(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、主に2種類の膀胱計測法が提案されている。第1の方法は、複数の超音波センサにより仰臥位の患者の膀胱に向かって細い超音波ビームを発振し、同センサにより受信した超音波エコーよりどのビームが膀胱を貫いたかを判定し膀胱の高さと深さを計測し、体格に応じて導入した補正因子Kにより幅を推定し、もって膀胱体積を推定している。この方式の場合、体位が制限されると共に、計測が不安定になるなどの欠点を生じてしまうという課題を有する。
【0010】
また、第2の方法は、膀胱全域をカバーするような超音波ビームを発生する湾曲したあるいは音響レンズを装着した単一の超音波トランスデューサに、連続的に基本波超音波周波数の電圧を印加し、同トランスデューサにより最大膀胱で予想される深さW以上(約12cm)の近辺領域(関心領域)で得られる受信エコー信号の周波数スペクトルを解析し、高調波成分の解析により膀胱尿量を推定している。この方式の場合、送信と受信に同一の超音波センサを利用し、連続的に超音波を発生させているため、測定が安定しないと共に、周波数スペクトルによりデータベースに基づき畜尿量を推定するため、十分な精度で測定を行うことができないという課題を有する。
【0011】
特許文献2は、送信及び受信可能な超音波音響トランシーバユニットを時間的に変化する周波数信号によって駆動する方式であり、膀胱の形状の測定は周波数差の計測により行う。トランシーバユニットは特定の距離に焦点のあった収束ビームを発生する凹状の単一の超音波素子か、20mm〜200mmの間で焦点を結ぶフレネル構造の超音波振動子が用いられる。すなわち、送信及び受信を同一の超音波音響トランシーバユニットで行うため、測定が安定しないと共に、超音波を拡散させて幅広い超音波ビームを用いるものではないため、測定精度が不十分になる可能性がある。
【0012】
特許文献3は、パルスエコー方式で、膀胱前後壁の間隔を超音波振動子の発振パルスと同振動子の受信パルスの時間差から求め、膀胱形状を求めるものであり、一般的に用いられている方法である。超音波振動子に装着されている音響レンズは凹形状であり、その空隙部分はあらかじめエコージェルで埋められ、アルミ箔によりカバーされており、使用時にアルミ箔を剥して装着する事が提案されている。また、強力な超音波を同発振子に発生させることにより、膀胱を刺激し、排尿を促す事が提案されている。しかしながら、単一超音波送受信子を用いており、膀胱形状を測定していないため精度が悪く、体位が制限され、計測が不安定となる問題が多いという課題を有する。
【0013】
特許文献4及び5は、いずれも測定精度及び安定性がある程度向上しているものの、実施するには装置自体が大きく利便性が良くないものである。また、測定精度及び安定性もより向上させる必要がある。
【0014】
本発明は、測定対象臓器に対して超音波を広角に発振し、その反射波を広領域で受信することで、高精度で且つ安定性が高い超音波センサ及び当該超音波センサを用いた臓器測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る超音波センサは、体内の測定対象臓器に対して超音波を広角に発振すると共に、前記測定対象臓器からの前記超音波の反射波を受信する超音波探触子と、前記超音波探触子の周辺に配設され、前記超音波探触子の周辺領域への前記超音波の反射波を受信する複数の受信素子とを備えるものである。
【0016】
このように、本発明に係る超音波センサにおいては、超音波探触子が体内の測定対象臓器に対して超音波を広角に発振し、超音波探触子の周辺領域への反射波を受信する複数の受信素子を超音波探触子の周辺に配設することで、超音波探触子から発振された超音波を超音波探触子のみではなく受信素子により広く確実に受信し、また受信した領域に応じて測定対象物のサイズや形状を特定することができるため、測定対象者の体位に関係なく高精度で安定的に超音波測定が可能になるという効果を奏する。
【0017】
本発明に係る超音波センサは、前記超音波探触子の先端部を凸レンズ形状とし、前記受信素子が複数の領域ごとに前記反射波を受信可能に区画されたシート状のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)で形成されているものである。
【0018】
このように、本発明に係る超音波センサにおいては、超音波探触子の先端部を凸レンズ形状とすることで、超音波を広角に発振することができると共に、受信素子が複数の領域に区画されたシート状のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)で形成されることで、測定精度を上げつつセンサの厚みを削減して小型化を図ることができるという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る臓器測定装置は、前記超音波センサと情報のやり取りが可能な臓器測定装置であって、前記受信素子が受信した前記超音波の反射波の測定結果に基づいて、前記測定対象臓器のサイズを演算するサイズ演算手段を備えるものである。
【0020】
このように、本発明に係る臓器測定装置においては、超音波センサの測定結果に基づいて、測定対象臓器のサイズを演算するため、測定対象臓器の大きさを把握することができるという効果を奏する。
【0021】
本発明に係る臓器測定装置は、前記測定対象臓器が膀胱であり、前記サイズ演算手段が、前記膀胱の前壁で反射した前記超音波の反射波と、前記膀胱の後壁で反射した前記超音波の反射波との時間差に基づいて、前記膀胱の前壁及び後壁の位置を特定し、前記サイズを演算するものである。
【0022】
このように、本発明に係る臓器測定装置においては、膀胱の前壁で反射した超音波の反射波と、膀胱の後壁で反射した超音波の反射波との時間差に基づいて、膀胱の前壁及び後壁の位置を特定してサイズを演算するため、膀胱の大きさや形状をより正確に把握することができるという効果を奏する。
【0023】
本発明に係る臓器測定装置は、前記膀胱のサイズに基づいて蓄尿量を求める蓄尿量算出手段と、前記蓄尿量に基づいて、排尿の必要性を判断する排尿判断手段と、排尿が必要であると判断された場合に、その旨を出力する出力制御手段とを備えるものである。
【0024】
このように、本発明に係る臓器測定装置においては、膀胱のサイズに基づいて蓄尿量を求め、排尿の必要性を判断し、排尿が必要である場合にその旨を出力することで、排尿に異常がある測定対象者の排尿支援を行うことができるという効果を奏する。
【0025】
本発明に係る臓器測定装置は、前記蓄尿量算出手段が算出した蓄尿量を時間と関連付けて経時的に記憶する排尿記憶手段と、記憶された前記蓄尿量と時間との関係を出力する蓄尿情報出力制御手段とを備えるものである。
【0026】
このように、本発明に係る臓器測定装置においては、算出した蓄尿量を時間と関連付けて経時的に記憶し、記憶された蓄尿量と時間との関係を出力することで、排尿日誌を容易に作成することができ、治療に役立てることができるという効果を奏する。
【0027】
本発明に係る臓器測定装置は、測定対象者が少なくとも排尿の直前及び/又は直後に、それらの動作を行った旨のイベント情報を入力する情報入力手段を備え、入力された前記イベント情報が、前記排尿記憶手段に記憶されている情報と関連付けられて当該排尿記憶手段に記憶されるものである。
【0028】
このように、本発明に係る臓器測定装置においては、測定対象者の排尿のタイミングを記憶することで、測定対象者の排尿を管理して日常生活や治療に役立てることができるという効果を奏する。
【0029】
本発明に係る臓器測定装置は、測定対象者が少なくとも尿意に対する切迫感及び/又は残尿感がある場合に、それらの愁訴情報を入力する情報入力手段を備え、入力された前記愁訴情報が、前記排尿記憶手段に記憶されている情報と関連付けられて当該排尿記憶手段に記憶されるものである。
【0030】
このように、本発明に係る臓器測定装置においては、測定対象者の排尿の切迫感や残尿感を感じたタイミングを記憶することで、測定対象者の排尿を管理して日常生活や治療に役立てることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0033】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る超音波センサ及び当該超音波センサを利用した臓器測定装置について、
図1ないし
図6を用いて説明する。本実施形態においては、測定対象となる測定対象臓器を膀胱とし、臓器測定装置により排尿情報を取得して管理することで測定対象者の日常における排尿行為及び治療の支援を行うものである。なお、膀胱以外にも、例えば超音波によりセンシングが可能な胆嚢や心臓、血管等を測定対象臓器とすることができる。
【0034】
図1は、本実施形態に係る超音波センサの構成を示す断面イメージ図である。超音波センサ1は、超音波の発振及び受信を行う超音波探触子2と、膀胱に当たって反射した反射波を受信する受信素子3とを少なくとも備える構成である。超音波探触子2は、セラミック製の振動子で形成されており、先端部に凸レンズ状の音響レンズ2aを有する。この音響レンズ2aの作用により超音波を膀胱4に対して広角に(放射状に)照射する。超音波探触子2の先端部を測定対象者の皮膚に押し付けるように装着することで、呼吸等の体動変化の影響を受けることなく超音波エネルギーを確実に膀胱4に照射することができる。この超音波探触子2は、内部に圧電素子を有しており、超音波の発振素子と同時に受信素子としても機能する。
【0035】
受信素子3は、シート状のPVDFフィルムセンサとなっており、薄膜(1mm以下)で超音波探触子2の周辺領域の皮膚表面に貼着される。受信素子3は、複数の領域に区画されており、膀胱4のサイズや形状に応じて、反射波を受信する区画領域が異なるように形成されている。すなわち、反射波を受信した領域に応じて膀胱4のサイズや形状を特定することができる。この受信素子3は、超音波探触子2の周辺領域の反射波を広く受信するため、測定精度が極めて高くなると共に、安定的に測定を行うことが可能となる。
【0036】
図2は、本実施形態に係る臓器測定装置のコンピュータのハードウェア構成図である。
図2において、臓器測定装置10は、CPU11、RAM12、ROM13、ハードディスク(HDとする)14、通信I/F15、及び入出力I/F16を備える。ROM13やHD14には、オペレーティングシステムや各種プログラムが格納されており、必要に応じてRAM12に読み出され、CPU11により各プログラムが実行される。
【0037】
通信I/F15は、他の装置間(例えば、超音波センサ等)の通信を行うためのインタフェースである。入出力I/F16は、キーボードやマウス等の入力機器からの入力を受け付けたり、プリンタやモニタ等にデータを出力するためのインタフェースである。この入出力I/F16は、必要に応じて光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−R、DVD−R等のリムーバブルディスク等に対応したドライブを接続することができる。各処理部はバスを介して接続され、情報のやり取りを行う。
【0038】
図3は、本実施形態に係る超音波センサ及び臓器測定装置の機能ブロック図である。超音波センサ1は、膀胱4に対して超音波を放射状に発振する発振部21と、膀胱4に当たって反射した超音波を受信する受信部22と、受信した反射波の測定情報を臓器測定装置10に送信する情報送信部24とを備える。
【0039】
臓器測定装置10は、情報送信部24から送信される測定情報を入力すると共に尿情報記憶部35に記憶する入力部31と、入力された測定情報及び/又は尿情報記憶部35に記憶された情報に基づいて、膀胱4のサイズを演算するサイズ演算部32と、求められたサイズから蓄尿量を算出して尿情報記憶部35に記憶する蓄尿量算出部33と、算出された蓄尿量が所定の閾値を超えている場合に、排尿を促す旨の情報を出力媒体36(例えば、表示画面やスピーカ等)に出力する出力制御部34とを備える。
【0040】
ここで、超音波センサ1の機能について詳細に説明する。
図4は、超音波センサ1の構成の一例を示す図である。
図4(A)は、超音波センサ1の正面図、
図4(B)は、超音波センサ1を測定対象者に装着させた場合の側面図である。
図4(A)において、超音波探触子2は弾性部5に固着されて配設されている。弾性部5は、シート状の弾性体からなり、紙面手前側(超音波探触子2を装着する側)に突出している超音波探触子2が測定対象者の皮膚に密着した際に、弾性力により超音波探触子2を紙面後方側(超音波探触子2を装着しない側)に押圧して、人体への負担を軽減している。
【0041】
弾性部5の周囲には、同心(楕)円状に受信素子3が広がって配設されており、受信素子3は、超音波探触子2を中心に順次外側方向に領域が拡大されるように区画されている。各領域は誘電体を挟んで表裏に電極が配設され、それぞれの領域ごとに受信した反射波が検出される。
【0042】
図4(B)において、超音波センサ1を測定対象者の皮膚に押し付けて装着させている。超音波探触子2は、腹膜7と恥骨8との間から膀胱4に向けて超音波を放射状に発振させる必要があるため、身長方向については恥骨8の上部、左右方向については身体の中心の位置に装着される。こうすることで、膀胱4に確実に超音波を発振することができる。
【0043】
超音波探触子2は、周波数1〜5MHzで半波長の超音波を発振し、発振された超音波は音響レンズ2aを通過する際に放射状に拡散されて皮膚及び皮下組織を通過して膀胱前壁に到達する。そして、一部の超音波エネルギーは、膀胱4の前壁内面と尿との境界面で反射して皮膚表面に戻る。残りの超音波エネルギーは、膀胱後壁において同様に反射して皮膚表面に戻る。皮膚表面に戻った反射波は受信素子3で受信され、臓器測定装置10に送信される。
【0044】
受信素子3が受信した測定情報の結果の一例を
図5に示す。膀胱前壁で反射した反射波と膀胱後壁で反射した反射波とが明確に区別されて検出されており、この結果を利用することで、膀胱前壁及び膀胱後壁の位置を特定することが可能であることが実証される。
【0045】
なお、
図4(B)に示すように、弾性部5の弾性力を調整することで、超音波探触子2及び臓器測定装置10を接続するコード6の作用と弾性部5の弾性作用とにより、超音波探触子2を程よく下方向(コード6が配線されている方向と逆方向)に傾け、腹膜7と恥骨2の間の膀胱4に適格に指向することができる。すなわち、コード6が配線されている側(超音波探触子2の上側)はコード6により弾性部5が伸びず、コード6が配線されていない側(超音波探触子2の下側)は、超音波探触子2と測定対象者との密着度合いに応じて弾性部5が自由に伸びることを利用して、弾性部5の弾性力を調整して超音波探触子2の傾斜角を特定することが可能となる。
【0046】
次に、
図3における臓器測定装置10の機能について詳細に説明する。臓器測定装置10は、超音波センサ1で測定された測定情報を取得し、蓄尿量等の演算を行って排尿の支援装置として機能する。
図5に示したように、測定情報から膀胱4の前壁と後壁の位置座標を特定することができる。サイズ演算部32は、膀胱4の前壁と後壁の位置座標から膀胱4の体積を推定演算する。推定演算は、例えば、膀胱4の前壁と後壁の位置座標、並びに、予め定められている高さ方向及び左右方向の係数を用いて行うことができる。また、測定対象者別に固有の係数を定めるようにしてもよい。
【0047】
推定された膀胱4の体積に基づいて、蓄尿量算出部33が蓄尿量を算出する。求めた蓄尿量は、尿情報記憶部35に記憶されている測定情報に、経時的に関連付けて記憶される。すなわち、尿情報記憶部35は、測定対象者ごとに時間に対する蓄尿量が記憶されることとなる。この情報は、そのまま排尿日誌に出力することができ、排尿日誌の自動生成が可能となる。
【0048】
出力制御部34は、蓄尿量算出部33で算出された蓄尿量が、測定対象者ごとに予め定められている閾値を超えている場合に、排尿を促す旨の情報を出力する。すなわち、排尿機能に異常(例えば、尿意に鈍感である等)がある測定対象者は、出力された情報に従って排尿すれば、尿失禁等を確実に防止することができ、オムツ等を常時装着する必要がなくなる。
【0049】
尿情報記憶部35に記憶されている蓄尿量と時間との関係を示す情報は、予め定められたレイアウトで画面や紙媒体に出力することで排尿日誌として出力することができる。このとき、排尿日誌の作成は、測定対象者を管理している管理者(例えば、医師や看護士等)が利用する管理コンピュータにて行われる。すなわち、尿情報記憶部35に記憶された情報が管理コンピュータに送信され、送信された尿情報記憶部35の情報に基づいて、管理コンピュータ内の蓄尿情報出力制御手段が所定のレイアウトにしたがって排尿日誌を出力する。なお、尿情報記憶部35に記憶された情報の送信は、有線又は無線通信により行われてもよいし、USB等のインターフェースを介して行われてもよいし、メモリスティック等の記憶媒体を介して行われてもよい。
【0050】
以下に、本実施形態に係る超音波センサ及び臓器測定装置の動作を説明する。
図6は、超音波センサ1及び臓器測定装置10の動作を示すフローチャートである。超音波センサ1が測定対象者に取り付けられると、超音波センサ1を駆動させて測定が実行される(S61)。測定は、上述したように、発振部21から放射状に発振された超音波の反射波を受信部22が受信し、受信した情報が情報送信部24により臓器測定装置10に送信される(S62)。
【0051】
臓器測定装置10は、超音波センサ1から送信された測定情報を受信し、受信した測定情報は、尿情報記憶部35に記憶される。記憶された測定情報に基づいて、サイズ演算部32が膀胱4のサイズを演算する(S63)。蓄尿量算出部33が、膀胱4のサイズに基づいて蓄尿量を算出し(S64)、尿情報記憶部35に排尿情報として経時的に記憶する(S65)。出力制御部34が、蓄尿量が予め設定された所定の閾値を超えたかどうかを判定する(S66)。超えていなければ、S61に戻って次の測定時間が来るまで待機し、測定時間になったらこれまでの処理を繰り返す。超えていれば、測定対象者に対して排尿を促す指示を出力し(S67)、S61に戻って次の測定時間が来るまで待機し、測定時間になったらこれまでの処理を繰り返す。
【0052】
なお、管理者から管理コンピュータに指示情報が入力された場合に、尿情報記憶部35に記憶されている蓄尿量と時間との関係を示す情報が当該管理コンピュータに取り込まれ、取込まれた情報が蓄尿情報出力制御手段により予め定められたレイアウトで画面や紙媒体に出力されて排尿日誌が作成される。この排尿日誌は、予め決められた時間(例えば、朝7時に時点等)に情報を取り込んで作成されるようにしてもよい。
【0053】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る超音波センサ及び当該超音波センサを利用した臓器測定装置について、
図7及び
図8を用いて説明する。本実施形態に係る超音波センサ及び臓器測定装置は、前記第1の実施形態における超音波センサ及び臓器測定装置の機能を拡張したものである。すなわち、測定対象者が排尿の直前、直後にそれらの動作を行った旨のイベント情報を入力し、また、尿意に対する切迫感、残尿感の愁訴情報を入力して排尿記憶手段に記憶されている排尿情報と関連付けて記憶するものである。
なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0054】
図7は、イベント情報及び愁訴情報を入力する場合のイメージ図である。
図7(A)は、イベント情報及び愁訴情報を臓器測定装置10と接続して入力する場合のイメージ図であり、
図7(B)は、イベント情報及び愁訴情報を管理コンピュータに直接送信する場合のイメージ図である。イベントボタン71は、排尿直前及び排尿直後に押下され、その情報が尿情報記憶部35や管理コンピュータに記憶される。愁訴ボタン72は、尿意に対して切迫感がある場合や残尿感がある場合に押下され、その情報が尿情報記憶部35や管理コンピュータに記憶される。
【0055】
図8は、イベント情報及び愁訴情報が入力された場合の測定情報の一例を示す図である。
図8(A)は、正常な場合の排尿パターン、
図8(B)は、尿失禁がある場合の排尿パターン、
図8(C)は、切迫感や残尿感がある排尿パターンである。
【0056】
図8(A)において、蓄尿量の測定は
図6のフローチャートに示すように、一定の測定時間間隔で行われており、時間に対する蓄尿量がグラフ表示されている。イベントボタン71が押下された場合には、それをトリガとしてイベントボタン71押下時の蓄尿量が測定され、イベント情報と共に尿情報記憶部35又は管理コンピュータに記憶される。
図8(A)の場合、イベントボタン71が押下された間に蓄尿量が初期値レベルまで激減していることから、自分の意思で正常に排尿したことがわかる。
【0057】
図8(B)の場合も同様に、イベントボタン71が押下された場合には、それをトリガとしてイベントボタン71押下時の蓄尿量が測定され、イベント情報と共に尿情報記憶部35又は管理コンピュータに記憶される。この場合、イベントボタン71(排尿直前)が押下されたときに、その直前の蓄尿量よりも少なければ、尿失禁があったと判断することができる(グラフaに相当)。また、イベントボタン71が押下されていないにも関わらず蓄尿量の減少が見られた場合も、尿失禁があったと判断することができる(グラフbに相当)。
【0058】
図8(C)において、愁訴ボタン72が押下された場合には、愁訴情報が尿情報記憶部35又は管理コンピュータに記憶される。この場合、排尿直前のイベントボタン71が押下される前後で愁訴ボタン72が押下されていれば、切迫感があったと判断することができる。また、排尿直後のイベントボタン72が押下された後に愁訴ボタン72が押下されていれば残尿感があったと判断することができる。排尿直後のイベントボタン72が押下された際の蓄尿量が残尿量となる。
【0059】
このように、排尿直前、直後、愁訴を記録することで、管理者が排尿日誌をより詳細に作成することができ、測定対象者の排尿の特徴を正確に把握して適切な処置を行うことが可能となる。
【0060】
(その他の実施形態)
本実施形態に係る超音波センサについて、
図9を用いて説明する。なお、本実施形態において、前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0061】
図9は、本実施形態に係る超音波センサの一部の構成を示す図である。
図9(A)は、弾性部5及び超音波探触子2の拡大図、
図9(B)は、超音波センサ1の正面図である。
図9(A)において、
図4(A)の場合と同様に、超音波探触子2は弾性部5に固着されて配設されており、弾性部5はシート状の弾性体からなる。
図4(A)の場合と異なるのは、シート状の弾性部5が2つの領域(上弾性部5a、下弾性部5b)に区画されており、それぞれの弾性力を異ならせている点である。すなわち、
図4(A)においては、コード6の作用を活かして超音波探触子2の傾斜角を特定していたが、ここでは、上弾性部5aと下弾性部5bとの弾性力の違いにより超音波探触子2の傾斜角を調整する。そうすることで、コード6の配線位置等を意識することなく、超音波探触子2を適正な角度で配置することが可能となる。
【0062】
図9(B)において、
図4(A)の場合と比較して、超音波探触子2の周辺に受信素子3が多数配設されている。各受信素子3は別個独立に反射波を受信するため、反射波の位置が
図4(A)の場合と比較してより細かく特定される。すなわち、膀胱4のサイズだけはなく立体形状も特定することが可能となる。