【実施例】
【0030】
ペプチド
以下のコペプチン関連ペプチドを、標準的な手順を用いて化学合成し、精製して、品質管理した:
【0031】
【表2】
【0032】
抗体
ペプチドPAY16およびPAY14に対するモノクローナル抗体を標準的な手順によって作製した(Harlow E,Lane D.Antibodies−A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor:Cold Spring Harbor Laboratory,1988;Lane RD.A short−duration polyethylene glycol fusion technique for increasing production of monoclonal antibody−secreting hybridomas.J Immunol Methods 1985;81:223−8)。
簡単に述べると、スルホ−MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)を使用することによってペプチドをBSAに結合した。これらの複合体を用いてBalb/cマウスを免疫し、ブーストして、脾細胞をSP2/0骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマ細胞株を作製した。細胞株を、ポリスチレン固相に被覆された、免疫原性ペプチドに結合する抗体を分泌するそれらの能力に関してスクリーニングした。
このアプローチを用いて、モノクローナル抗体429/F4(PAY16に対する)および423/F10(PAY14に対する)を分泌する細胞株を作製した。さらなる実験のために、プロテインGアフィニティクロマトグラフィによってモノクローナル抗体を培養上清から精製した。
記述されているように[4,7]コペプチン(CTプロAVP)を検出する化学発光/被覆チューブアッセイにおいて使用した、ペプチドPLAY17に対して開発されたヒツジ抗血清および対応するアフィニティ精製されたポリクローナルヒツジ抗体(「pc抗PLAY」)は、BRAHMS GmbH,Hennigsdorf,Germanyから入手した。
【0033】
エピトープマッピング
抗体のエピトープを以下のようにマッピングした:
【0034】
a)ペプチドの被覆
標準的な手順(欧州特許出願公開第1488209号、欧州特許出願公開第1738178号)によって被覆を行った:ポリスチレンスターチューブ(Greiner)を、ペプチドP146〜164、P146〜163、P146〜162、P146〜161、P146〜159、P146〜158およびP146〜157(チューブ当たり、PBS、pH7.8 300μL中ペプチド1.5μg)を用いて22℃で一晩被覆した。次に、3%Karion FP(Merck)、0.5%プロテアーゼ不含BSA(Sigma)を含む10mmol/Lリン酸ナトリウム(pH6.5)でチューブをブロックし、凍結乾燥した。
【0035】
b)ロバ抗ヒツジIgGおよびヤギ抗マウスIgG抗体の標識化
標準的な手順(欧州特許出願公開第1488209号、欧州特許出願公開第1738178号)によって標識化を行った:ロバ抗ヒツジ抗体(Scantibodies Laboratory Inc.,USA)およびヤギ抗マウス抗体(BiosPacific,USA)の濃度を1g/Lに調整し、抗体を、化学発光標識MACN−アクリジニウム−NHS−エステル(1g/L;InVent GmbH,Hennigsdorf,Germany)と共に1:4のモル比で室温にて20分間インキュベートすることによって標識した。1/10容の1mol/Lトリスを室温で10分間添加することによって反応を停止させた。標識抗体を、NAP−5カラム(GE Healthcare,Freiburg,Germany)およびThermo BioBasic 300 5μm HPLCカラム(Thermo Scientific)でのサイズ排除クロマトグラフィによって遊離標識体から分離した。
【0036】
c)pc抗PLAY17抗血清/アフィニティ精製抗体
標識ロバ抗ヒツジIgG抗体を、200μl当たり106相対光単位(RLU)のMACN標識抗体を含むアッセイ緩衝液、PBS、0.5%プロテアーゼ不含ウシ血清アルブミン(Sigma)に希釈することによってトレーサを生成した。pc抗PLAY17ヒツジ抗血清(B.R.A.H.M.S GmbH,Hennigsdorf,Germany)を、PBS、0.5%ウシ血清アルブミン(プロテアーゼ不含)を用いて1:1000、1:3000、1:9000、1:27000および1:81000の割合で希釈した。アフィニティ精製したpc抗PLAY17ヒツジ抗体をPBS、0.5%プロテアーゼ不含ウシ血清アルブミンで以下の濃度に希釈した:972、324、108、36および12ng/200μl。最初のインキュベーションステップでは、pc抗PLAY17ヒツジ抗血清/精製抗体の希釈物50μlおよびPBS、0.5%ウシ血清アルブミン(プロテアーゼ不含)200μlをチューブにピペットで分注し、ペプチドP146〜164、P146〜163、P146〜162、P146〜161、P146〜159、P146〜158およびP146〜157で被覆した。非特異的結合(NSB)の計算のために、0.5%ウシ血清アルブミン(プロテアーゼ不含)とPBS250μlだけをチューブにピペットで分注し、ペプチドP146〜164、P146〜163、P146〜162、P146〜161、P146〜159、P146〜158およびP146〜157で被覆した。チューブを撹拌しながら22℃で一晩インキュベートした。次に、チューブをB.R.A.H.M.S洗浄液(B.R.A.H.M.S GmbH)1mLで5回洗浄した。2番目のインキュベーションステップでは、ロバ抗ヒツジIgGトレーサ200μlを添加し、チューブを撹拌しながら22℃で2時間インキュベートした。次に、チューブをB.R.A.H.M.S洗浄液1mLで5回洗浄し、結合化学発光をLB 952Tルミノメータ(Berthold)でチューブにつき1秒間測定した。
【0037】
d)mAb 429/F4およびmAb 423/F10
標識ヤギ抗マウスIgG抗体を、200μl当たり106相対光単位(RLU)のMACN標識抗体を含むアッセイ緩衝液(PBS、0.5%プロテアーゼ不含ウシ血清アルブミン)に希釈することによってトレーサを生成した。モノクローナル抗体429/F4および423/F10をPBS、0.5%ウシ血清アルブミン(プロテアーゼ不含)で以下の濃度に希釈した:972、324、108、36および12ng/200μl。
最初のインキュベーションステップでは、mAb 429/F4/mAb 423/F10の希釈物50μlおよびPBS、0.5%ウシ血清アルブミン(プロテアーゼ不含)200μlをチューブにピペットで分注し、これらをペプチドP146〜164、P146〜163、P146〜162、P146〜161、P146〜159、P146〜158およびP146〜157で被覆した。NSBの計算のために、PBS、0.5%ウシ血清アルブミン(プロテアーゼ不含)250μlだけをチューブにピペットで分注し、ペプチドP146〜164、P146〜163、P146〜162、P146〜161、P146〜159、P146〜158およびP146〜157で被覆した。チューブを撹拌しながら22℃で一晩インキュベートした。次に、チューブをB.R.A.H.M.S洗浄液(B.R.A.H.M.S GmbH,Hennigsdorf,Germany)1mLで5回洗浄した。2番目のインキュベーションステップでは、ヤギ抗マウストレーサ200μlを添加し、チューブを撹拌しながら22℃で2時間インキュベートした。次に、チューブをB.R.A.H.M.S洗浄液1mLで5回洗浄し、結合化学発光をLB 952Tルミノメータ(Berthold)でチューブにつき1秒間測定した。
【0038】
図1(A)〜1(D)において、コペプチンのC末端全長およびC末端部分のトランケート変異体であるペプチドへの抗血清および抗体の認められた結合を示す。抗PLAY17ヒツジ抗血清、アフィニティ精製したヒツジポリクローナル抗PLAY17抗体およびmAb 429/F4は、プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜164、146〜163、146〜162、146〜161に対応するペプチドへの同等の結合を示した。C末端がより大きくトランケートされたペプチド変異体に関しては、結合が低減した。低減の量は、適用された抗体の濃度に依存した。試験した抗血清/抗体に関して、それらのエピトープはプレプロバソプレッシンのアミノ酸位置161〜164を含まないと結論される。これに対し、mAb 423/F10の結合は、プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜164に対応するペプチドに対してのみ効率的であり、C末端がトランケートされたペプチド変異体に対しては大きく低減した。したがって、mAb 423/F10のエピトープにはプレプロバソプレッシンのアミノ酸位置164が含まれる。
【0039】
免疫検定法
モノクローナル抗体の標識化
標準的な手順によって(欧州特許出願公開第1488209号、欧州特許出願公開第1738178号)標識化を行った:精製抗体429/F4および423/F10の濃度を1g/Lに調整し、抗体を、化学発光標識MACN−アクリジニウム−NHS−エステル(1g/L;InVent GmbH,Hennigsdorf,Germany)と共に1:5のモル比で室温にて20分間インキュベートすることによって標識した。1/10容の1mol/Lトリスを室温で10分間添加することによって反応を停止させた。標識抗体を、NAP−5カラム(GE Healthcare,Freiburg,Germany)およびThermo BioBasic 300 5μm HPLCカラム(Thermo Scientific)でのサイズ排除クロマトグラフィによって遊離標識体から分離した。
【0040】
3つのサンドイッチ免疫検定法を以下のように利用または開発した:
A.Pc抗PLAY17/mc抗PATV17
[7]に記載されているCTプロAVP LIA(B.R.A.H.M.S GmbH,Hennigsdorf,Germany)。
B.mAb 429/F4/mc抗PATV17
標識抗体429/F4を、200μl当たり106相対光単位(RLU)のMACN標識抗体を含むアッセイ緩衝液(300mmol/Lリン酸カリウム、100mmol/L NaCl、10mmol/L EDTAナトリウム、5g/Lプロテアーゼ不含ウシ血清アルブミン、1g/L非特異的ヒツジIgG、1g/L非特異的ウシIgG、1g/L非特異的マウスIgG、0.9g/Lアジ化ナトリウム、pH7.0)に希釈することによってトレーサを生成した。CTプロAVP標準品(B.R.A.H.M.S GmbH,Hennigsdorf,Germany)50μl/試料およびトレーサ200μlをCTプロAVP被覆チューブ(B.R.A.H.M.S GmbH)にピペットで分注した。チューブを撹拌しながら22℃で2時間インキュベートした。次に、チューブを洗浄液(B.R.A.H.M.S GmbH)1mLで5回洗浄し、結合化学発光をLB 952Tルミノメータ(Berthold)でチューブにつき1秒間測定した。
C.mAb 423/F10/mc抗PATV17
標識抗体423/F10を、200μl当たり106相対光単位(RLU)のMACN標識抗体を含むアッセイ緩衝液(300mmol/Lリン酸カリウム、100mmol/L NaCl、10mmol/L EDTAナトリウム、5g/Lプロテアーゼ不含ウシ血清アルブミン、1g/L非特異的ヒツジIgG、1g/L非特異的ウシIgG、1g/L非特異的マウスIgG、0.9g/Lアジ化ナトリウム、pH7.0)に希釈することによってトレーサを生成した。CTプロAVP標準品(B.R.A.H.M.S GmbH,Hennigsdorf,Germany)50μl/試料およびトレーサ200μlをCTプロAVP被覆チューブ(B.R.A.H.M.S GmbH)にピペットで分注した。チューブを撹拌しながら22℃で2時間インキュベートした。次に、チューブを洗浄液(B.R.A.H.M.S GmbH)1mLで5回洗浄し、結合化学発光をLB 952Tルミノメータ(Berthold)でチューブにつき1秒間測定した。3つのアッセイについての典型的な用量反応曲線を
図2に示す。
【0041】
方法の比較
上述した3つのアッセイを用いて、健常個人、心臓病を有する患者およびICUからの患者由来の試料を含む様々な臨床試料を測定した。グラフでの方法比較を
図3(血清)および
図4(EDTA−血漿試料)に示す。アッセイpc抗PLAY17/mc抗PATV17をアッセイmAb 429/F4/mAb PATV17と比較した場合、理想的なスピアマンの相関係数が認められ、一方アッセイmAb 423/F10/mc抗PATV17をpc抗PLAY17/mc抗PATV17またはアッセイmAb 429/F4/mc抗PATV17と比較した場合には、明らかな差異が認められた。差異は、EDTA−血漿試料よりも血清に関してより顕著であった。認められた差異は明らかに抗体のエピトープに関連する:mAb 423/F10のエピトープはプレプロバソプレッシンのアミノ酸位置164を含むが、pc抗PLAY17およびmAb 429/F4のエピトープはプレプロバソプレッシンのアミノ酸位置161〜164を含まない。見かけ上、完全長コペプチンに加えて血清および血漿の両方に存在するC末端トランケート変異体もある。方法比較に使用した試料は採取直後に凍結しており、測定の直前に解凍したので、部分的なC末端トランケーションは、見かけ上エクスビボでの保存の結果としては起こっていたのではなく、インビボで既に生じていた。
【0042】
分析物の安定性
方法比較において使用した血清試料のサブセットを22℃で種々の期間保存し、その後3つのアッセイで測定した。mAb 423/F10/mc抗PATV17アッセイを使用することにより、22℃で1日の保存後既に、回収率が大幅に低下した。mAb 423/F10のエピトープはプレプロバソプレッシンのアミノ酸位置164を含む。これに対し、pc抗PLAY17/mc抗PATV17またはmAb 429/F4/mc抗PATV17アッセイのいずれかを使用した場合、分析物ははるかに安定であると思われた。pc抗PLAY17およびmAb 429/F4のエピトープはプレプロバソプレッシンのアミノ酸位置161〜164を含まない。
【0043】
配列
配列番号:1(プレプロバソプレッシン)
10 20 30
MPDTMLPACF LCLLAFSSAC YFQNCPRGCK
40 50 60
RAMSDLELRQ CLPCGPGGKG RCFCPSICCA
70 80 90
DELCCFVGTA EALRCQEENY LPSPCQSGQK
100 110 120
ACGSGGRCAA FGVCCNDESC VTEPECREGF
130 140 150
HRRARASDRS NATQLDGPAG ALLLRLVQLA
160
GAPEPFEPAQ PDAY
配列番号:2(コペプチン)
ASDRSNATQLDGPACALLLRLVQLAGAPEPFEPAQPDAY
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置126〜164を示す)
配列番号:3(ペプチドPAY14)
CAPEPFEPAQPDAY
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置152〜164プラスN末端システインを示す)
配列番号:4(ペプチドPAY16)
CAGAPEPFEPAQPDAY
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置150〜164プラスN末端システインを示す)
配列番号:5(ペプチドPAY33)
ATQLDGPAGALLLRLVQLAGAPEPFEPAQPDAY
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置132〜164を示す)
配列番号:6(ペプチドP146〜164)
LVQLAGAPEPFEPAQPDAY
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜164を示す)
配列番号:7(ペプチドP146〜163)
LVQLAGAPEPFEPAQPDA
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜163を示す)
配列番号:8(ペプチドP146〜162)
LVQLAGAPEPFEPAQPD
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜162を示す)
配列番号:9(ペプチドP146〜161)
LVQLAGAPEPFEPAQP
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜161を示す)
配列番号:10(ペプチドP146〜160)
LVQLAGAPEPFEPAQ
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜160を示す)
配列番号:11(ペプチドP146〜159)
LVQLAGAPEPFEPA
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜159を示す)
配列番号:12(ペプチドP146〜158)
LVQLAGAPEPFEP
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜158を示す)
配列番号:13(ペプチドP146〜157)
LVQLAGAPEPFE
(プレプロバソプレッシンのアミノ酸位置146〜157を示す)
【0044】
文献
1.Kluge M,Riedl S,Erhart−Hofmann B,Hartmann J,Waldhauser F.Improved extraction procedure and RIA for determination of arginine−8−vasopressin in plasma:role of premeas−urement sample treatment and reference values in children.Clin Chem 1999;45:98−103.
2.Preibisz JJ,Sealey JE,Laragh JH,Cody RJ,Weksler BB.Plasma and platelet vasopressin in essential hypertension and congestive heart failure.Hypertension 1983;5:11 29−38.
3.Robertson CL,Mahr EA,Athar S,Sinha T.Development and clinical application of a new method for the radioimmunoassay of arginine vasopressin in human plasma.J Clin Invest 1973;52:2340−52.
4.Morgenthaler NC,Struck J,Alonso C,Bergmann A.Assay for the measurement of co−peptin,a stable peptide derived from the precursor of vasopressin.Clin Chem 2006;52:112−9.
5.Morgenthaler NC,Struck J,Jochberger S,Dunser MW.Copeptin:clinical use of a new bio−marker.Trends Endocrinol Metab 2008;19:43−9.
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