特許第6088840号(P6088840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6088840-充放電システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088840
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】充放電システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20170220BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20170220BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20170220BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170220BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20170220BHJP
【FI】
   H01M10/44 P
   H02J7/04 L
   H02J7/10 L
   H01M10/48 301
   H01M10/48 P
   H01M10/615
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-29169(P2013-29169)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-157778(P2014-157778A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 慎介
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−238553(JP,A)
【文献】 特開2004−063397(JP,A)
【文献】 特開2001−273934(JP,A)
【文献】 特開2004−215464(JP,A)
【文献】 特開平11−283678(JP,A)
【文献】 特開平08−308129(JP,A)
【文献】 特開2002−291106(JP,A)
【文献】 特開2013−021752(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0004803(US,A1)
【文献】 米国特許第06002240(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/44
H01M 10/48
H01M 10/615
H02J 7/04
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電時の使用温度範囲の下限値である放電下限値が、充電時の使用温度範囲の下限値である充電下限値よりも低い二次電池と、
前記二次電池の温度を検出する検出部と、
前記二次電池から、前記二次電池の自己発熱に必要な電流を放電させる放電抵抗器と、
前記放電抵抗器と前記二次電池との間を接続又は遮断する抵抗器側切替器と、
前記検出部により検出される二次電池の温度が前記充電下限値よりも低い場合には、前記抵抗器側切替器を制御して前記二次電池の温度が前記充電下限値に達するまで前記二次電池から前記放電抵抗器へ前記電流を放電させる制御部と、
を備え
前記検出部は、さらに前記二次電池の残容量を検出するとともに、
前記制御部は、前記二次電池の温度が前記充電下限値よりも低い場合において、前記二次電池の残容量が、前記二次電池の発熱特性によって定められた暖機閾値よりも高い場合には、前記抵抗器側切替器を遮断状態にして前記放電抵抗器への放電を停止する、
ことを特徴とする充放電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記二次電池の残容量が、前記放電抵抗器での放電レートによって定められた放電閾値よりも低い場合には、前記抵抗器側切替器を遮断状態にする、
請求項に記載の充放電システム。
【請求項3】
前記放電抵抗器と前記抵抗器側切替器は直列に接続されており、前記放電抵抗器及び前記抵抗器側切替器に対して並列に設けられ、前記二次電池の電力を直流から交流に変換するインバーターと、
前記インバーターと前記二次電池との間を接続又は遮断するインバーター側切替器と、を備え、
前記制御部は、前記二次電池を放電する場合において、前記二次電池の温度が前記充電下限値よりも低いときは前記抵抗器側切替器を接続するとともに前記インバーター側切替器を遮断し、前記二次電池の温度が前記充電下限値まで昇温したときに前記抵抗器側切替器を遮断するとともに前記インバーター側切替器を接続する、
請求項1又は請求項2に記載の充放電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を充電又は放電する充放電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の充放電システムとして、特許文献1には、二次電池を大電流で充電する際に、通電及び休止を繰り返すことで間欠的な通電を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−66003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような二次電池は、放電時の使用温度範囲と充電時の使用温度範囲が異なっているものが多い。例えば、放電時の使用温度範囲は−20℃〜60℃であり、充電時の使用温度範囲は0℃〜45℃である。この場合において、0℃よりも低い低温環境下では、二次電池を充電すると二次電池は著しく劣化してしまう。
【0005】
このため、低温環境下で二次電池を充電するときは、二次電池の温度が充電時の使用温度範囲に上昇するまで二次電池の充電を待機しなければならない。そのため、低温環境下では早期に二次電池を使用することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、低温時に二次電池を早期に使用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、放電時の使用温度範囲の下限値である放電下限値が、充電時の使用温度範囲の下限値である充電下限値よりも低い二次電池と、前記二次電池の温度を検出する検出部と、前記二次電池から、前記二次電池の自己発熱に必要な電流を放電させる放電抵抗器と、前記放電抵抗器と前記二次電池との間を接続又は遮断する抵抗器側切替器と、前記検出部により検出される二次電池の温度が前記充電下限値よりも低い場合には、前記抵抗器側切替器を制御して前記二次電池の温度が前記充電下限値に達するまで前記二次電池から前記放電抵抗器へ前記電流を放電させる制御部と、を備え、前記検出部は、さらに前記二次電池の残容量を検出するとともに、前記制御部は、前記二次電池の温度が前記充電下限値よりも低い場合において、前記二次電池の残容量が、前記二次電池の発熱特性によって定められた暖機閾値よりも高い場合には、前記抵抗器側切替器を遮断状態にして前記放電抵抗器への放電を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、充電下限値よりも低い低温環境下で二次電池を起動したときに、二次電池の放電よる自己発熱によって、二次電池を充電時の使用温度範囲まで上昇させる期間を短縮することができる。したがって、低温時に二次電池を早期に充電可能な状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る充放電システムを示すブロック図である。
図2】充放電システムのバッテリー制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る充放電システム1について説明する。
【0012】
充放電システム1は、例えば、建設機械に搭載され、バッテリーの充電又は放電を制御するものである。
【0013】
充放電システム1は、バッテリー10と、発電機又は電動機として動作する電動モーター40と、バッテリー10の充電時に電動モーター40からの電力を交流から直流に変換し、放電時にバッテリー10の電力を直流から交流に変換するインバーター30と、を備える。
【0014】
さらに充放電システム1は、インバーター30とバッテリー10とを接続又は遮断するインバーター側切替器20と、バッテリー10の充放電状態を検出するバッテリー状態検出部11と、充放電状態に応じてインバーター側切替器20を制御する制御部100と、を備える。
【0015】
バッテリー10は、例えば、定格容量10Ah(アンペアアワー)の二次電池である。バッテリー10は充電と放電が可能な多数のセルを有し、各セルは直列に接続されている。バッテリー10は、本実施形態では公称電圧が10V(ボルト)のリチウムバッテリーである。
【0016】
バッテリー10については、充電時の使用温度範囲と放電時の使用温度範囲とが定められている。充電時及び放電時の使用温度範囲外でバッテリー10を使用した場合、バッテリー10の劣化を早め、破損や変形の原因になる恐れがある。
【0017】
本実施形態では、バッテリー10の充電時の使用温度範囲に比べて放電時の使用温度範囲の方が広い。放電時の使用温度範囲は、−20℃から60℃であるのに対し、充電時の使用温度範囲は、氷点温度0℃から45℃である。放電時の使用温度範囲の下限値(−20℃)は、充電時の使用温度範囲の下限値(0℃)よりも低く、氷点下の温度である。以下、バッテリー10の充電時の使用温度範囲の下限値を「充電下限温度」と称し、バッテリー10の放電時の使用温度範囲の下限値を「放電下限温度」と称する。
【0018】
バッテリー状態検出部11は、バッテリー10の温度、電圧、電流や、電池の残容量SOC(State Of Charge)などの充放電状態を検出する。バッテリー状態検出部11は、例えば、バッテリー10に設けられた温度センサーからバッテリー温度を取得する。バッテリー状態検出部11は、バッテリー温度、電圧、電流や、残容量SOCなどを示す状態情報を制御部100に供給する。
【0019】
制御部100は、バッテリー状態検出部11からの状態情報に基づいてインバーター側切替器20と抵抗器側切替器120を切り替え、バッテリー10の充電又は放電を制御する。
【0020】
例えば、制御部100は、電動モーター40が発電機として動作する場合において、状態情報に示されるバッテリー温度が充電下限温度以上であるときに、インバーター側切替器20を接続するとともに抵抗器側切替器120を切断する。これにより、電動モーター40からインバーター30を介してバッテリー10が充電される。一方、制御部100は、電動モーター40が電動機として動作する場合において、バッテリー温度が充電下限温度以上であるときには、インバーター側切替器20を接続状態に切り替えてバッテリー10から、例えば1Cレートでインバーター30に電流を放電する。
【0021】
また、制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度よりも低いときには、バッテリー状態検出部11から充電要求を受け付けても、インバーター側切替器20を遮断状態に維持してインバーター30からバッテリー10への充電を停止状態にする。
【0022】
このように、充電下限温度よりも低い温度環境下でバッテリー10を充電するときには、バッテリー温度が充電下限温度に上昇するまでバッテリー10の充電を待機しなければならない。
【0023】
一般的に充電下限温度よりも低い低温環境下ではバッテリーの内部抵抗は高くなるため、低温時にバッテリーを放電させるとバッテリー自身が発熱しやすくなる。そこで本発明では、バッテリー10からインバーター30への放電レートよりも大きな放電レートであってバッテリー10の自己発熱に必要な放電レートにより、バッテリー10から電流を放電させることで、バッテリー10を早期に暖機する。
【0024】
本発明の実施形態では、バッテリー10を早期に暖機するため、放電抵抗器110と抵抗器側切替器120とが充放電システム1に設けられている。放電抵抗器110と抵抗器側切替器120は、互いに直列に接続され、バッテリー10に対して並列に接続される。
【0025】
放電抵抗器110は、バッテリー10の暖機に必要な電流をバッテリー10から放電させる抵抗器である。放電抵抗器110は、例えば、バッテリー10の定格容量に対して2Cレート以上の電流を放電するための抵抗値を有する。なお、本実施形態では2Cレート以上の放電電流を「暖機電流」と称する。
【0026】
本実施形態では、放電抵抗器110は、バッテリー10の定格容量(10Ah)に対して20Aの暖機電流Iを放電するのに必要な0.5Ω(オーム)の抵抗値Rを有する。したがって、放電抵抗器110では200W(ワット)の電力(P=I2×R)が消費されることになるので、例えば、耐電力400Wの抵抗器が用いられる。
【0027】
抵抗器側切替器120は、制御部100の制御に従って、放電抵抗器110とバッテリー10との間を接続又は遮断する。例えば、抵抗器側切替器120は、制御部100と接続される制御端子を有し、制御端子からH(High)レベルの制御信号を受けると、放電抵抗器110とバッテリー10とを接続する。一方、抵抗器側切替器120は、L(Low)レベルの制御信号を受けると、放電抵抗器110とバッテリー10の接続を遮断する。
【0028】
制御部100は、バッテリー状態検出部11からの状態情報に基づいてインバーター側切替器20とともに抵抗器側切替器120を切り替える。制御部100は、バッテリー状態検出部11から状態情報を受け付けると、状態情報に示されるバッテリー温度が充電下限温度よりも低いか否かを判断する。
【0029】
制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度以上である場合には、抵抗器側切替器120の制御端子にLレベルの制御信号を出力する。一方、制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度よりも低い場合には、抵抗器側切替器120の制御端子にHレベルの制御信号を出力する。
【0030】
また、制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度よりも低い場合において、バッテリー10の残容量SOCに基づいて抵抗器側切替器120を遮断状態に切り替える。
【0031】
例えば、制御部100には、放電抵抗器110での放電レートによって定められた放電閾値が予め記録されている。すなわち、放電抵抗器110の放電レートが高い程、放電閾値は高くなる。本実施形態では、放電閾値は20%に設定される。
【0032】
そして制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度よりも低い場合において、残容量SOCが放電閾値(20%)以下である場合には、抵抗器側切替器120の制御端子にLレベルの制御信号を出力する。
【0033】
これにより、抵抗器側切替器120が強制的に遮断状態となり、バッテリー10の残容量SOCが放電抵抗器110によって短期間に全て消費されてしまうことを防ぐことができる。このため、バッテリー10が完全に放電してインバーター30から電動モーター40に必要最低限の電力を供給できくなることを回避できる。
【0034】
また、制御部100に記録される閾値として、放電閾値に加えて、バッテリー10の放電による自己発熱特性によって定められた暖機閾値をさらに設けても良い。バッテリー10では、氷点下において残容量SOCが大きい程、自己発熱量は小さくなる。放電抵抗器110へ2Cレートで放電する場合において残容量SOCが80%であるときの発熱量は、インバーター30へ1Cレートで放電するときの発熱量とほぼ同等である。そのため、本実施形態では暖機閾値は80%に設定される。
【0035】
そして制御部100は、バッテリー温度が充電温度下限値よりも低い場合において、残容量SOCが暖機閾値(80%)以上である場合には、抵抗器側切替器120の制御端子にLレベルの制御信号を出力する。
【0036】
これにより、抵抗器側切替器120が強制的に遮断状態となり、放電抵抗器110ではなくインバーター30へ放電することが可能となるので、バッテリー10の残容量SOCを放電抵抗器110で無駄に消費されることを回避できる。したがって、バッテリー10を効率的に暖機することができる。
【0037】
このように、バッテリー温度が充電下限温度よりも低い場合、バッテリー10の残容量SOCに応じて抵抗器側切替器120を遮断状態に切り替え、バッテリー10から放電抵抗器110への放電を停止させてもよい。
【0038】
また、バッテリー10を放電する場合において、制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度以上であるときは、抵抗器側切替器120を遮断状態に設定するとともにインバーター側切替器20を接続状態に設定する。一方、制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度よりも低い場合には、抵抗器側切替器120を接続状態に切り替えるとともにインバーター側切替器20を接続状態に切り替える。
【0039】
具体的には、制御部100は、バッテリー10から電動モーター40への放電要求を受けた場合において、バッテリー温度が充電下限温度以上であるときは、バッテリー10を放電抵抗器110から遮断するとともに、バッテリー10をインバーター30に接続する。
【0040】
一方、制御部100は、電動モーター40への放電要求を受けた場合において、バッテリー温度が充電下限温度よりも低いときは、バッテリー10に放電抵抗器110を接続するとともに、バッテリー10からインバーター30を遮断する。そして制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度まで昇温したときは、バッテリー10から放電抵抗器110を遮断するとともに、バッテリー10をインバーター30に接続する。
【0041】
また、バッテリー温度が充電下限温度よりも低い低温環境下において、制御部100は、状態情報に示された残容量SOCが低温閾値よりも低下したときは、抵抗器側切替器120及びインバーター側切替器20をそれぞれ遮断状態に設定してバッテリー10の放電を停止する。
【0042】
これにより、低温環境下でのバッテリー10の内部抵抗値の増大に伴う電動モーター40への放電による劣化を回避できる。本実施形態では低温閾値は10%に設定される。なお、低温閾値と放電閾値は同時に設定される。低温閾値は、低温環境下でのバッテリー10の内部抵抗値によって定まるものであるのに対し、放電閾値は、放電抵抗器110への放電レートに応じて定まるものである。例えば、放電閾値は、放電抵抗器110への放電レートが大きいほど低温閾値よりも高くなり、放電抵抗器110への放電レートが小さいほど放電閾値は低温閾値よりも低くなる。
【0043】
本実施形態では、低温閾値(10%)が放電閾値(20%)よりも低いため、放電抵抗器110へ放電するときには、例えば低温閾値の代わりに放電閾値が設定される。また、低温時にインバーター30へ放電するときには低温閾値が設定される。なお、低温閾値は、制御部100に予め記録される。
【0044】
制御部100は、放電抵抗器110でバッテリー10を放電してからバッテリー温度が充電下限温度まで上昇したときには、抵抗器側切替器120を制御して放電抵抗器110をバッテリー10から遮断する。そして制御部100は、インバーター側切替器20を制御してバッテリー10をインバーター30に接続する。
【0045】
すなわち、インバーター側切替器20は、インバーター30にバッテリー10を放電する場合において、バッテリー温度が充電下限温度よりも低いときはインバーター30とバッテリー10とを遮断する。そしてインバーター側切替器20は、バッテリー温度が充電下限温度まで昇温したときにインバーター30とバッテリー10とを接続する。
【0046】
このように制御部100は、インバーター30への放電要求があっても、バッテリー温度が、放電下限温度よりも高く、充電下限温度よりも低いときは、放電抵抗器110への放電を優先して、バッテリー10を充電時の使用温度範囲まで早期に暖機させる。なお、放電下限温度とは、上述のとおり、バッテリー10の放電時の使用温度範囲の下限値である。
【0047】
これにより、バッテリー10の充電と放電とが交互に切り替えられる状況においては、電動モーター40に放電するよりも放電抵抗器110で放電させる方が暖機に要する時間を短縮できるので、早期にバッテリー10への充電が可能となる。このため、効率的にバッテリー10を使用することができる。
【0048】
なお、バッテリー温度が充電時又は放電時の使用温度範囲の上限値を超えた場合には、バッテリー10の劣化を防ぐために、抵抗器側切替器120及びインバーター側切替器20をそれぞれ遮断状態にするのが好ましい。
【0049】
図2は、充放電システム1のバッテリー制御方法を示すフローチャートである。
【0050】
まず、ステップS910において、充放電システム1を搭載した建設機械のイグニッションキーがONに設定され、充放電システム1が起動する。
【0051】
ステップS920においてバッテリー状態検出部11は、バッテリー10に設けられた温度センサーからバッテリー温度Tbを取得し、バッテリー10の電圧と電流に基づいて充電容量の残容量SOCを検出する。そしてバッテリー状態検出部11は、バッテリー温度Tbや残容量SOCなどを示す状態情報を制御部100に供給する。
【0052】
ステップS930において制御部100は、バッテリー状態検出部11から状態情報を受け付けると、状態情報に示されたバッテリー温度Tbが、充電下限温度Thよりも低いか否かを判断する。
【0053】
ステップS970において制御部100は、バッテリー温度Tbが充電下限温度Th以上である場合には、充放電システム1の起動後にバッテリー10の充放電要求を受けているか否か確認する。充放電要求には、バッテリー10から電動モーター40への放電要求、又は、電動モーター40からバッテリー10への充電要求がある。
【0054】
ステップS980において制御部100は、充放電要求を受けた場合には、抵抗器側切替器120を遮断状態に設定するとともにインバーター側切替器20を接続状態に設定し、インバーター30を介してバッテリー10の充電又は放電をする。そして制御部100は、充放電要求を受けていない場合には、バッテリー制御方法を終了する。
【0055】
一方、ステップS940において制御部100は、バッテリー温度Tbが充電下限温度Thよりも低い場合において、状態情報に示された残容量SOCが放電閾値、例えば20%よりも大きいか否かを判断する。
【0056】
ステップS950において制御部100は、バッテリー温度Tbが充電下限温度Thよりも低い場合において残容量SOCが放電閾値よりも大きいときは、さらに残容量SOCが暖機閾値、例えば80%よりも小さいか否かを判断する。
【0057】
ステップS960において制御部100は、バッテリー温度Tbが充電下限温度Thよりも低い低温環境下で、残容量SOCが、放電閾値(20%)よりも大きく、かつ、暖機閾値(80%)よりも小さい場合には、バッテリー10を放電抵抗器110で放電する。
【0058】
すなわち、制御部100は、低温環境下で残容量SOCが放電閾値(20%)から暖機閾値(80%)までの範囲を超えないときは、抵抗器側切替器120を接続状態に設定するとともに、インバーター側切替器20を遮断状態に設定する。これにより、バッテリー10の暖機に必要な2Cレートでバッテリー10から暖機電流が放電抵抗器110に放電される。そしてバッテリー温度Tbが充電下限温度Thに上昇するまで、一連の処理手順ステップS920〜ステップS960を繰り返す。
【0059】
ステップS940において制御部100は、バッテリー温度Tbが充電下限温度Thよりも低い場合において、残容量SOCが放電閾値(20%)以下であるときは、抵抗器側切替器120を強制的に遮断状態に設定し、ステップS970に進む。
【0060】
ステップS950において制御部100は、バッテリー温度Tbが充電下限温度Thよりも低い場合において、残容量SOCが暖機閾値(80%)以上であるときは、抵抗器側切替器120を強制的に遮断状態に設定し、ステップS970に進む。
【0061】
ステップS980において制御部100は、バッテリー10への充電要求を受けた場合には、充電時の使用温度範囲内でバッテリー10を充電し、放電要求を受けた場合には、放電時の使用温度範囲内でバッテリー10から電動モーター40へ放電する。そして制御部100によるバッテリー制御処理を終了する。
【0062】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0063】
充放電システム1では、制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度よりも低い場合には、抵抗器側切替器120を制御してバッテリー温度が充電下限温度に達するまでバッテリー10から自己発熱に必要な放電電流を放電抵抗器110へ放電する。
【0064】
これにより、バッテリー10に放電電流が流れるため、バッテリー自体が発熱することにより、充電が可能な温度まで上昇するのに要する時間を短縮することができる。したがって、充電時の使用温度範囲よりも低い低温環境下で二次電池を充電可能な状態に早期にすることができる。
【0065】
また、制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度よりも低い場合においては、バッテリー10の残容量SOCに基づいて、抵抗器側切替器120を強制的に遮断状態にして放電抵抗器110への放電を停止する。
【0066】
例えば、制御部100は、バッテリー10の残容量SOCが、放電抵抗器110での放電レートによって定められた放電閾値よりも低い場合には、抵抗器側切替器120を強制的に遮断状態にする。これにより、バッテリー10の残容量SOCが放電抵抗器110によって短期間に全て消費されてしまうことを防ぐことができる。
【0067】
また、制御部100は、バッテリー10の残容量SOCが、バッテリー10の発熱特性によって定められた暖機閾値よりも高い場合には、抵抗器側切替器120を強制的に遮断状態にする。これにより、バッテリー10からは放電抵抗器110ではなくインバーター30へ放電することが可能となるので、バッテリー10の残容量SOCを放電抵抗器110で無駄に消費されるのを回避できる。
【0068】
また、本実施形態では、制御部100は、バッテリー10を放電する場合において、バッテリー温度が充電下限温度よりも低いときは、抵抗器側切替器120を接続状態に設定するとともにインバーター側切替器20を遮断状態に設定する。そして制御部100は、バッテリー温度が充電下限温度まで上昇したときに、抵抗器側切替器120を遮断状態に切り替えるとともにインバーター側切替器20を接続状態に切り替える。
【0069】
これにより、バッテリー10の充電と放電とが交互に切り替えられる状況では、インバーター30への放電に比べて放電抵抗器110で放電させる方が暖機に要する時間が短くなり、早期にバッテリー10への充電が可能となるため、効率的にバッテリー10を使用することができる。
【0070】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0071】
例えば、インバーター側切替器20、抵抗器側切替器120としては、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等のトランジスタや、リレーなどのようなスイッチング素子が用いられてもよい。
【0072】
また、バッテリー温度の検出手法については、バッテリー10の温度を直接検出しても良いし、バッテリー周囲の雰囲気や、バッテリーケース、バッテリー内部の基板温度などを介してバッテリー温度を間接的に検出してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 充放電システム
10 バッテリー
11 バッテリー状態検出部
20 インバーター側切替器
30 インバーター
40 電動モーター
100 制御部
110 放電抵抗器
120 抵抗器側切替器
図1
図2