(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6088841
(24)【登録日】2017年2月10日
(45)【発行日】2017年3月1日
(54)【発明の名称】点呼システムおよび点呼方法
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20170220BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20170220BHJP
【FI】
G08B25/04 F
G08B25/04 K
G08B21/10
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-30836(P2013-30836)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-160381(P2014-160381A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 将雄
【審査官】
松平 英
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−237698(JP,A)
【文献】
特開2006−323719(JP,A)
【文献】
特開平08−044967(JP,A)
【文献】
特開2006−011721(JP,A)
【文献】
特開2010−044685(JP,A)
【文献】
特開2010−160728(JP,A)
【文献】
佐藤 光彦 他,非接触ICカードとRFIDタグを応用した統合エリアセキュリティソリューション,東芝レビュー,株式会社東芝,2009年 7月 1日,第64巻 第7号,p.40〜43
【文献】
林 功,災害対策支援ソリューション/ツール 災害対策に向けたBCPソリューションの役割と適応,計装,日本,(有)工業技術社,2012年10月 1日,Vol.55 No.10,p.56〜61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
G06F19/00
G06Q10/00−10/10
30/00−30/08
50/00−50/20
50/26−99/00
G08B19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内の管理対象区画毎にその出入り口に設置され、入力される個人情報を読み取る個人情報読取装置と、この個人情報読取装置から送られてくる前記個人情報を含む操作情報に基づいて前記管理対象区画毎の入退室者を管理する入退室管理装置とを備えた入退室管理システムを利用して、災害時における前記施設内の在場者の安否確認を行う点呼システムであって、
災害が発生したことを知らせる災害発生信号を受信する災害発生信号受信手段と、
前記災害発生信号を受信した場合、前記入退室管理装置が管理している入退室者の管理情報に基づいて、その災害発生信号の受信時点における前記施設内の在場者の安否の確認項目と、前記在場者の個人を特定する項目と、前記在場者が最後に操作した前記個人情報読取装置の設置場所を示す項目とを少なくとも含むリストを点呼リストとして作成する点呼リスト作成手段と、
前記災害発生信号の受信時点以降、前記管理対象区画毎に設置されている前記個人情報読取装置から送られてくる前記個人情報を含む操作情報に基づいて、前記点呼リストにおける在場者の安否の確認項目および前記在場者が最後に操作した前記個人情報読取装置の設置場所を示す項目を更新させる点呼リスト更新手段と、
前記点呼リスト更新手段によって更新された最新の点呼リストを要求に応じて出力する点呼リスト出力手段と
を備えることを特徴とする点呼システム。
【請求項2】
請求項1に記載された点呼システムにおいて、
前記点呼リスト更新手段は、
前記個人情報読取装置から送られてくる前記個人情報を含む操作情報に基づいて在場者を特定し、その特定した在場者の安否の確認項目を確認済みとする
ことを特徴とする点呼システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された点呼システムにおいて、
前記点呼リストは、
さらに、前記在場者が最後に操作した前記個人情報読取装置の操作時刻を示す項目を備える
ことを特徴とする点呼システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された点呼システムにおいて、
前記点呼リストは、
さらに、前記在場者が最後に操作した前記個人情報読取装置の操作時刻を示す項目と、前記在場者の連絡先を示す項目とを備える
ことを特徴とする点呼システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載された点呼システムにおいて、
前記点呼リストには、前記施設内にいない退場者も含まれている
ことを特徴とする点呼システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載された点呼システムにおいて、
前記点呼リスト更新手段は、定期的に前記点呼リストを更新させる
ことを特徴とする点呼システム。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載された点呼システムにおいて、
前記点呼リスト更新手段は、
前記個人情報読取装置から前記個人情報を含む操作情報が送られてくる毎に前記点呼リストを更新させる
ことを特徴とする点呼システム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載された点呼システムにおいて、
前記災害発生信号は、災害発生時に自動的に送られてくる
ことを特徴とする点呼システム。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項に記載された点呼システムにおいて、
前記災害発生信号は、手動操作によって送られてくる
ことを特徴とする点呼システム。
【請求項10】
施設内の管理対象区画毎にその出入り口に設置され、入力される個人情報を読み取る個人情報読取装置と、この個人情報読取装置から送られてくる前記個人情報を含む操作情報に基づいて前記管理対象区画毎の入退室者を管理する入退室管理装置とを備えた入退室管理システムを利用して、災害時における前記施設内の在場者の安否確認を行う点呼方法であって、
災害が発生したことを知らせる災害発生信号を受信する災害発生信号受信ステップと、
前記災害発生信号を受信した場合、前記入退室管理装置が管理している入退室者の管理情報に基づいて、その災害発生信号の受信時点における前記施設内の在場者の安否の確認項目と、前記在場者の個人を特定する項目と、前記在場者が最後に操作した前記個人情報読取装置の設置場所を示す項目とを少なくとも含むリストを点呼リストとして作成する点呼リスト作成ステップと、
前記災害発生信号の受信時点以降、前記管理対象区画毎に設置されている前記個人情報読取装置から送られてくる前記個人情報を含む操作情報に基づいて、前記点呼リストにおける在場者の安否の確認項目および前記在場者が最後に操作した前記個人情報読取装置の設置場所を示す項目を更新させる点呼リスト更新ステップと、
前記点呼リスト更新ステップによって更新された最新の点呼リストを要求に応じて出力する点呼リスト出力ステップと
を備えることを特徴とする点呼方法。
【請求項11】
請求項10に記載された点呼方法において、
前記点呼リスト更新ステップは、
前記個人情報読取装置から送られてくる前記個人情報を含む操作情報に基づいて在場者を特定し、その特定した在場者の安否の確認項目を確認済みとする
ことを特徴とする点呼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カードリーダなどの個人情報読取装置を使用した入退室管理システムを利用して、災害時における施設内の在場者の安否確認を行う点呼システムおよび点呼方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、地震や火災などの災害が発生した場合、例えば職場や学校では緊急避難を行い、点呼担当者が集合場所に集まった人達を一人ひとり確認して点呼を行い、その安否確認を行っていた。このような方法では、災害の混乱時に点呼作業のために人が集まる必要があるため、二次災害の恐れがある上、点呼作業自体にも時間が掛かる。また、点呼の対象者が集合場所にいなかった場合に、そもそも当日不在だったのか被災したのかを別途確認する必要がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に示された点呼システムでは、一人ひとり目視で安否確認を行うのではなく、携帯電話機のメール機能を利用して点呼を行うようにしている。この点呼システムは、ウェブサーバである点呼サーバと、施設内の各部屋に備え付けられた検出ターミナルと、点呼責任者が駐在する点呼本部に配置されたクライアントコンピュータとを備えている。
【0004】
この点呼システムにおいて、検出ターミナルは、各部屋内の携帯電話機と通信してその携帯電話機が持つメールアドレスを点呼サーバへ送る。これにより、災害前に、点呼サーバにおいて、定期的に、点呼をとるべき対象者のリストが作られる。点呼責任者は、災害が生じた場合、クライアントコンピュータから点呼サーバへ点呼開始指令を送る。すると、点呼サーバが、点呼対象リストにリストアップされたメールアドレスをもつ携帯電話機に、点呼メールを送信する。点呼サーバは、この点呼メールに応えて送信されてくる返信メールによって、点呼対象者の安否確認を行う。
【0005】
また、例えば特許文献2に示された点呼システムでは、点呼者によって操作されるマスタ装置と、被点呼者によって携帯される複数のスレーブ装置とを備えている。この点呼システムにおいて、マスタ装置は、ルーティング構成指示を各スレーブ装置に無線送信する。スレーブ装置は、マスタ装置からのルーティング構成指示に応じて、アドホックネットワークのルーティング構成処理を開始し、自身の識別子を付帯させたルーティングの完了報告をマスタ装置に無線送信する。マスタ装置は、各スレーブ装置から送信されてくるルーティングの完了報告を受信し、受信した完了報告に基づいてスレーブ装置の存在の有無を確認する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−175492号公報
【特許文献2】特開2008−167234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に示された点呼システムによると、点呼作業の時間短縮は可能であるが、各人が点呼用の機器を常に所持している必要がある。すなわち、特許文献1に示された点呼システムでは、普段使用しない人でも携帯電話機を点呼用の機器として常に所持しておかなければならない。また、特許文献2に示された点呼システムでは、各人が普段使用しない専用のスレーブ装置を点呼用の機器として常に所持しておかなければならない。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、点呼用の機器を所持させることなく、既存の入退室管理システムを利用して、災害時における施設内の在場者の安否確認を行うことが可能な点呼システムおよび点呼方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために本発明は、施設内の管理対象区画毎にその出入り口に設置され、入力される個人情報を読み取る個人情報読取装置と、この個人情報読取装置から送られてくる個人情報を含む操作情報に基づいて管理対象区画毎の入退室者を管理する入退室管理装置とを備えた入退室管理システムを利用して、災害時における施設内の在場者の安否確認を行う点呼システムであって、災害が発生したことを知らせる災害発生信号を受信する災害発生信号受信手段と、災害発生信号を受信した場合、入退室管理装置が管理している入退室者の管理情報に基づいて、その災害発生信号の受信時点における施設内の
在場者の安否の確認項目と、在場者の個人を特定する項目と、在場者が最後に操作した個人情報読取装置の設置場所を示す項目とを少なくとも含むリストを点呼リストとして作成する点呼リスト作成手段と、災害発生信号の受信時点以降、
管理対象区画毎に設置されている個人情報読取装置から送られてくる個人情報を含む操作情報に基づいて、点呼リストにおける在場者の安否の確認項目
および在場者が最後に操作した個人情報読取装置の設置場所を示す項目を更新させる点呼リスト更新手段と、点呼リスト更新手段によって更新された最新の点呼リストを要求に応じて出力する点呼リスト出力手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、災害が発生したことを知らせる災害発生信号を受信すると、入退室管理装置が管理している入退室者の管理情報に基づいて、その災害発生信号の受信時点における施設内の
在場者の安否の確認項目と、在場者の個人を特定する項目と、在場者が最後に操作した個人情報読取装置の設置場所を示す項目とを少なくとも含むリストが点呼リストとして作成される。
この災害発生信号の受信時点の点呼リストにおいて、在場者毎の安否の確認項目は、災害発生信号の受信時点ではまだ安否の確認がとれていないので、例えば未確認とされている。
【0011】
災害発生信号の受信時点以降、在場者が最寄りの個人情報読取装置に自己の個人情報を入力すると、この個人情報読取装置から送られてくる個人情報を含む操作情報に基づいて、点呼リストにおけるその在場者の安否の確認項目
および在場者が最後に操作した個人情報読取装置の設置場所を示す項目が更新される。すなわち、送られてきた個人情報を含む操作情報から在場者が特定され、その特定された在場者の安否の確認項目が更新される。例えば、特定された在場者の安否の確認項目が確認済みとされる。
また、送られてきた個人情報を含む操作情報から在場者が最後に操作した個人情報読取装置の設置場所が特定され、その特定された在場者が最後に操作した個人情報読取装置の設置場所の項目が更新される。この点呼リストの更新は、定期的に行われるようにしてもよく、個人情報読取装置から個人情報を含む操作情報が送られてくる毎に行われるようにしてもよい。
【0012】
本発明において、点呼リスト出力手段は、更新された最新の点呼リストを要求に応じて出力する。この出力された点呼リストにおいて、在場者の安否の確認項目を見ることにより、在場者の安全が確保されているか否かを知ることができる。例えば、在場者の安否の確認項目が確認済みとされていれば、その在場者の安全が確保されていることが分かり、在場者の安否の確認項目が未確認であれば、その在場者の安全がまだ確保されていないことが分かる。
【0013】
本発明において、点呼リストには、
施設内の在場者の安否の確認項目と、在場者の個人を特定する項目と、在場者が最後に操作した個人情報読取装置の設置場所を示す項目とが少なくとも設けられている。これにより、在場者を特定しての安否確認だけではなく、在場者が施設内のどこにいるのかを把握することも可能となる。本発明において、点呼リストに、さらに、在場者が最後に操作した個人情報読取装置の操作時刻を示す項目、在場者の連絡先を示す項目などを設けるようにしてもよい。在場者が最後に操作した個人情報読取装置の操作時刻を示す項目を設けると、安全の確保が確認された災害後の時刻や安全が確認されていた災害前の時刻を知ることが可能となる。また、在場者の連絡先を示す項目を設けると、その連絡先に在場者の安否を知らせることが可能となる。
【0014】
本発明において、点呼リストには、施設内にいる在場者だけではなく、施設内にいない退場者も含まれていてもよい。すなわち、個人情報読取装置をカードリーダとし、ICカードなどのカードを個人情報記録媒体として発行するような入退室管理システムとしていた場合、カードを発行している全員(来訪者も含む)を点呼リストにリストアップし、在場者と退場者とが分かるように示すようにしてもよい。また、本発明において、災害発生信号は、地震計、火災報知器などから自動的に送られてくるようにしてもよく、手動操作によって送られてくるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、災害発生信号の受信時点以降、在場者が最寄りの個人情報読取装置から個人情報の入力を行うと、この個人情報読取装置から送られてくる個人情報を含む操作情報に基づいて、点呼リストにおける在場者の安否の確認項目
および在場者が最後に操作した個人情報読取装置の設置場所を示す項目が更新される。この場合、その個人情報の入力は、入退室管理システムにおける個人情報読取装置を使用して行われる。例えば、入退室管理システムにおける個人情報読取装置をカードリーダとした場合、各人が所持している個人情報が記録されたカードをカードリーダにセットすることによって行われる。これにより、本発明によれば、点呼用の機器を所持させることなく、既存の入退室管理システムを利用して、災害時における施設内にいる在場者の安否確認を行うことが可能となる。
また、在場者の安否確認だけではなく、在場者が施設内のどこにいるのかを把握することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る点呼システムの一実施の形態の要部を示す図である。
【
図2】この点呼システムに用いる点呼装置の機能ブロック図である。
【
図3】この点呼装置の処理動作を具体的に説明するためのフローチャートである。
【
図4】この点呼装置の点呼リスト作成部で作成される点呼リスト(災害発生信号の受信時点における在場者/退場者のリスト)の一例を示す図である。
【
図5】この点呼装置の点呼リスト更新部で更新された点呼リスト(更新された最新の点呼リスト)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る点呼システムの一実施の形態の要部を示す図である。
【0018】
図1において、1(1−1,1−2,1−3)は施設内の管理対象区画2(2−1,2−2,2−3)毎にその出入り口に設置されたカードリーダ、3はカードリーダ1−1〜1−3に通信ライン4を介して接続された入退室管理装置であり、このカードリーダ1−1〜1−3と入退室管理装置3と通信ライン4とで入退室管理システム100が構成されている。
【0019】
この入退室管理システム100において、管理対象区画2−1へ入室したい場合、入室者は自己が所持しているカード(図示せず)をカードリーダ1−1にセットする。このカードにはその人の個人情報として識別番号(例えば、個人ID)が書き込まれている。カードリーダ1−1は、セットされたカードに書き込まれている識別情報を読み取り、この識別情報とカードリーダ1−1の固有情報(例えば、カードリーダが設置されている区画番号(設置区画番号))を操作情報とし、この操作情報を通信ライン4を介して入退室管理装置3へ送る。
【0020】
入退室管理装置3は、カードリーダ1−1からの操作情報(個人ID+設置区画番号)に基づいて、カードをセットした入室者が管理対象区画2−1への入室が許可されている者か否かを判定し、入室が許可されている者であればカードリーダ1−1へその旨を知らせ、入室の許可表示を行うとともに、電気錠(図示せず)を解錠し、管理対象区画2−1へのドアを開く。管理対象区画2−2,2−3への入室も同様にして行われる。
【0021】
入退室管理装置3には、入退室管理システム100において発行されているカード毎に、そのカードに書き込まれている識別情報(個人ID)に対応付けて、そのカードが割り当てられている人(来訪者も含む)の氏名や連絡先などの登録情報、入室が許可された管理対象区画の区画番号や区画名などの許可区画情報などが記憶されており、これらの登録情報および許可区画情報と合わせてその人が現在入室している管理対象区画の区画番号や区画名、その人が最後に操作したカードリーダの操作時刻(最終操作時刻)などの情報が入退室者の管理情報として記憶される。
【0022】
この入退室管理システム100は既存のシステムであり、この入退室管理システム100の通信ライン4に点呼装置5を接続することによって、また通信ライン4に地震計・火災報知器などの災害信号発生装置6を接続することによって、本実施の形態の点呼システム200が構成されている。
【0023】
点呼装置5は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現されている。点呼装置5は、
図2にその機能ブロック図を示ように、災害発生信号受信部51と、点呼リスト作成部52と、操作情報取得部53と、点呼リスト更新部54と、点呼リスト出力部55とを備えている。
【0024】
この点呼装置5において、災害発生信号受信部51は、災害信号発生装置6からの災害が発生したことを知らせる災害発生信号を受信し、その受信した災害発生信号を点呼リスト作成部52に送る。
【0025】
点呼リスト作成部52は、災害発生信号受信部51からの災害発生信号を受けて、入退室管理装置3が管理している入退室者の管理情報および操作情報取得部53にアクセスし、災害発生信号の受信時点における施設内の在場者/退場者のリストを点呼リストとして作成する。
【0026】
操作情報取得部53は、点呼リスト作成部52からのアクセスを受けて、災害発生信号の受信時点以降のカードリーダ1からから送られてくる操作情報(個人ID+設置区画番号)を取得し、その取得した操作情報を点呼リスト作成部52からの要求に応じて出力する。
【0027】
点呼リスト更新部54は、点呼リスト作成部52を定期的に起動して、点呼リスト(災害発生信号の受信時点における在場者/退場者のリスト)を更新する。この点呼リストの更新に際し、点呼リスト作成部52は、操作情報取得部53が取得したカードリーダ1からの操作情報を利用する。点呼リスト出力部55は、点呼リスト作成部52から点呼リスト(更新された最新の点呼リスト)取得し、要求に応じて出力する。
【0028】
以下、
図3に示すフローチャートを参照して、点呼装置51における各部の処理動作について具体的に説明する。
【0029】
災害発生信号受信部51は、災害信号発生装置6からの災害が発生したことを知らせる災害発生信号を受信すると(ステップS101のYES)、その受信した災害発生信号を点呼リスト作成部52に送る。
【0030】
点呼リスト作成部52は、災害発生信号受信部51からの災害発生信号を受けて、災害発生信号の受信時点の時刻を災害発生時刻として記録すると共に(ステップS102)、入退室管理装置3が管理している入退室者の管理情報および操作情報取得部53にアクセスし、個人ID、氏名、連絡先、現在入室している管理対象区画の区画番号や区画名、カードリーダの最終操作時刻などの情報およびカードリーダの操作情報を取得し、災害発生信号の受信時点における在場者/退場者のリストを点呼リストとして作成する(ステップS103)。
【0031】
図4にステップS103で作成される点呼リスト(災害発生信号の受信時点における在場者/退場者のリスト)の一例を示す。この点呼リストには、そのリストを構成する項目として、「個人ID」、「氏名」、「連絡先」、「現在区画(区画番号(Partition No)+区画名(Partition Name))」、「最終操作時刻(Last Access Time)」、「安否確認(CHECK)」の各項目が設けられている。
【0032】
この点呼リストは、施設内にいる人(在場者)、施設内にいない人(退場者)および施設内にいる来訪者(在場者)も含め、入退室管理システム100においてカードを発行している全員を対象としている。また、この点呼リストには、ステップS102で記録した災害発生時刻が付される。
【0033】
この点呼リストにおいて、「現在区画」として具体的な「区画番号」と「区画名」が記されている人は在場者であり、その「安否確認」の項目は「未確認」とされている。また、「現在区画」として「区画番号」が「0」で「区画名」が「監視区画外」とされている人は退場者であり、その「安否確認」の項目が「退場」とされている。また、「最終操作時刻」には、その人が最後に操作したカードリーダの操作時刻が書き込まれている。
【0034】
点呼リスト更新部54は、所定時間経過する毎に(ステップS100のYES)、点呼リスト作成部52を起動する。すなわち、点呼リスト作成部52を定期的に起動し、点呼リスト作成部52で作成されている点呼リスト(災害発生信号の受信時点における在場者/退場者のリスト)を更新させる(ステップS104)。
【0035】
このステップS104での点呼リストの更新は次のようにして行われる。点呼リスト作成部52は、操作情報取得部53を介して、カードリーダ1から送られてきた操作情報(ステップS100で所定時間経過するまでの間に送られてきた操作情報)を取得する。そして、この取得した操作情報に基づいて、現在作成されている点呼リストを更新し、最新の点呼リストとする。
【0036】
図5にステップS104で更新された最新の点呼リストを例示する。この例は、災害発生後、ステップS100で所定時間が経過するまでの間に、施設内に残された「山田一郎」さんと「田中次郎」さんが安全を確保し、最寄りのカードリーダ1に自己が所持しているカードをセットした場合(点呼操作した場合)を示している。
【0037】
例えば、
図1において、管理対象区画2−3内に在場者M1として「山田一郎」さんが残され、在場者M2として「田中次郎」さんが残されたとする。この場合、在場者M1,M2は、安全を確保したら、最寄りのカードリーダ1−3に自己が所持しているカードをセットし、そのカードに書き込まれている識別情報を読み取らせる。なお、どの場所のカードリーダ1を操作してもよいが、ここでは、現在いる場所に一番近いカードリーダ1−3を操作するようにしている。
【0038】
すると、カードリーダ1−3は、その読み取った識別情報(個人ID)とカードリーダ1−3の固有情報(設置区画番号)とを操作情報とし、通信ライン4を介して点呼装置5へ送る。この場合、カードリーダ1−3は、個人ID「2」と設置区画番号「103」との対を在場者M1からの操作情報として点呼装置5へ送り、個人ID「3」と設置区画番号「103」との対を在場者M2からの操作情報として点呼装置5へ送る。
【0039】
点呼装置5において、操作情報取得部53は、カードリーダ1−3から送られてくる在場者M1およびM2からの操作情報を取得する。点呼リスト更新部54は、ステップS100での所定時間経過後、点呼リスト作成部52を起動する。これにより、点呼リスト作成部52は、操作情報取得部53が取得した在場者M1およびM2からの操作情報を取り込み、災害発生後に作成された点呼リストを更新する。
【0040】
この場合、点呼リスト作成部52は、在場者M1からの操作情報から、個人ID「2」で示される「山田一郎」さんを在場者M1として特定し、この特定した「山田一郎」さんの「安否確認」の項目を「未確認」から「確認済み」とする。また、在場者M1からの操作情報から、設置区画番号「103」で示される区画を「山田一郎」さんがいる現在区画とし、「現在区画」の「区画番号」および「区画名」を更新し、「最終操作時刻」の項目に在場者M1からの操作情報を取得した時刻を書き込む。
【0041】
同様にして、点呼リスト更新部54は、在場者M2からの操作情報から、個人ID「3」で示される「田中次郎」さんを在場者M2として特定し、この特定した「田中次郎」さんの「安否確認」の項目を「未確認」から「確認済み」とする。また、在場者M2からの操作情報から、設置区画番号「103」で示される区画を「田中次郎」さんがいる現在区画とし、「現在区画」の「区画番号」および「区画名」を更新し、「最終操作時刻」の項目に在場者M2からの操作情報を取得した時刻を書き込む。
【0042】
なお、特定されなかった在場者については、その「安否確認」の項目を「未確認」のままとする。
図5の例では、個人ID「1」で示される「山武太郎」さんについては、この人からの操作情報を取得していないので、「安否確認」の項目を「未確認」のままとしている。
【0043】
このようにして、点呼リスト作成部52は、ステップS100で所定時間が経過する毎に、点呼リスト更新部54によって起動され、操作情報取得部53がそれまでの間に取得した操作情報に基づいて、点呼リストを更新して行く。すなわち、定周期で点呼リストを更新し、その点呼リストを常に更新された最新の点呼リストとする。なお、この点呼リストには、災害発生時刻と合わせて、更新時刻が付される。
【0044】
点呼責任者は、災害発生後、施設内の在場者の安否確認を行いたい場合、点呼装置5の点呼リスト出力部55に対して出力要求を行う。すると、点呼リスト出力部55は、点呼リストの出力要求を受けて(ステップS105のYES)、点呼リスト作成部52から更新された最新の点呼リストを取り込み、点呼責任者に対して出力する(ステップS106)。例えば、ディスプレイ上に点呼リストを表示させたり、プリンタから点呼リストを打ち出したりする。
【0045】
点呼責任者は、この出力される点呼リストを参照することにより、点呼リストの更新時刻までの在場者の安否確認を行うことができる。すなわち、「安否確認」の項目を見ることにより、「安否確認」の項目が「確認済み」とされていれば、その在場者の安全が確保されていることが分かり、「安否確認」の項目が「未確認」とされていれば、その在場者の安全が
まだ確保されていないことが分かる。また、「安否確認」の項目が「退場」とされていれば、その人が施設内にいなかったことが分かる。
【0046】
また、この点呼リストにおいて、「現在区画」の項目を見ることにより、在場者が施設内のどこにいるかを把握することができる。すなわち、「現在区画」は在場者が最後に操作したカードリーダ1の設置場所を示しており、安否が確認されていない在場者も含めて、その在場者がいるであろう施設内の場所を把握することができる。また、「最終操作時刻」を見ることにより、安全の確保が確認された災害後の時刻や安全が確認されていた災害前の時刻を知ることができる。また、「連絡先」を見ることにより、その連絡先に在場者の安否を知らせることができる。
【0047】
この点呼リストにおいて、「安否確認」の項目中、「未確認」がなくなり、全て「確認済み」となると、全員無事であることを示すことになり、「未確認」があると、安否の確認ができていない人がいることを示すことになる。安否の確認ができていない人がいる場合、「現在区画」を見ることにより、その人がいるであろう大体の場所を特定することができる。これにより、その特定された場所を重点的に捜索するなどして、その人の安否確認を速やかに行うことができるようになる。
【0048】
このようにして、本実施の形態の点呼システム200では、点呼用の機器を所持させることなく、既存の入退室管理システム100を利用して、災害時における施設内にいる在場者の安否確認を行うことが可能となる。
【0049】
すなわち、本実施の形態の点呼システム200では、専用の機器を携帯したり、専用の読取装置を設置することなく、入退室管理システム100で用いられているカードリーダ1やこのカードリーダ1にセットするカードを利用して、災害時における施設内にいる在場者の安否確認を短時間で行うことが可能となる。
【0050】
これにより、緊急時のリスクをできるだけ少なくし、確実でかつ混乱のない安全安心な点呼システムを安価に提供できるようになる。また、大規模な施設ほど入退室用のカードリーダも多く設置されている場合が多く、点呼するための個人情報読取装置が多く存在することになるので、短時間で点呼を行うことが可能となる。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、点呼装置5を入退室管理装置3とは別に設けるようにしたが、入退室管理装置3に点呼装置5の機能を付加するようにしてもよい。すなわち、入退室管理装置3において、点呼リストを作成し、この作成した点呼リストを定期的に更新して行くようにしてもよい。
【0052】
また、上述した実施の形態では、施設内の在場者/退場者のリストを点呼リストとして作成するようにしたが、在場者のリストのみを点呼リストとして作成するようにしてもよい。また、上述した実施の形態では、定期的に点呼リストを更新するようにしたが、カードリーダ1から操作情報が送られてくる毎に点呼リストを更新するようにしてもよい。また、上述した実施の形態では、点呼責任者からの出力要求に応えて点呼リストを出力するようにしたが、予め決められた時間間隔毎に点呼リストを出力するようにしてもよい。
【0053】
また、上述した実施の形態において、入退室管理システム100は、カードリーダ1から識別情報(個人ID)と固有情報(設置区画番号)とを操作情報として入退室管理装置3に送り、入退室管理装置3側で入室が許可されている者か否かの判定を行うようにしたが、入退室管理装置3に記憶されている個人IDなどの登録情報をカードリーダ1へ送り、カードリーダ1側で入室が許可されている者か否かの判定を行わせるようにしてもよい。この場合、カードリーダ1は照合装置として用いられる。この場合も、カードリーダ(照合装置)1から識別情報(個人ID)と固有情報(設置区画番号)とを操作情報として入退室管理装置3に送り、入退室管理装置3側で入退室者の管理情報を管理させるものとする。
【0054】
また、上述した実施の形態では、災害信号発生装置6から災害が発生したこを知らせる災害発生信号が点呼装置5へ自動的に送られるものとしたが、人が手動で入力するようにしてもよい。災害発生信号を手動操作によって送るものとした場合、災害時でなくても、点呼リストを作成させることが可能となる。この場合、その点呼リストを随時更新される在場者のリストとしても使用でき、未退場者の確認にも使用できる。
【0055】
また、上述した実施の形態において、カードリーダ1の代わりに指紋照合装置などを用いてもよい。すなわち、本発明において、個人情報は、カードなどの媒体に書き込まれている情報に限られるものではなく、指紋などの生体情報も含まれるものである。
【0056】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1(1−1〜1−3)…カードリーダ、2(2−1〜2−3)…管理対象区画、3…入退室管理装置、4…通信ライン、5…点呼装置、6…災害信号発生装置、51…災害発生信号受信部、52…点呼リスト作成部、53…操作情報取得部、54…点呼リスト更新部、55…点呼リスト出力部、100…入退室管理システム、200…点呼システム。