(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(b)で使用される前記ハロゲン化金属酸化物及び/又は金属ハロゲン化物が、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化クロムハロゲン化物、フッ素化クロム酸化物、又はこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
四塩化炭素及び3,3,3−トリフルオロプロペンによって出発して、以下の反応工程
:
(a):CCl
4+CF
3CH=CH
2→CF
3CHClCH
2CCl
3
(b):CF
3CHClCH
2CCl
3+HF→CF
3CH=CHCF
3(HFO-1336)+CF
3CHClCH
2CF
3+HCl
(c):CF
3CHClCH
2CF
3→HCl+CF
3CH=CHCF
3(HFO-1336)
によって1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336)を製造することができる。
【0008】
工程(b)及び(c)の反応中に、一般に2種類の異性体、即ちシス−CF
3CH=CHCF
3及びトランス−CF
3CH=CHCF
3が生成する。シス異性体は数多くの用途における好ましい生成物である。而して、シス異性体のシングルパス収率を増加させるために、プロセスに他の随意的な工程、即ち:
(d)トランス−1336→シス−1336
を加えて、異性化触媒を用いてトランス−1336をシス−1336に異性化することができる。
【0009】
詳細なプロセスの説明:
工程(a):CCl
4+CF
3CH=CH
2→CF
3CHClCH
2CCl
3:
この工程においては、四塩化炭素を、金属及び有機リガンドを含む有効量の金属触媒錯体の存在下において、付加反応を促進してCF
3CHClCH
2CCl
3を含む生成物流を形成するのに有効な条件下で3,3,3−トリフルオロプロペン(TFP)と反応させる。
【0010】
好ましい態様においては、金属触媒錯体はCF
3CHClCH
2CCl
3生成物のものよりも高い沸点を有し、金属は銅及び鉄からなる群から選択される遷移金属であり、有機リガンドは、4以上の炭素原子の骨格を有する第1級及び第2級アミン、3以上の炭素原子の骨格を有するニトリル、2以上の炭素原子の骨格を有するアミド、及び3以上の炭素原子の骨格を有するホスフェート又はホスファイトからなる群から選択される。特に、触媒及び有機リガンドの好ましい組合せを表1に与える。上記の組合せの混合物(例えば17と18の混合物)も非常に良好に機能することができる。
【0012】
触媒錯体は、四塩化炭素とTFPとの反応を触媒するのに十分な量で用いる。好ましくは、反応混合物中の触媒の濃度は、約0.01〜約10重量%、好ましくは約1〜約5重量%、より好ましくは約1.5〜約2.5重量%の範囲である。
【0013】
好ましい選択率及び収率を達成するためには、反応中に触媒錯体の少なくとも一部の良好な混合を達成することが好ましい。この目的を達成するためは、四塩化炭素、TFP、及び有機リガンドを含む反応器に触媒を加えることができ、或いは、四塩化炭素及びTFPを、触媒及び有機リガンドを含む反応器に加えることができる。
【0014】
反応は、四塩化炭素とTFPの付加反応を連続プロセスで行うのに十分な運転条件下で行わなければならない。反応温度は、約40℃〜約180℃、好ましくは約50℃〜約110℃の範囲であってよい。反応圧力は、通常は、CF
3CHClCH
2CCl
3生成物を含む生成物流を反応器から取り出すことによって維持する。一般に、圧力は所望の接触時間が達成されるように維持しなければならない。約1psig〜約400psigの反応圧力が好ましく、約50〜約200psigの圧力が更により好ましいことが分かった。接触時間は、用いる触媒及び反応条件にしたがって変化する傾向がある。好適な結果は、約10秒間〜約10時間、好ましくは約1分間〜約5時間の接触時間を用いて得られた。好ましくは、反応器流出流は、有機物の分離のために1つ又は複数の蒸留カラムに供給する。
【0015】
工程(b):CF
3CHClCH
2CCl
3+HF→CH=CHCF
3(HFO-1336)+CF
3CHClCH
2CF
3+HCl:
この工程においては、HFを、フッ素化触媒の存在下において、フッ素化反応を促進して1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン及び/又は1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロブタンを含む生成物流を形成するのに有効な条件下で、工程(a)において形成されるCF
3CHClCH
2CCl
3と反応させる。反応器から排出される流出流は、場合によっては未反応のHF、及びCF
3CHClCH
2CF
3のような更なる成分を含む可能性がある。フッ素化プロセスは、蒸気相又は液相中で行うことができる。
【0016】
蒸気相フッ素化においては、HF(フッ化水素ガス)を、触媒床を通して連続的に供給する。HF流のみを供給する短い時間の後、CF
3CHClCH
2CCl
3を、約1:3〜約1:20、好ましくは約1:5〜約1:15のCF
3CHClCH
2CCl
3/HFのモル比で触媒床を通して連続的に供給する。HFとCF
3CHClCH
2CCl
3との間の反応は、約100℃〜約500℃、好ましくは約200℃〜約350℃の温度、及び約5psig〜約200psig(ポンド/平方インチゲージ圧)、好ましくは約20psig〜約100psigの圧力で行う。好適な蒸気相固体触媒としては、クロム、アルミニウム、コバルト、マンガン、ニッケル、及び鉄の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、その無機塩、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
結晶質酸化クロム又はアモルファス酸化クロムのような酸化クロム(III)が好ましく、アモルファス酸化クロムが最も好ましい。酸化クロム(Cr
2O
3)は、種々の粒径で購入することができる商業的に入手可能な材料である。触媒は、活性炭のような基材上に担持させることができ、或いは非担持又は自立型であってよい。活性炭に加えて、有用な触媒担体としては、アルミナ、フッ素化アルミナ、フッ化アルミニウム、アルカリ土類金属酸化物、フッ素化アルカリ土類金属酸化物、酸化亜鉛、フッ化亜鉛、酸化スズ、及びフッ化スズが挙げられる。場合によっては、しかしながら好ましくは、金属酸化物触媒は、反応の前に十分に高い温度においてHF流中でのフッ素化処理にかける。
【0018】
液相フッ素化においては、液相フッ素化触媒を液体形態で反応器に充填し、場合によってはHFで活性化する。網羅的ではないリストとしては、ルイス酸、遷移金属ハロゲン化物、遷移金属酸化物、周期律表第IVb族金属ハロゲン化物、第Vb族金属ハロゲン化物、及びこれらの組合せが挙げられる。液相フッ素化触媒の非排他的な例は、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ニオブ、及びハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ素化クロムハロゲン化物、フッ素化クロム酸化物、又はこれらの組合せである。
【0019】
液相フッ素化触媒の具体的な非排他的な例は、SbCl
5、SbCl
3、SbF
5、SnCl
4、TaCl
5、TiCl
4、NbCl
5、MoCl
6、FeCl
3、SbCl
5のフッ素化種、SbCl
3のフッ素化種、SnCl
4のフッ素化種、TaCl
5のフッ素化種、TiCl
4のフッ素化種、NbCl
5のフッ素化種、MoCl
6のフッ素化種、FeCl
3のフッ素化種、又はこれらの組合せである。
【0020】
五塩化アンチモンが最も好ましい。次に、活性化触媒を約30℃〜約200℃、好ましくは約50℃〜約120℃の所望の反応温度に加熱し;圧力を約15psig〜約200psig、好ましくは約50psig〜約175psigに保持する。HFのみを供給する短い時間の後、CF
3CHClCH
2CCl
3の供給流を、約1:3〜約1:20、好ましくは約1:5〜約1:15のCF
3CHClCH
2CCl
3/HFのモル比で触媒を通して連続的に供給する。必要な場合には、Cl
2又は同様の酸化剤を連続的又はバッチ
的に加えることによって、触媒を活性化状態に維持することができる。
【0021】
フッ素化反応は、好ましくは、約70%以上、好ましくは約90%以上、最も好ましくは約93%以上の転化率を達成するように行う。得られるCF
3CH=CHCF
3に関する選択率は、好ましくは約60%以上、最も好ましくは約80%以上である。
【0022】
フッ素化は、好ましくは耐腐食性の反応容器内で行う。耐腐食性材料の例は、ハステロイ、ニッケル、インコロイ、インコネル、モネル、及びフルオロポリマーライニングである。容器は、固定触媒床を有していてよく、又は液体触媒を含んでいてよい。所望の場合には、運転中に窒素又はアルゴンのような不活性ガスを反応器内で用いることができる。好ましくは、反応器流出流は、苛性スクラバー又は蒸留カラム又は抽出器に供給して、HClの副生成物及び未転化のHFを除去して酸を含まない有機生成物を生成させ、これを場合によっては更なる精製にかけることができる。
【0023】
工程(c):CF
3CHClCH
2CF
3→HCl+CF
3CH=CHCF
3(HFO-1336):
この工程においては、工程(b)において副生成物として形成されるCF
3CHClCH
2CF
3を、蒸気相反応器(脱塩化水素化触媒を含む)に供給して脱塩化水素化して、所望の生成物であるHFO−1336を生成させる。
【0024】
触媒は、バルク又は担持形態の金属ハロゲン化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(又はゼロの酸化状態)の金属又は金属合金、或いは活性炭であってよい。金属ハロゲン化物又は金属酸化物触媒においては、成分の金属としては、Cr
3+、Fe
3+、Mg
2+、Ca
2+、Ni
2+、Zn
2+、Pd
2+、Li
+、Na
+、K
+、及びCs
+が挙げられるが、これらに限定されない。成分のハロゲンとしては、F
−、Cl
−、Br
−、及びI
−が挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化処理としては、当該技術において公知の任意のもの、特にハロゲン化源としてHF、F
2、HCl、Cl
2、HBr、Br
2、HI、及びI
2を用いるものを挙げることができる。
【0025】
中性、即ちゼロ価の金属及び金属合金の触媒においては、有用な金属としては、Pd、Pt、Rh、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び合金又は混合物としての上記の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。触媒は担持又は非担持であってよい。金属合金の有用な例としては、SS316、Monel 400、Inconel 825、Inconel 600、及びInconel 625が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
脱塩化水素化は、場合によっては酸化剤の存在下又は不存在下で行うことができる。酸化剤の有用な例としては酸素及び二酸化炭素が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤を使用することによって触媒の寿命を延ばすことができる。酸化剤は、純粋であっても、或いは反応器中に導入する前に窒素のような不活性ガスで希釈してもよい。酸化剤のレベルは、概して有機供給流の体積を基準として約1体積%〜約10体積%、好ましくは約2体積%〜5体積%である。
【0027】
反応温度は、約150℃〜約600℃、好ましくは約200℃〜約500℃、更により好ましくは約250℃〜約400℃の範囲であってよい。反応圧力は、好ましくは約0〜150psigである。好ましくは、反応器流出流は、苛性スクラバー又は蒸留カラムに供給してHClの副生成物を除去して酸を含まない有機生成物を生成させ、これを場合によっては更なる精製にかけることができる。
【0028】
工程(d):トランス−1336→シス−1336:
工程(b)及び(c)の反応中においては、一般に2種類の異性体、即ちシス−CF
3CH=CHCF
3及びトランス−CF
3CH=CHCF
3が生成する。シス異性体が好ま
しい生成物である。シス異性体のシングルパス収率を増加させるために、場合によっては、しかしながら好ましくは、トランス−1336を、異性化触媒を含む蒸気相反応器内でシス−1336に異性化する。3種類の触媒、即ち、ハロゲン化金属酸化物、ルイス酸金属ハロゲン化物、及びゼロ価の金属を異性化触媒として用いることができる。
【0029】
ハロゲン化金属酸化物触媒(本明細書において時には便宜上のためにHMO触媒と呼ぶ)及びルイス酸触媒(本明細書において時には便宜上のためにLA触媒と呼ぶ)である触媒に関しては、触媒は遷移金属又はAlを含み、好ましくは遷移金属が存在する場合には、それは約21〜約57の原子番号を有する遷移金属及びこれらの組合せからなる群から選択されることが一般に好ましい。
【0030】
HMO及びLA触媒において用いるための遷移金属の中では、周期律表第VIB族からの金属が幾つかの態様においては好ましく、この族の中ではCrが特に好ましい。一般に、遷移金属成分を含むHMO及びLA触媒に関しては、金属は、好ましくは、Cr、Mo、V、Nb、Fe、La、Ni、Zn、及びこれらの組合せからなる群から選択される。一般に、希土類金属成分を含むHMO及びLA触媒に関しては、金属は、好ましくはCeである。
【0031】
一般に、ホウ素金属成分を含むHMO及びLA触媒に関しては、金属は、好ましくは、Al、Ti、及びこれらの組合せから選択される。一般に、アルカリ土類金属成分を含むHMO及びLA触媒に関しては、金属は好ましくはMgである。一般に、アルカリ金属成分を含むHMO及びLA触媒に関しては、金属は、好ましくは、Li、Na、K、及びこれらの組合せから選択される。中性金属触媒(本明細書において時には便宜上のためにNM触媒と呼ぶ)に関しては、触媒は、第VII族及びIB族から選択される1種類以上の遷移金属を含むことが一般に好ましく、幾つかの態様においてはCo及びPdが好ましい。
【0032】
好ましい態様においては、反応温度は、約50℃〜約600℃、好ましくは約100℃〜約400℃、更により好ましくは約150℃〜約300℃の範囲であってよい。また、本発明方法に関して広範囲の圧力を用いることができることも意図される。しかしながら、幾つかの好ましい態様においては、反応は、約5torrの真空乃至約200psigの範囲の圧力条件下で行う。また、本発明の好ましい反応のために広範囲の接触時間を用いることができることも意図される。しかしながら、幾つかの好ましい態様においては、滞留時間は好ましくは約0.5秒間〜約600秒間である。
【0033】
本発明の好ましい態様の一形態は、トランス−1336を、好ましくは少なくとも約1%、より好ましくは少なくとも約70%、更により好ましくは少なくとも約90%の転化率でシス形態に転化させ、一方で同時に、好ましくは、少なくとも約80%、更により好ましくは少なくとも約95%、及び幾つかの非常の好ましい態様においては少なくとも約98%のシス形態の化合物への選択率を達成することを包含する。
【0034】
以下の実施例は本発明の具体的な例示として与える。しかしながら、本発明は実施例において示す具体的な詳細に限定されないことを留意すべきである。
【実施例】
【0035】
実施例1:
四塩化炭素及び3,3,3−トリフルオロプロペンからのCF
3CHClCH
2CCl
3の製造:
鉄線を充填した0.5インチ×40インチの栓流反応器に、3,3,3−トリフルオロプロペン及び四塩化炭素の混合物(50/50モル%)を約1.5g/分で供給した。ま
た、触媒予備混合タンク(2L)中で調製した塩化第二鉄、トリブチルホスフェート、及び四塩化炭素の触媒混合物も、約2g/分で反応器に同時に供給した。反応器を80℃〜100℃で運転し、約30psigに制御した。栓流反応器の流出流を蒸留カラムに供給し、大気圧以下の圧力及び約80℃以下で運転した。この蒸留カラムから、未反応の四塩化炭素を微量の3,3,3−トリフルオロプロペンと共に留出し、触媒予備混合タンクに供給した。この蒸留からの塔底混合物を第2の蒸留に供給し、約50mmHgの真空下及び80℃〜90℃で運転した。粗CF
3CHClCH
2CCl
3生成物をカラムの頂部から回収した。触媒混合物、塩化第二鉄、塩化第一鉄、及びトリブチルホスフェートを含む塔底混合物を、触媒予備混合タンクに戻し、反応器に再循環して戻した。粗CF
3CHClCH
2CCl
3は1.4gのCF
3CHClCH
2CCl
3を含んでいた。収率は90%より大きかった。
【0036】
実施例2:
CF
3CH=CHCF
3(HFO−1336)及びCF
3CHClCH
2CF
3の製造:
フッ素化Cr
2O
3触媒の存在下においてCF
3CHClCH
2CCl
3の蒸気相フッ素化を行った。N
2、HF、及び有機物の供給システム、供給流気化器、過熱器、内径(ID)4インチのモネル反応器、酸スクラバー、乾燥機、及び生成物回収システムから構成される連続蒸気相フッ素化反応システムを用いて反応を研究した。反応器に約6.5Lのフッ素化Cr
2O
3触媒を装填した。次に、触媒上にN
2パージを流しながら、反応器を約250℃の反応温度に加熱した。反応器は約3psigの圧力であった。次に、気化器及び過熱器を通してHF供給流をN
2との共供給流として15分間反応器に導入し、この時点でN
2流を停止した。HFの流速を0.35ポンド/時に調節し、次に気化器及び過熱器を通してCF
3CHClCH
2CCl
3の反応器への供給を開始した。CF
3CHClCH
2CCl
3の供給速度は約0.44ポンド/時において一定に維持し、HF供給は、約10:1のHF:CF
3CHClCH
2CCl
3のモル比にするために0.35ポンド/時において一定に維持した。反応が開始すると、触媒床の温度が250℃〜260℃の範囲に上昇した。反応器の流出流中のCF
3CH=CHCF
3、CF
3CHClCH
2CF
3、及びCF
3CHClCH
2CCl
3の濃度は、それぞれ92.9、4.9、及び1.1GC面積%であった。
【0037】
実施例3:
CF
3CHClCH
2CF
3からのCF
3CH=CHCF
3(HFO−1336)の製造:
3区域の電気炉中に浸漬した円筒形の内径3/4インチのモネル反応器を、CF
3CHClCH
2CF
3の脱塩化水素化反応において用いた。触媒床を通して反応器の内部に配置した5点式熱電対を用いてプロセス温度を記録した。20ccのフッ素化クロミア触媒を反応器中に充填した。垂直に設置した反応器の底部中にCF
3CHClCH
2CF
3を12g/時の速度で供給し、触媒床に達する前に気化させた。350℃及び1気圧において反応を行った。流出ガスをガスサンプリング管に通して、ガスサンプリング管の内容物のGC分析によって反応の進行を周期的にモニタリングするようにした。分析によって、流出ガスは約91%のCF
3CH=CHCF
3、及び約8%のCF
3CHClCH
2CF
3を含んでいたことが示された。
【0038】
実施例4:
CF
3CHClCH
2CCl
3からのCF
3CH=CHCF
3(HFO−1336)の製造:
SbCl
5の存在下においてCF
3CHClCH
2CCl
3の液相フッ素化を行った。約6100gのSbCl
5を、内径2インチの充填カラム及び凝縮器を取り付けたテフロンライニング液相反応器(テフロンはE. I. DuPont de Nemours & Co.の商標である)内
に含ませた。反応器は内径2.75インチ×長さ36インチであった。まず、大過剰のCl
2を反応器に加えて、触媒が5価状態であることを確保した。反応器を約85℃〜87℃に加熱した。まず、HFの供給を開始した。1.3ポンドのHFが加えられた時点で、CF
3CHClCH
2CCl
3の供給を開始した。CF
3CHClCH
2CCl
3供給材料の純度は約99GC面積%(ガスクロマトグラフ)であった。実験を71時間連続的に運転した。この運転中において、塩素を運転中にわたって約4時間毎にバッチ供給して触媒を活性に保持した。供給は、10/1のHF/CF
3CHClCH
2CCl
3の比のために平均で0.35ポンド/時のHF及び0.44ポンド/時のCF
3CHClCH
2CCl
3であった。この実験に関する反応器温度範囲は78℃〜91℃であり、圧力範囲は85psig〜115psig(ポンド/平方インチゲージ圧)であった。運転から回収された有機粗材料をガスクロマトグラフにかけた。有機相中のCF
3CH=CHCF
3及びCF
3CHClCH
2CCl
3の濃度は、それぞれ97.9及び1.0GC面積%であった。
【0039】
実施例5:
トランス−CF
3CH=CHCF
3からのシス−CF
3CH=CHCF
3の製造:
3区域の電気炉中に浸漬した円筒形の内径3/4インチのモネル反応器を、トランス−CF
3CH=CHCF
3の異性化反応において用いた。触媒床を通して反応器の内部に配置した5点式熱電対を用いてプロセス温度を記録した。20ccのフッ素化クロミア触媒を反応器中に充填した。垂直に設置した反応器の底部中にトランス−CF
3CH=CHCF
3を12g/時の速度で供給し、触媒床に達する前に気化させた。250℃及び1気圧において反応を行った。流出ガスをガスサンプリング管に通して、ガスサンプリング管の内容物のGC分析によって反応の進行を周期的にモニタリングするようにした。分析によって、流出ガスは約61%のシス−CF
3CH=CHCF
3及び約48%のトランス−CF
3CH=CHCF
3を含んでいたことが示された。
【0040】
好ましい態様を参照して本発明を特に示し且つ記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正を行うことができることは当業者に容易に認められるであろう。特許請求の範囲は、開示された態様、上記で議論したそれらの代替物、並びにそれに対する全ての均等物をカバーするように解釈すると意図される。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
(a)四塩化炭素を、金属及び有機リガンドを含む有効量の金属触媒錯体の存在下において、付加反応を促進してCF
3CHClCH
2CCl
3を含む生成物流を形成するのに有効な条件下で3,3,3−トリフルオロプロペンと接触させ;
(b)HFを、フッ素化反応を促進して、シス−及びトランス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを含む生成物流混合物を形成するのに有効な条件下で、工程(a)において形成されるCF
3CHClCH
2CCl
3と接触させ、混合物からシス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを単離する;
工程を含む、シス−ヘキサフルオロ−2−ブテンの製造方法。
[2]
(c)1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−クロロブタンを、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを含む生成物流を形成するのに有効な条件下で脱塩化水素化する;
工程を更に含む、[1]に記載の方法。
[3]
工程(b)のフッ素化プロセスを蒸気相中で行う、[1]に記載の方法。
[4]
蒸気相固体触媒が酸化クロム(III)である、[3]に記載の方法。
[5]
工程(b)のフッ素化プロセスを液相中で行う、[1]に記載の方法。
[6]
液相フッ素化触媒が五塩化アンチモンである、[5]に記載の方法。