特許第6088660号(P6088660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088660
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】プリンティングシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 21/00 20060101AFI20170220BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20170220BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20170220BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20170220BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
   B41J21/00 Z
   G03G15/01 Y
   B41J2/01 129
   G03G15/00 303
   G03G15/16
   B41J2/01 101
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-546873(P2015-546873)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2016-507398(P2016-507398A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】EP2012076638
(87)【国際公開番号】WO2014094872
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】596097844
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード・インデイゴ・ビー・ブイ
【氏名又は名称原語表記】Hewlett−Packard Indigo B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ボディンジャー,イアル
(72)【発明者】
【氏名】シャウル,イツィーク
(72)【発明者】
【氏名】トレンダフィロフ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】グリーンバーグ,ギラド
【審査官】 下村 輝秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−271546(JP,A)
【文献】 特開2012−212126(JP,A)
【文献】 特開2010−175969(JP,A)
【文献】 特開2006−171306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J21/00−21/18
B41J29/00−29/70
B41J2/01−2/215
G03G15/00
G03G21/00−21/14
G03G15/16
G03G15/10
B41J21/00−21/18
G03G15/01
B41J2/52−2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の光沢度と該基体上にプリントされるべきイメージの一部の所望の光沢度とに基づいて光沢変更イメージを生成し、該所望の光沢度が、該基体の光沢度に依存しない絶対的な光沢度であり、
前記所望の光沢度が前記基体の光沢度よりも高い場合に、前記光沢変更イメージとして光沢強化イメージを生成し、
前記所望の光沢度が前記基体の光沢度よりも低い場合に、前記光沢変更イメージとして光沢低減イメージを生成し、
プリント時に前記イメージの前記一部が前記所望の光沢度を有するように前記イメージ及び前記光沢変更イメージを前記基体上にプリントする
ことからなる、プリンティング方法。
【請求項2】
前記生成してプリントすべき光沢変更イメージの数が、メモリに予め格納されているデータから前記基体の光沢度及び前記所望の光沢度に基づいて決定される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記イメージ及び前記光沢変更イメージをプリントすることが、プリントされた前記イメージの上及びプリントされた前記イメージの下の一方に前記光沢変更イメージをプリントすることからなる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光沢強化イメージが、前記イメージの前記一部と同じイメージからなる、請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光沢低減イメージが、前記イメージの前記一部と同じイメージを光沢低減マスク又はパターンでマスクしたものからなる、請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パターンが、プリントされた前記光沢低減イメージの光沢度が、該光沢低減イメージが上にプリントされることになる前記イメージの光沢度よりも低くなるように配列された、所定パターンのドットからなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イメージ及び前記光沢変更イメージをプリントすることが、該イメージの前記一部と該光沢変更イメージを重ねてプリントすることからなる、請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記イメージ及び前記光沢変更イメージをプリントすることが、液体電子写真(LEP)プリンタ及び紫外線硬化性インクを用いるインクジェットプリンタの一方を用いて実行される、請求項1ないし請求項7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記イメージ及び前記光沢変更イメージをプリントすることが、液体電子写真(LEP)プリンティングシステムを用いて実行され、プリントされた前記光沢強化イメージのインク硬化時間が、前記基体が保持される押圧ローラのヌル解放サイクルを用いることにより増大され、該ヌル解放サイクルが、該押圧ローラが中間転写部材から機械的に解放されて、該押圧ローラが回転する際に該基体と該中間転写部材とが接触せず、及び該基体上に以前に転写されたインクが該中間転写部材により加熱されたままとなる場合である、請求項1ないし請求項8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
コントローラを備えたプリンティングシステムであって、
該コントローラが、
プリントすべきイメージを取得し、
該イメージの領域とプリント時の該領域の所望の光沢度とを画定するデータを取得し、該所望の光沢度が、該イメージがプリントされることになる基体の光沢度に依存しない絶対的な光沢度であり、
該基体の光沢度を取得し、
該基体の光沢度と前記領域の前記所望の光沢度とに基づいて1つ以上の光沢変更イメージを生成し、前記所望の光沢度が前記基体の光沢度よりも高いと判定した場合に前記光沢変更イメージとして光沢強化イメージを生成し、前記所望の光沢度が前記基体の光沢度よりも低いと判定した場合に前記光沢変更イメージとして光沢低減イメージを生成し、
該プリンティングシステムを制御して、プリント時に前記イメージの前記領域が実質的に前記所望の光沢度を有するように前記イメージ及び前記光沢変更イメージをプリントする、
プリンティングシステム。
【請求項11】
前記コントローラが、
記所望の光沢度及び前記基体の光沢度を用いて、及びメモリに格納されているデータを用いて、プリントすべき光沢変更イメージの量を決定し、
該プリンティングシステムを制御して、プリント時に前記イメージの前記領域が実質的に前記所望の光沢度を有するように前記イメージと前記決定した量の光沢変更イメージをプリントする、
請求項10に記載のプリンティングシステム。
【請求項12】
前記光沢強化イメージが前記イメージの前記領域と同じイメージからなり、及び/又は前記光沢低減イメージが前記イメージの前記領域と同じイメージを光沢低減マスク又はパターンでマスクしたものからなる、請求項10又は請求項11に記載のプリンティングシステム。
【請求項13】
前記パターンが、前記光沢変更イメージとしてプリントすべき所定パターンのインクマークからなり、該パターンが、該パターンがプリントされた前記イメージの光沢度を低減させるよう画定されたものである、請求項10に記載のプリンティングシステム。
【請求項14】
該プリンティングシステムが液体電子写真(LEP)プリンティングシステムであり、各光沢変更イメージがLEPインクのフィルムとしてプリントされる、請求項10ないし請求項13の何れか一項に記載のプリンティングシステム。
【請求項15】
該プリンティングシステムが液体電子写真(LEP)プリンティングシステムであり、前記コントローラが更に、1つ以上のヌル解放サイクルを用いることにより、前記光沢変更イメージとしてプリントされた光沢強化イメージのインク硬化時間を増大させ、該ヌル解放サイクルが、押圧ローラが中間転写部材から機械的に解放されて、該押圧ローラが回転する際に該押圧ローラ上に保持されている前記基体と該中間転写部材とが接触せず、及び該基体上に以前に転写されたインクが該中間転写部材により加熱されたままとなる場合である、請求項10ないし請求項14の何れか一項に記載のプリンティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
最近のディジタルプリンティングシステムは、多種多様な基体上に高品質のプリントイメージを生成することが可能である。しかし、プリントイメージの品質に加えて、プリントイメージの光沢の度合い(以下、光沢度と称す)が審美的な面で重要である。
【0002】
プリントイメージの光沢度は、イメージがプリントされる基体の表面特性及び使用されるインクの特性に大きく左右されるものである。基体は、通常はその表面にわたって実質的に均一な光沢度を有する。ワニス(varnish)を塗布してプリントイメージ又はその一部の光沢度を変更することも可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既述のように、プリントイメージの光沢度は、イメージがプリントされる基体の表面特性及び使用されるインクの特性に大きく左右される。水性インクジェットプリンティング及び液体電子写真(LEP)プリンティングシステムの場合、光沢のある基体上にプリントされたイメージは、光沢のある外観を呈し、艶消しの基体上にプリントされたイメージは、艶消しの外観を呈するものとなる。しかし、ゼログラフィー(xerography)技術を使用してプリントされたイメージは、実質的に基体の表面特性を変更するものとなり、かかるイメージの光沢度は、基体の種類への依存性が一層低いものとなる。
【0004】
図12は、LEPプリンティングシステム及びゼログラフィープリンティングシステムを使用した紙基体上へのイメージのプリントの効果を証明する一連の写真である。
【0005】
図12aは、一般的な無地の事務用紙の顕微鏡レベルの画像である。
【0006】
図12bは、図12aに示すような基体上にプリントされたLEPイメージの顕微鏡レベルの画像である。同図から分かるように、プリントされたイメージの表面特性が基体の表面特性を劇的に変更することはない。
【0007】
図12cは、図12bの場合と同じ基体上にプリントされたゼログラフィープリントイメージの顕微鏡レベルの画像である。同図から分かるように、ゼログラフィーイメージは基体の表面特性を劇的に変更している。
【0008】
艶消しの基体上にプリントされたイメージ又はその一部は、ワニス層を付与することによりその光沢度を変更することが可能である。しかし、かかるプリンティングシステムは、追加のプリントヘッド(すなわちワニスの固体層を付与するためのワニス付与手段)の使用を必要とするものとなる。
【0009】
ワニスを塗布した領域の光沢度は、そのワニス及び基体の表面特性によって概ね決まる。したがって、かかるシステムは、単一のプリントイメージ内に複数の異なる光沢度を生成することができない。更に、かかるシステムは、プリントイメージの一部の光沢度を指定することができず、及び所望の変更可能な光沢度を達成することができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
しかし、イメージをプリントする前に該イメージの一部について所望の光沢度を選択し、及び少なくとも一部が該所望の光沢度を有するプリントイメージを生成することは、審美的にも商業的にも大きな価値を有するものである。
【0011】
本書で説明する実施形態は、所望の光沢度を有する部分を含むプリントイメージを生成することを可能にする、プリンティングシステム及びプリンティングシステムの動作方法を提供するものである。更に、該所望の光沢度は、イメージがプリントされる基体の光沢度よりも高く又は低くすることが可能であり、及び該プリントイメージの他の部分よりも高く又は低くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態によるプリンティングシステムを単純化して示す図である。
図2】一実施形態による液体電子写真プリンティングシステムを単純化して示す図である。
図3a】基体の一部を拡大して示す断面図である。
図3b】基体の一部を拡大して示す断面図である。
図4】一実施形態によるプリンタコントローラを単純化して示すブロック図である。
図5】一実施形態によるプリントされるべきイメージを示す図である。
図6】一実施形態によるプリンティングシステムの動作方法の概要を示すフローチャートである。
図7】一実施形態によりプリントイメージの一部の光沢度が増大されている、基体の一部を拡大して示す断面図である。
図8】一実施形態による光沢低減パターンを示す図である。
図9】一実施形態によりプリントイメージの一部の光沢度が低減されている、基体の一部を拡大して示す断面図である。
図10】プリントイメージの光沢度と一実施形態により使用される光沢増大イメージ及び光沢低減イメージの個数との関係を示すグラフである。
図11】一実施形態によるプリンティングシステムの動作方法の概要を示すフローチャートである。
図12a】一般的な無地の事務用紙の顕微鏡レベルの画像を示している。
図12b図12aに示すような基体上にプリントされたLEPイメージの顕微鏡レベルの画像を示している。
図12c図12bの場合と同じ基体上にプリントされたゼログラフィープリントイメージの顕微鏡レベルの画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実例又は実施形態を図面を参照して非制限的な例のみについて説明する。
【0014】
図1を参照すると、一実施形態によるプリンティングシステム100が単純化して示されている。該プリンティングシステム100は、基体104等の基体上にプリントを行うためのプリントエンジン102を備えている。該基体104は、基体進行機構108により該プリントエンジン102のプリントゾーン105を通って進行する。
【0015】
該プリンティングシステム100の動作は、一般にプリンタコントローラ110によって制御される。
【0016】
一実施形態では、プリントエンジン102は、液体電子写真(LEP)プリントエンジンであり、その一例が図2に一層詳細に示されている。
【0017】
この例では、プリントエンジン102は、回転可能な光導電性ドラム202を含み、該ドラム202が回転する際にその上に充電モジュール204により電荷が現像される。光イメージングモジュール206は、該ドラム202の様々な部分にレーザ光等の光を選択的に当てて、プリントされるべき所与のイメージ(又は分解画像(image separation))に従って電荷を選択的に消散させる。このようにして、帯電領域及び非帯電領域からなる潜像が光導電性ドラム202上に生成される。該潜像は、二値イメージ現像手段(BID:Binary Image Developer)208によって現像され、該BID208は、ドラム202の表面に近接して液体インク(例えば、ヒューレット・パッカード社のElectroInk(登録商標))を付与して、該BID208からの該インクがドラム202の表面に生成された潜像に従って該表面に静電的に転写されるようにする。
【0018】
該ドラム202上に現像されたインクは、加熱された中間転写部材(ITM:Intermediate Transfer Member)210へ静電的に転写される。一実施形態では、ITM210は約100℃に加熱することが可能である。転写されたイメージのキャリア液体が蒸発して高い割合のインク固定を有するイメージフィルムがITM210上に残る。次いで該イメージフィルムが、該ITM210と押圧ローラ212との間での加圧を介して該押圧ローラ212上に配置された基体214上に転写される。
【0019】
一般に、このようにしてプリントされたLEPイメージは、2-10μm程度の厚さを有する。
【0020】
フルカラープリンティングでは、複数のイメージがそれぞれ異なる色のインク(例えば、シアンインク、イエローインク、マゼンタインク、及びブラックインク)を使用して現像され、及びそれぞれ別個に生成され1つの基体にそれぞれ転写されてフルカラーイメージが生成される。別の実施形態では、複数の色分解画像をITM210上に生成し、単一の転写ステップで基体214上に転写することが可能である。
【0021】
ITM210上に形成されたLEPイメージフィルムの厚さは、該イメージフィルムが基体上に転写される際に実質的に該基体の表面特性に従うような厚さである。このようにして、図3に示すように、プリントイメージの光沢度は、基体の光沢度と実質的に一致するものとなる。
【0022】
図3aは、基体302の一部を拡大して示す断面図である。該基体302の上側表面は、該基体302に光沢のある外観を与える高度の表面平滑性を有している。該基体302の該上側表面にプリントされたLEPイメージフィルム304の層は、該基体の表面特性に密接に従い、このため、該プリントイメージ304もまた光沢のある仕上がりを呈するものとなる。
【0023】
図3bは、基体306の一部を拡大して示す断面図である。該基体306の上側表面は、該基体302に艶消しの外観を与える一定の度合いの凹凸又は粗さを有している。該基体306の該上側表面にプリントされたLEPイメージフィルム308の層は、該基体の表面特性に密接に従い、このため、該プリントイメージ308は艶消し仕上けを呈するものとなる。
【0024】
既述のように、プリンティングシステム100は一般にプリンタコントローラ110によって制御され、これを図4に一層詳細に示す。該コントローラ110は、プロセッサ402(例えば、マイクロプロセッサ、μコントローラ、コンピュータプロセッサなど)を備えている。該プロセッサ402は、通信バス404を介してメモリ406と通信可能な状態にある。該メモリ406は、コンピュータが理解することができる命令408を記憶しており、該命令408は、プロセッサ402により実行された際に、該コントローラ110に、以下で説明し図6及び図10に図示するような方法に従って前記プリンティングシステム100の動作を行わせる。
【0025】
イメージがプリントされることになる基体の光沢度とは異なる所望の光沢度を有する部分を有するプリントイメージを生成するようプリンティングシステムを動作させる方法の一実施形態を図5を更に参照して以下で説明する。
【0026】
ブロック602(図6)で、コントローラ110は、プリントすべきイメージを取得する。該プリントすべきイメージは、適当なディジタル形式(例えば、プリントジョブファイル)で定義される。該プリントジョブファイルは、ラスタイメージプロセッサ(RIP)、グラフィックデザイン用コンピュータアプリケーション、コンピュータ用プリンタドライバ、又はその他の適当な手段により適当に生成することが可能である。
【0027】
図5に示すように、プリントすべきイメージ504を記述する第1のイメージレイヤ502が定義される。該イメージ504は、プリント時に所望の光沢度を有するようプリントされることになる部分を含むものである。
【0028】
所望の光沢度を有するようプリントされることになるイメージの部分は、第2のイメージレイヤ506において定義され、該第2のイメージレイヤ506は、所望の光沢度を有する部分508を定義する。一実施形態では、該部分508は、プリントすべきイメージ504の全体と一致することが可能である。一実施形態では、該部分508の所望の光沢度は、光沢単位(gloss units)で定義することが可能である。
【0029】
定義される部分508の光沢度は絶対的な光沢度であり、イメージがプリントされることになる基体の光沢度には依存しないものである、ということに留意されたい。
【0030】
ブロック604で、コントローラ110は、取得したイメージをプリントすることになる基体の光沢度を判定する。一実施形態では、基体の光沢度は、プリンティングシステム100で提供されるユーザインタフェイス(図示せず)を介してユーザから取得される。別の実施形態では、基体の光沢度は、プリンティングシステムの基体経路内に適当に配置されたグロスメータ(図示せず)から判定される。別の実施形態では、基体の光沢度は、基体上にプリントされているコンピュータ読み取り可能コード(例えば、バーコード)を適当なイメージング装置を用いて読み取ることにより判定される。
【0031】
ブロック606で、コントローラ110は、イメージレイヤ506から、プリントすべきイメージ504の部分508の所望の光沢度を判定する。
【0032】
ブロック608で、コントローラ110は、該部分508の該所望の光沢度が、判定された基体の光沢度よりも高いか低いかを判定する。
【0033】
コントローラ110が、該部分508の該所望の光沢度が、判定された基体の光沢度よりも高いと判定した場合、該コントローラ110は、該部分508に対応してプリントされるべき1つ以上の光沢強化イメージを生成する(ブロック610)。該光沢強化イメージの詳細については以降で詳述する。
【0034】
コントローラ110が、該部分508の該所望の光沢度が、判定された基体の光沢度よりも低いと判定した場合、該コントローラ110は、該部分508に対応してプリントされるべき1つ以上の光沢低減イメージを生成する(ブロック612)。該光沢低減イメージの詳細については以降で詳述する。
【0035】
ブロック614で、コントローラ110は、プリンティングシステム100を制御して取得したプリントすべきイメージをプリントし、及び生成された1つ以上の光沢強化イメージ又は1つ以上の光沢低減イメージをプリントする。このようにして、所望の光沢度を有するよう定義されたプリントすべきイメージの領域が、該所望の光沢度を呈し又は実質的に該所望の光沢度を呈するものとなる。
【0036】
一実施形態では、光沢強化イメージ及び光沢低減イメージは、前記部分508の上に(すなわち、該部分508の後に)プリントされるイメージである。別の実施形態では、光沢強化イメージ及び光沢低減イメージは、前記部分508の下に(すなわち、該部分508の前に)プリントされる。
【0037】
部分508の光沢度が基体の光沢度よりも高いと判定された場合には、コントローラ110は、プリントすべき1つ以上の光沢強化イメージを生成する。一実施形態では、各光沢強化イメージは、部分508に対応するプリントすべきイメージ504の一部のコピーである。換言すれば、基体よりも高い光沢度を有するべきプリントすべきイメージ504の該一部に、それと同じイメージ内容が1回以上重ねてプリントされることになる。
【0038】
別の実施形態では、各光沢強化イメージを、透明インク又はワニスでプリントするよう定義することが可能である。一実施形態では、各光沢強化イメージは、中実(solid fill)イメージである。
【0039】
1つ以上の追加のイメージレイヤをプリントすることによる効果が図7に示されている。同図は、基体702を拡大して示す断面図であり、該基体702の上側表面は、該基体702に低光沢度を有する表面を与える所定の度合いの凹凸又は粗さを有している。部分508において、複数の光沢強化イメージ(706a-706n)がプリントイメージ704上に重ねてプリントされている。図示のように、プリントされた連続する各々の光沢強化イメージ704は、表面の粗さを低減させ、このため、部分508の光沢度が、該部分508について定義された所望の光沢度へと増大され又は実質的に該所望の光沢度へと増大される。
【0040】
プリントイメージの光沢度とプリントされる光沢強化イメージの個数との関係は、例えば、インク特性、初期基体光沢度、及び基体種別などを含む因子を考慮して、テストを介して決定することが可能である。図10は、所定のインク及び所定の基体について、プリントされた光沢強化イメージの個数とイメージ部分508の光沢度との関係を示すグラフ(ライン1002)を示している。一実施形態では、光沢強化イメージの個数は、達成すべき所望の光沢度に応じて約1-50の範囲内とすることが可能である。しかし、別の実施形態では、一層多数の光沢強化イメージが有用となり得る。
【0041】
追加の光沢強化イメージがプリントされるほど、光沢が強化されるべき領域の光沢度が増大することが分かる。図示の実施形態では、特定の時点で、追加の光沢強化イメージがプリントされる際に光沢度が強化される割合が低くなる。
【0042】
このデータを、例えば、メモリその他の記憶媒体内のルックアップテーブルに格納し、該データをコントローラ110により使用して、イメージ部分508の所望の光沢度とイメージがプリントされることになる基体の光沢度とが与えられた場合にプリントすべき光沢強化イメージの個数を決定することが可能である。
【0043】
部分508の光沢度が基体の光沢度よりも低いと判定された場合には、コントローラ110は、プリントすべき1つ以上の光沢低減イメージを生成する。一実施形態では、各光沢低減イメージは、部分508に対応するプリントすべきイメージ504の一部を変更したコピーである。換言すれば、基体よりも低い光沢度を有するべきプリントすべきイメージ504の該一部に、前記変更されたイメージ内容が1回以上重ねてプリントされることになる。
【0044】
一実施形態では、前記変更されたイメージ内容は、以下で説明するように、重ねてプリントされるべき領域を光沢低減マスク又はパターンを用いてマスクすることにより取得される。別の実施形態では、各光沢低減イメージは、光沢低減マスクに基づくものとすることが可能である。
【0045】
光沢低減パターン又はマスク802の一実施形態を図8に示す。光沢低減パターン802は、プリントされるべき所定パターンのプリント流体マーク(すなわち、ドット)804からなる。該マークの該パターンは、そのプリント時に、該プリントされる光沢低減イメージの光沢度が、該光沢低減イメージが上にプリントされることになるイメージの光沢度よりも低くなるように配列される。
【0046】
この実施形態では、プリントされるべきドット804は、規則的なパターンで配列されており、該プリントされるべきドット804の各々は、プリントされない領域806に包囲されている。該プリントされるべきドットのパターンの密度は、変更し得るものであるが、実施形態によっては密度30-80%の範囲内となる(ここで、密度100%は中実領域(solid fill area)である)。別の実施形態では、他の光沢低減パターン(例えば、プリントされるべき不規則な配列のドット804を有するパターン)を使用することが可能である。別の実施形態では、丸いドット以外の(例えば、矩形又は楕円形のドットの)パターンを使用することが可能である。
【0047】
光沢のある基体上での光沢低減パターン802の効果を図9に示す。該光沢低減パターンは、光の鏡面反射を低減させる表面の粗さを増大させ、これにより、該光沢低減パターン802がプリントされた領域の光沢度が低下する。
【0048】
光沢低減パターン802を複数回重ねてプリントすることにより、表面の粗さが更に増大して、該光沢低減パターン802がプリントされた領域の光沢度が更に低下する。
【0049】
プリントイメージの光沢度とプリントされる光沢低減パターンの個数との関係は、例えば、インク特性、初期基体光沢度、及び基体種別などを含む因子を考慮して、テストを介して決定することが可能である。図10は、所定のインク及び所定の基体について、プリントされた光沢低減イメージの個数と光沢が低下した部分の光沢度との関係を示すグラフ(ライン1004)を示している。一実施形態では、光沢強化イメージの個数は、達成すべき所望の光沢度に応じて約1-50の範囲内とすることが可能である。しかし、別の実施形態では、一層多数の光沢強化イメージが有用となり得る。
【0050】
追加の光沢低減イメージがプリントされるほど、光沢が低下された領域の光沢度が低下することが分かる。図示の実施形態では、特定の時点で、追加の光沢低減層がプリントされる際に光沢度が低下する割合が低くなる。
【0051】
このデータを、例えば、メモリその他の記憶媒体内のルックアップテーブルに格納し、該データをコントローラ110により使用して、イメージ部分508の所望の光沢度とイメージがプリントされることになる基体の光沢度とが与えられた場合にプリントすべき光沢低減イメージの個数を決定することが可能である。
【0052】
本書では、光沢強化イメージ及び光沢低減イメージを光沢変更イメージと称することとする。
【0053】
更なる実施形態では、イメージ及びそれに関連する光沢強化イメージ又はイメージがプリントされてからそのインクが固まるまでの時間を長くすることにより、光沢度の強化の更なる改善を達成することが可能である。例えば、LEPプリンティングシステムでは、ITM210(図2)から基体214へのプリントイメージの転写が行われた後にインクを所定の温度よりも高く維持することにより、インク硬化時間を増大させることが可能である。紫外線硬化性インクを使用するプリンティングシステムでは、光沢強化イメージに対応するイメージの部分の完全な硬化を遅延させることにより、インク硬化時間を増大させることが可能である。何れの場合も、インク硬化時間の増大により、インクを一層完全に硬化させルことが可能となり、及びその硬化前の表面よりも一層低い粗さを有することが可能となる。
【0054】
有利なことに、HP Indigoクラスのディジタル印刷機等のLEPプリンティングシステムでは、図11のフローチャートに概略的に示す更なる方法ステップに従って該プリンティングシステムを動作させることにより、如何なるハードウェア修正をも必要とすることなく、インク硬化時間を増大させることが可能である。
【0055】
ブロック1102で、コントローラ110は、プリントすべき1つ以上の光沢強化イメージに加えて、プリントすべきイメージ及び1つ以上の光沢強化イメージがプリントされた後のインク硬化時間の増大を決定する。HP Indigoタイプのディジタル印刷機では、インク硬化時間の増大は、いわゆるヌル解放サイクル(null disengage cycle)を利用することにより達成することが可能である。ヌル解放サイクルとは、押圧ローラ212がITM210から機械的に解放され又は隔置されており、該押圧ローラ212が回転する際に該押圧ローラ212上に保持されている基体214とITM210とが接触しない場合を意味する。ヌル解放サイクル中には、光導電性ドラム202上にイメージは現像されず、このためITM210にイメージは転送されない。しかし、ITM210は熱いままとなり、該ITM210と押圧ローラ212との間の距離は、該押圧ローラ212上に保持されている基体上に以前に転写されたインクが該ITM210により加熱されたままとなるのに十分な小さな距離となる。
【0056】
このように1つ以上のヌル解放サイクルを実施することにより、基体214上にプリントされたインクのインク硬化時間を増大させることが可能となり、このため、プリントイメージの全体的な光沢度が更に増大する。
【0057】
既述のように、テストは、用いられるヌル解放サイクルの回数と特定のインク及び基体の組み合わせについての光沢強化の度合いとの関係を示すものとなる。複数回のヌル解放サイクルに基づく光沢度の増大の一例が、図10にライン1006として示されている。この場合も、このデータを適当なメモリ又はルックアップテーブルに格納して、コントローラ110が、所望の光沢度を部分的に有するプリントイメージを生成するために組み合わせて使用されるべき、プリントすべき光沢強化イメージの個数とゼロ以上のヌル解放サイクルの個数とを決定できるようにすることが可能である。
【0058】
ブロック1104で、コントローラ110は、決定された回数のヌル解放サイクルを実施するようプリンタを制御する。
【0059】
紫外線硬化性インクを使用するプリンティングシステムでは、コントローラ110は、光沢強化イメージとプリントイメージの全体又はその一部の硬化の遅延との組み合わせを使用するために紫外線硬化モジュールを制御して、所望の光沢度を有するプリントイメージを生成する。
【0060】
上記実施形態は、主にLEPプリンティングシステムに関して説明したが、本書で説明した技術は、基体表面上に別個のインク層を形成するプリントイメージを生成する他のプリンティングシステムにも適用することが可能である、ということが理解されよう。かかるプリンティング技術の例として、液体電子写真(LEP)プリンティング技術、及びインクジェット紫外線(UV)硬化プリンティング技術が挙げられる。多孔質の基体内にインクが吸収されるため別個のインク層を基体上に形成しない水性インクジェットプリンティング技術等の他のプリンティング技術は、適当なタイプのプリントエンジンではないと考えられる。
【0061】
本発明の実例及び実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせという形で実施することが可能であることが理解されよう。上述のように、かかるソフトウェアは、揮発性又は不揮発性の記憶装置(例えば、ROM等の記憶装置(消去可能又は書き換え可能であるか否かを問わず))という形で、又はメモリ(例えば、RAM、メモリチップ、デバイス、又は集積回路)という形で、又は光学的若しくは磁気的な読み取り可能媒体(例えば、CD、DVD、磁気ディスク、又は磁気テープ)上に、格納することが可能である。かかる記憶装置及び記憶媒体は、実行時に本発明を実施する1つ以上のプログラムを格納するのに適したマシン読み取り可能記憶装置の一例であることが理解されよう。本発明の実施形態は、有線又は無線接続を介して伝搬する通信信号のように、任意の媒体を介して電子的に伝搬させることが可能なものであり、かかる実施形態を適切に包含するものである。
【0062】
本書(特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)で開示した特徴の全て、及び/又は本書で開示したあらゆる方法又はプロセスの各ステップの全ては、かかる特徴及び/又はステップの少なくとも一部が互いに排他的となる組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることが可能である。
【0063】
本書(特許請求の範囲、要約書、及び図面を含む)で説明した各特徴は、特に言及しない限り、同一、等価、又は同様の働きをする代替的な特徴と置換することが可能である。このため、特に言及しない限り、本開示の各特徴は、広範な一連の等価な又は同様の特徴のうちの一例に過ぎないものである。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図12c