(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088529
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20170220BHJP
H01G 9/012 20060101ALI20170220BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
H01G9/24 F
H01G9/05 D
H01G9/05 F
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-534245(P2014-534245)
(86)(22)【出願日】2013年7月30日
(86)【国際出願番号】JP2013070601
(87)【国際公開番号】WO2014038316
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-194876(P2012-194876)
(32)【優先日】2012年9月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081086
【弁理士】
【氏名又は名称】大家 邦久
(74)【代理人】
【識別番号】100121050
【弁理士】
【氏名又は名称】林 篤史
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一美
(72)【発明者】
【氏名】田村 克俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅博
【審査官】
小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−077338(JP,U)
【文献】
特開平11−111907(JP,A)
【文献】
特開2001−047473(JP,A)
【文献】
実開平02−137219(JP,U)
【文献】
特開2007−036092(JP,A)
【文献】
実開平04−004734(JP,U)
【文献】
特開平04−357813(JP,A)
【文献】
特開平08−148392(JP,A)
【文献】
特開2012−054434(JP,A)
【文献】
特開2003−197485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/012
H01G 9/08
H01G 9/15
H01G 13/00
B29C 45/02
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解コンデンサ素子を、陰極端子となるリードフレームの陰極リードの一方の面(おもて面)側に載置し、前記固体電解コンデンサ素子の陽極及び陰極をそれぞれ前記リードフレームの陽極端子及び陰極端子に電気的に接続した後に、トランスファー成形により金型の樹脂注入口より外装樹脂を注入して封口するチップ状固体電解コンデンサの製造方法において、前記陰極リードは、陽極端子側の先端から陰極端子方向にリードフレームの他方の面(裏面)の一部が削除されて薄い厚みに加工された陰極リード加工部を有し、前記注入口は、前記陰極リード加工部の側端部に対向するように設けられ、かつ前記注入口の上端が陰極リード加工部のおもて面の位置より上にあり、前記注入口の下端が陰極リード加工部の裏面の位置より下にあるように設けられ、それにより前記注入口より注入された外装樹脂が、前記おもて面と裏面の両方に分かれて流れることを特徴とするチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記陰極リードは、封口されたときにチップ状固体電解コンデンサの裏面外側に露出して陰極となる部分と、封口されたときにチップ状固体電解コンデンサの裏面外側に露出しない部分とを有する請求項1に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
前記陰極リードの前記注入口に対向する側端部が、表または裏方向に向かって注入口側に斜めに加工されている請求項1または2に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項4】
前記斜めに加工された陰極リードの側端部の前記注入口方向への長さa、前記陰極リードの裏面平面を起点として裏面方向への長さb、陰極リードの厚みDが下記の式(1)及び(2)
【数1】
(式(2)においてマイナスは前記陰極リードの側端部の先端が前記陰極リードのおもて面側に寄っていることを示す。)を満足する請求項
3に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項5】
前記注入口の開口位置が、注入口の法線方向に対して、リードフレームおもて面側よりもリードフレーム裏面側が大きくなっている請求項3または4に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
【請求項6】
複数個の固体電解コンデンサ素子を、水平方向に並列に向きを揃えて、1つの前記陰極リードに載置する請求項1〜5のいずれかに記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体コンデンサ素子を成形金型内で樹脂封口する固体電解コンデンサの製造方法に関する。さらに詳しく言えば、コンデンサ素子をトランスファーマシンを使用して成形金型内で樹脂封口する際の、金型内への樹脂の注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に使用される高容量なコンデンサの一つとして直方体形状の一面に陽極リードを植設した導電体粉末の焼結体に、誘電体酸化皮膜、半導体層及び電極層を順次積層した固体電解コンデンサ素子を外装樹脂で封口したチップ状の固体電解コンデンサがある。
【0003】
固体電解コンデンサは、内部に微小な細孔を有するタンタル等の導電体粉の焼結体(導電体)を一方の電極(陽極)として、その電極の表層に形成した誘電体層とその誘電体層上に設けた他方の電極(通常は半導体層からなる陰極)及び他方の電極上に積層された電極層とから構成された固体電解コンデンサ素子をモールド樹脂で封口して作製される。同一体積の導電体では、細孔が小さく細孔量が多いほど導電体内部の表面積が大きくなるために、その導電体から作製したコンデンサの容量は大きなものとなる。一般に、高CVで体積が大きな焼結体は、細孔が細かく奥行きが長いので半導体層の充填率が小さく、細孔内に半導体が未充填の部分が多数ある焼結体は、強度的に弱く、応力によって誘電体皮膜が劣化しやすい。特に、樹脂の注入応力により、固体電解コンデンサ素子がリードフレームに載置された位置からずれたり(水平性異常)、作製した固体電解コンデンサの樹脂外装体に樹脂で埋まっていない微小な孔(ピンホール)が生じる外観不良が起こったりすると、漏れ電流が増加し作製した固体電解コンデンサの歩留まりが悪いという問題がある。
【0004】
トランスファーマシンを使用する固体電解コンデンサ素子の樹脂封口は、例えば、成形金型内に固体電解コンデンサ素子の載置されたリードフレームをセットし、成形金型の樹脂注入口から樹脂を注入して行われる。
【0005】
トランスファー成形によるコンデンサの製造方法として、特許第3071115号(特許文献1)にはモールドのゲートの対向面のコンデンサ素子の表面に緩衝材(合成樹脂、ゴム、紙等)を装着して成形用注入樹脂の注入圧を和らげる方法が開示されている。特開平04−357813号(特許文献2)には、固体電解質這い上がり防止用のワッシャーを有するコンデンサ素子を樹脂封口する際、前記ワッシャーの成形金型のゲート口側に保護樹脂を設けて漏れ電流不良率を低減させる方法が開示されている。ただし、これらはコンデンサ素子をトランスファーマシンを使用して樹脂封口する場合に樹脂を注入する金型ゲート(樹脂注入口)の配置について注目した先行技術ではない。
【0006】
特開2007−36092号(特許文献3)には、金型の樹脂注入口を、樹脂の注入直後(初期)にコンデンサ素子と当らない位置(例えば、陽極リード線の下で、陰陽フレームが対向している隙間)に設ける方法が開示されている。しかし、昨今、コンデンサの大容量化に伴い、焼結体の寸法が大きくなってきたため、陰陽フレームの隙間が注入口より小さくなり、この位置に注入口を設けることが困難になっている。
【0007】
一例をあげると、大きさ7.3×4.3×1.9mmの外装寸法を有するチップ型固体電解コンデンサでは、陰陽フレームの隙間は1.0mm以内を目標とするが、外装樹脂の流動性と樹脂に混合されているフィラーの外径(通常0.01〜0.09mm程度)を考慮すると注入口としては1.2×0.1mm以上が好ましく、その位置に注入口を設けることは困難となる。そこで注入口を、注入時に外装樹脂がコンデンサ素子に当る位置におかざるを得なくなっている。この場合、樹脂封口後の外装体にピンホール(樹脂で埋まっていない微小な穴)があったりして、LC値も規格外となる製品を生ずる不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3071115号公報
【特許文献2】特開平04−357813号公報
【特許文献3】特開2007−36092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、トランスファー成形によるコンデンサ素子の樹脂封口において、金型の樹脂注入口を外装樹脂がコンデンサ素子に当る位置に設けた場合、樹脂外装体に樹脂で埋まっていない微小な孔の生じにくい固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は以下の固体電解コンデンサの製造方法を提供する。
[1] 固体電解コンデンサ素子を、陰極端子となるリードフレームの陰極リードの一方の面(おもて面)側に載置し、前記固体電解コンデンサ素子の陽極及び陰極をそれぞれ前記リードフレームの陽極端子及び陰極端子に電気的に接続した後に、トランスファー成形により金型の樹脂注入口より外装樹脂を注入して封口するチップ状固体電解コンデンサの製造方法において、前記注入口より注入された外装樹脂が、リードフレームの他方の面(裏面)側とおもて面側の両方に分かれて流れる位置に注入口を設けることを特徴とするチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
[2] 前記陰極リードは、封口されたときにチップ状固体電解コンデンサの裏面外側に露出して陰極となる部分と、陽極端子側の先端から陰極端子方向に裏面の一部が削除されて薄い厚みに加工されており封口されたときにチップ状固体電解コンデンサの裏面外側に露出しない部分とを有する前項1に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
[3] 注入口が、前記陰極リードに対向する位置にあり、前記注入口の開口の高さが、陰極リードの前記注入口に対向する側端部の厚みより大きい前項1または2に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
[4] 前記陰極リードの前記注入口に対向する側端部が、表または裏方向に向かって注入口側に斜めに加工されている前項1〜3のいずれかに記載の3に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
[5]前記斜めに加工された陰極リードの側端部の前記注入口方向への長さa、前記陰極リードの裏面平面を起点として裏面方向への長さb、陰極リードの厚みDが下記の式(1)及び(2)
【数1】
(式(2)においてマイナスは前記陰極リードの側端部の先端が前記陰極リードのおもて面側に寄っていることを示す。)を満足する前項4に記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
[6]前記注入口の開口位置が、注入口の法線方向に対して、リードフレームおもて面側よりもリードフレーム裏面側が大きくなっている前項3〜5のいずれかに記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
[7]複数個の固体電解コンデンサ素子を、水平方向に並列に向きを揃えて、1つの前記陰極リードに載置する前項1〜6のいずれかに記載のチップ状固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、固体電解コンデンサ素子を、陰極端子となるリードフレームの陰極リードの一方の面(本明細書では「おもて面」という。)側に載置し、前記固体電解コンデンサ素子の陽極及び陰極をそれぞれ前記リードフレームの陽極端子及び陰極端子に電気的に接続した後に、トランスファー成形により成形金型の樹脂注入口より外装樹脂を注入して封口するチップ状固体電解コンデンサの製造方法において、前記注入口より注入された外装樹脂が、まず、リードフレームの他方の面(本明細書では「裏面」という。)側とおもて面側の両方に分かれて流れる位置に注入口を設けることを特徴とするチップ状固体電解コンデンサの製造方法を提供したものである。
本発明によれば、金型の樹脂注入口を外装樹脂がコンデンサ素子に当る位置に設けた場合でもピンホールの生じにくい固体電解コンデンサを製造することができる。また、複数個のコンデンサ素子を、水平方向に並列に向きを揃えて1つの陰極リードに載置した場合、成形時にコンデンサ素子の位置を乱しにくく、互いに水平の状態を保ちやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】リードフレームに載置した固体電解コンデンサ素子(1)1個を金型に設置して樹脂封口した内部の状態を模式的に示す斜視図であり、金型の樹脂注入口(5)をその開口寸法幅(W)及び高さ(H)とともに示す。リードフレームの厚み及び金型の注入口の大きさは誇張して示している。
【
図2】樹脂封口した状態の固体電解コンデンサの上面図(A)及び側面図(B)、上面図(A)のA−A線側面図(C)、並びに上面図(A)のX−X線の縦断面図(D)である。
【
図3】金型の樹脂注入口(5)断面を含む
図2の上面図(A)のY−Y線横断面図(A)及びその陰極リード側端部の加工形状を示す拡大図(B)である。
【
図4】
図2のY−Y線の横断面における金型の注入口付近を拡大して示した横断面の模式図であり、樹脂注入時の樹脂の流れを示す。
【
図5】実施例1で作製した固体電解コンデンサ(良品)の正面(A)及び側面(B)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面に示す例を参照しつつ、本発明の固体電解コンデンサの製造方法を説明する。
図1に、リードフレーム(3)のおもて面側に載置した固体電解コンデンサ素子(1)を金型(図示せず。)に設置して樹脂封口した状態を示す。
【0014】
本発明では、例えば、陽極リード線(2)を有する焼結体の上に誘電体層、半導体層、陰極層を順次形成した固体電解コンデンサ素子(1)を複数個、水平方向に並列に向きを揃えて、一部が最終的な陰陽端子となるリードフレームの所定箇所、すなわち陽極リード線は陽極リード(3a)の先端の陽極リード立ち上がり部(3c)、コンデンサ素子の最外層(陰極層)は陰極リード(3b)のおもて面上に載置して、陽極リード線は溶接にて、またコンデンサ素子の最外層(陰極層)は銀ペーストの固化により接合(電気的及び機械的に接続)する。
【0015】
陽極リード線が載置された陽極端子となる陽極リード(3a)の底面と陰極層が載置された陰極端子となる陰極リード(3b)の右側底面は樹脂で封口されず金型の外部に出ている。
金型の樹脂注入口(5)は金型の側面下側に設けられており(
図3)、前記陰極リード(3b)のうち厚みが薄く加工された陰極リード加工部(3d)に対向していて、その大きさは高さ(H)が前記対向している部分のリードフレームの厚み(D)より大きく、幅(W)が前記樹脂で被覆される陰極リードの長さよりも短くなっている。
図2は樹脂封口された固体電解コンデンサの上面図(A)及び側面図(B)、上面図(A)のA−A線側面図(C)、並びに上面図(A)のX−X線縦断面図(D)である。コンデンサ中心のX−X線における縦断面図(D)と樹脂注入口を含むA−A線における側面図(C)から陰極リード加工部(3d)の側端部に対向する位置に樹脂注入口(5)が設けられていることが分かる。
図3は
図2のY−Y線における横断面図(A)と、陰極リード側端部の加工形状を示す拡大図(B)である。
図4は
図2のY−Y線における横断面における金型の注入口付近を拡大して示した横断面の模式図であり、樹脂注入時の樹脂の流れる様子を示している。リードフレームの水平面に対して垂直の注入口面から、矢印で示すように外装樹脂が陰極リード加工部(3d)の裏面側とおもて面側の両方に流れる位置に注入口(5)が設けられている。
【0016】
以上のように、コンデンサ素子を載置した前記陰極リード加工部(3d)の側端部(3e)に対向するように注入口(5)を設けた金型を使用すると、注入口から注入された樹脂は、陰極リード(3d)に当り、リードフレームを境界にして一部はリードフレームの裏面側に、一部はリードフレームのおもて面側に流れる。この結果、リードフレーム平面の上下動が極力少なくなり、リードフレーム上に載置されたコンデンサ素子の変動が起こり難く、複数個のコンデンサ素子の水平性が保たれやすく、水平性が異常になって発生する外装体のピンホールも現れにくくなる。樹脂の厚みは、リードフレーム裏面側よりもリードフレームおもて面側が大きい。したがって、外装樹脂はリードフレーム裏面側へ流れにくいので、注入口の開口位置は、注入口の法線方向に対して、内部にリードフレームの厚み方向を含み、リードフレームおもて面側よりもリードフレーム裏面側が大きくなるようにしておくことが好ましい。
【0017】
また、本発明では、例えば、
図3(B)に示すように注入口に対向する陰極リード部の側端部が、上面端から下面端に向かって(表裏方向に向かって)注入口側に斜めに加工された形状のフレームを使用し、前記斜めに加工された陰極リード部の側端部の前記注入口方向への長さa、前記陰極リード部の裏面平面を起点として裏面方向への垂直方向長さb、陰極リード部の厚みDが下記の式(1)及び(2)
【数2】
(式(2)においてマイナスは前記陰極リード部の側端部の先端が前記陰極リード部のおもて面側に寄っていることを示す。)を満足することが好ましい。こうすることによって、リードフレームの裏面側とおもて面側に流れる樹脂が適切に配分される。その結果、作製した固体電解コンデンサのピンホール数が減り、また内部素子の水平性を保つことができる。このようにリードフレームの先端部(側端部)を加工すると、注入口から流動した樹脂が、リードフレーム側端部に当たる際にその周辺に制御できない乱流が発生しリードフレームの裏面側とおもて面側に流れる正規の樹脂流動を乱すことによる内部素子の水平性異常を防ぐことができる。
前記の加工は、例えば、板材をフレーム寸法に切断する場合にフレーム上方からの加圧切断や、フレームの先端のルーター加工により行うことができる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の具体例についてさらに詳細に説明するが、以下の例により本発明は限定されるものではない。
【0019】
実施例1〜3及び比較例1〜5:
(1)コンデンサ素子の作製
定法に従って一部窒化したニオブ粉から作製した焼結体に酸化ニオブの誘電体層、導電性高分子(ポリエチレンジオキシチオフェンにアントラキノンスルホン酸ドープ)の半導体層、カーボンペーストと銀ペーストを順に積層した導電体層を順次形成して、大きさ1.62×1.02×4.08mmの固体電解コンデンサ素子を複数個作製した。1.62×1.02mm面には直径0.29mmのニオブ線が植立している。
【0020】
(2)リードフレームの作製
おもて面に錫メッキを施した厚さ100μm、幅25.0mm、長さ131.0mmの銅合金フレームを別途用意した。このリードフレームには、フレーム幅方向に対して垂直に陽極リード部と陰極リード部とが0.70mmの間隔を保って対向し、3.5mmの幅で32対、計64か所設けられている。
陽極リード(3a)の先端は
図1に示したように、0.65mm長で、おもて面側に90°立ち上がるように加工されている(陽極リード立ち上がり部(3c))。これに対向する陰極リード(3b)は、その先端から4.0mmの部分域にわたって、下面が50μm厚だけ切削加工され薄くなっている(陰極リード加工部(3d))。
また、前記陰極リード加工部の側端部(3e)は
図3(B)に示したように、コンデンサ素子の陽極リード線方向に垂直な方向に表裏方向に向かって注入口側に斜めに加工され、陰極リード加工部(3d)の側端部の前記注入口方向への長さ(a)が30μm、前記陰極リード加工部(3d)の裏面方向への長さ(b)が5μmの大きさとなっている。
【0021】
固体電解コンデンサ素子の1.62×1.02mm面から1.5mmの長さとなるように切断した陽極リード線を、前記陽極リード立ち上がり部(3c)に配置し、固体電解コンデンサ素子の1.02×4.08mm面(陰極層面)を陰極リード加工部(3d)のおもて面に配置し、フレームの各陰極リード加工部1か所につきに3個ずつ固体電解コンデンサ素子を、その1.62×4.08mm面を並列に水平に方向を揃えて配置した。各陽極リード線と前記陽極リード立ち上がり部は低圧抵抗溶接で、前記陰極層面と陰極リード加工部は銀ペーストの固化で、電気的かつ機械的に接続した。
【0022】
1枚のリードフレーム上には32対の陰陽極リードに各々3個ずつ計96個の固体電解コンデンサ素子が接続されている。
【0023】
続いて、このフレームを金型に載置し、定法に従ってエポキシ樹脂でトランスファー成形を行った。このときの樹脂の注入口の大きさ(W×H)を1.30×0.13mm(実施例1)、1.30×0.15mm(実施例2)、1.30×0.18mm(実施例3)、1.30×0.10mm(比較例1)とし、各例の注入口の中心位置を陰極リードの陽極リード側先端から2.0mmとし、外装樹脂側面下端に注入口の下端が配置するように下端を合わせた各金型を用意して固体電解コンデンサを作製した。
【0024】
また、比較例2〜4では、各実施例1〜3と同様な大きさの注入口で注入口の中心位置を陰極リードの陽極リード側先端から4.65mmとした金型を用意して固体電解コンデンサを作製した。さらに比較例5では、実施例1と同様な大きさの注入口で、注入口の中心位置も同じ位置とし、注入口を外装樹脂側面下端から0.1mm上方に注入口の下端が来るように金型を設計し固体電解コンデンサを作製した。
【0025】
なお、樹脂封口後のコンデンサの大きさは、4.3×1.9×7.3mmで、外装樹脂下面に存在する各端子のコンデンサ長手方向に平行な方向の長さ(外装樹脂端までの距離)は共に1.3mmであり、各例の注入口の長手方向は、作製した固体電解コンデンサの長手方向に平行である。
【0026】
各例で作製した128個の固体電解コンデンサについて、ピンホールの個数を肉眼と倍率20倍の顕微鏡で観察した。その個数(128個×実験数10=1280個の全数検査を行った1280個分の合算値)を表1に示した。また、X線により内部観察を行い、内部の3素子の水平性を見た。水平性は、コンデンサ20個(コンデンサ素子60個に対応)を任意に選出し、水平でない素子の数を20個分合算して、その数が15個以上あるものを不良とした。
実施例1で作製した固体電解コンデンサの上面及び側面の写真を
図5(A)及び(B)に示した。他の実施例で作製した固体電解コンデンサ(良品)も同様である。
【0027】
さらに、実施例1〜3及び比較例1〜5の実験を各計10回行ったが、作製した固体電解コンデンサのピンホール数と内部素子の水平性は、表1の結果と殆ど変わらなかった。
【0028】
実施例4:
実施例1で陰極リードの側端部を加工しなかった(
図3でa=0、b=0)以外は実施例1と同様にして固体電解コンデンサを作製した。計10回行った実験中8回は、実施例1と同様の結果であったが、2回は、肉眼で見たピンホール数が6個と13個、顕微鏡で見たピンホール数13個と29個、水平性不良数が5個と11個であった。結果をまとめて表1に示す。
【0029】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、トランスファー成形によるコンデンサ素子の樹脂封口において、金型の樹脂注入口を外装樹脂がコンデンサ素子に当る位置に設けた場合においても、成形時に複数個のコンデンサ素子の位置を互いに水平に保つことができ、かつ樹脂外装体に樹脂で埋まっていない微小な孔の生じない固体電解コンデンサを効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 コンデンサ素子
2 陽極リード線
3a 陽極リード
3b 陰極リード
3c 陽極リード立ち上がり部
3d 陰極リード加工部
3e 陰極リード加工部の側端部
4 外装樹脂
5 樹脂注入口
D 樹脂注入口に対向する部分のリードフレームの厚さ
a 斜め加工した陰極リード側端部の樹脂注入口方向への長さ
b 同上の陰極リード側端部の裏面平面を起点として裏面方向への長さ