【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、経済産業省、「戦略的基盤技術高度化支援事業」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シクロデキストリンがα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項1に記載のソホロリピッド粉末。
【背景技術】
【0002】
生物由来の界面活性剤であるバイオサーファクタントの一つとして知られるソホロリピッドは、酵母の発酵から得られる発酵産物である(非特許文献1)。前記ソホロリピッドは、例えば、グルコースなどの糖類と植物油脂などの炭素源を含む液体培地に酵母を接種し、穏和な温度、圧力条件下で通気・攪拌するだけで容易に生産される。ソホロリピッドは、その生産性及び安全性等の高さから、洗剤、医薬品、化粧品及び食品等、様々な分野での適用が試みられている(特許文献1)。
【0003】
発酵後の酵母から分離した天然型ソホロリピッドは、通常、常温で粘調な液体であり、酸型及びラクトン型の混合物として得られる。この天然型ソホロリピッドを経口で摂取した場合、例えば、腸管でのタンパク質吸収を促進する等の効果が期待できる。しかしながら、前記天然型ソホロリピッドを常温で保存すると、液中のラクトン型ソホロリピッドが分解し、組成及び液性が安定しないという問題点があり、タンパク質吸収促進効果も低下するおそれがあった。
【0004】
そこで、本発明者らは、安定したソホロリピッドを得るため、天然型ソホロリピッドの粉末化を試みたが、粘調なソホロリピッドを粉末化することは困難であった。また、凍結乾燥を試みても、凍結乾燥後のソホロリピッドは潮解性を示し、ラクトン型の分解も抑制されず、安定なソホロリピッド粉末は得られていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ラクトン型ソホロリピッドを含有するソホロリピッド粉末であって、該ラクトン型ソホロリピッドの分解が抑制され、経時安定性を有するソホロリピッド粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、驚くべきことに、天然型ソホロリピッド含有液にシクロデキストリンを添加して乾燥を行ったところ、安定なソホロリピッド粉末が得られることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1]ラクトン型ソホロリピッド及びシクロデキストリンを含有することを特徴とするラクトン型ソホロリピッドの分解が抑制されたソホロリピッド粉末。
[2]前記シクロデキストリンがα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする前記[1]に記載のソホロリピッド粉末。
[3]シクロデキストリンの含有量が50質量%〜99質量%であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載のソホロリピッド粉末。
[4]ラクトン型ソホロリピッドの含有量が1質量%〜50質量%であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のソホロリピッド粉末。
[5]ラクトン型ソホロリピッド及びシクロデキストリンを含有する混合液を粉末化する工程を有することを特徴とするソホロリピッド粉末の製造方法。
[6]前記粉末化の工程が凍結乾燥及び噴霧乾燥であることを特徴とする前記[5]に記載のソホロリピッド粉末の製造方法。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の粉末を含有する粉末組成物を打錠して得られることを特徴とする錠剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のソホロリピッド粉末は、含有されるラクトン型ソホロリピッドの分解が抑制され、経時安定性を有する。さらに、本発明の粉末は、保存中の潮解が起こりにくく、固結が発生しにくいため、長期保存に適する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ソホロリピッドとは、ソホロース又はヒドロキシル基が一部アセチル化したソホロースと、ヒドロキシル脂肪酸とからなる糖脂質である。なお、ソホロースとは、β1→2結合した2分子のブドウ糖からなる糖である。ヒドロキシル脂肪酸とは、ヒドロキシル基を有する脂肪酸である。また、ソホロリピッドは、ヒドロキシ脂肪酸のカルボキシル基が遊離した酸型(一般式(1))と、分子内のソホロースが結合したラクトン型(一般式(2))とに大別される。酵母の発酵によって得られるソホロリピッドには、一般式(1)と一般式(2)の混合物であり、脂肪酸鎖長(R
3)が異なるもの、ソホロースの6’(R
2)及び6”位(R
1)がアセチル化あるいはプロトン化されたもの等、30種以上の構造同族体の集合体として得られるものがある。
【0014】
前記一般式(1)又は(2)において、R
0は水素あるいはメチル基のいずれかである。R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素又はアセチル基である。R
3は飽和脂肪族炭化水素鎖又は二重結合を少なくとも一個有する不飽和脂肪族炭化水素鎖であり、一以上の置換基を有していても良い。該置換基は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、ハロゲン、水酸基、低級(C
1〜6)アルキル基、ハロ低級(C
1〜6)アルキル基、ヒドロキシ低級(C
1〜6)アルキル基、ハロ低級(C
1〜6)アルコキシ基等が挙げられる。また、R
3の炭素数は、通常11〜20、好ましくは13〜17、より好ましくは14〜16である。
【0015】
本発明のソホロリピッド粉末は、前記一般式(2)で示されるラクトン型ソホロリピッド及びシクロデキストリンを含有することを特徴とする。前記シクロデキストリンとしては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン及びこれらの誘導体から選ばれる1以上が用いられる。前記誘導体としては、例えば、分岐シクロデキストリン並びにメチル基、ヒドロキシプロピル基及びアセチル基等の置換基を有するシクロデキストリン等が挙げられる。前記シクロデキストリンのうち、特に、保存安定性の点から、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン等が好ましく挙げられる。
【0016】
本発明のソホロリピッド粉末におけるシクロデキストリンの含有量は特に限定されないが、ラクトン型ソホロリピッドの分解が抑制され、かつソホロリピッドの生理活性が有効に発揮されうる等の点から、約50質量%〜99質量%であることが好ましく、約80質量%〜95質量%であることがより好ましい。また、本発明のソホロリピッド粉末におけるソホロリピッドの含有量は、潮解が生じない等、保存安定性の点から、シクロデキストリン100質量部に対し、約1質量部〜120質量部であることが好ましく、約1質量部〜80質量部であることがより好ましく、約20質量部〜80質量部であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明のソホロリピッド粉末におけるラクトン型ソホロリピッドの含有量は、特に限定されないが、加工適正および粉末性状等から、約1質量%〜50質量%であることが好ましく、約5質量%〜20質量%であることがより好ましい。ただし、前記含有量は、ソホロリピッド粉末を製造した直後(例えば、約1時間以内)に測定したものとする。本発明のソホロリピッド粉末においては、ラクトン型ソホロリピッドの分解が抑制されており、従来品と比較して、製造時から一定時間が経過した時点でのラクトン型ソホロリピッドの残存率が高い。
【0018】
ラクトン型ソホロリピッド及びシクロデキストリンを含有する混合液を粉末化する工程を有するソホロリピッド粉末の製造方法も、本発明に包含される。前記混合液は、ラクトン型ソホロリピッドを含有するソホロリピッド含有液及びシクロデキストリンを有するものであれば特に限定されず、本発明の効果を妨げない範囲において、その余の成分を含んでいてもよい。
【0019】
前記ソホロリピッド含有液としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、天然型ソホロリピッド含有液でもよく、天然型ソホロリピッドからラクトン型のみを分離したものであってもよいが、コスト等の面からは、天然型ソホロリピッド含有液を用いることが好ましい。ここで、天然型ソホロリピッドとは、酵母を培養して得られた培養液からソホロリピッドを含む成分を分離したものを指し、通常、酸型ソホロリピッド及びラクトン型ソホロリピッド等の混合物である。
【0020】
前記酵母としては、例えば、Starmerella(Candida) bombicola、C.apicola、C.petrophilum、Rhodotorula(Candia) bogoriensis、C. batistae、C.gropengiesseri、Wickerhamiella domercqiae及びYarrowia lipolytica等が挙げられ、これらの酵母を公知の方法で培養することにより、ソホロリピッドが産生される。前記酵母は、保存機関から分譲された菌株又はその継代培養によって得られた菌株であってもよい。ここで、Rhodotorula(Candia) bogoriensis NRCC9862が生産するソホロリピッドは、13−[(2’−O−β−D−glucopyranosyl−β−D−glucopyranosyl)oxy] docosanoic acid6’, 6’’−diacetateであり、アルキル基の中央のヒドロキシル基とソホロースがグリコシド結合している。このソホロリピッドは前記一般式(1)及び(2)とは異なるが、ソホロースとヒドロキシル脂肪酸から構成される点では同じであり、本発明においてはそのような化合物もソホロリピッドに包含される。
【0021】
ソホロリピッド産生のための酵母の培養方法としては、例えば、高濃度の糖と疎水性の油性基質を同時に与えて培養する方法等が好ましく挙げられる。又は、これに限らず、本発明の効果を妨げない限り広く公知の方法を適用できる。前記公知の方法は、特開2002−045195号公報等に記載されたものであってもよい。具体的には、糖としてグルコース、疎水性の油性基質として脂肪酸と植物油からなる炭素源を用いて、Starmerella (Candida) bombicolaを生産酵母として培養する手法であってもよい。
【0022】
培地組成は、特に限定されないが、ソホロリピッドの脂肪酸部分は、与える疎水性基質の脂肪酸鎖長やその割合に依存することが知られており、ある程度の制御が可能である。疎水性基質としては、例えば、オレイン酸又はオレイン酸を高い割合で含有する脂質が好適である。そのような脂質としては、例えば、パーム油、米ぬか油、ナタネ油、オリーブ油、サフラワー油等の植物油、及び豚脂や牛脂等の動物油等が挙げられる。さらに、疎水性基質にトリグリセライドとオレイン酸の混合基質を用いれば、高い割合でオレイン酸を含むソホロリピッドを高い収量・収率で得ることが可能である。産業利用の観点からは、安定に高い収量・収率でソホロリピッドを発酵生産することが求められるが、この場合、炭素源として親水性の糖と疎水性の油脂を混合したものが好ましい。親水性基質としては、グルコースが多用される。
【0023】
得られた培養液から、例えば遠心分離、デカンテーション等の方法で分離後、水洗いすることにより、天然型ソホロリピッド含有液が回収される。前記培養液から天然型ソホロリピッド含有液を回収する方法は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、例えば、特開2003−9896号公報等に記載されたものであってもよい。具体的には、精製プロセスでは、培養終了液中で沈殿するソホロリピッドのpHを変更することで、その水への溶解性を制御し、有機溶剤を一切使用することなく、約50%含水物として天然型ソホロリピッド粗精製物を得ることができる。
【0024】
天然型ソホロリピッドからラクトン型ソホロリピッドのみを分離して用いる場合の分離方法としては、特に限定されず、例えば、クロマトグラフィー分離、再結晶法等の方法が挙げられる。
【0025】
粉末化に供するための前記混合液において、ソホロリピッド(酸型及びラクトン型)の濃度は、粉末化が容易である等の点から、約0.5質量%〜50質量%であることが好ましく、約5質量%〜35質量%であることがより好ましい。シクロデキストリンの濃度は、約25質量%〜99質量%であることが好ましく、約30質量%〜70質量%であることがより好ましい。また、前記混合液の粘度は、粉末化が容易である等の点から、約5〜50mPa・Sであることが好ましく、約5〜20mPa・Sであることがより好ましい。前記濃度範囲又は粘度範囲に調節するため、前記混合液は、水、エタノール、メタノール及びグリセリン等の溶媒又は分散媒等で希釈されていてもよく、人体及び環境等に対する悪影響が低減されることから、エタノール又は精製水で希釈されることが特に好ましい。前記混合液のpHは、ラクトン型ソホロリピッドの分解抑制等の点から、pH5〜9程度に調節されることが好ましく、pH6〜8程度がより好ましく、pH6.5〜7.5程度が最も好ましい。pH調整剤は特に限定されず、炭酸水素ナトリウム等公知のpH調整剤を用いることができる。
【0026】
前記混合液を粉末化する方法としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、例えば、凍結乾燥法、再結晶法及びスプレードライ法等の公知の方法が用いられ、特に、生産の効率性の面で、凍結乾燥法及び噴霧乾燥法等が好ましく用いられ、最も好ましくは、噴霧乾燥法等である。混合液の作製から粉末化までの時間は、ラクトン型ソホロリピッドの分解を防ぐため、約2週間以内であることが好ましく、約24時間以内であることがより好ましい。
【0027】
本発明のソホロリピッド粉末の平均粒径は、特に限定されないが、体内での吸収性等の点から、約300μm以下であることが好ましく、約200μm以下であることがより好ましい。ここで、前記平均粒径とは、ふるい分け法によって測定した粒度分布の積算重量が50重量%に到達する粒径で定義される。
【0028】
本発明のソホロリピッド粉末は、安定性をより増すため、所望によりコーティング層を有していてもよい。前記コーティング層としては、酵母細胞壁、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ドロマイト、乳酸カルシウム及びクエン酸カルシウム、メタクリル酸メチルとメタクリル酸の共重合体、アクリル酸エチルとメタクリル酸の共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート及びシェラック等から選ばれる1以上のコーティング材を有する層であることが好ましく、腸溶性を有する点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート及びシェラック等が特に好ましい。前記コーティング材には、さらに可塑剤を添加してもよい。可塑剤としては、例えばトリアセチン、マクロゴール400、クエン酸トリエチル、Tween80、ヒマシ油及び中鎖脂肪酸等が用いられる。コーティング方法は特に限定されないが、簡便性等の点から、微粒子コーティング装置を用いて溶液又は分散液等を噴霧することが好ましい。前記溶液又は分散液の濃度は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、0.5%〜30%程度が好ましく、1%〜10%程度がより好ましい。溶媒又は分散媒としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、水、エタノール、及びグリセリン等が挙げられるが、溶解性の点から、エタノール等を用いることが特に好ましい。
【0029】
本発明のソホロリピッド粉末を経口投与する場合は、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤及びカプセル剤等の固型製剤としてもよく、シロップ剤等の液剤としてもよいが、保存安定性の点から、散剤及び錠剤等が特に好ましく、経口摂取における簡便性、取扱いの容易性等の点から、前記粉末組成物を打錠して得られる錠剤等が最も好ましい。本発明のソホロリピッド粉末を含有する粉末組成物を打錠して得られる錠剤等も、本発明に包含される。これらの製剤を製造する場合には、その製剤形態に応じた担体又は添加剤を使用することができる。また、前記製剤には、本発明のソホロリピッド含有粉末組成物以外に、その他の有効成分が含有されていてもよい。
【0030】
前記担体又は添加剤としては、例えば、賦形剤(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カルシウム、カルボキシメチルセルロース、乳糖、デキストリン、コーンスターチ、結晶セルロース、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸及びリン酸カリウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、精製タルク及びポリエチレングリコール等)、崩壊剤(カルボキシメチルセルロースカルシウム、無水リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム及び炭酸カルシウム等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム液、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びポリビニルピロリドン等)、溶解補助剤(アラビアゴム及びポリソルベート80等)、吸収促進剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)、緩衝剤(リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液及びトリス緩衝液等)、保存剤(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等)、増粘剤(プロピレングリコール、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリエチレングリコール等)、安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸及びジブチルヒドロキシトルエン等)、pH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸及び酢酸等)等を挙げることができる。
【実施例】
【0031】
(製造例1)
培養培地として、1L当たり、グルコース10g(日本食品化工社製、製品名:日食含水結晶ブドウ糖)、ペプトン5g(オリエンタル酵母社製)、酵母エキス3g(アサヒフードアンドヘルスケア社製、製品名:ミーストパウダーN)、麦芽エキス3g(日本バイオコン社製、製品名:マルタックス10)を含有する液体培地を使用し、30℃で2日間、Candida bombicola ATCC22214を振盪培養し前培養液とした。本培養培地の組成としては、1L当たり、グルコース100g、パーム油100g(山桂産業社製)、塩化アンモニウム3g、リン酸水素カリウム1g、硫酸マグネシウム5g、酵母エキス5g、尿素1gを用いた。5L容量の発酵槽に3Lの本培養培地を仕込み、滅菌前のpHは4〜5に合わせた。仕込み量に対し0.4%植菌し、30℃、6日間通気量1vvmの条件下で発酵した。培養開始7日目後に発酵を停止させ、発酵槽から取り出した培養液を静置することで、沈降したソホロリピッドを分取し、天然型ソホロリピッド含有液(約50%含水物、製造例品1)を得た。
【0032】
(実施例1)
製造例1で得られた天然型ソホロリピッド含有液50gに水25gを加えて攪拌した。炭酸水素ナトリウムを加えてpHを7.0に調整し、水を加えて100gとして、中性天然型ソホロリピッド含有希釈液を得た。β−シクロデキストリン(CAVAMAX(R) W7 Food シクロケム)50gに中性天然型ソホロリピッド含有希釈液60gを添加した。よく混合した後、凍結乾燥機(タイテック製 VD-800R)を使用して凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き710μmのメッシュを通してソホロリピッド粉末を得た。
(実施例2)
製造例1で得られた天然型ソホロリピッド含有液50gに水25gを加えて攪拌した。炭酸水素ナトリウムを加えてpHを7.0に調整し、水を加えて100gとして、中性天然型ソホロリピッド含有希釈液を得た。β−シクロデキストリン(CAVAMAX(R) W7 Food シクロケム)100gに中性天然型ソホロリピッド含有希釈液120gを添加し、さらに水を220g加えて希釈した。よく攪拌した後、スプレードライヤー(坂本技研製 R-3K)を使用して噴霧乾燥を行い、ソホロリピッド粉末を得た。
【0033】
(実施例3)
製造例1で得られた天然型ソホロリピッド含有液50gに水25gを加えて攪拌した。炭酸水素ナトリウムを加えてpHを7.0に調整し、水を加えて100gとして、中性天然型ソホロリピッド含有希釈液を得た。α−シクロデキストリン(α−100 塩水港精糖)50gに中性天然型ソホロリピッド含有希釈液60gを添加した。よく混合した後、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き710μmのメッシュを通してソホロリピッド粉末を得た。
【0034】
(実施例4)
製造例1で得られた天然型ソホロリピッド含有液50gに水25gを加えて攪拌した。炭酸水素ナトリウムを加えてpHを7.0に調整し、水を加えて100gとして、中性天然型ソホロリピッド含有希釈液を得た。γ−シクロデキストリン(γ−100 塩水港精糖)50gに中性天然型ソホロリピッド含有希釈液60gを添加した。よく混合した後、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き710μmのメッシュを通してソホロリピッド粉末を得た。
【0035】
(実施例5)
β−シクロデキストリン50gに製造例1で得られた天然型ソホロリピッド含有液30gを添加した。よく混合した後、凍結乾燥を行った。得られた乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き710μmのメッシュを通してソホロリピッド粉末を得た。
【0036】
(実施例6)
実施例1で得られた天然型ソホロリピッド粉末65g、結晶セルロース(旭化成 セオラス FD101)33g及びステアリン酸カルシウム(日油製 オーラブライトCA-65)2gを混合し、自動運転による打錠を行ったところ、欠陥のない錠剤が得られた。打錠には、ロータリー式打錠機(菊水製作所 VIRGO 0512SS2AY-000-B00)を用いた。
【0037】
(実施例7)
天然型ソホロリピッド粉末65gと結晶セルロース(旭化成 セオラス FD101)18g、ステアリン酸カルシウム(日油製 オーラブライトCA-65)2g及びラクトフェリン(森永乳業製 MLF-1)15gを混合し、実施例5と同様に自動運転による打錠を行ったところ、欠陥のない錠剤が得られた。
【0038】
(比較例1)
製造例1で得られた天然型ソホロリピッド含有液50gに水25gを加えて攪拌した。炭酸水素ナトリウムを加えてpHを7.0に調整し、水を加えて100gとして、中性天然型ソホロリピッド含有希釈液を得た。中性天然型ソホロリピッド含有希釈液60gと多孔質デンプン50gを均一に攪拌後、凍結乾燥を行った。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き710μmのメッシュを通してソホロリピッド粉末を得た。
【0039】
(比較例2)
製造例1で得られた天然型ソホロリピッド含有液30gと多孔質デンプン50gを均一に攪拌後、凍結乾燥を行った。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き710μmのメッシュを通してソホロリピッド粉末を得た。
【0040】
(比較例3)
天然型ソホロリピッド20gを凍結乾燥した。得られた泡状乾燥物を乳鉢で破砕し、茶褐色のソホロリピッド粉末を得た。
【0041】
(比較例4)
実施例1で得られた中性天然型ソホロリピッド含有希釈液20gを凍結乾燥した。得られた泡状乾燥物を乳鉢で破砕し、茶褐色のソホロリピッド粉末を得た。
【0042】
(比較例5)
流動層造粒装置を用いて多孔質デンプン(ロンフードOWP 日澱化学)200gに天然型ソホロリピッド(エタノールで5%天然型ソホロリピッドに希釈)を噴霧し、造粒を試みた。多孔質デンプン自体の流動性は良好であったが、噴霧直後から球状の塊が生じ、流動性が悪く造粒は困難であった。
【0043】
(比較例6)
微粒子コーティング装置を用いて多孔質デンプンに(ロンフードOWP 日澱化学)200gに天然型ソホロリピッド(エタノールで5%天然型ソホロリピッドに希釈)を噴霧し、コーティングを試みた。微粒子コーティングユニットに粉が付着し、コーティングは困難であった。
【0044】
(比較例7)
流動層造粒装置を用いてβ−シクロデキストリン(CAVAMAX(R) W7 Food シクロケム)200gに天然型ソホロリピッド(エタノールで5%天然型ソホロリピッドに希釈)を噴霧した。多孔質デンプン自体の流動性は良好であったが、噴霧直後から球状の塊が生じ、流動性が悪く造粒は困難であった。
【0045】
(比較例8)
微粒子コーティング装置を用いてβ−シクロデキストリン(CAVAMAX(R) W7 Food シクロケム)200gに天然型ソホロリピッド(エタノールで5%天然型ソホロリピッドに希釈)を噴霧した。微粒子コーティングユニットに粉が付着し、コーティングは困難であった。
【0046】
(試験例1)
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた天然型ソホロリピッド粉末を50℃、湿度45%RHで24時間放置し、粉末の固結発生状態(流動性)を確認して潮解の有無を判断した。判断基準は、710μmのメッシュを通過した場合を○(潮解なし)、メッシュ上にダマが残った場合を×(潮解あり)とした。シクロデキストリンを用いた場合、流動性が維持されており、潮解が生じていないと判断された。結果を下表に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
(試験例2)
実施例1、比較例1及び比較例4の粉末を、50℃で1ヶ月保存した試料を用い、ラクトン型ソホロリピッド含量の安定性について比較試験を行った。アニオン交換カラム(Nagel社Nuc−eosil100−5SB充填,φ4.6×250mm)を用いて0.2w/v% NaClO
4メタノール溶液を移動相とし、HPLCを用いて天然型ソホロリピッドの含有量を比較した。検出は205nmで行った。実施例1の粉末を1ヶ月保存したものにおけるラクトン型ソホロリピッド含有量を1としたときの、他条件でのラクトン型ソホロリピッドの含有量の比を下表に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
シクロデキストリンとともに粉末化した天然型ソホロリピッドの主成分であるラクトン型ソホロリピッドは、多孔質デンプンとともに粉末化した場合や天然型ソホロリピッド単独を凍結乾燥したものと比べて50℃での分解が抑制されていると考えられる。