(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングに固定され前記軸線に沿って変形可能な可動部材と、前記可動部材に固定され前記ハウジングに対して前記軸線に沿って相対変位可能な受圧部と、前記受圧部の相対変位に基づく圧力信号を出力する圧力センサとを有し、前記受圧部の少なくとも一部が内燃機関の燃焼室に配置された状態で前記内燃機関に取付けられる圧力信号出力装置から、
前記圧力信号が入力されるとともに、前記圧力信号を補正する圧力補正装置であって、
個々の前記圧力信号出力装置において予め得られ、前記内燃機関のクランク角度毎に設定された、前記可動部材の前記軸線に沿った熱変形による熱衝撃誤差を補正するための基準補正値を記憶する記憶部と、
前記基準補正値に基づいて、前記圧力信号を補正する補正部と、
前記内燃機関の回転数、及び、前記圧力信号に基づいて、前記基準補正値を調節してなる実補正値を取得する実補正値取得部とを備え、
前記補正部は、前記実補正値に基づいて、前記圧力信号を補正することを特徴とする圧力補正装置。
軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングに固定され前記軸線に沿って変形可能な可動部材と、前記可動部材に固定され前記ハウジングに対して前記軸線に沿って相対変位可能な受圧部と、前記受圧部の相対変位に基づく圧力信号を出力する圧力センサとを有し、前記受圧部の少なくとも一部が内燃機関の燃焼室に配置された状態で前記内燃機関に取付けられる圧力信号出力装置と、
前記圧力信号が入力されるとともに、前記圧力信号を補正する圧力補正装置と
を備える圧力検出装置であって、
圧力補正装置は、
個々の前記圧力信号出力装置において予め得られ、前記内燃機関のクランク角度毎に設定された、前記可動部材の前記軸線に沿った熱変形による熱衝撃誤差を補正するための基準補正値を記憶する記憶部と、
前記基準補正値に基づいて、前記圧力信号を補正する補正部と、
前記内燃機関の回転数、及び、前記圧力信号に基づいて、前記基準補正値を調節してなる実補正値を取得する実補正値取得部とを備え、
前記補正部は、前記実補正値に基づいて、前記圧力信号を補正することを特徴とする圧力検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、可動部材は、燃焼に伴う受熱により前記軸線に沿って熱変形してしまうことがある。このような場合、圧力信号には、可動部材における熱変形の分だけ誤差(熱衝撃誤差)が含まれてしまう。熱衝撃誤差による燃焼圧のずれ量は小さなものであるが、燃料の噴射タイミング等をより精度よく制御するためには、熱衝撃誤差を極力排除した、非常に正確な燃焼圧を得ることが必要となる。
【0006】
これに対して、例えば、ある種の圧力信号出力装置において、熱衝撃誤差を補正するための代表的な補正値を予め得ておき、同種の圧力信号出力装置においては、前記補正値を用いて燃焼圧の補正を行う手法が考えられる。ところが、生産性やコストの面を考慮すると、各個体間における熱衝撃誤差のバラツキを抑えることは非常に難しく、通常、各個体間で熱衝撃誤差にバラツキが生じる。そのため、前記手法では、熱衝撃誤差を十分に排除することができず、正確な燃焼圧を得ることができないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、各個体において、熱衝撃誤差を極めて効果的に排除することができ、非常に正確な燃焼圧をより確実に得ることができる圧力補正装置及び圧力検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
【0009】
構成1.本構成の圧力補正装置は、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングに固定され前記軸線に沿って変形可能な可動部材と、前記可動部材に固定され前記ハウジングに対して前記軸線に沿って相対変位可能な受圧部と、前記受圧部の相対変位に基づく圧力信号を出力する圧力センサとを有し、前記受圧部の少なくとも一部が内燃機関の燃焼室に配置された状態で前記内燃機関に取付けられる圧力信号出力装置から、
前記圧力信号が入力されるとともに、前記圧力信号を補正する圧力補正装置であって、
個々の前記圧力信号出力装置において予め得られ、前記内燃機関のクランク角度毎に設定された、前記可動部材の前記軸線に沿った熱変形による熱衝撃誤差を補正するための基準補正値を記憶する記憶部と、
前記基準補正値に基づいて、前記圧力信号を補正する補正部と
、
前記内燃機関の回転数、及び、前記圧力信号に基づいて、前記基準補正値を調節してなる実補正値を取得する実補正値取得部とを備え、
前記補正部は、前記実補正値に基づいて、前記圧力信号を補正することを特徴とする。
【0010】
上記構成1によれば、熱衝撃誤差を補正するための基準補正値は、個々の圧力信号出力装置(筒内圧センサや圧力センサ付きグロープラグ等)において予め得られており、予め得られた基準補正値に基づいて、圧力信号が補正されるように構成されている。すなわち、個々の圧力信号装置間で熱衝撃誤差は異なり、熱衝撃誤差を補正するための基準補正値も異なるが、圧力信号の補正を行う対象の圧力信号出力装置に最適な補正値(いわば、専用の補正値)に基づいて、圧力信号が補正される。従って、個々の圧力信号出力装置において、熱衝撃誤差を極めて効果的に排除することができ、非常に正確な燃焼圧をより確実に得ることができる。
さらに、上記構成1によれば、内燃機関の回転数、及び、圧力信号(燃焼圧)に基づいて、基準補正値を調節することで得られた実補正値に基づいて、圧力信号が補正されるように構成されている。すなわち、内燃機関の回転数や燃焼圧により熱衝撃誤差は変動し得るが、記憶部に記憶された代表的な補正値である基準補正値を、内燃機関の回転数や燃焼圧に応じて調節し、調節して得られた実補正値に基づいて圧力信号が補正されるように構成されている。従って、様々な回転数や燃焼圧のそれぞれにおいて補正値を予め得る必要がなくなり、生産性の向上を図ることができる。また、記憶部として、記憶容量の小さいものを用いることができ、生産コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、自動車メーカー等においては、内燃機関の制御処理の開発を行う際に、前記メーカー等の有する圧力センサ(熱衝撃誤差がほとんど生じないもの)を用いて開発を行うことがある。しかしながら、実際に内燃機関に取付けられる圧力信号出力装置では熱衝撃誤差が生じることがあるため、開発した制御処理を内燃機関に適用するにあたっては、熱衝撃誤差による影響を補正する必要がある。そのため、ECU等に対して、補正を行うための調整を行う必要が生じ、工数の増大を招いてしまうおそれがある。これに対して、上記構成1によれば、ECU等に対して前記調整を行う必要がなくなり、自動車メーカー等において、生産効率の向上を図ることができる。
【0012】
さらに、自動車メーカー等において、熱衝撃誤差が生じ得る圧力信号出力装置を用いて、高精度の試験を行う際には、自動車メーカー側において、用いる圧力信号出力装置ごとに予め熱衝撃誤差を把握しておき、把握した熱衝撃誤差により試験結果の補正等を行う必要がある。これに対して、上記構成1によれば、自動車メーカー側において、圧力信号出力装置ごとに熱衝撃誤差を把握するといった作業を行うことなく、熱衝撃誤差が補正された試験結果(圧力補正装置により補正された圧力信号)を得ることができる。その結果、試験に要する手間を著しく低減させることができ、開発スピードの向上を図ることができる。
【0013】
尚、各圧力信号出力装置における基準補正値は、例えば、次のように得ることができる。すなわち、出力される圧力信号に熱衝撃誤差が含まれない基準センサと、圧力信号出力装置とを所定の内燃機関(測定用内燃機関)に対して取付けた上で、測定用内燃機関を動作させる。そして、測定用内燃機関の各クランク角度において、基準センサから出力される圧力信号と、圧力信号出力装置から出力される圧力信号との差分(当該差分が、各クランク角度における熱衝撃誤差である)を得る。その後、前記差分の正負を反転させることにより、基準補正値を得ることができる。尚、基準補正値は、例えば、出荷時等において、圧力信号出力装置の検査を行う際に得ることができる。
【0016】
構成3.本構成の圧力検出装置は、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングと、前記ハウジングに固定され前記軸線に沿って変形可能な可動部材と、前記可動部材に固定され前記ハウジングに対して前記軸線に沿って相対変位可能な受圧部と、前記受圧部の相対変位に基づく圧力信号を出力する圧力センサとを有し、前記受圧部の少なくとも一部が内燃機関の燃焼室に配置された状態で前記内燃機関に取付けられる圧力信号出力装置と、
前記圧力信号が入力されるとともに、前記圧力信号を補正する圧力補正装置と
を備える圧力検出装置であって、
圧力補正装置は、
個々の前記圧力信号出力装置において予め得られ、前記内燃機関のクランク角度毎に設定された、前記可動部材の前記軸線に沿った熱変形による熱衝撃誤差を補正するための基準補正値を記憶する記憶部と、
前記基準補正値に基づいて、前記圧力信号を補正する補正部と
、
前記内燃機関の回転数、及び、前記圧力信号に基づいて、前記基準補正値を調節してなる実補正値を取得する実補正値取得部とを備え、
前記補正部は、前記実補正値に基づいて、前記圧力信号を補正することを特徴とする。
【0017】
上記構成3によれば、上記構成1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、圧力検出装置1は、圧力信号出力装置として圧力センサ付きグロープラグ2と、当該圧力センサ付きグロープラグ2の外部に設けられた圧力補正装置3とを備えている。また、圧力センサ付きグロープラグ2は、複数の燃焼室101を備える内燃機関100に取付けられており、各燃焼室101のそれぞれに設けられている。さらに、圧力センサ付きグロープラグ2における後述するセラミックヒータ23の少なくとも一部は燃焼室101内に配置されている。
【0022】
尚、内燃機関100には、角度センサ102と、回転数センサ103とが設けられている。角度センサ102は、内燃機関100のクランクシャフト(図示せず)の回転角度(クランク角度)を検出し、検出したクランク角度についての信号を出力する。回転数センサ103は、前記クランクシャフトの回転数(エンジン回転数)を検出し、検出したエンジン回転数についての信号を出力する。
【0023】
圧力センサ付きグロープラグ2は、
図2及び
図3に示すように、ハウジング20、キャップ部材21、中軸22、受圧部としてのセラミックヒータ23、及び、圧力センサ24等を備えている。尚、
図2及び
図3では、圧力センサ付きグロープラグ2の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、下側を圧力センサ付きグロープラグ2の先端側、上側を後端側として説明する。
【0024】
ハウジング20は、所定の金属材料(例えば、S45C等の鉄系素材)によって形成されるとともに、軸線CL1方向に沿って延びる軸孔20Aを有している。さらに、ハウジング20の外周には、圧力センサ付きグロープラグ2を内燃機関100に取付けるための雄ねじ部20Bと、断面六角形状をなし、内燃機関100に圧力センサ付きグロープラグ2(雄ねじ部20B)を取付ける際に工具が係合される工具係合部20Cとが設けられている。
【0025】
さらに、ハウジング2の先端部内周には、軸線CL1方向に沿って延びる筒状をなす金属製のセンサ固定部材25Aが挿入されている。センサ固定部材25Aは、その先端部がハウジング20の先端部に接合されるとともに、その後端部が圧力センサ24の後述するダイアフラム24Aに接合されている。これにより、圧力センサ24は、ハウジング20に対してセンサ固定部材25Aを介して間接的に固定された状態となっている。
【0026】
キャップ部材21は、筒状をなし、センサ固定部材25Aの先端部を介してハウジング20の先端部に接合されている。また、キャップ部材21の先端側外周面は、軸線CL1方向先端側に向けて先細るテーパ状とされており、圧力センサ付きグロープラグ2を内燃機関100に取付けた際には、前記テーパ状部分が内燃機関100の座面に圧接することで、燃焼室101内の気密性が確保されるようになっている。
【0027】
中軸22は、前記軸孔20Aに挿入されており、金属製で軸線CL1に沿って延びる棒状をなしている。また、中軸22の先端部とセラミックヒータ23の後端部とは導電性金属からなる筒状の接続部材25Bを介して機械的かつ電気的に接続されている。
【0028】
セラミックヒータ23は、自身の先端部がハウジング20(キャップ部材21)の先端から突出した状態で軸孔20Aに挿設されており、その先端部が燃焼室101内に配置されている。また、セラミックヒータ23は、絶縁性セラミック(例えば、窒化珪素やアルミナ等)により形成され、先端部が閉塞した筒状の基体23Aと、当該基体23Aの内部に配置され、導電性材料(例えば、モリブデンやタングステンの珪化物や窒化物、炭化物等)を含む導電性セラミックにより形成されたU字状の発熱素子23Bとを備えている。
【0029】
尚、発熱素子23Bは、軸線CL1方向に延びる一対の棒状のリード部23C,23Dを備えている。そして、リード部23Cは、後述するリング部材25D等を介してハウジング20と電気的に接続されており、リード部23Dは、接続部材25Bを介して中軸22と電気的に接続されている。すなわち、本実施形態では、中軸22とハウジング20とが、圧力センサ付きグロープラグ2において、発熱素子23Bに通電するための陽極・陰極として機能するようになっている。
【0030】
また、セラミックヒータ23は、筒状の外筒25Cを介して、軸線CL1に沿って伸縮変形可能な筒状の可動部材26の一端側(先端側)に固定されており、可動部材26の他端側(後端側)はハウジング20に固定されている。そのため、セラミックヒータ23は、その先端部に燃焼圧が加えられた際に、ハウジング20に対して軸線CL1に沿って相対変位することが可能となっている。
【0031】
尚、可動部材26は、その一端側開口部が比較的小径に形成される一方で、その他端側開口部が比較的大径に形成されており、両開口部間に、複数(本実施形態では、2箇所)の折り曲げ部分を有している。そのため、可動部材26は、所定の金属(例えば、ステンレス鋼やニッケル合金等)により薄肉に形成されることと相俟って、軸線CL1に沿って伸縮変形可能となっている。
【0032】
加えて、セラミックヒータ23は、筒状のリング部材25Dを介して筒状の伝達部材25Eに固定されている。そして、伝達部材25Eの後端部は、圧力センサ24(ダイアフラム24A)に固定されており、セラミックヒータ23の相対変位は、伝達部材25Eを介して圧力センサ24(ダイアフラム24A)に伝達されるようになっている。
【0033】
圧力センサ24は、軸孔20A内において、ハウジング20の軸線CL1方向中央部よりも先端側に設けられており、中軸22が貫通する貫通孔を中央に有する金属(例えば、ステンレス鋼)製のダイアフラム24Aと、当該ダイアフラム24Aの後端側の面に接合されたセンサ素子24B(本実施形態では、ピエゾ抵抗体)とを備えている。ダイアフラム24Aには、前記伝達部材25Eの後端部が接合されており、燃焼圧の受圧により、セラミックヒータ23に変位が生じた際には、セラミックヒータ23の変位量に応じた分だけダイアフラム24Aが撓み変形するようになっている。
【0034】
また、センサ素子24Bは、ダイアフラム24Aの撓み変形に伴い、自身の抵抗値が変化するものである。センサ素子24Bの抵抗値は、ハウジング20の内部に設けられた集積回路27により電圧値に変換・増幅され、変換・増幅された電圧値の信号(すなわち、セラミックヒータ24の受けた圧力を示す信号)が、図示しないケーブル等を介して圧力補正装置3側へと出力される。
【0035】
ところで、燃焼室101内における混合気等の燃焼に伴い可動部材26が加熱されると、可動部材26が熱変形し、軸線CL1方向に沿って伸長する。可動部材26が伸長すると、セラミックヒータ23は通常時(非熱膨張時)よりも若干軸線CL1方向先端側に配置されるため、セラミックヒータ23から圧力センサ24に伝達される圧力が、通常時(非熱膨張時)における伝達圧力よりも低くなる。つまり、圧力センサ24からの圧力信号には、可動部材24の軸線CL1に沿った熱変形による熱衝撃誤差(いわゆる短期ドリフト成分)が含まれることとなる。この点を鑑みて、本実施形態では、より正確な燃焼圧を得るべく、圧力補正装置3により、圧力センサ付きグロープラグ2(圧力センサ24)から出力される圧力信号が補正され、圧力信号に含まれる熱衝撃誤差が取り除かれる。そこで次に、圧力信号を補正する前記圧力補正装置3について説明する。
【0036】
圧力補正装置3は、
図1に示すように、ADコンバータ30と、記憶部31と、実補正値取得部32と、補正部33、DAコンバータ34とを備えている。
【0037】
ADコンバータ30は、圧力センサ24からの圧力信号をアナログ/デジタル変換する。尚、ADコンバータ30に入力される圧力信号は、所定のフィルタ回路4(例えば、ローパスフィルタ)により、比較的大きなノイズ成分が除去されている。
【0038】
記憶部31は、内燃機関のクランク角度毎に設定された、前記熱衝撃誤差を補正するための基準補正値を記憶している。尚、基準補正値は、例えば、次の手法により得ることができる。すなわち、基準補正値を測定するための所定の内燃機関(測定用内燃機関)に対して、圧力センサ付きグロープラグ2と、燃焼圧を正確に測定可能な(圧力信号に熱衝撃誤差が含まれない)基準センサとを取付けた上で、予め設定した基準回転数にて測定用内燃機関を動作させる。そして、
図4に示すように、測定用内燃機関の各クランク角度において、基準センサから出力される圧力信号と、圧力センサ付きグロープラグ2から出力される圧力信号との差分(当該差分が、各クランク角度における熱衝撃誤差である)を得る(本実施形態では、併せて、基準センサからの圧力信号に基づいて、前記基準回転数にて測定用内燃機関を動作させた際の燃焼圧の遷移を得ておく)。その後、前記差分の正負を反転させる(つまり、前記差分に−1を乗算する)ことにより、
図5に示すように、基準補正値を得ることができる。
【0039】
尚、通常、圧力センサ付きグロープラグ2は、その出荷時に、出力される圧力信号における異常の有無が検査される。本実施形態では、この検査時に、個々の圧力センサ付きグロープラグ2ごとに、上述の手法により基準補正値が得られる。そして、圧力センサ付きグロープラグ2と、当該圧力センサ付きグロープラグ2における基準補正値を記憶する記憶媒体とがセットとされており、内燃機関100に圧力センサ付きグロープラグ2を取付けたときには、前記記憶媒体から、取付けられる圧力センサ付きグロープラグ2における基準補正値が記憶部31に対して入力され、記憶部31に前記基準補正値が記憶されるようになっている。つまり、取付けられる圧力センサ付きグロープラグ2に最適な基準補正値が記憶部31に記憶されるようになっている。
【0040】
実補正値取得部32は、記憶部31に記憶された基準補正値を、内燃機関100における回転数と、圧力補正装置3に入力された圧力信号(つまり、燃焼圧)とに基づいて調節し、実補正値を取得する。具体的には、各クランク角度において、基準補正値を得た際の基準回転数と内燃機関100における実際の回転数との相違、及び、基準補正値を得た際の燃焼圧(例えば、燃焼圧のピーク値)と圧力信号に基づく内燃機関100の実際の燃焼圧(例えば、燃焼圧のピーク値)との相違に基づいて、基準補正値を調節し、実補正値を得る。例えば、あるクランク角度において、内燃機関100における実際の燃焼圧が基準補正値を得た際の燃焼圧のX(Xは正数)倍であったとき、前記基準補正値をX倍した値を実補正値として取得する。
【0041】
尚、本実施形態では、内燃機関100のクランク角度として、クランク角度検出部51により検出されたクランク角度が圧力補正装置3に入力されている。尚、クランク角度検出部51は、内燃機関100の動作制御等を行う所定の電子制御装置(ECU)5に設けられており、前記角度センサ102に接続されている。そして、クランク角度検出部51は、角度センサ102から出力される信号に基づいてクランク角度を検出する。尚、本実施形態において、クランク角度検出部51は、所定の角度(例えば、1deg)ごとにクランク角度をサンプリングする。
【0042】
また、本実施形態では、内燃機関100の回転数として、回転数検出部52により検出された回転数が圧力補正装置3に入力されている。尚、回転数検出部52は、前記回転数センサ103に接続されており、回転数センサ103からの出力信号に基づいてエンジン回転数を検出する。尚、角度センサ102の出力信号に基づいてエンジン回転数を検出するように回転数検出部52を構成してもよく、この場合には、回転数センサ103を設けないこととしてもよい。
【0043】
補正部33は、基準補正値を利用して得られた実補正値に基づいて、各クランク角度ごとに(クランク角度検出部51がクランク角度を検出する度に)、デジタル化された前記圧力信号を補正する。詳述すると、補正部33は、各クランク角度ごとにおいて、実補正値を圧力信号の値に加算することで、圧力信号の補正値を得るように構成されている。尚、補正された圧力信号は、デジタル/アナログ変換可能なDAコンバータ34によりアナログ変換された上で、ECU5に出力される。そして、ECU5は、入力された圧力信号に基づいて、熱衝撃誤差の補正された、内燃機関100における燃焼圧を得ることができるようになっている。
【0044】
以上詳述したように、本実施形態によれば、熱衝撃誤差を補正するための基準補正値は、個々の圧力センサ付きグロープラグ2において予め得られており、基準補正値に基づいて、圧力信号が補正されるように構成されている。すなわち、個々の圧力センサ付きグロープラグ2間で熱衝撃誤差は異なり、熱衝撃誤差を補正するための基準補正値も異なるが、圧力信号の補正を行う対象の圧力センサ付きグロープラグ2に最適な補正値(いわば、専用の補正値)に基づいて、圧力信号が補正される。従って、個々の圧力センサ付きグロープラグ2において、熱衝撃誤差を極めて効果的に排除することができ、非常に正確な燃焼圧をより確実に得ることができる。
【0045】
また、自動車メーカー等においては、内燃機関の制御処理の開発を行う際に、前記メーカー等の有する圧力センサ(熱衝撃誤差がほとんど生じない)を用いて開発を行うことがある。しかしながら、実際に内燃機関に取付けられる圧力信号出力装置(圧力センサ付きグロープラグ2等)では熱衝撃誤差が生じることがあるため、開発した制御処理を内燃機関に適用するにあたっては、熱衝撃誤差による影響を補正する必要がある。そのため、ECU等に対して、補正を行うための調整を行う必要が生じ、工数の増大を招いてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態によれば、ECU等に対して前記調整を行う必要がなくなり、自動車メーカー等において、生産効率の向上を図ることができる。
【0046】
さらに、自動車メーカー等において、熱衝撃誤差が生じ得る圧力信号出力装置(圧力センサ付きグロープラグ2等)を用いて、高精度の試験を行う際には、自動車メーカー側において、用いる圧力信号出力装置ごとに予め熱衝撃誤差を把握しておき、把握した熱衝撃誤差により試験結果の補正等を行う必要がある。これに対して、本実施形態によれば、自動車メーカー側において、圧力信号出力装置ごとに熱衝撃誤差を把握するといった作業を行うことなく、熱衝撃誤差が補正された試験結果(圧力補正装置3により補正された圧力信号)を得ることができる。その結果、試験に要する手間を著しく低減させることができ、開発スピードの向上を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、内燃機関の回転数、及び、圧力信号(燃焼圧)に基づいて、基準補正値を調節することで得られた実補正値に基づいて、圧力信号が補正されるように構成されている。すなわち、内燃機関100の回転数や燃焼圧により熱衝撃誤差は変動し得るが、記憶部31に記憶された代表的な補正値である基準補正値を、内燃機関100の回転数や燃焼圧に応じて調節し、調節して得られた実補正値に基づいて圧力信号が補正されるように構成されている。従って、様々な回転数や燃焼圧のそれぞれにおいて補正値を予め得る必要がなくなり、生産性の向上を図ることができる。また、記憶部31として、記憶容量の小さいものを用いることができ、生産コストの低減を図ることができる。
【0048】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0049】
(a)上記実施形態において、圧力センサ付きグロープラグ2は、受圧部としてセラミックヒータ23を備えているが、金属製の発熱コイルと、当該発熱コイルが内部に配置された筒状のチューブとを有するメタルヒータを受圧部として備えることとしてもよい。
【0050】
(b)上記実施形態において、圧力信号出力装置として圧力センサ付きグロープラグ2が用いられているが、圧力信号出力装置は、燃焼圧に基づく圧力信号を出力するものであればよく、必ずしも圧力信号出力装置にグロープラグとしての機能を設ける必要はない。
【0051】
(c)上記実施形態では、記憶部31に記憶された基準補正値により、実補正値を得た上で、当該実補正値により圧力信号の補正がなされている。これに対して、前記測定用内燃機関における回転数や燃焼圧を様々に変化させた上で(つまり、全運転条件で)基準補正値を求めるとともに、種々の回転数や燃焼圧ごとに設定された複数の基準補正値を記憶部31に記憶しておき、内燃機関100における実際の回転数に対応する基準補正値に基づいて圧力信号を補正してもよい
(但し、参考例)。この場合には、実補正値を得るべく、基準補正値を調節することが不要となるため、圧力補正装置3における処理負担の軽減を図ることができる。
【0052】
また、例えば、回転数や燃焼圧に応じて変化する数パターンの基準補正値を記憶部31に記憶しておき、内燃機関100における実際の回転数等に合わせて、前記数パターンの基準補正値から実補正値を算出する際の元となる基準補正値を選択し、選択した基準補正値に基づいて、実補正値を得ることとしてもよい。
【0053】
(d)上記実施形態において、圧力補正装置3は、ECU5とは別の装置により構成されているが、ECU5に圧力補正装置3の機能を設け、圧力補正装置3とECU5とを一体化してもよい。
【0054】
(e)上記実施形態において、圧力補正装置3は、圧力センサ付きグロープラグ2の外部に設けられているが、圧力補正装置3の配置位置はこれに限られるものではない。従って、例えば、圧力センサ付きグロープラグ2(ハウジング20)の内部に、圧力補正装置3を設けることとしてもよい。
【0055】
(f)上記実施形態において、圧力センサ24は、ハウジング20の内部に設けられているが、圧力センサ24をハウジング20の外部に設けることとしてもよい。また、集積回路27をハウジング20の外部に設けることとしてもよい。
【0056】
(g)上記実施形態では、センサ素子24Bとしてピエゾ抵抗体を挙げているが、センサ素子はこれに限定されるものではなく、例えば、センサ素子として圧電素子などを用いてもよい。