8へ搬送される。第1分離ステーション6で説明した動作と同様に、空の台車30#1aと台車30#2が第2分離ステーション6に設けられた第1凸部142を順に通過し、後方の台車30#2の車輪36が第1凸部142に差し掛かると、図14の(b)に示すように、後方の台車30#2は上方に持ち上げられ、上述したように、台車30#1aと台車30#2との連結が分離される(図26の(b)参照)。
【0092】
この結果、図26の(c)に示すように、台車30#2は第2分離ステーション8に供給された後に、台車搬送チェーン230に引き渡され組立ライン200上のパレット220の動きに同期して搬送される。一方、台車30#1aは、自走式搬送車20によって、台車搬送経路140に沿って第2連結ステーション12へ向けて搬送される。
【0093】
次に、図27の(a)に示すように、空の台車30#1aは自走式搬送車20によって第2連結ステーション12に搬送される。第2連結ステーション12には組立ラインの後半部への部品供給を終えた空の台車30#2aが台車搬送チェーン230から引き渡され、配置されている。まず、自走式搬送車20は空の台車30#2aに接近し、台車30#2aの下方に潜り込む。
【0094】
次に、図27の(b)に示すように、自走式搬送車20によって搬送されている台車30#1aは第1連結ステーション10内に配置されている空の台車30#2aに接触し、上述したように、空の台車30#2aは台車30#1aの前方に連結される。
【0095】
次に、自走式搬送車20は台車30#1aとの係合を分離し、前方に移動して、前方に位置する空の台車30#2aを連結する。この結果、図27の(c)に示すように、自走式搬送車20は、空の台車30#2aを第2台車連結ステーション12から回収し、台車搬送経路140に沿って移動して、空の台車30#1a、30#2aは部品積載ステーション4へ向けて搬送される。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、1台の自走式搬送車20によって、部品積載ステーション4から部品を積載した台車30#1、30#2を第1及び第2分離ステーション6、8へ供給できると共に、組立ライン200への部品供給を終えた空の台車30#1a、30#2aを第1及び第2連結ステーション10、12から回収して、部品積載ステーション4に搬送することができる。すなわち、組立ラインの2箇所への台車30の供給及び2箇所からの空の台車30の回収を、1台の自走式搬送台車20によって実現できる。この結果、自走式搬送台車20を複数台用意する必要がなく、部品供給システムのコストを低減できる。
【0097】
また、自走式搬送台車20及び台車30専用の台車搬送経路140を1系統で構成できるので、複数の台車搬送経路を設ける必要がなく、組立ラインの周辺に台車搬送経路140を短い距離で構成できると共に、台車搬送経路140が占有する面積を低減できる。
【0098】
しかも、自走式搬送車20により一方の台車30の前部を他方の台車30の後部に押し付けることによって、自動的に一方の台車30と他方の台車30とを連結できると共に、連結された複数の台車30、30は搬送路面に設けられた第1凸部142によって、自動的に連結を分離することができる。すなわち、自走式搬送車20によって搬送される台車30の動作によって、複数の台車30、30を自動的に連結できると共に、連結された複数の台車30、30を分離することができる。
【0099】
つまり、台車30、30同士を連結し、連結された台車30、30同士を分離する作業を、他の動力を必要とすることなく、自走式搬送車20の走行によって自動的に行うことができるので、台車30の組立ライン200への供給作業、及び空の台車30の組立ライン200からの回収作業を省人化できる。
【0100】
なお、上述した実施形態では、直線上に配置された組立ライン200を例として説明したが、Uターン状に折り返された組立ライン200にも適用できることは言うまでもない。また、連結された台車30、30を分離するために、路面に第1凸部142及び第2凸部144を設けることを例として説明したが、図28及び図29に示すように凸部の代わりに凹部を設けることによっても連結された台車30、30同士を分離することができる。この場合、いずれの場合も凹部を通過若しくは検知した台車の、後方の台車30との連結を解除できる。
【0101】
また、各ステーションにおける台車30、30同士の連結及び/又は連結された台車30、30同士の分離をするときの衝撃を低減し、確実に台車連結機構を作動させるために、台車搬送経路上に停止マーカ等を設けて自走式搬送車20の動作を制御することによって、各ステーションで停止させたり、微速で前進させて確実に係合させたり、確実に分離するように構成してもよい。
【0102】
なお、本発明は、以上の実施形態に示すものに限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上のように、本発明に係る部品供給システムによれば、台車の組立ラインの複数箇所への供給、及び空の台車の組立ラインの複数箇所からの回収を、1台の自走式搬送車、且つ、1つの搬送経路によって行うことができる。また、本発明は、自動二輪車の組立ラインに限らず、四輪車等の他の製品の組立ラインに適用できることは言うまでもない。また、ウォータクラフト等の組立ラインにも適用できる。したがって、本発明は、台車を用いて組立ラインに部品を供給する産業分野において好適に実施される可能性がある。
【符号の説明】
【0104】
1 部品供給システム
4 部品積載ステーション
6 第1分離ステーション
8 第2分離ステーション
10 第1連結ステーション
12 第2連結ステーション
14 台車搬送経路
20 自走式搬送車
30 台車
38 第1連結装置
40 第2連結装置
44 分離装置
200 組立ライン
300 台車群
W 自動二輪車
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