特許第6088455号(P6088455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088455
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ポジショナ
(51)【国際特許分類】
   F15B 9/09 20060101AFI20170220BHJP
   G05B 19/05 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   F15B9/09 F
   G05B19/05 N
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-47228(P2014-47228)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-169327(P2015-169327A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】村田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 洋輔
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−207756(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0136929(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0183791(US,A1)
【文献】 特開2011−210158(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0240891(US,A1)
【文献】 意匠登録第1128492(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 9/00− 9/17
G05B 19/04−19/05
G05B 23/00−23/02
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置から送られてくるバルブに対する開度設定信号と前記バルブの現在の開度を示す実開度信号とを入力とし、この開度設定信号と実開度信号とから制御信号を生成する制御演算部と、
前記制御演算部からの制御信号を空気圧に変換する電空変換部と、
前記電空変換部が変換した空気圧を入力空気圧とし、この入力空気圧を増幅して出力空気圧とし、この出力空気圧を前記バルブへ出力する空気回路部と、
前記バルブの現在の開度を検出し前記制御演算部への実開度信号とする弁開度検出部と備えたポジショナにおいて、
前記制御演算部を構成する第1の演算部および第2の演算部と、
前記バルブにおける前記空気回路部からの出力空気圧を検出する第1の圧力センサと、
前記空気回路部からの前記バルブへの出力空気圧または前記電空変換部からの前記空気回路部への入力空気圧を検出する第2の圧力センサと、
前記第1の演算部と前記弁開度検出部と前記第1の圧力センサとを収容する第1のケースと、
前記第2の演算部と前記電空変換部と前記空気回路部と前記第2の圧力センサとを収容する第2のケースとを備え、
前記第1のケースは前記バルブに組み付けられ、
前記第2のケースは前記バルブから離間した位置に設置され、
前記第1の演算部は、
前記上位装置から送られてくる開度設定信号と前記弁開度検出部から送られてくる実開度信号と前記第1の圧力センサからの検出圧力信号とを入力とし、
前記第2の演算部は、
前記第1の演算部からの出力信号と前記第2の圧力センサからの検出圧力信号とを入力とする
ことを特徴とするポジショナ。
【請求項2】
請求項1に記載されたポジショナにおいて、
前記第1の演算部は、
前記上位装置から送られてくる開度設定信号と前記弁開度検出部から送られてくる実開度信号とから前記制御信号を生成して前記第2の演算部に送り、
前記第2の演算部は、
前記第1の演算部を介して送られてくる前記第1の圧力センサからの検出圧力信号と前記第2の圧力センサからの検出圧力信号とに基づいて前記バルブの診断を行う
ことを特徴とするポジショナ。
【請求項3】
請求項1に記載されたポジショナにおいて、
前記第1の演算部は、
前記上位装置から送られてくる開度設定信号と前記弁開度検出部から送られてくる実開度信号とから前記制御信号を生成して前記第2の演算部に送る一方、前記第2の演算部を介して送られてくる前記第2の圧力センサからの検出圧力信号と前記第1の圧力センサからの検出圧力信号とに基づいて前記バルブの診断を行う
ことを特徴とするポジショナ。
【請求項4】
請求項1に記載されたポジショナにおいて、
前記第1の演算部は、
前記上位装置から送られてくる開度設定信号と前記弁開度検出部から送られてくる実開度信号、および、前記第1の圧力センサからの検出圧力信号と前記第2の圧力センサからの検出圧力信号とから前記制御信号を生成して前記第2の演算部に送る
ことを特徴とするポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブの開度を制御するポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、バルブの開度を制御するポジショナとして、例えば図4にその要部の構成を示すようなものがある(例えば、特許文献1参照)。同図において、100は上位装置、200(200A)はポジショナ、300はバルブである。
【0003】
ポジショナ200Aは、制御演算部1と電空変換部2と空気回路部3と弁開度検出器(弁開度検出部)4とを備えており、バルブ300に組み付けられている。以下、このポジショナ200Aを一体型のポジショナと呼ぶ。
【0004】
この一体型のポジショナ200Aにおいて、弁開度検出器4は、バルブ300の現在の開度を検出し、実開度信号Xpvとして制御演算部1へ送る。制御演算部1は、上位装置から送られてくるバルブ300に対する開度設定信号Xspと弁開度検出器4からの実開度信号Xpvとを入力とし、開度設定信号Xspと実開度信号Xpvとの偏差を求め、この偏差にPID制御演算を施して得られるPWM信号(パルス幅変調信号)を制御信号MVとして生成し、電空変換部2へ送る。
【0005】
電空変換部2は、制御演算部1からの制御信号MVを空気圧(ノズル背圧)Pnに変換する。空気回路部3は、電空変換部2からの空気圧Pnを入力空気圧とし、この入力空気圧Pnを増幅して出力空気圧Poを生成し、バルブ300の操作器(図示せず)へ出力する。これにより、操作器内のダイアフラム室に空気圧Poの空気が流入し、バルブ300の開度が調整される。
【0006】
なお、制御演算部1は、制御状態の変化からバルブ300の診断を行い、その診断結果を上位装置100へ送るというような機能も備えている。このバルブ診断機能によって、プラントの安定操業やメンテナンスコストの削減を実現することが可能となる。図5に空気圧の変化からバルブ300の診断を行うようにしたポジショナ200の一例を示す。
【0007】
このポジショナ200(200B)では、第1の圧力センサ5と第2の圧力センサ6とを設け、第1の圧力センサ5でバルブ300における空気回路部3からの出力空気圧Po(操作器のダイアフラム室に流入する出力空気圧)を検出し、第2の圧力センサ6で空気回路部3からのバルブ300への出力空気圧Poを検出し、この第1の圧力センサ5および第2の圧力センサ6で検出した空気圧を検出空気圧信号S1およびS2として制御演算部1へ送るようにしている。制御演算部1は、第1の圧力センサ5から送られてくる検出空気圧信号S1と第2の圧力センサ6から送られてくる検出空気圧信号S2とに基づいてバルブ300の診断を行う。例えば、第1の圧力センサ5が検出する空気圧と第2の圧力センサ6が検出する空気圧との差から空気漏れの検知を行う。
【0008】
この空気圧による診断機能を備えた一体型のポジショナ200Bでは、制御演算部1と電空変換部2と空気回路部3と弁開度検出器4と第1の圧力センサ5と第2の圧力センサ6とが1つのケース10に収容され、このケース10がバルブ300に組み付けられている。このため、バルブ300の振動やバルブ300を流れる流体の温度の影響を受け易いという難点がある。
【0009】
そこで、振動や温度の影響を受け難くするために、図6に示すように、ケース10を第1のケース10−1と第2のケース10−2とに分け、第1のケース10−1に弁開度検出器4と第1の圧力センサ5とを収容してバルブ300に組み付けると共に、制御演算部1と電空変換部2と空気回路部3と第2の圧力センサ6とを第2のケース10−2に収容してバルブ300から離間した位置に配置するようにしたポジショナ200(200C)とすることが考えられる(例えば、特許文献2参照)。以下、このポジショナ200Cを分離型のポジショナと呼ぶ。
【0010】
なお、第1のケース10−1に収容した弁開度検出器4からの実開度信号Xpvおよび第1の圧力センサ5からの検出圧力信号S1は、第2のケース10−2に端子台7を設け、この端子台7と弁開度検出器4との間をケーブル6−1および6−2で接続することにより、制御演算部1へ送るようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012−207756号公報
【特許文献2】意匠登録第1128492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、この分離型のポジショナ200Cでは、弁開度検出器4と制御演算部1との間がケーブル6−1で、また圧力センサ5と制御演算部1との間がケーブル6−2で延長されることで、弁開度検出器4からの実開度信号Xpv(強度の弱いアナログ電流信号)および圧力センサ5からの検出圧力信号S1(強度の弱いアナログ電流信号)がノイズの影響を受け易くなる。このため、次のような問題が生じる。
【0013】
(1)ノイズの影響を受けた実開度信号Xpvで制御演算を行うため、制御に与える影響が大きい。
(2)ノイズの影響を受けた検出圧力信号S1でバルブ300の診断を行うため、診断結果に与える影響が大きい。
(3)弁開度検出器4および圧力センサ5と制御演算部1との間が端子台7を介してケーブル6−1および6−2で接続されるため、端子へのノイズ試験が必要になる。また、端子に雷対策などを行うと、ポジショナは大型になってしまう。また、雷対策後の追加部品により信号自体が変化する可能性がある。
(4)微小変化を伝送している実開度信号Xpvおよび検出圧力信号S1の信号ラインへ印加するノイズ試験を行う必要がある。
(5)弁開度検出器4および圧力センサ5と制御演算部1とが離れているため、弁開度検出器4および圧力センサ5の温度補正が難しい。
(6)第2のケース10−2を安全区域に設置すると、この部分の防爆構造は不要となるが、弁開度検出器4および圧力センサ5と端子台7との間のケーブル6−1および6−2が長くなるので、実開度信号Xpvおよび検出圧力信号S1へのノイズの影響が大きくなる。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ノイズの影響を受け難いポジショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するために本発明は、上位装置から送られてくるバルブに対する開度設定信号とバルブの現在の開度を示す実開度信号とを入力とし、この開度設定信号と実開度信号とから制御信号を生成する制御演算部と、制御演算部からの制御信号を空気圧に変換する電空変換部と、電空変換部が変換した空気圧を入力空気圧とし、この入力空気圧を増幅して出力空気圧とし、この出力空気圧をバルブへ出力する空気回路部と、バルブの現在の開度を検出し制御演算部への実開度信号とする弁開度検出部と備えたポジショナにおいて、制御演算部を構成する第1の演算部および第2の演算部と、バルブにおける空気回路部からの出力空気圧を検出する第1の圧力センサと、空気回路部からのバルブへの出力空気圧または電空変換部からの空気回路部への入力空気圧を検出する第2の圧力センサと、第1の演算部と弁開度検出部と第1の圧力センサとを収容する第1のケースと、第2の演算部と電空変換部と空気回路部と第2の圧力センサとを収容する第2のケースとを備え、第1のケースはバルブに組み付けられ、第2のケースはバルブから離間した位置に設置され、第1の演算部は、上位装置から送られてくる開度設定信号と弁開度検出部から送られてくる実開度信号と第1の圧力センサからの検出圧力信号とを入力とし、第2の演算部は、第1の演算部からの出力信号と第2の圧力センサからの検出圧力信号とを入力とすることを特徴とする。
【0016】
この発明では、制御演算部が第1の演算部と第2の演算部とで構成され、第1の演算部と弁開度検出部と第1の圧力センサとが第1のケースに収容され、第2の演算部と電空変換部と空気回路部と第2の圧力センサとが第2のケースに収容され、第1のケースがバルブに組み付けられ、第2のケースがバルブから離間した位置に設置される。また、第1の演算部は、上位装置から送られてくる開度設定信号と弁開度検出部から送られてくる実開度信号と第1の圧力センサからの検出圧力信号とを入力とし、第2の演算部は、第1の演算部からの出力信号と第2の圧力センサからの検出圧力信号とを入力とする。この構成において、第1のケースに収容されている第1の演算部から第2のケースに収容されている第2の演算部に対して出力信号が送られるが、この出力信号は第1の演算部を通すことにより、デジタル信号や強度の強いアナログ信号などノイズの影響を受け難い信号とすることが可能である。
【0017】
なお、本発明の1構成例として、第1の演算部において、上位装置から送られてくる開度設定信号と弁開度検出部から送られてくる実開度信号とから制御信号を生成して第2の演算部に送るようにし、第2の演算部において、第1の演算部を介して送られてくる第1の圧力センサからの検出圧力信号と第2の圧力センサからの検出圧力信号とに基づいてバルブの診断を行うようにすることが考えられる。
【0018】
また、本発明の1構成例として、第1の演算部において、上位装置から送られてくる開度設定信号と弁開度検出部から送られてくる実開度信号とから制御信号を生成して第2の演算部に送る一方、第2の演算部を介して送られてくる第2の圧力センサからの検出圧力信号と第1の圧力センサからの検出圧力信号とに基づいてバルブの診断を行うようにすることが考えられる。
【0019】
また、本発明の1構成例として、第1の演算部において、上位装置から送られてくる開度設定信号と弁開度検出部から送られてくる実開度信号、および、第1の圧力センサからの検出圧力信号と第2の圧力センサからの検出圧力信号とから制御信号を生成して第2の演算部に送るようにすることが考えられる。
【0020】
本発明において、第1の演算部と第2の演算部とは制御演算部を構成する演算部であり、制御演算部の機能を第1の演算部と第2の演算部とにどのように分担させるかは自由である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、制御演算部を第1の演算部と第2の演算部とで構成し、第1の演算部と弁開度検出部と第1の圧力センサとを第1のケースに収容し、第2の演算部と電空変換部と空気回路部と第2の圧力センサとを第2のケースに収容し、第1のケースをバルブに組み付け、第2のケースをバルブから離間した位置に設置するようにしたので、第1のケースに収容されている第1の演算部から第2のケースに収容されている第2の演算部に対してデジタル信号や強度の強いアナログ信号などを出力信号として送るようにして、ノイズの影響を受け難くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係るポジショナの一実施の形態の要部を示す構成図である。
図2】圧力センサを搭載した従来のポジショナ(「一体型」のポジショナ、「従来の分離型」のポジショナ)と本発明に係るポジショナ(「演算・空気分離型」のポジショナ)の各種項目についての比較を示す図である。
図3】電空変換部からの空気回路部への入力空気圧Pnを第2の圧力センサが検出する空気圧とした例を示す図である。
図4】従来の一体型のポジショナの構成を示す図である。
図5】圧力センサを搭載した従来の一体型のポジショナの構成例を示す図である。
図6】圧力センサを搭載した従来の分離型のポジショナの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るポジショナの一実施の形態の要部を示す構成図である。同図において、図6と同一符号は図6を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。
【0024】
本実施の形態のポジショナ200(200D)では、制御演算部1を第1の演算部1−1と第2の演算部1−2とで構成し、第1のケース10−1に第1の演算部1−1と弁開度検出器(弁開度検出部)4と第1の圧力センサ5とを収容し、第2のケース10−2に第2の演算部1−2と電空変換部2と空気回路部3と第2の圧力センサ6とを収容している。
【0025】
また、第1の演算部1−1と弁開度検出器4と第1の圧力センサ5とを収容した第1のケース10−1をバルブ300に組み付け、第2の演算部1−2と電空変換部2と空気回路部3と第2の圧力センサ6とを収容した第2のケース10−2をバルブ300から離間した位置に設置している。
【0026】
このポジショナ200Dも図6に示したポジショナ200Cと同じ分離型のポジショナとされているが、第1のケース10−1には演算系統である第1の演算部1−1と弁開度検出器4と第1の圧力センサ5とを収容し、第2のケース10−2には空気系統である第2の演算部1−2と電空変換部2と空気回路部3と第2の圧力センサ6とを収容し、演算系統と空気系統とを分離させている。
【0027】
すなわち、このポジショナ200Dでは、演算系統と空気系統とを切り離し、演算系統をバルブ300に組み付け、空気系統をバルブ300から離間した位置に設置している。なお、第1のケース10−1と第2のケース10−2とでは、それぞれ別の電源を各部に供給するようにしている。
【0028】
また、このポジショナ200Dでは、上位装置100から送られてくる開度設定信号Xspと弁開度検出器4から送られてくる実開度信号Xpvと第1の圧力センサ5からの検出圧力信号S1とを第1の演算部1−1への入力とし、第1の演算部1−1からの出力信号〔制御信号MV+検出圧力信号S1’(デジタル信号に変換された検出圧力信号S1)〕と第2の圧力センサ6からの検出圧力信号S2とを第2の演算部1−2への入力としている。
【0029】
この場合、第1のケース10−1側から第2のケース10−2側へは、弁開度検出器4からの実開度信号Xpvや第1の圧力センサ5からの検出圧力信号S1ではなく、第1の演算部1−1からの出力信号(制御信号MV+検出圧力信号S1’)が送られる。すなわち、第1の演算部1−1から第2の演算部1−2にケーブル6を通して、第1の演算部1−1からの出力信号(制御信号MV+検出圧力信号S1’)が送られる。
【0030】
このケーブル6を通して送られる出力信号(制御信号MV+検出圧力信号S1’)はデジタル信号であるので、すなわち制御信号MVはPWM信号(パルス幅変調信号)であり、検出圧力信号S1’はデジタル信号に変換された検出圧力信号S1であるので、ノイズの影響を受け難いものとなる。
【0031】
なお、この例では、第1の演算部1−1からの出力信号(制御信号MV+検出圧力信号S1’)をケーブル6を通して第2の演算部1−2へ送るようにしているが、すなわち第1の演算部1−1からの出力信号(制御信号MV+検出圧力信号S1’)を有線で第2の演算部1−2へ送るようにしているが、無線で送るようにしてもよい。また、第1の演算部1−1からの出力信号(制御信号MV+検出圧力信号S1’)は、必ずしもデジタル信号でなくてもよく、強度の強いアナログ信号としてもよい。
【0032】
第2の演算部1−2は、第1の演算部1−1から出力信号(制御信号MV+検出圧力信号S1’)が送られてくると、制御信号MVを電空変換部2へ送る一方、検出圧力信号S1’すなわちデジタル信号に変換された第1の圧力センサ5からの検出圧力信号S1と第2の圧力センサ6からの検出圧力信号S2とに基づいてバルブ300の診断を行う。この例では、第1の圧力センサ5が検出する空気圧と第2の圧力センサ6が検出する空気圧との差から空気漏れの検知を行う。この第2の演算部1−2での診断結果は、ケーブル6を通して第1の演算部1−1へ送られ、第1演算部1−1から上位装置100へと送られる。なお、第2の演算部1−2での診断結果をポジショナ200Dにおいて表示するなどしてもよい。
【0033】
このポジショナ200Dでは他にも次のような効果が得られる。以下、このポジショナ200Dを演算・空気系統分離型のポジショナと呼ぶ。
(1)弁開度検出器4と演算部1−1とを一体にすることで、ノイズの影響を受けやすい実開度信号Xpvの信号ラインを延長する必要がない。
(2)圧力センサ5と演算部1−1とを一体にすることで、ノイズの影響を受けやすい検出空気圧信号S1の信号ラインを延長する必要がない。
(3)微小変化を伝送しているラインへのノイズ試験の必要はなく、従来と同様の対策で対ノイズ性能が得られる。
(4)ノイズ試験項目削減による開発期間の短縮、および開発コストの削減ができる。
(5)弁開度検出器4と圧力センサ5と演算部1−1のみであれば、小型化は容易であり、従来の分離型と同様の耐振動性が得られる。
(6)弁開度検出器4と圧力センサ5と演算部1−1とが同じ場所にあるので、弁開度検出器4および圧力センサ5の温度補正が正確にできる。
(7)弁開度検出器4と圧力センサ5と演算部1−1のみを樹脂モールドすることで防爆構造にできる。
(8)演算部1−2と電空変換部2と空気回路部3と圧力センサ6とを安全区域に設置することで、この部分の防爆構造が不要となり、コストを削減できる。
【0034】
図2に、従来の一体型のポジショナ200B(図5)を「一体型」とし、従来の分離型のポジショナ200C(図5)を「従来の分離型」とし、本実施の形態のポジショナ200D(図1)を「演算・空気分離型」とした場合の各種項目についての比較を示す。
【0035】
なお、上述した実施の形態では、第2の圧力センサ6によって空気回路部3からのバルブ300への出力空気圧Poを検出するようにしたが、図3に示すように、電空変換部2からの空気回路部3への入力空気圧Pnを検出するようにし、その検出した空気圧を検出空気圧信号S2として第2の演算部1−2へ送るようにしてもよい。
【0036】
また、上述した実施の形態では、第2の演算部1−2において、第1の演算部1−1からの検出圧力信号S1’(デジタル信号に変換された検出圧力信号S1)と第2の圧力センサ6からの検出圧力信号S2とに基づいてバルブ300の診断を行うようにしたが、第1の演算部1−1において、第2の演算部1−2からの検出圧力信号S2’(デジタル信号に変換された検出圧力信号S2)と第1の圧力センサ5からの検出圧力信号S1とに基づいてバルブ300の診断を行うようにしてもよい。
【0037】
また、第1の演算部1−1において、第1の圧力センサ5からの検出圧力信号S1と第2の演算部1−2からの検出圧力信号S2’とを制御信号MVを求める際のPID制御演算に反映させるようにして、高速制御を行わせるようにしてもよい。また、第2の演算部1−2において、開度設定信号Xspと実開度信号Xpvとの偏差にPID制御演算を施して制御信号MVを求めるようにしたりしてもよく、制御演算部1の機能を第1の演算部−1と第2の演算部1−2とにどのように分担させるかは自由である。
【0038】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…制御演算部、1−1…第1の演算部、1−2…第2の演算部、2…電空変換部、3…空気回路部、4…弁開度検出器(弁開度検出部)、5…第1の圧力センサ、6…第2の圧力センサ、10−1…第1のケース、10−2…第2のケース、100…上位装置、200(200D)…ポジショナ、300…バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6