特許第6088587号(P6088587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6088587閉ループ線形駆動加速度計を用いて面外線形加速度を検出するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088587
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】閉ループ線形駆動加速度計を用いて面外線形加速度を検出するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20170220BHJP
   G01P 15/13 20060101ALI20170220BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20170220BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20170220BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   G01P15/125 Z
   G01P15/13 B
   G01P15/08 101B
   G01P15/08 102E
   H01L29/84 Z
   B81B3/00
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-128582(P2015-128582)
(22)【出願日】2015年6月26日
(62)【分割の表示】特願2009-128940(P2009-128940)の分割
【原出願日】2009年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-212701(P2015-212701A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】12/183,678
(32)【優先日】2008年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイ・フォスター
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第6230566(US,B1)
【文献】 特開2003−337138(JP,A)
【文献】 特開2007−309936(JP,A)
【文献】 米国特許第7146856(US,B2)
【文献】 米国特許第7140250(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00−15/18
H01L29/84
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の質量により規定される第1のプルーフマス部分および前記第1の質量とは異なる第2の質量により規定される第2のプルーフマス部分を備えた不平衡プルーフマスと、
前記第1のプルーフマス部分の前記第1の質量が前記第2のプルーフマス部分の前記第2の質量より小さくなるように前記第1のプルーフマス部分に配置された質量削減アパーチャと、
基板に隣接する前記第2のプルーフマス部分の一方の側に配置された気体制動補償容積であって、前記気体制動補償容積の面積は、前記質量削減アパーチャの面積と実質的に等しく、前記第1のプルーフマス部分の気体制動は、前記第2のプルーフマス部分の気体制動と実質的に等しい、気体制動補償容積と、
前記不平衡プルーフマスの第1の端部の複数の第1のプルーフマス櫛歯と、
前記複数の第1のプルーフマス櫛歯と交互配置され、前記複数の第1のプルーフマス櫛歯から面外軸に沿ってオフセットされた複数の第1のステータ櫛歯と、
前記不平衡プルーフマスの第2の端部の複数の第2のプルーフマス櫛歯と、
前記複数の第2のプルーフマス櫛歯と交互配置され、前記複数の第2のプルーフマス櫛歯から前記面外軸に沿ってオフセットされた複数の第2のステータ櫛歯と、
を備えた微小電気機械システム(MEMS)デバイス。
【請求項2】
前記複数の第1および第2のプルーフマス櫛歯と前記複数の第1および第2のステータ櫛歯は、X軸およびY軸に沿って面内で互いに交互配置され、前記複数の第1および第2のプルーフマス櫛歯は、面外Z軸に沿って前記複数の第1および第2のステータ櫛歯からオフセットされる、請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
加速度計を面外方向に加速するステップであって、加速度が不平衡プルーフマスに回転トルクを発生する、ステップと、
リバランシング力を複数の交互配置されたロータ櫛歯とステータ櫛歯との少なくとも1つに加えるステップであって、前記リバランシング力は前記回転トルクに対抗し、前記ロータ櫛歯は前記不平衡プルーフマスの端部に配置され、前記ステータ櫛歯は前記不平衡プルーフマスの前記端部に隣接したステータの上に配置される、ステップと、
前記加えられたリバランシング力に基づいて加速度の大きさを決定するステップと、
を含み、前記ステータ櫛歯と前記ロータ櫛歯は、X軸およびY軸に沿って面内で互いに交互配置され、前記ステータ櫛歯は、前記プルーフマスが安静状態にある時に面外Z軸に沿って前記ロータ櫛歯からオフセットされ、前記ステータ櫛歯と前記ロータ櫛歯は、前記不平衡プルーフマスの第1方向における回転が前記ステータ櫛歯と前記ロータ櫛歯間の重なりの量を増加させ、前記不平衡プルーフマスの第2方向における回転が前記ステータ櫛歯と前記ロータ櫛歯間の重なりの量を減少させるように構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
加速度計などの従来の面外微小電気機械システム(MEMS)デバイスは、1つまたは
複数のシリコンたわみを使用して、通常はガラスである基板に機械的に結合されかつ懸垂
された1つまたは複数のシリコンプルーフマスを含むことができる。基板内部にエッチン
グされたいくつかの凹部によって、MEMSデバイスの選択された部分がMEMSデバイ
スの内部部分で自由に運動可能になる。ある種の設計では、プルーフマスを2つの基板の
間にはさみ込むために基板をシリコン構造体の上方および下方に設けることができる。面
外MEMSデバイスを使用して、プルーフマスの部分を変位させる、加えられた加速度の
力を測定することによって面外線形加速度を求めることができる。
【0002】
本明細書でロータと呼ぶ加速度計のプルーフマスの可動部分、およびこれに隣接した本
明細書でステータと呼ぶMEMSデバイスの固定部分は、間隙により隔てられている。通
常、間隙は、プルーフマスロータがMEMSデバイスの加速度に応答して自由に運動する
ように空気または他の適切な気体で満たされている。プルーフマスロータと固定されたス
テータとの間の間隙は静電容量を規定する。
【0003】
開ループで動作されるMEMSデバイスでは、ステータに対するプルーフマスロータの
運動によって誘起された静電容量の変化が検出可能である。検出された静電容量の変化に
基づいて、MEMSデバイスの線形加速度の大きさが決定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,146,856号
【特許文献2】米国特許第7,140,250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、必然的に、プルーフマスロータの運動はロータとステータとの間の幾何学的配
置の変化を引き起こす。ロータとステータとの間の静電容量は、離隔距離の二乗で除され
たロータとステータの結合面積に比例するので[力=関数(面積/距離)]、ロータと
ステータとの間の幾何学的配置の変化は非線形の様式でこの力に影響を及ぼす。こうした
力の非線形的変化は、MEMSデバイスの加速度を決定する過程を著しく複雑なものにし
、加速度の決定に誤差を持ち込む可能性がある。したがって、ロータおよびステータ間の
力の非線形的変化を最小化するように、ステータに対するロータの運動を実質的に防ぎ、
および/または、制御することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
面外線形加速度を感知するシステムおよび方法が、閉ループで動作されるMEMSデバ
イスにおいて開示される。例示の実施形態において、面外線形加速度計は面外方向に加速
され、この加速度は不平衡プルーフマスに回転トルクを発生させる。リバランシング(再
平衡)力が、複数の交互配置されたロータ櫛歯(comb tine)とステータ櫛歯と
の少なくとも1つに加えられ、このリバランシング力は前記回転トルクに対抗し、ロータ
櫛歯は不平衡プルーフマスの端部に配置され、ステータ櫛歯は不平衡プルーフマスの端部
に隣接したステータの上に配置される。次いで、加速度の大きさが、加えられたリバラン
シング力に基づいて求められる。
【0007】
さらなる態様によれば、例示の実施形態は、第1の質量により規定される第1のプルー
フマス部分および第1の質量とは異なる第2の質量により規定される第2のプルーフマス
部分を備えた不平衡プルーフマスと、不平衡プルーフマスの第1の端部の複数の第1のプ
ルーフマス櫛歯と、複数の第1のプルーフマス櫛歯と交互配置され複数の第1のプルーフ
マス櫛歯からオフセットされた複数の第1のステータ櫛歯と、不平衡プルーフマスの第2
の端部の複数の第2のプルーフマス櫛歯と、複数の第2のプルーフマス櫛歯と交互配置さ
れ複数の第2のプルーフマス櫛歯からオフセットされた複数の第2のステータ櫛歯と、を
有する。コントローラは、複数の交互配置された第1のロータ櫛歯および第1のステータ
櫛歯ならびに複数の交互配置された第2のロータ櫛歯および第2のステータ櫛歯の少なく
とも1つに、リバランシング力を加えるように動作可能であり、このリバランシング力は
、不平衡プルーフマスの面外加速度に応答して発生された不平衡プルーフマスの回転トル
クに対抗し、コントローラは、加えられたリバランシング力に基づいて加速度の大きさを
決定するように動作可能である。
【0008】
好適な実施形態および代替の実施形態が下記の図面を参照して以下で詳細に説明される
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】閉ループ線形駆動加速度計の実施形態の部分の上側斜視図である。
図2】閉ループ線形駆動加速度計のプルーフマスの実施形態の底面側斜視図である。
図3】閉ループ線形駆動加速度計の交互配置されたロータ歯およびステータ歯の切欠き側面図である。
図4】閉ループ線形駆動加速度計の実施形態の制御要素の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、面外線形加速度を検出する閉ループ線形駆動加速度計100の実施形態の一部
分の上側斜視図である。閉ループ線形駆動加速度計100は、プルーフマス102と、第
1のステータ104と、第2のステータ106と、基板108の部分とを含む。実施形態
は微小電気機械システム(MEMS)技術を使用して製造される。
【0011】
Z軸に沿った面外線形加速度が振子式プルーフマス102を回転させる。動作の閉ルー
プモードは、閉ループ線形駆動加速度計100が面外加速度を受けた時に、プルーフマス
102の位置を概ね固定された位置に維持する。すなわち、例示の実施形態では、電圧が
発生されステータ104および106に印加されて、線形加速度により引き起こされたね
じり力を打ち消す。
【0012】
プルーフマス102は、プルーフマス102が(示されたY軸に対応する)示された回
転軸110の周りを回転できるように基板108の上方に懸垂される。閉ループ線形駆動
加速度計100は、交換可能に、振子式加速度計100と呼ばれてもよい。
【0013】
固定具112が基板108に接合される。いくつかの実施形態では、固定具112は基
板108に接合された(および/または図示しない上部基板に接合された)機械的デバイ
ス層(図示せず)の部分であってよい。
【0014】
たわみ部材114は、プルーフマス102を、固定具112を介して基板108に可撓
的に結合する。したがって、たわみ部材114は、X軸およびY軸に沿ったプルーフマス
102の運動を概ね制限するが、面外加速度(Z軸に沿った加速度)に応答してY軸回り
の回転を許容する。いくつかの実施形態で、たわみ部材114は、電気信号がプルーフマ
ス102からピックオフされ、および/またはプルーフマス102に印加されるようにプ
ルーフマス102への電気的接続性を提供する。
【0015】
例示の実施形態で、ステータ104、106は、これらステータ104、106がプル
ーフマス102に対して固定された位置に保持されるように基板108に接合される。い
くつかの実施形態では、ステータ104、106は追加的にまたは代替として上部基板(
図示せず)に接合されてもよい。他の実施形態では、ステータ104、106は、基板1
08に接合された(および/または上部基板に接合された)機械的デバイス層(図示せず
)の部分であってもよい。代替の実施形態で、ステータ104、106は、複数の切り離
されたステータとして実装されてもよい。
【0016】
プルーフマス102の例示の実施形態は、プルーフマス102の第1の端部118に沿
って形成された、第1の複数の対称的に構成されたプルーフマス櫛歯116を含む。さら
に、第2の複数の対称的に構成されたプルーフマス櫛歯120が、プルーフマス102の
反対側の第2の端部122に沿って形成される。例示のために、3本のプルーフマス櫛歯
116、120だけが示される。実際には多くのプルーフマス櫛歯116、120が使用
されよう。代替の実施形態で、ロータは別個のグループのロータ櫛歯116、120とし
て実装されてもよい。
【0017】
第1のステータ104は、プルーフマス櫛歯116と交互配置された対応する数のステ
ータ櫛歯124を含む。同様に、第2のステータ106は、プルーフマス櫛歯120と交
互配置された、いくつかのステータ櫛歯126を含む。例示のため、4本のステータ櫛歯
124および4本のステータ櫛歯126だけが示される。実際には多数のステータ櫛歯1
24、126が使用されよう。
【0018】
間隙128は、プルーフマス櫛歯116、120をそれらのそれぞれのステータ櫛歯1
24、126から隔てる。間隙128は少なくとも2つの機能を提供する。第1に、間隙
128は、プルーフマス102がZ軸に沿った線形加速度に応答してその回転軸110の
周りを回転できるように、隣接する櫛歯間に摩擦接触が存在しないような十分な大きさで
ある。第2に、間隙128は、プルーフマス櫛歯116とステータ櫛歯124との間なら
びにプルーフマス櫛歯120とステータ櫛歯126との間の静電容量を規定する。
【0019】
上述したように、プルーフマス102は、Z軸に沿った線形加速度に応答してその回転
軸110の周りを回転する。プルーフマス102の回転軸110の周りの回転反応は、プ
ルーフマス102の第1の部分130とプルーフマス102の第2の部分132との間の
質量の不平衡によって引き起こされる。第1の部分130および第2の部分132は回転
軸110によって画定される。部分130、132の質量が異なるために、プルーフマス
102の線形加速度によって発生された第1の部分130に加えられる力は、第2の部分
132に加えられる力とは異なることになる。(一般に、力は質量に加速度を乗じたもの
に等しいことが知られている。したがって、Z軸に沿った線形加速度は、それら部分の質
量が異なることを考えれば、部分130、132に対して異なる力をもたらす。したがっ
て、第1の部分130に作用する力と第2の部分132に作用する力の差異によって回転
トルクが発生し、これは、プルーフマス102をその回転軸110の周りに回転させる傾
向がある)。
【0020】
質量の不平衡は、様々な方法でまたはそれらを組み合わせて、部分130、132間で
定義することができる。1つの実施形態においては、任意選択で、第1の部分130の長
さが第2の部分132の長さよりも大きくされてよい。しかし、プルーフマス102の第
1の端部118の位置が第2の端部122の位置よりも回転軸110からより遠くに離れ
ることを考慮すると、端部118における関連する力のモーメントは端部122における
力のモーメントとは異なることになる。したがって、閉ループ線形駆動加速度計100の
実施形態は、1つまたは複数の印加電圧を介してリバランシング力を加える場合に、およ
び/または面外加速度を決定する場合に、計算によりこの影響を考慮している。
【0021】
他の実施形態において、第1の部分130の長さは第2の部分132の長さと概ね同じ
である。それゆえ、プルーフマス102の端部118および122の回転軸110からの
位置は概ね等しい。したがって、端部118および122における関連する力のモーメン
トも概ね等しいことになる。
【0022】
プルーフマス102の端部118および122の位置が回転軸110から概ね等距離に
ある実施形態の質量の不平衡は、1つまたは複数の異なる方法で生じさせることができる
図1は、任意部分134が除去されたプルーフマス102を示す。プルーフマス102
の一方の側からの材料の任意の除去は部分130、132間の質量の不平衡を作り出す。
除去部分134は、プルーフマス102の内部に部分的に延在してよく、または、プルー
フマス102を全体にわたって貫通して延在してもよい。いくつかの実施形態において、
除去部分134はプルーフマス102の材料とは異なる密度を有する材料で任意に充填さ
れてよい。除去部分134は、交換可能に、質量削減容積134または質量削減アパーチ
ャ134と呼ぶことができる。
【0023】
図2は、閉ループ線形駆動加速度計100のプルーフマスの実施形態の底面側の斜視図
である。除去部分134がプルーフマス102を貫通して延在する実施形態において、プ
ルーフマス102の第1の部分130の基板108に隣接する表面積202は、第2の部
分132の表面積204より小さい。表面積の差異は、部分130に及ぼす気体制動効果
と部分132に及ぼす気体制動効果とに望ましくない不平衡をもたらす。いくつかの実施
形態において、部分130、132間の気体制動効果の不平衡は計算によって求められる
【0024】
図2に示した実施形態において、部分130、132間の気体制動効果の不平衡はプル
ーフマス102の底部から部分206を除去することによって任意に物理的に補償できる
。除去部分206は、交換可能に、気体制動補償容積206と呼ぶことができる。除去部
分206の面積は、プルーフマス102を貫いて延在する除去部分134と概ね等しい面
積である。したがって、表面積202および204は、部分130、132に及ぼす気体
制動効果が概ね同じになるように概ね等しくされる。
【0025】
代替として、または、付加的に、部分130、132間の質量の不平衡は、プルーフマ
ス櫛歯116をプルーフマス櫛歯120より相対的に小さく(より小さな質量に)形成す
ることによっても、もたらされる。すなわち、プルーフマス櫛歯120は、任意に、プル
ーフマス櫛歯116より大きな質量を有してよく、それによって、質量の不平衡を生じさ
せてもよい。間隙128がプルーフマス102の両端118および122で概ね等しくな
るように間隙128の幾何学的配置を維持するために、ステータ櫛歯124をステータ櫛
歯126よりも相対的に大きく(より質量を大きく)作ることができる。
【0026】
代替として、または、付加的に、部分130、132間の質量の不平衡は、プルーフマ
ス102の側面端部に沿ってなど、プルーフマス102の複数部分を除去することによっ
てもたらされてもよい。気体制動不平衡の影響は、対応する気体制動補償容積を使用する
ことによって緩和できる。
【0027】
図3は、閉ループ線形駆動加速度計100の交互配置されたロータ歯とステータ歯の切
欠き側面図である。図3はプルーフマス櫛歯116とステータ櫛歯124との間のオフセ
ットを示す。同様に、プルーフマス櫛歯120はステータ櫛歯126からオフセットされ
る。プルーフマス櫛歯116、120をステータ櫛歯124、126からオフセットさせ
ることは、プルーフマス102をステータ104、106からオフセットさせることによ
り実装できる。他の実施形態で、適切なエッチングおよび/またはマイクロマシニング工
程を使用して、オフセットをプルーフマス櫛歯116、120およびステータ櫛歯124
、126の中に作り出すことができる。
【0028】
基板108の一部分が図3に示される。任意の接地板302または他の適切な構造体が
、プルーフマス櫛歯116、120およびステータ櫛歯124、126の概ね下方に基板
108の上に配置される。接地接続部に結合された接地板302は浮遊容量を接地させる
経路を提供し、それによって、閉ループ線形駆動加速度計100の線形性を向上させる。
【0029】
図4は、閉ループ線形駆動加速度計コントローラ400の実施形態の制御要素の構成図
である。これに含まれるものは、プロセッサシステム402、メモリ404、加速度計制
御インターフェース406、および出力インターフェース408である。プロセッサシス
テム402、メモリ404、加速度計制御インターフェース406、および出力インター
フェース408は通信バス410に結合され、それによって上述の構成要素への接続性を
実現している。閉ループ線形駆動加速度計100の代替形態では、上述の構成要素は異な
る方法で互いに通信可能に結合されてよい。例えば、1つまたは複数の上述の構成要素は
プロセッサシステム402に直接結合されてよく、あるいは中間の構成要素(図示せず)
を介してプロセッサシステム402に結合されてもよい。メモリ404の領域412は、
閉ループ線形駆動加速度計100を制御し閉ループ線形駆動加速度計100の線形加速度
を決定するためのロジックを格納する。
【0030】
加速度計制御インターフェース406は、プルーフマス102およびステータ104、
106に電気的に接続する複数のコネクタ414を含む。コネクタ414は、コントロー
ラ400とプルーフマス102およびステータ104、106との間で電圧、電流および
/または信号を伝送するように構成される。他の実施形態で、コネクタは異なる方法で接
続されてよく、および/または、他の構成要素に接続されてよい。さらに、閉ループ線形
駆動加速度計100の実際の構成に応じて、これより少ないまたは多くのコネクタが使用
されてもよい。例えば、ステータ104、106は複数の別個のステータとして実装され
てよく、したがって、追加のコネクタが必要とされよう。さらにまたは代替として、ロー
タは別個のグループのロータ櫛歯116、120として実装されてよく、したがって追加
のコネクタが必要とされよう。
【0031】
出力インターフェース408は、決定された加速度情報を、これをさらに処理するデバ
イス(図示せず)に供給するように構成された1つまたは複数のコネクタ416を含む。
例えば、加速度情報はディスプレイ上に表示され、リモートメモリに格納され、または、
レポート等の中に印刷可能なテキスト形式で表されてよい。
【0032】
プロセッサシステム402は、動作の力のリバランシングモードとも呼ばれる動作の閉
ループモードで閉ループ線形駆動加速度計100を動作させるように、領域412に常駐
しているロジックを検索し実行するように構成される。
【0033】
動作の閉ループモードでは、閉ループ線形駆動加速度計100がZ軸のいずれの方向に
も沿った面外加速度を受ける場合に、プルーフマス102の位置を概ね固定した位置に維
持する。すなわち、閉ループ線形駆動加速度計コントローラ400は、線形加速度によっ
て引き起こされたねじり力を打ち消すために、プルーフマス櫛歯116、120および/
またはステータ櫛歯124、126に制御信号を発生するように構成される。例示の実施
形態では、制御信号は印加電圧である。
【0034】
閉ループ線形駆動加速度計コントローラ400は、線形加速度によって引き起こされた
ねじり力を打ち消すように発生された制御信号に基づいて、線形加速度の大きさをも決定
する。すなわち、線形加速度によって引き起こされたねじり力を打ち消すように加えられ
る制御信号は既知であるから、線形加速度の大きさをそれから決定することができる。
【0035】
例示の実施形態で、制御信号は、軸110の周りの回転の第1の方向に生じた回転トル
クに応答して交互配置された櫛歯116、124に加えられる。他の制御信号が、軸11
0の周りの回転の第2の反対方向に生じた回転トルクに応答して交互配置された櫛歯12
0、126に加えられる。
【0036】
実際には、たわみ部材114がプルーフマス102のX軸またはY軸に沿った運動を概
ね禁止するので、プルーフマス櫛歯116、120とそれらのそれぞれのステータ櫛歯1
24、126との間の間隙は、概ね一定の値となる。したがって、プルーフマス櫛歯11
6、120とそれらのそれぞれのステータ櫛歯124、126との間の静電容量は、プル
ーフマス櫛歯116、120とそれらのそれぞれのステータ櫛歯124、126との間の
容量性結合面積の関数である。
【0037】
上述したように、プルーフマス櫛歯116、120はステータ櫛歯124、126から
オフセットされている。プルーフマス櫛歯116がそれぞれのステータ櫛歯124に対し
てより整列するように回転すると、プルーフマス櫛歯116とそれぞれのステータ櫛歯1
24との間の静電容量面積が増加する。(しかし、プルーフマス102は固定した構造体
であるから、プルーフマス櫛歯120とそれぞれのステータ櫛歯126との間の静電容量
面積は、それらが整列状態から外れるに応じて必然的に減少しよう)。
【0038】
プルーフマス櫛歯116、120とそれらのそれぞれのステータ櫛歯124、126と
の間の静電容量は、式(1)によって以下のように表わされる。
【0039】
【数1】
【0040】
式(1)で、εは自由空間の誘電率、Lは櫛歯の長さ、xは櫛歯の重なりの厚さ、G
は間隙、Nは櫛歯の数である。
以下の式(2)は、プルーフマス櫛歯116、120とそれらのそれぞれのステータ櫛
歯124、126との間の蓄積された容量性エネルギーを定義している。
【0041】
【数2】
【0042】
以下の式(3)および式(4)は、プルーフマス櫛歯116、120とそれらのそれぞ
れのステータ櫛歯124、126との間の力を定義している。
【0043】
【数3】
【0044】
したがって、プルーフマス櫛歯116、120とそれらのそれぞれのステータ櫛歯12
4、126とは、櫛歯間の引き寄せる力に方向を与えるためにオフセットされる。プルー
フマス櫛歯116、120とそれらのそれぞれのステータ櫛歯124、126との間の力
は、櫛歯間の重なりの量を増加させるように作用し、このことがまた静電容量を増加させ
る。(櫛歯が互いに面内にあるならば、その場合は、櫛歯のいかなる運動も静電容量を減
少させるだけである)。
【0045】
式(4)は、発生される力が印加電圧の関数であることを示す。したがって、閉ループ
線形駆動加速度計コントローラ400は、ステータ104、106への印加電圧を調整す
ることによって、線形加速度によって引き起こされたねじり力を打ち消すことができる。
【0046】
便宜上、プルーフマス102は単一の構造体として示されている。いくつかの実施形態
では、プルーフマス102は、適切な構造(図示せず)を用いてプルーフマス櫛歯116
をプルーフマス櫛歯120から電気的に絶縁させるように構成できる。例えば、プルーフ
マス102は2つの部分の状態で存在し別々に固定されてよい。または、絶縁性の仕切り
等(図示せず)をプルーフマス102の内部に製作してプルーフマス櫛歯116をプルー
フマス櫛歯120から電気的に絶縁してもよい。
【0047】
参照により本明細書にその全体が組み込まれる、Malametzに交付された「Dy
namically Balanced Capacitive Pick−Off A
ccelerometer(動的に平衡された容量性ピックオフ加速度計)」という名称
の米国特許第7,146,856号に開示されたものなどの、MEMS加速度計のいくつ
かの代替の実施形態において、ステータは、プルーフマス部分130、132の下方の基
板108上に配置された電極である。不平衡プルーフマス102の代替の実施形態は、ス
テータ電極に対向したロータ電極を含む。同様にして、リバランシング力が、面外線形加
速度によって発生された回転トルクに応答して加えられる。質量不平衡は、質量削減アパ
ーチャ134によってもたらされる。部分130、132間の気体制動効果の不平衡は、
プルーフマス102の底部上の気体制動補償容積206によって物理的に補償することが
できる。
【0048】
他の例示の実施形態において、MEMSデバイスが、参照により本明細書にその全体が
組み込まれるLeonardsonらに交付された「MEMS Teeter−Tott
er Accelerometer Having Reduced Non−Line
arity(減少した非線形を備えたMEMS揺動加速度計)」という名称の米国特許第
7,140,250号に開示されている。部分130、132間の気体制動効果の不平衡
は、プルーフマス102の底部上の気体制動補償容積206によって物理的に補償できる
【0049】
上述したように本発明の好適な実施形態が示され説明されてきたけれども、多くの変更
を本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、本発明
の範囲は好適な実施形態の開示によって限定されない。そうではなく、本発明は以下に続
く特許請求の範囲を参照することによってのみ規定されるべきである。
【符号の説明】
【0050】
100 閉ループ線形駆動加速度計
102 プルーフマス
104 第1のステータ
106 第2のステータ
108 基板
110 回転軸
112 固定具
114 たわみ部材
116 第1のプルーフマス櫛歯
118 プルーフマスの第1の端部
120 第2のプルーフマス櫛歯
122 プルーフマスの第2の端部
124 ステータ櫛歯
126 ステータ櫛歯
128 間隙
130 プルーフマスの第1の部分
132 プルーフマスの第2の部分
134 プルーフマスの除去部分
202 第1の部分の表面積
204 第2の部分の表面積
206 プルーフマスの除去部分
302 接地板
400 閉ループ線形駆動加速度計コントローラ
402 プロセッサシステム
404 メモリ
406 加速度計制御インターフェース
408 出力インターフェース
410 通信バス
412 メモリの領域
414 コネクタ
416 コネクタ
図1
図2
図3
図4