【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、汚水を処理し、得られた処理水を排出する汚水処理装置であって、濾材が充填された汚水処理槽と、上記汚水処理槽内を多段に区分けする濾材支持架台と、
空気取り入れ孔が形成された空気取り入れ管と、上記汚水処理槽に接続された排水装置とを有し、上記濾材支持架台と上記濾材支持架台の下部に充填する濾材との間には空間が設けられ
、上記空気取り入れ孔は、上記空間に設けられており、上記排水装置は、サイフォン式排水装置又は荷重感知開閉式排水装置であり、汚水又は処理水による濾材の浸漬と空気による濾材の曝露とを間欠的に繰り返す汚水処理装置である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者らは、濾材の浸漬と曝露とを間欠的に繰り返させることにより、酸素供給のためにばっ気装置や大きな動力を必要とせずに効率的に汚水を処理することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の汚水処理装置は、汚水を処理し、得られた処理水を排出するものである。
本発明の汚水処理装置は、汚水処理槽と、排水装置とを有する。
【0009】
上記汚水処理装置への汚水供給方法は、ポンプ圧送等の一般的な方法を用いればよく、特に限定されないが、動力等を用いずに低コストで汚水を供給できるように、汚水供給配管として、自然流下配管により汚水が汚水処理槽内に供給されることが好ましい。
【0010】
上記汚水供給配管を構成する材料としては、汚水に対して耐久性のある材料であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル等の樹脂や、繊維強化プラスチックスや、鋼、ダクタイル鋳鉄等の金属や、鉄筋コンクリート(ヒューム管)等が挙げられる。
【0011】
上記汚水供給配管の管路径方向の断面形状は汚水を流す管路として使用可能な断面形状であれば特に限定されず、例えば、矩形、円形、卵形等の断面が閉塞した管が挙げられ、円形であることが好ましい。
【0012】
上記汚水供給配管の管路径は特に限定されないが、好ましい下限は100mm、好ましい上限は3000mmである。上記汚水供給配管の管路径が100mm未満であると、汚水中の固形物により汚水の移送ができなくなることがある。
なお、本明細書において「管路径」とは、配管の内側断面の外接円の直径を意味する。
【0013】
上記汚水供給配管は、透水性を有することが好ましく、後述する濾材の上部に設置されることによって、汚水供給配管から汚水を濾材上に散水することができる。
上記汚水供給配管に透水性を付与する手段としては、例えば、汚水供給配管に開口部を設ける方法等が挙げられる。
【0014】
上記汚水供給配管の開口部の形状は、汚水中の固形物により目詰まりせず、かつ、濾材上に均一に汚水が散水される形状であれば、円、長円、楕円、角等のいずれの形状でもよいが、加工の容易さから円形が好ましい。
また、上記汚水供給配管の開口部の個数は、汚水中の固形物により目詰まりせず、かつ、濾材上に均一に汚水が散水されるよう適宜調整されることが好ましい。
【0015】
上記汚水供給配管の開口部の大きさの好ましい下限は1mm、好ましい上限は50mmである。汚水供給配管の開口部が1mm未満であると、汚水中の固形物により目詰まりが生じることがある。上記汚水供給配管の開口部が50mmを超えると、濾材上に均一に汚水を散水することができなくなることがある。上記汚水供給配管の開口部の大きさのより好ましい下限は10mm、より好ましい上限は30mmである。
【0016】
上記汚水処理槽は、微生物の付着を目的とした担体からなる濾材が充填されている。
上記担体とは、好気性微生物や嫌気性微生物等を付着させるために使用する粒状や小片の材料で一般的には水中で流動させて使用され、汚水の通水開始後1〜4週間程度経過した後に好気性微生物や嫌気性微生物等が自然に担体に付着し、増殖する。
上記濾材において、担体を構成する材料は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の樹脂や、セラミックス等が挙げられる。担体がポリエチレンやポリプロピレン等の疎水性材料からなる場合、担体には汚水透水性が必要であることから、親水化処理が施されていることが好ましい。
【0017】
上記担体は、酸素と微生物とを効率よく接触させる必要があり、比表面積が大きく、かつ、目詰まりをしにくいことから、繊維状体、発泡体、多孔質体、網状体等を用いることが好ましい。なかでも、保水性を高くする観点から発泡体がより好ましく、担体内部まで汚水を透水させる観点から、独立気泡タイプよりも連続気泡タイプの発泡体が更に好ましい。
【0018】
上記担体が繊維状体や発泡体である場合、比表面積を大きくするために、空隙率が高いことが好ましい。具体的には、空隙率が50%を超えるものが好ましく、80%を超えるものがさらに好ましい。
なお、本明細書において「空隙率」とは、単位体積当たりにおける隙間の割合を百分率で表したものを意味する。
【0019】
上記担体の形状は特に限定されず、例えば、球状、直方体状、立方体状、シート状、繊維状、網状等が挙げられる。また、濾材の流出防止のために、上記担体は、透水性の高い容器等、例えば、網状体や有孔管(担体保持管)等に封入して用いてもよい。
【0020】
上記濾材は、一つあたりの体積が100mm
3以上10万mm
3未満であることが好ましい。濾材一つあたりの体積が100mm
3未満であると、濾材が汚水とともに流出することがある。濾材一つあたりの体積が10万mm
3以上であると、濾材内部への透水性が不充分となって高い浄化性能が得られないことがある。
【0021】
本発明の汚水処理装置において、上記濾材は、汚水又は処理水による浸漬と、空気による濾材の曝露とを間欠的に繰り返す。そのため、上記汚水処理槽における濾材を充填する高さや充填率は、濾材が適度に汚水又は処理水による浸漬と空気による曝露とを繰り返すことができるように調節されていることが好ましい。
【0022】
上記汚水処理槽の高さが高い場合には、濾材を1段で充填すると濾材が圧密されて空気が通りにくくなるため、濾材を多段に分けて充填することが好ましい。濾材を多段に分けて充填する方法としては、汚水又は処理水が通過する開口部を有する濾材支持架台等を設けて汚水処理槽内を区分けする方法等が挙げられる。
【0023】
上記汚水処理槽において、濾材を充填する1段当たりの高さの好ましい下限は10mm、好ましい上限は2000mmである。上記濾材を充填する高さが10mm未満であると、汚水と濾材の接触時間が短くなるため、高い浄化性能が得られないことがある。上記濾材を充填する高さが、2000mmを超えると、汚水処理槽内の空気の量が不充分となり高い浄化性能が得られないことがある。上記濾材を充填する高さのより好ましい下限は100mm、より好ましい上限は500mmである。
【0024】
上記濾材支持架台の材質は、汚水に対する耐食性があり、汚水を含んだ濾材の荷重に耐えるものが適宜選択される。具体的には例えば、金属製のパンチングプレートや樹脂製の網等が好ましい。
【0025】
上記濾材支持架台の開口部は、汚水又は処理水を通過させるために設けられる。濾材支持架台の開口部大きさは、濾材が落下せずかつ目詰まりが起こりにくい大きさに適宜調整される。
【0026】
濾材を多段に充填する場合には、空気の通りを良くするために、濾材支持架台と濾材支持架台の下部に充填する濾材との間に、空間を設けることが好ましい。濾材支持架台と濾材との間の空間の高さの好ましい下限は10mm、好ましい上限は50mmである。濾材支持架台と濾材との間の空間の高さが10mm未満であると、空気の通りが悪くなって高い浄化性能が得られないことがある。濾材支持架台と濾材との間の空間の高さが50mmを超えると、濾材の充填率が低くなるため、高い処理効率が得られないことがある。濾材支持架台と濾材との間の空間の高さのより好ましい下限は20mmである。
【0027】
また、上記汚水処理槽は、空気の取り入れを促進するために、汚水処理槽外から空気を取り入れるための空気取り入れ口、汚水処理槽内の空気の通り道となる空気取り入れ管、及び、濾材を充填している部分に空気を供給するために該空気取り入れ管に形成される空気取り入れ孔を設けることが好ましい。
上記空気取り入れ口の口径は50〜200mmであることが好ましく、上記空気取り入れ管の口径は50〜200mmであることが好ましく、上記空気取り入れ孔の直径は10〜50mmであることが好ましい。
【0028】
空気取り入れ管に設けられる空気取り入れ孔は、上述した濾材支持架台と濾材との間の空間の位置に設けることが好ましい。
空気取り入れ管の本数、及び、空気取り入れ孔の個数は、濾材に充分に酸素を供給することができるように、汚水処理槽の大きさに応じて適宜調整される。
【0029】
上記汚水処理槽の外管の形状は特に限定されず、円柱状、直方体状、立方体状、楕円体状等が挙げられる。上記汚水処理槽の外管としてGPP管等公知の大口径管を使用することもできる。
【0030】
上記汚水処理槽の外管の材質は、汚水処理槽内の水位変動や埋設時の土圧に耐えられる強度を有するものであれば特に限定されず、例えば、繊維強化プラスチックス、ガラス繊維強化プラスチックス、鋼板、コンクリート等が挙げられる。
【0031】
本発明の汚水処理装置は、汚水又は処理水による濾材の浸漬と空気による濾材の曝露とを間欠的に繰り返す機構を有する。このような機構は、汚水処理装置の処理性能等が得られれば特に限定されず、例えば、汚水処理槽内の水位が一定の高さに達した時に排水装置により処理水の排出を開始する機構、及び/又は、前回の処理水の排出から一定時間が経過した時に、排水装置より処理水の排出を開始する機構等が挙げられる。
【0032】
上記排水装置は、排水の開始に水位センサーやポンプ等を用いることを必要としないため、サイフォン式排水装置や荷重感知開閉式排水装置であることが好ましい。
なお、本明細書において、上記「サイフォン式排水装置」は、サイフォン管を用いて、液面の高低差により生じる圧力差を利用して液体を移動させるサイフォンの作用を利用した排水装置を意味する。また、上記「荷重感知開閉式排水装置」は、一定荷重の負荷を受けた際にばね等の働きにより排水口が開いて排水し、排水流量が低下した際に排水口が閉じる機構を有する排水装置を意味する。
【0033】
汚水又は処理水が汚水処理槽に溜っていない状態で、濾材の上部から汚水を供給すると、汚水処理槽内の水位は徐々に上昇し、濾材が浸漬する。
上記排水装置がサイフォン式排水装置である場合、汚水処理槽内の水位が、サイフォン管の上端まで達すると、サイフォンの作用が働き処理水が一気に排出される。
このとき、濾材は空気(酸素)に触れ、濾材を浸漬した汚水は濾材に付着している微生物により好気的分解される。
汚水が供給されていると、処理槽の水位は再び上昇するが、濾材の浸漬していない部分には、空気中から酸素が供給され続け、担体に付着している微生物による好気的分解が進行する。
再び汚水の水位がサイフォン管の上端を超えると、サイフォンの作用が働き処理水が一気に排出され、以降このサイクルが繰り返される。また、荷重感知開閉式排水装置の場合でも、同様のサイクルが繰り返される。
【0034】
上記サイフォン式排水装置において、濾材全体を充分に浸漬させるため、サイフォン管の上端は、濾材最上面よりも高い位置であることが好ましい。
また、サイフォン管は、排水時に濾材全体を空気に接触させるために、汚水処理槽内に流入する汚水の量より排水量が多くなるような大きな排水能力を有することが好ましく、汚水処理槽内に供給される汚水量が多い場合には、サイフォン管を複数設置してもよい。
【0035】
また、上記排水装置は、水位センサーとポンプとを組み合わせて、汚水処理槽内の水位が濾材最上面を超えた時に水位センサーが反応し、ポンプが作動して排水を開始し、汚水処理槽内の水位が汚水処理槽の最底部に来た時にポンプが停止するもの等であってもよい。