(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池における正極や負極の主要な構成材料は、活物質、集電体、バインダーである。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を分散媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させたものが一般的である。そして、活物質、バインダー混合スラリーを集電体に塗布することで電極が製造される。ここで、NMPはスラリー塗布後の乾燥工程においてガス化するが、環境への影響や費用の問題により大部分を回収している。最近は、回収したNMPを製造工程で再利用するケースが増えている。
【0003】
このNMPの回収、再利用工程の概略は下記の通りである。
(1)排ガス中のNMPを吸着体または水スクラバーにより回収する。この工程によりNMP7〜9割、水分1〜3割程度の状態にまでNMPが濃縮される。
(2)NMP/水の混合液を蒸留で精製する。この工程でNMPを99%、水分は1%以下まで精製する。水分以外の各種不純物も同時に除去することを求められている。
【0004】
これらの工程で精製されたNMPは、再び製造工程にて再利用される。また、蒸留精製はオフサイト、オンサイトのいずれでも行われている。
【0005】
このように、NMPの回収には、通常蒸留精製工程が含まれる。この蒸留精製には、多くのエネルギーを必要とし、また装置が大型化するなど欠点がある。
【0006】
一方、水の分離技術として蒸留精製ではなく、浸透気化分離を利用するものが提案されている。浸透気化膜としてはNaA型ゼオライト膜(無機多孔質支持体−ゼオライト膜)などが用いられる。特許文献1には、浸透気化分離工程を利用して、無水アルコールを生成することが示されている。また、特許文献2には、NaA型ではない特殊な骨格型のゼオライト膜を利用した浸透気化分離(PV)法による、NMPの精製について記載がある。
【0007】
ここで、有機溶剤中の不純物除去技術として、イオン交換樹脂による分離方法がある。しかし、一般にイオン交換樹脂は水分を多く含有している。このため、例えば上述のNMP精製のような水分除去を併せて求められるプロセスに適用するのは、別途水分を除去せねばならず、困難であった。なお、特許文献3には、湿潤イオン交換樹脂について、水溶性有機溶媒と接触させ、イオン交換樹脂の水分を水溶性有機溶媒で置換し、その後溶媒を蒸発乾燥させる、イオン交換樹脂の乾燥法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、浸透気化分離(PV)法を用いたNMPの精製システムについて、なるべく効率がよく、さらに再利用の際に精製されたNMPの品質に問題がないことが要求される。
【0010】
本発明の目的は、浸透気化分離(PV)手段とイオン交換手段を用いたNMPの精製システムおよび精製方法において、特別な湿潤イオン交換樹脂の乾燥手段を必要とせず、オンサイトで湿潤イオン交換樹脂を乾燥しつつ、脱水された精製NMPを得ることができるNMP精製システムおよび精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を含むNMP水溶液を精製するNMP精製システムであって、分離膜を介し水分を選択的に浸透気化させて、脱水NMPを得る浸透気化分離手段と、前記浸透気化分離手段において得られた脱水NMPを湿潤イオン交換樹脂に通過させて湿潤イオン交換樹脂を脱水して脱水イオン交換樹脂を得るとともに、イオン交換樹脂の処理液として水分が高くなったNMPを得るイオン交換樹脂脱水手段と、前記イオン交換樹脂脱水手段で得られた前記処理液を前記浸透気化分離手段の前段へ返送する返送手段と、前記イオン交換樹脂脱水手段で得られた脱水イオン交換樹脂を使用して、前記浸透気化分離手段において得られた脱水NMPから不純物を除去し、精製NMPを得るイオン交換手段と、を有する。
【0012】
また、一形態では、前記イオン交換樹脂脱水手段と、前記イオン交換手段は、それぞれ前記湿潤イオン交換樹脂が充填されたカラムと、前記脱水イオン交換樹脂が充填されたカラムで構成され、前記イオン交換樹脂脱水手段として使用されたカラムが、そのイオン交換樹脂の脱水終了後に前記イオン交換手段に切り換えられて使用され、前記イオン交換手段として使用されたカラムがその使用の終了後に、新しい湿潤イオン交換樹脂に入れ換えられてイオン交換樹脂脱水手段に切り換えられて使用される。
【0013】
また、一形態では、前記イオン交換樹脂脱水手段からの前記処理液の水分濃度を計測し、水分濃度が所定値を下回った場合に湿潤イオン交換樹脂の脱水終了を判定する。
【0014】
また、一形態では、前記浸透気化分離手段に供給されるNMP水溶液と、前記浸透気化分離手段において得られた脱水NMPの間で熱交換し、前記脱水NMPを冷却し、前記NMP水溶液を加熱する熱交換手段を有する。
【0015】
また、本発明は、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)を含むNMP水溶液を精製するNMP精製方法であって、分離膜を介し水分を選択的に浸透気化させて、脱水NMPを得る浸透気化工程と、前記浸透気化工程において得られた脱水NMPを湿潤イオン交換樹脂に通過させて湿潤イオン交換樹脂を脱水して脱水イオン交換樹脂を得るとともに、水分が高くなったNMPの処理液を得るイオン交換樹脂脱水工程と、前記イオン交換樹脂脱水工程で得られた処理液を前記浸透気化工程の前段へ返送する返送工程と、前記イオン交換樹脂脱水工程で得られた脱水イオン交換樹脂を使用して、前記浸透気化工程において得られた脱水NMPから不純物を除去し、精製NMPを得るイオン交換工程と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、浸透気化分離手段を利用して、脱水NMPを得、これをイオン交換手段でイオン交換してアミンなどの不純物を除去するが、このイオン交換手段におけるイオン交換樹脂の脱水を効果的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、実施形態に係るNMP精製システムの構成を示すブロック図である。
【0020】
電極製造設備10においては、NMPを用いてリチウムイオン電池の電極製造工程が実施される。この電極製造の際に、活物質、バインダー混合スラリーを集電体に塗布することで電極が製造される。ここで、バインダーには、PVDFをNMPに溶解させたものが用いられ、スラリー塗布後の乾燥工程においてNMPがガス化し、排気される。
【0021】
電極製造設備10からの排気は、回収装置12に導入され、ここにおいてNMPが回収される。この回収装置12は、排気中のNMPを回収するもので、各種の方式を利用することができる。
【0022】
例えば、水を噴霧し、排気と接触させて、NMPを水に溶解させて回収するスクラバーを用いる方式がある。この方式であると、比較的水分の高いNMPの水溶液が得られる。一方、設備自体は、比較的単純であり、運転も容易であり、低温での処理が可能であってNMPの劣化を抑制できる。
【0023】
また、活性炭や、ゼオライトなどの吸着剤にNMPを吸着させて、その後脱着することでNMPを分離濃縮する吸着方式がある。この方式では、吸着剤から脱着して得られたNMPの水溶液は、比較的水分が少ない。しかし、脱着の際に比較的高温にするので、NMPが劣化しやすいという問題がある。
【0024】
なお、NMPは、水分を15%以上含有すると引火点がなくなり非危険物扱いとなる。従って、オフサイトでNMPの精製を行う場合、吸着方式を利用しても、回収した水溶液のNMP濃度を85%以下(水分15%以上)に保つことが一般的である。このため、回収装置12において回収するNMPの水溶液の水分を15%以上にしておくことも好適である。必要であれば、水を補充することも好適である。
【0025】
回収装置12において回収したNMP水溶液(回収液)は、ろ過装置14に供給され不純物が除去される。ろ過装置14は、UF(限外ろ過)膜や、MF(精密ろ過)膜を用いた膜ろ過装置であり、回収液中に含まれる固形物を除去する。
【0026】
ろ過装置14で得られたろ過液は、イオン交換樹脂カラム16に供給され、ここで余分なイオンが除去される。特に、ギ酸やアミン類およびアミン類などから生成される硝酸などの酸が除去される。
【0027】
イオン交換樹脂カラム16による脱塩が終了した処理液(NMP水溶液)は、浸透気化分離装置(PV)18およびイオン交換樹脂カラム20を含むNMP脱水精製部30に供給され、ここで水分が除去され、脱水NMPが得られる。
【0028】
NMP脱水精製部30において脱水濃縮された脱水NMPの水分は1%以下である。そして、脱水NMPは、イオン交換樹脂カラム20において、もう一度アミン類などのイオンを除去し、精製NMPとされた後、ろ過装置22において、浮遊固形物を除去して、電極製造設備10において回収利用される。
【0029】
図2には、NMP精製システムを構成する、NMP脱水精製部30の構成が示されている。上述したイオン交換樹脂カラム16において得られた水分30%〜5%程度のNMP水溶液は、タンク32に貯留される。タンク32は、気密として、NMPガスなどが排出されないようにしてある。また、乾燥窒素ガスなどを充満することで、水分の混入を防止することも好適である。タンク32内のNMP水溶液は、ポンプなどによって熱交換器34,36に供給され、ここを通過することによって加熱されて、浸透気化分離手段である浸透気化分離(PV)装置38に供給される。ここで、熱交換器34には、浸透気化分離装置38で得られた脱水NMPが供給され、この脱水NMPの熱をタンク32からのNMP水溶液に移動することで、NMP水溶液を加熱する。熱交換器36には、加熱蒸気が供給されており、この加熱蒸気の熱によってNMP水溶液を浸透気化分離装置38に供給するのに適切な温度、例えば120℃まで上昇させる。
【0030】
浸透気化分離装置38は、処理対象成分と親和性のある分離膜(浸透気化膜)を用い、膜の供給側に混合物を流し、その透過側を減圧もしくは不活性ガスを流すことで、各成分の透過速度差により分離する。
【0031】
本実施形態の場合、ゼオライト膜を用い、ゼオライトの親水性の高さにより、水を透過側に浸透させ、NMPを供給側に分離濃縮する。また、その際に、透過物である水は液体から気体(水蒸気)へ相変化する。
【0032】
ここで、浸透気化分離装置38の分離膜は、例えば円筒型の膜モジュールであって、NaA型のゼオライト膜を用いたものが利用される。浸透気化分離装置38の原液室(供給液側)には、NMP水溶液を供給され、一方、透過室(透過側)には、熱交換器40、気液分離器42を介し、真空ポンプ44が接続されており、内部が減圧されている。そこで、NMP水溶液中の水が分離膜を浸透しながら気化し、透過室(透過側)に水蒸気となって得られる。透過室に得られた水蒸気は、冷水が供給されている熱交換器40において冷却されてから、気液分離器42に導入され、ここで凝結水が下方に滞留する。真空ポンプ44は、気液分離器42の上方空間に接続されており、凝結水が除去された空気が真空ポンプ44によって排気される。
【0033】
なお、この真空ポンプ44から排出される空気にはNMPが含まれるため、これを除害装置で処理する。除害装置としては、活性炭吸着や燃焼処理などが採用される。また、気液分離器42に溜まった凝結水は、適宜排水されるが、内部は減圧状態になっているので、真空ポンプ44や浸透気化分離装置38の透過室とはバルブなどで切り離した後、排水する。
【0034】
例えば、気液分離器42における凝結水の排出は、次のような手順で行われる。まず、真空引きしている空間の圧力が所定の真空になっている場合には、気液分離器42と真空ポンプ44の間のバルブを閉じて両者は切り離されている。この状態で、気液分離器42内に凝結水が一定量溜まった場合、浸透気化分離装置18と気液分離器42の間のバルブを閉じ、気液分離器42の凝結水ドレン用バルブおよび気液分離器42の上部空間を大気に解放するベント用バルブを開き、凝結水を排出する。次に、真空ポンプ44と気液分離器42の間のバルブを開き、真空度確保後、浸透気化分離装置18と気液分離器42の間のバルブを開き、全体としての真空度確保し、真空ポンプ44と気液分離器42の間のバルブを閉じる。これによって、凝結水の排出が終了する。
【0035】
浸透気化分離装置38の原液室に得られた脱水NMPは、上述したように熱交換器34に供給され、ここでタンク32からのNMP水溶液と熱交換する。脱水NMPは、浸透気化分離装置38の原液室に得られ、120℃程度またはそれより若干低めの温度である。一方、タンク32からのNMP水溶液は、20℃程度の常温である。従って、理論的には脱水NMPは室温と同等程度まで冷却が可能であるが、若干高い、30℃程度とすることが効率的である。
【0036】
このように、本実施形態では、浸透気化分離装置38で得られた高温の脱水NMPを熱交換器34に供給することで、NMP水溶液の加温が行える。従って、熱の回収利用が図られ、熱交換器36における供給必要熱量が少なくてよく、省エネルギー化が図られる。また、常温の脱水NMPをイオン交換樹脂カラムに供給することでき、イオン交換樹脂の熱による劣化を防止することができる。
【0037】
このようにして、熱交換器34にて得られた常温の脱水NMPは制御バルブ46を介し、イオン交換樹脂カラム48,50に適宜切り換えて供給される。
【0038】
ここで、バインダーとして主に用いられるPVDFは、塩基性物質と共存することで脱フッ素化反応を起こすことが知られている。脱フッ素化反応したバインダー溶液は、反応前から粘性が変化するため、スラリー塗布工程不良の原因となる。このため、NMPについて、塩基性物質、とりわけアミン類を除去することが好ましい。
【0039】
イオン交換樹脂カラム48,50には、混床イオン交換樹脂が充填されており、液中のアミン類など不純物を除去する。そして、イオン交換樹脂カラム50の出口に、アミン類など不純物が除去された精製NMPが得られる。
【0040】
また、イオン交換樹脂カラム48,50には、当初湿潤状態のイオン交換樹脂が充填される。すなわち、新品のイオン交換樹脂は、基本的にある程度の水分を含んでいる。
【0041】
一方、脱水NMPは浸透気化分離装置38において脱水されており、水分は0.1%(1000ppm)以下である。そこで、湿潤状態のイオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂カラム48に脱水NMPを流通すると、イオン交換処理後の処理液(精製NMP)はその水分が上昇してしまう。従って、本実施形態のような用途でイオン交換樹脂を用いる場合には、そのイオン交換樹脂について、乾燥処理が必要である。
【0042】
本実施形態では、湿潤イオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂カラム48,50に脱水NMPを供給し、湿潤イオン交換樹脂を脱水乾燥する。そして、イオン交換樹脂カラム48,50の出口側にバルブ52,54が設けられ、湿潤状態の新しいイオン交換樹脂が充填された状態のイオン交換樹脂カラム48,50から流出する水分が増えたNMPからなる処理液をタンク32に返送できるようになっている。新しいイオン交換樹脂としては、通常新品のイオン交換樹脂が用いられるが、再生したイオン交換樹脂でもよい。
【0043】
すなわち、湿潤状態のイオン交換樹脂が充填された状態のイオン交換樹脂カラム48,50に、熱交換器34からの脱水された脱水NMPを供給し、水分が上昇した処理液を排出することによって、イオン交換樹脂カラム48,50内の湿潤イオン交換樹脂を脱水乾燥する。
【0044】
バルブ52,54からタンク32への返送経路には、水分計56が設けられており、ここで水分を計測する。そして、この水分計56における計測結果において、例えば水分が300ppm以下となり、精製NMPとして問題なくなった時点で、イオン交換樹脂カラム48,50内のイオン交換樹脂の乾燥処理が終了したものとし、処理液のタンク32への返送を終了する。なお、水分計56としては、カールフィッシャー水分計などが使用可能である。
【0045】
このようにして、イオン交換樹脂の脱水乾燥が終了したイオン交換樹脂カラム48,50のバルブ52,54は、精製NMPの排出経路に切り換えられる。
【0046】
このように、イオン交換樹脂カラム48,50は、イオン交換樹脂の交換直後においては、脱水NMPを流通することで内部のイオン交換樹脂を乾燥し、処理液をタンク32に返送する。従って、イオン交換樹脂の乾燥をオンサイトで適宜行うことができる。
【0047】
イオン交換樹脂カラム48,50をメリーゴーランド方式で、順次切り換えて利用することが好ましい。すなわち、乾燥処理が終了した一方のイオン交換樹脂カラム48,50において、精製NMPを生成しているときに、他方のイオン交換樹脂カラム48,50におけるイオン交換樹脂を新品(湿潤イオン交換樹脂)に入れ換える。そして、使用中のイオン交換樹脂カラム48,50の交換時期に来るかその前に、イオン交換樹脂が入れ換えられた湿潤イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂カラム48,50に脱水NMPを供給し、イオン交換樹脂の乾燥を行い、処理液はタンク32に返送する。そして、水分が所定の低濃度になった場合には、バルブ52,54を切り換え、精製NMPを回収する。このようなことを繰り返すことで、イオン交換樹脂の入れ換え、乾燥、精製NMPの生成を適宜行うことができる。もちろん、イオン交換樹脂カラム48,50の両方に脱水NMPを流通して一方のイオン交換樹脂の脱水乾燥を行い、他方で精製NMPを生成したり、両方で精製NMPを生成してもよい。このようにして、精製NMPの精製を中断することなく、処理を継続することができる。
【0048】
また、イオン交換樹脂カラムの数は3つ以上でもよい。また、イオン交換樹脂カラム48,50において、イオン交換樹脂の乾燥が終了された後、使用中のイオン交換樹脂カラム48,50のイオン交換樹脂の交換時期まで、待機することもできる。この場合、大気中のイオン交換樹脂カラム48,50を気密に保ち、イオン交換樹脂が水分を吸収することをできるだけ避けることが好ましい。
【0049】
さらに、イオン交換樹脂カラムを1つだけとして、入れ換え直後から樹脂の乾燥終了までは、処理液をタンク32へ返送し、乾燥が終了したら処理液を精製NMPとして排出するようにしてもよい。
【0050】
このように、本実施形態では、イオン交換樹脂カラム48,50を用いて、イオン交換樹脂の脱水が行え、特別のイオン交換樹脂乾燥手段が不要であり、オンサイトで湿潤イオン交換樹脂を乾燥脱水が可能となる。
【0051】
また、イオン交換樹脂カラムを複数設け、メリーゴーランド方式で、適宜樹脂交換作業を行うことで、NMP精製の処理を停止せずに、運転を続行でき、精製NMPの水分上昇も防止できる。
【0052】
さらに、浸透気化分離装置38のからの高温の脱水NMPを熱回収し、液温を低下させてからイオン交換樹脂カラムへ通液するため、イオン交換樹脂の高温劣化を防止することができる。
【0053】
「実験例」
以下、実験例について説明する。
【0054】
<参考例>
新品のイオン交換樹脂(ダウケミカル社製ゲル形混床イオン交換樹脂:ESP−2、およびダウケミカル社製マクロポーラス形混床イオン交換樹脂:EG290)を水に浸漬させ、湿潤状態のイオン交換樹脂を用意し、これをカラムに充填した。一方、純度99.5%のNMPを購入した。このNMPの水分は<100ppmである。このNMPをカラム通液し、出口液の水分を随時測定した。その結果を表1に示す。
【表1】
【0055】
ここで、BV(Bed Volume)は、樹脂量に対する通液量を樹脂量の倍数で示したものである。
【0056】
このように、50BV通液しないとNMP中の水分濃度は原液であるNMPと同等の水分にならなかった。
【0057】
処理条件は以下の通りである。
使用樹脂 :ESP−2(商品名:ダウケミカル社製ゲル形混床イオン交換樹脂)
:EG290(商品名:ダウケミカル社製マクロポーラス形混床イオン
交換樹脂)
樹脂量 :100[mL]
SV :5 [/h]
ここで、SVは、毎時の通液量を通液中のイオン交換樹脂の体積で除算した通液速度である。
【0058】
<実験例−1>
湿潤状態のイオン交換樹脂に対し、水分が<100ppmのNMPを50BV通液して脱水処理し、通液を停止した。1日後、再度水分が<100ppmのNMPを通液し、NMP中の水分濃度を確認した。
【0059】
10BV後には<100ppmに到達した。結果を表2に示す。
【表2】
【0060】
処理条件は以下の通りであり、参考例と同様である。
使用樹脂 :ESP−2(商品名:ダウケミカル社製ゲル形混床イオン交換樹脂)
:EG290(商品名:ダウケミカル社製マクロポーラス形混床イオン
交換樹脂)
樹脂量 :100[mL]
SV :5 [/h]
【0061】
<実験例−2>
図2に示すシステムにおいて、浸透気化分離装置38によりNMP水溶液の脱水を行い、その供給液、濃縮液の水分含有量を測定した。
【0062】
また、脱水したNMP濃縮液は熱交換器34で原液と熱交換し、2つのイオン交換樹脂カラム48,50に通液した。イオン交換樹脂カラム48に通液したNMPは所定量の通液後、通液を停止した。
【0063】
なお、浸透気化分離装置38における分離膜(浸透気化膜)には、三井造船(株)製のNaA型ゼオライト膜を採用した。
【0064】
以下、この実験処理の手順を説明する。
(1)NMP(純度>99.5%)に対し、超純水(18.2MΩ・cm)を添加し、NMP80wt%、水20wt%の混合液とし、処理対象の供給液(NMP水溶液、20℃)とした。供給液の供給量は2.5kg/hとした。
(2)NMP水溶液を供給液タンクより図示しないポンプで抜き取り、120℃に加熱し、ゼオライト膜を利用した分離膜(浸透気化膜)の原液室(供給液側)に供給した。
(3)分離膜(浸透気化膜)の透過室(透過側)より真空ポンプ44により真空引きし、透過した水蒸気は凝縮させて排出した。
(4)NMP濃縮液は、熱交換器34で原液と熱交換して冷却(30℃)した後、事前にNMP濃縮液による乾燥処理がなされた乾燥イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂カラム50(2kg/h)及び湿潤状態のイオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂カラム48(0.2kg/h)へ通液した。イオン交換樹脂カラム48,50内への充填樹脂量はそれぞれ0.4Lとした。イオン交換樹脂は、上述と同様に、ダウケミカル社製混床イオン交換樹脂:ESP−2(及びEG290)である。
(5)経時的にイオン交換樹脂カラム48,50の処理液をサンプリングし、サンプリング液の水分量を計測した。なお、水分量はカールフィッシャー水分計にて測定した。
(6)乾燥したイオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂カラム50の処理液は運転開始後速やかに水分濃度<300ppmとなり安定した。湿潤イオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂カラム48の処理液の水分濃度が<300ppmとなったことを確認し、イオン交換樹脂カラム48へのNMP通液を停止した(湿潤イオン交換樹脂の乾燥処理の終了)。
(7)イオン交換樹脂カラム48への通液停止の24h後に、NMP濃縮液の精製に使用されている乾燥イオン交換樹脂が充填されているイオン交換樹脂カラム50への通液を停止し、乾燥処理が終了したイオン交換樹脂カラム48へ通液を開始した。そして、通液を開始したイオン交換樹脂カラム48への10BV通液後には処理液水分濃度が<300ppmになった。従って、その後はこのイオン交換樹脂カラムを精製NMPを生成するイオン交換樹脂カラムとして使用することが可能であることが確認された。