特許第6088591号(P6088591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6088591-ソレノイドバルブ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088591
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】ソレノイドバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20170220BHJP
【FI】
   F16K31/06 305M
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-141227(P2015-141227)
(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公開番号】特開2017-20634(P2017-20634A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年12月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100193194
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亨
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−138925(JP,A)
【文献】 特開2012−202491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブブロックに設けられる挿入孔に挿入固定されるソレノイドバルブであって、
前記バルブブロック内の通路を流れる作動流体の流量を制御する弁体と、
前記弁体が摺動自在に挿入される中空円筒状のスリーブと、
前記弁体を軸方向に変位させるソレノイド部と、を備え、
前記スリーブは、前記挿入孔内において前記弁体を摺動自在に支持する摺動支持部と、前記摺動支持部よりも前記挿入孔の開口端側に設けられ、前記摺動支持部の外径よりも径が大きい大径部と、を有し、
前記ソレノイド部は、前記大径部側に隣接して配置され、
前記スリーブは、前記大径部が前記ソレノイド部によって前記バルブブロックに押し付けられることにより前記挿入孔内に固定されることを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記スリーブは、前記弁体が着座するシート部をさらに有し、
前記シート部は、前記摺動支持部に対して前記大径部と反対側に設けられることを特徴とする請求項1に記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記ソレノイド部は、前記スリーブに結合される円筒状のソレノイドチューブを有し、
前記大径部は、前記ソレノイドチューブが前記バルブブロックに固定されることによって、前記バルブブロックに押し付けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記ソレノイドチューブと前記スリーブとの接触面は、前記スリーブ内の空間を密閉するシール部であることを特徴とする請求項3に記載のソレノイドバルブ。
【請求項5】
前記ソレノイド部は、少なくとも一部が前記ソレノイドチューブに係止され、前記バルブブロックに締結する締結部材をさらに有し、
前記ソレノイドチューブは、前記締結部材が前記バルブブロックに締結されることによって、前記バルブブロックに固定されることを特徴とする請求項3または4に記載のソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧によって作動する建設機械や産業機械では、電磁力に応じて作動油の流量を制御するソレノイドバルブが用いられる。
【0003】
特許文献1には、円筒状のスリーブと、スリーブ内に摺動自在に挿入されるポペット弁と、を備えるソレノイドバルブが記載されている。スリーブの内周の先端には、ポペット弁が着座するシート部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−239996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるソレノイドバルブは、バルブブロックに設けられる挿入孔に挿入固定されるときに、スリーブの先端部がバルブブロックに押し付けられる。このときの押付荷重によって、シート部を含むスリーブには圧縮応力が生じ、スリーブ全体がわずかに変形する。このため、スリーブ内を摺動するポペット弁がスムーズに移動できなくなったり、ポペット弁とシート部との間のシール性が低下したりするなどの作動不良を生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、バルブブロックに設けられる挿入孔に挿入固定されるソレノイドバルブにおいて、スリーブ内を摺動する弁体の作動不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、弁体が摺動自在に挿入されるスリーブが、弁体を摺動自在に支持する摺動支持部よりも挿入孔の開口端側に設けられる大径部を有し、スリーブは、この大径部がソレノイド部によってバルブブロックに押し付けられることにより挿入孔内に固定されることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、挿入孔の開口端側に設けられる大径部がソレノイド部によってバルブブロックに押し付けられることによりスリーブが挿入孔内に固定される。このため、大径部よりも挿入孔の内部に挿入される摺動支持部には軸方向の圧縮力が作用しない。よって、摺動支持部が圧縮応力によって変形することが抑制される。
【0009】
第2の発明は、スリーブが、弁体が着座するシート部をさらに有し、シート部は、摺動支持部に対して大径部と反対側に設けられることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、弁体が着座するシート部が、バルブブロックに押し付けられる大径部よりも挿入孔の内部に設けられる。このため、スリーブが挿入孔内に固定される際にシート部には軸方向の圧縮力が作用しない。よって、シート部が圧縮応力によって変形することが抑制される。この結果、弁体のシート部への着座不良が生じることを防止することができる。
【0011】
第3の発明は、ソレノイド部が、スリーブに結合される円筒状のソレノイドチューブを有し、大径部は、ソレノイドチューブがバルブブロックに固定されることによって、バルブブロックに押し付けられることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、スリーブの大径部がバルブブロックとソレノイドチューブとの間で挟持固定される。このような簡素な構成によって、スリーブを挿入孔内に固定することができる。
【0013】
第4の発明は、ソレノイドチューブとスリーブとの接触面が、スリーブ内の空間を密閉するシール部であることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、押圧接触するソレノイドチューブとスリーブとによりシール面が形成される。このため、ソレノイドチューブとスリーブとの結合部に別途シール部材を設けることなく、結合部からの作動流体の漏れを防止することができる。
【0015】
第5の発明は、ソレノイド部が、少なくとも一部がソレノイドチューブに係止されバルブブロックに締結する締結部材をさらに有し、ソレノイドチューブは、締結部材がバルブブロックに締結されることによって、バルブブロックに固定されることを特徴とする。
【0016】
第5の発明では、スリーブの大径部とソレノイドチューブとがバルブブロックと締結部材との間で挟持固定される。このような簡素な構成によって、スリーブを挿入孔内に固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バルブブロックに設けられる挿入孔に挿入固定されるソレノイドバルブにおいて、スリーブ内を摺動する弁体の作動不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るソレノイドバルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るソレノイドバルブ100について説明する。ソレノイドバルブ100は、建設機械や産業機械等に設けられ、図示しない流体圧力源からアクチュエータ(負荷)に供給される作動流体の流量やアクチュエータから作動流体タンク等へ排出される作動流体の流量を制御する。
【0021】
図1に示されるソレノイドバルブ100は、バルブブロック200に設けられる非貫通の挿入孔210に挿入固定される。バルブブロック200は、一端が挿入孔210の底面に開口し、他端がバルブブロック200の外面に開口して図示しない配管等を通じて流体圧力源に接続される入口通路220と、一端が挿入孔210の側面に開口し、他端がバルブブロック200の外面に開口して図示しない配管等を通じてアクチュエータに接続される出口通路230と、を有する。
【0022】
ソレノイドバルブ100では、作動流体として作動油が用いられる。作動油は、図1において矢印で示すように、入口通路220から出口通路230へと流れる。作動流体は、作動油に限定されず、他の非圧縮性流体または圧縮性流体であってもよい。
【0023】
ソレノイドバルブ100は、バルブブロック200内の通路である入口通路220及び出口通路230を通じてアクチュエータに供給される作動油の流量を制御する弁体としての主弁22と、主弁22が摺動自在に挿入される中空円筒状のスリーブ12と、主弁22を軸方向に変位させるソレノイド部60と、を備える。
【0024】
スリーブ12は、挿入孔210内において主弁22の外周面を摺動自在に支持する摺動支持部12aと、摺動支持部12aよりも挿入孔210の開口端側に設けられ、摺動支持部12aの外径よりも径が大きい大径部12cと、摺動支持部12aに対して大径部12cと反対側に設けられ、主弁22が着座するシート部13と、を有する。
【0025】
大径部12cは、挿入孔210の開口端側に設けられる外側平端面12dと、摺動支持部12a側に設けられる内側平端面12eと、を有するフランジ状に形成される。挿入孔210には、内側平端面12eに対向する段部211が形成される。スリーブ12は、大径部12cの内側平端面12eが段部211に押し付けられることによって挿入孔210内に固定される。大径部12cの形状は、フランジ状に限定されず、摺動支持部12aの外径よりも径方向外側に突出する部分を有していればどのような形状であってもよい。
【0026】
シート部13は、スリーブ12内の空間とバルブブロック200の入口通路220とを連通する円孔状の第1シート部13aと、第1シート部13aの下流側に形成される円錐台状の第2シート部13bと、の2つのシート部を有する。第1シート部13aと第2シート部13bとは、スリーブ12と同一中心線上に形成される。
【0027】
第2シート部13bと摺動支持部12aとの間には、スリーブ12内の空間とバルブブロック200の出口通路230とを連通する連通孔12bが周方向に間隔をあけて複数形成される。
【0028】
シート部13の外周と摺動支持部12aの外周とには、連通孔12bを挟むようにして、それぞれOリング51,52が配置される。連通孔12bと出口通路230との接続部は、スリーブ12と挿入孔210との間で圧縮されるOリング51,52によって封止される。このため、出口通路230へはスリーブ12の連通孔12bを通過した作動油のみが供給される。
【0029】
主弁22は、円柱状部材であり、一端面22eがシート部13側に位置し、他端面22fが大径部12c側に位置し、筒部22cが摺動支持部12aに摺動支持されるようにスリーブ12内に挿入される。
【0030】
主弁22の他端面22fは、主弁22と、スリーブ12と、ソレノイド部60と、により画定されるパイロット圧室42に臨んでいる。
【0031】
パイロット圧室42の一部を画定するスリーブ12には、パイロット圧室42に開口する導入孔41が設けられる。また、バルブブロック200には、一端が入口通路220に連通し、他端が導入孔41を通じてパイロット圧室42に連通する通路240が形成される。このため、パイロット圧室42には、通路240と導入孔41とを通じて入口通路220に供給される高圧の作動油が導かれる。
【0032】
また、通路240には、通路240を流通する作動油に抵抗を与えるオリフィス242が設けられる。オリフィス242は、パイロット圧室42への作動油の流入を制限する。オリフィスが設けられる位置は、通路240に限定されず、導入孔41であってもよい。通路240には、パイロット圧室42に導入された作動油が入口通路220に逆流することを防止する逆止弁が設けられてもよい。
【0033】
また、パイロット圧室42内には、一端が他端面22fに係止され、他端がソレノイド部60に係止されるメインリターンスプリング24が設けられる。
【0034】
メインリターンスプリング24の付勢力は、主弁22を閉弁させる方向に作用する。また、入口通路220に供給される作動油の圧力は、主弁22の第2シート部13bにおける断面に相当する開弁受圧面A1に作用し、主弁22を開弁させる方向に作用する。また、パイロット圧室42内の作動油の圧力は、筒部22cにおける断面に相当する閉弁受圧面A2に作用し、主弁22を閉弁させる方向に作用する。このため、主弁22は、開弁受圧面A1に作用する入口通路220に供給される作動油の圧力による推力が、閉弁受圧面A2に作用するパイロット圧室42内の作動油の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を上回ると開弁方向に変位し、下回ると閉弁方向に変位する。
【0035】
主弁22の入口通路220側には、第1シート部13aに摺動自在に挿入される円柱状のスプール弁22aが形成され、スプール弁22aと筒部22cとの間には、第2シート部13bに着座する円錐台状のポペット弁22bが形成される。
【0036】
主弁22の一端面22eには、入口通路220に連通する凹部22gがスプール弁22aと同軸上に形成される。スプール弁22aには、一端が第1シート部13aと摺動する面に開口し、他端が凹部22gの内周面に開口する貫通孔22dが周方向に間隔をあけて複数形成される。
【0037】
各貫通孔22dは、ポペット弁22bが第2シート部13bを開放する方向へスプール弁22aが移動するのに伴って、第1シート部13aの下流端側において徐々に開口する。つまり、第1シート部13aから露出される各貫通孔22dの面積は、スプール弁22aの移動量に応じて変化する。このように、各貫通孔22dの開口面積を変化させることによって出口通路230に供給される作動油の流量を制御することができる。
【0038】
各貫通孔22dは、ポペット弁22bが第2シート部13bに当接するときであっても、第1シート部13aによって完全に閉塞されないように配置される。つまり、各貫通孔22dの開口面積は、ポペット弁22bが第2シート部13bに当接する閉弁位置において最小値となり、ポペット弁22bが開弁方向に変位するにつれて漸次増大する。
【0039】
なお、各貫通孔22dは、ポペット弁22bが第2シート部13bからある程度離れるまで第1シート部13aによって閉塞されるように配置されてもよい。この場合、主弁22がある程度変位するまで作動油の流量をほぼゼロに設定することができる。
【0040】
主弁22は、さらに、パイロット圧室42と出口通路230とを連通する連通路23と、パイロット圧室42と連通路23との連通状態を調節することによってパイロット圧室42内の圧力を制御するパイロット圧制御弁25と、を有する。
【0041】
連通路23は、主弁22の他端面22fから軸方向に沿って形成される非貫通の第1連通路23aと、第1連通路23aから径方向に形成され主弁22の外周面に開口する第2連通路23bと、から構成される。第2連通路23bは、主弁22が軸方向に変位する範囲において、連通孔12bと常に連通するように配置される。
【0042】
パイロット圧制御弁25は、サブシート部26dが形成される中空円筒状のスリーブ26と、サブシート部26dに着座するサブポペット弁27aが一端に設けられる円筒状の副弁27と、を有する。
【0043】
スリーブ26は、第1連通路23aに圧入される圧入部26aと、パイロット圧室42に臨むように配置され、圧入部26aよりも外径が大きい大径部26bと、大径部26bから圧入部26aにかけて軸方向に貫通して形成される貫通孔26cと、を有する。スリーブ26は、圧入部26aを介して主弁22に嵌合固定される。この構成に代えて、圧入部26aと第1連通路23aとにねじ部を設け、スリーブ26をねじ結合によって主弁22に固定してもよいし、スリーブ26と主弁22とを一体的に形成してもよい。スリーブ26と主弁22とが別部材で形成される場合、それぞれに形成される通路を容易に加工することができる。また、主弁22に対して、サブシート部26dの形状等が異なるスリーブ26を組み付けることが可能となるため、例えば、主弁22を共通化し、パイロット圧制御弁25の仕様のみを変更することができる。
【0044】
サブシート部26dは、大径部26b側に開口する貫通孔26cの開口端に形成される。このため、第1連通路23aとパイロット圧室42とは、サブシート部26dと貫通孔26cとを通じて連通する。
【0045】
サブポペット弁27aがサブシート部26dから離座し、サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間に隙間が形成されると、パイロット圧室42内の作動油が、この隙間から、貫通孔26cと連通路23と連通孔12bとを通じて出口通路230へと排出される。パイロット圧室42には、通路240を通じて作動油が導かれるが、通路240に設けられるオリフィス242によってパイロット圧室42への作動油の流入が制限されるため、結果として、パイロット圧室42内の圧力は低下する。
【0046】
サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間の隙間の大きさは、スリーブ26に対する副弁27の軸方向における位置を変更することによって調節される。副弁27の軸方向の位置は、ソレノイド部60によって制御される。つまり、この隙間の大きさはソレノイド部60によって制御される。
【0047】
ソレノイド部60は、スリーブ12に結合される円筒状のソレノイドチューブ14と、ソレノイドチューブ14内に摺動自在に収容され、副弁27が連結されるプランジャ33と、ソレノイドチューブ14の外側に設けられるコイル62と、を有する。
【0048】
ソレノイドチューブ14は、バルブブロック200の挿入孔210内に挿入される挿入部14aと、挿入部14aよりも外径が小さく設定され、挿入部14aに隣接して挿入孔210の外側に配置される小径部14bと、を有する。
【0049】
挿入部14aのスリーブ12側には、スリーブ12の大径部12cの外側平端面12dと対向する平端面14cが形成される。ソレノイドチューブ14がスリーブ12にネジ結合されると、平端面14cと外側平端面12dとは面接触した状態となる。このため、ソレノイドチューブ14及びスリーブ12の内部に形成される空間としてのパイロット圧室42は密閉され、パイロット圧室42内の作動油がソレノイドチューブ14とスリーブ12との結合部を通じて外部に漏れることが防止される。ソレノイドチューブ14とスリーブ12との結合は、ネジ結合に限定されず、嵌合結合であってもよい。
【0050】
挿入部14aの外周には、シール部材としてのOリング53が配置される。ソレノイドチューブ14と挿入孔210との間で圧縮されるOリング53によって、挿入孔210内と外部との連通は遮断される。このため、挿入孔210内の作動油が外部に漏れることが防止されるとともに、外部から水や粉塵等が挿入孔210内に侵入することが防止される。
【0051】
小径部14bの外周には、締結部材16が遊びを有して嵌めこまれる。締結部材16は、内周側の部分が挿入部14aに係止された状態で図示しないボルトを介してバルブブロック200に締結される。締結部材16がバルブブロック200に締結されることによって、ソレノイドバルブ100は、バルブブロック200に対して固定される。
【0052】
外周にコイル62が設けられる部分のソレノイドチューブ14の内周側には、プランジャ室44が画成される。プランジャ室44内には、プランジャ33と、一端がプランジャ33に係止されるサブリターンスプリング35と、サブリターンスプリング35の他端が係止されるリテーナ34と、が挿入部14a側から順に配置される。プランジャ33は、サブリターンスプリング35によって、サブポペット弁27aがサブシート部26dに着座する方向へ付勢される。
【0053】
また、プランジャ室44の挿入部14a側の内周面には、ストッパリング37が係止される。ストッパリング37は、プランジャ33をプランジャ室44内に組み付けた後に、プランジャ33がサブリターンスプリング35によって押し戻されてプランジャ室44から抜け出ることを防止するために設けられる。
【0054】
プランジャ33は、円筒状に形成されており、軸心に副弁27が固定される。副弁27の先端に形成されるサブポペット弁27aは、サブシート部26dに着座可能なように、プランジャ33の端部からサブシート部26d側へ突出している。
【0055】
また、プランジャ33には、軸方向に貫通する複数の貫通孔33aが形成されており、サブリターンスプリング35が配置されるプランジャ室44は貫通孔33aを通じてパイロット圧室42に連通する。このため、プランジャ室44内の圧力は、パイロット圧室42内の圧力と同等となる。サブリターンスプリング35の付勢力とプランジャ室44内の圧力とは、サブポペット弁27aをサブシート部26dへ押圧する方向に作用する。
【0056】
挿入部14aと反対側のソレノイドチューブ14の端部14dには、調節ネジ36が軸方向に貫通して螺着される。調節ネジ36の一端は、プランジャ室44内に摺動自在に挿入されるリテーナ34に当接する。このため、調節ネジ36が回転されるとリテーナ34の軸方向における位置が変更され、サブリターンスプリング35の付勢力が変化する。ソレノイドチューブ14から突出する調節ネジ36の他端は、ソレノイドチューブ14に取り付けられるカバー63によって覆われる。
【0057】
次に、ソレノイドバルブ100の動作について説明する。
【0058】
コイル62が非通電状態にあるときには、サブリターンスプリング35の付勢力によって、プランジャ33が押圧され、副弁27のサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座し、パイロット圧室42は閉塞された状態となる。このため、パイロット圧室42内の圧力は入口通路220に供給される作動油の圧力と同等となり、閉弁受圧面A2には、入口通路220の圧力と同等の圧力が作用する。したがって、閉弁受圧面A2に作用するパイロット圧室42内の作動油の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力が、開弁受圧面A1に作用する入口通路220に供給される作動油の圧力による推力を上回るため、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。このように、コイル62が非通電状態にあるときには、ソレノイドバルブ100によって入口通路220から出口通路230への作動油の流れが遮断される。
【0059】
一方、コイル62が通電状態にあるときには、ソレノイド部60が発生する推力によってプランジャ33がサブリターンスプリング35の付勢力に打ち勝ってコイル62側へと吸引される。そして、プランジャ33とともに副弁27が変位することで、サブポペット弁27aはサブシート部26dから離座し、サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間に隙間が形成される。パイロット圧室42内の作動油は、この隙間から、貫通孔26cと連通路23と連通孔12bとを通じて出口通路230へと排出される。このように、パイロット圧室42が出口通路230と連通することによって作動油が排出される一方で、オリフィス242によってパイロット圧室42への作動油の流入が制限されるため、パイロット圧室42内の圧力は低下する。
【0060】
そして、閉弁受圧面A2に作用するパイロット圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力と、開弁受圧面A1に作用する入口通路220の圧力による推力と、がバランスするまで主弁22はシート部13を開放する方向へと変位する。この結果、作動油は、貫通孔22dと第1シート部13aとの間、ポペット弁22bと第2シート部13bとの間及び連通孔12bを通じて、入口通路220から出口通路230へと供給される。
【0061】
また、コイル62に供給される電流が増加されると、サブポペット弁27aがサブシート部26dからさらに離される。この結果、パイロット圧室42から出口通路230へと排出される作動油の量が増加し、パイロット圧室42内の圧力はさらに低下する。そして、パイロット圧室42内の圧力の低下に応じて主弁22がシート部13を開放する方向にさらに移動し、スプール弁22aの貫通孔22dが第1シート部13aから露出される面積が大きくなる。この結果、入口通路220から出口通路230へと供給される作動油の流量は増加する。
【0062】
また、コイル62への通電が停止されると、プランジャ33を吸引する推力が消失するため、プランジャ33は、サブリターンスプリング35の付勢力によって押圧される。そして、副弁27のサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座し、パイロット圧室42は閉塞される。閉塞されたパイロット圧室42内の圧力は、入口通路220に供給される作動油の圧力と同等となるまで上昇する。
【0063】
パイロット圧室42内の圧力が入口通路220の圧力と同等になると、上述のように、開弁受圧面A1に作用する入口通路220の圧力による推力が、閉弁受圧面A2に作用するパイロット圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を下回るため、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。この結果、主弁22は、シート部13を閉塞する方向へと変位し、入口通路220から出口通路230への作動油の流れが遮断される。
【0064】
なお、パイロット圧室42内の圧力が作用する閉弁受圧面A2の面積を、入口通路220に導かれる作動油の圧力が作用する開弁受圧面A1の面積よりも大きく設定することにより、主弁22の閉弁速度を向上させることができる。これは、閉弁受圧面A2のうち、開弁受圧面A1よりも大きい部分に作用するパイロット圧室42内の圧力は、主弁22を閉弁方向に押圧する力として、メインリターンスプリング24の付勢力に加えて作用するためである。
【0065】
このように、入口通路220から出口通路230へと供給される作動油の流量は、コイル62に供給される電流を調節し、パイロット圧室42内の圧力を変化させることによって制御することができる。
【0066】
次に、バルブブロック200へのソレノイドバルブ100の固定について説明する。
【0067】
上述の構成のソレノイドバルブ100は、バルブブロック200に設けられる挿入孔210内にスリーブ12側から挿入され、ソレノイドチューブ14の小径部14bに設けられる締結部材16がバルブブロック200に締結されることによって固定される。
【0068】
締結部材16がバルブブロック200に締結される際、締結部材16は、その一部がソレノイドチューブ14の挿入部14aに当接してこれを押圧する。そして、挿入部14aは、平端面14cを介して接触するスリーブ12の大径部12cを挿入孔210に形成される段部211に向けて押圧する。つまり、ソレノイドバルブ100は、挿入部14aと大径部12cとが段部211と締結部材16との間で挟持されることによってバルブブロック200に固定される。
【0069】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0070】
スリーブ12は、摺動支持部12aやシート部13よりも挿入孔210の開口端側に設けられる大径部12cが、挿入孔210の開口端側からソレノイドチューブ14の挿入部14aによってバルブブロック200に押し付けられることにより挿入孔210内に固定される。つまり、スリーブ12は、挿入孔210の底部に突き当たることによって挿入孔210内に固定される構造ではないので、大径部12cよりも挿入孔210の内部に挿入される部分である摺動支持部12aやシート部13には軸方向の圧縮力が作用しない。このため、摺動支持部12a及びシート部13が圧縮応力によって変形することが抑制される。この結果、スリーブ12の摺動支持部12aを摺動する主弁22がスムーズに移動できなくなったり、スプール弁22aと第1シート部13aとの摺動性が低下したり、ポペット弁22bと第2シート部13bとの間のシール性が低下したりするなどの作動不良が生じることを防止することができる。
【0071】
また、ソレノイドバルブ100を比例制御弁として用いる場合、主弁22の移動がスムーズになることにより、制御信号に対して主弁22をより正確に変位させることが可能になる。この結果、流量制御の精度を向上させることができる。
【0072】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0073】
ソレノイドバルブ100は、バルブブロック200内の入口通路220から出口通路230へと流れる作動油の流量を制御する主弁22と、主弁22が摺動自在に挿入される中空円筒状のスリーブ12と、主弁22を軸方向に変位させるソレノイド部60と、を備え、スリーブ12は、挿入孔210内において主弁22を摺動自在に支持する摺動支持部12aと、摺動支持部12aよりも挿入孔210の開口端側に設けられ、摺動支持部12aの外径よりも径が大きい大径部12cと、を有し、ソレノイド部60は、大径部12c側に隣接して配置され、スリーブ12は、大径部12cがソレノイド部60によってバルブブロック200に押し付けられることにより挿入孔210内に固定されることを特徴とする。
【0074】
この構成では、挿入孔210の開口端側に設けられる大径部12cがソレノイド部60によってバルブブロック200に押し付けられることにより、スリーブ12が挿入孔210内に固定される。このため、大径部12cよりも挿入孔210の内部に挿入される摺動支持部12aには軸方向の圧縮力が作用しない。よって、摺動支持部12aが圧縮応力によって変形することが抑制される。この結果、スリーブ12内を摺動する主弁22がスムーズに移動できなくなるといった作動不良が生じることを防止することができる。
【0075】
また、スリーブ12は、主弁22が着座するシート部13をさらに有し、シート部13は、摺動支持部12aに対して大径部12cと反対側に設けられることを特徴とする。
【0076】
この構成では、主弁22が着座するシート部13が、バルブブロック200に押し付けられる大径部12cよりも挿入孔210の内部に設けられる。このため、スリーブ12が挿入孔210内に固定される際にシート部13には軸方向の圧縮力が作用しない。よって、シート部13が圧縮応力によって変形することが抑制される。この結果、スプール弁22aと第1シート部13aとの摺動性が低下したり、ポペット弁22bと第2シート部13bとの間のシール性が低下したりするなどの作動不良が生じることを防止することができる。
【0077】
また、ソレノイド部60は、スリーブ12に結合される円筒状のソレノイドチューブ14を有し、大径部12cは、ソレノイドチューブ14がバルブブロック200に固定されることによって、バルブブロック200に押し付けられることを特徴とする。
【0078】
この構成では、スリーブ12の大径部12cがバルブブロック200の段部211とソレノイドチューブ14の挿入部14aとの間で挟持固定される。このような簡素な構成によって、スリーブ12を挿入孔210内に容易に固定することができる。
【0079】
また、ソレノイドチューブ14の平端面14cとスリーブ12の外側平端面12dとの接触面は、スリーブ12内の空間であるパイロット圧室42を密閉するシール部であることを特徴とする。
【0080】
この構成では、スリーブ12の大径部12cが挟持固定されることにより、スリーブ12の外側平端面12dとソレノイドチューブ14の平端面14cとが強く押し付け合う状態となる。このように、面同士の密着性が高まることで外側平端面12dと平端面14cとの間には、シール部が形成される。このため、ソレノイドチューブ14とスリーブ12との結合部にシール部材を別途設けなくとも、結合部からパイロット圧室42内の作動油が漏れることを防止することができる。
【0081】
また、ソレノイドチューブ14の外周には、ソレノイドチューブ14と挿入孔210との間で圧縮され、挿入孔210内の空間を密閉するOリング53が配置されることを特徴とする。
【0082】
この構成では、ソレノイドチューブ14と挿入孔210との間に配置されるOリング53によって、挿入孔210内の空間が密閉される。このため、挿入孔210内の作動油が外部に漏れることを防止することができるとともに、外部から水や粉塵等が挿入孔210内に侵入することを防止することができる。また、スリーブ12は、全体が作動油内に配置されるため、スリーブ12に錆が発生することを防止することができる。
【0083】
また、ソレノイド部60は、少なくとも一部がソレノイドチューブ14に係止され、バルブブロック200に締結する締結部材16をさらに有し、ソレノイドチューブ14は、締結部材16がバルブブロック200に締結されることによって、バルブブロック200に固定されることを特徴とする。
【0084】
この構成では、スリーブ12の大径部12cとソレノイドチューブ14の挿入部14aとがバルブブロック200の段部211と締結部材16との間で挟持固定される。このような簡素な構成によって、スリーブ12を挿入孔210内に容易に固定することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0086】
例えば、上記実施形態では、ソレノイドバルブ100は、挿入部14aと大径部12cとが段部211と締結部材16との間で挟持されることによってバルブブロック200に固定される。この構成に代えて、挿入部14aの外周面に雄ねじ部を設け、挿入部14aを挿入孔210に螺合することによって、挿入部14aが大径部12cをバルブブロック200に向けて押し付ける構成としてもよい。
【0087】
あるいは、締結部材16を挿入部14aに当接させることなく、大径部12cの外側平端面12dに直接当接させて、締結部材16が大径部12cをバルブブロック200に向けて押し付ける構成としてもよい。この場合、挿入部14aの外周に設けられるOリング53は、締結部材16と挿入孔210との間に配置される。
【0088】
このように、大径部12cがバルブブロック200に押し付けられることによって、スリーブ12が挿入孔210内に固定される構成であればどのような構成であってもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、ソレノイド部60は、パイロット圧室42内の圧力を変化させることによって、主弁22を間接的に変位させている。これに代えて、ソレノイド部60によって主弁22を直接変位させる構成としてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、主弁22にスプール弁22aとポペット弁22bとが設けられている。これに代えて、スプール弁22aとポペット弁22bとの何れか一方のみを主弁22に設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0091】
100・・・ソレノイドバルブ、200・・・バルブブロック、12・・・スリーブ、13・・・シート部、12a・・・摺動支持部、12c・・・大径部、14・・・ソレノイドチューブ、14a・・・挿入部、16・・・締結部材、22・・・主弁(弁体)、24・・・メインリターンスプリング、42・・・パイロット圧室、53・・・Oリング(シール部材)、60・・・ソレノイド部、210・・・挿入孔、211・・・段部、220・・・入口通路、230・・・出口通路
図1