特許第6088377号(P6088377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088377
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】車両用荷棚
(51)【国際特許分類】
   B61D 37/00 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   B61D37/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-146109(P2013-146109)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-16817(P2015-16817A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】今岡 憲彦
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−080900(JP,U)
【文献】 特開2006−256520(JP,A)
【文献】 特開平08−085457(JP,A)
【文献】 特開2006−182241(JP,A)
【文献】 特開2002−205642(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0222256(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00
B60R 7/08
B64D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の長手方向に沿って座席の上方に所定の間隔で配置される荷棚受けと、前記荷棚受けに支持される荷物載置部と、を備え、
前記荷物載置部は、形材又は棒材によって形成されると共に、厚み方向に貫通する空間部を有し、
前記空間部において、荷物が載置される載置面側の端部の中心位置が反対面側の端部の中心位置に対して前記車両の外側に向かってずれていることを特徴とする車両用荷棚。
【請求項2】
前記荷物載置部は、前記車両の外側から内側に向かって下り傾斜となる傾斜面を有する長尺部材が前記荷棚受け間に並設されることによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用荷棚。
【請求項3】
前記長尺部材は、前記傾斜面を斜面とする断面略直角三角形の棒状部材であり、前記空間部における前記載置面側の端部と前記反対面側の端部とが少なくとも一部で重なるように前記荷棚受け間に並設されていることを特徴とする請求項2記載の車両用荷棚。
【請求項4】
前記長尺部材は、前記傾斜面を一方面とする平板状部材であり、前記空間部における前記載置面側の端部と前記反対面側の端部とが重ならないように前記荷棚受け間に並設されていることを特徴とする請求項2記載の車両用荷棚。
【請求項5】
前記長尺部材は、前記傾斜面の反対面が前記載置面側に凸となるように湾曲する断面形状の棒状部材であり、前記空間部における前記載置面側の端部と前記反対面側の端部とが少なくとも一部で重なるように前記荷棚受け間に並設されていることを特徴とする請求項2記載の車両用荷棚。
【請求項6】
前記長尺部材は、少なくとも前記反対面を含む周面が鏡面となっていることを特徴とする請求項5記載の車両用荷棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用荷棚に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等の車両には、乗客の荷物などを置くための荷棚が例えば座席の上方に設けられている。従来の荷棚には網棚が用いられてきたが、近年では、ステンレスパイプによる荷棚、荷物の載置面をガラス板にした荷棚、或いはアルミ(アルミ合金を含む)の形材による荷棚が導入されている。ガラス板を用いた荷棚は、車内からの視認性が良好である一方で、コストの問題や破損し易いという問題がある。このため、アルミの形材による荷棚の開発が主流となってくると考えられている。例えば特許文献1に記載の鉄道車両の荷物棚ユニットでは、アルミ合金を押出成形した形材で荷物棚本体を形成し、荷物棚本体に設けた開口部に荷物棚を配置した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−256520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルミの形材による荷棚においては、荷物の視認性の低さが依然として課題となっている。荷物の視認性が低い場合、乗客が荷棚に荷物を置き忘れてしまったり、車両の乗員等が荷物の置き忘れに気づきにくくなるおそれがある。この点につき、荷棚の荷物載置面に開口等を設けることも考えられる。しかしながら、単純な開口を設けた場合、真下からの視認性は確保しやすいが、車両の中央側における斜め下方からの視認性が確保しにくいという問題がある。実際のところ、荷棚を斜め下方から見上げる場面は多く、視認性を良好に確保できる技術が望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、視認性を良好に確保できる車両用荷棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る車両用荷棚は、車両の長手方向に沿って座席の上方に所定の間隔で配置される荷棚受けと、荷棚受けに支持される荷物載置部と、を備え、荷物載置部は、形材又は棒材によって形成されると共に、厚み方向に貫通する空間部を有し、空間部において、荷物が載置される載置面側の端部の中心位置が反対面側の端部の中心位置に対して車両の外側に向かってずれていることを特徴としている。
【0007】
この車両用荷棚では、荷物載置部が形材又は棒材によって形成されている。したがって、車両用荷棚を安価かつ十分な強度で形成できる。また、この車両用荷棚では、荷物載置部の厚み方向に空間部が貫通しており、空間部における載置面側の端部の中心位置が反対面側の端部の中心位置に対して車両の外側に向かってずれている。このような空間部の構成により、斜め下方から荷物載置部の載置面側を見通すことが可能となり、荷棚の視認性を良好に確保できる。
【0008】
また、荷物載置部は、車両の外側から内側に向かって下り傾斜となる傾斜面を有する長尺部材が荷棚受け間に並設されることによって構成されていることが好ましい。この場合、簡単な構成で斜め下方から荷物載置部の載置面側を見通す空間部を形成できる。
【0009】
また、長尺部材は、傾斜面を斜面とする断面略直角三角形の棒状部材であり、空間部における載置面側の端部と反対面側の端部とが少なくとも一部で重なるように荷棚受け間に並設されていることが好ましい。この場合、簡単な構成で斜め下方から荷物載置部の載置面側を見通す空間部を形成できる。また、空間部の載置面側の端部と反対面側の端部とが少なくとも一部で重なることで、斜め下方からの視認性と真下からの視認性の双方を確保できる。
【0010】
また、長尺部材は、傾斜面を一方面とする平板状部材であり、空間部における載置面側の端部と反対面側の端部とが重ならないように荷棚受け間に並設されていることが好ましい。この場合、簡単な構成で斜め下方から荷物載置部の載置面側を見通す空間部を形成できる。また、空間部の載置面側の端部と反対面側の端部とが重ならないようにすることで、載置面の面積を十分に確保でき、荷物の載置し易さを確保できる。
【0011】
また、長尺部材は、傾斜面の反対面が載置面側に凸となるように湾曲する断面形状の棒状部材であり、空間部における載置面側の端部と反対面側の端部とが少なくとも一部で重なるように荷棚受け間に並設されていることが好ましい。この場合、簡単な構成で斜め下方から荷物載置部の載置面側を見通す空間部を形成できる。
【0012】
また、長尺部材は、少なくとも前記反対面を含む周面が鏡面となっていることが好ましい。この場合、鏡面によって載置面の状態を容易に把握できる。鏡面が形成される反対面が載置面側に凸となるように湾曲しているので、鏡面の死角を小さくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用荷棚によれば、下方からの視認性を良好に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用荷棚が適用された鉄道車両を示す図である。
図2図1に示した車両用荷棚の斜視図である。
図3図2におけるIII−III線断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る車両用荷棚を示す断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る車両用荷棚を示す断面図である。
図6図5に示した車両用荷棚の視認性を示す図であり、(a)は斜め下方から荷物載置部を見た場合の視野を示し、(b)は真下から荷物載置部を見た場合の視野を示す。
図7】本発明の第4実施形態に係る車両用荷棚を示す断面図である。
図8】第4実施形態の変形例に係る車両用荷棚を示す断面図である。
図9】第4実施形態の別の変形例に係る車両用荷棚を示す断面図である。
図10】第4実施形態の更に別の変形例に係る車両用荷棚を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る車両用荷棚の好適な実施形態について詳細に説明する。
[第1実施形態]
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用荷棚が適用された鉄道車両を示す図である。同図に示すように、鉄道車両1は、床構体2、側構体3、屋根構体4、妻構体(不図示)などによって構成され、内部に車室Sが形成されている。側構体3には、乗降用の扉や窓5が適宜配置されている。また、鉄道車両1の車室S内には、例えば座席6、つり革7、荷棚(車両用荷棚)11などが設けられている。
【0017】
座席6は、例えば鉄道車両1の長手方向に沿って複数の乗客等が座れるように構成され、鉄道車両1の側構体3の内側にそれぞれ固定されている。座席6の端部には仕切板6aが設けられており、扉(不図示)から車室S内に至る通路と座席6との間が仕切られるようになっている。また、座席6には、シート間を仕切る仕切棒6bが適宜配置されている。仕切棒6bは、車室Sの中央側に向かって緩やかに凸状に湾曲するように鉛直方向に配置され、仕切棒6bの下端部はシートの底面側に固定され、仕切棒6bの上端部は荷棚11の握り前棒10(図2参照)に固定されている。
【0018】
つり革7は、立っている乗客等が掴まるための部材であり、車室Sの上方に設けられている。つり革7は、例えば鉄道車両1の長手方向に沿って延びる支持棒7a及び鉄道車両1の幅方向に延びる支持棒7bにそれぞれ所定の間隔で固定されている。荷棚11は、乗客等が荷物を載置するための棚であり、鉄道車両1の長手方向に沿って座席6の上方に設けられている。荷棚11は、例えばつり革7と同程度の高さで側構体3の上部に固定されている。
【0019】
次に、荷棚11の構成について更に詳細に説明する。
【0020】
図2は、荷棚11の斜視図である。また、図3は、図2のIII−III線断面図である。図2及び図3に示すように、荷棚11は、例えば荷棚受け12と、荷物載置部13とによって構成されている。荷棚受け12は、側構体3に固定されて垂下する基端部12aと、基端部12aの先端側から略直角に車室Sの中央側に折れ曲がる中央部12bと、中央部12bの先端側から斜め下方に折れ曲がる先端部12cとを有し、略L字状をなしている。荷棚受け12は、鉄道車両1の長手方向に沿って座席6の上方で所定の間隔で配置され、中央部12bが車室Sの中央側に向かって僅かに斜め上方に傾斜した状態となるように、ボルト等の締結部材によって側構体3の上部にそれぞれ固定される。
【0021】
荷物載置部13は、落止部材14と、複数の荷棚棒15と、前棒16とによって構成されている。落止部材14、荷棚棒15、及び前棒16は、いずれもアルミ又はアルミ合金の形材によって長尺に形成され、荷棚受け12,12によって支持されている。落止部材14は、略L字状の断面形状をなしており、図3に示すように、基端部12aの先端側に沿う第1部分14aと、第1部分14aから中央部12b側に向かって折れ曲がった第2部分14bとを有している。第1部分14a及び第2部分14bは、いずれも中空となっており、強度の確保及び軽量化が図られている。第1部分14aは、荷物載置部13に置かれた荷物が側構体3側から落下することを防止する機能を有している。
【0022】
荷棚棒15は、例えば中空の断面略直角三角形状をなしている。荷棚棒15は、斜面15aが下方を向き、かつ長辺に対応する側面15bが落止部材14の第2部分14bの上面14cと略面一になるように、荷棚受け12の中央部12bに沿って所定の間隔で複数(本実施形態では3本)並設されている。落止部材14の第2部分14bの上面14c及び各荷棚棒15の側面15bにより、荷物載置部13における荷物の載置面P1が形成されている。載置面P1は、荷棚受け12の中央部12bと同程度の角度で、車室Sの中央側に向かって僅かに斜め上方に傾斜した状態となっている。
【0023】
前棒16は、例えば中空の断面略楕円形状をなしている。前棒16は、上側の一部が載置面P1よりも僅かに上方に突出するように、荷棚受け12の先端部12cの基端側に配置されている。前棒16は、荷物載置部13に載置された荷物が車室Sの中央側の通路(座席6の前方)に落下することを防止する機能を有している。
【0024】
図3に示すように、落止部材14の第2部分14bと荷棚棒15との間、及び荷棚棒15,15間には、所定の間隔が設けられている。これにより、荷物載置部13には、載置面P1に置かれた荷物を下方或いは斜め下方から見通すための空間部V1が、荷物載置部13を厚み方向に貫通するように形成されている。
【0025】
ここで、上述した荷棚棒15の斜面15aは、車室Sの外側から中央側に向かって下り傾斜となる傾斜面17となっている。このような荷棚棒15の配置により、空間部V1における載置面P1側の空間上端Vaの幅W1は、反対面P2側の空間下端Vbの幅W2よりも小さくなっており、載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとは、荷物載置部13の上下で一部が重なっている。そして、載置面P1側の空間端部Vaの中心位置R1は、反対面P2側の空間下端Vbの中心位置R2に対して鉄道車両1の外側に向かってずれた状態となっている。
【0026】
以上説明したように、荷棚11では、荷物載置部13がアルミ又はアルミ合金の形材によって形成されている。したがって、荷棚11を安価かつ十分な強度で形成できる。また、この荷棚11では、荷物載置部13の厚み方向に空間部V1が貫通しており、載置面P1側の空間上端Vaの中心位置R1が反対面P2側の空間下端Vbの中心位置R2に対して鉄道車両1の外側に向かってずれている。このような空間部V1の構成により、斜め下方から荷物載置部13の載置面P1側を見通すことが可能となり、荷棚11の視認性を良好に確保できる。
【0027】
また、荷棚11では、空間部V1における載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとが少なくとも一部で上下に重なっている。このため、斜め下方からの視認性のみでなく、真下からの視認性も同時に確保できる。さらに、荷棚11では、荷棚棒15が、車室Sの外側から中央側に向かって下り傾斜となる傾斜面17を斜面15aとする断面略直角三角形の棒状部材によって形成され、荷棚棒15が荷棚受け12,12間に並設されて荷物載置部13が構成されている。これにより、簡単な構成で斜め下方及び真下から荷物載置部13の載置面P1側を見通す空間部V1の形成が可能となる。
[第2実施形態]
【0028】
図4は、本発明の第2実施形態に係る車両用荷棚を示す断面図である。同図に示すように、第2実施形態に係る荷棚21は、荷物載置部23を構成する荷棚棒25の形状が第1実施形態と異なっている。具体的には、荷棚棒25は、アルミ又はアルミ合金の形材によって形成された中実の平板状部材からなる。荷棚棒25は、一方面25a側が車室Sの外側から中央側に向かって下り傾斜となる傾斜面17となり、かつ他方面25b側が隣接する荷棚棒25の一方面25a側と対向するように、荷棚受け12の中央部12bに沿って所定の間隔で複数(本実施形態では8本)並設されている。また、荷棚棒25の傾きは、いずれも同程度となっており、一の荷棚棒25の一方面25aと隣接する荷棚棒25の他方面25bとが略平行となっている。
【0029】
このような構成により、荷物載置部23において、落止部材14の第2部分14bと荷棚棒25との間、及び荷棚棒25,25間には、載置面P1に置かれた荷物を斜め下方から見通すための空間部V2が、荷物載置部23を厚み方向に貫通するように形成されている。荷棚棒25,25間の空間部V2では、載置面P1側の空間上端Vaの幅W1と、反対面P2側の空間下端Vbの幅W2とが略等幅となっており、載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとは、荷物載置部23の上下で重ならないようになっている。そして、載置面P1側の空間上端Vaの中心位置R1は、反対面P2側の空間下端Vbの中心位置R2に対して鉄道車両1の外側に向かってずれた状態となっている。
【0030】
このような荷棚21においても、荷物載置部23がアルミ又はアルミ合金の形材によって形成されている。したがって、荷棚21を安価かつ十分な強度で形成できる。また、この荷棚21においても、荷物載置部23の厚み方向に空間部V2が貫通しており、載置面P1側の空間上端Vaの中心位置R1が反対面P2側の空間下端Vbの中心位置R2に対して鉄道車両1の外側に向かってずれている。このような空間部V2の構成により、斜め下方から荷物載置部23の載置面P1側を見通すことが可能となり、荷棚21の視認性を良好に確保できる。
【0031】
また、荷棚21では、傾斜面17を一方面25aとする平板状部材が荷棚棒25として用いられ、空間部V2における載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとが重ならないように荷棚受け12,12間に並設されている。これにより、簡単な構成で斜め下方から荷物載置部23の載置面P1側を見通す空間部V2を形成できる。また、空間部V2における載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとが重ならないようにすることで、載置面P1の面積を十分に確保でき、荷物の載置し易さを確保できる。
【0032】
なお、本構成では、各荷棚棒25において、落止部材14の第2部分14bの上面14cと略面一になるように、載置面P1側を向く側面25cが一方面25a及び他方面25bに対して傾斜している。これにより、荷物載置部23の平坦性が保たれている。また、本構成では、荷棚棒25,25間の空間部V2の真下から荷物載置部23の載置面P1を直接見通すことはできないが、空間部V2を通して荷物が置かれた場合の影などを確認することができる。したがって、真下からであっても荷物載置部23に荷物が存在するか否かの判別が可能となっている。
[第3実施形態]
【0033】
図5は、本発明の第3実施形態に係る車両用荷棚を示す断面図である。同図に示すように、第3実施形態に係る荷棚31は、荷物載置部33を構成する荷棚棒35の形状等が第1実施形態と更に異なっている。具体的には、荷棚棒35は、アルミ又はアルミ合金の形材によって形成された中実の棒状部材からなる。荷棚棒35の一方側は平坦面35aとなっており、他方側は凸状の湾曲面35bとなっている。また、荷棚棒35の周面は、平坦面35a及び湾曲面35bを含む全体が鏡面となっている。鏡面の形成方法は、特に制限はないが、例えば研磨や膜蒸着などの各種方法を用いることができる。
【0034】
荷棚棒35は、平坦面35a側が車室Sの外側から中央側に向かって下り傾斜となる傾斜面17となり、かつ湾曲面35b側が載置面P1に向かって凸となるように、荷棚受け12の中央部12bに沿って所定の間隔で複数(本実施形態では5本)並設されている。また、荷棚棒35の傾きは、いずれも同程度となっており、各荷棚棒35の平坦面35a同士が略平行となっている。
【0035】
このような構成により、荷物載置部33において、落止部材14の第2部分14bと荷棚棒35との間、及び荷棚棒35,35間には、載置面P1に置かれた荷物を斜め下方から見通すための空間部V3が、荷物載置部33を厚み方向に貫通するように形成されている。荷棚棒35,35間の空間部V3では、載置面P1側の空間上端Vaの幅W1と、反対面P2側の空間下端Vbの幅W2とが略等幅となっており、載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとは、荷物載置部33の上下で一部重なっている。そして、載置面P1側の空間上端Vaの中心位置R1は、反対面P2側の空間下端Vbの中心位置R2に対して鉄道車両1の外側に向かってずれた状態となっている。
【0036】
このような荷棚31においても、荷物載置部33がアルミ又はアルミ合金の形材によって形成されている。したがって、荷棚31を安価かつ十分な強度で形成できる。また、この荷棚31においても、荷物載置部33の厚み方向に空間部V3が貫通しており、載置面P1側の空間上端Vaの中心位置R1が反対面P2側の空間下端Vbの中心位置R2に対して鉄道車両1の外側に向かってずれている。このような空間部V3の構成により、斜め下方から荷物載置部33の載置面P1側を見通すことが可能となり、荷棚31の視認性を良好に確保できる。
【0037】
また、荷棚31では、空間部V3における載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとが少なくとも一部で上下に重なっている。このため、斜め下方からの視認性のみでなく、真下からの視認性も同時に確保できる。さらに、荷棚棒35の周面は、平坦面35a及び湾曲面35bを含む全体が鏡面となっている。
【0038】
荷棚棒35の周面を鏡面とすることにより、図6(a)に示すように、斜め下方から荷棚31を見た場合に、空間部V3を通して荷物載置部33の上方を視認できることに加え、湾曲面35bでの鏡面反射によって荷物載置部33の上方(空間部V3よりも車室Sの中央側)を視認することが可能となる。本構成では、鏡面が形成される湾曲面35bが載置面P1側に凸となるように湾曲していることで、鏡面の死角を小さくすることが可能となる。
【0039】
また、荷棚棒35の周面を鏡面とすることにより、図6(b)に示すように、真下から荷棚31を見た場合に、空間部V3を通して荷物載置部33の上方を視認できることに加え、平坦35aでの鏡面反射によって荷物載置部33の上方(空間部V3よりも車室Sの外側)を視認することが可能となる。したがって、荷棚31の視認性を一層良好に確保できる。
【0040】
なお、本構成では、図5に示すように、荷棚棒35の湾曲面35bの形状に対応させて、落止部材14の第2部分14bの上面14cを載置面P1側に凸となるように湾曲させることが好ましい。こうすることで、荷物載置部33を視認する際の死角をより小さくすることができる。
[第4実施形態]
【0041】
図7は、本発明の第4実施形態に係る車両用荷棚を示す断面図である。同図に示すように、第4実施形態に係る荷棚41は、荷棚棒に代えて、互いに対向する第1パネル45aと第2パネル45bとをリブで繋いでなるダブルスキンパネル45,45によって荷物載置部43を構成している点で上記各実施形態と異なっている。
【0042】
ダブルスキンパネル45,45は、アルミ又はアルミ合金の形材によって形成され、第1パネル45aが載置面P1側を向き、かつ落止部材14の第2部分14bの上面14cと略面一になるように、荷棚受け12の中央部12bに沿って所定の間隔で並設されている。荷棚受け12の中央部12bの先端側に配置されるダブルスキンパネル45の車室Sの中央側の端部には、前棒16に相当する中空の突出部46が一体的に形成されている。
【0043】
また、ダブルスキンパネル45,45において、第1パネル45aの落止部材14側の端部は、第2パネル45bの落止部材14側の端部よりも車室Sの外側に突出している。これらの端部同士は、傾斜リブ45cによって接続されており、この傾斜リブ45cが車室Sの外側から中央側に向かって下り傾斜となる傾斜面17となっている。
【0044】
このような構成により、荷物載置部43において、落止部材14の第2部分14bとダブルスキンパネル45との間、及びダブルスキンパネル45,45間には、載置面P1に置かれた荷物を斜め下方から見通すための空間部V4が、荷物載置部43を厚み方向に貫通するように形成されている。空間部V4では、載置面P1側の空間上端Vaの幅W1が、反対面P2側の空間下端Vbの幅W2よりも小さくなっており、載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとは、荷物載置部43の上下で一部が重なっている。そして、載置面P1側の空間上端Vaの中心位置R1は、反対面P2側の空間下端Vbの中心位置R2に対して鉄道車両1の外側に向かってずれた状態となっている。
【0045】
このような荷棚41においても、荷物載置部43がアルミ又はアルミ合金の形材によって形成されている。したがって、荷棚41を安価かつ十分な強度で形成できる。また、この荷棚41においても、荷物載置部43の厚み方向に空間部V4が貫通しており、載置面P1側の空間上端Vaの中心位置R1が反対面P2側の空間下端Vbの中心位置R2に対して鉄道車両1の外側に向かってずれている。このような空間部V4の構成により、斜め下方から荷物載置部43の載置面P1側を見通すことが可能となり、荷棚41の視認性を良好に確保できる。
【0046】
また、荷棚41では、空間部V4における載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとが少なくとも一部で上下に重なっている。このため、斜め下方からの視認性のみでなく、真下からの視認性も同時に確保できる。荷物載置部43をダブルスキンパネル45,45で構成することで、簡単な構成で荷物載置部43の強度を確保できる。
【0047】
なお、図8に示す荷棚51のように、第1パネル45aの落止部材14側の端部と、第2パネル45bの落止部材14側の端部とを傾斜リブ45cで接続しない構成としてもよい。また、図9に示す荷棚61のように、空間部V4において、反対面P2側の空間下端Vbの中央部分に仕切部45dを設け、荷物載置部43を斜め下方から見通すラインと、下方から見通すラインとを仕切るようにしてもよい。
【0048】
また、図10に示す荷棚71のように、落止部材14及び荷物載置部73をシングルスキンパネル75によって形成してもよい。この場合、荷物載置部73を構成するシングルスキンパネル75の落止部材14側の側面75cを、車室Sの外側から中央側に向かって下り傾斜となる傾斜面17とすることで、載置面P1側の空間上端Vaと反対面P2側の空間下端Vbとが少なくとも一部で上下に重なった空間部V5を形成でき、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、本構成において、落止部材74及び前棒76をシングルスキンパネルによって構成してもよい。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、荷物載置部を構成する部材として押出形材を例示したが、削り出しや熱間加工等による形材や棒材を用いてもよい。また、上記実施形態では、鉄道車両に適用した車両用荷棚を例示したが、本発明は、自動車、バス、航空機等の他の車両にも適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…鉄道車両(車両)、6…座席、11,21,31,41,51,61,71…荷棚(車両用荷棚)、12…荷棚受け、13,23,33,43,53,63,73…荷物載置部、15,25,35…荷物棒(長尺部材)、17…傾斜面、45…ダブルスキンパネル(長尺部材)、75…シングルスキンパネル(長尺部材)、P1…載置面、P2…反対面、R1…載置面側の端部の中心位置、R2…反対面側の端部の中心位置、V1〜V5…空間部、Va…載置面側の空間上端、Vb…反対面側の空間下端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10