【文献】
GENEVIEVE C. VAN DE BITTNER,PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES,2010年12月14日,V107 N50,P21316-21321
【文献】
GOMI KEIKO,JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,米国,AMERICAN SOCIETY FOR BIOCHEMISTRY AND MOLECULAR BIOLOGY,2001年 9月28日,V276 N39,P36508-36513
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、過酸化水素の検出に有用な化合物、及びそれを用いる方法を提供する。
【0016】
定義
本明細書で用いられる以下の用語及び表現は、以下に表示された意味を有する。本発明の化合物が不斉置換された炭素原子を含み、光学活性又はラセミ体の形態で単離され得るとされる。ラセミ体の形態の分割又は光学活性のある出発原料からの合成などによる光学活性形態を調製する方法は、当業者に知られている。全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体の形態及び全ての幾何異性体が、本発明の一部をなす。
【0017】
ラジカル、置換基及び範囲について以下に列挙された具体的な値は例示に過ぎず、それらはラジカル及び置換基についての他の定義された値、又は定義された範囲内の他の値を排除するものではない。
【0018】
本明細書で用いられる用語「置換された」は、示された原子の通常の原子価を超えていないこと、及び置換基が安定した化合物をもたらすことを前提に、基上の1個以上(例えば、1、2、3、4、又は5個、幾つかの実施形態において1、2又は3個、他の実施形態において1又は2個)の水素が、「置換された」を用いる表現において、示された基(複数可)の選択物又は当業者に公知の適切な基で置き換えられていることを示すものとする。適切な示された基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、複素環スルフィニル、複素環スルホニル、ホスファート、スルファート、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシル(アルキル)アミン、及びシアノが挙げられる。加えて、適切な示された基としては、例えば、−X、−R、−O
-、−OR、−SR、−S
-、−NR
2、−NR
3、=NR、−CX
3、−CN、−OCN、−SCN、−N=C=O、−NCS、−NO、−NO
2、=N
2、−N
3、NC(=O)R、−C(=O)R、−C(=O)NRR −S(=O)
2O
-、−S(=O)
2OH、−S(=O)
2R、−OS(=O)
2OR、−S(=O)
2NR、−S(=O)R、−OP(=O)O
2RR、−P(=O)O
2RR −P(=O)(O−)
2、−P(=O)(OH)
2、−C(=O)R、−C(=O)X、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)O、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NRR、−C(S)NRR、−C(NR)NRRを挙げることができ、ここで、各Xは独立して、ハロゲン(「ハロ」)、すなわちF、Cl、Br、又はIであり、各Rは独立して、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、保護基又はプロドラッグ部分である。当業者によって容易に理解される通り、置換基がオキソ(=O)又はチオキソ(=S)などである場合、置換された原子上の2個の水素原子が置き換えられる。
【0019】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、例えば、1〜30個の炭素原子、多くの場合1〜12個又は1〜約6個の炭素原子を有する分枝状、非分枝状、又は環状炭化水素を指す。例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−ブチル、2−メチル−2−プロピル(t−ブチル)、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2−メチル−2−ブチル、3−メチル−2−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−1−ブチル、1−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル,2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3−メチル−3−ペンチル、2−メチル−3−ペンチル、2,3−ジメチル−2−ブチル、3,3−ジメチル−2−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどが挙げられる。アルキルは、非置換であっても、又は置換されていてもよい。アルキルは、場合により部分的又は完全に不飽和とすることができる。それゆえ、アルキル基の列挙は、アルケニル基及びアルキニル基の両方を含む。先に記載及び例示された通り、アルキルは、一価炭化水素ラジカルとすることができ、又は二価炭化水素ラジカル(即ち、アルキレン)とすることができる。
【0020】
用語「アルケニル」は、モノラジカル分枝状又は非分枝状の部分的に不飽和の炭化水素鎖(即ち、炭素−炭素sp
2二重結合)を指す。一実施形態において、アルケニル基は、2〜10個の炭素原子、又は2〜6個の炭素原子を有することができる。別の実施形態において、アルケニル基は、2〜4個の炭素原子を有する。例としては、限定するものではないが、エチレン又はビニル、アリル、シクロペンテニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。アルケニルは、非置換又は置換され得る。
【0021】
用語「アルキニル」は、完全な不飽和の点を有する、モノラジカル分枝状又は非分枝状炭化水素鎖(即ち、炭素−炭素sp三重結合)を指す。一実施形態において、アルキニル基は、2〜10個の炭素原子、又は2〜6個の炭素原子を有することができる。別の実施形態において、アルキニル基は、2〜4個の炭素原子を有することができる。この用語は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、1−オクチニルなどの基により例示される。アルキニルは、非置換又は置換され得る。
【0022】
用語「シクロアルキル」は、単環式又は多環式の縮合環を有する3〜10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。このようなシクロアルキル基は、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単環式構造、又はアダマンタニルなどの多環式構造を含む。シクロアルキルは、非置換又は置換され得る。シクロアルキル基は、一価又は二価とすることができ、上述の通り、アルキル基と、場合により置換され得る。シクロアルキル基は、場合により1つ以上の不飽和の部位を含むことができ、例えばシクロアルキル基は、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエンなどの1つ以上の炭素−炭素二重結合を含むことができる。
【0023】
用語「アルコキシ」は、基アルキル−O−(ここで、アルキルは、本明細書に定義された通りである)を指す。一実施形態において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペンタオキシ(pentoxy)、n−ヘキサオキシ(hexoxy)、1,2−ジメチルブトキシなどが挙げられる。アルコキシは、非置換又は置換され得る。
【0024】
本明細書で用いられる「アリール」又は「Ar」は、親芳香族環系の単一の炭素原子から1つの水素原子を除去することにより得られる芳香族炭化水素基を指す。ラジカルは、親環系の飽和又は不飽和炭素原子の位置に存在することができる。アリール基は、6〜30個の炭素原子を有することができる。アリール基は、単環(例えば、フェニル)又は多環式縮合(縮合)環を有することができ、ここで少なくとも1つの環は、芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、又はアントリル)である。典型的なアリール基としては、限定するものではないが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから得られるラジカルが挙げられる。アリールは、アルキル基で上述した通り、非置換又は場合により置換され得る。
【0025】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。同様に、用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0026】
用語「ハロアルキル」は、同一であっても、又は異なっていてもよい本明細書に定義された1個以上のハロ基により置換されている、本明細書に定義されたアルキルを指す。一実施形態において、ハロアルキルは、1、2、3、4又は5個のハロ基で置換されることができる。別の実施形態において、ハロアルキルは、1、2又は3個のハロ基で置換されることができる。また、用語ハロアルキルは、ペルフルオロアルキル基をも含む。代表的なハロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、3−フルオロドデシル、12,12,12−トリフルオロドデシル、2−ブロモオクチル、3−ブロモ−6−クロロヘプチル、1H,1H−ペルフルオロオクチルなどが挙げられる。ハロアルキルは、アルキル基で上述した通り、場合により置換され得る。
【0027】
用語「ヘテロアリール」は、1、2又は3個の芳香族環を含有し、芳香族環内に少なくとも1個の窒素、酸素、又は硫黄原子を含有する、単環式、二環式、又は三環式環系として本明細書に定義され、非置換であってもよく、又は「置換された」との定義で上述した通り、例えば、1個以上、特に1〜3個の置換基で置換され得る。典型的なヘテロアリール基は、1個以上のヘテロ原子に加えて、2〜20個の炭素原子を含む。ヘテロアリール基の例としては、限定するものではないが、2H−ピロリル、3H−インドリル、4H−キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β−カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル(imidizolyl)、インダゾリル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリル、及びキサンテニルが挙げられる。一実施形態において、用語「ヘテロアリール」は、炭素を含有する5又は6個の環原子と、非過酸化物の酸素、硫黄及びN(Z)(ここで、Zは、存在しないか、又はH、O、アルキル、アリールもしくは(C
1−C
6)アルキルアリールである)から独立して選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子と、を含む単環式芳香族環を意味する。別の実施形態において、ヘテロアリールは、それから得られる約8〜10個の環原子のオルト縮合二環式複素環、特にベンゾ誘導体、又はそれにプロピレンジラジカル、トリメチレンジラジカルもしくはテトラメチレンジラジカルを縮合させることにより得られるものを意味する。
【0028】
用語「複素環」は、酸素、窒素及び硫黄の群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、用語「置換された」の下で本明細書に定義された1個以上の基で場合により置換された、飽和又は部分的に不飽和の環系を指す。複素環は、1個以上のヘテロ原子を含有する単環式、二環式、又は三環式の基とすることができる。複素環基は、環に付着されたオキソ(=O)基又はチオキソ(=S)基も含有することができる。複素環基の非限定的な例としては、1,3−ジヒドロベンゾフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,4−ジチアン、2H−ピラン、2−ピラゾリン、4H−ピラン、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、モルホリン、ピペラジニル、ピペリジン、ピペリジル、ピラゾリジン、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジン、ピロリン、キヌクリジン、及びチオモルホリンが挙げられる。
【0029】
用語「複素環」は、限定ではなく例として、Paquette, Leo A.; Principles of Modern Heterocyclic Chemistry(W.A. Benjamin、ニューヨーク、1968年)、特に1、3、4、6、7及び9章、The Chemistry of Heterocyclic Compounds、「A Series of Monographs」(John Wiley & Sons、ニューヨーク、1950年から現在)の特に13、14、16、19及び28巻、ならびにJ. Am. Chem. Soc. 1960, 82, 5566中に記載される複素環のモノラジカルを含むことができる。一実施形態において、「複素環」は、本明細書に定義される「炭素環」を含み、ここでは1個以上(例えば1、2、3又は4個)の炭素原子は、ヘテロ原子(例えば、O、N、又はS)で置き換えられている。
【0030】
複素環の例としては、限定ではなく例として、ジヒドロピリジル(dihydroypyridyl)、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル(phenoxathinyl)、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、1H−インダゾリ(1H−indazoly)、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、オキシンドリル、ベンゾオキサゾリニル、イサチノイル、及びビステトラヒドロフラニルが挙げられる。
【0031】
限定ではなく例として、炭素結合複素環は、ピリジンの2、3、4、5もしくは6位、ピリダジンの3、4、5もしくは6位、ピリミジンの2、4、5もしくは6位、ピラジンの2、3、5もしくは6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールもしくはテトラヒドロピロールの2、3、4もしくは5位、オキサゾール、イミダゾールもしくはチアゾールの2、4もしくは5位、イソオキサゾール、ピラゾールもしくはイソチアゾールの3、4もしくは5位、アジリジンの2もしくは3位、アゼチジンの2、3もしくは4位、キノリンの2、3、4、5、6、7もしくは8位、又はイソキノリンの1、3、4、5、6、7もしくは8位で結合されている。炭素結合複素環としては、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、5−ピリジル、6−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、6−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−ピラジニル、5−ピラジニル、6−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリルなどが挙げられる。
【0032】
限定ではなく例として、窒素結合複素環は、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、及びカルバゾール又はβ−カルボリンの9位で結合され得る。一実施形態において、窒素結合複素環としては、1−アジリジル、1−アゼテジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、及び1−ピペリジニルが挙げられる。
【0033】
用語「炭素環」は、単環として3〜8個の炭素原子、二環として7〜12個の炭素原子、及び多環として最大約30個の炭素原子を有する飽和、不飽和又は芳香族環を指す。単環式炭素環は、典型的には3〜6個の環原子、更により典型的には5又は6個の環原子を有する。二環式炭素環は、例えばビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]もしくは[6,6]系として配列された7〜12個の環原子、又はビシクロ[5,6]もしくは[6,6]系として配列された9もしくは10個の環原子を有する。炭素環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキサ−1−エニル、1−シクロヘキサ−2−エニル、1−シクロヘキサ−3−エニル、フェニル、スピリル及びナフチルが挙げられる。炭素環は、アルキル基について上述した通り場合により置換され得る。
【0034】
用語「アルカノイル」又は「アルキルカルボニル」は、−C(=O)Rを指し、ここで、Rは先に定義されたアルキル基である。
【0035】
用語「アシルオキシ」又は「アルキルカルボキシ」は、−O−C(=O)Rを指し、ここで、Rは、上述のアルキル基である。アシルオキシ基の例としては、限定するものではないが、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、及びペンタノイルオキシが挙げられる。上述のいずれかのアルキル基を用いて、アシルオキシ基を形成させることができる。
【0036】
用語「アルコキシカルボニル」は、−C(=O)OR(又は「COOR」)を指し、ここで、Rは、上述のアルキル基である。
【0037】
用語「アミノ」は、−NH
2を指す。アミノ基は、用語「置換された」について本明細書に定義された通り、場合により置換され得る。
【0038】
用語「アルキルアミノ」は−NR
2を指し、ここで、少なくとも1個のRは、アルキルであり、第2のRは、アルキル又は水素である。
【0039】
用語「アシルアミノ」は、N(R)C(=O)Rを指し、ここで、各Rは独立して、水素、アルキル又はアリールである。
【0040】
用語「ヒドロキシアルキル」は、−OHにより置換されたアルキル基を指す。
【0041】
用語「アルキルカルボン酸」は、−COOHにより置換されたアルキル基を指す。
【0042】
用語「中断される」は、示された原子それぞれの通常の原子価を超えず、中断により安定した化合物が得られることを前提として、用語「中断される」を使用する表現において参照される特定の炭素鎖の2つの隣接した炭素原子(及びそれらが付着されている水素原子(例えば、メチル(CH
3)、メチレン(CH
2)又はメチン(CH)))の間に別の基が挿入されることを示す。炭素鎖を中断し得る適切な基としては、例えば、1個以上の非過酸化物オキシ(−O−)、チオ(−S−)、イミノ(−N(H)−)、メチレンジオキシ(−OCH
2O−)、カルボニル(−C(=O)−)、カルボキシ(−C(=O)O−)、カルボニルジオキシ(−OC(=O)O−)、カルボキシラト(−OC(=O)−)、イミン(C=NH)、スルフィニル(SO)及びスルホニル(SO
2)が挙げられる。アルキル基は、前述の適切な基の1個以上(例えば、1、2、3、4、5又は約6)によって中断することができる。中断の部位は、アルキル基の炭素原子と、アルキル基が付着されている炭素原子との間とすることができる。
【0043】
用語「リンカー」は、1〜4個のO原子、N原子、S原子、又は場合により置換されたアリール、ヘテロアリールもしくは複素環基によって場合により中断された(C
1−C
12)アルキルジラジカルを指す。
【0044】
他に明記されていない限り用語「ルシフェラーゼ」は、天然由来、組換え体、又は突然変異体のルシフェラーゼを指す。天然由来の場合のルシフェラーゼは、生物体の当業者により容易に得ることができる。ルシフェラーゼが、天然由来のもの、又は組換え体もしくは突然変異体ルシフェラーゼ、即ち、天然由来ルシフェラーゼのルシフェラーゼ−ルシフェリン反応における活性を保持するものである場合、それは、ルシフェラーゼをコードする核酸を発現するように形質転換された細菌、酵母、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞などの培養物から容易に得ることができる。更に、組換え体又は突然変異体ルシフェラーゼは、ルシフェラーゼをコードする核酸を用いて、インビトロの無細胞系から得ることができる。ルシフェラーゼは、ウィスコンシン州マディソン所在のPromega Corporationから入手できる。
【0045】
本明細書で用いられる「バイオルミネッセンス」又は「ルミネッセンス」は、酵素と光を発生する基質との間の反応の結果生じる光である。このような酵素(バイオルミネッセンス酵素)の例としては、ホタルルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリス(Photinus pyralis)又はフォチヌス・ペンスリバニカ(Photinus pennslyvanica)、コメツキムシルシフェラーゼ、ウミホタルルシフェラーゼなどが挙げられる。
【0046】
「ルシフェラーゼ反応混合物」は、ルシフェラーゼ酵素と、ルシフェラーゼ酵素に光シグナルを発生させる物質とを含有する。発光シグナルを発生させるのに必要となる物質、ならびに必要となる物質の特定の濃度及び/又は量は、使用するルシフェラーゼ酵素及び実施するルシフェラーゼ系アッセイの種類に応じて変動する。一般にホタルルシフェラーゼの場合、これらの物質としては、ATP、硫酸マグネシウムなどのマグネシウム(Mg
2+)塩、例えば熱安定性ホタルルシフェラーゼといったホタルルシフェラーゼ酵素及びルシフェリンがホタルルシフェラーゼの基質として用いられる場合に光を発生させることが可能なルシフェリンを挙げることができる。多くの場合、適切なpHで反応を保持するための緩衝液、ルシフェラーゼ活性の保持を助けるPRIONEX又はウシ血清アルブミン(BSA)などの添加剤、還元剤、洗浄剤、エステラーゼ、塩、アミノ酸、例えばD−システインなどをはじめとする他の物質が、溶液に添加される。例示的なルシフェラーゼ反応混合物は、熱安定性ホタルルシフェラーゼ、MgSO
4、ATP、Tergitol、NP−9、及びトリシンを含有する。他の代替的ルシフェラーゼ反応混合物は、例えばNanoLucルシフェラーゼといったオプロフォラス(Oplophorus)ルシフェラーゼ、例えばTris−Cl又はTris塩基といった緩衝液、場合により例えばTCEPといったバックグランド還元剤(background reduction agent)、を含む。
【0047】
化合物
一態様において、本発明は、式(I)
【化8】
の化合物であって、
式中、
R
1が、ボロン酸又は
ボロン酸エステルであり、
各R
4、R
5及びR
7が独立して、H、ハロ、メチル、及びトリフルオロメチルから選択され、
L
1が、リンカーである、
化合物を提供する。
【0048】
特定の実施形態において、R
1は、
ボロン酸エステルである。例えばR
1は、−B(OR
6)
2(ここで、各R
6は独立して、H及びC
1-4アルキルから選択される)とすることができる。
【0049】
R
1は、
【化9】
であって、式中、
各R
12及びR
13が独立して、H、C
1-4アルキル、CF
3、フェニル、又は置換されたフェニルから選択されてもよい。あるいはR
12及びR
13が共に、3〜7個の炭素を有するアルキル環をなすことができ、又は縮合6員芳香族環により置き換えられ得る。
【0050】
加えてR
1は、
【化10】
であって、式中、各R
14、R
15、及びR
16が独立して、H、C
1-4アルキル、CF
3、フェニル及び置換されたフェニルから選択されてもよい。あるいは両方のR
15が共に、3〜7個の炭素を有するアルキル環を形成することができ、R
14及びR
15又はR
15及びR
16が共に、3〜7個の炭素原子を有するアルキル環をなすことができ、又は6員芳香族環により置き換えられ得る。
【0051】
特定の実施形態において、L
1は、
【化11】
であり、Aが、−C
6(R
10)
4−又は(CR
11=CR
11)
n−又は直接結合又はO−(C
6(R
10)
4−又はS−C
6(R
10)
4−又はNR’−C
6(R
10)
4であり、R’が、H又はC
1-4アルキルであり、各R
3が独立して、ハロ、H、C
1-4アルキル、C
1-4ヒドロキシアルキル、又はC
1-4アルキルカルボン酸であり、各R
10が独立して、H、ハロ、CH
3、OCH
3、又はNO
2であり、各R
11が独立して、H又はCH
3であり、nが、1又は2であり、Xが、−O−、
【化12】
、
【化13】
、
及び
【化14】
から選択される。
【0052】
幾つかの実施形態において、−L
1−R
1は、
【化15】
である。更なる実施形態において、−L
1−R
1は、
【化16】
であり、Aが、−O−(C
6H
4)−であり、Xは、−O−である。他の実施形態において、−L
1−R
1は、
【化17】
であり、Aは、直接結合であり、Xは、−O−である。
【0053】
特定の実施形態において、−L
1−R
1は、
【化18】
であり、Aは、−O−(C
6H
4)−であり、Xは、−NHCO
2−である。特定の実施形態において、−L
1−R
1は、
【化19】
であり、Aは、−O−(C
6H
4)−であり、Xは、−NHC(O)CH
2−である。
【0055】
別の実施形態において、本発明は、式(II)
【化21】
又は式(III)
【化22】
の化合物であって、
式中、
R
11が、ボロン酸又は
ボロン酸エステルであり、
R
2が、−(CH
2)
n−T又はC
1-5アルキルであり、
R
6が、−H、−OH、−NH
2、−OC(O)R又はOCH
2OC(O)Rからなる群より選択され、
R
8が、
【化23】
、
【化24】
、H又は低級シクロアルキルからなる群より選択され、
ここでR
3及びR
4が、両者ともH又は両者ともC
1-2アルキルであり、
nが、0〜3であり、
各Rは独立して、C
1-7アルキルであり、
Tが、アリール、ヘテロアリール、置換されたアリール、置換されたヘテロアリール又はシクロアルキルであり、
L
2又はL
3が、リンカーであり、
破線の結合が、飽和又は不飽和となり得る任意の環の存在を示す、
化合物を提供する。
【0056】
特定の実施形態において、R
11は
ボロン酸エステルである。例えばR
11は、−B(OR
7)
2であって、式中、ここで、各R
7は独立して、H及びC
1-4アルキルから選択されてもよい。
【0057】
R
11は、
【化25】
であって、各R
12及びR
13は独立して、H、C
1-4アルキル、CF
3、フェニル、又は置換されたフェニルから選択されてもよい。あるいはR
12及びR
13は共に、3〜7個の炭素を有するアルキル環をなすことができ、又は縮合6員芳香族環により置き換えられ得る。
【0058】
加えてR
11は、
【化26】
であって、各R
14、R
15、及びR
16は独立して、H、C
1-4アルキル、CF
3、フェニル及び置換されたフェニルから選択されてもよい。あるいは両方のR
15が共に、3〜7個の炭素を有するアルキル環を形成することができ、R
14及びR
15又はR
15及びR
16が共に、3〜7個の炭素原子を有するアルキル環をなすことができ、又は6員芳香族環により置き換えられ得る。
【0059】
特定の実施形態において、L
2は、
【化27】
であり、Aが、−C
6(R
10)
4−又は(CR
21=CR
21)
n−又はO−C
6(R
10)
4−又はS−C
6(R
10)
4−又はNR’−C
6(R
10)
4−又は直接結合であり、R’は、H又はC
1-4アルキルであり、各R
3は独立して、ハロ、H、C
1-4アルキル、C
1-4ヒドロキシアルキル、又はC
1-4アルキルカルボン酸であり、各R
10は独立して、H、ハロ、CH
3、OCH
3、又はNO
2であり、各R
21は独立して、H又はCH
3であり、nは、1又は2であり、Xは、直接結合、−C(O)−、及びC(O)NR
22(ここで、R
22は、H又はC
1-4アルキルである)から選択される。
【0060】
幾つかの実施形態において、−L
2−R
11は、
【化28】
である。
【0061】
特定の実施形態において、L
3は、
【化29】
であって、Aは、−C
6(R
10)
4−又は(CR
21=CR
21)
n−であり、各R
3は独立して、ハロ、H、C
1-4アルキル、C
1-4ヒドロキシアルキル、又はC
1-4アルキルカルボン酸であり、各R
10は独立して、H、ハロ、CH
3、OCH
3、又はNO
2であり、各R
21は独立して、H又はCH
3であり、nは、1又は2である。
【0062】
特定の実施形態において、−L
3−R
11は、
【化30】
である。
【0063】
幾つかの実施形態において、R
2は、
【化31】
又はC
2-5アルキルであり、各Xは独立して、−S−、−O−又はNH−であり、Zは、−CH−又はN−であり:Yは、−H又はOHであり、Wは、−NH
2、ハロ、−OH、−NHC(O)R、−CO
2Rであり、Rは、C
1-7アルキルである。
【0064】
幾つかの実施形態において、R
2は、
【化32】
であり、Xは、O又はSである。他の実施形態において、R
2は、C
2-5直鎖状アルキルである。特定の実施形態において、R
8は、
【化33】
、低級シクロアルキル又はHであって、R
3及びR
4は、両者ともH又はC
1-2アルキルである。別の実施形態において、R
8は、ベンジルである。
【0065】
式(II)で示される適切な化合物は、
【化34】
を含む。
【0066】
化合物の合成
本明細書に記載された化合物は、様々な方法を用いて合成してもよい。例示的な合成を、以下のスキーム1及び2に概括する。
【化35】
スキーム1
【0067】
芳香族ベンジル−6−O−2−シアノベンゾチアゾールの
ボロン酸ピナコールの合成を、2段階で完遂することができる。典型的には、
ボロン酸ピナコールエステル4−芳香族メチルアルコールを、Ph
3P及びCBr
4を用いて
ボロン酸ピナコール4−芳香族臭化メチルに変換し、その後、K
2CO
3の存在下で2−シアノ−6−ヒドロキシベンゾチアゾールと反応させて、所望の化合物を得る。アリル−6−O−2−シアノベンゾチアゾールの
ボロン酸ピナコールの合成を、6−ヒドロキシ−2−シアノベンゾチアゾールを
ボロン酸ピナコールアリルヨージドで直接アルキル化することにより完了させることができる(スキーム1)。
【化36】
スキーム2
【0068】
典型的には
ボロン酸ピナコール芳香族メチルアルコールを、ピリジンの存在下、トリホスゲンを用いてそのカルボノクロリダートに変換し、その後、6−アミノ−2−シアノベンゾチアゾールと反応させて目的の分子を得る。
【0069】
ボロン酸セレンテラジン誘導体を、一般に、セレンテラジンを
ボロン酸ピナコール4−芳香族メチルブロミドでアルキル化してO−アルキル化された
ボロン酸セレンテラジン及びC−アルキル化された
ボロン酸セレンテラジンを得ることにより、合成してもよい(スキーム3)。
【化37】
スキーム3
【0070】
当業者に認識され得る通り、本明細書の式で示される化合物を合成する代替的な方法は、当業者に明白であろう。加えて様々な合成ステップを代替的な配列又は順序で実施して、所望の化合物を得てもよい。本明細書に記載された化合物を合成する際に有用となる合成化学転位及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当業者に知られており、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2d. Ed., John Wiley and Sons (1991); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser‘s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons(1994);及びL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons(1995)、及びそれらの後の版に記載されるものを含む。
【0071】
使用方法
一態様において、本発明は、過酸化水素を検出する方法を提供する。一実施形態において、試料を本明細書に記載された式(I)、(II)又は(III)で示される化合物と接触させて、第1の混合物を形成させる。第1の混合物の少なくとも一部を、ルシフェラーゼ反応混合物及びD−システインと接触させる。バイオルミネッセンスを検出し、それにより過酸化水素の存在を検出する。
【0072】
本発明の別の実施形態において、細胞を本明細書に記載された式(I)、(II)又は(III)で示される化合物と接触させ、ルシフェラーゼ反応混合物を接触させた細胞に添加し、バイオルミネッセンスを検出する。特定の実施形態において、D−ルシフェリンも、接触させた細胞に添加する。
【0073】
別の態様において、本発明は、試料、細胞又は動物中の過酸化水素の存在又は量に及ぼす検査化合物又は検査条件の影響を測定する方法を提供する。一実施形態において、試料、細胞又は動物を検査化合物又は検査条件と接触させた後、本明細書に記載された式(I)、(II)又は(III)で示される化合物及びルシフェラーゼ反応混合物と接触させる。試料又は細胞中の過酸化水素の存在又は量に及ぼす検査化合物又は検査条件の影響を、バイオルミネッセンスを検出することにより決定する。適宜、検査条件が、温度の変化、酸素張力、又はイオン強度もしくは浸透圧の変化であってもよい。
【0074】
試薬は、連続して、又は同時に添加してもよい。試薬を同時に添加する場合、単一溶液又は複数の溶液中に存在してもよい。
【0075】
望ましい場合、シグナルを定量してもよい。シグナルを、標準曲線と比較してもよい。このシグナル強度は、試料中の過酸化水素の量の存在の関数である。シグナルを、対照と比較してもよい。
【0076】
本発明は、培地中の細胞、又は動物、例えば生存する動物体内の細胞の細胞増殖の際の過酸化水素の存在又は量を測定してもよい。研究の目的のために、動物の細胞中での測定の場合、本明細書に記載された式(I)、(II)又は(III)で示される化合物を注射などで動物に投与し、又は動物により摂取される水などの水溶液もしくは食物に添加する。この化合物の、ルシフェラーゼの基質となる産物への変換を、動物の細胞中で発現されるルシフェラーゼにより媒介されるバイオルミネッセンスにより、
具体的には、注射などで動物に投与されるルシフェラーゼによるトランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、及びマーモセットザル)の全身画像により、又は例えば血液、血漿、尿など、もしくは組織試料といった生理学的液体を採取して、それらをルシフェラーゼ反応混合物と混和することにより、検出することができる。
【0077】
細胞は、真核細胞、例えば酵母、トリ、植物、昆虫、又は限定するものではないがヒト、サル、ネズミ、イヌ、ウシ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ヤギもしくはブタの細胞をはじめとする哺乳類細胞、あるいは原核細胞、あるいは2種以上の異なる生物体の細胞、あるいは細胞溶解物又はその上清であってもよい。この細胞は、組み換え技術により遺伝子改変されていてもよい。特定の態様において、細胞は、例えばトランスジェニック動物といった動物、又は例えば血液、血漿、尿、粘膜分泌物といった生理学的液体などであってもよい。培地を採取することができるため、細胞の破壊は必要ない。
【0078】
加えて、本明細書に記載された生物発光アッセイのいずれでも、限定するものではないがルシフェラーゼの不活化を阻害もしくは予防するもの、さもなければバイオルミネッセンスシグナルを延長もしくは増強するものをはじめとする他の試薬を反応混合物に添加してもよい。
【0079】
発生したバイオルミネッセンスを、対照と比較してもよい。適切な対照は、本化合物と過酸化水素の間の反応、又はルシフェラーゼ反応のいずれかの必須成分又は条件の1つ以上を欠く。このような成分又は条件としては、限定するものではないが、補因子、酵素、温度及び阻害剤が挙げられる。
【0080】
適切な基質としては、限定するものではないが、本明細書に記載された式(I)又は(II)で示される化合物が挙げられる。
【0081】
特定の基質が、本発明の様々な実施形態における使用に特に有利となり得る。例えば特定の基質は、インビトロで使用するのにより適する場合があってもよく、他の基質がインビボで使用するのにより適する場合があってもよい。当業者により認識される通り、全ての
ボロン酸塩が、本発明の方法の使用に適するわけではない。例えば化合物における小さな変動が、過酸化水素への反応性又は特定のアッセイ条件での作業能力に影響を及ぼす可能性がある。
【0082】
本発明を、以下の非限定的な実施例において更に記載する。
【0083】
実施例
実施例1.6−((4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)ベンゾ−[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4472)
【化38】
2−(4−(ブロモメチル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(1203−32)の合成。4−ヒドロキシメチルフェニルボロン酸ピナコールエステル(1.08g、4.61mmol)を、トリフェニルホスフィン(2.42g、9.23mmol)と共にTHF(20ml)に溶解した。この反応混合物を氷水浴で冷却して、四臭化炭素(3.06g、9.23mmol)少しずつ添加した。室温で4時間撹拌した後、反応混合物を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。この有機層をひとまとめにして、硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過の後、溶媒を蒸発させて、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、生成物を白色固体として得た(1.72g、92%)。1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 7.62 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 4.58 (d, 2H), 1.34 (s, 9H); MS (ESI) m/z 297.0。
【0084】
6−((4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)ベンゾ−[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4472)の合成。アセトニトリル中の6−ヒドロキシベンゾチアゾール(0.5g、2.84mmol)と、炭酸カリウム(0.78g、5.68mmol)と、ヨウ化カリウム(0.94g、5.68mmol)との混合物を、1時間加熱還流した。2−(4−(ブロモメチル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(0.93g、3.12mmol)を添加して、この反応混合物を一晩還流した。冷却した後、懸濁液を酢酸エチル/水で抽出して、残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、生成物を白色固体として得た(0.8g、72%)。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 8.11 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.81 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.47 (m, 3H), 7.34 (dd, J = 9.0 Hz, 1H), 5.22 (s, 2H), 1.35 (s, 9H); MS (ESI) m/z 393.2。
【0085】
実施例2.(4−(((2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イル)オキシ)メチル)フェニル)ボロン酸(PBI4452)
【化39】
6−((4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4472)(0.26g、0.66mmol)を含むアセトン(40ml)溶液に、水(40ml)中の過ヨウ素酸ナトリウム(0.43g、1.99mmol)及び酢酸アンモニウム(0.11g、1.33mmol)の懸濁液を、室温で添加した。濃厚な懸濁液を、室温で18時間撹拌した。全ての溶媒を蒸発させて、残渣をDMFに溶解した。懸濁液を遠心分離し、アセトニトリル/10%酢酸アンモニウムを用いた分取HPLCにより透明な溶液を精製して、生成物を白色結晶として得た(0.15g、72%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO, δ): 8.15 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 8.04 (s, 2H), 7.97 (d, J = 3.0Hz, 1H), 7.80 (d, J = 9.0Hz, 2H), 7.41 (m, 3H), 5.23 (s, 2H); MS (ESI) m/z 311.1。
【0086】
実施例3.6−((3−クロロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)−ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4595)
【化40】
PBI4595
この化合物を、PBI4472(実施例1)と同様の手順に従って生成した。
【0087】
実施例4.(2−クロロ−4−(((2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−イル)オキシ)メチル)フェニル)ボロン酸(PBI4470)
【化41】
PBI4470
この化合物を、PBI4452(実施例2)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, DMF, δ): 8.43 (s, 2H), 8.22 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 8.07 (m, 1H), 7.56 (m, 2H), 7.47 (m, 2H), 5.33 (s, 2H); MS (ESI) m/z 345.1
【0088】
実施例5.6−((4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ナフタレン−1−イル)メトキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4480)
【化42】
4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1−ナフトエ酸(1203−33)の合成。アセトニトリル中の4−ブロモ−1−ナフトエ酸(4.12g、16.43mmol)と、ビス(ピナコラト)ジボラン(4.38g、17.25mmol)と、フッ化セシウム(7.49g、49.28mmol)と、トリフェニルホスフィン(0.86g、3.29mmol)との混合物に、酢酸パラジウム(0.37g、1.64mmol)を添加した。この反応混合物を、一晩還流した。冷却後にCeliteでろ過し、酢酸エチル/水で抽出した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで脱水した。ろ過の後、溶媒を除去して、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、生成物を白色固体として得た(2.5g、51%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO, δ): 8.76 (m, 1H), 8.69 (m, 1H), 8.02 (m, 2H), 7.61 (m, 1H), 1.28 (s, 12H)。
【0089】
(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ナフタレン−1−イル)メタノール(1203−44)の合成。4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1−ナフトエ酸(2.5g、8.39mmol)を、無水THFに溶解した。この溶液を氷水浴で冷却した。ボラン溶液(THF中に1.00M、25ml、25mmol)を滴下した。滴下の後、この反応物を室温で4時間撹拌した。メタノール(20ml)を氷水浴中で添加して、気体が発生しなくなるまで反応物をクエンチした。溶媒を蒸発させて、残渣を酢酸エチル/水で抽出し、生成物を白色固体として得た(1.79g、75%)。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 8.80 (m, 1H), 8.10 (m, 1H), 8.04 (m, 1H), 7.57 (m, 3H), 5.18 (s, 2H), 1.43 (s, 12H)。
【0090】
2−(4−(ブロモメチル)ナフタレン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(1203−47)の合成。この化合物を、1203−32(実施例1)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 8.82 (m, 1H), 8.19 (m, 1H), 8.00 (m, 1H), 7.60 (m, 3H), 5.02 (s, 2H), 1.43 (s, 12H)。
【0091】
6−((4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ナフタレン−1−イル)メトキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4480)の合成。この化合物を、PBI4472(実施例1)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 8.85 (m, 1H), 8.11 (d, 1H), 8.06 (m, 2H), 7.09 (m, 4H), 7.38 (m, 1H), 5.35 (s, 2H), 1.42 (s, 12H); MS (ESI) m/z 443.2。
【0092】
実施例6.6−((3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4481)
【化43】
2−(4−(ブロモメチル)−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(1203−40)の合成。この化合物を、1203−44(実施例5)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 7.70 (m, 1H), 7.15 (m, 1H), 7.06 (m, 1H), 4.71 (s, 2H), 1.35 (s, 12H); MS (ESI) m/z 253.2。
【0093】
2−(4−(ブロモメチル)−2−フルオロフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(1203−45)の合成。この化合物を、1203−32(実施例1)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 7.71 (m, 1H), 7.68 (m, 1H), 7.09 (m, 1H), 4.49 (s, 2H), 1.35 (s, 12H); FNMR: 102.97; MS (ESI) m/z 315.1。
【0094】
6−((3−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4481)の合成。この化合物を、PBI4472(実施例1)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 8.12 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.77 (m, 1H), 7.45 (d, J = 3.0Hz, 1H), 7.35 (dd, J = 3.0Hz, 9.0Hz), 7.26 (m, 1H), 7.17 (m, 1H), 5.21 (s, 2H), 1.36 (s, 12H); MS (ESI) m/z 411.2。
【0095】
実施例7.6−(1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)エトキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4513)
【化44】
1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)エタノール(1203−59)の合成。4−アセチルフェニルボロン酸(3.0g、12.2mmol)を、無水エタノール(30ml)に溶解して、氷水浴で冷却した。NaBH
4(1.15g、30.5mmol)を固体として一度に添加した。室温で一晩撹拌した後、この溶液を氷水浴で冷却し、1N HCl(20ml)で処理した。その後、この混合物を酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過して真空濃縮した。得られた粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、生成物を白色固体として得た(2.98g、99%)。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 7.75 (m, 2H), 7.39 (m, 2H), 4.90 (q, J = 6.0 Hz), 1.47 (d, J = 6.0 Hz), 1.32 (s, 12H)。
【0096】
2−(4−(1−ブロモエチル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(1203−64)の合成。この化合物を、1203−32(実施例1)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 7.76 (m, 2H), 7.45 (m, 2H), 5.25 (q, J = 6.0 Hz), 2.05 (d, J = 6.0Hz), 1.32 (s, 12H); MS (ESI) m/z 311.2。
【0097】
6−(1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)エトキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4513)の合成。この化合物を、PBI4472(実施例1)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 8.03 (m, 1H), 7.76 (m, 2H), 7.44 (m, 2H), 7.28 (m, 2H), 5.43 (q, J = 6.0 Hz, 1H), 1.69 (d, J = 6.0 Hz, 3H), 1.32 (s, 12H); MS (ESI) m/z 407.2。
【0098】
実施例8.6−((3−メトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4512)
【化45】
3−メトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)安息香酸(1203−70)の合成。この化合物を、1203−33(実施例5)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, DMSO, δ): 7.74 (m, 1H), 7.66 (m, 1H), 7.57 (m, 1H), 3.90 (s, 3H), 1.35 (s, 12H); MS (ESI) m/z 277.6。
【0099】
(3−メトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メタノール(1203−79)の合成。この化合物を、1203−44(実施例5)と同様の手順に従って生成し、精製を行わずに次のステップで用いた。
【0100】
2−(4−(ブロモメチル)−2−メトキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(1203−82)の合成 この化合物は、1203−32(実施例1)と同様の手順に従って生成し、精製を行わずに次のステップで用いた。
【0101】
6−((3−メトキシ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4512)の合成。この化合物を、1203−36(実施例1)と同様の手順に従って生成した。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 8.11 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 7.35 (m, 1H), 7.04 (m, 1H), 6.98 (m, 1H), 5.20 (s, 2H), 3.84 n(s, 3H), 1.34 (s, 12H)。
【0102】
実施例9.4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル(2−シアノベンゾ[d]チアゾル−6−イル)カルバマート(PBI4579)
【化46】
トリホスゲン(0.26g、0.77mmol)及び4−ヒドロキシメチルフェニルボロン酸ピナコールエステル(0.5g、2.14mmol)を、氷水浴中でTHF(20ml)に溶解した。ピリジン(0.35ml、4.28mmol)を滴下して、薄層クロマトグラフィーで出発原料の消失が示されるまで、反応混合物を0℃で撹拌した。温度を室温にした後、この反応混合物をジクロロメタン/水で抽出した。有機層を回収して、硫酸ナトリウムで脱水した。ろ過の後、溶媒を除去して、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、生成物を白色固体として得た(0.1g、11%)。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 8.43 (m, 1H), 8.10 (m, 1H), 7.78 (m, 2H), 7.41 (m, 2H), 7.26 (m, 1H), 5.25 (s, 2H), 1.32 (s, 12H); MS (ESI) m/z 436.1。
【0103】
実施例10.
6−((4−(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボリナン−2−イル)ベンジル)オキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4578)
【化47】
トルエン(50ml)中のPBI4452(実施例2)(20mg、0.065mmol)とネオペンチルグリコール(34mg、0.32mmol)との混合物を、ディーン・スターク装置で加熱還流した。この反応物を16時間後に冷却した。トルエンを蒸発させて、残渣をフラッシュクトマトグラフィーにより精製し、生成物を白色固体として得た(10mg、41%)。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ):8.11 (d, J = 9.0Hz, 1H), 7.82 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 7.46 (m, 3H), 7.34 (dd, J = 6.0Hz, 3.0Hz, 1H), 5.20 (s, 2H), 3.78 (s, s, 4H), 1.03 (s, 6H)。
【0104】
実施例11.(E)−6−((3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アリル)オキシ)−ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(PBI4458)
【化48】
反応バイアルにテトラブチルアンモニウム2−シアノベンゾ[d]チアゾール−6−オラート(209mg、1.19mmol)、(E)−2−(3−ヨードプロパ−1−エン−1−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(386mg、1.31mmol)及び15mLの無水ジクロロメタンを充填した。バイアルを密閉し、この溶液を油浴中、80℃で一晩(〜16時間)加熱した。粗反応混合物を1gのCelite に添加して、溶媒を真空蒸発させた。溶離液として勾配を増加させる酢酸エチルを含むジクロロメタンを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより、生成物を精製した。これにより、166mgの(E)−6−((3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アリル)オキシ)−ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリルを無色油状物として得、周囲温度で静置させることにより白色固体に結晶化させた。
【0105】
実施例12.8−ベンジル−2−(フラン−2−イルメチル)−6−フェニル−3−((4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)イミダゾ[1,2−a]ピラジンの合成
【化49】
8−ベンジル−2−(フラン−2−イルメチル)−6−フェニル−3−((4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)オキシ)イミダゾ[1,2−a]ピラジン(4759)の合成。8−ベンジル−2−(フラン−2−イルメチル)−6−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オン(50mg、0.13mmol)の溶液に、2−(4−(ブロモメチル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(47mg、0.16mmol)、炭酸カリウム(27mg、0.20mmol)及びヨウ化カリウム(33mg、0.20mmol)を添加した。この反応混合物を室温で1時間撹拌し、HPLCで反応の完了が示されるまで40℃に加熱した。冷却後、この反応混合物を酢酸エチル/水で抽出した。有機層を回収し、硫酸マグネシウムで脱水した。蒸発後に、残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、生成物を黄色固体として得た(30mg、49%)。
1H NMR (300 MHz, CD
2Cl
2, δ): 7.79−7.23(m, 18H), 7.32 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 5.11 (s, 2H), 4.53 (s, 2H), 4.15 (s, 2H), 1.53(s, 12H); MS (ESI) m/z 597.41。
【0106】
データ裏付けのない実施例13.8−ベンジル−2−(フラン−2−イルメチル)−6−フェニル−2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)イミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(2H)−オンの合成
【化50】
8−ベンジル−2−(フラン−2−イルメチル)−6−フェニル−2−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)イミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(2H)−オンの合成。8−ベンジル−2−(フラン−2−イルメチル)−6−フェニルイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3(7H)−オンの溶液に、2−(4−(ブロモメチル)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、炭酸カリウム及びヨウ化カリウム(33mg、0.20mmol)を添加する。反応混合物を室温で撹拌して、HPLCが反応の完了を示すまで40℃に加熱する。
【0107】
実施例14.過酸化物での処理によるバイオルミネッセンスの発生
この実施例では、
ボロン酸ルシフェリンを過酸化水素と共にインキュベートして、ルシフェリンの生成を、ルシフェラーゼにより触媒された光反応を用いて測定した。
ボロン酸ルシフェリンを過酸化水素で処理した結果である光出力(バイオルミネッセンス)の増加は、過酸化水素との反応の結果であるルシフェリンの生成を示す。
【0108】
(KH
2PO
4(Fisher)6.8g又はK
2HPO
4(Sigma)11.4gのいずれかをNanopure水に1Mになるように溶解した)1Mリン酸塩溶液を、Nanopure水で1:5に希釈して、200mMリン酸塩溶液を生成した。pH6.87、7.41、7.73、8.04、及び9.18の200mMリン酸緩衝液を調製した。DMSO(Fluka 41641)中のPBI3048、4013、4424及び4425(
図1)の4mg/ml溶液を、固体粉末から作製した。
【0109】
2枚の96ウェル白色平底ルミノメータープレート(Promega Z3291)(「A」及び「B」と標識)に、200mMリン酸塩緩衝液(pH6.87)50μlをA1〜H2ウェルに添加し、200mMリン酸塩(pH7.41)50μlをA3〜H4ウェルに添加し、200mMリン酸塩緩衝液(pH7.73)50μlをA5〜H6ウェルに添加し、200mMリン酸塩緩衝液(pH8.04)50μlをA7〜H8ウェルに添加し、200mMリン酸塩緩衝液(pH9.18)50μlをA9〜H10ウェルに添加した。
【0110】
4mg/mlのPBI4013を含むDMSO50μlを、Nanopure水で1.25mlに希釈して、25μlをプレートAのA1〜D10ウェルに添加した。4mg/mlのPBI4424を、50μl、Nanopure水で1.25mlに希釈して、25μlをプレートAのE1〜H10に添加した。4mg/mlのPBI3048を、50μl、Nanopure水で1.25mlに希釈して、25μlをプレートBのA1〜D10に添加した。4mg/mlのPBI4425を50μl、Nanopure水で1.25mlに希釈して、25μlをプレートBのE1〜H10に添加した。Nanopure水 25μlを、両方のプレートのA及びE行に添加した。Nanopure水 17μlを、両方のプレートのB及びF行に添加して、Nanopure水 8μlを、両方のプレートのC及びG行に添加した。
【0111】
過酸化水素溶液(30%過酸化水素、Sigma H1009−5ml)を、Nanopure水で60μM過酸化水素に希釈し、60μM過酸化水素 25μlを両方のプレートのD及びH行に添加し、60μM過酸化水素 17μlを両方のプレートのC及びG行に添加し、60μM過酸化水素 8μlを両方のプレートのB及びF行に添加した。その後、A及びBのプレートの両方を、70分間ゆっくりと混合した。
【0112】
Reconstition Buffer with Esterase(Promega V144B)のボトルを解凍して、Luciferin Detectin Reagent(Promega V859B)を再構成して、再構成されたLuciferin Detectin Reagent(「LDR」)を作製するために使用した。1M HEPES緩衝液(pH7.5)15mlを、25mlのLDRと混合して、80μlを2枚の新しいルミノメータープレート(「R1」及び「R2」)のA1〜H10ウェルに添加した。
【0113】
インキュベーションに続いて、プレートAのA1〜H10ウェルの内容物20μlを、プレートR1と同一のウェルに移して、プレートBのA1〜H10の20μlをプレートR2と同一のウェルに移した。その後、プレートR1及びR2を、室温で15分間インキュベートして、バイオルミネッセンスをGloMax(登録商標)ルミノメーター(Promega Corp)で測定した。
【0114】
二重測定のウェルから得たバイオルミネッセンスを平均して、過酸化物を含有する試料からの平均相対発光量(RLU)を、同一のpHでインキュベートした過酸化物を含有しない試料からの発光量と比較した(表1)。
【表1】
【0115】
表1に見られる通り、2種の化合物PBI4013及びPBI3048から発せられた光は、全てのpH値の過酸化水素の添加により強く増加した。しかし、より大きな光シグナル増加が、pH6.87からpH9.18へのpH上昇に伴って認められた。他の2種の化合物PBI4425及びPBI4424について測定された光シグナル増加は、過酸化水素添加の場合はPBI3048又はPBI4013について認められたものよりもかなり小さかった。
【0116】
これらの結果から、
ボロン酸ルシフェリンを用いて、低レベルの過酸化水素を検出及び測定することができるが、特定の化合物における小さな構造変化が、光シグナルの相対強度の増加に対して非常に劇的な影響を有し得ることが示される。加えてこれらの結果から、より強度の光シグナルが、
ボロン酸ルシフェリンとpH8.0を超えるpH値の過酸化水素との反応から得られることが示される。
【0117】
実施例15.過酸化水素とのインキュベーション後の本発明の化合物からの光発生の比較
この実験では、異なるpH溶液中の過酸化水素を検出する特性について、様々な化合物を検査した。複数の化合物が、PBI3048よりもかなり良好なシグナル強度及びシグナル対バックグランド比を与えることが示される(実施例23)。
【0118】
化合物PBI4480、4481、4452、4470、4472、3048(
図1及び2)をDMSO(Fluka 41641)に溶解することにより、それらの4mg/ml溶液を作製した。化合物溶液の30μlを、Nanopure水で1.5mlに希釈し、アリコット50μlを白色96ウェルルミノメータープレート中に以下の通り添加した:PBI4481、A1〜12行;PBI4480、B1〜12行;PBI4452、C1〜12行;PBI3048、D1〜12行;PBI4472、E1〜12行;及びPBI4470、F1〜12行。
【0119】
200mM Tris緩衝液(pH7.6)25μlをA1〜F4ウェルに添加し、200mM Tris緩衝液(pH8.8)25μlをA5〜F8ウェルに添加し、200mM Tris緩衝液(pH10.4)25μlをA9〜F10ウェルに添加した。
【0120】
30%過酸化水素(Sigma H1009−5ml)をNanopure水に40μMになるように希釈し、25μlを3、4、7、8、11及び12列目に添加した。水25μlをプレートの1、2、5、6、9、及び10列目に添加して、プレートを室温で60分間インキュベートした。
【0121】
100mM D−システイン100μl、Tris緩衝液(pH8.8)1ml及びNanopure水8.9mlを混合することにより、変換溶液を作製した。混合した後、溶液80μlを新しいルミノメータープレートのA1〜F12ウェルに添加した。
【0122】
インキュベーション後に、最初のプレートのA1〜F12ウェルの試料20μlを、新しいルミノメータープレートと同一のウェルに移した。新しいプレートを室温で5分間インキュベートして、LDR(実施例23)100μlをA1〜F12ウェルに添加して、バイオルミネッセンスをGloMax(登録商標)ルミノメーター(Promega)で検出した。
【0123】
二重測定のウェルのRLUを平均した。過酸化水素を含むウェルの平均値を、同一のpHの過酸化水素を含まないウェルと比較した(表2)。BZTは、化合物のベンゾチアゾール誘導体を示すために用いる。
【表2】
【0124】
シグナル対バックグランド(S/B)比を用いて、シグナル強度が非常に異なるアッセイ試薬を比較する。S/B比の高いアッセイは、多くの場合、S/B比の小さいアッセイ(他の全ての因子が相対的に等しいもの)よりも良好なアッセイであるとみなされる。この実施例でのシグナル(過酸化水素含有)対バックグランド(過酸化水素不含)の値を、表3に示す。
【表3】
【0125】
PBI4452及び4470が、
ボロン酸塩であったとしても、それらは両者とも、PBI3048よりもpH10.4で過酸化物により大きなシグナルを発生し、そのpHでより大きなS/B比を有する。この化合物の特性により、それらは、酵素反応においてインビトロで生成された過酸化水素を測定する際により有用となる可能性がある。その一方で、
ボロン酸エステル(PBI 4472、4481及び4480)は、いずれの
ボロン酸塩類よりも低いpHでより高いS/B比を与えており、それらがpH10.4のpHで増殖し得ない生存哺乳類培養細胞を用いる実験において、より良好に働き得ることが示唆される。加えてそれらは、幾つかの条件下でBZT
ボロン酸塩と比較して若干低い総シグナルを発生するが、
ボロン酸エステルは、優れたシグナル対バックグランド比を生じ、シグナル強度が微小でなければ使用することができる。
【0126】
実施例16.
ボロン酸ルシフェリンを用いた活性酸素発生の検出
この実施例では、過酸化水素と反応することが示された様々な化合物を、活性酸素種(ROS)を発生し得る2種の化合物、つまりメナジオン及び4−アミノビフェニルで処理された細胞とインキュベートした。メナジオンは、細胞内で活性酸素を直接発生させ、ROS作用の非常に強い誘発物質である(Sun, JS et. al. Cell Mol Life Sci(1997) vol 53 pp967−76)。4−アミノビフェニルは、ROSの形成を誘発することができるようになる前に、キニン様構造に代謝変換する必要があると考えられる(Makena, P and Chung, KT. Environ. Mol. Mutagen.(2007), vol 48, pp404−413)。
ボロン酸塩化合物の1つであるPBI4458は、細胞内で活性酸素を発生させる条件下で、かなり強いシグナルを与えることが示された。この実施例では、1)本発明の化合物を用いた様々な処理の適用により、細胞内での活性酸素種の形成を検出する方法、ならびに2)1)の方法を用いて、接着(例えば、HepG2)細胞株及び懸濁(例えば、Jurkat)細胞株の両方における活性化学種を検出し得ること、を実証する。
【0127】
4−アミノビフェニル(Sigma A2898−1g)2.5mgをDMSO(Fluka)375μlに溶解して、40mM溶液を作製することにより、4−アミノビフェニルの40mM溶液を作製した。DMSO中の4mg/ml PBI4458 50μlを、HBSS緩衝液(Invitrogen)で1mlに希釈して、100μlをマイクロタイタープレートのA1及びA2ウェルに添加した。40mM 4−アミノビフェニルの試料10μlを、HBSS中の残りのPBI4458 190μlと混合して、60μlをB1及びB2ウェルに、そして30μlをC1及びC2ウェルに添加した。DMSO中の40mMメナジオンの試料10μlを、HBSS中の残りのPBI4458 190μlと混合して、60μlをD1及びD2ウェルに、そして30μlをE1及びE2ウェルに添加した。その後、HBSS中の残りのPBI4458の添加により、B1〜E2ウェル中の容量を100μlに調整した。
【0128】
DMSO中の4mg/ml PBI4480 50μlを、HBSS緩衝液で1mlに希釈して、100μlをマイクロタイタープレートのA3及びA4ウェルに入れた。40mM 4−アミノビフェニルの試料10μlを、HBSS中の残りのPBI4480 190μlと混合して、60μlをB3及びB4ウェルに、そして30μlをC3及びC4ウェルに添加した。DMSO中の40mMメナジオンの試料10μlを、HBSS中の残りのPBI4480 190μlと混合して、60μlをD3及びD4ウェルに、そして30μlをE3及びE4ウェルに添加した。その後、HBSS中の残留PBI4480の添加により、B3〜E4ウェル中の容量を100μlに調整した。
【0129】
DMSO中の4mg/ml PBI3048 50μlを、HBSS 1mlに希釈して、100μlをマイクロタイタープレートのA5及びA6ウェルに添加した。40mM 4−アミノビフェニルの試料10μlを、残りのPBI3048 を含むHBSS190μlと混合して、60μlをB5及びB6ウェルに、そして30μlをC5及びC6ウェルに添加した。DMSO中の40mMメナジオンの試料10μlを、残りのPBI3048を含むHBSS 190μlと混合して、60μlをD5及びD6ウェルに、そして30μlをE5及びE6ウェルに添加した。その後、残留するPBI3048を含むHBSSの添加により、B5〜E6ウェル中の容量を100μlに調整した。
【0130】
2枚の細胞培養プレートに、HBSS中に懸濁させた細胞を播種した。一方のプレートは、A1〜H6ウェルにJurkat細胞20,000個/ウェルを含むものであった。もう一方のプレートは、A1〜H6ウェルにHepG2細胞20,000個/ウェルを含むものであった。両方のプレートを、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含むDMEM中で一晩インキュベートした。HepG2細胞の培地を取り出して廃棄し、HBSS 50μlと交換した。様々なPBI化合物を含むプレートのA1〜H6ウェルの試料50μlを、2枚の細胞培養プレート内の対応するウェルに移して、37℃の5%CO2インキュベータで60分間インキュベートした。
【0131】
LDR(実施例23)50μl、及び100mM HEPES緩衝液(pH7.5)中1mM D−システイン25μlを、新しいルミノメータープレートの全てのウェルに添加した。インキュベーション後に、Jurkat細胞を含むA1〜H6ウェルの試料25μlを、新しいルミノメータープレートのA1〜H6ウェルに添加し、HepG2細胞を含むA1〜H6ウェルの試料25μlを、新しいルミノメータープレートのA7〜H12ウェルに添加した。このプレートを室温で15分間インキュベートして、バイオルミネッセンスをGloMax(登録商標)ルミノメーターで検出した。
【0132】
二重測定の試料から得たバイオルミネッセンスを平均して、A行の細胞の値と比較した(表4)。
【表4】
【0133】
異なるレベルの4−アミノビフェニル及びメナジオンとPBI4458との値は、予測された通り、いずれのエフェクターも与えられなかった細胞の値を超えるものである。同じくメナジオンでの応答の規模は、4−アミノビフェニルよりもかなり大きかった。PBI4480及びPBI3048の値は、メナジオン又は4−アミノビフェニルへの応答ほど明瞭に示すものではない。これらの化合物は、実施例23に見られる通り、直接の過酸化水素添加へのあまり強くない応答を示したことから、低い応答は意外なことではない。
【0134】
これらの結果から、PBI4458が、哺乳類細胞において活性酸素を発生させる薬剤の高感度検出を可能にすることが示される。加えて結果から、ベンゾチアゾール又はルシフェリンに付着した
ボロン酸塩類似体の全てが、細胞と共に用いられた場合にシグナルを発生するとは限らないことも、明瞭に実証される。実際に化合物の幾つかは、緩衝液中の細胞によりシグナルを発生するが、それは哺乳類培養細胞における活性酸素発生に及ぼす化合物の影響を、信頼性を持って検出するには低すぎる可能性がある。
【0135】
実施例17.ルシフェリン生成に及ぼす緩衝液の影響
この実施例では、本発明の
ボロン酸塩化合物を様々な緩衝液中でインキュベートして、適切な緩衝液を用いることで改善されたシグナル強度が得られる可能性を実証する。加えてこの実施例では、2種の緩衝液、つまりDMEM及びHBSS緩衝液中でのシグナル発生が、哺乳類細胞で良好に働くことを実証する。両方の緩衝液が同じpH値を有するように配合された場合でも、幾つかの化合物はHBSSよりもDMEMでかなり強いシグナルを発生しており、こうして本発明の特定の化合物が、DMEMなどの培地中で哺乳類細胞と共に使用するのに非常に有利となり得ることが実証される。
【0136】
A.反応pH及び緩衝液組成によるシグナル強度差の実証
DMSO中の4mg/ml PBI4458の試料30μlをNanopure水で1.5mlに希釈して、50μlをマイクロタイタープレートのA1〜12及びE1〜12ウェルに添加した。DMSO中の4mg/ml PBI4472の試料30μlをNanopureで1.5mlに希釈して、50μlをプレートのB1〜12及びF1〜12ウェルに添加した。DMSO中の4mg/ml PBI4480の試料30μlをNanopure水で1.5mlに希釈して、50μlをプレートのC1〜12及びG1〜12ウェルに添加した。DMSO中の4mg/ml PBI4481の試料30μlをNanopure水で1.5mlに希釈して、50μlをプレートのD1〜12及びH1〜12ウェルに添加した。
【0137】
そのプレートに、200mM KHPO
4(pH7.4)の試料50μlをA1〜D4ウェルに添加し、200mM Tris緩衝液(pH7.4)50μlをA5〜D8ウェルに添加し、 250mM HEPES緩衝液(pH7.5)50μlをA9〜D12ウェルに添加し、200mM KHPO
4緩衝液(pH9.2)50μlをE1〜H4ウェルに添加し、250mM Tris緩衝液(pH10.4)50μlをE5〜H8ウェルに添加し、100mM CAPS緩衝液(pH10.4)50μlをE9〜H12ウェルに添加した。
【0138】
過酸化水素の試料(30%、Sigma、H1009−5ml)を、Nanopure水で10μMに希釈して、100μlをプレートの3、4、7、8、11、12列目のA〜Hウェルに添加した。Nanopure水100μlを、プレートの1、2、5、6、9及び10列目に添加した。プレートを室温で15分間インキュベートした。
【0139】
1M HEPES緩衝液(pH7.5)5ml、Nanopure水4.9ml及び100mM D−システイン(Nanopure水中)100μlを混合することにより変換溶液を作製して、25μlをルミノメータープレートの全てのウェルに添加した。
【0140】
インキュベーション後に、プレート内の全てのウェルの試料25μlを、ルミノメータープレートの対応するウェルに移して混合し、室温で2〜3分間インキュベートして、LDR(実施例23)50μlを添加した。ルミノメータープレートを室温で15分間インキュベートして、バイオルミネッセンスをGloMax(登録商標)ルミノメーターで検出した。
【0141】
更なる試料を、60及び105分目に採取して、全てのウェルに変換溶液25μlを含む新しいルミノメータープレートに添加した。その後、プレートを室温で15分間インキュベートし、バイオルミネッセンスを上述の通り検出した。
【0142】
二重測定ウェルから得たRLUを平均して、過酸化水素を含む試料の値を、対応する過酸化水素を含まない試料の平均値と比較して(表5、7及び9)、シグナル対バックグランド比を決定した(表6、8及び10)。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0143】
上述の通り、バイオルミネッセンスシグナル強度は、pH値が高いほど大きいが、緩衝液により特定のpHでのシグナル強度に変動がある。例えば緩衝液のpHが、緩衝液KPO
4(pH7.4)、Tris(pH7.4)及びHEPES(pH7.5)を用いて実施された反応でほぼ同一であったとしても、105分目のPBI4472で見られた正味のシグナルは異なっており、異なるシグナル対バックグランド値となる(KPO
4、Tris(pH7.4)及びHEPES(pH7.5)における105分目のPBI4472ではそれぞれ5.3、13.6及び8.2)。
【0144】
B.哺乳類細胞培地と生理学的緩衝液の間のシグナル差
PBI4458の4mg/ml DMSO溶液の試料100μlを、HBSS緩衝液(Invitrogen 14025−092)で500μlに希釈して、50μlを新しいマイクロタイタープレート(「DISP」)のA1〜A9ウェルに添加した。PBI4472の4mg/ml DMSO溶液100μlを、HBSS緩衝液で500μlに希釈して、50μlをE1〜E9ウェルに添加した。HBSS 90μlを、「RT」及び「37C」と標識された2枚の新しいマイクロタイタープレートのA1〜B9ウェルに添加した。DMEM 90μlを、両方のプレートのC1〜D9ウェルに添加した。
【0145】
30%過酸化水素の試料(Sigma H1009−5ml)を、Nanopure水で1mMに希釈し、1mM過酸化水素7.5μlをHBSSで1.5mlに希釈して、90μlをプレートRT及び37℃のA4〜B6ウェルに添加した。1mM過酸化水素15μlをHBSSで1mMに希釈して、90μlを両方のプレートのA7〜B9ウェルに添加した。HBSS 90μlを両方のプレートのA1〜B3ウェルに、そしてDMEM 90μlを両方のプレートのC1〜D3ウェルに添加した。1mM過酸化水素7.5μlをDMEMで1.5mlに希釈して、90μlを両方のプレートのC4〜D6ウェルに添加した。1mM過酸化水素15μlをDMEMで1.5mlに希釈して、90μlを両方のプレートのC7〜D9ウェルに添加した。
【0146】
プレート「DISP」のA行の試料10μlを、プレートRT及び37℃のA及びC行に移して、プレート「DISP」のB行の10μlを、プレートRT及び37℃のB及びD行に移した。プレート37℃を37℃、5%CO
2でインキュベートし、プレートRTを、室温でインキュベートした。プレートは両方とも、30分間インキュベートした。
【0147】
1M HEPES(pH8.0)7.5ml、Nanopure水7.4ml及び100mM D−システイン100μlを混合することにより、変換溶液を作製した。混合した後、75μlを新しいルミノメータープレートの全てのウェルに添加した。
【0148】
インキュベーション後に、プレート37℃のA1〜D9ウェルの25μlを、新しいルミノメータープレートのE1〜H9ウェルに移し、プレートRTのA1〜D9ウェルの25μlを、新しいルミノメータープレートのA1〜D9ウェルに移して、プレートを室温で2〜3分間インキュベートした。LDR(実施例23)の試料100μlをA1〜H9ウェルに添加して、室温で15分間インキュベートし、バイオルミネッセンスをGloMax(登録商標)ルミノメーターで検出した。測定の後、二重測定のウェルを平均して、過酸化物の添加を有する平均値を、過酸化物を含まない値と比較した(表11)。
【表11】
【0149】
表11に見られる通り、37℃での「0μM過酸化物」の値は、RTよりも低く、DMEM中の反応物からのシグナルは、HBSSよりも大きかったことから、DMEM中の幾つかの成分(HBSS中では存在しないか、又は異なる濃度のいずれかである)がシグナル強度に影響を及ぼすことが示唆される。室温で実施された反応と37℃で実施された反応の間に見られたシグナル差の正確な原因は分からないが、バックグランドの還元が、37℃のDMEM中でこれらの2種の化合物をインキュベートした場合に見られたことから、それらがDMEM中で増殖させた哺乳類細胞の過酸化水素センサーとして良好に働くことが示唆される。BにおいてPBI3048又は4480と比較した培地中PBI4458からの強いシグナルは、このバックグランド還元の結果である可能性がある。
【0150】
9547 US00の更なる実施例
実施例18.
ボロン酸セレンテラジンを用いた活性酸素発生の検出
【化51】
PBI4759
PBI4759(10mM;最終濃度12.5μM)、様々な濃度の過酸化水素及び40ng/ml NanoLuc(商標)ルシフェラーゼ酵素(Promega Corporation)を、pH8.5又はpH9.0のいずれかの200mM Tris−Clを含む96ウェルアッセイプレートのウェルに添加した。ルミネッセンスをGloMax(登録商標)ルミノメーターで検出した。
【0151】
結果から、PBI4759が過酸化水素の高感度検出を可能にすることが示される(
図3)。このシグナルは、反応物中に存在する過酸化水素(H2O2)のレベルに比例し、また、NanoLuc(商標)ルシフェラーゼ酵素(NL)の存在にも依存する。
図3の最初の枠内の数値組が、「NL及びH2O2含有」及び「NL不含、H2O2含有」という列に表記されているが、実際にはこれらの反応物にはいずれのH
2O
2も含有せず、他の添加についての対照として働くことに留意されたい。
【0152】
実施例19.PBI4472のバックグランド還元
PBI4472(50μM)を、アッセイ緩衝液(100mM Tris塩基、pH10.4)と共に室温で15分間インキュベートした。その後、試料をバックグランド還元剤(BRR;TCEP)で処理するか、又は未処理のままにした。室温での15分間のインキュベーションの後、1mM D−システインを含むルシフェリン検出試薬(Promega Corporation)をこの試料に添加して、室温で20分間インキュベートした。ルミネッセンスを、Tecan F500プレートリーダーで検出した。
【0153】
結果から、還元剤の添加により、PBI4472などの
ボロン酸ルシフェリンを含む際に見られ得るバックグランドを還元させる可能性が実証される(
図4)。
【0154】
全ての発行物、特許及び特許出願が、参照により本明細書に組み入れられる。前述の明細書において本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載されたが、多くの詳細は例示の目的で示されており、本発明が更なる実施形態に受け入れられること、及び本明細書に記載された特定の詳細が本発明の基本原理から逸脱せずに著しく変動可能であることは、当業者に明白であろう。