【文献】
MORRIELLO, Gregori J. et al.,Design of a novel pyrrolidine scaffold utilized in the discovery of potent and selective human beta3 adrenergic receptor agonists,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters ,2011年,Vol.21,pp.1865-1870
【文献】
LIU Zhuqing et al.,Highly enantioselective synthesis of anti aryl beta-hydroxy alpha-amino esters via DKR transfer hydrogenation,Tetrahedron Letters ,2011年,Vol.52,pp.1685-1688
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書中で記載されるのは、化合物I−1から複数工程反応を通して化合物I−11を製造するプロセスであり:
【化1】
【0006】
式中、R
1は、C
1−6アルキル、ベンジルおよびフェニルからなる群から選択される。
【0007】
一実施形態において、化合物I−1から化合物I−11までの複数工程反応は、以下の工程:
(a)化合物I−4を:
【化2】
【0008】
2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジエトキシルプロパン(2,2−diethoxylpropane)、2−メトキシプロペンおよびアセトンからなる群から選択されるアセトニド保護試薬と反応させて、化合物I−5を産生する工程と:
【化3】
【0009】
(b)化合物I−5を0℃から40℃の温度にて還元剤により還元して、化合物I−6を産生する工程と:
【化4】
【0010】
(c)化合物I−6を溶媒および触媒の存在下で酸化剤により酸化して、化合物I−7を産生する工程と:
【化5】
【0011】
(d)化合物I−7をリン酸化合物A−4と反応させて:
【化6】
【0012】
化合物I−8を産生する工程と:
【化7】
【0013】
(e)化合物I−8を触媒の存在下で還元して、化合物I−9を産生する工程と:
【化8】
【0014】
(f)化合物I−9を酸と反応させて、化合物I−10を産生する工程と:
【化9】
【0015】
(g)化合物I−10を触媒の存在下で還元して、化合物I−11を産生する工程と;
を含み、
式中、P
1およびP
2はそれぞれ独立して、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、Ns、MozおよびTsからなる群から選択され;
R
1は、C
1−6アルキル、ベンジルおよびフェニルからなる群から選択される。
【0016】
一実施形態において、前述の工程(c)における溶媒は、THF、MTBE、CH
2Cl
2、MeCN、トルエン、およびこれらを2つ含む混合溶媒からなる群から選択される。別の実施形態において、酸化剤は、NaOCl、NaClO
2、過酸化水素、ピリジン三酸化硫黄、PCCおよびDCCからなる群から選択される。別の実施形態において、触媒はTEMPOまたはTEMPO類似体である。
【0017】
一実施形態において、工程(d)におけるI−7とA−4との反応は、約20から40℃の温度で実行される。別の実施形態において、反応は、THF、MTBE、CH
2Cl
2、MeCN、トルエン、およびこれらを2つ含む混合溶媒からなる群から選択される溶媒の存在下で実行される。
【0018】
一実施形態において、還元工程(e)において使用される触媒は、Pd、ラネーNi、Pt、PdCl
2およびPd(OH)
2からなる群から選択される。別の実施形態において、還元は、水素ガスの存在下で実行される。
【0019】
一実施形態において、工程(f)における酸は、HCl、HBr、TFA、MeSO
3H、TfOH、H
2SO
4、パラトルエンスルホン酸、およびRがアルキル、アリールまたは置換アリールであるRSO
3Hからなる群から選択される。
【0020】
一実施形態において、工程(g)の還元は、HMDSの存在下で実行される。別の実施形態において、用いられる触媒は、アルミナ上Pt、アルミナ上Pd、Pd/C、Pd(OH)
2−C、ラネーNi、Rh/C、Rh/Al、Pt/C、Ru/CおよびPtO
2からなる群から選択される。
【0021】
一実施形態において、化合物I−1から化合物I−11への複数工程反応はさらに、化合物I−3を:
【化10】
【0022】
KRED酵素の存在下で還元して、化合物I−4を産生する工程を含む。
【化11】
【0023】
一実施形態において、KRED酵素は、配列番号1のポリペプチドおよび配列番号2のポリペプチドからなる群から選択される。
【0024】
別の実施形態において、補因子リサイクル系が、KRED酵素の他にも存在する。適切な補因子リサイクル系として、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
一実施形態において、配列番号1のKRED酵素および配列番号3の補因子リサイクル系が、I−3からI−4への還元において存在する。
【0026】
別の実施形態において、配列番号2のKRED酵素および配列番号4の補因子リサイクル系が、I−3からI−4への還元において存在する。
【0027】
一実施形態において、電子を供与することができる補因子分子が、KRED酵素の他にも存在する。一実施形態において、補因子はNADHおよびNADPHからなる群から選択される。
【0028】
一実施形態において、化合物I−1から化合物I−11への複数工程反応はさらに、化合物I−1を:
【化12】
【0029】
塩化ベンゾイルおよび保護試薬と反応させて、化合物I−3を産生する工程を含み:
【化13】
【0030】
式中、P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、MozおよびTsからなる群から選択される保護基であり;R
1は、C
1−6アルキルまたはアリールである。
【0031】
一実施形態において、R
1は、メチル、エチル、プロピルまたはブチルである。別の実施形態において、R
1は、メチル、エチルまたはフェニルである。一実施形態において、P
1はBocである。
【0032】
一実施形態において、化合物I−1から化合物I−3への変換は、化合物I−2を介して実行され:
【化14】
【0033】
式中、R
1は、C
1−6アルキルまたはアリールであり;P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、MozおよびTsからなる群から選択される。
【0034】
一実施形態において、I−1からI−3への変換は:
【化15】
【0035】
を含み、
式中、R
1は、C
1−6アルキルまたはアリールであり;P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、MozおよびTsからなる群から選択される。一実施形態において、R
1はメチルまたはエチルであり、P
1はBocである。
【0036】
一実施形態において、前述の工程(a)または(b)は、塩基の存在下で実行される。適切な塩基として、NaOH、KOH、Na
2CO
3、K
2CO
3、NaHCO
3、K
3PO
4、Et
3N、i−Pr
2Netおよびピリジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、塩基はNaHCO
3、Na
2CO
3またはEt
3Nである。
【0037】
一実施形態において、工程(b)における保護試薬は、Boc
2Oである。
【0038】
一実施形態において、I−1からI−3への変換は、適切な触媒の存在下で実行される。一実施形態において、触媒はDMAPである。
【0039】
一実施形態において、I−1からI−3への変換は、0℃から60℃、またはより具体的には0℃から40℃、またはさらにより具体的には20℃から30℃の温度で実行されてよい。一実施形態において、温度は20℃から30℃である。
【0040】
一実施形態において、前述のI−1からI−3への変換は、Novel N→C Acyl Migration Reaction of Acyclic Imides:A Facile Method for α−Aminoketones and β−Aminoalcohols,Hara,et.al.,Tetrahedron Letter,Vol.39,page 5537(1998)に記載されるのと類似した合成プロセスを用いて実行されてよい。
【0041】
一実施形態において、化合物I−3の化合物I−4への変換は、KRED酵素の存在下での動的速度論的分割(DKR)還元を介しており:
【化16】
【0042】
式中、R
1は、C
1−6アルキルまたはアリールであり;P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、MozおよびTsからなる群から選択される保護基である。一実施形態において、R
1はメチルまたはエチルである。一実施形態において、P
1はBocである。
【0043】
一実施形態において、I−3のI−4への酵素学的還元は、溶媒中で実行される。適切な溶媒として、IPA、DMSO、DMF、DMAcおよびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、溶媒はDMSOである。
【0044】
一実施形態において、I−3からI−4へのDKR還元に適した温度は、0℃から60℃、またはより具体的には10℃から40℃、またはさらにより具体的には20℃から35℃である。一実施形態において、温度は約30℃である。
【0045】
一実施形態において、補因子リサイクル系およびNADPH補因子とカップリングするKRED酵素が用いられて、化合物I−3を還元し、化合物I−4を得る。I−3のI−4へのKRED触媒還元に適した反応条件が、以下、実施例において示される。
【0046】
クラスEC1.1.1.184に属するKRED酵素は、対応するプロ立体異性ケトン基質からの、対応するラセミアルデヒドおよびケトン基質の立体特異的還元による、光学活性アルコールの合成に有用である。
【0047】
KRED酵素は、一般的に、ケトンまたはアルデヒド基質を、対応するアルコール産物に変換するが、逆反応(アルコール基質の、対応するケトン/アルデヒド産物への酸化)を触媒することもできる。KRED等の酵素による、ケトンおよびアルデヒドの還元、ならびにアルコールの酸化は、一般的に、補因子を必要とし、最も一般的なのは、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)または還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)であり、そして酸化反応については、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)である。NADHおよびNADPHは電子供与体として機能するが、NADおよびNADPは電子受容体として機能する。KRED酵素は、リン酸化補因子または非リン酸化補因子の何れかを用いていることが多い。
【0048】
KRED酵素は、様々なケトおよびアルデヒド化合物のキラルアルコール産物への変換のための化学手順に代えて、用いられてよい。これらの生体触媒変換は、生体触媒ケトン還元に関わるケトレダクターゼを発現する細胞全体、または精製酵素(特に細胞全体における複数のケトレダクターゼの存在が、所望される産物のエナンチオマー純度および収率に悪影響を及ぼす場合)に従事してよい。インビトロ用途のために、補因子(NADHまたはNADPH)再生酵素(グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)およびホルメートデヒドロゲナーゼ等)が一般的に、ケトレダクターゼと共に用いられる。
【0049】
有用な化学化合物を生じさせるための生体触媒プロセスにおける、天然に存在する、または設計されたKRED酵素の使用を説明する例として、4−クロロアセト酢酸エステルの不斉還元(Zhou,J.Am.Chem.Soc.1983 105:5925−5926;Santaniello,J.Chem.Res.(S)1984:132−133;米国特許第5,559,030号明細書;米国特許第5,700,670号明細書および米国特許第5,891,685号明細書)、ジオキソカルボン酸の還元(例えば、米国特許第6,399,339号明細書)、tert−ブチル(S)−クロロ−5−ヒドロキシ−3−オキソヘキサノエートの還元(例えば、米国特許第6,645,746号明細書および国際公開第01/40450号パンフレット)、ピロロトリアジンベースの化合物の還元(例えば、米国特許出願公開第2006/0286646号明細書)、置換アセトフェノンの還元(例えば、米国特許第6,800,477号明細書)、およびケトチオランの還元(国際公開第2005/054491号パンフレット)が挙げられる。
【0050】
天然に存在するKRED酵素は、広範な細菌および酵母において見つけることができる(総説:Kraus and Waldman,Enzyme catalysis in organic synthesis Vols.1&2.VCH Weinheim 1995;Faber,K.,Biotransformations in organic chemistry,4th Ed.Springer,Berlin Heidelberg New York.2000;Hummel and Kula Eur.J.Biochem.1989 184:1−13)。いくつかのKRED遺伝子および酵素配列が報告されており:Candida magnoliae(Genbank Acc.No.JC7338;GI:11360538)、Candida parapsilosis(Genbank Acc.No.BAA24528.1;GI:2815409)、Sporobolomyces salmonicolor(Genbank Acc.No.AF160799;GI:6539734)、Lactobacillus kefir(Genbank Acc.No.AAP94029.1;GI:33112056)、ラクトバチルス・ブレビス菌(Genbank Acc.No.1NXQ_A;GI:30749782)、Exiguobacterium acetylicum(Genbank Acc.No.BAD32703.1)およびThermoanaerobium brockii(Genbank Acc.No.P14941;GI:1771790)が挙げられる。
【0051】
I−3のI−4へのKRED触媒還元は、電子供与体が溶液中に存在することを必要とする。通常、補因子が、KRED還元反応における電子供与体として用いられる。補因子は、プロセスにおいて、KREDおよび/またはGDHと共同して機能する。適切な補因子として、NADP
+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)、NADPH(NADP
+の還元型)、NAD
+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、およびNADH(NAD
+の還元型)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。通常、補因子の還元型が反応混合物に加えられる。従って、本開示の方法は、NADPH補因子またはNADH補因子から選択される電子供与体が存在する中で、実行される。ある実施形態において、NADHまたはNADPH補因子濃度が、約0.03から0.5g/L、約0.05から0.3g/L、約0.1から0.2g/L、約0.5g/L、約0.1g/L、または約0.2g/Lである反応条件の方法が、実行されてよい。
【0052】
プロセスの一部の実施形態において、補因子リサイクル系が、反応において産生される補因子NADPH/NADH型NADP
+/NAD
+を再生するために用いられる。補因子リサイクル系は、補因子の酸化型を還元する(例えば、NADP
+からNADPHへ)ことによって、KRED触媒作用を続けさせる一連の反応物を指す。補因子リサイクル系はさらに、二次基質、ならびに、還元剤によって補因子の酸化型の還元を触媒する触媒、例えば、基質グルコースおよび酵素GDH、を含んでよい。NAD
+またはNADP
+からNADHまたはNADPHをそれぞれ再生する補因子リサイクル系が、当該技術において知られており、本明細書中で記載される方法において用いられてよい。用いられてよい適切な補因子リサイクル系の例として、グルコースおよびグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、ホルメートおよびホルメートデヒドロゲナーゼ(FDH)、グルコース−6−リン酸およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、第二級(例えば、イソプロパノール)アルコールおよび第二級アルコールデヒドロゲナーゼ、ホスファイトおよびホスファイトデヒドロゲナーゼ、分子水素およびヒドロゲナーゼ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの系は、補因子としてNADP
+/NADPHまたはNAD
+/NADHの何れと共同して用いられてもよい。ヒドロゲナーゼを用いる電気化学的再生が、補因子再生系として用いられてもよい。例えば、米国特許第5,538,867号明細書および米国特許第6,495,023号明細書を参照(これらは双方とも、参照によって本明細書中に組み込まれる)。金属触媒および還元剤(例えば、分子水素またはホルメート)を含む化学補因子再生系もまた適している。例えば、PCT公報である国際公開第2000/053731号パンフレットを参照(これは、参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0053】
本開示の一部の実施形態において、補因子リサイクル系はグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含んでよく、これは、D−グルコース(デキストロース)およびNAD
+またはNADP
+の、それぞれグルコン酸およびNADHまたはNADPHへの変換を触媒するNAD
+またはNADP
+依存性酵素である。本明細書中で記載されるプロセスの実施における使用に適したGDH酵素として、天然に存在するGDHだけでなく天然に存在しないGDHの双方が挙げられる。天然に存在するグルコースデヒドロゲナーゼコード遺伝子が、文献において報告されている(例えば、枯草菌61297 GDH遺伝子、セレウス菌ATCC 14579、および巨大菌)。天然に存在しないGDHが、例えば、突然変異生成、指向性進化等を用いて生成されており、PCT公報である国際公開第2005/018579号パンフレット、ならびに米国特許出願公開第2005/0095619号明細書および米国特許出願公開第2005/0153417号明細書において示されている。
【0054】
一部の実施形態において、補因子リサイクル系はホルメートデヒドロゲナーゼ(FDH)を含んでよく、これは、ホルメートおよびNAD
+またはNADP
+の、それぞれ二酸化炭素およびNADHまたはNADPHへの変換を触媒するNAD
+またはNADP
+依存性酵素である。本明細書中で記載されるKRED触媒反応における補因子再生系としての使用に適したFDHとして、天然に存在するホルメートデヒドロゲナーゼおよび天然に存在しないホルメートデヒドロゲナーゼが挙げられる。適切なホルメートデヒドロゲナーゼが、PCT公報である国際公開第2005/018579号パンフレットに記載されている。ホルメートは、塩(一般的にアルカリまたはアンモニウム塩)(例えば、HCO
2Na、KHCO
2NH
4等)の形態で、ギ酸(一般的に水性ギ酸)の形態で、またはこれらの混合物の形態で与えられてよい。塩基またはバッファが、所望のpHを与えるために用いられてよい。
【0055】
一部の実施形態において、補因子再生系は、I−3のI−4への還元を触媒する同KRED酵素を含んでよい。このような実施形態において、I−3のI−4への還元を触媒する同KREDはまた、第二級アルコールの酸化(例えば、イソプロパノールからアセトンへの酸化)を触媒し、これによって同時にNAD
+またはNADP
+をNADHまたはNADPHに還元する。従って、一部の実施形態において、I−3のI−4へのKRED触媒変換は、第二級アルコール(例えば、IPA)の存在下で実行されてよく、NADPHまたはNADH補因子をリサイクルするために補酵素(例えば、GDH)が溶液中に存在せずともよい。このような実施形態において、適切な反応条件は、IPA濃度が約55から75%(v/v)、NADPHまたはNADH補因子ローディングが約0.03から0.5g/Lであってよく、補因子リサイクル酵素はKREDそれ自体以外に存在しない。
【0056】
化合物I−3のI−4へのKRED触媒変換における使用に適した補因子リサイクル系として、基質グルコース(L−またはD−グルコース)とカップリングする補酵素グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)が挙げられる。適切なGDH補因子として、配列番号3のポリペプチドのGDHおよび配列番号4のポリペプチドのGDH(双方ともCodexis Inc.,Redwood City,Californiaから市販されている)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
一実施形態において、化合物I−5は、化合物I−4をアセトニド保護剤と反応させることによって調製され:
【化17】
【0058】
式中、R
1は、C
1−6アルキル、ベンジルおよびフェニルからなる群から選択され;P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、Ns、MozおよびTsからなる群から選択される。一実施形態において、R
1は、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびベンジルからなる群から選択される。別の実施形態において、P
1はBocである。
【0059】
適切なアセトニド保護試薬として、2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジエトキシルプロパン、2−メトキシプロペンおよびアセトンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、アセトニド保護試薬は、2,2−ジメトキシプロパンである。
【0060】
I−4からI−5への反応は、溶媒の存在下で実行されてよい。適切な溶媒として、トルエン、アセトン、THF、IPAc、ジクロロメタン、EtOAc、MeCNおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、溶媒は、トルエンおよびアセトンの混合物である。
【0061】
I−4からI−5への反応は、酸の存在下で実行されてよい。適切な酸として、三ハロゲン化ホウ素、有機ボラン、HCl、H
2SO
4、TFA、H
3PO
4およびTiCl
4が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、酸はBF
3である。別の実施形態において、BF
3は三フッ化ホウ素エーテレート(BF
3・O(Et)
2)の形態である。
【0062】
I−4からI−5への反応は、10℃から50℃、またはより具体的には20℃から40℃の温度で実行されてよい。20℃から40℃へ反応温度を上げることで、産物プロフィールに影響を及ぼすことなく、反応速度を2から3倍上げることができることがわかった。
【0063】
一実施形態において、化合物I−6は、化合物I−5から還元剤により調製され:
【化18】
【0064】
式中、R
1は、C
1−6アルキル、ベンジルおよびフェニルからなる群から選択され;P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、Ns、MozおよびTsからなる群から選択される。一実施形態において、R
1は、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびベンジルからなる群から選択される。別の実施形態において、P
1はBocである。
【0065】
適切な還元剤として、LiAlH
4、LiBH
4、NaBH
4−LiBr、およびDIBALが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、還元剤はLiAlH
4である。別の実施形態において、還元剤はLiBH
4である。さらに別の実施形態において、還元剤LiBH
4は、例えばNaBH
4およびLiBrの共同使用によって、インサイチュで生じてよい。
【0066】
還元剤の量は概して、0.8から1.6等量、またはより具体的には1.0から1.4等量である。
【0067】
一実施形態において、I−5からI−6への還元は、0℃から60℃、またはより具体的には0℃から35℃、またはさらにより具体的には20℃から30℃の温度で実行される。一実施形態において、温度は20℃から30℃である。
【0068】
一実施形態において、化合物I−6の化合物I−7への酸化は、触媒の存在下で、酸化剤により実行され:
【化19】
【0069】
式中、P
1は、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、Ns、MozおよびTsからなる群から選択される。一実施形態において、P
1はBocである。
【0070】
適切な酸化剤として、NaOCl、NaClO
2、過酸化水素、Swern酸化および変異形(ピリジン三酸化硫黄、PCCおよびDCC等)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、酸化剤はNaOClである。
【0071】
酸化剤の量は、通常は1.1等量から1.3等量、またはより具体的には1.2等量から1.25等量である。一実施形態において、酸化剤の量は1.25等量である。
【0072】
前述の酸化反応に適した触媒として、TEMPOおよびTEMPO類似体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、触媒はTEMPOである。
【0073】
本明細書中で記載されるプロセスの1つの利点は、酸化工程由来の化合物I−7を、次のホーナー・ワズワース・エモンズ(以下、「HWE」)工程において直接用いて、化合物I−8を製造することができることである。このワンポットプロセスにより、溶媒を切り換える必要が除外されて、収率を上げることができ、かつコストを引き下げることができる。
【0074】
一実施形態において、I−6からI−7への酸化工程は、溶媒の存在下で実行されてよい。適切な溶媒として、THF、MTBE、CH
2Cl
2、MeCN、トルエンおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、溶媒はトルエンおよびMeCNの混合物である。別の実施形態において、溶媒はCH
2Cl
2およびMeCNの混合物である。
【0075】
一実施形態において、I−7とA−4とのHWE反応は、溶媒の存在下で実行され:
【化20】
【0076】
式中、P
1およびP
2はそれぞれ独立して、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、Ns、MozおよびTsからなる群から選択される。一実施形態において、P
1およびP
2は双方ともBocである。
【0077】
適切な溶媒として、THF、MTBE、CH
2Cl
2、MeCN、トルエン、およびこれらを2つ含む混合溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、溶媒はトルエンおよびMeCNの混合物である。
【0078】
HWE反応は、通常、−10から50℃、またはより具体的には、0から40℃の温度で実行される。一実施形態において、温度は0から25℃である。別の実施形態において、温度は40℃である。
【0079】
HWE反応は、通常、塩基または塩の存在下で実行される。一実施形態において、塩基は第三級アミンである。別の実施形態において、塩基はN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)である。
【0080】
一実施形態において、塩はハロゲン化リチウム、またはより具体的には、LiClまたはLiBrである。
【0081】
HWE反応において、不純物化合物I−21(アルドールディマー(aldol dimmer)副産物)が、化合物I−8に加えて形成され得る。
【化21】
【0082】
反応後にpHを6.5から7.0の間に調整することによって、純度のより高い化合物I−8を高い収率で得ることができることがわかった。その上、より多くの反応化合物A−4の添加が、不純物I−21を産物I−8へ至らせることが示された。一実施形態において、さらなる0.2等量のA−4の添加が、I−21のレベルを8LCAPから2LCAPにまで下げることができる。
【0083】
反応温度を上げることで、所望の産物化合物I−8への変換速度を上げることができ、かつ副産物化合物I−21のレベルを下げることができる。
【0084】
反応をバッチプロセスから添加制御プロセスへ変えることによって、化合物I−8の収率を上げることができ、かつ副産物化合物I−21のレベルを下げることができる。例えば、反応化合物I−7を、反応化合物A−4を含有する溶液に加えることによって、I−21のレベルを下げることができ、かつ化合物I−8の収率を向上させることができる。
【0085】
一実施形態において、1.2等量のA−4、3等量のDIPEA、および3等量のLiClを含有する5容量のMeCN溶液を調製し、40℃に温めた。その後、化合物I−7のトルエンストリームを3時間にわたってこの混合物に加えて、追加の30分のエージング後、産物への変換が完了した。不純物I−21のレベルは、約〜1LCAPであった。1時間間隔での反応サンプリングによれば、反応混合物中に化合物I−7のビルドアップはないことが示された。仕上り後、産物は90%の単離収率で単離された。
【0086】
より僅かに少ない量の反応物A−4を用いて、化合物I−8の収率に負の影響が及ばないこともわかった。一実施形態において、1.2等量の代わりに1.0等量の化合物A−4を用いてもなお高い収率が得られた。
【0087】
HWE反応で用いられる化合物A−4は、化合物A−1から調製されてよく:
【化22】
【0088】
A General Procedure for the Preparation of β−Ketophosphonates,Maloney et.al,J.Org.Chem.,74,page 7574−7576(2009)に記載されるのと類似した合成工程および条件を用いることによる。
【0089】
一実施形態において、化合物I−8の還元による化合物I−9の産生が、触媒の存在下で実行され:
【化23】
【0090】
式中、P
1およびP
2はそれぞれ独立して、Ac、Bn、Boc、Bz、Cbz、DMPM、FMOC、Ns、MozおよびTsからなる群から選択される。一実施形態において、P
1およびP
2は双方ともBocである。
【0091】
適切な触媒として、Pd、ラネーNi、Pt、PdCl
2およびPd(OH)
2が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、触媒は5%Pd/Cである。
【0092】
別の実施形態において、I−8からI−9への還元は、溶媒の存在下で実行される。適切な溶媒として、THF、MTBE、CH
2Cl
2、MeCN、トルエン、メタノール、エタノール、2−プロパノールおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、溶媒はTHFである。
【0093】
別の実施形態において、還元反応は、2から300psigの、好ましくは約40psigの圧力の水素ガスを用いて、触媒の存在下で実行される。
【0094】
一実施形態において、化合物I−9が酸と反応して、環化反応を介して化合物I−10を産生する。
【化24】
【0095】
適切な酸として、HCl、HBr、TFA、MeSO
3H、TfOH、H
2SO
4、パラトルエンスルホン酸および他のスルホン酸(RSO
3H(RがC
1−6アルキル、アリールまたは置換アリールである)等)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、酸はHClである。
【0096】
一実施形態において、HClが酸として用いられ、化合物I−10のHCl塩が得られる。一実施形態において、HCl塩は、ビスHCl塩の形態である。別の実施形態において、ビスHCl塩は、一水和物の形態である。別の実施形態において、化合物I−10のビスHCl塩の一水和物は、結晶質である。
【0097】
I−9からI−10への変換は、0から40℃、またはより具体的には15から25℃、またはさらにより具体的には20から25℃の温度で実行されてよい。一実施形態において、温度は20から25℃である。
【0098】
一実施形態において、化合物I−10は、触媒の存在下で化合物I−11に還元される。
【化25】
【0099】
I−10からI−11への変換のための反応条件が制御されて、シス選択性水素化プロセスが得られてよい。一実施形態において、シス選択性水素化が、触媒の存在下で実行される。適切な触媒として、アルミナ上Pt、アルミナ上Pd、Pd/C、Pd(OH)
2−C、ラネーNi、Rh/C、Rh/Al、Pt/C、Ru/CおよびPtO
2が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、触媒はアルミナ上Ptである。
【0100】
別の実施形態において、I−10からI−11へのシス選択性水素化がHMDSの存在下で実行され、これによりヒドロキシ基をインサイチュで保護することができるので、ジアステレオ選択性を向上させることができる。他の適切な保護試薬として、TMSCl、TESClおよびTBDMSClが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
一実施形態において、化合物I−11は、結晶性無水遊離塩基の形態で得られる。別の実施形態において、化合物I−11は、結晶性遊離塩基半水和物の形で得られる。
【0102】
本明細書中で用いられる用語「アルキル」は、特定の炭素原子数を有する分枝鎖および直鎖の双方の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、C
1−6アルキルとして、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル(Pr)、n−ブチル(Bu)、n−ペンチル、n−ヘキシル、およびこれらの異性体(イソプロピル(i−Pr)、イソブチル(i−Bu)、secブチル(s−Bu)、tert−ブチル(t−Bu)、イソペンチル、sec−ペンチル、tert−ペンチルおよびイソヘキシル等)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本明細書中で用いられる用語「アリール」は、芳香族炭素環を指す。例えば、アリールとして、フェニルおよびナフタレ(naphthale)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
本願の全体を通じて、以下の用語は、特に明記しない限り、示された意味を有する:
用語 意味
Ac アシル(CH
3C(O)−)
Aq 水性
Bn ベンジル
BOC(Boc) t−ブチルオキシカルボニル
Boc
2O ジ−tert−ブチルジカーボネート
Bz ベンゾイル
℃ 摂氏度
Calc.またはcalc’d 算出された
Cbz カルボベンジルオキシ
CDI 1,1’カルボニルジイミダゾール
DCC N,N’−ジシクロヘキシカルボジイミド
DCM ジクロロメタン
DKR 動的速度論的分割
DMAc N,N−ジメチルアセトアミド
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMPM 3,4−ジメトキシベンジル
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
Eq.またはequiv. 等量
ES−MSおよびESI−MS エレクトロンスプレーイオン質量分光法
Et エチル
EtOAc 酢酸エチル
FMOC 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
g グラム
hまたはhr 時
HATU O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBTU O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HCl 塩化水素
HMDS ヘキサメチルジシラザン
HPLC 高性能液体クロマトグラフィ
HOAc 酢酸
HOBT 1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール
HOPO 2−ヒドロキシピリジン−N−オキサイド
IPA イソプロピルアルコール
kg キログラム
LC/MSまたはLC−MASS 液体クロマトグラフィ質量スペクトル
L リットル
LAHまたはLiAlH
4 水素化アルミニウムリチウム
LCAP 液体クロマトグラフィ領域パーセント
LiBH
4 水素化ホウ素リチウム
M モラー
Me メチル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
min 分
mg ミリグラム
mL ミリリットル
mmol ミリモル
mozまたはMeOZ p−メトキシベンジルカルボニル
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
NADP ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェートナトリウム塩
nM ナノモラー
Ns 4−ニトロベンゼンスルホニル
PCC ピリジニウムクロロクロメート
5%Pd/C 5重量パーセント活性炭上パラジウム
Ph フェニル
r.t.またはrtまたはRT RT
Sat. 飽和
TBDMSCl tert−ブチルジメチルシリルクロリド
TEAまたはEt
3N トリエチルアミン
TEMPO 1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン
TESCl トリエチルクロロシラン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMSCl トリメチルクロロシラン
Ts p−トルエンスルホニル
以下の反応スキームは、本明細書中で記載される化合物の合成において用いられる合成工程、試薬および条件を説明する。本発明の主題である化合物I−11の合成は、1つまたは複数の類似の経路によって達成されてよい。
【実施例1】
【0105】
[出発化合物I−5bからの化合物i−11の調製]
スキーム1
【化26】
【0106】
スキーム1において、ワンポットスループロセス(one−pot through process)により、出発材料i−1からケトアミドi−3を産生した。酵素学的DKR還元により、i−3からi−4を産生した。保護後、エステルi−5をLAHまたはLiBH
4によりアルコールi−6に還元した。
【0107】
化合物i−6を得て、TEMPO酸化によってi−7に変換した。TEMPO酸化およびその後のHWEカップリング工程のために、ワンポットスループロセス(one−pot through process)を用いて、相を切り離した後のアルデヒドi−7の粗蒸気をHWE反応に直接用いて、溶媒切換えを回避した。不飽和ケトンi−8を、5つの工程にわたって単離した。最後に、化合物i−8を、i−9およびi−10を介して化合物i−11に変換した。詳細な実験条件を以下に記載する。
【0108】
[工程1.化合物i−1からの化合物i−3の調製]
【化27】
【0109】
Na
2CO
3(110g、1.034mol)の水(606mL)およびEtOAc(606mL)中混合物(0から5℃)に、グリシンメチルエステル(i−1、119g、948mmol)を30分にわたって分けて加えた。生じたスラリーをさらに15から30分間エージングしてから、PhCOCl(100ml、0.862mol)を0から5℃にて1.5時間にわたって滴加した。0から5℃でさらに1時間エージングした後、反応混合物を25℃に温めて、均質な二相溶液が形成された。分離した有機相を共沸的に濃縮し、溶媒をMeCNに切り換えた。約600mLの最終容量が得られた。
【0110】
DMAP(43.1mmol、5.26g)を加えてから、Boc
2O(0.948mol、207g)のMeCN溶液(200mL)をRTにて2から3時間にわたって滴加した。反応溶液をRTで約6時間エージングした。バッチをN
2により3回真空脱気して、アミド化工程で発生したCO
2を除去した。THF(540mL、KF<500)を反応溶液に加えた。続いて、t−BuOK(1.12mol、128g、97%)のTHF溶液(670ml)を、0から10℃にて1から2時間にわたって滴加した。反応溶液を0から5℃で1時間エージングした。
【0111】
続いて、反応を、15wt%クエン酸水(515mL H
2O中0.431mol、91g クエン酸)(<10℃)で急冷した。有機相を480mLの半飽和NaCl水で洗浄し、溶媒をIPAに切り換え、最終容量を約1.25Lにした(<45℃にてIPA中約10%水であった)。バッチを40から50℃に温めた。水(1250mL)を40から50℃にて2時間にわたって滴加して、スラリーが生じた。
【0112】
スラリーを周辺温度(20℃)に冷却し、1から2時間エージングして濾過した。i−3のウェットケーキを、30%IPA水(640mL×2)で置換洗浄した。RTでの吸引乾燥、または乾燥N
2スイープによる<50℃での真空オーブン乾燥により、227gの白色の結晶性固体i−3が与えられ、以下に記載するHPLCによって決定して、90%の収率であった。
【0113】
[HPLC法]
カラム:Asentis Express C18,4.6×150mm,2.7μm粒子サイズ;
カラム温度:30℃;流量:1.5mL/分;UV検出:210nm;
移動相:A:0.1%H
3PO
4 B:アセトニトリル
移動相プログラム:
【表1】
【0114】
[工程2.DKR還元による化合物i−3からの化合物i−4の調製]
【化28】
【0115】
K
2HPO
4(14.1g)のRTの80mL水溶液に、デキストロース(9.8g)に続いて、NADP(360mg)、配列番号2のKRED酵素(290mg)および配列番号4の補因子リサイクル系(115mg)を加えた。生じた均質な溶液を、使用前に2M NaOHでpH調整して最低でも7.5にした。
【0116】
i−3(12.0g)のDMSO溶液(36ml)(30℃)を、前述の水性酵素溶液に30℃にて4時間にわたって激しい撹拌下で滴加した。2M NaOH(約21mL)を滴加して、反応混合物のpHを7.3から7.7に維持した。2M NaOH溶液を90%(約19mL)加えると、反応温度は、>95%の変換が達成されるまで35℃に上昇した。
【0117】
IPA(91mL)およびMTBE(49mL)をRTで加えた。有機層を分離した。水性相をIPA/MTBE(140ml、IPA:MTBE=20:80)で抽出した。併合有機相をブライン(50mL、10%w/vブライン)で洗浄し、化合物i−4を含有する粗産物を、次の工程に直接用いた。
【0118】
以下のHPLC法を用いて、i−3およびi−4の保持時間はそれぞれ約8.8および7.8分であった。
【0119】
[HPLC法]
カラム:Ace 3 Column C18,3×150mm,3μm粒子サイズ
カラム温度:30℃;流量:0.75mL/分;UV検出:215nm;
移動相:A:ホルメートバッファ,pH4(1.26g HCO
2Naおよび0.79mL HCO
2H(1L H
2O中))
B:アセトニトリル
移動相プログラム:時間(分)%B
0 5
10 95
[キラルSFC法]
カラム:Chiralpak IC,250×4.6mm,5μm粒子サイズ
カラム温度:35℃;流量:2mL/分;UV検出:210nm;
移動相プログラム:
【表2】
【0120】
[工程3.アセトニド保護による化合物i−4からの化合物i−5の調製]
【化29】
【0121】
i−4エステルのトルエン溶液(10.6g、約25から30mLのトルエン中、先のDKR工程由来の粗溶液)に、50mLのアセトンおよび20mlの2,2−ジメトキシプロパンを加えた。続いて、BF
3エーテラート(0.43mL)のトルエン溶液(2mL)を、シリンジポンプを介してRTにて2時間にわたって加えた。反応溶液をRTで15時間エージングした。変換は、HPLCによって>97%であるとわかった。i−4およびi−5の保持時間はそれぞれ約4.5分および6.5分であった。
【0122】
Et
3N(0.5mL)を滴加した。周辺温度でのさらに15分間のエージング後、溶液の溶媒をトルエン(約30mL)に切り換えながら、大部分のアセトンを真空除去した。MTBE(60mL)を加え、有機相を5%NaHCO
3/ブライン(40mL)で洗浄した。有機相を共沸的に乾燥し、溶媒をトルエンに切り換え、最終容量を約35から40mLにした。
【0123】
[HPLC法]
カラム:Asentis Express C18,4.6×150mm,2.7μm粒子サイズ;
カラム温度:40℃;流量:1.5mL/分;UV検出:210nm;
移動相:A:0.1%H
3PO
4 B:アセトニトリル
移動相プログラム:
【表3】
【0124】
[工程4.化合物i−5の還元による化合物i−6の調製]
化合物i−6を、2つの代替条件下で、化合物i−5の還元から調製してよい。
【0125】
オプション1:LAH還元:
【化30】
【0126】
i−5エステルのトルエン粗溶液(8.28gアッセイ、先の保護工程由来、トルエンの約2.5から3vol中)に、40mLのTHFを加えた。続いて、溶液を0℃に冷却した。LiAlH
4(THF中2M溶液、6.9mL)を1時間にわたって滴加し、この間、内部温度を0から5℃に保った。反応溶液をさらに0.5から1時間エージングした。変換は、HPLCによれば>99%であった。0から5℃にて、2.0mLのTHF中0.52mLのH
2Oを、続いて0.52mLの15%NaOHを、続いて1.56mLのH
2Oをゆっくり加えた。スラリー混合物をRTにまで温めて、Solka Flocを通して濾過した。ウェットケーキをTHF(25mL)およびトルエン(16mL)で洗浄した。
【0127】
以下のHPLC法を用いて、91%のアッセイ収率を得た。i−5およびi−6の保持時間はそれぞれ約6.5分および5.7分であった。
【0128】
[HPLC法]
カラム:Asentis Express C18,4.6×150mm,2.7μm粒子サイズ;
カラム温度:40℃;流量:1.5mL/分;UV検出:210nm;
移動相:A:0.1%H
3PO
4 B:アセトニトリル
移動相プログラム:
【表4】
【0129】
オプション2:LiBH
4還元:
【化31】
【0130】
i−5エステルのトルエン粗溶液(11.1gアッセイ、先の保護工程由来、トルエンの約2.5から3vol中)を、LiBH
4(0.937g)のTHF中混合物(60mL)に15から30分にわたって加えた。続いて、反応溶液を35℃で15時間エージングした。変換は、HPLCによれば>97%であった。
【0131】
反応溶液をRTに冷却し、逆に急冷して内部温度を外部冷却により5℃未満に維持しながら、10%NH
4Cl(40mL)の溶液に入れた。急冷した溶液を周辺温度にて2から3時間、またはH
2ガスの発生が止まるまで、エージングした。MTBE(100mL)を加えた。水性層を廃棄し、有機層は溶媒をトルエンに切り換えて、最終容量を約40mLにし、これを以降の酸化工程に直接用いた。アッセイ収率は92%であり、水性ロスは1.2%であった。
【0132】
[工程5.化合物i−6のTEMPO酸化による化合物i−7の調製]
【化32】
【0133】
i−6アルコールのトルエン溶液(20gアッセイ、約60mL)に、アセトニトリル(120mL)をRTにて加えた。続いて、KBr(1.16g)、NaHCO
3(1.8g)および水(40mL)をチャージして、二相混合物が生じた。二相混合物を5℃に冷却し、TEMPO(305mg)を加えた。続いて、NaClO溶液(Clorox;6wt%;101g)を0から5℃にて2時間にわたって滴加した。滴加後、反応を5℃にて約30分撹拌した。>96%の変換が得られた。
【0134】
反応を、5℃の10%亜硫酸ナトリウム(50mL)の滴加によって急冷した。有機層を分離して、次のHWEカップリング工程に、さらに精製することなく、直接用いた。アッセイ収率は、内部標準としてDMAcを用いた
1H NMRによれば、17.5g(88%)であった。
【0135】
以下のHPLC法を用いて、i−6およびi−7の保持時間はそれぞれ約3.3分および3.9分であった。
【0136】
[HPLC法]
カラム:Zorbax,Eclipse Plus C18,4.6mm×50mm,1.8μm粒子サイズ;
カラム温度:22℃;流量:1.5mL/分;UV検出:210nm;
移動相:A:95/5/0.1,H
2O/メタノール/H
3PO
4 B:95/5,MeCN/メタノール
移動相プログラム:
【表5】
【0137】
[工程6.ホーナー・ワズワース・エモンズ(HWE)カップリング反応によるi−8の調製]
【化33】
【0138】
先に得たi−7アルデヒドの−10℃のウェットトルエン/アセトニトリル溶液(162g溶液;17.5gアッセイ;10.81wt%)に、アセトニトリル(140mL)、ホスホネートa−4(24.6g)およびLiBr(14.9g)を加え、内部温度を0℃未満に維持した。
【0139】
反応を0℃にまで温め、ヒューニッヒ塩基(22.2g)を滴下により0から5℃にて2時間にわたってチャージした。生じた反応混合物を0から5℃にて2から4時間撹拌し、RTに温めてから、RTで12時間エージングした。HPLCによって、>99%の変換(産物/(産物+アルデヒド))が示された。
【0140】
スラリーを5℃に冷却して、クエン酸の10%水溶液(約75g)を滴加してpHを6.5から7.0に調整し、この間、バッチ温度を0から5℃に維持した。水性相を0から5℃にて分離し、廃棄した。
【0141】
有機層を、飽和NaHCO
3(57mL)で、そしてH
2O(57mL)で逐次洗浄した。有機相の溶媒をIPAに切り換え、最終容量を約192mLにした。産物は、蒸留中に徐々に結晶化した。
【0142】
水(16.4mL、0.6容量)を加え、生じたスラリーを49℃に加熱して均質な溶液を与えた。生じた溶液を40℃に冷却してシードさせた(0.27g)。生じた混合物を40℃で2時間エージングしてシードベッドを形成させ、H
2O(93mL)を滴下により40℃にて3時間にわたってチャージしてから、40℃で1時間エージングした。スラリーを2時間にわたって5から10℃に冷却してから、5から10℃で2時間エージングした。
【0143】
ウェットケーキを、50%H
2O/IPAで洗浄した(164mLのコールド置換洗浄に続いて、110mLのスラリー洗浄)。窒素下で吸引乾燥して、産物がオフ−ホワイト色の固体として与えられた(24.9g、100wt%、>99のLCAP、アルデヒドからの単離収率が80%)。
【0144】
以下のHPLC法を用いて、i−7、a−4およびi−8の保持時間はそれぞれ約3.0分、1.2分および3.8分であった。
【0145】
[HPLC法]
カラム:Zorbax,Eclipse Plus C18,4.6mm×50mm,1.8μm粒子サイズ;
カラム温度:40℃;流量:1.5mL/分;UV検出:210nm;
移動相:A:0.1%H
3PO
4;B:MeCN
移動相プログラム:
【表6】
【0146】
[工程7.化合物i−8からの化合物i−9の調製]
【化34】
【0147】
THF(84g)に続きエノンi−8(19.07g)および10%炭素上パラジウム(0.95g)を水素化処理ベッセルにチャージした。水素の取込みが止まるまで、バッチを25℃で90分水素化した。触媒を、solka flocのベッドの濾過によって除去した。濾過残留物をTHF(84g)で洗浄した。併合有機相の溶媒をIPAに切り換え、最終容量を142mLにし、これを次の工程において直接用いた。93%のアッセイ収率が得られた(17.8gのi−9)。
【0148】
以下のHPLC法を用いて、i−8およびi−9の保持時間はそれぞれ約11.2分および11.4分であった。
【0149】
[HPLC法]
カラム:HiChrom ACE C18(250×4.6mm),3μm粒子サイズ;
カラム温度:30℃;流量:1.0mL/分;検出:210nm,254nm;
移動相:A:1mLのリン酸(85%)(1LのH
2O中に溶解)B:MeCN
移動相プログラム:
【表7】
【0150】
[工程8.化合物i−9からの化合物i−10の調製]
【化35】
【0151】
N−Boc−ケトンアニリンi−9(26.1アッセイkg)のIPA溶液(約125g/L)に、IPA中4N HCl(220.8L)をRTにて加えた。反応混合物を20から25℃にて24時間激しく撹拌した。IPAを1バッチ容量までチャージすることによって一定の容量にてバッチを減圧化で蒸留し、HClを除去した。続いて、バッチを約215Lの最終容量に濃縮した。
【0152】
生じたスラリーを45℃に加熱し、IPAc(約430L)をバッチに2から3時間にわたってゆっくり加えた。続いて、スラリーを1から2時間にわたって約20℃に冷却し、一晩エージングした。バッチを濾過し、そしてケーキを、IPA:IPAcが1:2の混合物(52L)で、続いてIPAc(52L)で洗浄した。ウェットケーキを窒素雰囲気下で45℃にて乾燥して、環式イミンビス−HCl一水和物塩i−10(16.1kg)が与えられた。94%の単離収率が得られた。
【0153】
工程7(i−8からi−9)と同じHPLC法を用いて、i−9およびi−10(ビス−HCl塩)の保持時間はそれぞれ約11.3分および8.3分であった。
【0154】
[工程9.化合物i−10からの化合物i−11の調製]
【化36】
【0155】
N
2下のイミン二塩化水素化一水和物i−10(12.0g、98.5wt%)のTHF中混合物(86mL)に、ヘキサメチルジシラザン(10.95g)を加え、この間、バッチ温度を25℃未満に維持した。生じたスラリーを、周辺温度にて2時間激しく撹拌した。
【0156】
300mLのオートクレーブに、5%アルミナ上白金(0.605g)のTHF懸濁液(32mL)を、続いて先に調製した基質スラリーをチャージした。水素の取込みが止まるまで、生じた混合物を水素下(40psig)でRTにて撹拌した。水素化の完了をHPLCによって確かめ、ベッセルを窒素によって不活性にした。
【0157】
反応混合物をディスチャージし、ベッセルを96mLのTHFでリンスした。バッチをSolka Flocのパッドにより濾過し、パッドをTHFベッセルリンス(約96mL)でリンスした。併合濾液を、0.5M塩酸(129mL)と共に周辺温度で1時間撹拌した。水性層を分離した。IPAc(39mL)に続いて5N水酸化ナトリウム(約15mL)を激しく撹拌しながら加え、pHを10.0に調整した。
【0158】
有機層(約120mL)を分離し、RTにて2時間、AquaGuard Powder(Meadwestvaco)(2.4g)で処理した。溶液をSolka Flocのパッドにより濾過し、パッドを2−プロパノール(18mL)でリンスした。併合濾液を70mLに濃縮した。溶液を、合計140mLの2−プロパノールを供給することによって一定の容量にて蒸留し、バッチ温度を33から35℃に維持した。生じた溶液を約34mLに濃縮して50℃に加熱してから、H
2O(6.3mL)を加えた。生じた溶液を41から43℃に冷却して、ピロリジンアニリン半水和物(42mg)をシードさせた。生じた混合物を41から43℃にて1時間エージングして、シードベッドを形成させた。
【0159】
水(60.9mL)を41から43℃にて6時間にわたってチャージし、生じた混合物を3時間にわたって10℃に冷却してから、10℃で2時間エージングした。固体を濾過によって集め、25%2−プロパノール/H
2O(50mL)で洗浄した。ウェットケーキを窒素下で周辺温度にて吸引乾燥し、7.68gのピロリジンアニリンi−11が半水和物として与えられた。
【0160】
1H NMR(d
6−DMSO)δ7.27(m,4H),7.17(m,1H),6.81(d,J=8.1,2H),6.45(d,J=8.1Hz,2H),5.07(s,br,1H),4.75(s,2H),4.18(d,J=7.0Hz,1H),3.05(m,2H),2.47(dd,J=13.0,6.7Hz,1H),2.40(dd,J=13.0,6.6Hz,1H),1.53(m,1H),1.34(m,1H0,1.22(m,2H)。
【0161】
13C NMR(d
6−DMSO)δ146.5,144.3,129.2,127.8,127.4,126.8,126.7,114.0,76.8,64.4,60.1,42.1,30.2,27.2。
【0162】
以下のHPLC法を用いて、i−10(ビス−HCl塩)およびi−11の保持時間はそれぞれ約8.3分および8.5分であった。
【0163】
[HPLC法]
カラム:Waters Xbridge C18,150×4.6mm,3.5μm;
カラム温度:25℃;流量:1mL/分;検出:210nm,254nm;
移動相:A:アセトニトリル;B:0.1%水性NH
4OH(HによりpH9.5に調整)
移動相プログラム:
【表8】
【実施例2】
【0164】
化合物i−1からの化合物i−8の調製−代替条件
[工程1.化合物i−1からの化合物i−3の調製]
【化37】
【0165】
不活性の1000Lベッセルに、水(178kg)に続いてグリシンメチルエステルヒドロクロリド(i−1のHCl塩、35.0kg)をチャージして、溶液を形成した。EtOAc(178L;160.6kg)をチャージし、混合物を0℃に冷却した。トリエチルアミン(56.4kg;78L)を約30分にわたって加え、内部温度を<10℃に維持した。混合物を0℃に冷却し、塩化ベンゾイル(35.6kg;29.4L)を>30分にわたって加え、内部温度を<10℃に維持した。塩化ベンゾイル添加終了時のHPLC分析によれば、ベンゾイル化中間体への100%の変換が示された。
【0166】
続いて、10%リン酸(9kgの85wt%リン酸および81kg H
2Oから調製した)を15分にわたってチャージし、混合物を撹拌した。より下部の水性層を取り出してから、EtOAcで2回逆抽出した(178L;160.6kgに続いて89L;80.3kg)。水性層へのロスは約2.1%であった。
【0167】
有機層を併合し、約50Lに濃縮してから、アセトニトリル(178L;140.0kg)をチャージし、約50Lに濃縮した。続いて、アセトニトリル(178L;140.0kg)をチャージし、溶液を0℃に冷却し、DMAP(3.09kg)をチャージした。マンウェイを介した固体のチャージ前に、MeCNのフラッシポイント未満に留めるために、0℃へ冷却する必要があった。
【0168】
混合物を20℃に温め、Boc無水物(60.8kg;64.7L)のMeCN溶液(64.7L;60.8kg+10Lリンス)を混合物に30分にわたってチャージした。反応混合物を一晩エージングした。HPLC分析によれば、Boc−中間体への100%の変換が示された。
【0169】
混合物を3×真空/N
2サイクルを介して脱気し、0℃に冷却し、t−BuOK(36.9kg)のTHF溶液(142L;126.6kg)を1時間にわたって加え、内部温度を<5℃に維持した。反応混合物を5から10℃で1時間エージングした。HPLC分析によって、ケト−エステルへの完全変換が示された。
【0170】
続いて、10%クエン酸(aq.)(36.5kgクエン酸および328.6kg H
2Oから調製した)を混合物に加え、撹拌し、より下部の水性層を除去した。
【0171】
5%NaCl(aq.)(14.25kg NaClおよび270.8kg H
2Oから調製した)を有機物に加え、撹拌し、より下部の水性層を取り出した。より下部のブライン層をMTBE(80kg)で逆抽出し、全ての有機物を併合した。
【0172】
併合し、洗浄した有機物を約300Lに濃縮してから、IPA(178L;139.7kg)を加えて約285Lにまで濃縮し(1H−NMRによれば、残存MeCNは示されなかった)、その後IPA(117kg)を加えた。スラリーを50℃に加熱して溶液を得、H
2O(327.5kg)を1時間にわたって加え、内部温度を40から50℃に維持し、続いて45分にわたって20℃に冷却し、一晩エージングした。リカーロスは、冷却の終わりには<2%であった。
【0173】
スラリーを濾過し、IPA/H
2O(38.3kg:146.3kg)で洗浄し、固体を真空内で50℃にて一晩乾燥して、ケトエステル化合物i−3がオフ−ホワイト色の固体として与えられた(65.25kg;99.4LCAP;100LCWP)。収率は89%であった。
【0174】
以下に記載するHPLC法を用いて、i−3の保持時間は約4.0分であった。
【0175】
[HPLC法]
カラム:Ascentis Express C18,100×4.6mm,2.7μm粒子サイズ;
カラム温度:40℃;流量:1.8mL/分;検出:210nm,220nm,254nm;
移動相:A:1LのH
2O中1.0mlの99.9%リン酸(85w/w%)B:MeCN
勾配:
【表9】
【0176】
[工程2.DKR還元による化合物i−3からの化合物i−4の調製]
【化38】
【0177】
二塩基性リン酸ナトリウム二水和物(8.54kg)を水(480kg)中に溶解することによって、0.1Mリン酸バッファ溶液を調製した。pHを、HCl(およそ1.5L)を用いて7.0に調整した。
【0178】
0.1Mリン酸バッファ(400kg)に続いてDMSO(66kg)を1000Lベッセルにチャージした。D−(+)−グルコース(39.2kg)およびNADPジナトリウム塩(0.90kg)をマンウェイを介してチャージし、全ての固体が溶解するまで、混合物を30℃で撹拌した。
【0179】
残りの0.1Mリン酸バッファ(88.5kg)に続いて配列番号1のKRED酵素(3.0kg)および配列番号3の補因子リサイクル系(0.30kg)を、400Lベッセルにチャージした。全ての酵素が溶解するまで、この混合物を20℃でゆっくり撹拌した。混合物中で形成されるのを防ぐために、激しい撹拌は避けるべきである。一旦溶解されると、曇った黄色の溶液が得られた。
【0180】
160Lベッセルに、ケトエステル基質i−3(32.6kg)に続いてDMSO(66kg)をチャージした。全ての固体が溶解するまで、混合物を30℃で撹拌した。
【0181】
グルコース/NADP溶液のpHを、2M水酸化ナトリウム溶液(2.4kg)を用いて7.19から7.50に調整した。
【0182】
その後、酵素溶液に続いて水ライン洗浄液(5kg)を1000Lベッセルへ移した。続いて、併合溶液のpHを、2M水酸化ナトリウム溶液(1.9kg)を加えることによって7.30から7.50に再調整した。
【0183】
続いて、ケトエステルのDMSO溶液を、およそ4時間にわたって1000Lベッセルにチャージし、反応ベッセル内の温度を30℃に維持し、pHを7.3から7.7の間で維持した。
【0184】
出発材料が添加中に結晶化した。その後、反応混合物は一貫してスラリーであった。反応が進行するにつれ、pHはより酸性になった。2M NaOHを加えることによって、7.3から7.7の範囲を維持した。
【0185】
反応は続いて、反応が完了するまで、30℃でエージングし、pHを7.3から7.7に維持した。反応は、およそ5日後に90%完了した。2M NaOHの総取込み量は55kgであった。総予測取込み量は60kgであった。
【0186】
ベッセル容量限界のために、抽出仕上げを2分割にして実行した。以下に詳述する量は、全バッチサイズについてである。
【0187】
MTBE(900L)およびメタノール(400L)をチャージし、混合物を撹拌し、沈降させた。二相混合物が得られた−上部の澄明な有機層が産物を含有し、下部の曇った水性層が全ての酵素残留物を含有した。分離は良好であったが、30から60分の沈降時間を必要とした。
【0188】
相を分離して、水性をMTBE(300L)で抽出した。有機相を併合し、10%ブライン(150L)で洗浄した。水性層への総ロスは、理論収率の1から2%であった。
【0189】
続いて、有機層を、減圧蒸留によって1100Lから95Lに濃縮した。トルエン(185kg)をチャージし、バッチを濃縮して最終容量を100Lとした。蒸留中、バッチ温度を40℃未満に維持した。
【0190】
処理した全材料は64.2kgであった。アッセイ収率は53.9kg(86%)であった。約14%のケトエステルi−3を含有した。ee>99.9%。KF<250ppm。MTBEは1H NMRによって検出されなかった。
【0191】
以下に記載するHPLC法を用いて、i−3およびi−4の保持時間はそれぞれ約4.5分および3.8分であった。
【0192】
[HPLC法]
カラム:Ascentis Express C18,100×4.6mm,2.7μm粒子サイズ;
カラム温度:40℃;流量:1.8mL/分;検出:210nm;
移動相:A:1LのH
2O中1.0mlの99.9%リン酸(85w/w%)B:MeCN
勾配:
【表10】
【0193】
[工程3.アセトニド保護による化合物i−4からの化合物i−5の調製]
【化39】
【0194】
不活性の1000Lベッセルに、トルエン中ヒドロキシエステルi−4(53.9kgヒドロキシエステル;全溶液114.1kg)を、続いてアセトン(257L;203kg)および2,2−ジメトキシプロパン(97L;82kg)をチャージし、混合物を5分間撹拌した。三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(2.20L;2.47kg)を30分にわたって混合物にチャージし、20℃で15時間一晩エージングした(発熱量は認められなかった)。反応時間は完了まで約4時間であった;一晩後のHPLC分析によって、>99%の変換が示された。
【0195】
続いて、トリエチルアミン(2.4L;1.76kg)をチャージし、混合物を低容量(約100L)に濃縮した。MTBE(308L;229kg)に続いて、5%NaHCO
3(aq.)(6.45kg NaHCO
3および122.55kg H
2Oから調製した129L)および10%NaCl(aq.)(12.9kg NaCl、116.1kg H
2Oから調製した129L)をチャージした。混合物を5分間撹拌し、層を沈降させ、より下部の水性層を除去した。洗浄した有機物を約75Lに濃縮してから、トルエンをチャージし(91L;105kg)、約75Lに濃縮した。続いてトルエン(138L;119kg)を加えた。反応時間は完了まで約4時間であった;一晩後のHPLC分析によって、>99%の変換が示された。
【0196】
続いて、トリエチルアミン[2.4L;1.76kg]をチャージし、混合物を低容量(約100L)に濃縮した。MtBE[308L;229kg]に続いて、5%NaHCO
3(aq.)[6.45kg NaHCO
3および122.55kg DI H
2Oから調製した129L]および10%NaCl(aq.)[12.9kg NaCl、116.1kg DI H
2Oから調製した129L]をチャージした。混合物を5分間撹拌し、層を沈降させ、より下部の水性層を除去した。洗浄した有機物を約75Lに濃縮してから、トルエンをチャージし[91L;105kg]、約75Lに濃縮した。続いてトルエン[138L;119kg]を加えた。
【0197】
最終溶液は176.8kgであり、産物アセトニドi−5アッセイは61.2kg(100%)であった。ケトエステル化合物i−3が14.2LCAPでなお存在した。
【0198】
本実施例の工程1と同じHPLC法を用いて、i−4およびi−5の保持時間はそれぞれ約3.2分および5.2分であった。
【0199】
[工程4.化合物i−5のホウ素還元による化合物i−6の調製]
【化40】
【0200】
1000Lベッセルに、テトラヒドロフラン(218kg)および10%水素化ホウ素リチウムTHF溶液(50.8kg)をチャージした。混合物を撹拌し、温度を20℃に調整した。
【0201】
アセトニドエステルi−5(酵素学的DKR工程を完遂した約14LCAPケトエステルi−3を含有する)のトルエン溶液(合計176.8kgのトルエン溶液中55.9kgの基質)を45分にわたってチャージし、20から25℃のバッチ温度を維持した。バッチを35℃に温めて、18時間エージングした。基質のチャージング中、僅かな発熱量が認められた。最小限のオフガスが観察された。HPLCによって、<1%の残留出発材料が示された。
【0202】
バッチに続いてTHFライン洗浄液(10kg)を400Lベッセルに移した。1000Lベッセルに、塩化アンモニウム(24.5kg)の水溶液(245kg)をチャージした。塩化アンモニウム溶液を0から5℃に冷却してから、バッチを90分にわたってチャージし、温度を0から5℃に維持した。水素ガスが発生した。バッチの塩化アンモニウム急冷溶液への添加速度を、ベッセルを加圧しないように制御した。
【0203】
急冷した反応混合物を20℃に温めて、2時間(オフガスが止まるまで)撹拌した。撹拌を止め、層を沈降させた。より下部の水性相を涸渇させ、有機物を約10%ブライン(50kg水中5kg塩化ナトリウム)で洗浄した。一部のエマルジョンが界面にあったので、大部分の有機物を取り出し、エマルジョンおよび水性層をトルエン(100kg)で再抽出した。有機相を併合し、100Lに減圧濃縮した(バッチ温度を40℃未満に維持した)。
【0204】
ヘプタン(410kg)をチャージし、混合物を30℃に温めた。バッチを、水(300kg)中アセトニトリル(20kg)の混合物で20分間洗浄した。水性層を除去し、洗浄をもう2回繰り返した。洗浄は、可溶性を維持するために30から35℃で実行した。以下の構造を有するジオール化合物i−16が、14から2LCAPに低下した。
【化41】
【0205】
続いて、有機相を減圧下で100Lに濃縮した。アセトニトリル(120kg)をチャージし、バッチを140L(142kg)に濃縮した。アッセイ収率は55.6kg(99%)であり、<2LCAPのi−16が存在した。
【0206】
本実施例の工程2と同じHPLC法を用いて、i−5、i−6およびi−16ジアステレオマーの保持時間はそれぞれ、約5.6分、4.9分、3.0分および3.1分であった。
【0207】
[工程5.化合物i−6のTEMPO酸化によるアルデヒド化合物i−7の調製]
【化42】
【0208】
不活性の1000Lガラス内張ベッセルに、KBr(2.65kg)、NaHCO
3(4.11kg)および水(152kg)をチャージした。アルコールi−6のトルエン/CH
3CN/ヘプタン溶液(39.2wt%の142kg)に続いて、アセトニトリル(83kg)およびトルエン(153kg)を水溶液に加えた。生じた撹拌溶液を0から2℃に冷却した。ダイヤフラムポンプを用いて、TEMPO(0.695kg)のトルエン溶液(2.8L)を反応混合物に加え、ラインおよびポンプをトルエン(約1L)でリンスした。
【0209】
空気駆動式テフロン(登録商標)内張ポンプを用いて、次亜塩素酸ナトリウム(120kg、99L、13.9wt%活性塩素)を、表面上方の添加ラインを介してベッセルにチャージした。続いて、次亜塩素酸ナトリウム溶液を70分の期間にわたって反応混合物に加え、この間、バッチ温度を10℃未満に維持した。添加ラインを水(1kg)でリンスしてバッチ内に流し入れた。バッチを<5℃で20分間エージングした。次亜塩素酸ナトリウムを15℃に予め冷却する必要はないが、周囲温度(すなわち23℃)を越えてはならない。添加速度を60から70分の範囲内に維持しなければならない。添加速度をより長くするとより多い量の出発材料および過剰酸化酸副産物が生じることとなるが、ラン時間をより短くすることは発熱活性によりおそらく可能ではないであろう。発熱は、漂白剤の添加を止めると直ぐに止むこととなる。この場合、4.0LCAP出発材料、1.3LCAP酸、および87.4LCAPアルデヒドが得られた。さらに0.05eq.NaOCl(4kg)をチャージしてから急冷を始めたが、バッチを再びアッセイしなかった。
【0210】
バッチの温度を5℃でチェックし、続いて1M亜硫酸ナトリウム(全体を5.04kgのNa
2SO
3および35kgの水から調製し;実際に加えた量はこの溶液の僅か18Lであった)を10分の期間にわたって加え、バッチ温度を10℃未満に維持した。バッチ温度を20℃にセットし、5分間エージングした。バッチを、ヨウ素デンプン紙で試験し、オキシダントが存在しないことを確認した。
【0211】
二相混合物を10分間混合してから、沈降させた。より下部の水性層を除去し、廃棄した。上部の有機カットを水(68kg)で洗浄した。より下部の水性カットを再び除去し、廃棄した。有機層を再び、オキシダントについてヨウ素デンプン紙で試験した(5℃で良好な保持点−保持溶液)。
【0212】
双方のカットは非常に良好であり、かなり急速に沈降した。最終の有機カットは、1.3LCAP出発材料および91.1LCAPアルデヒドを示した。双方の水層に残存するKBrおよび酸の副産物を除去した。
【0213】
続いて、有機溶液を真空下で蒸留して、最終容量を約135Lにし、この間、温度を<40℃に維持した(アルデヒドの収率に基づいて約3容量)。KFは、以降のHWE工程について<2%水であるべきである。この場合、KFは80μg/mLであった。
【0214】
これにより、アルデヒドの36.8wt%溶液が与えられ(全量131.7kg;36.8wt%、i−7について48.5kgアッセイ;87%の収率(アニソールを内部標準とした
1H−NMRアッセイ))、さらなる処理を待つ間、プラスチック内張スチールドラム内にて5℃の窒素下で保存した。以下に記載するHPLC法を用いて、i−6およびi−7の保持時間はそれぞれ約4.9分および5.5分であった。
【0215】
[HPLC法]
カラム:Ascentis Express C18,100×4.6mm,2.7μm粒子サイズ;
カラム温度:40℃;流量:1.5mL/分;検出:210nm,254nm;
移動相:A:1LのH
2O中1.0mlの99.9%リン酸(85w/w%)B:MeCN
移動相勾配:
【表11】
【0216】
[工程6.i−7アルデヒドの化合物a−4とのHWEカップリングによるi−8の調製]
【化43】
【0217】
ホスホネートa−4(67.4kg、1.2equiv.)および塩化リチウム(19.98kg、3equiv.)に続いてアセトニトリル(188.64kg)を1000Lベッセルにチャージした。混合物を約5℃に冷却し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(60.95kg、3equiv.)を加え、この間、内部温度を20℃未満に維持した。添加を完了すると、バッチを40℃に温め、先の工程からのアルデヒドi−7のトルエン溶液を3時間にわたって加えてから、さらに30分間エージングした。
【0218】
アルデヒド溶液を調製イリドに加えると、反応終了時に非常に低いレベル(約1LCAP)のアルドールディマー(aldol dimmer)副産物I−21が生じた。
【化44】
【0219】
バッチを0℃に冷却し、MTBE(177.6kg)に続いてクエン酸(10%aq.)を加えて、pHを6.5から7に調整した(プラントにおいて6.87を達成した)。pHが行き過ぎた場合、2N NaOHを首尾良く加えてpHを範囲内に戻すよう調整した。
【0220】
より下部の水性層を排出し、有機物を、10%重炭酸ナトリウム溶液(240L)に続いて水(2×120L)で洗浄した。第1水性洗浄中に、水性層中の一部の固体が、過飽和のために沈殿するクエン酸塩であると識別された。これは、水性層と共に首尾良く排出された。
【0221】
最終溶液のアッセイ収率によれば、有機ストリーム中に75.67kg、90.1%存在することが示された(なお、これはベッセル内のおよその容量に基づく推定値であった)。水性カットへのロスは<0.1%であった。
【0222】
溶液を蒸留して最小容量とし(約100L)、イソプロピルアルコール(604.5kg)を加えた。続いて溶液を蒸留して最終容量を616L(約7容量+産物)とし、バッチを49℃に加熱した。水(46.2kg、0.6容量)を加え、バッチを30分にわたって40℃に冷却した。バッチをシードさせ、40℃で1時間エージングし、シードベッドを形成させた。続いて水(492.8kg)をバッチに1時間にわたって加え、この間、バッチ温度を40℃にてマリネした。バッチを40℃で2時間エージングしてから、2時間にわたって10℃に冷却し、この温度で一晩エージングした。エージング期間後、リカーのアッセイによってリカー濃度が2.9mg/mlであることが示された。バッチを濾過し、ケーキを、10℃に冷却した1:1のIPA:水(380L)で洗浄した。固体を真空内で40℃にて乾燥した。続いて共ミリングして、75.93kgの所望産物(100LCAP、99wt%、89%収率)が与えられた。リカーおよび洗浄液へのロスは3%であった。
【0223】
このプロトコルが成功することにより、1.01equivのホスホネートa−4のみを用いる反応を試みて、反応の終了時に99%アッセイ収率となった。
【0224】
本実施例の工程2と同じHPLC法を用いて、a−4およびi−8の保持時間はそれぞれ約3.8分および6.2分であった。
【0225】
実施例1の工程7から工程9に類似の手順を用いて、化合物i−11を化合物i−8から調製することができる。