(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミニウム基材と、当該アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した下地塗膜と、当該下地塗膜上に形成した親水性有機塗膜とを含むアルミニウム塗装材であって、
前記下地塗膜がビスフェノールAエポキシ樹脂を含有し、その塗膜量が0.3〜7.5g/m2であり、
前記親水性有機塗膜がシリカ成分を含有せず、セルロース系樹脂、ならびに、リン酸エステル及びその塩の少なくとも一方を含有し、その塗膜量が0.1〜2.5g/m2であり、親水性有機塗膜中のセルロース系樹脂の含有量が50〜97重量%であり、親水性有機塗膜中のリン酸エステル及びその塩の少なくとも一方の含有量が3〜10重量%であり、
前記親水性有機塗膜の深さ方向におけるリンの最大濃度が、親水性有機塗膜全体におけるリンの平均濃度の1.0倍を超え2.5倍以下であり、
前記親水性有機塗膜の深さ方向においてリン濃度が最大となる位置が、当該親水性有機塗膜の最表面からその塗膜厚の1/10の深さの位置より下地塗膜側に存在することを特徴とするアルミニウム塗装材。
【背景技術】
【0002】
金属材料の表面は親水性に乏しいため、熱交換器のフィン材や印刷用の平板印刷版材には、表面に親水性皮膜が被覆されたものが使用されている。以下、空調機を例に挙げて、その熱交換器のフィンについて述べることとする。
【0003】
最近の空調機用熱交換器は、軽量化のために熱効率の向上とコンパクト化が要求され、フィン間隔をでき得る限り狭くする設計が取り入れられている。冬季の外気温度が低い場合に長時間に渡って暖房運転を実施すると、室外機のアルミニウムフィンの表面に空気中の水分が氷結して霜を形成し、フィン間の空気の流れが妨げられる場合がある。このように着霜した状態が続くと、通風抵抗が増加して暖房能力が低下するため、暖房運転を中止してフィン表面に付着した霜を取り除く必要がある。除霜運転では室外熱交換器に高温の冷媒を流通させて霜を融解させることにより、フィン間の霜が取り除かれる。この除霜運転の間に室内機の冷媒温度が低下してしまい、暖房運転ができない状態となる。このように、除霜運転のために本来の暖房運転ができなくなり、エネルギー効率も悪化する。そのため、フィン表面に付着した霜を迅速に除去する必要がある。
【0004】
フィン表面の霜を迅速に除去するための方法として、(1)アルミニウムフィン表面に高親水性皮膜を形成し、融解した霜を流下せしめる方法;(2)アルミニウムフィン表面に撥水性皮膜を形成し、霜を表面に付着させないようにする方法;が考えられる。しかしながら、(2)の方法は、現時点では撥水性を長期間にわたって維持することが困難であること、成形時に使用する油分もはじいてしまうことなど、実際には極めて困難である。これに対して(1)の方法は、親水性を得るために表面に皮膜を形成するものであり、このような高親水性塗膜によってアルミニウムフィン表面に形成される霜を迅速に除去可能である。
【0005】
従来から、親水性塗膜の形成方法が種々提案され、実用化されている。例えば、接着剤とセルロース粉末との混合層を形成する方法(下記特許文献1);ポリビニルアルコールと、重合度が異なる2種類のポリビニルピロリドンと、水可溶性ナイロンと、水可溶性フェノール樹脂と、非イオン系界面活性剤と、特定の抗菌剤とを含む親水化処理剤を用いる方法(下記特許文献2)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、一般的なセルロース系樹脂やポリビニルアルコール系樹脂等によって構成される有機系親水性皮膜では、大気中に漂っている汚染物が皮膜表面に付着することによって、親水持続性を維持することや耐汚染性を付与することが困難であるという問題があった。
【0007】
また、より過酷な環境である塩害地等で使用されると、更なる耐食性の向上が必要となる。このように高度な耐食性を付与するには、耐食性皮膜の膜厚を厚くする必要がある。しかしながら、従来のクロメート皮膜等の化成皮膜は薄膜であるため、化成皮膜の一部に微小な欠陥部が発生し、長期に亘る試験においてその欠陥部を起点とした腐食の発生が防止できない。また、塗膜成形時において化成皮膜の欠陥部が更に増大し、腐食の発生を拡大することになる。そこで、高度の耐食性を得るためには化成皮膜の欠陥部をなくすことが必要となり、下地塗膜の厚膜化が必至となる。しかしながら、クロメート皮膜等の化成皮膜では厚膜化は不可能であるため、高度の耐食性を付与することができないという問題があった。
【0008】
耐食性皮膜として有機樹脂を適用することにより厚膜化が容易となり、十分な耐食性を保持することが可能となる。例えば、アルミニウム材の表面に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上の耐食性層を設け、その表面に親水性層を設けたアルミニウム材(下記特許文献3)等が提案されている。しかしながら、このようなアルミニウム材では、長期間に亘る使用環境下において、耐食性層に用いた有機樹脂成分の一部が親水性層に溶出してしまい、親水性や耐汚染性を阻害し親水持続性を確保できない問題があった。
【0009】
そこで、耐食性皮膜としてアルミニウム基材に水溶性アクリル樹脂又は水溶性ウレタン樹脂からなる耐食性皮膜を形成し、この耐食性皮膜上に水溶性セルロース樹脂、メラミン樹脂、シリカ成分、スルホコハク酸、リン酸エステル中和物からなる被覆層を設けた、親水性及び耐食性に優れるアルミニウム塗装材(下記特許文献4)等が提案されている。しかしながら、このようなアルミニウム塗装材では、親水性は向上するものの塗膜中に硬質なシリカ成分を含有するため、長時間に亘る連続成形の実施により、使用する工具(金型)がシリカ成分によって表面磨耗し、成形不具合の原因となる問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、高度な耐食性を保持するための厚膜化された有機樹脂からなる下地皮膜上に親水性皮膜を形成しても親水持続性を低下することなく、長期に亘る耐汚染性を有し、かつ、塗膜密着性と耐工具磨耗性にも優れるアルミニウム塗装材の開発が望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
アルミニウム塗装材
本発明に係るアルミニウム塗装材は、アルミニウム基材と、このアルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した下地塗膜と、この下地塗膜上に形成した親水性有機塗膜とを構成部材として備える。以下に、各構成部材について詳細に説明する。
【0023】
A.アルミニウム基材
本発明で用いるアルミニウム基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。以下において、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材を、単に「アルミニウム基材」と記す。なお、アルミニウム以外の金属を基材に用いることもできる。また、下地塗膜を形成する前に、アルミニウム基材をアルカリ脱脂液等によって脱脂処理し、次いで水洗するのが好ましい。
【0024】
B.下地塗膜
発明に係るアルミニウム塗装材は、アルミニウム基材の少なくとも一方の表面に形成した下地塗膜を有する。下地塗膜は、アルミニウム基材に後述する親水性有機塗膜との密着性、高度な耐食性、加工時における塗膜追従性等をバランスよく付与するために、ビスフェノールAエポキシ樹脂を主成分として含有する。ビスフェノールAエポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されるものではないが、エマルジョン化が容易で、かつ、これを塗料として用いた際の防食性に優れている点から、150〜3000g/eqであるのが好ましく、160〜1800g/eqであるのが更に好ましい。
【0025】
C.親水性有機塗膜
本発明の親水性有機塗膜は、親水性樹脂成分としてセルロース系樹脂を主成分として含有する。この親水性有機塗膜は、耐工具磨耗性を損なうシリカ成分などの無機化合物(以下、「工具磨耗性の無機化合物」と記す)を含有しないものを使用する必要がある。このような親水性有機塗膜は、アルミニウム基材表面に形成した下地塗膜表面に親水性有機塗膜用の塗料組成物を塗布し、これを加熱することによって形成する。なお、本発明におけるシリカ成分とは、主にSiO
2から構成される物質の総称を示し、例えると、SiO
2からなるケイ酸をゲル化し、乾燥・固化したシリカゲルや、SiO
2やその水和物からなる微粒子がコロイドになっているコロイダルシリカ等が挙げられる。本発明では、これらのシリカ成分を含有しないことを特徴とする。このような親水性有機塗膜用の塗料組成物は、セルロース系樹脂、ならびに、リン酸エステル及びその塩の少なくとも一方を含有する。
【0026】
C−1.セルロース系樹脂
親水性有機塗膜は、セルロース系樹脂を主成分として含有する。これにより、親水性(初期及び持続性)が確保される。なお、セルロース系樹脂に代えてアクリル系樹脂やポリビニルアルコール系樹脂などの親水性樹脂では、下地塗膜成分の溶出によって親水性有機塗膜の親水性は損なわれる。このように、親水性有機塗膜の主成分としてセルロース系樹脂を用いることにより、高耐食性などを発揮する下地塗膜の特性を阻害することなく、親水性有機塗膜としての親水性を維持することが可能となる。
【0027】
本発明において用いるセルロース系樹脂としては、優れた親水性を発揮するためにアルキル基を含有しない水溶性セルロース樹脂が好ましい。アルキル基を含有しない水溶性セルロース樹脂としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が好適に用いられる。
【0028】
本発明に用いるセルロース系樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、5000〜700,000の範囲の重量平均分子量を有しているものが好ましく、10,000〜500,000の範囲の重量平均分子量を有しているものがより好ましい。重量平均分子量が5000未満では耐食性が不足し、700,000を超えると成形後の密着性が劣る場合がある。
【0029】
親水性有機塗膜中におけるセルロース系樹脂の含有量は、50〜97重量%であり、好ましくは70〜80重量%である。セルロース系樹脂の含有量が50重量%未満では、親水性の確保に寄与するセルロース成分が少なくなることにより親水性(初期)が不十分となる。その結果、長期間の使用により、表面に不要成分が露出等することによって親水持続性や耐汚染性の確保が困難になる。一方、上記含有量が97重量%を超えると、親水持続性や耐汚染性に寄与するリン酸エステル及びその塩の少なくとも一方の含有量が減少するため、親水持続性や耐汚染性を十分に満足することができない。
【0030】
C−2.メラミン系樹脂
セルロース系樹脂に加えて、メラミン系樹脂を添加すると親水性や耐汚染性の持続を更に向上させることができる。セルロース系樹脂だけでは、親水性有機塗膜の硬化が不十分となることがあり、このような親水性有機塗膜を水等に浸漬した場合において、親水性有機塗膜自体が溶解してしまい親水性を損なうことがあるからである。このように、本発明では、セルロース系樹脂に加えてメラミン系樹脂を含有させるのが好ましい。これにより、親水性有機塗膜の強度を向上させて結露等による塗膜成分の溶出が抑制抑され、親水性や耐汚染性等の更なる向上を図ることが可能となる。
【0031】
本発明において用いるメラミン系樹脂としては、モノマー又はポリマーのメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(メラミン)、或いは、それらの組み合わせが挙げられる。モノマーメラミンには、トリアジン核(C
3H
3N
3)当たり平均で3個以上のメチロール基(CH
2OH)であって、メタノール、n−ブタノール又はイソブタノールなどのC1〜C5の一価アルコールでエーテル化されたメチロール基を含有し、約2まで、好ましくは約1.1〜約1.8の範囲内の平均縮合度を有するとともに約50重量%以上の単核化学種の割合を有する低分子量メラミンが含まれる。こうした幾つかの好適なモノマーメラミンとしては、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、イソブチル化メラミン及びそれらの混合物などのアルキル化メラミンが挙げられる。その中でもヘキサメチルメトキシメラミンは、親水性有機塗膜製造時の安定性に優れ、かつ、親水持続性等にも優れており、好適に用いられる。
【0032】
メラミン系樹脂の含有量は、親水性有機塗膜中の10〜40重量%とするのが好ましく、15〜25重量%とするのがより好ましい。この含有量が10重量%未満では、親水性有機塗膜の十分な強度を確保することができず、親水性や耐汚染性が得られない場合がある。一方、含有量が40重量%を超えると、セルロース系樹脂の親水性を示す官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等)と結合してしまい、セルロース系樹脂が本来保持する親水性が低下し、親水性や耐汚染性を十分に確保することができない場合がある。
【0033】
C−3.リン酸エステルとその塩
親水性有機塗膜には、セルロース系樹脂及び好ましくはメラミンに加えて、リン酸エステル及びその塩の少なくとも一方を含有させる必要があるが、特にリン酸エステル塩が好適に用いられる。リン酸エステルとその塩は、優れた界面活性作用を発揮するため、親水性有機塗膜における親水性と耐汚染性を向上させることができる。
【0034】
リン酸エステルやその塩は、通常、造膜時において親水性有機塗膜の表面にブリードアウトして塗膜表面に濃縮された状態で存在する。表面に濃縮したリン酸エステルやその塩は、結露等により容易に溶出して親水性の低下を招く場合がある。本発明では、表面にリン酸エステルやその塩を濃縮させることなく親水性有機塗膜内部に存在させるようにした。その結果、結露等による環境下においても、リン酸エステルやその塩の溶出を抑制することにより、親水性有機塗膜の親水性や耐汚染性を向上させることができる。
【0035】
リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル;リン酸トリエステル;或いはその誘導体等が好適に用いられる。また、リン酸エステルの塩としては、特に、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩等が好適に用いられる。これらのリン酸エステルとその塩は、単独で又は2種以上を混合して用いられる。リン酸エステルとしては、リン酸エステルモノエタノールアミンが好ましい。
【0036】
親水性有機塗膜中におけるリン酸エステル及びその塩の少なくとも一方の含有量は、3〜10重量%であり、好ましくは5〜10重量%である。この含有量が3重量%未満では、親水性の効果が十分に得られない。一方、この含有量が10重量%を超えると、親水性の効果が飽和するので経済上好ましくない。
【0037】
C−4.親水性有機塗膜の深さ方向におけるリンの最大濃度と、親水性有機塗膜全体におけるリンの平均濃度との関係
本発明では、親水性有機塗膜の深さ方向におけるリンの最大濃度が、親水性有機塗膜全体におけるリンの平均濃度の1.0倍を超え2.5倍以下であることを必要とする。親水性有機塗膜の深さ方向におけるリンの最大濃度が、親水性有機塗膜全体におけるリンの平均濃度の1.0倍となる場合とは、親水性有機塗膜の深さ方向におけるリンの濃度分布が殆ど無く、親水性有機塗膜全体にリンがほぼ均一に分布している。このような場合には、成形時における潤滑作用へのリンの効果が十分でなく、成形性が低下する。従って、親水性有機塗膜の深さ方向におけるリンの最大濃度が、親水性有機塗膜全体におけるリンの平均濃度の1.0倍を超える必要がある。一方、親水性有機塗膜の深さ方向におけるリンの最大濃度が、親水性有機塗膜全体におけるリンの平均濃度の2.5倍を超えると、リン酸エステル(その塩)の分布に大きな偏りが生じて、親水性の低下をもたらす。本発明においては、親水性有機塗膜の深さ方向におけるリンの最大濃度が、親水性有機塗膜全体におけるリンの平均濃度の1.7〜2.0倍とするのが好ましい。
【0038】
C−5.親水性有機塗膜の深さ方向におけるリン濃度が最大となる位置
通常、リン酸エステルやその塩を樹脂に混合し、これを焼付けて塗膜を形成する場合には、焼付けの初期段階において樹脂が硬化して塗膜形成が始まり、塗膜内部よりも多くのリン酸エステルやその塩が塗膜表面近傍に残存する。その結果、塗膜形成が完了した段階では、リン酸エステルやその塩の塗膜表面近傍における濃度が内部よりも高い状態になる。この場合、塗膜表面に結露水が生成すると、表面近傍のリン酸エステルやその塩が結露水中に溶出し、塗膜全体のリン酸エステルやその塩の含有量が低下して親水性や耐汚染性が低下する場合がある。
【0039】
そこで、塗膜形成が完了した段階において、リン酸エステルやその塩の塗膜表面近傍における濃度が内部よりも高い濃い状態を防止することにより、高濃度状態にある表面近傍のリン酸エステルやその塩の溶出を防いで親水性や耐汚染性が低下するのを抑制することが好ましい。このような状態としては、具体的には、親水性有機塗膜の深さ方向においてリン濃度が最大となる位置を、当該親水性有機塗膜の最表面からその塗膜厚の1/10の深さの位置より下地塗膜側に存在させ、親水性有機塗膜の深さ方向におけるリン濃度に偏りを設けることが有効であることが判明した。このように、親水性有機塗膜の深さ方向においてリン濃度が最大となる位置を、当該親水性有機塗膜の最表面からその塗膜厚の1/10の深さの位置より下地塗膜側に存在させることにより、親水性有機塗膜における親水性の経時劣化をより有効に抑制できる。親水性有機塗膜の深さ方向においてリン濃度が最大となる位置が、当該親水性有機塗膜の最表面からその塗膜厚の1/10の深さの位置から親水性有機塗膜表面側に存在する場合は、リン濃度が最大となる位置付近のリン酸エステルやその塩の溶出を有効に抑制できず、親水性や耐汚染性の低下を防止できない場合がある。
【0040】
C−6.親水性有機塗膜のリン濃度の測定
親水性有機塗膜中のリン濃度の測定方法としては公知の分析方法を使用すればよく、例えば、X線光電子分光分析(XPS)、オージェ電子分光分析(AES)、グロー放電発光分析(GDS)等が用いられる。親水性有機塗膜の膜厚や成分量などに応じて、これらの分析方法を適宜選択して用いればよい。
【0041】
図1は、本発明に係るアルミニウム塗装材の親水性有機塗膜の深さ方向に沿ったリン濃度をリン発光強度としてGDSにより測定した結果の一例である。
図1において、横軸は親水性有機塗膜の深さ方向の位置を表わし、図中の左端が親水性有機塗膜の最表面を示し、図中の右端が親水性有機塗膜の下地塗膜側の裏面を示す。なお、リン濃度は、GDSによるリン発光強度に比例することが分かっている。GDSの測定条件は、アルゴンガスで置換後の圧力600Pa、出力30W、アノード径4mmφでのリン検出波長178nmであった。
【0042】
親水性有機塗膜の深さ方向における最大リン濃度は、リン発光強度で0.31Vとなっている。これに対して、親水性有機塗膜全体における平均リン濃度は、リン発光強度で0.22Vとなっている。このように、親水性有機塗膜の深さ方向における最大リン濃度は、親水性有機塗膜全体における平均リン濃度の1.4倍を示している。また、親水性有機塗膜の深さ方向におけるリン濃度が最大となる位置は、当該親水性有機塗膜の最表面からその塗膜厚の1/4の深さの位置であった。
【0043】
図2は、従来のアルミニウム塗装材の親水性有機塗膜の深さ方向に沿ったリン濃度をリン発光強度としてGDSにより測定した結果の一例である。親水性有機塗膜の深さ方向における最大リン濃度は、リン発光強度で0.73Vとなっている。これに対して、親水性有機塗膜全体における平均リン濃度は、リン発光強度で0.24Vとなっている。このように、親水性有機塗膜の深さ方向における最大リン濃度は、親水性有機塗膜全体における平均リン濃度の3.0倍を示している。また、親水性有機塗膜の深さ方向におけるリン濃度が最大となる位置は、当該親水性有機塗膜の最表面であった。
【0044】
以上のように、アルミニウム塗装材の親水性有機塗膜の深さ方向に沿ったリン濃度を調整することによって、高度な親水性と耐汚染性を抑制することができ、親水性、耐食性、耐汚染性、塗膜密着性、成形性及び耐工具磨耗性に優れたアルミニウム塗装材を得ることが可能となる。
【0045】
C−7.その他の添加剤
本発明の親水性有機塗膜には、必要に応じて、タンニン酸、没食子酸、フイチン酸、ホスフィン酸等の防錆剤;ポリアルコールのアルキルエステル類、ポリエチレンオキサイド縮合物等のレベリング剤;相溶性を損なわない範囲で添加されるポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミド等の充填剤;等を、その目的に応じて適量含有することができる。
【0046】
従来技術においては、親水持続性や耐汚染性の付与するために、シリカ成分などの工具磨耗性の無機化合物を親水性有機塗膜中に含有させていた。しかしながら、本発明では、親水性有機塗膜中に工具磨耗性の無機化合物を含有させないので、プレス加工時に工具の磨耗を著しく低下させることが可能となる。
【0047】
D.アルミニウム塗装材の製造方法
本発明に係るアルミニウム塗装材は、アルミニウム基材に下地塗膜を形成する段階と;当該下地塗膜表面に親水性有機塗膜を形成する段階と;を備える。
【0048】
D−1.下地塗膜
下地塗膜を形成するには、アルミニウム基材表面に下地塗膜用の塗料組成物を塗布し、これを加熱することによって焼付ける。
【0049】
このような塗料組成物は、上述の下地塗膜の主成分であるビスフェノールAエポキシ樹脂、ならびに、必要に応じて上述のC−7と同じ添加剤を、溶媒に溶解、分散させて調製される。このような溶媒には、各成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水等の水性溶媒;アセトン等のケトン系溶剤;エタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル系溶剤及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の一連のグリコールアルキルエーテル系溶剤のエステル化物;等が挙げられ、その中でも水性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。また、塗料組成物中のビスフェノールAエポキシ樹脂の含有量は、塗料組成物が塗布し易い粘度を有するなどの点から5〜40重量%とするのが好ましい。
【0050】
塗料組成物の塗布方法としては、ロールコーター法、ロールスクイズ法、ケミコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法、静電塗装法等の方法が用いられる。塗膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法が好ましい。ロールコーター法としては、塗布量管理が容易なグラビアロール方式や、厚塗りに適したナチュラルコート方式や、塗布面に美的外観を付与するのに適したリバースコート方式等を採用することができる。また、塗膜の乾燥には一般的な加熱法や、誘電加熱法等が用いられる。
【0051】
下地塗膜を焼付けるための材料到達温度は、在炉時間との兼ね合いもあるものの、下地塗膜の焼付けによる形成が開始される百数十℃以上で、かつ、下地塗膜の分解が顕著となる300℃以下であれば良い。本発明では、200〜300℃、好ましくは220〜280℃とする。材料到達温度が200℃未満では、塗膜の架橋反応が進行しない。その結果、塗膜の緻密化が図れず耐食性に劣る。また、材料到達温度が300℃を超えると塗膜成分が熱分解することにより緻密な塗膜が得られず耐食性に劣る。なお、材料到達温度に保持される時間、すなわち焼付け時間は、好ましくは1〜60秒、より好ましくは5〜45秒である。焼付け時間が1秒未満では塗膜形成が不十分となり耐食性が不十分となる場合があり、60秒を超えると塗膜成分が分解、変性し、耐食性が不十分となる場合がある。
【0052】
下地塗膜の塗膜量は、0.3〜7.5g/m
2とする。塗膜量が0.3g/m
2未満では塗膜が薄過ぎるためにアルミニウム基材表面の凹凸を覆いきれず、塗膜欠陥が生じて耐食性に劣る。一方、塗膜量が7.5g/m
2を超えても耐食性の更なる向上が図れず不経済となる。
【0053】
D−2.親水性有機塗膜
親水性有機塗膜を形成するには、アルミニウム基材表面に形成した下地塗膜表面に親水性有機塗膜用の塗料組成物を塗布し、これを加熱することによって焼付ける。
【0054】
このような塗料組成物は、上述の親水性有機塗膜の主成分であるセルロース系樹脂(好ましくは更にメラミン系樹脂)、ならびに、リン酸エステルとその塩、更に必要に応じて上述の添加剤を、溶媒に溶解、分散させて調製される。なお、塗料組成物の溶媒及び塗布法方は、上述の下地塗膜形成のものと同じ溶媒と塗布法が用いられる。
【0055】
本発明では、親水性有機塗膜の深さ方向におけるリンの最大濃度が、親水性有機塗膜全体におけるリンの平均濃度の1.0倍を超え2.5倍以下であることを必要とする。更に、親水性有機塗膜の深さ方向においてリン濃度が最大となる位置を、当該親水性有機塗膜の最表面からその塗膜厚の1/10の深さの位置より下地塗膜側に存在させるのが好ましい。本発明者らは、このような親水性有機塗膜のリン濃度の偏りは、親水性有機塗膜の塗料組成物のpHを8〜13に調整することにより達成されることを見出した。親水性有機塗膜用の塗料組成物のpHが8未満や13を超える場合には、リン酸エステルやその塩が親水性有機塗膜の表面近傍に濃縮し、初期親水性は良好であるものの、親水持続性を維持することが困難となる。
【0056】
親水性有機塗膜用の塗料組成物のpHと、親水性有機塗膜におけるリン濃度の偏りの因果関係は現在のところ明確ではない。塗料組成物のpHが、8未満の弱アルカリ性や、pHが7前後の中性や、pHが酸性の領域において塗膜を形成すると、塗料組成物中のリン酸エステルやその塩の樹脂成分に対する相溶性や反応性が低いため、塗膜形成過程において樹脂成分との相溶及び反応が殆ど起こらない。その結果、塗膜形成過程においては、樹脂のみが硬化し、リン酸エステルやその塩は塗膜の表面側に押し出された状態でそのまま乾燥し、表面近傍のリン濃度が高くなるものと推定される。一方、塗料組成物のpHを8〜13のアルカリ性に調整することにより、塗料組成物中のリン酸エステルやその塩がイオン化され、塗膜形成時の加熱によってセルロース系樹脂のOHと結合して樹脂中に取り込まれるので、表面近傍のリン濃度が高くなるのが防止されるものと推定される。なお、塗料組成物のpHが13を超えると、表面近傍のリン濃度が高くなるのは防止可能であるが、塗料組成物の取り扱いや設備上の制約が多くなり経済的に不適当である。親水性有機塗膜の塗料組成物のpHは、9〜12とするのが好ましい。
【0057】
親水性有機塗膜用の塗料組成物のpH調整方法としては、pH調整剤を塗料組成物に添加するのが好ましい。本発明において用いられるpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム等のアンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン類;等が挙げられる。この中でエタノールアミン類が塗膜形成時に揮発するため、塗膜中に残存することがなく好適に用いられる。pH調整性や揮発性が良好なモノエタノールアミンが、特に好適に用いられる。pH調整剤の添加量は、規定のpH範囲に調整可能であれば特に限定されるものではない。例えば、pH調整剤としてモノエタノールアミンを用いる場合、塗料組成物中の成分(セルロース系樹脂、メラミン系樹脂、リン酸エステルやその塩、添加剤)の種類にもよるが、塗料組成物中に0.005〜0.1重量%添加される。なお、pH調整剤は、親水性有機塗膜の固形分には含まれない。
【0058】
親水性有機塗膜を焼付けるための材料到達温度は、在炉時間との兼ね合いもあるものの、親水性有機塗膜の焼付けによる形成が開始される200℃以上で、かつ、親水性有機塗膜の分解が顕著となる300℃以下であれば良い。本発明では、200〜300℃、好ましくは220〜280℃とする。材料到達温度が200℃未満では、塗膜が十分に形成されず長期間の使用により、親水性有機塗膜が著しく劣化し、親水性(持続性)及び耐汚染性に劣る。また、材料到達温度が300℃を超えると、塗膜成分が分解、変性し、親水性(初期、持続性)及び耐汚染性を著しく低下させる。なお、材料到達温度に保持される時間、すなわち焼付け時間は、好ましくは1〜60秒、より好ましくは5〜45秒である。焼付け時間が1秒未満では、塗膜が十分に形成されず密着性に劣る場合がある。一方、60秒を超えると、塗膜成分が分解、変性し、親水性を著しく低下させる場合がある。
【0059】
親水性有機塗膜の塗膜量は、0.1〜2.5g/m
2とする。塗膜量が0.1g/m
2未満では塗膜が薄過ぎるために塗膜欠陥が発生し易く、また下地皮膜を完全に被覆することができず親水性や耐汚染性に劣る。一方、塗膜量が2.5g/m
2を超えても親水性や耐汚染性等の更なる向上が図れず不経済となる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
実施例1〜28及び比較例1〜18
アルミニウム基材としてアルミニウム合金板(1100−H24材、0.100mm厚さ)を用いた。このアルミニウム合金板を市販のアルカリ性脱脂剤でスプレー洗浄し、水洗した後に乾燥した。スプレー洗浄は、スプレー圧1.0kgf/cm
2で5秒間スプレー噴射処理を行った。水洗は工業用水を用いて、60℃でスプレー圧1.5kgf/cm
2で10秒間スプレー噴射処理を行った。乾燥は80℃の熱風を30秒間当てることにより行なった。
【0062】
次いで、バーコーターを用いて下地塗膜用の塗料組成物をアルミニウム基材に塗布し、これを焼付炉中において表1〜7に示す焼付け条件にて焼付けて下地塗膜を形成した。焼付けは電気ヒーターで空気を加熱する熱風循環式焼付炉を使用し、風速15m/秒で行なった。なお、下地塗膜用の塗料組成物は、表1〜7に示す下地塗膜の成分を溶媒である水に溶解又は分散して調製した。塗料組成物中の成分濃度は、200g/リットルとした。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
次いで、下地塗膜上に親水性有機塗膜を以下のようにして形成した。親水性有機塗膜用の塗料組成物を、バーコーターを用いて下地塗膜に塗布し、これを表1に示す焼付け条件で焼付けて親水性有機塗膜を形成した。塗膜の焼付けは電気ヒーターで空気を加熱する熱風循環式焼付炉を使用し、風速15m/秒で行なった。このような焼付けによって、下地塗膜上に親水性有機塗膜を形成した。各親水性有機塗膜の構成を表1〜7に示す。なお、親水性有機塗膜用の塗料組成物は、表1〜5に示す親水性有機塗膜の成分を溶媒である水に溶解又は分散して調製した。この塗料組成物中の各成分の含有量を、表1〜7に示す。
【0071】
このようにして作製したアルミニウム塗装材試料について、GDSを用いて深さ方向におけるリン濃度の分布を測定した。まず、親水性有機塗膜の深さ方向においてリン濃度が最大となる位置を、(親水性有機塗膜の最表面からの深さ/親水性有機塗膜の塗膜厚)として求めた。以下において、この(親水性有機塗膜の最表面からの深さ/親水性有機塗膜の塗膜厚)を、「最大リン濃度を示す深さの塗膜厚比」として表1〜7に示す。例えば、最大リン濃度を示す深さの塗膜厚比が0.5とは、親水性有機塗膜の深さ方向においてリン濃度が最大となる位置が、塗膜厚の半分の位置を示す。また、最大リン濃度を示す深さの塗膜厚比が0.4とは、親水性有機塗膜の深さ方向においてリン濃度が最大となる位置が、塗膜表面から塗膜厚の40%の位置を示す。次に、親水性有機塗膜全体における平均リン濃度のピーク高さに対する最大リン濃度のピーク高さを、最大リン濃度のピーク高さ/平均リン濃度のピーク高さとして表1〜7に示す。
【0072】
更に、アルミニウム塗装材試料の耐食性、親水性(初期及び持続性)、耐汚染性、塗膜密着性、成形性(カラー割れ)及び耐工具磨耗性を以下の方法で測定した。結果を併せて表1〜7に示す。
【0073】
耐食性
JIS Z2371に基づき、SST1000時間行い、下記のレイティングナンバー(R.N.)により耐食性を評価した。
◎:R.Nが9.5を超え、非常に良好であることを示す。
○:R.Nが9.0〜9.5であり、良好であることを示す。
×:R.Nが9.0未満であり、不良であることを示す。
ここで、◎と○を合格とし、×を不合格とした。
【0074】
親水性
まず、初期の親水性を次のように前処理を実施し評価した。まず、上記のアルミニウム塗装材試料を揮発性プレス油(出光興産社製ダフニAF−2A)に1分間浸漬した後に、これを取り出した。取り出した試料を室温で垂直に30秒間保持し、揮発性プレス油を切った。次いで、180℃の熱風炉中(大気雰囲気)で2分間保持した後に室温まで冷却した。最後に、冷却した試料についてゴニオメーターで純水の接触角を測定した。
【0075】
次に、持続性の親水性を次のようにして評価した。この評価では、上記のように作製したアルミニウム塗装材試料を乾湿サイクルにかけた後に、初期の親水性と同様に評価した。乾湿サイクルは、アルミニウム塗装材試料を流量が1リットル/分の水道水に8時間浸漬した後、80℃で16時間乾燥する工程を1サイクルとして、これを20サイクル行なった。
【0076】
親水性は下記の基準により評価した。
◎:接触角が15°以下であり非常に良好であることを示す。
○:接触角が15゜を超え25°以下であり、良好であることを示す。
△:接触角が25゜を超え40゜以下であり、不良であることを示す。
×:接触角が40゜を超え非常に不良であることを示す。
ここで、◎及び○を性能を満足する合格とし、△と×を不合格とした。
【0077】
耐汚染性
まず、アルミニウム塗装材試料に、親水性試験と同様の前処理を施した。次いで、試料に汚染サイクル処理を実施した。汚染サイクル処理は、50℃のパルミチン酸蒸気を含む空気に試料を1時間暴露することにより気相中でパルミチン酸を試料に吸着させ、次いで、試料を水道水に6時間浸漬後にドライヤーで乾燥する処理を1サイクルとして10サイクル繰り返した。10サイクル後の塗膜表面の接触角を、上記親水性測定と同様にして測定した。
【0078】
耐汚染性下記の基準により評価した。
◎:接触角が20°以下であり非常に良好であることを示す。
○:接触角が20゜を超え40°以下であり、良好であることを示す。
△:接触角が40゜を超え60゜以下であり、不良であることを示す。
×:接触角が60゜を超え非常に不良であることを示す。
ここで、◎及び○を性能を満足する合格とし、△と×を不合格とした。
【0079】
塗膜密着性
JIS H4001に従った付着性試験を行い、碁盤目におけるテープ剥離後の残存個数を測定して残存率で評価した。評価基準は以下の通りである。
○:塗膜残存率が100%
×:塗膜残存率が100%未満
ここで、○を性能を満足する合格とし、×を不合格とした。
【0080】
成形性及び耐工具磨耗性
実機フィンプレスにてドローレス成形を実施した状況で評価した。成形条件は以下の通りである。揮発性プレスオイル:AF−2A(出光興産)を使用し、しごき率は58%、成形スピードは250spmで実施した。工具は、磨耗し易い純鉄からなるピアスポンチを使用した。
【0081】
成形性は成形後のフィンの外観を目視観察することによって、下記の基準によって評価した。表1に示す記号の意味は以下の通りであり、○を、性能を満足する合格とした。
○:外観が良好であることを示す。
×:カラー部内面にキズが発生したり座屈やカラー飛びが発生したり不良であることを示す。
ここで、○を性能を満足する合格とし、×を不合格とした。
【0082】
耐工具磨耗性は、成形後における金型の重量減少を下記基準で測定した。なお、成形前の金型重量は65gであった。
○:1g以下
×:1gを超える
ここで、○を性能を満足する合格とし、×を不合格とした。
【0083】
表1〜4に示すように、実施例1〜28ではいずれも、耐食性、初期親水性及び親水持続性、耐汚染性、塗膜密着性、成形性及び耐工具磨耗性が良好であった。その中でも、実施例1、4、5、12、14、17、18、19、20、25、28では、いずれの評価も優れていた。
【0084】
これに対して、表5〜7に示すように、比較例では耐食性、初期親水性及び親水持続性、耐汚染性、塗膜密着性、成形性及び耐工具磨耗性の少なくともいずれかが不合格であった。
比較例1では、耐食性が不合格であった。
比較例2では、親水持続性及び耐汚染性が不合格であった。
比較例3では、耐食性が不合格であった。
比較例4では、親水性(初期及び持続性)、耐汚染性及び塗膜密着性が不合格であった。
比較例5では、親水持続性及び耐汚染性が不合格であった。
比較例6では、親水持続性及び耐汚染性が不合格であった。
比較例7では、親水持続性及び耐汚染性が不合格であった。
比較例8では、最大リン濃度のピーク高さ/平均リン濃度のピーク高さが2.5を超えた。その結果、親水持続性及び耐汚染性が不合格であった。
【0085】
比較例9では、最大リン濃度のピーク高さ/平均リン濃度のピーク高さが2.5を超えた。その結果、親水持続性及び耐汚染性が不合格であった。
比較例10では、親水性(初期及び持続性)及び耐汚染性が不合格であった。
比較例11では、成形性が不合格であった。
比較例12では、親水性等を十分に満足するものの、耐工具磨耗性が不合格であった。
比較例13では、耐食性が不合格であった。
比較例14では、耐食性が不合格であった。
比較例15では、親水性(初期及び持続性)、ならびに、耐汚染性が不合格であった。
比較例16では、親水持続性及び耐汚染性が不合格であった。
比較例17では、親水持続性及び耐汚染性が不合格であった。
比較例18では、親水性(初期及び持続性)、ならびに、耐汚染性が不合格であった。