特許第6088291号(P6088291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088291
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、及び、粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/00 20060101AFI20170220BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20170220BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   C09J167/00
   C09J7/02 Z
   C09J11/06
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-43217(P2013-43217)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-216874(P2013-216874A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-60682(P2012-60682)
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉江 里美
(72)【発明者】
【氏名】石黒 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】千田 弘毅
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/023255(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/049111(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/049114(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/016514(WO,A1)
【文献】 特開2009−221440(JP,A)
【文献】 特開平08−120061(JP,A)
【文献】 特開平05−239429(JP,A)
【文献】 特開2012−036278(JP,A)
【文献】 特開昭63−235359(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/072237(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、カルボン酸成分と、ジオール成分とを重縮合して得られるポリエステルと、架橋剤と、ポリエーテルポリオールとを含有するポリエステル系粘着剤組成物であって、
前記カルボン酸成分が、側鎖を有するジカルボン酸を50〜90重量%、及び、側鎖を有するトリカルボン酸を10〜50重量%含有し、
前記ポリエステルの重量平均分子量が、5000〜150000であることを特徴とするポリエステル系粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ジオール成分が、炭素数3〜10の脂肪族ジオールを含有することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリエステル系粘着剤組成物を架橋して得られる粘着剤層を、支持体の少なくとも片面に形成する粘着シートであって、
前記粘着剤層のゲル分率が、70〜98重量%であることを特徴とする粘着シート。
【請求項4】
ガラスに対する粘着力が、0.5N/25mm以下であることを特徴とする請求項に記載の粘着シート。
【請求項5】
表面保護用途に使用されることを特徴とする請求項3又は4に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系粘着剤組成物、及び、前記組成物を用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンをはじめとする電子モバイル機器や、パソコンやテレビ等のディスプレイ表面の表面保護用途に使用される表面保護用粘着シートとして、被着体であるディスプレイ表面に対して、濡れ性が良好で、前記粘着シートの剥離時の粘着力が、軽剥離であるものが要求されている。
【0003】
また、表面保護用粘着シート(表面保護シート)は、貼り合わせた後、剥離され、再度、貼り合わされるころが繰り返し行われる場合も多い。そのため、適度な濡れ性が必要であり、手貼りで外観良く、再貼り合わせできることが要求されている。
【0004】
このような要求の中、表面保護用途の粘着剤としては、高い濡れ性を有するシリコーン系の粘着剤が使用されてきたが、高コストであるという問題を抱えている。
【0005】
また、年々環境への配慮も意識され、脱石油資源も叫ばれており、石油資源を極力使用せず、植物由来の材料への移行も期待されている。そのような中で、植物由来のダイマー酸とダイマージオールを使用したポリエステル系粘着剤も検討されている(特許文献1)が、こちらも、高コストであるという問題を抱えている。
【0006】
そこで、上記問題を解消すべく、アクリル系粘着剤などを使用して、低コストのアクリル系粘着剤を使用する表面保護用粘着シートが提案されている(特許文献2及び3参照)。
【0007】
しかし、上記アクリル系粘着剤を使用する例では、可塑剤を使用しており、被着体であるディスプレイ表面に対して貼着後、可塑剤成分がブリードアウトして、被着体を汚染するなどの問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−13593号公報
【特許文献2】特開2007−327012号公報
【特許文献3】特開2010−248489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、高価なシリコーン系の粘着剤等を用いることなく、植物由来の原料でも製造することができ、被着体に対する濡れ性がよく、軽剥離性(再剥離性)、耐汚染性(糊残りがなく)、及び、作業性に優れた粘着シートの製造に使用できるポリエステル系粘着剤組成物、及びこれを用いた表面保護用途を含む粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示すポリエステル系粘着剤組成物、及び、粘着シートを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、少なくとも、カルボン酸成分と、ジオール成分とを重縮合して得られるポリエステルと、架橋剤とを含有するポリエステル系粘着剤組成物であって、前記カルボン酸成分が、側鎖を有するジカルボン酸を50〜90重量%、及び、側鎖を有するトリカルボン酸を10〜50重量%含有し、前記ポリエステルの重量平均分子量が、5000〜150000であることを特徴とする。
【0012】
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、前記ジオール成分が、炭素数3〜10の脂肪族ジオールを含有することが好ましい。
【0013】
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、更に、ポリエーテルポリオールを含有することが好ましい。
【0014】
本発明の粘着シートは、前記ポリエステル系粘着剤組成物を架橋して得られる粘着剤層を、支持体の少なくとも片面に形成する粘着シートであって、前記粘着剤層のゲル分率が、70〜98重量%であることが好ましい。
【0015】
本発明の粘着シートは、ガラスに対する粘着力が、0.5N/25mm以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の粘着シートは、表面保護用途に使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、高価なシリコーン系の粘着剤などを用いることなく、植物由来の原料でも製造することができ、被着体に対する濡れ性がよく、軽剥離性(再剥離性)、耐汚染性(糊残り等を生じない)、および、作業性に優れた粘着シートの製造に使用できるポリエステル系粘着剤組成物、及びこれを用いた粘着シートを提供することができ、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0019】
<ポリエステル>
本発明のポリエステル系粘着剤組成物に用いられるポリエステルは、少なくとも、カルボン酸成分と、ジオール成分とを重縮合して得られるポリエステルであり、前記カルボン酸成分が、側鎖を有するジカルボン酸を50〜90重量%、及び、側鎖を有するトリカルボン酸を10〜50重量%含有し、前記ポリエステルの重量平均分子量が、5000〜150000であることを特徴とするポリエステルである。なお、ポリエステルの合成方法としては、特に限定されるものではなく、公知の重合方法を用いることができる。
【0020】
前記ポリエステルは、植物由来の原料により製造されることが好ましい態様である。その理由としては、植物由来の原料は、生分解性で、いわゆるカーボンニュートラルであるといわれており、地球環境にやさしく、環境対応型の粘着剤を得ることができるからである。
【0021】
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、少なくとも、カルボン酸成分を含み、前記カルボン酸成分としては、少なくとも、カルボキシル基を2個、及び3個含むジカルボン酸、及び、トリカルボン酸を含み、前記カルボン酸成分が、側鎖を有するジカルボン酸を50〜90重量%、及び、側鎖を有するトリカルボン酸を10〜50重量%含有し、好ましくは、前記ジカルボン酸を、60〜85重量%、トリカルボン酸を15〜40重量%含有し、より好ましくは、前記ジカルボン酸を、65〜80重量%、トリカルボン酸を20〜35重量%含有することである。前記範囲内であると、ポリマー内部で3次元架橋構造を有効に成形することが可能となり、好ましい態様となる。
【0022】
前記ジカルボン酸としては、側鎖を有し、官能基として、カルボキシル基を2個有するものであり、好ましくは、前記側鎖がアルキル基の場合である。前記ジカルボン酸に、側鎖を有することにより、柔軟性が増すことになり、更に側鎖がアルキル基であることにより、ポリエステルの加水分解を起こしにくくすることができ、好ましい態様となる。
【0023】
前記ジカルボン酸として、具体的には、植物由来のジカルボン酸であれば、たとえば、ヒマシ油由来のセバシン酸や、オレイン酸、エルカ酸などから誘導されるダイマー酸などが挙げられ、その他としては、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ドデセニル無水琥珀酸、フマル酸、琥珀酸、ドデカン二酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族や脂環族ジカルボン酸等や、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられる。中でも特に、ダイマー酸等は、植物由来で、地球環境にやさしいなどの観点から、好ましい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
前記トリカルボン酸としては、側鎖を有し、官能基として、カルボキシル基を3個有するものであり、好ましくは、前記側鎖がアルキル基の場合である。前記トリカルボン酸に、側鎖を有することにより、柔軟性が増すことになり、更に側鎖がアルキル基であることにより、ポリエステルの加水分解を起こしにくくすることができ、更にトリカルボン酸を含有することにより、通常ジカルボン酸を使用して重合されたポリエステルは直鎖状であるが、トリカルボン酸を使用することにより、ネッットワーク構造(3次元架橋構造)を形成することが可能となり、それに伴い粘着剤層が硬く、粘着剤層(粘着シート)の粘着力を低く抑えることができ、剥離時に基材の変形や破壊を生じることがなく、軽剥離性(再剥離性)を容易に実現することができ、更に作業性に優れたものとすることがきで、好ましい態様となる。
【0025】
前記トリカルボン酸として、具体的には、植物由来のトリカルボン酸であれば、たとえば、アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、オキサロコハク酸、トリカルバリル酸などの脂肪族カルボン酸や、ヘミメリット酸、トリメシン酸などの芳香族系トリカルボン酸、さらにオレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸の三量体であるトリマー酸等が挙げられる。また、トリカルボン酸成分と共に、ジカルボン酸成分を含む市販品も使用することができる。中でも特に、オレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸の三量体であるトリマー酸等は、植物由来で、地球環境にやさしいなどの観点から、好ましい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
また、ジカルボン酸成分を主に含有し、これにトリカルボン酸を含有する、いわゆるジカルボン酸の純度の低い製品が市販品として存在する。この市販品は、ジカルボン酸の純度が低い分、安価であるため、コストダウンを図ることができ、好ましい態様となる。前記市販品としては、例えば、PRIPOL1015、PRIPOL1017、PRIPOL1022、PRIPOL1025(クローダ社製)などが挙げられる。
【0027】
また、本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、少なくとも、ジオール成分を含み、前記ジオール成分としては、ヒドロキシル基を分子中に2個有するものであれば、特に制限なく使用できるが、好ましくは、炭素数が3〜10の脂肪族ジオールを用いるものであり、更に好ましくは、炭素数が、4〜8の脂肪族ジオールを使用することである。前記ジオール成分を使用することにより、低接着力と高濡れ性を実現することとなり、更に、前記脂肪族ジオールを使用する場合においては、炭素数が、3より小さくなると、沸点が低くなるため、ポリエステルの製造(重合)時に、ジオール成分が揮発しやすく、粘度の上昇を伴い、ポリエステルの重合を制御できなくなり、一方、炭素数が10を超えると、室温でも、結晶化しやすく、取扱い性(作業性)に劣り、コスト面でも不利になる恐れがあり、好ましくない。なお、濡れ性が高いことにより、粘着シート(表面保護フィルム)を被着体に貼り合わせる際に、気泡の噛み込みがなく、外観が良好なものが得られ、更に剥離後、再度貼り合わせる際であっても、外観が良好となり、好ましい態様となる。
【0028】
前記ジオール成分としては、たとえば、植物由来のジオールであれば、ヒマシ油から誘導される脂肪酸エステルや、オレイン酸、エルカ酸などから誘導されるダイマージオール、グリセロールモノステアレートなどが挙げられ、その他としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコールや、前記脂肪族グリコール以外のものとして、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートグリコール等が挙げられる。中でも、炭素数が3〜10の脂肪族ジオールを使用することが、コストや重合時の取り扱いし易さという点で、より好ましく、具体的には、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコールが挙げられ、特に、植物由来の脂肪族ジオールは、地球環境にやさしいなどの観点から、好ましい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
前記カルボン酸成分と前記ジオール成分のモル比は、1:1.08〜2.10であることがこの好ましく、1:1.09〜2.05がより好ましくは、1.10〜2.00が更に好ましい。前記モル比が1:1.08より小さくなると、得られるポリエステルの分子量が大きくなり、官能基となるヒドロキシル基が少なくなり、架橋剤(たとえば、多官能性イソシアネート)を使用しても、架橋反応を促進させることが困難となり、所望のゲル分率を有する粘着剤層を得られなくなる。一方、前記モル比が、1:2.10を超えると、所望の分子量より小さなポリエステルしか得られない傾向にあり、架橋剤を使用しても、ゲル化を促進することができず、所望のゲル分率を有する粘着剤層が得られず、好ましくない。また、前記カルボン酸成分と前記ジオール成分はモル数が近くなり、モル比が1:1により近づくと、得られるポリエステルの分子量が増大し、これに伴い粘着力(剥離力)が増大し、軽剥離を実現できなくなるため、特に、表面保護用途の粘着シートとしては、好ましくない。
【0030】
また、本発明のポリエステル系粘着剤組成物に用いられるポリエステルは、重量平均分子量が、5000〜150000であることを特徴とし、好ましくは5500〜100000であり、より好ましくは、6000〜50000である。重量平均分子量が5000未満の場合は、前記ポリエステルを用いた粘着剤の粘着力低下の原因となり、被着体に対して、粘着シート(粘着剤層)自体を固定できなくなる場合がある。また、重量平均分子量が150000を超えると、ポリエステルの製造(重合)中の増粘が激しくなり、取扱い性に劣ることになるため、好ましくない。
【0031】
なお、本発明の粘着シートに用いられるポリエステルの特性を損なわない程度であれば、前記カルボン酸成分や前記ジオール成分以外のその他の成分を重合したり、また、重合後に添加したりすることも可能である。
【0032】
本発明において、前記カルボン酸成分と前記ジオール成分との重合(縮合重合)反応は、溶剤を使用して行ってもよいし、減圧下、無溶剤で行ってもよく、従来公知の方法が使用できる。
【0033】
前記重合(縮合重合)反応で生成する水を除去する方法としては、トルエンやキシレンを用いて共沸脱水させる方法や、反応系内に不活性ガスを吹き込み、不活性ガスと共に、生成した水や、モノアルコールを反応系外に排出する方法、減圧下で溜出する方法等が挙げられる。
【0034】
前記重合(縮合重合)反応に用いられる重合触媒としては、通常のポリエステルの重合触媒に用いられるものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、チタン系、錫系、アンチモン系、亜鉛系、ゲルマニウム系等の種々の金属化合物や、p−トルエンスルホン酸や硫酸などの強酸化合物を用いることができる。
【0035】
<ポリエステル系粘着剤組成物>
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、更に、ポリエーテルポリオールを含有することが好ましく、より好ましくは、分子末端に少なくとも1つ以上の反応性官能基を含有することである。前記ポリエーテルポリオールを含有(配合)し、架橋剤を用いて架橋反応させることにより、粘着剤組成物中にポリエーテルポリオールを挿入することができる。これにより、被着体へ汚染することなく、さらに低接着性にすることができ、好ましい態様となる。
【0036】
前記ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール等のポリオキシアルキレングリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの共重合ポリエーテルポリオール(例えば、保土ヶ谷化学社製「PTG−L1000」、「PTG−L2000」、「PTG−L3000」等)、あるいはネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの共重合ポリエーテルグリコール等の二官能型ポリエーテルポリオール、トリメチロールプロパントリポリオキシエチレンエーテル等の三官能型ポリエーテルポリオール、ペンタエリスリトールポリオキシエチレンエーテル等の四官能ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。さらに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、等のブロック共重合型、ランダム共重合型であってもよい。また、一部の末端をメチル基、エチル基、アリル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基などの脂肪族系炭化水素基や、フェニル基、メチルフェニル基、ノニルフェニル基、ベンジル基などの芳香族系炭化水素基で、末端水酸基を変性し、反応性を無くしてもよい。ただし、全官能基を変性すると、完全に反応性がなくなるため、ポリマーとの架橋反応ができなくなり、粘着剤表面へのブリードの原因となる。特に良好な粘着物性が得られるのは、ポリプロピレングリコールや、ポリブチレングリコールなどの分子骨格中に分岐差を持つ構造のものである。これは、ポリマー鎖の運動性が高く、粘着剤表面近傍での寄与が大きくなるためと思われる。また、これらの片末端を変性したタイプがさらに有用である。これは、変性して反応性のなくなった片末端のポリマー鎖が自由であることにより、さらに分子運動性が高まるためと思われる。なお、植物由来のポリエーテルポリオールは、地球環境にやさしいなどの観点から、好ましい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0037】
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)としては、500〜3500が好ましく、1000〜3000がさらに好ましい。数平均分子量が、500より小さいと、低汚染性などの効果が得られず、3500より大きいと前記ポリエステルとの相溶性が悪く、外観不良を生じる恐れがあり、好ましくない。
【0038】
前記ポリエーテルグリコールの配合量としては、前記ポリエステル100重量部に対し、25〜300重量部が好ましく、50〜250重量部がより好ましく、80〜200重量部がさらに好ましい。配合量が30重量部より少ないと、低汚染性などの効果が得られず、300重量部より多いと前記ポリエステルとの相溶性が悪く、外観不良や、ブリードアウト等が発生し、被着体に汚染を残す恐れがあり、好ましくない。
【0039】
前記ポリエーテルポリオールの分子量は、末端官能基未変性のものについては、数平均分子量100〜5000が好ましく、より好ましくは200〜4000、さらに好ましくは300〜3000である。分子量が100より小さいと粘着特性の改善効果が小さく、また、5000よりも大きいと、ブリードアウトしてしまう。また、一部の末端官能基を変性したものについては、数平均分子量100〜1500が好ましく、より好ましくは200〜1200、さらに好ましくは300〜1000である。分子量が100より小さいと粘着特性の改善効果が小さく、また、1500よりも大きいと、ブリードアウトしてしまう。1種または2種以上を組み合わせて使用できる。なお、前記範囲内の数平均分子量を有するポリエーテルポリオールを使用することにより、詳細な理由は明らかではないが、ポリマー鎖の架橋点間の距離が短くなり、これに伴い、ポリマー鎖の密度が高くなることによって、架橋後の粘着剤層の弾性率が高くなり、シートの剛性が増し、自重で変形しにくくなることにより、被着体への貼付時において、多点で接着を起こさず、気泡の噛み込みを起こしにくくなり、使用しない場合と比較して、優れた粘着シート(粘着剤層)が得られる。また、同様の理由から低粘着力化が可能であり、表面保護シートとして有利となる。
【0040】
前記ポリエーテルポリオールの配合量は、末端官能基未変性のものについては、上記ポリエステル100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは3〜45重量部、さらに好ましくは5〜40重量部である。1重量部より少ないと、粘着特性の改善効果が得られず、また50重量部より多いとブリードアウトしてしまう。また、一部の末端官能基を変性したものについては、上記ポリエステル100重量部に対して、1〜35重量部が好ましく、より好ましくは3〜32重量部、さらに好ましくは5〜28重量部である。1重量部より少ないと、粘着特性の改善効果が得られず、また35重量部より多いとブリードアウトしてしまい、好ましくない。
【0041】
本発明のポリエステル系粘着剤組成物は、架橋剤を含有するものである。架橋剤を用いて粘着剤組成物を架橋反応させることにより、粘着剤層を形成することができる。前記架橋剤として、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、多価イソシアヌレート、多官能性イソシアネート、多官能性メラミン化合物、多官能性エポキシ化合物、多官能性オキサゾリン化合物、多官能性アジリジン化合物、金属キレート化合物などを用いることができ、特に得られる粘着剤層の透明性や、高いゲル分率の粘着シート(粘着剤層)を得るという観点から、多価イソシアヌレートや多官能性イソシアネート化合物を用いることが好ましい態様である。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
前記多価イソシアヌレートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体などが挙げられる。これらを用いることにより、得られる粘着剤層の透明性や、高いゲル分率を得るという目的を達成することができ、有効である。前記多価イソシアヌレートの市販品を使用することもでき、具体的には、商品名「デュラネートTPA−100」(旭化成ケミカルズ社製)、商品名「コロネートHK」、「コロネートHX」、「コロネート2096」(日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられる。
【0043】
前記多官能性イソシアネート化合物としては、例えば、分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する化合物であることが好ましく、より好ましくは3個以上であれば、特に制限されず、具体的には、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類などを挙げることができる。
【0044】
前記脂肪族ポリイソシアネート類としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネートや、1,2−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−テトラメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネートなどのテトラメチレンジイソシアネート、1,2−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5−ヘキサメチレンジイソシアネートなどのヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
前記脂環族ポリイソシアネート類としては、例えば、イソホロンジイソシアネートや、1,2−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−シクロヘキシルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネートなどのシクロヘキシルジイソシアネート、1,2−シクロペンチルジイソシアネート、1,3−シクロペンチルジイソシアネートなどのシクロペンチルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0046】
前記芳香族ポリイソシアネート類としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2, 2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2, 2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3, 3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0047】
また、前記多官能性イソシアネート化合物として、前記脂肪族ポリイソシアネート類や脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類以外に、芳香脂肪族ポリイソシアネート類による二量体や三量体を用いることができ、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなどの重合物などが挙げられる。
【0048】
前記多官能性イソシアネート化合物として、市販品を使用することもでき、具体的には、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートの三量体付加物として、商品名「コロネートL」(日本ポリウレタン工業社製)や、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの三量体付加物として、商品名「コロネートHL」(日本ポリウレタン工業社製)等が挙げられる。
【0049】
前記多官能性メラミン化合物としては、メチル化メチロールメラミン、ブチル化ヘキサメチロールメラミンなどが挙げられ、前記多官能性エポキシ化合物としては、ジグリシジルアニリン、グリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0050】
前記架橋剤の種類や配合量は、特に限定されないが、粘着シートとしては、形成した粘着剤層のゲル分率が、70〜98重量%になるように配合することが好ましく、より好ましくは72〜97重量%であり、特に好ましくは74〜96重量%になるように配合する。ゲル分率が70重量%未満であると、粘着力(剥離力)が経時で上昇したり、粘着剤層(粘着シート)を剥離する際に、被着体を汚染する場合があり、軽剥離性(再剥離性)に劣る結果となり、また、ハンドリング性(作業性)という点においても、好ましくない。一方、ゲル分率が98重量%を超えると、粘着力が低くなりすぎ、被着体に対して粘着シート自体を固定できなくなる恐れがあり、特に、表面保護用途として使用できなくなるため、好ましくない。
【0051】
なお、前記架橋剤の配合量としては、たとえば、ポリエステル100重量部に対して、0.001〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.001〜25重量部である。配合量が0.001重量部未満であると、粘着剤層とした場合に、凝集力の向上を図ることができず、耐熱性の低下などを招く恐れがあり、30重量部を超えると、貼り合わせ後、経時で粘着力が上昇したり、被着体を汚染させるなどの不具合が生じるため、好ましくない。
【0052】
また、本発明の粘着シートに用いられる粘着剤層のゲル分率を効率よく調整するため、架橋触媒を適宜使用することができる。前記触媒としては、たとえば、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジウラレート等が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
前記触媒の配合量としては、特に制限されないが、ポリエステル100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。配合量が0.01重量部未満であると、触媒添加の効果が得られない場合があり、1重量部を超えると、シェルフライフが著しく短くなり、塗布の安定性が低下する場合があり、好ましくない。
【0054】
また、シェルフライフを延長するため、遅延剤として、アセチルアセトンやメタノール、オルト酢酸メチルなど適宜、配合することも可能である。
【0055】
また、本発明の粘着シートに用いられる粘着剤層を形成するため、前記ポリエステルに、前記架橋剤と共に、粘着付与樹脂を組み合わせることで、所望の特性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0056】
前記粘着付与樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられ、特にバイオマス度を向上させるため、植物由来の原料により製造されるロジン系やテルペン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。なお、バイオマス度とは、前記ポリエステル系粘着剤組成物を構成する使用原料全体の重量に対する植物由来の使用原料の重量から、植物由来の使用原料の割合を計算したものを意味する。
【0057】
前記テルペン系粘着付与樹脂として、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、及び、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられ、具体的には、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体や、これらをフェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性したテルペン系樹脂を使用することができる。
【0058】
前記フェノール系粘着付与樹脂としては、具体的には、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなどの各種フェノール類と、ホルムアルデヒドとの縮合物を使用することができる。更に、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを、アルカリ触媒下で付加反応させて得られるレゾールや、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを、酸触媒下で縮合反応させて得られるノボラック、未変性または変性ロジンやこれらの誘導体などのロジン類に、フェノールを酸触媒下で付加させ、熱重合することにより得られるロジン変性フェノール樹脂などを使用することができる。
【0059】
前記ロジン系粘着付与樹脂としては、ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、ロジンフェノール樹脂などが挙げられ、具体的には、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの未変性ロジン(生ロジン)や、これらを水添化、不均化、重合、その他の化学的に修飾された変性ロジン、これらの誘導体を使用することができる。
【0060】
前記粘着付与樹脂の配合量は、前記ポリエステル100重量部に対して、0〜50重量部が好ましく、より好ましくは2〜30重量部であり、特に好ましくは5〜20重量部である。配合量が50重量部を超えると粘着力が高くなり、高温環境下に曝した後の再剥離が困難になる恐れがあり、好ましくない。
【0061】
本発明の粘着シートに用いられる粘着剤層(粘着剤)の特性を損なわない程度であれば、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料や染料などの着色剤、老化防止剤、界面活性剤などの一般的な添加剤を使用することができる。
【0062】
前記粘着剤層の厚さ(乾燥後)としては、適宜選択することができるが、例えば、1〜100μm程度が好ましく、より好ましくは3〜80μm程度であり、特に好ましくは5〜60μm程度である。粘着剤層の厚さが1μm未満であると、十分な粘着力を得にくく、被着体に対して、粘着シート(粘着剤層)自体を固定できず、剥離しやすくなる場合があり、厚さが100μmを超えると、粘着力が経時で上昇し剥がれにくくなる場合があり、好ましくない。なお、粘着剤層としては、単層、積層体のいずれの形態であっても良い。
【0063】
本発明の粘着シートは、前記粘着剤層を、支持体の少なくとも片面に形成することにより得られる。なお、本発明の粘着シートとしての特性を損なわない範囲であれば、中間層や下塗り層などを有していても、問題ない。
【0064】
前記支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、プラスチックフィルムや、紙、不織布などの多孔質材料など、各種の支持体(基材)を使用することができる。なお、表面保護用途として使用する場合には、耐久性等の観点から、プラスチックフィルムを用いることが好ましい態様である。前記プラスチックフィルムとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、また、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミド等のポリアミドフィルム、ポリ塩化ビルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルム等を挙げることができる。また、植物由来の原料から得られるポリ乳酸やセルロースなどからなる支持体を好適に用いることができる。
【0065】
前記支持体には、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、充填剤、顔料や染料などの通常の粘着テープ用基材(支持体)に用いられる各種添加剤を使用することができる。
【0066】
前記支持体(基材)の表面は、必要に応じて、粘着剤層との密着性を高めるため、慣用の表面処理を施すことができ、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤によるコーティング処理等が施されていてもよい。また、支持体上に形成される各種の粘着剤層との間に、剥離性を付与するため、例えば、シリコーン系樹脂やフッ素系樹脂等の剥離剤などによるコーティング処理が施されていてもよい。
【0067】
前記支持体(基材)の厚さとしては、その材質や形態などに応じて、適宜選択することができるが、例えば、1000μm以下が好ましく、1〜1000μm程度であることがより好ましく、2〜500μm程度が特に好ましくは、更に好ましくは3〜300μm程度であり、特に好ましくは5〜250μm程度である。
【0068】
前記粘着剤層の形成方法としては、従来公知の方法を採用することができるが、たとえば、粘着剤組成物(粘着剤組成物を溶剤に溶解した粘着剤組成物溶液や、熱溶融液)を、前記支持体(基材)に塗布・乾燥して粘着剤層を形成する方法や、前記粘着剤組成物を、前記支持体に塗布・乾燥して、粘着剤組成物層とし、更に架橋処理することにより粘着剤層を形成する方法、剥離ライナー上に塗布・形成した粘着剤層を支持体上に移着(転写)する方法、粘着剤層形成材を支持体(基材)上に押出し形成塗布する方法、支持体(基材)と粘着剤層を二層または多層にて押出しする方法、支持体(基材)上に粘着剤層を単層ラミネートする方法などの公知の粘着シートの製造方法に基づき、行うことができる。また、熱可塑性樹脂からなる支持体(基材)とともに、粘着剤層をインフレーション法やTダイ法による二層又は多層による共押出し成形する方法などを用いることができる。なお、本発明における粘着シートとは、粘着フィルムや粘着テープ等を含むものである。
【0069】
前記粘着剤組成物(溶液)を塗布する方法としては、従来公知の方法を採用することができるが、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースロールコート、ロールブラッシュコート、エアーナイフコート、スプレーコート、ダイコーター等による押し出しコートなどが挙げられる。
【0070】
前記剥離ライナーとしては、特に限定されず、従来公知のものを適宜使用することができる。例えば、基材(剥離ライナー用基材)の少なくとも片面に、剥離コート層を形成したものを用いることができる。なお、剥離ライナー用基材は、単層、複数層のいずれの形態も用いることができる。
【0071】
前記剥離ライナー用基材としては、プラスチックフィルム、紙、発泡体、金属箔等の各種薄葉体等を用いることができ、特に好ましくは、プラスチックフィルムである。また、プラスチックフィルムの原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0072】
前記剥離ライナー用基材の厚さは、目的に応じて、適宜選択することができる。
【0073】
前記粘着剤層の形成にあたっては、特に制限されないが、例えば、粘着剤組成物(溶液)を塗布後、乾燥する温度としては、通常、60〜150℃、好ましくは70〜140℃である。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。また、実施例中の「部」とは、「重量部」を示す。また、ポリエステルの物性については、表1に示し、粘着剤層(粘着シート)の配合内容、及び評価結果については、表2に示した。また、実施例で使用したポリエーテルポリオールの物性については、表3に示した。
【0075】
<ポリエステルAの調製>
四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を付し、これにカルボン酸成分(商品名「プリポール1025」、クローダ社製、ジカルボン酸であるダイマー酸(分子量:565):80重量%、トリカルボン酸であるトリマー酸(分子量:846):20重量%を含有)と、ジオール成分である1,4−ブタンジオール(和光純薬社製、分子量:90)とのモル比(カルボン酸成分:ジオール成分のモル比)が、1:1.9になるように、前記カルボン酸成分100部、前記ジオール成分30.3部を配合し、更に、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬社製)0.1部を仕込み、窒素雰囲気で撹拌しながら、180℃まで昇温し、この温度を8時間保持した。
その後、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を取り除き、真空ポンプに付け替え、減圧雰囲気(0.002MPa)で撹拌しながら、200℃まで昇温し、この温度を保持した。約2時間反応を続け、ポリエステルAを得た。重量平均分子量(Mw)は、10000であった。
【0076】
<ポリエステルBの調製>
四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を付し、これにカルボン酸成分(商品名「プリポール1025」、クローダ社製、ジカルボン酸であるダイマー酸(分子量:565):80重量%、トリカルボン酸であるトリマー酸(分子量:846):20重量%を含有)と、ジオール成分である1,4−ブタンジオール(和光純薬社製、分子量:90)とのモル比(カルボン酸成分:ジオール成分のモル比)が、1:1.6になるように、前記カルボン酸成分100部、前記ジオール成分25.5部を配合し、更に、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬社製)0.1部を仕込み、窒素雰囲気で撹拌しながら、180℃まで昇温し、この温度を8時間保持した。
その後、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を取り除き、真空ポンプに付け替え、減圧雰囲気(0.002MPa)で撹拌しながら、200℃まで昇温し、この温度を保持した。約4時間反応を続け、ポリエステルBを得た。重量平均分子量(Mw)は、120000であった。
【0077】
<ポリエステルCの調製>
四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を付し、これにカルボン酸成分(商品名「プリポール1006」、クローダ社製、ジカルボン酸であるダイマー酸(分子量:565):96重量%、トリカルボン酸であるトリマー酸(分子量:846):4重量%を含有)と、ジオール成分である1,4−ブタンジオール(和光純薬社製、分子量:90)とのモル比(カルボン酸成分:ジオール成分のモル比)が、1:1.5になるように、前記カルボン酸成分100部、前記ジオール成分23.9部を配合し、更に、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬社製)0.1部を仕込み、窒素雰囲気で撹拌しながら、180℃まで昇温し、この温度を8時間保持した。
その後、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を取り除き、真空ポンプに付け替え、減圧雰囲気(0.002MPa)で撹拌しながら、200℃まで昇温し、この温度を保持した。約10時間反応を続け、ポリエステルCを得た。重量平均分子量(Mw)は、30000であった。
【0078】
<ポリエステルDの調製>
四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を付し、これにカルボン酸成分(商品名「プリポール1009」、クローダ社製、ジカルボン酸であるダイマー酸(分子量:565):99重量%、トリカルボン酸であるトリマー酸(分子量:846):1重量%を含有)と、ジオール成分である1,4−ブタンジオール(和光純薬社製、分子量:90)とのモル比(カルボン酸成分:ジオール成分のモル比)が、1:1.5になるように、前記カルボン酸成分100部、前記ジオール成分23.9部を配合し、更に、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬社製)0.1部を仕込み、窒素雰囲気で撹拌しながら、180℃まで昇温し、この温度を8時間保持した。
その後、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を取り除き、真空ポンプに付け替え、減圧雰囲気(0.002MPa)で撹拌しながら、200℃まで昇温し、この温度を保持した。約10時間反応を続け、ポリエステルDを得た。重量平均分子量(Mw)は、20000であった。
【0079】
<ポリエステルEの調製>
四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を付し、これにカルボン酸成分(商品名「プリポール1025」、クローダ社製、ジカルボン酸であるダイマー酸(分子量:565):80重量%、トリカルボン酸であるトリマー酸(分子量:846):20重量%を含有)と、ジオール成分である1,4−ブタンジオール(和光純薬社製、分子量:90)とのモル比(カルボン酸成分:ジオール成分のモル比)が、1:2.2になるように、前記カルボン酸成分100部、前記ジオール成分35部を配合し、更に、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬社製)0.1部を仕込み、窒素雰囲気で撹拌しながら、180℃まで昇温し、この温度を8時間保持した。
その後、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を取り除き、真空ポンプに付け替え、減圧雰囲気(0.002MPa)で撹拌しながら、200℃まで昇温し、この温度を保持した。約1.5時間反応を続け、ポリエステルEを得た。重量平均分子量(Mw)は、4000であった。
【0080】
<ポリエステルFの調製>
四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を付し、これにカルボン酸成分(商品名「プリポール1025」、クローダ社製、ジカルボン酸であるダイマー酸(分子量:565):80重量%、トリカルボン酸であるトリマー酸(分子量:846):20重量%)を含有)と、ジオール成分である1,4−ブタンジオール(和光純薬社製、分子量:90)とのモル比(カルボン酸成分:ジオール成分のモル比)が、1:1.3になるように、前記カルボン酸成分100部、前記ジオール成分20.7部を配合し、更に、触媒としてジブチルスズオキシド(和光純薬社製)0.2部を仕込み、窒素雰囲気で撹拌しながら、180℃まで昇温し、この温度を8時間保持した。
その後、窒素導入管、及びトラップ付き冷却管を取り除き、真空ポンプに付け替え、減圧雰囲気(0.002MPa)で撹拌しながら、200℃まで昇温し、この温度を保持した。約4時間反応を続け、ポリエステルFを得た。重量平均分子量(Mw)は、160000であったが、ゲル化が著しく、非常に高粘度であり、取り扱うのが困難であった。
【0081】
<実施例1>
ポリエステルA100部に対して、架橋剤として、ポリヘキサメチレンジイソシアネート(商品名「TPA−100」、旭化成ケミカルズ社製)12部を配合し、溶剤としてトルエンを50〜150部加えて、塗工加工しやすい粘度(たとえば、10Pa・s程度)に調整し、ポリエステル系粘着剤組成物とし、この組成物を、乾燥させ得られる粘着剤層(乾燥後)の厚みが10μmになるように、基材として、厚さが38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「ルミラー38S10」、パナック社製)上に塗布し、100℃で3分間乾燥させ、組成物層を得た。その後、剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm、商品名「ダイアホイルMRE♯38」、三菱樹脂社製)の剥離処理面に前記組成物層を貼り合わせ、更に50℃で3日間放置し、粘着剤層を支持体上に形成した粘着シート(表面保護用)を得た。
【0082】
<実施例2>
ポリエステルB100部に対して、前記架橋剤を10部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0083】
<実施例3>
ポリエステルA100部に対して、両末端OH基型ポリブチレングリコール(商品名「ユニオールPB−500」、日油社製、数平均分子量(Mn):500)を25部添加し、さらに前記架橋剤を20部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0084】
<実施例4>
ポリエステルA100部に対して前記架橋剤を50部、数平均分子量(Mn)が1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名「PTG-1000SN」、保土谷化学社製)を150部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0085】
<実施例5>
ポリエステルA100部に対して、前記架橋剤を30部、数平均分子量(Mn)が3000のポリテトラメチレンエーテルグリコール(商品名「PTG-3000SN」、保土谷化学社製)を150部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0086】
<実施例6>
ポリエステルA100部に対して前記架橋剤を50部、数平均分子量(Mn)が1000のポリテトリメチレンエーテルグリコール(商品名「CerenolH1000」、DuPont社製)を150部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0087】
<実施例7>
ポリエステルA100部に対して、前記架橋剤を50部、数平均分子量(Mn)が1000の共重合ポリエーテルポリオール(商品名「PTG−L1000」、保土谷化学社製)を150部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0088】
<実施例8>
ポリエステルA100部に対して、前記架橋剤を40部、数平均分子量(Mn)が2000の共重合ポリエーテルポリオール(商品名「PTG−L2000」、保土谷化学社製)を150部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0089】
<実施例9>
ポリエステルA100部に対して、前記架橋剤を30部、数平均分子量(Mn)が3000の共重合ポリエーテルポリオール(商品名「PTG−L3000」、保土谷化学社製)を150部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0090】
<比較例1>
ポリエステルC100部に対して、前記架橋剤を10部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0091】
<比較例2>
ポリエステルD100部に対して、前記架橋剤を10部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0092】
<比較例3>
ポリエステルE100部に対して、前記架橋剤を20部配合した以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを得た。
【0093】
<比較例4>
ポリエステルFを使用して、粘着シートの作製を試みたが、ポリエステルFのゲル化が著しく、非常に高粘度のため、架橋剤などの原料と混合することができず、粘着シートが得られなかった。
【0094】
(重量平均分子量)
重量平均分子量(Mw)は、ポリエステル約0.2gをシャーレに採取し、120℃×2時間、乾燥させ溶剤を除去した。ついで、前記シャーレ上のポリエステル層0.01gを秤量して、テトラヒドロフラン(THF)10gに添加し、24時間放置して溶解した。この溶液をゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ(GPC)法を用い、標準ポリスチレンにより作成した検量線から、それぞれの分子量を測定した。(測定条件) 装置名:東ソー社製、HLC−8220GPC
試験片濃度:0.1重量%(THF溶液)
試験片注入量:20μl
溶離液:THF
流速:0.300ml/min
測定(カラム)温度:40℃
カラム: 試験片カラム;TSKguardcolumn SuperHZ−L(1本)+TSKgel SuperHZM−M(2本)、リファレンスカラム;TSKgel
SuperH−RC(1本)、東ソー製
検出器:示差屈折計(RI)
【0095】
(粘着剤層のゲル分率)
実施例及び比較例で得られた厚さ30μmの粘着シートを5cm×5cm角に切り出した。切り出した粘着シートから支持体を取り除き、これを試験片とし、この試験片を、重さがわかっているテフロン(登録商標)シートで包み、重量を秤量し、トルエン中に23℃で7日間放置して、試験片中のゾル分を抽出した。その後、120℃で2時間乾燥し、乾燥後の重量を秤量した。ゲル分率を下記の式にて算出した。
ゲル分率(重量%)=(乾燥後の重量−テフロン(登録商標)シート重量)/(乾燥前の重量−テフロン(登録商標)シート重量)×100
【0096】
(粘着力)
実施例、及び比較例により得られた粘着剤層10umの粘着シートを幅25mmにカットし、前記粘着シートの粘着面を、アルカリガラス(松浪硝子社製)の非すず処理面貼り合わせ、また粘着剤層30umの粘着シートをSUS304板(東洋精箔社製)に貼り合わせて、試験片とし、青板ガラスに対する粘着力(対ガラス粘着力)(N/25mm)を測定した。なお、貼り合せの際の圧着は、2kgのローラーを1往復して行い、引張圧縮試験機(装置名「TG−1kN」、ミネベア社製)にて、180°ピール接着力(粘着力)の測定を以下の条件下で行った。
引張(剥離)速度:300mm/分、
測定条件:温度:23±2℃、湿度:65±5%RH
【0097】
前記対ガラス粘着力(剥離力)としては、好ましくは、0.5N/25mm以下であり、より好ましくは、0.4N/25mm以下であり、更に好ましくは、0.3N/25mm以下である。前記粘着力が0.5N/25mmを超えると、粘着力が高くなりすぎて、軽剥離性(再剥離性)を実現できず、例えば、表面保護用途の粘着シートとして使用した場合、その後剥離する際に、被着体に糊残りが生じたり、支持体(基材)が破損する恐れがあり、好ましくない。
【0098】
(耐汚染性)
粘着力測定後の被着体の粘着剤層と接した面を目視にて確認し、ブリードアウトの跡の有無や、糊残りの有無などにより、被着体への汚染の有無を評価した。
【0099】
(濡れ性)
実施例、及び比較例により得られた粘着シートを幅25mm、長さ70mmにカットし、粘着面をガラス板上に静かに落とし、1秒間当たりの粘着面の広がり面積を、ビデオカメラで動画撮影した後、0.5秒ごとに区切り、濡れによる色の濃淡を二値化し濡れ面積を求め、濡れ速度(cm/s)を算出し、評価した。
【0100】
本発明の粘着シートの濡れ速度としては、好ましくは、0.6cm/s以上であり、より好ましくは、1.0cm/s以上であり、特に好ましくは、3.0cm/s以上である。前記濡れ速度が0.6cm/s未満であると、ハンドリング性や、気泡の噛み込みが起こりやすく、表面保護シートを貼り合わせた被着体の外観が劣ることになり、好ましくない。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
表2の評価結果より、実施例1〜9においては、所望の割合でジカルボン酸及びトリカルボン酸を含むカルボン酸成分を使用し、更に、所望の重量平均分子量を有するポリエステルを使用したことにより、所望のゲル分率や粘着力(剥離力)、被着体に貼付する際の濡れ性が良好で作業性に優れ、剥離しても、糊残りが認められず、軽剥離性(再剥離性)、耐汚染性に優れた粘着剤層(粘着シート)を得られ、幅広い粘着設計が可能であることが確認できた。
【0105】
一方、比較例1及び2においては、所望の割合でジカルボン酸及びトリカルボン酸を含むカルボン酸成分を使用しなかったため、粘着力が高く、軽剥離性(再剥離性)に問題があることが確認された。比較例3においては、所望の重量平均分子量より小さなポリエステルを使用したため、ゲル化した粘着剤層を有する粘着シートを得ることができず、被着体に対しても、糊残りなどの汚染が認められた。比較例4においては、所望の重量平均分子量より大きなポリエステルを使用したため、ポリエステルのゲル化が著しく、高粘度のため、他の原料との混合を行うことができず、粘着シート自体が得られなかった。