(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
≪第1実施形態≫
図1は、本実施形態に係る蓄電装置を含む電力システムの概要を示す全体構成図である。電力システムSは、発電装置1と、蓄電装置2と、双方向インバータ3と、を備えている。
発電装置1は、例えば、風力発電装置や太陽光発電装置であり、自然エネルギを利用して発電電力を生成し、配線a1を介して電力系統4(及び蓄電装置2)に供給する機能を有している。なお、発電装置1は、発電電力を所定周波数の三相交流電力に変換する電力変換手段(インバータ:図示せず)と、電力系統4の潮流変動等に応じて発電電力を制御する制御手段(図示せず)と、を有している。
【0014】
蓄電装置2は、双方向インバータ3の駆動に応じて充放電する機能を有し、直並列接続された電池セル242(
図2参照)を有する複数の電池パック230(
図2参照)を有している。ここで、前記した電池セル242とは、例えばリチウムイオン蓄電池である。
以下では、複数の電池セル242が直列接続されたもの、複数の電池セル242が並列接続されたもの、又は、複数の電池セル242を直列・並列の任意の組み合わせにより接続したものを単に「蓄電池」と記すことがあるものとする。なお、蓄電装置2の詳細については後記する。
【0015】
双方向インバータ3は、例えば、スイッチング素子(図示せず)であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いた三相双方向インバータであり、配線a3,a1を介して発電装置1及び電力系統4に接続されている。なお、双方向インバータ3には、PWM制御(Pulse Width Modulation)により前記したスイッチング素子のオン・オフを制御する制御手段(図示せず)が内蔵されている。
【0016】
蓄電装置2が有する蓄電池を充電する場合、双方向インバータ3は、配線a1,a3を介して発電装置1から入力される三相交流電力を直流電力に変換し、配線a2を介して蓄電装置2に出力する。この場合、双方向インバータ3はコンバータとして機能する。
一方、蓄電装置2が有する蓄電池を放電させる場合、双方向インバータ3は、配線a2を介して蓄電池から放電される直流電力を三相交流電力に変換し、配線a3,a1を介して電力系統4に出力する。この場合、双方向インバータ3はインバータとして機能する。
【0017】
前記したように、風力発電や太陽光発電では自然エネルギを用いるため、自然環境(風向・風力や太陽光の強さ)が変化すると、これに伴って発電電力が経時的に変動する。
図1に示すように、発電装置1に併設される蓄電装置2は、発電装置1から供給される発電電力の余剰分を蓄電池に充電する一方、電力の不足分を蓄電池から放電する機能(つまり、バッファ機能)を有している。これによって、発電装置1による発電電力の周波数変動や電圧変動を抑制(吸収)し、電力系統4に対して安定した電力供給を行うことができる。
【0018】
図2は、蓄電装置の階層構造を示す構成図である。
図2に示すように、蓄電装置2は、システム制御装置210(BSCU)によって制御される電池ブロック220を有している。
なお、それぞれの電池ブロック220は互いに並列接続され、キャビネット型の筐体である電池ブロック収納装置(図示せず)に収納されている。電池ブロック220は、並列接続された複数の電池パック230と、各電池パック230の動作を制御する統合制御装置221(IBCU)と、を有している。
【0019】
電池パック230は、並列接続された複数の電池モジュール240と、各電池モジュール240の動作を制御する電池制御装置231(BCU)と、を有している。電池モジュール240は、直並列接続された複数の電池セル242と、各電池セル242の状態を監視する電池セル監視部241(CCU)と、を有している。それぞれ電池セル242は、例えば、リチウムイオン蓄電池や鉛蓄電池等の二次電池であり、双方向インバータ3の駆動に応じて充放電する。
なお、
図2では、各電池セル242の接続を簡略化して記載しているが、電池モジュール240が有する「蓄電池」は、複数の電池セル242を直列接続したもの、複数の電池セル242を並列接続したもの、及び、複数の電池セル242を直列・並列の任意の組み合わせで接続したものを含んでいる。
【0020】
電池セル監視部241は、電池セル242毎の端子間電圧、温度、電流を計測し、充電状態(充電率、SOC:State Of Charge)に関する情報を生成する機能を有している。また、電池セル監視部241は、自身に接続される各電池セル242の状態を監視・制御するとともに、配線b1を介して充電状態情報等を上位の電池制御装置231に出力する機能を有している。
【0021】
電池制御装置231は、電池セル監視部241から入力される電池セル242の充電状態情報や各電池パック230の管理情報を、配線b2を介して上位の統合制御装置221に出力する機能を有している。統合制御装置221は、電池制御装置231から入力される情報や各電池ブロック220の管理情報を、配線b3を介して上位のシステム制御装置210に出力する機能を有している。システム制御装置210は、複数の電池ブロック220の動作を統括管理する機能を有している。
このように、蓄電装置2は、多数の電池セル242の状態を階層的に管理することで、各制御装置の処理を効率化するとともに、その処理負荷を軽減している。
【0022】
<蓄電装置による充電制御>
ところで、リチウムイオン蓄電池は充電が進むにつれて負極電圧が低下し、さらに所定のリチウム析出電圧を下回ると、リチウム金属が析出して蓄電池の性能劣化を招くおそれがある。以下では、このような蓄電池の性能劣化(つまり、負極におけるリチウム金属の析出)を防止するための充電制御について説明する。なお、蓄電池から放電させる際の処理については説明を省略する。
【0023】
図3は、蓄電装置のCCV(Closed Circuit Voltage)特性のうち本実施形態において使用するSOC使用範囲と、無負荷特性とを示す特性図である。
図3に示す特性図の横軸は蓄電池の充電状態(SOC)を示し、縦軸は蓄電池の電池電圧を示している。
【0024】
図3の破線で示す無負荷特性とは、蓄電池の正極と負極との間に負荷をかけていない状態におけるSOC−電池電圧特性(ゼロ近傍の微小な電流で充電する際の、電池電圧のプロフィール)を意味している。また、満充電相当電圧V
fulは、無負荷特性において蓄電池の充電率(SOC)が100%となったことを示す電圧である。なお、蓄電池の充電には、例えば、定電流定電圧(CCCV:Constant Current-Constant Voltage)充電を行う。
【0025】
無負荷特性(破線)において、充電率(SOC)0%の状態から蓄電池を充電していくと、充電が進むにつれて正極電位は上昇し、負極電位は低下していく。したがって、蓄電池の正極・負極間電圧である電池電圧は、充電が進む(SOCの値が大きくなる)につれて上昇する。
なお、
図3に示す満充電相当電圧V
fulは、無負荷特性において蓄電池の充電量が最大(SOC:100%)となる電池電圧である。
【0026】
図3において実線で示す特性は、蓄電池の正極と負極との間に負荷をかけて充電を行った場合でのSOC−CCV特性である。一般に、蓄電池は所定の内部抵抗を有している。したがって、リチウムイオン蓄電池を充電する場合、電池電圧CCVは、無負荷特性に電流値I(図示せず)と電池の内部抵抗R(図示せず)との積に相当するIR分が加算された特性を示す(
図3:実線を参照)。
【0027】
なお、発電装置1(
図1参照)が風力発電装置である場合、蓄電池の寿命を長くすることによって、その運用を長期間継続することが求められる。したがって、
図3に示すように、SOCとして下限閾値S1(>0%)以上かつ上限閾値S2(<100%)以下の範囲(SOC使用範囲)内で蓄電池を充放電させる。ちなみに、|S2−S1|の値を小さくするほど、蓄電池の寿命を長くすることができる。
前記した下限閾値S1及び上限閾値S2の値は、発電装置1の種類等に応じて適宜設定する。
【0028】
図4(a)は、蓄電装置のCCV特性と、無負荷特性と、を示す特性図である。
図4(a)に示すCCV特性(実線)及び無負荷特性(破線)は、
図3で説明した各特性と同様である。なお、
図4(a)の縦軸には、前記した満充電相当電圧V
fulと、最大許容電圧V
finと、を示した。なお、最大許容電圧V
finとは、蓄電池を正常に機能させるために許容される上限電圧であり、蓄電池の仕様に応じて予め設定されている。また、蓄電池の満充電相当電圧V
fulは事前の実験等に基づいて設定され、予め記憶手段22(
図5参照)に格納されている。
前記したように、本実施形態では、制御装置20(
図5参照)が、蓄電池のSOCが下限閾値S1以上かつ上限閾値S2以下の範囲内に収まるように充放電制御する。
【0029】
図4(b)は、蓄電池の負極電圧特性と、無負荷特性と、を示す特性図である。
図4(b)に示す特性図の横軸は蓄電池のSOCを示し、縦軸は蓄電池の負極電圧を示している。なお、負極電圧は、負極からリチウム金属が析出し始める電圧を基準(0V)とした。
図4(b)に示すように、充電が進むにつれて蓄電池の負極電圧(実線)は徐々に低下する。当該性質は、蓄電池の無負荷特性(破線)についても同様である。
ちなみに、蓄電池の負極電圧がリチウム析出電圧を下回ると、リチウム金属が析出し始めて蓄電池の性能劣化を招く。したがって、蓄電池の負極電圧は、常にリチウム析出電圧(0V)よりも高い状態に保つ必要がある。
【0030】
なお、
図4(b)に示す負極電圧特性(実線)は、蓄電池の充電電流を所定値で固定した場合に得られる特性であり、蓄電池の充電電流によって変化する。
図4(b)に示すように、本実施形態では一例として、SOC使用範囲の上限閾値S2を、負極電圧が0V(リチウム析出電圧)に対応するように設定する場合を示している。
その他、
図4(a)に示す充電終了電圧V2
fin、電圧差分ΔV1、
図4(b)に示す負極電圧Va1、変化量ΔS等については、
図6、
図7に示すフローチャートと併せて後記する。
【0031】
図5は、蓄電装置が備える制御装置の構成図である。なお、制御装置20とは、例えば
図2に示す電池セル監視部241、電池制御装置231、統合制御装置221等に相当する。
図5に示すように、制御装置20は、充電終了電圧算出手段21と、記憶手段22と、充電制御手段23と、を有している。
【0032】
充電終了電圧算出手段21は、電池電圧CCVと、充電電流Iと、負極電圧Vaと、に基づいて、充電終了電圧を算出する。ここで、充電終了電圧とは、蓄電池の充電を終了するか否かの判定基準となる電池電圧である。
ちなみに、風力発電では、充電電流Iの値が風力に応じて時々刻々と変動する。したがって、制御装置20は、フィルタ処理や所定時間毎に実行する平均化処理等の前処理を行うことで、前記所定時間における充電電流Iの値を一定(例えば、平均値)として扱うように設定されている。
【0033】
充電終了電圧算出手段21は、SOC算出部21aと、電圧差分算出部21bと、加算器21cと、を有している。
SOC算出部21a(充電率算出手段)は、蓄電池の充電中における電池電圧CCVが満充電電圧V
fulに到達した場合、当該到達時における蓄電池のSOCを算出する。なお、SOC算出部21aには、蓄電池に設置される電圧センサ(図示せず)の検出値である電池電圧CCVと、電流センサ(図示せず)の検出値である充電電流Iと、が入力される。
例えば、SOC算出部21aは、蓄電池の充電電流Iを所定時間毎に平均した値である充電電流平均値と、蓄電池の電池電圧CCVとに基づいて、蓄電池のSOCを算出する。その他、SOCの算出には、公知の様々な方法を用いることができる。
【0034】
電圧差分算出部21b(充電差分算出手段)は、電池電圧CCVと、充電電流Iと、負極電圧Vaと、SOC算出部21aによって算出されるSOCと、に基づいて電圧差分ΔV1を算出する。なお、電圧差分ΔV1の値は、加算器21cが充電終了電圧V2
finを算出する際に用いられる。
ちなみに、電圧差分ΔV1を算出する際、電圧差分算出部21bは記憶手段22に格納されている蓄電池の無負荷特性(
図4(a)破線:電池電圧、及び
図4(b)波線:負極電圧)、満充電相当電圧V
ful、最大許容電圧V
fin等の情報も用いる。電圧差分ΔV1の算出処理については、後記する。
加算器21cは、電圧差分算出部21bから入力される電圧差分ΔV1と満充電相当電圧V
fulとを加算し、充電終了電圧V2
finとして充電制御手段23に出力する。
【0035】
充電制御手段23は、電池電圧CCVと、充電電流Iと、SOC算出部21aから入力されるSOCと、加算器21cから入力される充電終了電圧V2
finと、に基づいて蓄電池の充電を制御する。なお、
図5に示す充電終了指令Q1は、蓄電池の充電を終了する際に充電制御手段23から出力される信号である。充電制御手段23は、充電終了指令Q1を出力することによって、蓄電池と双方向インバータ3(
図1参照)とを電気的に接続しているスイッチ(図示せず)をオンからオフに切り換え、蓄電池の充電を終了させる。
【0036】
図6は、制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示す「START」において制御装置20は、充電を開始する。なお、この時点において蓄電池のSOC(充電率)は、下限閾値S1以上かつ上限閾値S2以下のSOC使用範囲内にあるものとする(
図4(a)参照)。
ステップS101において制御装置20は、前記した蓄電池の電池電圧CCV、充電電流I、及び負極電圧Vaの値を読み込む。
ステップS102において制御装置20は、ステップS101で読み込んだ電池電圧CCVと、充電電流Iとに基づいて、蓄電池のSOCを算出する(充電率算出処理)。
ステップS103において制御装置20は、ステップS102で算出したSOCが、リチウム析出電圧に対応する上限閾値S2(つまり、リチウム析出時充電率)以上であるか否かを判定する。なお、リチウム析出電圧に対応する上限閾値S2(
図4(b)参照)の値は、事前の実験等によって求められ、記憶手段22(
図5参照)に格納されている。
【0037】
SOCが上限閾値S2以上である場合(S103→Yes)、制御装置20は電力系統4(
図1参照)と蓄電池との電気的接続を遮断して充電を終了する(END)。これによって、蓄電池の負極電圧がリチウム析出電圧を下回ることを防止し、蓄電池の劣化を抑制することができる。一方、SOCが上限閾値S2未満である場合(S103→No)、制御装置20の処理はステップS104に進む。
【0038】
ステップS104において制御装置20は、電池電圧CCVが満充電相当電圧V
ful以上であるか否かを判定する。前記したように、満充電相当電圧V
fulの値も予め設定されて記憶手段22(
図5参照)に格納されている。
電池電圧CCVが満充電相当電圧V
ful以上である場合(S104→Yes)、制御装置20の処理はステップS105に進む。なお、この時点において電池電圧CCVは最大許容電圧V
fin(>V
ful:
図4(a)参照)未満であるため、リチウム金属が析出しない範囲内において、さらに充電する余裕がある。一方、電池電圧CCVが満充電相当電圧V
ful未満である場合(S104→No)、制御装置20の処理はステップS101に戻る。
このように、制御装置20は、蓄電池の充電中において電池電圧CCVが満充電相当電圧V
ful(<V
fin)に達したか否かを所定のサイクルタイム毎に監視し、電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulに到達しない場合、充電を継続する。
【0039】
ステップS105において制御装置20は、充電中の電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulに達した時点における負極電圧Vaを読み込む。当該負極電圧Vaは、
図4(b)に示す負極電圧Va1に相当する。
ステップS106において制御装置20は、蓄電池の負極電圧Vaが現時点から電圧Va1分だけ低下してリチウム析出電圧(0V)となるまでのSOCの変化量ΔS(
図4(b)参照)を算出する。なお、当該変化量ΔSは、リチウム析出電圧(0V)に対応する上限閾値S2から、ステップS105の処理の直前に算出したSOCの値(S3:
図4(b)参照)を減算することで得られる。
【0040】
つまり、制御装置20は、電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulに到達した時点における蓄電池のSOC(つまり、S3:
図4(b)参照)を算出し、当該SOCと、予め設定される上限閾値S2(リチウム析出時充電率)と、の差分ΔSを算出する。
【0041】
ステップS107において制御装置20は、蓄電池のSOCが所定値S3から上限閾値S2まで増加する際の電池電圧CCVの上昇幅ΔV1(
図4(a)参照)を、無負荷特性に基づいて算出する(電圧差分算出処理)。
前記した無負荷特性は、
図4(a)に示すSOC−電池電圧特性(破線)と、
図4(b)に示すSOC−負極電圧特性(破線)であり、予め記憶手段22(図示せず)に格納されている。
【0042】
図4(a)に示すように、蓄電池の無負荷特性(破線)を内部抵抗による電圧降下分だけ平行移動させたものが負荷特性(実線)となる。したがって、無負荷特性を用いて算出した電圧上昇幅ΔV1は、実際に充電を行う場合の電圧上昇幅ΔV1と略一致する(
図4(a)参照)。
このように、制御装置20は、電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulに到達した時点のSOC(S3)と、予め設定される上限閾値S2(リチウム析出時充電率)と、の差分ΔSに対応する電池電圧の差分ΔV1を、蓄電池の無負荷特性に基づいて算出する
【0043】
ステップS108において制御装置20は、充電終了電圧V2
finを算出する(充電終了電圧算出処理)。充電終了電圧V2
finは、記憶手段22(
図5参照)に格納されている満充電相当電圧V
fulに、ステップS107で算出した上昇幅ΔV1を加算することによって算出される。
ステップS109において制御装置20は、充電終了電圧V2
finが最大許容電圧V
fin以上であるか否かを判定する。充電終了電圧V2
finが最大許容電圧V
fin以上である場合(S109→Yes)、制御装置20の処理はステップS110に進む。
【0044】
ステップS110において制御装置20は、充電終了電圧V2
finを最大許容電圧V
finの値で置き換える。つまり、制御装置20は、蓄電池の仕様に応じて予め設定される最大許容電圧V
finを新たな充電終了電圧V2
finとして再設定する。
一方、充電終了電圧V2
finが最大許容電圧V
fin未満である場合(S109→No)、制御装置20の処理はステップS111に進む。
【0045】
つまり、制御装置20は、充電終了電圧V2
fin及び最大許容電圧V
finのうち、小さいほうを新たな充電終了電圧V2
finとして再設定する。
ステップS111において制御装置20は、蓄電池の電池電圧CCV、充電電流I、及び負極電圧Vaの値を読み込む。
ステップS112において制御装置20は、ステップS111で読み込んだ電池電圧CCVと、充電電流Iとに基づいて、蓄電池のSOCを算出する。
【0046】
ステップS113において制御装置20は、ステップS112で算出したSOCが、リチウム析出電圧に対応する上限閾値S2以上であるか否かを判定する。SOCが上限閾値S2以上である場合(S113→Yes)、制御装置20は充電を終了する(END)。一方、SOCが上限閾値S2未満である場合(S113→No)、制御装置20の処理はステップS114に進む。
【0047】
ステップS114において制御装置20は、電池電圧CCVが充電終了電圧V2
fin以上であるか否かを判定する。なお、制御装置20は、ステップS112の比較処理を行う際、ステップS109,S110の処理で再設定した充電終了電圧V2
finの値を用いる。
電池電圧CCVが充電終了電圧V2
fin以上である場合(S114→Yes)、制御装置20は蓄電池の充電を終了する(充電制御処理:END)。一方、電池電圧CCVが充電終了電圧V2
fin未満である場合(S114→No)、制御装置20の処理はステップS111に戻る。
【0048】
つまり、制御装置20は、電池電圧CCVが最大許容電圧V
finに達するタイミングと、蓄電池の負極電圧がリチウム析出電圧(0V)に達するタイミングと、のうち早い方のタイミングで蓄電池の充電を停止させる。
当該処理を行うことによって、蓄電池の負極電圧Vaがリチウム析出電圧(0V)を下回ることを防止し、かつ、蓄電池の電池電圧CCVが最大許容電圧V
finを上回ることを防止できる。
【0049】
図8(a)は蓄電池のSOC−CCV特性及び無負荷特性、
図8(b)は蓄電池のSOC−負極電圧特性、
図8(c)はSOC−充電電流特性を示す説明図である。なお、
図8(a)に示す電池電圧CCV1、
図8(b)に示す負極電圧Va1、及び
図8(c)に示す充電電流I1は、それぞれ対応している。他の電池電圧、負極電圧、及び充電電流についても同様である。
また、蓄電池のSOC使用範囲として、下限閾値S1以上かつ上限閾値S2以下の範囲を設定し、
図8(c)に示すように充電電流I1,I2,I3(I1<I2<I3)の各電流値でCCCV充電を行った。
【0050】
前記したように、充電電流の値が大きいほど内部抵抗による電圧降下も大きくなる。したがって、比較的小さい充電電流I1である場合、電池電圧CCV1(
図8(a)参照)は他の電池電圧CCV2,CCV3よりも低くなり、負極電圧Va1(
図8(b)参照)は他の負極電圧Va2,Va3よりも高くなる。
充電電流I1(
図8(c)参照)で充電を行った場合、
図8(a)に示すようにSOC使用範囲において電池電圧CCV1が満充電相当電圧V
fulに達することなく充電が進む(S104→No:
図6参照)。そして、制御装置20は、蓄電池のSOCが上限閾値S2に到達した時点で充電を終了させる(S103→Yes,END)。このとき、
図8(b)に示すように、負極電圧Va1の値はリチウム析出電圧(0V)に対して所定の余裕を有している。
【0051】
充電電流I2(
図8(c)参照)で充電を行った場合、
図8(a)に示すように電池電圧CCV2が満充電相当電圧V
fulに到達した時点において制御装置20は充電終了電圧V2
finを算出し(S108,S110)、電池電圧CCVを所定のサイクルタイム毎に監視する(S114)。そして、制御装置20は、電池電圧CCVが充電終了電圧V2
finに到達した時点で充電を終了させる(S114→Yes,END)。このとき、
図8(b)に示すように、負極電圧Va2がリチウム析出電圧(0V)と等しい状態で充電が終了している。
【0052】
充電電流I3(
図8(c)参照)で充電を行った場合、
図8(a)に示すように電池電圧CCV3が満充電相当電圧V
fulに到達した時点で制御装置20は充電終了電圧V2
finを算出する(S108,S110)。充電電流I3の値は比較的大きいため、蓄電池のSOCが上限閾値S2に達するよりも前に電池電圧CCVが充電終了電圧V2
finに達し、充電が終了する(S114→Yes,END)。このとき、
図8(b)に示すように、負極電圧Va2がリチウム析出電圧(0V)と等しく、蓄電池のSOCは上限閾値S2よりも低い値S3となっている。
【0053】
このように、制御装置20は、充電電流の値の大小に関わらず(
図8(c)参照)、SOC使用範囲内において蓄電池の充電を行うとともに(
図8(a)参照)、負極電圧Vaがリチウム析出電圧(0V)を下回る前に充電を終了させる(
図8(b)参照)。
【0054】
≪効果≫
本実施形態に係る蓄電装置2によれば、制御装置20が充電中における蓄電池のSOCを監視し、SOCがリチウム析出電圧(0V)に対応する上限閾値S2以上となった場合(S103→Yes)、ただちに蓄電池の充電を終了させる(END)。したがって、蓄電池の負極電圧Vaがリチウム析出電圧を下回ることを防止し、リチウム金属の析出に伴う蓄電池の性能劣化を回避できる。
【0055】
また、制御装置20は、充電中における蓄電池の電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulに到達した時点において、蓄電池の充電終了電圧V2
finを算出する(S108)。なお、当該時点において、蓄電池の負極電圧Vaがリチウム析出電圧を下回ることはない。これは、
図4(a)、
図4(b)に示すように、電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulとなった状態に対応するSOC:S3が、リチウム析出電圧(0V)に対応するSOC:S2未満となっているためである。したがって、制御装置20は、充電終了電圧V2
finを算出するタイミングを適切に設定することができる。
【0056】
すなわち、制御装置20は、充電状態において蓄電池の負極電圧Vaがリチウム析出電圧を下回るよりも前に充電終了電圧V2
finを算出する。さらに、制御装置20は、電池電圧CCVが充電終了電圧V2
finに達した場合(S114→Yes:
図7参照)、蓄電池と電力系統4との電気的接続を遮断して充電を終了させる(END)。
したがって、制御装置20からの信号が入力されてから、発電装置1の制御(例えば、風車の停止)に反映させるまでに応答遅れが生じても、蓄電池の負極電圧がリチウム析出電圧を下回ることを確実に防止できる。
【0057】
また、
図6のS108で算出した充電終了電圧V2
finが蓄電池の最大許容電圧V
fin以上である場合(S109→Yes:
図7参照)、制御装置20は充電終了電圧V2
finの値を最大許容電圧V
finで置き換える(S110)。
これによって、電池電圧CCVが最大許容電圧V
finを上回って蓄電池に不具合が生じることを防止しつつ、負極電圧Vaがリチウム析出電圧を下回ることを確実に防止できる。
【0058】
また、制御装置20は、電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulに達した時点での負極電圧Vaを読み込み(S101)、無負荷特性(
図4(a)、
図4(b)の破線)等を用いて充電終了電圧V2
finの値を算出する。これによって、リチウム析出電圧に対応する充電終了電圧V2
finを正確に算出できる。
【0059】
≪比較例≫
CCCV充電では、電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulに到達してからSOCが最大となるまでの間は電流を制限し、満充電相当電圧V
fulを超えないように充電する。従って、CCCV充電では充電電流Iの値が大きくなるほど電池電圧CCVが早期に満充電相当電圧V
fulに到達するため、充電電流Iを制限して充電する必要がある。
【0060】
これに対して、前記した特許文献1に記載の技術では、負極電圧を推定し、負極電圧が0Vを下回らない範囲であれば電池電圧CCVが満充電相当電圧V
ful(
図9(a)参照)を超えても充電を継続していた。なお、
図9(b)に示す0Vは、リチウム析出電圧を基準にしている。
この場合、電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulに到達しても負極電圧がリチウム析出電圧よりも大きい区間は電流制限をしないため(
図9(c)のSOC:S5〜S6)、CCCV充電方式よりも電流制限区間が短くなる(
図9(c)のSOC:S6〜100%)。
【0061】
また、特許文献1に記載の技術は、蓄電池の充電電流を瞬時に制御可能な場合(例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車に適用する場合)には、負極電圧Vaがリチウム析出電圧(0V)を下回らないよう制御することが可能である。例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車では、減速時にモータを発電機として作動させ、回生エネルギを電力に変換して回収して蓄電池を充電する。また、蓄電池のSOCが高く電流値を抑える必要がある場合は、回生を行わずにブレーキペダルによる減速(フットブレーキ)に切り替える。
このようにハイブリッド自動車や電気自動車は、減速時における回生やフットブレーキを用いたエネルギ配分を蓄電池の充放電によって制御することが可能であり、負極電圧が所定値を下回らないように短時間に電流を制御することが可能となる。
【0062】
一方、例えば、風力発電用の風車では、発電電力が風車のブレードの受風面積に比例する。したがって、この場合、蓄電池のSOCに応じてブレードの取り付け角(ピッチ角)を制御し、受風面積を調整する必要がある。ただし、現状ではピッチ角の変化には数sec〜数十secの時間を要する。
そうすると、風力発電装置の余剰電力を吸収する目的で特許文献1の方法を適用すると、充電電流の制御が間に合わず、負極電圧がリチウム電圧を下回る可能性がある。この場合、蓄電池の負極側でリチウム金属が析出し、蓄電池の性能劣化を招くおそれがある。
【0063】
これに対して本実施形態に係る蓄電装置2は、負極電圧Vaがリチウム析出電圧を下回るよりも前に充電終了電圧V2
finを算出し、電池電圧CCVが充電終了電圧V2
fin以上になった場合、蓄電池と電力系統4とを電気的に切り離して充電を終了する。
したがって、例えば風力発電による発電電力の余剰分を蓄電池で吸収する際、停止指令が入力されてから、慣性力に抗して風車の回転を実際に停止させるまでに生成される発電電力が、当該蓄電池に流入することを防止できる。
【0064】
すなわち、本実施形態によれば、発電装置1側の応答性に関わらず、蓄電池の負極側でリチウム金属が析出することを確実に防止し、蓄電装置2の信頼性を向上させることができる。なお、前記した余剰電力は、蓄電装置2が備える他の蓄電池(電池セル242)のうち、電力系統4と電気的に接続されているものに充電される。
【0065】
≪変形例≫
以上、本発明に係る蓄電装置2について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、前記実施形態では、SOC算出部21aが、電池電圧CCVと、充電電流Iと、に基づいて蓄電池のSOCを算出する場合について説明したが、これに限らない。例えば、充電流Iを逐次積算するなど、他の方法を用いてもよい。また、SOCを算出する際、温度センサ(図示せず)によって検出される蓄電池の温度を併せて用いてもよい。
【0066】
また、前記実施形態では、発電装置1が風力発電装置や太陽光発電装置など自然エネルギを利用した発電装置である場合について説明したが、これに限らず他の種類の発電装置を用いてもよい。
また、発電装置1に代えて、又は発電装置1に加えて、電力を消費する負荷を電力系統4に接続し、蓄電装置2から前記負荷に電力供給するようにしてもよい。この場合において、需要側の負荷が軽い夜間に蓄電池を充電し、需要側の負荷が重い昼間に蓄電池から放電することによって、電力負荷の平準化を図ることが望ましい。
【0067】
また、前記実施形態では、SOCの上限閾値S2をリチウム析出電圧(0V)に対応するSOCとして設定したが、これに限らない。すなわち、上限閾値S2を、リチウム析出電圧に対応するSOCよりも小さい値に設定して所定の余裕を持たせるようにしてもよい。
また、前記実施形態では、リチウム析出電圧に対応するSOC:S2(
図4(b)参照)から、満充電相当電圧V
fulに対応するSOC:S3を減算することによって変化量ΔSを算出し、当該変化量ΔSを用いて充電終了電圧V2
finを算出する場合について説明したが、これに限らない。例えば、前記した変化量ΔSに所定係数k(0<k<1)を乗算してΔS2とし、当該ΔS2に基づいて充電終了電圧V2
finを算出してもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、制御装置20が、蓄電池の電池電圧CCVが満充電相当電圧V
fulに到達した時点でのSOCを用いて充電終了電圧V2
finを算出する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、予め設定される所定値に到達した時点でのSOCを用いて充電終了電圧V2
finを算出してもよい。なお、前記所定値は、SOC使用範囲内において設定される。
【0069】
また、制御装置20は、充電電流平均値が所定時間内に所定量以上増加した場合、充電終了電圧V2
finを低下させる「充電終了電圧補正手段」を有することが好ましい(第1補正処理)。なお、前記した所定量及び所定時間の値は、予め設定されて記憶手段に格納されている。
また、充電終了電圧補正手段は、充電電流平均値が所定時間内に所定量以上減少した場合、充電終了電圧V2
finを上昇させてもよい(第2補正処理)。
【0070】
なお、充電終了電圧補正手段は、前記した第1補正処理及び第2補正処理の両方を実行してもよいし、いずれか一方を実行してもよい。
これによって、充電電流Iの増加に伴う蓄電池内での電圧降下(内部抵抗Rによる電圧降下)を考慮して、適切に充電終了電圧V2
finの値を設定することができる。
【0071】
また、前記実施形態において
図7に示すステップS109,S110の処理を省略してもよい。この場合でも、蓄電池の電池電圧CCVが充電終了電圧V2
finに到達した場合緒に充電を終了させることによって、蓄電池の負極側でリチウム金属が析出することを防止することができる。