(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088354
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ガス燃焼器の設計方法
(51)【国際特許分類】
F23D 14/58 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
F23D14/58 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-106180(P2013-106180)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-228164(P2014-228164A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年1月26日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第50回燃焼シンポジウム講演論文集第572〜573ページ及び2012年12月7日に第50回燃焼シンポジウムにて発表。
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 三郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 毅司
(72)【発明者】
【氏名】池田 武夫
(72)【発明者】
【氏名】井川 純子
(72)【発明者】
【氏名】押部 洋
【審査官】
渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−032084(JP,A)
【文献】
特開2012−021706(JP,A)
【文献】
特開2009−192213(JP,A)
【文献】
特開2013−061135(JP,A)
【文献】
特開2010−078162(JP,A)
【文献】
特表2000−503381(JP,A)
【文献】
特公平05−032645(JP,B2)
【文献】
米国特許第03936003(US,A)
【文献】
実開平03−128231(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D14/00−14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用する燃料ガスに対応する燃焼負荷X(W/cm2)と発生するNOx濃度Y(ppm)との相関曲線Kを求める行程と、
得ようとするガス燃焼器での所望の最大NOx濃度Ya(ppm)と最大燃焼量Qa(W)を設定する行程と、
前記相関曲線Kを用いて前記最大NOx濃度Ya(ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm2)を求める行程と、を備え、
燃焼負荷X(W/cm2)=燃焼量Q(W)/火炎存在領域Sから、火炎存在領域S=燃焼量Q(W)/燃焼負荷X(W/cm2)であることを用い、最大燃焼量Qa(W)/最大NOx濃度Ya(ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm2)の値となるように当該ガス燃焼器の火炎存在領域Sを設定することを特徴とするガス燃焼器の設計方法。
【請求項2】
2本以上の噴射管が平行かつ等間隔に配置されており、各噴射管には等間隔に2個以上の炎口が形成されているガス燃焼器を設計する方法であって、
前記炎口の間隔をA(cm)、噴射管1本当たりの炎口数をB、噴射管の間隔をC(cm)、噴射管の本数をDとし、火炎存在領域S=A×B×C×Dと定義するとともに、
(a)使用する燃料ガスに対応する燃焼負荷X(W/cm2)と発生するNOx濃度Y(ppm)との相関曲線Kを得る行程と、
(b)得ようとするガス燃焼器での所望の最大NOx濃度Ya(ppm)と最大燃焼量Qa(W)を設定する行程と、
(c)前記相関曲線Kを用いて最大NOx濃度Ya(ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm2)を求める行程と、を備え、
燃焼負荷X(W/cm2)=燃焼量Q(W)/火炎存在領域Sから、火炎存在領域S=燃焼量Q(W)/燃焼負荷X(W/cm2)であることを用い、最大燃焼量Qa(W)/最大NOx濃度Ya(ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm2)の値が前記火炎存在領域Sとなるように、前記A、B、C、Dの値を設定することを特徴とするガス燃焼器の設計方法。
【請求項3】
使用する燃料ガスが水素であり、炎口の間隔Aとして0.63cm以上、噴射管の間隔Cとして0.95cm以上の値を用いることを特徴とする請求項2に記載のガス燃焼器の設計方法。
【請求項4】
炎口径が0.03cm以下の値を用いることを特徴とする請求項3に記載のガス燃焼器の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料としてガスを用いるガス燃焼器の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスとして炭化水素系の燃料ガスを用いるガス燃焼器は広く用いられており、また、近年になり、燃焼させても水しか生成せず、炭化水素系燃料と比べて温室効果ガスを発生しないことから、水素ガスを燃料ガスとして用いるガス燃焼器も提案されている。また、これらのガス燃焼器において、燃焼排ガス中に含まれるNOx濃度を低減することも課題となっており、いくつかの提案がされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、濃淡予混合燃焼を利用したガス燃焼器において、複数の第1および第2のバーナーをもってバーナー群を構成し、燃焼時、第1または第2のバーナーに対する燃焼量を段階的に変更可能にするとともに、前記第1のバーナーの火炎に対して前記第2のバーナーの火炎を種火として機能させるようにすることで、低NOxを可能としたガス燃焼器が提案されている。特許文献2には、燃料領域を著しく増やすことによって、拡散燃焼の従来のバーナーと比べてNOx発生を大幅に減らすことができるようにした、水素を拡散燃焼する方法とこの方法を実施するためのバーナーが提案されている。特許文献3には、水素の拡散燃焼において、炎口間隔を適切に設定することで、NOx濃度を所望の値以下にするようにした水素燃焼装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−68507号公報
【特許文献2】特開平9−178128号公報
【特許文献3】特開2012−32084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のガス燃焼器においては、発生するNOx濃度を低減するために、バーナーを構造的にどのように改良すべきか、また、燃焼火炎をどのように設定すべきか、について提案がなされかつ実行されており、低NOxガス燃焼器として有効に利用されている。
【0006】
一方、ガス燃焼器を使用する環境に応じて、燃焼時に許容される最大NOx濃度が異なる場合があり、また、一般に、利用者側で当該ガス燃焼器に求める最大燃焼量も異なっている。それで、許容最大NOx濃度と所望の最大燃焼量に応じて、それに対応した火炎存在領域を持つガス燃焼器を得ることができれば、そのガス燃焼器は、発生するNOx濃度を低減する観点からより有効なガス燃焼器となると考えられるが、そのような観点からのガス燃焼器の設計方法は提案されていない。
【0007】
本発明は、上記の観点からなされたものであり、許容最大NOx濃度と所望の最大燃焼量に応じて、それに対応した火炎存在領域を持つガス燃焼器を容易に設計することのできるガス燃焼器の設計方法を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ガス燃焼器に使用する燃料ガスは、その種類ごとに、燃焼負荷X(W/cm
2)と発生するNOx濃度Y(ppm)との間に固有の相関曲線Kを有していることに着目し、その固有の相関曲線Kを利用することで、許容最大NOx濃度と所望の最大燃焼量に応じて、それに対応した火炎存在領域を持つガス燃焼器を容易に設計できることを知見し、本発明をなすに到った。
【0009】
すなわち、本発明によるガス燃焼器の設計方法は、使用する燃料ガスに対応する燃焼負荷X(W/cm
2)と発生するNOx濃度Y(ppm)との相関曲線Kを求める行程と、得ようとするガス燃焼器での所望の最大NOx濃度Ya(ppm)と最大燃焼量Qa(W)を設定する行程と、前記相関曲線Kを用いて前記最大NOx濃度Ya(ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm
2)を求める行程と、を備え、燃焼負荷X(W/cm
2)=燃焼量Q(W)/火炎存在領域Sから、火炎存在領域S=燃焼量Q(W)/燃焼負荷X(W/cm
2)であることを用い、最大燃焼量Qa(W)/最大NOx濃度Ya(ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm
2)の値となるように当該ガス燃焼器の火炎存在領域Sを設定することを特徴とする。
【0010】
本発明による設計方法で製造される火炎存在領域Sを備えたガス燃焼器では、予め設定した最大燃焼量Qa(W)以下の燃焼量で運転すれば、燃焼排ガスに含まれるNOx濃度は、そのガス燃焼器の使用環境で許容される最大NOx濃度Ya(ppm)を超えることはなく、環境に優しいガス燃焼器となる。
【0011】
本発明において、使用する燃料ガスの種類に制限はなく、水素ガスであってもよく、炭化水素系の燃料ガスであってもよい。燃焼方法も、拡散燃焼であってもよく、予混合燃焼であってもよい。
【0012】
なお、本発明において、「火炎存在領域S」とは、炎口に形成される火炎の全体を平面視したときに、火炎の外縁によって形成される領域をいっており、燃焼器が複数個の炎口を等しい密度で分布しているものにあっては、最も周縁に位置する火炎の外縁を結ぶ仮想線によって囲まれる領域をいっている。
【0013】
本発明によるガス燃焼器の設計方法のより具体的な態様は、2本以上の噴射管が平行かつ等間隔に配置されており、各噴射管には等間隔に2個以上の炎口が形成されているガス燃焼器を設計する方法であって、前記炎口の間隔をA(cm)、噴射管1本当たりの炎口数をB、噴射管の間隔をC(cm)、噴射管の本数をDとし、火炎存在領域S=A×B×C×Dと定義するとともに、(a)使用する燃料ガスに対応する燃焼負荷X(W/cm
2)と発生するNOx濃度Y(ppm)との相関曲線Kを得る行程と、(b)得ようとするガス燃焼器での所望の最大NOx濃度Ya(ppm)と最大燃焼量Qa(W)を設定する行程と、(c)前記相関曲線Kを用いて最大NOx濃度Ya(ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm
2)を求める行程と、を備え、燃焼負荷X(W/cm
2)=燃焼量Q(W)/火炎存在領域Sから、火炎存在領域S=燃焼量Q(W)/燃焼負荷X(W/cm
2)であることを用い、最大燃焼量Qa(W)/最大NOx濃度Ya(ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm
2)の値が前記火炎存在領域Sとなるように、前記A、B、C、Dの値を設定することを特徴とする。
【0014】
上記の設計方法で製造された前記A、B、C、Dで定義される矩形状の火炎存在領域Sを備えたガス燃焼器において、予め設定した最大燃焼量Qa(W)以下の燃焼量で運転すれば、燃焼排ガスに含まれるNOx濃度は、そのガス燃焼器の使用環境で許容される最大NOx濃度Ya(ppm)を超えることはなく、環境に優しいガス燃焼器となる。
【0015】
上記の設計方法で製造されたガス燃焼器において、1つの火炎が必要以上に大きくなる、あるいは隣接する炎口に形成される火炎同士が合体すると、燃焼排ガス中のNOx濃度が高くなる恐れがある。そのために、火炎をできるだけ小さくすること、また各々の炎口に形成される火炎が、隣接する炎口に形成される火炎と独立する状態に、炎口の径および各炎口間の間隔を設定することが望ましい。実際のガス燃焼器の設計に当たっては、実験をとおして、燃料ガスの種類や所要の火炎存在領域Sに対応した最適の炎口の間隔:A(cm)、噴射管1本当たりの炎口数:B、噴射管の間隔:C(cm)、噴射管の本数:D、炎口径:Eの値を設定することとなるが、本発明者らの実験では、使用する燃料ガスが水素であり、炎口径:Eが好ましは0.03cm以下であって、炎口の間隔:Aが0.63cm以上、噴射管の間隔:Cが0.95cm以上の値を用いることにより、小型の火炎を形成することができ、NOxの発生を効果的に抑制できることを知った。
【0016】
従って、前記炎口の間隔をA(cm)、噴射管1本当たりの炎口数をB、噴射管の間隔をC(cm)、噴射管の本数をDとし、火炎存在領域S=A×B×C×Dと定義するようにした上記のガス燃焼器の設計方法において、小型の火炎を形成すること、さらに使用する燃料ガスが水素の場合には、炎口径が0.03cm以下、炎口の間隔Aとして0.63cm以上、噴射管の間隔Cとして0.95cm以上の値を用いることは、好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の設計方法を用いることにより、許容最大NOx濃度と所望の最大燃焼量に応じて、それに対応した所要の火炎存在領域を持つガス燃焼器を容易に設計することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】使用する燃料ガスに対応する燃焼負荷X(W/cm
2)と発生するNOx濃度Y(ppm)との相関曲線Kの一例を示すグラフ。
【
図2】燃焼器の一例とその火炎存在領域を説明する図。
【
図3】炎口の間隔の違いにより隣接する火炎が合体した状態(a)と合体しない状態(b)を示す写真。
【
図4】噴射管の間隔の違いにより隣接する火炎が合体した状態(a)と合体しない状態(b)を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明によるガス燃焼器の設計方法を実施の形態に基づき説明する。
【0020】
(1)最初に、使用する燃料ガスに対応する燃焼負荷X(W/cm
2)と発生するNOx濃度Y(ppm)との相関曲線Kを求める。具体的には、1個または複数個の炎口を備えた1本または複数本の噴射管を用意し、燃料ガスの燃焼量Q(燃料ガスの噴出流速)を変化させて燃焼を行い、燃焼排ガス中のNOx濃度を測定し、それを用いて、
図1に示すようなグラフを作成する。
【0021】
なお、ここで、燃焼量Q:燃焼器に供給する燃料量、燃焼面積S:燃焼器において燃焼火炎が形成される面積、燃焼負荷X:X=Q/S(すなわち、単位燃焼面積あたりの燃焼量)、NOx濃度Y:燃焼排ガス単位体積当たりに含まれるNOxの量、を意味するものとし、
図1に示すグラフにおいて、NOx濃度Yは、燃焼排ガスをサンプリングして分析し、NOxと同時に計測している酸素濃度から、下記換算式(式1)により、O
2=0%換算することで算出した。
換算式:NOx濃度Y(ppm:O
2=0%)=NOx濃度(ppm)×21/(21−O
2濃度(%)):式1
【0022】
(2)次に、得ようとするガス燃焼器での所望の最大NOx濃度Ya(ppm)と最大燃焼量Qa(W)を設定する。一例として、最大NOx濃度Ya(ppm)を23ppm、最大燃焼量Qa(W)を350Wと設定する。
【0023】
(3)次に、前記相関曲線Kを用いて前記最大NOx濃度Ya(ppm)(23ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm
2)を求める。ここでは、前記燃焼負荷Xa(W/cm
2)は24.5(W/cm
2)とする。
【0024】
(4)次に、燃焼負荷X(W/cm
2)は燃焼量Q(W)/火炎存在領域Sであることから、火炎存在領域Sは燃焼量Q(W)/燃焼負荷X(W/cm
2)と表すことができるので、この式を用い、最大燃焼量Qa(W)(350W)/最大NOx濃度Ya(ppm)(23ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm
2)(24.5(W/cm
2)の値となるように当該ガス燃焼器の火炎存在領域Sを設定する。
【0025】
(5)そのようにして設定された火炎存在領域Sを備えたガス燃焼器は、前記した最大燃焼量Qa(W)(350W)以下の燃焼量で運転すれば、予め設定した最大NOx濃度Ya(23ppm)以下での運転が可能となる。
【0026】
(6)一つの例として、設計しようとするガス燃焼器1が、
図2に示すように、2本以上の噴射管(図示のものでは4本の噴射管)2が平行かつ等間隔に配置されており、各噴射管2には等間隔に2個以上の炎口(図示のものでは10個の炎口)3が形成されているガス燃焼器1である場合、前記炎口3の間隔をA(cm)、噴射管2の1本当たりの炎口数をB、噴射管2の間隔をC(cm)、噴射管2の本数をDとし、その火炎存在領域Sを、A×B×C×Dとして定義した場合、
図2に示す形態のガス燃焼器1においては、前記最大燃焼量Qa(W)(350W)/最大NOx濃度Ya(ppm)(23ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm
2)(24.5(W/cm
2)の値となるように、前記A、B、C、Dの値を適宜選択して火炎存在領域Sを設定することで、所期のガス燃焼器を得ることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0028】
(1)相関曲線Kの設定
燃料ガスとして水素を用い、直径が0.03cmである炎口を0.63cm間隔で6個形成した噴射管を用い、燃焼量Q(水素の噴出流速)を弱火から強火まで複数に変化させて燃焼を行った。燃焼量ごとに前記式1によりNOx濃度Y(ppm:O
2=0%)を測定し、それを連続した曲線として結ぶことで、
図1に示す燃焼負荷X(W/cm
2)と発生するNOx濃度Y(ppm)との相関曲線Kを得た。なお、燃焼は常温、大気圧で行い、空気は自然対流で供給されるようにした。実験において、形成される火炎はすべての燃焼量において、分割された小型の火炎であり、隣接する火炎同士が合体することはなかった。
【0029】
(2)最大NOx濃度Ya(ppm)と最大燃焼量Qa(W)の設定
下記の表1に示すように最大NOx濃度Ya(ppm)と最大燃焼量Qa(W)を設定した。
【0030】
(3)次に、燃焼負荷X(W/cm
2)=燃焼量Q(W)/火炎存在領域Sであり、火炎存在領域S=燃焼量Q(W)/燃焼負荷X(W/cm
2)であることから、各実施例について、最大燃焼量Qa(W)/最大NOx濃度Ya(ppm)に対応する燃焼負荷Xa(W/cm
2)を求め、その値となるように火炎存在領域S(cm
2)を演算した。その結果を表1に示した。
【0031】
(4)ガス燃焼器の設計
ガス燃焼器として、2本以上の噴射管が平行かつ等間隔に配置されており、各噴射管には等間隔に2個以上の炎口が形成されているガス燃焼器を設計するものとし、炎口の間隔をA(cm)、噴射管1本当たりの炎口数をB、噴射管の間隔をC(cm)、噴射管の本数をDとし、火炎存在領域S=A×B×C×Dと定義した。そして、実施例1〜3については、火炎存在領域Sを満足するものとして、炎口径:Eが0.03cm、炎口の間隔:Aが0.63cm、噴射管1本当たりの炎口数:Bが6個、噴射管の間隔:Cが0.95cm、噴射管の間隔:Dが4本とした燃焼器を設計した。また、実施例4〜6については、炎口径:Eが0.03cm、炎口の間隔:Aが0.63cm、噴射管1本当たりの炎口数:Bが14個、噴射管の間隔:Cが0.95cm、噴射管の本数:Dが24本とした燃焼器を設計した。
【0032】
(5)実施例1〜6について得たガス燃焼器を用いて、設定した最大燃焼量Qa(W)での燃焼実験を行い、実際に発生したNOx量を測定した。その結果を表1に示した。
【表1】
【0033】
(6)考察
表1に示すように、本発明の設計方法によって設計されたガス燃焼器は、設定した最大燃焼量Qa(W)で燃焼させた場合でも、燃焼排ガス中のNOx濃度は、予め設定した最大NOx濃度Ya(ppm)を超えることはなかった。このときの火炎の状態は、
図3(b)や
図4(b)のように、各々の炎口に形成される火炎が、隣接する炎口に形成される火炎と独立する状態であった。炎口径と燃料の種類が影響する拡散の特性時間が、火炎の炎口径に対する長さとそこを通過する燃料の流速が影響する反応の特性時間より短い場合には、小型の火炎により火炎温度が必要以上に高温になるのを避けることができ、NOx低減することが可能となる。このことは、使用環境等から要請されるNOx排出量規制に適合したガス燃焼器を、本発明による設計方法に従うことにより、容易にかつ確実に設計製造できることを示している。
【0034】
(7)他の実施例
(7−1)炎口の間隔をA(cm)について、
実施例1〜6について、燃焼時における火炎の状態を噴射管の長い方向の側面から観察した。その最大燃焼量時での写真を
図3(b)に示した。各火炎は小さく、それぞれ独立しており、隣接する火炎が合体するのは観察されなかった。比較として、火炎存在領域Sの値は変えることなく、炎口の間隔をA(cm)を0.63mmから0.50mmとしたものを用いて燃焼実験を行ったところ、
図3(a)に示すように、隣接する火炎が合体する現象が見られた。火炎が合体すると火炎長や炎口径の大きい1つの火炎が形成されたと考えられるから、高温部が形成されやすく、NOx濃度が増加する可能性がある。このことから、本実施例において、炎口の間隔Aを0.63cm以上とすることは、NOx濃度を増加させない観点から、好ましいことがわかった。
【0035】
(7−2)噴射管の間隔C(cm)について、
実施例1〜6について、燃焼時における火炎の状態を斜め上方から見て観察した。その最大燃焼量時での写真を
図4(b)に示した。各噴射管の火炎は小さく、それぞれ独立しており、また、隣接する噴射管の火炎同士が合体するのは観察されなかった。比較として、火炎存在領域Sの値は変えることなく、噴射管の間隔C(cm)を0.95mmから0.63mmとしたものを用いて燃焼実験を行ったところ、
図4(a)に示すように、隣接する噴射管の火炎同士が合体する現象が見られた。火炎が合体すると火炎長や炎口径の大きい1つの火炎が形成されたと考えられるから、高温部が形成されやすく、NOx濃度が増加する可能性がある。このことから、本実施例において、噴射管の間隔C(cm)を0.95mm以上とすることは、NOx濃度を増加させない観点から、好ましいことがわかった。
【0036】
(7−3)炎口径Eについて、
実施例1〜6について、火炎存在領域Sの値は変えることなく、炎口径Eを変化させた場合、(6)考察で言及した通り、拡散の特性時間が反応の特性時間よりも短くなるような燃焼量の範囲であれば、NOx排出を抑制できることが予想される。従って、本実施例において、炎口径Eを0.03cm以下に設定して、小型の火炎を形成することは、より好ましい態様となる。
【符号の説明】
【0037】
1…ガス燃焼器、
2…噴射管、
3…炎口。