(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3配線長は、前記信号の伝送線路に要求される信号帯域における前記第1周波数とは異なる第2周波数に応じた電磁波波長の4分の3に相当する長さである請求項3に記載の半導体装置。
前記第1信号配線は、2つの配線が並走して形成された第1差動配線対であり、前記第2信号配線は、2つの配線が並走して形成された第2差動配線対である、請求項2に記載の半導体装置。
前記第1信号電極と前記第2信号電極の何れか一方が、前記半導体チップに信号を入力するための受信用電極であり、他方が前記半導体チップから信号を出力するための送信用電極である、請求項2に記載の半導体装置。
複数の前記第1ビアのうち、一部が1つのランドを介して前記第2信号配線に接続され、残りが複数のランドを介して前記第2信号配線に接続される、請求項2に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0015】
〔1〕(整合回路としてのスルーホールとビアを半導体チップから所定範囲内に配置したパッケージ基板を有する半導体装置)
本願の代表的な実施の形態に係る半導体装置(100)は、半導体チップ(2)と、前記半導体チップが搭載される配線基板(1)と、を有する。前記配線基板は、前記半導体チップと電気的に接続される複数の第1電極(10)が形成された第1主面(1a)と、前記第1主面に対向する第2主面(1b)と、前記第1主面と前記第2主面との間に設けられた配線領域と、を有する。前記第1電極は、規則的に配列された、所定の周波数の信号の供給を受けるための複数の第1信号電極(10_Rx)及び第2信号電極(10_Tx)を含む。前記第1信号電極と第2信号電極とは、その配列中に分散して配置される。前記配線領域は、コア基板(21)と、前記コア基板の両面に夫々形成された複数の配線層(20、21)と、インピーダンスを整合する容量を形成するための、前記コア基板を貫通する複数の第1スルーホール(CR1)とを有する。前記配線領域は、更に、インピーダンスを整合する容量を形成するための、前記コア基板の前記第1主面側に形成された前記配線層を貫通する複数の第1ビア(CT1)を有する。前記配線領域は更に、対応する前記第1信号電極に接続される複数の第1信号配線(SNR1〜SNRm)と、対応する前記第2信号電極に接続される複数の第2信号配線(SNT1〜SNTn)と、を含む。前記第1スルーホールは、前記第1信号電極から第1配線長(LR1)だけ離れた位置で前記第1信号配線に接続され、前記第1ビアは、前記第2信号電極から、前記第1配線長と実質的に等しい第2配線長(LT1≒LR1)だけ離れた位置で前記第2信号配線に接続される。
【0016】
これによれば、配線基板において、インピーダンス整合のための容量(以下、整合回路と称する。)を形成するスルーホールとビアが、配線領域における異なる層に複数形成される。これにより、上記整合回路をスルーホールのみで形成する場合に比べて、多くの整合回路を、より高密度に形成することが可能になる。また、整合回路としてのスルーホールとビアが異なる層に形成されることから、夫々に接続する配線の引き廻しが容易となり、配線密度を下げることも可能になる。更に、整合回路としての第1ビアを通常のビアと同様の製造プロセスで形成することができる。したがって、本半導体装置によれば、配線基板(パッケージ基板)の製造コストを抑えつつ、良好な信号の伝送特性を実現することが可能となる。
【0017】
〔2〕(多段に接続された整合回路)
項1の半導体装置において、前記配線領域は、インピーダンスを整合する容量を形成するための、前記コア基板を貫通する複数の第2スルーホール(CT2)と、インピーダンスを整合する容量を形成するための、前記コア基板の前記第2主面側に形成された前記配線層を貫通する複数の第2ビア(CR2)と、を更に含む。前記第2スルーホールは、前記第2信号電極から前記第1配線長より長い第3配線長(LR2)だけ離れた位置で前記第2信号配線と接続され、前記第2ビアは、前記第1信号電極から、前記第3配線長と実質的に等しい第4配線長(LT2≒LR2)だけ離れた位置で前記第1信号配線と接続される。
【0018】
これによれば、1つの第1信号電極につながる第1信号配線に複数の整合回路が形成される。同様に、1つの第2信号電極につながる第2信号配線に複数の整合回路が形成される。これにより、より広い周波数帯域において信号特性を向上させることが可能となる。また、第1信号配線に接続される2段目の整合回路をビアで形成し、第2信号配線に接続される2段目の整合回路をスルーホールで形成することで、1段目の整合回路と同様に、多くの整合回路をより高密度に形成し、且つ配線密度を下げることが可能となる。
【0019】
〔3〕(1段目の補正回路をλ/4付近に形成)
項2の半導体装置において、前記第1配線長は、前記信号の伝送線路に要求される信号帯域における第1周波数(fa、fc)に応じた電磁波波長(λa、λc)の4分の1に相当する長さである。
【0020】
これによれば、第1信号電極側(第2信号電極側)の第1信号配線端(第2信号配線端)において反射した反射信号による信号波形の歪をより小さくすることができる。
【0021】
〔4〕(2段目の補正回路を3λ/4付近に形成)
項2又は3の半導体装置において、前記第3配線長は、前記信号の伝送線路に要求される信号帯域における前記第1周波数とは異なる第2周波数(fb、fd)に応じた電磁波波長(λb、λd)の4分の3に相当する長さである。
【0022】
第1信号電極(第2信号電極)から、第2周波数に応じた電磁波波長の4分の1だけ離れた位置に整合回路を配置する場合と、当該電磁波長の4分の3だけ離れた位置に整合回路を配置する場合とで、整合回路で反射して第1信号電極(第2信号電極)に戻ってくる反射信号の位相は共にπ(180度)で同じとなる。したがって、電磁波波長の4分の3の場所に整合回路を配置することで、整合回路を電磁波波長の4分の1の場所に配置した場合と同様の効果が期待できる。本半導体装置によれば、一段目の整合回路(例えば第1スルーホール)と二段目の整合回路(第2ビア)とが離れた位置に形成されるから、二段目の整合回路を形成するための領域の確保が容易となり、更なる整合回路の高密度化と配線密度の低減を図ることができる。特に、第1周波数と第2周波数とが近い値であり、一段目と二段目の整合回路の双方を電磁波波長の4分の1の場所に配置するのが困難な場合に適用して有効である。
【0023】
〔5〕(1段目の補正回路を3λ/4付近に形成)
項2の半導体装置において、前記第1配線長は、前記信号の伝送線路に要求される信号帯域における第1周波数(fa,fc)に応じた電磁波波長(λa,λc)の4分の3に相当する長さである。
【0024】
上述したように、電磁波波長の4分の3の場所に整合回路を配置することで、整合回路を電磁波波長の4分の1の場所に配置した場合と同様の効果が期待できるので、項3と同様に、信号波形の歪をより小さくすることができる。
【0025】
〔6〕(スルーホールとビアが重なりを有しない)
項2乃至5の何れかの半導体装置において、前記第1スルーホールと前記第1ビアとは、平面視において重なりを有しない。
【0026】
これによれば、前記第1スルーホールと前記第1ビアとのデカップリングによる第1信号配線と第2信号配線の干渉を抑えることができ、良好な信号の伝送特性を実現に資する。
【0027】
〔7〕(差動配線対)
項2乃至6の何れかの半導体装置において、前記第1信号配線は、2つの配線が並走して形成された第1差動配線対(SNDR)であり、前記第2信号配線は、2つの配線が並走して形成された第2差動配線対(SNDT)である。
【0028】
〔8〕(Tx、Rx)
項1乃至7の何れかの半導体装置において、前記第1信号電極と前記第2信号電極の何れか一方が、前記半導体チップに信号を入力するための受信用電極であり、他方が前記半導体チップから信号を出力するための送信用電極である。
【0029】
〔9〕(スルーホールの形状;上/下のランド径が相違する;
図7の(b))
項1乃至8の何れかの半導体装置は、断面視において、前記第1スルーホールに接続される最上位のランドの径と、最下位のランドの径が相違する。
【0030】
これによれば、例えば、配線密度の低い側の層に隣接するランドの径を大きくし、配線密度の高い側の層に隣接するランドの径を小さくすることで、第1スルーホールとそれに隣接する上下層の配線とのカップリングを減らすことができる。
【0031】
〔10〕(スルーホールの形状;多段ランド;
図7の(c))
項1乃至8の何れかの半導体装置において、前記第1スルーホールは、断面視において上下方向に複数のランドが接続される。
【0032】
これによれば、寄生容量を形成するためのランドの数が増えるので、必要な容量値を得るためのランド1つあたりのランド径を小さくすることが可能なり、更なる整合回路の高密度化と配線密度の低減を図ることができる。
【0033】
〔11〕(ビアの形状;上/下のランド径が相違する;
図8の(b)、
図8の(d))
項1乃至10の何れかの半導体装置は、断面視において、前記第1ビアに接続される最上位のランドの径と、最下位のランドの径が相違する。
【0034】
これによれば、例えば、配線密度の低い側の層に隣接するランドの径を大きくし、配線密度の高い側の層に隣接するランドの径を小さくすることで、第1ビアとそれに隣接する上下層の配線とのカップリングを減らすことができる。
【0035】
〔12〕(ビアの形状;多段ランド;
図8の(c)、
図8の(d))
項1乃至10の何れかの半導体装置において、前記第1ビアは、断面視において上下方向に複数のランドが接続される。
【0036】
これによれば、寄生容量を形成するためのランドの数が増えるので、必要な容量値を得るためのランド1つあたりのランド径を小さくすることが可能なり、更なる整合回路の高密度化と配線密度の低減を図ることができる。
【0037】
〔13〕(ビアの配線;同一配線層に接続;
図11の(a)〜(c)の組み合わせ)
項1乃至12の何れかの半導体装置において、複数の前記第1ビアのうち、一部が1つのランドを介して前記第2信号配線に接続され(
図11の(b),(c))、残りが複数のランドを介して前記第2信号配線に接続される(
図11の(a))。
【0038】
これによれば、夫々の第1ビアに接続される複数の配線を複数の配線層に分散させることができるので、配線密度を更に低減させることが可能となる。
【0039】
〔14〕(第1ビア>第2ビア)
項2乃至13の何れかの半導体装置において、前記第1ビアは、前記第2ビアよりもランド径が大きくされる。
【0040】
第1信号電極側(第2信号電極側)の第1信号配線端(第2信号配線端)において反射した反射信号は、第1信号電極(第2信号電極)からの距離が離れるほどのその信号レベルは小さくなる。そのため、一段目の整合回路よりも第1信号電極(第2信号電極)から離れた位置に形成される二段目の整合回路は、その容量値を一段目のそれよりも小さくしても、第1信号配線端(第2信号配線端)で反射した反射波を打ち消すのに十分な効果を得ることが可能となる。したがって、本半導体装置のように、一段目の整合回路よりも二段目の整合回路の容量値を小さくすることで、反射波による信号波形の歪を抑える効果を低減させずに、更なる整合回路の高密度化と配線密度の低減を図ることが可能となる。
【0041】
〔15〕(通常のビアよりも大きい第1ビア)
項1乃至14の何れかの半導体装置において、前記第1ビアは、隣接する配線層間を接続するためのビアよりも、ランド径が大きくされる。
【0042】
これによれば、第1ビアは通常のビアよりも寄生容量を大きくなるので、整合回路として機能させることが容易となる。
【0043】
〔16〕(インターフェースバッファ)
項1乃至15の何れかの半導体装置において、前記半導体チップは、前記第1信号端子と前記第2信号端子の夫々に対応して接続される複数のインターフェースバッファ(Tx1〜Txn、Rx1〜Rxm)を有する。
【0044】
これによれば、項1乃至15の構成によって、インターフェースバッファの信号特性を向上させることができる。
【0045】
〔17〕(外部端子;BGA)
項1乃至16の何れかの半導体装置は、複数の外部端子(8)を更に有する。前記第2主面は、対応する前記外部端子と電気的に接続される複数の第2電極(11)を有する。前記第1信号配線は、前記第1信号電極と対応する前記第2電極との間を電気的に接続する伝送線路を形成し、前記第2信号配線は、前記第2信号電極と対応する前記第2電極との間を電気的に接続する伝送線路を形成する。
【0046】
これによれば、配線基板における半導体チップから外部端子までの伝送線路の信号伝達特性を向上させることができる。
【0047】
〔18〕(配線基板)
本願の代表的な実施の形態に係る配線基板(1)は、半導体チップ(2)と電気的に接続するための複数の第1電極(10)が形成された第1主面(1a)と、前記第1主面に対向する第2主面(1b)と、前記第1主面と前記第2主面との間に設けられた配線領域と、を有する。前記第1電極は、規則的に配列された、所定の周波数の信号の供給を受けるための複数の第1信号電極(10_Rx)及び第2信号電極(10_Tx)を含む。前記第1信号電極と第2信号電極とは、その配列中に分散して配置される。前記配線領域は、コア基板(21)と、前記コア基板の両面に夫々形成された複数の配線層(20、22)と、インピーダンスを整合する容量を形成するための、前記コア基板を貫通する複数の第1スルーホール(CR1)とを含む。前記配線領域は更に、インピーダンスを整合する容量を形成するための、前記コア基板の前記第1主面側に形成された前記配線層(20)を貫通する複数の第1ビア(CT1)と、対応する前記第1信号電極に接続される複数の第1信号配線(SNR1)と、対応する前記第2信号電極に接続される複数の第2信号配線(SNT1)と、を含む。前記第1スルーホールは、前記第1信号電極から第1配線長(LR1)だけ離れた位置で前記第1信号配線に接続され、前記第1ビアは、前記第2信号電極から、前記第1配線長と実質的に等しい第2配線長(LT1)だけ離れた位置で前記第2信号配線に接続される。
【0048】
これによれば、項1と同様に、製造コストを抑えつつ、良好な信号の伝送特性を実現することが可能な配線基板を提供することができる。
【0049】
〔19〕(1つの信号配線に複数の整合回路)
項18の配線基板において、前記配線領域は、インピーダンスを整合する容量を形成するための、前記コア基板を貫通する複数の第2スルーホール(CT2)と、インピーダンスを整合する容量を形成するための、前記コア基板の前記第2主面側(22)に形成された前記配線層を貫通する複数の第2ビア(CR2)と、を更に含む。前記第2スルーホールは、前記第2信号電極から前記第1配線長より長い第3配線長(LR2)だけ離れた位置で前記第2信号配線と接続され、前記第2ビアは、前記第1信号電極から、前記第3配線長と実質的に等しい第4配線長(LT2)だけ離れた位置で前記第2信号配線と接続される。
【0050】
これによれば、項2と同様に、より広い周波数帯域において信号特性を向上させることが可能となり、且つ、更なる整合回路の高密度化と配線密度の低減を図ることができる。
【0051】
〔20〕(整合回路としてのスルーホールとビアが混在して形成されたパッケージ基板を有する半導体装置)
本願の代表的な実施の形態に係る半導体装置(10)は、半導体チップ(2)と、当該半導体チップが搭載される配線基板(1)と、を有する。前記配線基板は、前記半導体チップと電気的に接続され、所定の周波数の信号が供給される複数の信号電極が形成される第1主面(1a)と、前記第1主面に対向する第2主面(1b)と、前記第1主面と前記第2主面との間に設けられた配線領域と、を有する。前記配線領域は、コア基板(21)と、前記コア基板の両面に夫々形成された複数の配線層(20,22)と、前記配線層に形成され、前記信号電極から延在される複数の信号配線(SNR1〜SNRm、SNT1〜SNTn)と、前記信号電極から所定の配線長(LR1≒LT1)だけ離れた位置で前記信号配線に接続される複数のインピーダンス整合回路と、を含む。前記複数のインピーダンス整合回路のうち一部は、前記コア基板を貫通する複数のスルーホール(CR1)によって形成され、残りは、前記コア基板の前記第1主面側に形成された前記配線層(20)を貫通する複数のビア(CT1)によって形成される。
【0052】
これによれば、インピーダンス整合回路としてのスルーホールとビアとが異なる層に形成されるので、スルーホールのみでインピーダンス整合回路を形成する場合に比べて、配線基板上により多くのインピーダンス整合回路を形成することが可能になる。
【0053】
〔21〕(1段目の補正回路をλ/4付近に形成)
項19の配線基板において、前記第1配線長は、前記信号の伝送線路に要求される信号帯域における第1周波数(fa,fc)に応じた電磁波波長(λa,λc)の4分の1に相当する長さである。
【0054】
これによれば、第1信号電極側(第2信号電極側)の第1信号配線端(第2信号配線端)において反射した反射信号による信号波形の歪をより小さくすることができる。
【0055】
〔22〕(1段目の補正回路をλ/4付近に、2段目の補正回路を3λ/4付近に形成)
項21の配線基板において、前記第3配線長は、前記信号の伝送線路に要求される信号帯域における前記第1周波数とは異なる第2周波数(fb,fd)に応じた電磁波波長(λb,λd)の4分の3に相当する長さである。
【0056】
これによれば、一段目の整合回路(例えば第1スルーホール)と二段目の整合回路(第2ビア)とが離れた位置に形成されるから、二段目の整合回路を形成するための領域の確保が容易となり、更なる整合回路の高密度化と配線密度の低減を図ることができる。特に、第1周波数と第2周波数とが近い値であり、一段目と二段目の整合回路の双方を電磁波波長の4分の1の場所に配置するのが困難な場合に適用して有効である。
【0057】
2.本願における記載形式、基本的用語、用法の説明
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクションに分けて記載する場合もあるが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しを省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0058】
更に、本願において、「半導体装置」または「半導体集積回路装置」というときは、主に、各種トランジスタ(能動素子)単体、および、それらを中心に、抵抗、コンデンサ等を半導体チップ等(例えば単結晶シリコン基板)上に集積したもの、および、半導体チップ等をパッケージングしたものをいう。ここで、各種トランジスタの代表的なものとしては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に代表されるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を例示することができる。このとき、集積回路構成の代表的なものとしては、Nチャネル型MISFETとPチャネル型MISFETを組み合わせたCMOS(Complemetary Metal Oxide Semiconductor)型集積回路に代表されるCMIS(Complemetary Metal Insulator Semiconductor)型集積回路を例示することができる。
【0059】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかに、そうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。例えば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。例えば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。
【0060】
同様に、図形、位置、属性等に関して、好適な例示をするが、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、厳密にそれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0061】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0062】
「ウエハ」というときは、通常は半導体集積回路装置(半導体装置、電子装置も同じ)をその上に形成する単結晶シリコンウエハを指すが、エピタキシャルウエハ、SOI基板、LCDガラス基板等の絶縁基板と半導体層等の複合ウエハ等も含むことは言うまでもない。
【0063】
「半田」は、一般に錫を主要成分の一つとする低融点(摂氏250度未満程度)の金属材料である。「半田」には、鉛を含む「鉛含有半田」と、鉛を含まない「鉛フリー半田」がある。本願では、一例として、半田バンプを鉛フリー半田とする。
【0064】
3.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するために、ハッチングを付すことがある。
【0065】
図1は、本願の一実施の形態に係る半導体装置を搭載した電子回路の全体模式断面図である。
【0066】
同図に示される電子回路200は、例えば、携帯電話の基地局における通信機器や高速通信用のルータ等のネットワーク機器に搭載され、ネットワーク機器の通信機能を実現するため回路モジュールである。電子回路200は、例えば、マザーボード等の実装基板(プリント基板)6上に搭載された複数の半導体装置や各種の電子部品が実装基板6に形成された配線パターンによって電気的に接続され、それらの部品が相互に各種信号のやり取りすることにより所望の機能を実現する。同図には、電子回路200を構成する複数の部品として、半導体装置100と半導体装置101が代表的に例示されている。
【0067】
半導体装置100と半導体装置101は、実装基板6を介して電気的に接続され、相互に信号の送受信を行う。特に制限されないが、半導体装置100は、例えばデータを格納するための記憶装置(メモリ)を備える。また、半導体装置101は、例えばメモリコントローラであり、半導体装置100内のメモリに対してアクセスを行う。
【0068】
図1に示されるように、半導体装置100は、2つの半導体チップ2、3と、半田バンプ(ソルダーボール)で形成された複数の外部端子8と、半導体チップ2、3が搭載されるパッケージ基板(配線基板、インターポーザ)1と、を含んで構成される。半導体装置100は、例えば、半導体チップ2、3にバンプ電極7、13となる半田バンプを施しフェースダウンでパッケージ基板1に接続したFCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)型パッケージで封止したSIPである。なお、同図に示される半導体装置100のバンプ電極等の数は、図示の都合上、実際よりも少なくなっている。実際のバンプピッチは、一例を挙げるとすれば、半導体チップ側の半田バンプ(バンプ電極7、13)で100マイクロメートル程度、実装基板6側の半田バンプ(外部端子8)で1ミリメートル程度である。なお、半田バンプの材料としては、例えば、銀1.5重量%程度添加した銀添加錫系鉛フリー半田(融点:摂氏221度程度)を好適なものとして例示することができる。なお、鉛フリー半田は、前記の例のほか、各種のものを適用することができる。また、状況が許すときは、鉛系半田を使用することができるが、鉛フリー半田を使用した方が、環境上有利である。
【0069】
図2に半導体装置100の詳細な全体模式断面図を例示する。
【0070】
図2に示されるように、パッケージ基板1は、バンプ電極7、13を介して半導体チップ2、3と電気的に接続するための複数の第1電極10が形成された第1主面1aと、第1主面1aに対向し、外部端子8と電気的に接続される複数の第2電極11が形成された第2主面1bと、第1主面1aと第2主面1bとの間に設けられた配線領域を有する。パッケージ基板1は、例えばビルドアップ基板である。上記配線領域は、コア基板(core)21と、コア基板21の両面に夫々形成された複数の配線層(以下、ビルドアップ層(Build−up)とも称する。)20、22を含む。コア基板21は、例えば2つの配線層Layer5,Layer6を持つガラスエポキシ基板である。ビルドアップ層20、21は、絶縁層(樹脂)と配線層(導電体)とが交互に積層される。例えば、コア基板21の第1主面1a側に形成されたビルドアップ層20は、Layer1,Layer2,Layer3,及びLayer4の4つの配線層を有し、コア基板21の第2主面1b側に形成されたビルドアップ層22は、Layer7,Layer8,Layer9,及びLayer10の4つの配線層を有する。配線層Layer1〜10に形成される配線パターンの金属部材として、銅(Cu)やアルミ(Al)等を採用することができる。
【0071】
半導体チップ3は、例えばメモリICである。半導体チップ2は、例えば外部からのアクセス要求に応じて半導体チップ3にアクセスするためのロジックICである。半導体チップ2は、半導体装置101からのアクセスに応じて、半導体チップ3に対するデータの書き込み及び読み出しを行う。半導体チップ2は、例えば、シリアルデータとパラレルデータの相互変換を行うSerDes回路を含み、そのSerDes回路を介して、半導体装置101との間で例えば12.5GHzのシリアル通信を行い、半導体チップ3との間で例えば1.2GHzのパラレル通信を行う。
【0072】
図3は、半導体装置100と半導体装置101との接続関係を例示する図である。
【0073】
同図に示されるように、半導体チップ2は、SerDes回路における、半導体装置101と信号(データ)をやり取りするための入出力回路として、複数のI/O素子(インターフェースバッファ)を備える。具体的には、半導体チップ2は、受信用のI/O素子Rx1〜Rxm(mは2以上の整数)と、送信用のI/O素子Tx1〜Txn(nは2以上の整数)を備える。同様に、半導体装置101は、複数の送信用のI/O素子XTx1〜XTxmと、受信用のI/O素子XRx1〜XRxnを備える。
【0074】
半導体装置100の送信用のI/O素子Tx1〜Txnは、半導体装置100の外部端子8、信号線路SNT1〜SNTn、及び半導体装置101の外部端子9を介して、半導体装置101の対応するI/O素子XRx1〜XRxnに夫々接続される。同様に、半導体装置100の受信用のI/O素子Rx1〜Rxmは、半導体装置100の外部端子8、信号線路SNR1〜SNRm、及び半導体装置101の外部端子9を介して、半導体装置101の対応するI/O素子XTx1〜XTxmに夫々接続される。
【0075】
半導体装置100と半導体装置101の間の高速シリアル通信は、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)によって行われ、上記高速シリアル通信のための信号線路SNT1〜SNTn及びSNR1〜SNRmは、複数の差動信号線対を構成する。例えば、信号線路SNT1とSNT2は差動信号線路SNDTを構成し、信号線路SNR1、SNR2は差動信号線路SNDRを構成する。なお、本実施の形態では、参照符号SNR1〜SNRm、SNTR1〜SNTRn、SRDT、及びSNDRは、信号線路のみならず、半導体装置100のI/O素子の入出力端子から半導体装置101のI/O素子の入出力端子までの伝送路をも表すものとする。
【0076】
例えば、半導体チップ2から半導体装置101にデータを送信する場合、半導体チップ2の送信用のI/O素子Tx1〜Txnから送信された信号が、信号線路SNT1〜SNTmを介して、半導体装置101のI/O素子XRx1〜XRxnに供給される。同様に、半導体チップ2が半導体装置101からのデータを受信する場合、半導体装置101のI/O素子XTx1〜XTxmから送信された信号が、信号線路SNR1〜SNRmを介して、半導体チップ2の受信用のI/O素子Rx1〜Rxmに供給される。
【0077】
信号線路SNT1〜SNTn、SNR1〜SNRmは、50Ωの特性インピーダンスとなるように調整され、それに合わせて、半導体チップ2の送信用のI/O素子Tx1〜Txnと受信用のI/O素子Rx1〜Rxmは、抵抗R0(=50Ω)で終端されている。しかしながら、送信用のI/O素子Tx1〜Txnの出力端には寄生容量CT0が存在し、受信用のI/O素子Rx1〜Rxmの入力端には寄生容量CR0が存在する。そのため、前述したように、信号線路SNT1〜SNTn及びSNR1〜SNRmに供給される信号の周波数が高くなるほど寄生容量CT0、CR0のアドミタンスが増加することにより、I/O素子Tx1〜Txn(Rx1〜Rxm)と信号線路SNT1〜SNTn(SNR1〜SNRm)との間のインピーダンスの不整合が大きくなり、信号反射が生じ易くなる。そこで、本実施の形態に係る半導体装置100は、パッケージ基板1上に、インピーダンスを整合するための整合回路を形成する。
【0078】
図4は、半導体装置100のパッケージ基板6上に形成された整合回路を例示する図である。
【0079】
パッケージ基板6において、半導体チップ2に形成された送信用のI/O素子Tx1〜Txnの出力端に夫々接続されたバンプ電極7と対応する外部端子8とを接続する信号線路SPT1〜SPTnに、インピーダンスを整合するための整合回路として、容量を配置する。
【0080】
具体的には、パッケージ基板6において、送信用のI/O素子Tx1〜Txnの出力端が接続される信号線路SPT1〜SPTn上の、送信用のI/O素子Tx1〜Txnの出力端(例えば、送信用のI/O素子Tx1〜Txnの出力端に接続される第1信号電極10)から配線長LT1だけ離れた位置に、容量CT1を夫々形成する。配線長LT1は、伝送路SNT1〜SNTnに要求される信号帯域における第1周波数faに応じた電磁波波長λaの4分の1に相当する長さである。例えば、fa=30GHzとしたとき、λa/4は、およそ1mmとなる。これによれば、例えば、伝送路SNT1において、I/O素子Tx1の出力端から出力された周波数faの信号が容量CT1で反射され、再びI/O素子Tx1の出力端に戻るまでの往復距離はλa/2(=2×λa/4)となる。したがって、I/O素子Tx1の出力端から出力された信号は、位相がπ(180度)ずれた状態でI/O素子Tx1の出力端に戻ってくるため、I/O素子Tx1の出力端の寄生容量CT0によって反射された反射波と、容量CR1で反射した反射波とが打ち消し合い、伝送路SNT1における信号波形の歪を小さくすることができる。ここで、電磁波波長λaの4分の1に相当する長さとは、理想の配線長λa/4のみならず、理想の配線長λa/4に対して多少の誤差が許容される。例えば、λa/4のプラスマイナス20%の誤差の範囲の長さが許容される。また、実際には、I/O素子は単純な容量や抵抗ではなく、それが複合された構造であるため、理想の配線長“λ/4”としても最適な特性が得られない場合がある。このような場合には、シミュレーション結果や実測値を考慮しながら、容量CT1の最適な配置を見つければよい。その結果、容量CT1の最適な配置が、例えばλ/8〜λ/4の範囲となる場合もある。
【0081】
更に、送信用のI/O素子Tx1〜Txnの出力端から配線長LT2だけ離れた位置に整合回路として容量CT2を夫々形成する。配線長LT2は、伝送路SNT1に要求される信号帯域における所定の周波数fbに応じた電磁波波長λbの4分の3に相当する長さである。これによれば、例えば伝送路SNT1において、I/O素子Tx1の出力端から出力された周波数fbの信号が容量CT2で反射され、再びI/O素子Tx1の出力端に戻るまでの往復距離は3λb/2(=2×3λb/4)となる。したがって、I/O素子Tx1の出力端から電磁波波長の4分の1だけ離れた位置に容量CT1を配置する場合と同様に、I/O素子Tx1の出力端から出力された信号の反射波は、位相がπずれた状態でI/O素子Tx1の出力端に戻ってくる。これにより、I/O素子Tx1の出力端の寄生容量CT0によって反射された反射波と、容量CT2で反射した反射波とが打ち消し合い、伝送路SNT1における信号波形の歪を更に小さくすることができる。ここで、電磁波波長λbの4分の3に相当する長さとは、上述の配線長λa/4と同様に、理想の配線長3λb/4のみならず、理想の配線長3λb/4に対して多少の誤差が許容される。例えば、λb/4のプラスマイナス20%の誤差の範囲の長さが許容される。
【0082】
送信側と同様に、パッケージ基板6において、半導体チップ2に形成された受信用のI/O素子Rx1〜Rxmの出力端に夫々接続されたバンプ電極7と対応する外部端子8とを接続する信号線路SPR1〜SPRnに、インピーダンスの整合回路としての容量を配置する。
【0083】
具体的には、受信用のI/O素子Rx1〜Rxmの入力端が接続される信号線路SPR1〜SPRm上の、I/O素子Rx1〜Rxmの入力端(例えば、I/O素子Rx1〜Rxmの入力端に接続される第1信号電極10)から配線長LR1だけ離れた位置に容量CR1を形成する。配線長LR1は、伝送路SNR1に要求される信号帯域における所定の周波数fcに応じた電磁波波長λcの4分の1に相当する長さである。これによれば、SNT1と同様に、伝送路SNR1における信号波形の歪を小さくすることができる。また、受信用のI/O素子Rx1〜Rxnの入力端から配線長LR2だけ離れた位置に容量CR2を形成する。配線長LR2は、伝送路SNR1に要求される信号帯域における所定の周波数fdに応じた電磁波波長λdの4分の3に相当する長さである。これによれば、伝送路SNT1と同様に、伝送路SNR1における信号波形の歪を更に小さくすることができる。
【0084】
本実施の形態では、半導体装置100の送信側も受信側も同一の周波数帯域(12、5Gbps)が要求されるものとし、上記周波数についても、fa=fc(λa=λc)、fb=fd(λb=λd)とする。これにより、配線長LR1と配線長LT1とは実質的に等しくされ、配線長LR2と配線長LT2とは実質的に等しくされる。ここで、実質的に等しいとは、同一の長さである場合のみならず、所定の誤差(例えばプラスマイナス20%程度)がある場合も含まれる。また、以下の説明では、参照符号CT1は、容量のみならず、その容量によって構成される整合回路をも表すものとする。参照符号CT2、CR1、CR2についても同様とする。
【0085】
図5の(a)に、信号線路SPT1に整合回路CT1を配置した場合の信号特性を例示し、同図の(b)に、信号線路SPT1に整合回路CT1及びCT2を配置した場合の信号特性を例示する。ここでは、CT1=0.25pF、C2=0.05pFとしている。
【0086】
図5の(a),(b)において、参照符号300は、整合回路CT1、CT2の何れも配置しなかった場合の伝送路SNT1の反射損失(Return loss)を示す。参照符号301は、I/O素子Tx1の出力端から、信号周波数f1(=12GHz)に応じた電磁波波長の4分の1に相当する配線長LT1だけ離れたところに整合回路CT1を配置した場合の反射損失を示す。参照符号302は、I/O素子Tx1の出力端から、信号周波数f1(=12GHz)に応じた電磁波波長の4分の1に相当する配線長LT1だけ離れたところに整合回路CT1を配置し、且つ、信号周波数f2(=8GHz)に応じた電磁波波長の4分の3に相当する配線長LT2だけ離れたところに整合回路CT2を配置した場合の反射損失を示す。
【0087】
参照符号300に示されるように、整合回路CT1、CT2の何れも配置しなかった場合、周波数が高くなるほど反射損失が増加する。それに対し、参照符号301に示されるように、I/O素子Tx1の出力端から配線長LT1離れた位置に整合回路CT1を配置した場合、反射損失は12GHz付近で特性の谷ができる。更に、参照符号303に示されるように、容量CT1に加え、I/O素子Tx1の出力端から配線長LT2離れた位置に整合回路CT2を配置した場合、反射損失は12GHz付近に加え、8GHz付近で特性の谷ができる。このようにして、特性の谷を複数作ることで、帯域の広い範囲で反射損失を低く抑えることが可能となる。ここでは、CT1>CT2であるため、12GHz付近よりも8GHz付近での特性の谷の規模が小さくなっているが、反射損失をより低減させるためには、整合回路CT2を更に大きくすればよい。なお、図示はしないが、半導体チップ2の受信側の信号線路SPR1に容量CR1、CR2を配置した場合の信号特性も
図5の(a),(b)と同じような傾向となる。
【0088】
次に、整合回路CT1、CT2(CR1、CR2)の具体的な構成について説明する。
【0089】
本実施の形態に係る半導体装置100では、整合回路としての容量CT1、CT2(CR1、CR2)を、パッケージ基板1上のスルーホール又はビアの寄生容量によって実現する。ここで、スルーホールとは、コア基板21を貫通する貫通孔であり、ビアとは、ビルドアップ層20、21において隣接する配線層間を電気的に接続するために、その間にある絶縁層を貫通する貫通孔である。
【0090】
図6は、パッケージ基板1に形成された整合回路CT1、CT2(CR1、CR2)を例示する模式図である。同図に示されるように、パッケージ基板1において、半導体チップ2のI/O素子の入力端(出力端)から所定の配線長(LT1、LT2、LR1、LR2)だけ離れた位置にスルーホール(TH)又はビア(Via)を形成する。このスルーホール又はビアの寄生容量を利用して、容量CT1、CT2、CR1、CR2を実現する。
【0091】
容量CT1、CT2、CR1、CR2としては、主に、スルーホール又はビアに接続されるランドとその周辺(同一配線層及び上下の配線層)に形成されたグラウンドプレーンとの間の寄生容量が利用される。したがって、整合回路(容量)CT1、CT2、CR1、CR2の容量値の調整は、主にランド径の大きさを調整することによって実現される。例えば、整合回路としての容量を形成するビアのランドは、通常のビア(隣接する配線層に夫々形成された配線を電気的に接続するためのビア)のランドよりも、その径が大きくされる。例えば、通常のビアの直径が90〜100μmであれば、それ以上のサイズとなる。なお、整合回路としての容量を形成するスルーホールのランドは、通常のスルーホール(コア基板を貫通して上下の配線層に夫々形成された配線を電気的に接続するためのスルーホール)のランドと、その径が同じか、又は必要に応じて大きくされる。
【0092】
図7及び
図8に、整合回路を形成するためのスルーホール又はビアに接続されるランドの形状の一例を示す。
【0093】
図7の(a)には、整合回路を形成するためのスルーホールに接続されるランドの第1形状例が、
図7の(b)には、整合回路を形成するためのスルーホールに接続されるランドの第2形状例が、
図7の(c)には、整合回路を形成するためのスルーホールに接続されるランドの第3形状例が示される。
【0094】
同図の(a)に示される第1形状例は、パッケージ基板1の断面視において、スルーホールに接続される上下2つのランドの径が同一とされるものである。
【0095】
同図の(b)に示される第2形状例は、パッケージ基板1の断面視において、スルーホールに接続される上下2つのランドの径が相違されるものである。これによれば、例えば、配線密度の低い側の層に隣接するランドの径を大きくし、配線密度の高い側の層に隣接するランドの径を小さくすることで、スルーホールとそれに隣接する上下層の配線とのカップリングを減らすことができる。例えば、スルーホールの上層側が下層側よりも配線密度が高い場合には、同図の(b)のように、上層のランドよりも下層のランドの径を大きく形成すると良い。
【0096】
同図の(c)に示される第3形状例は、パッケージ基板1の断面視において、スルーホールの上下方向に複数のランドが接続されるものである。この形状例は、コア基板21がその両面に加えて内部にも配線層が形成される場合に適用可能である。同図には、スルーホールにおいて、最上位と最下位のランドの間に2つのランドが形成される場合が例示されている。これによれば、ランドとその周辺のグラウンドプレーンとの間に形成される寄生容量の大きさがランド数によって調整可能となる。したがって、ランドの段数を増やすことにより、所望の容量値を得るための1つのランドあたりのランド径を小さくすることが可能となり、整合回路としてのスルーホールを形成するための領域の面積をより小さくできる。なお、同図の(b)のように、最上位と最下位の2つのランドの径を相違させても良い。
【0097】
図8の(a)には、整合回路を形成するためのビアのランドの第1形状例が、
図8の(b)には、整合回路を形成するためのビアのランドの第2形状例が、
図8の(c)には、整合回路を形成するためのビアに接続されるランドの第3形状例が、
図8の(d)には、整合回路を形成するためのビアに接続されるランドの第4形状例が示される。
【0098】
同図の(a)に示される第1形状例は、パッケージ基板1の断面視において、ビアに接続される上下2つのランドの径が同一とされるものである。
【0099】
同図の(b)に示される第2形状例は、パッケージ基板1の断面視において、ビアに接続される上下2つのランドの径が相違されるものである。これによれば、上述したスルーホールの場合と同様に、スルーホールとそれに隣接する上下層の配線とのカップリングを減らすことができる。例えば、ビアの下層側が上層側よりも配線密度が高い場合には、同図の(b)のように、下層のランドよりも上層のランドの径を大きく形成すると良い。
【0100】
同図の(c)に示される第3形状例は、パッケージ基板1の断面視において、ビアの上下方向に複数のランドが接続されるものである。同図には、ビアにおいて、最上位と最下位のランドの間に1つのランドが形成される場合が例示されている。これによれば、上述したスルーホールの場合と同様に、ランドとその周辺のグラウンドプレーンとの間に形成される寄生容量の大きさがランド数によって調整可能となる。したがって、ランドの段数を増やすことにより、整合回路としてのビアを形成するための領域の面積をより小さくできる。
【0101】
同図の(d)に示される第3形状例は、パッケージ基板1の断面視において、ビアの上下方向に複数のランドを接続し、最上位と最下位の2つのランドの径が相違されるものである。これによれば、スルーホールとそれに隣接する上下層の配線とのカップリングを減らしつつ、整合回路としてのビアを形成するための領域の面積をより小さくできる。
【0102】
図9に、半導体装置100の平面図を例示する。同図に示されるように、半導体装置100において、半導体チップ2と半導体チップ3は、パッケージ基板1上に並んで配置される。半導体チップ2と半導体チップ3とを接続するための配線群は、主にパッケージ基板1の領域Bの配線領域に形成される。半導体チップ2と半導体装置101とを接続するための外部端子8に接続される配線群は、主にパッケージ基板1の基板端Pから半導体チップ2のチップ端までの範囲Yを含む領域Aの配線領域に形成される。本半導体装置100では、例えば、パッケージ基板1上の領域Aに、整合回路CT1、CT2、CR1、CR2としてのスルーホール及びビアを形成する。
【0103】
図10に、整合回路としてのスルーホール及びビアを形成したパッケージ基板1の模式断面を例示する。同図には、差動信号線路SNDTを構成する信号線路SPT1及びそれに接続される整合回路CT1、CT2と、差動信号線路SNDRを構成する信号線路SPR1及びそれに接続される整合回路CR1、CR2とが、代表的に例示されている。なお、説明の簡略化のため、差動信号線路を構成するもう一方の信号線路及びそれに接続される整合回路や、グラウンド電位に接続されたビア、グラウンド電位に接続されたスルーホール等の図示を省略している。
【0104】
同図に示されるように、半導体チップ2の受信側の信号線路SPR1の一段目の整合回路CR1を配線層Layer5−6間のスルーホールで形成し、二段目の整合回路CR2を配線層Layer7−9間のビアで形成する。また、半導体チップ2の送信側の信号経路SPT1の一段目の整合回路CT1を配線層Layer2−4間のビアで形成し、二段目の整合回路CT2を配線層Layer5−6間のスルーホールで形成する。信号線路SPR1において、半導体チップ2の出力端(第1信号電極10_Rx1)から一段目のスルーホール(CR1)までの配線長はLR1であり、半導体チップ2の出力端(バンプ電極7に接続されるI/O素子の出力電極(パッド))から二段目のビア(CR2)までの配線長はLR2である。信号経路SNR2において、半導体チップ2の出力端(第2信号電極10_Tx1)から一段目のビア(CT1)までの配線長はLT1であり、半導体チップ2の出力端から二段目のスルーホール(CT2)までの配線長はLT2である。なお、配線長LR1≒LT1であり、配線長LR2≒LT2である。
【0105】
同図に示されるように、一段目の整合回路として、スルーホールで形成されるもの(CR1)と、ビアで形成されるもの(CT1)を混在させて配置する。これによれば、一段目の整合回路をパッケージ基板1の断面の上下方向に積層するように形成することができるから、一段目の整合回路を全てスルーホールで形成する場合に比べて、同一平面上に形成される整合回路の数が減り、従来よりも高密度に整合回路を形成することができる。特に、本実施の形態のように、配線長LR1と配線長LT1が略等しい場合、一段目の整合回路CR1とCT1が、パッケージ基板1上の領域Aにおける同じような位置に密集して形成されるため、上記のようにスルーホールの整合回路とビアの整合回路を混在させれば、上記領域Aに、より多くの整合回路をより高密度に形成することができる。また、整合回路がパッケージ基板1の配線領域の異なる層に形成されることから、夫々の整合回路に接続される配線の引き廻しが容易となり、配線密度を低減することも可能になる。例えば、ビアで形成される整合回路CT1の通過後の信号配線は、コア基板21の上側のビルドアップ層20で引き廻すことが可能となり、スルーホールで形成される整合回路CT2の通過後の信号配線は、コア基板21の下側のビルドアップ層22で引き廻すことが可能となる。すなわち、差動信号線路SNDR、SNDTを構成するパッケージ基板1上の信号配線SPT1〜SPTn、SPR1〜SPRmの引き廻しを、コア基板21の上下の配線層に振り分けることができるので、1つの配線層に形成される配線の密度を下げることができる。これにより、配線同士が干渉し難くなる。
【0106】
同様に、二段目の整合回路として、スルーホールで形成されるもの(CT2)と、ビアで形成されるもの(CR2)を混在させて配置する。これにより、一段目の整合回路の場合と同様に、二段目の整合回路を高密度に形成することができ、且つ配線密度を低減することができる。特に、本実施の形態のように、配線長LR2と配線長LT2が略等しい場合、上記のようにスルーホールの整合回路とビアの整合回路を混在させれば、一段目の整合回路の場合と同様に、パッケージ基板1上の領域Aに、より多くの整合回路をより高密度に形成することができる。
【0107】
図11に、整合回路としてのビアに対する配線の接続例を示す。
図11の(a)には、整合回路を形成するためのビアに対する配線の第1接続例が、
図11の(b)には、整合回路を形成するためのビアに対する配線の第2接続例が、同図の(c)には、整合回路を形成するためのビアに対する配線の第3接続例が示される。
【0108】
図11の(a)に示される第1接続例は、パッケージ基板1の断面視において、複数のランドを介して配線がビアに接続されるものである。同図には、一般的なビアと配線の接続方法と同様に、ビアに接続される最上位のランドに1つの配線が接続され、ビアに接続される最下位のランドにもう1つの配線が接続される場合が例示されている。
【0109】
図11の(b)に示される第2接続例と
図11の(c)に示される第3接続例は、パッケージ基板1の断面視において、単数のランドを介して配線がビアに接続されるものである。
図11の(b)には、ビアに接続される最下位のランドに2つの配線が接続される場合が例示され、
図11の(c)には、ビアに接続される3段のランドのうち、中間のランドに2つの配線が接続される場合が例示される。
【0110】
図11の(a)〜(c)の何れの接続方法であっても、ビアを整合回路として機能させることができる。また、
図11の(a)〜(c)の接続方法を組み合わせることも可能である。例えば、複数の整合回路CT1を構成するビアうち、一部のビアを
図11の(b)、(c)のように1つのランドを介して配線に接続し、残りのビアを
図11の(a)のように複数のランドを介して配線に接続する。これによれば、整合回路CT1を構成するビアに接続される配線の引き廻しが容易となり、更なる整合回路の高密度化と配線密度の低減を図ることができる。
【0111】
また、
図10に示されるように、整合回路CT1を形成するビアと整合回路CR1を形成するスルーホールを、平面視において重なりを有しないように配置すると良い。同様に、整合回路CT2を形成するスルーホールと整合回路CR2を形成するビアを、平面視において重なりを有しないように配置すると良い。これによれば、スルーホールとビアのランドを介した信号干渉を抑えることができる。
【0112】
図12乃至18に、
図10に対応する各配線層の平面図を例示する。
【0113】
図12は、配線層Layer2の平面図を、
図13は、配線層Layer4の平面図を、
図14は、配線層Layer5の平面図を、
図15は、配線層Layer6の平面図を、
図16は、配線層Layer7の平面図を、
図17は、配線層Layer8の平面図を、
図18は、配線層Layer9の平面図を、示す。
【0114】
図12及び13に示されるように、半導体チップ2の送信側の差動信号線路SNDTを形成する信号線路SPT1、SPT2において、一段目に配置される整合回路CT1は、配線層Layer2−4間を貫通するビアによって形成される。
【0115】
整合回路CT1の拡大した図を
図19に示す。同図に例示されるように、差動信号線路SNDTを構成する2つの信号線SNT1、SNT2は、ビア(Via)によって形成された整合回路CT1に接続される。また、グラウンド電位に接続される複数のグラウンドビア16が、差動信号線路SNDTの整合回路CT1を形成する夫々のビアを囲むように配置される。これにより、2つの信号線SNT1、SNT2に供給された差動信号を、パッケージ基板1の鉛直方向(断面視において上下方向)に伝播させることができる。
【0116】
図14及び15に示されるように、半導体チップ2の受信側の差動信号線路SNDRを形成する信号線路SPR1、SPR2において、一段目に配置される整合回路CR1は、配線層Layer5−6間を貫通するスルーホールによって形成される。
【0117】
整合回路CR1の拡大した図を
図20に示す。
図20に例示されるように、差動信号線路SNDRを構成する2つの信号線路SPR1、SPR2は、スルーホール(TH)によって形成された整合回路CR1に接続される。また、同図に示されるように、グラウンド電位に接続される複数のスルーホール15が、差動信号線路SNDRの整合回路CR1を形成する夫々のスルーホールを囲むように配置される。これにより、2つの信号線SNR1、SNR2に供給された差動信号を、パッケージ基板1の鉛直方向(断面視において上下方向)に伝播させることができる。
【0118】
また、
図14及び15に示されるように、半導体チップ2の送信側の差動信号線路SNDTにおいて、二段目に配置される整合回路CT2は、配線層Layer5−6間を貫通するスルーホールによって形成される。前述した整合回路CR1と同様に、グラウンド電位に接続される複数のスルーホール15が、差動信号線路SNDTの整合回路CT2を形成する夫々のスルーホールを囲むように配置される。
【0119】
図16乃至18に示されるように、半導体チップ2の受信側の差動信号線路SNDRにおいて、二段目に配置される整合回路CR2は、配線層Layer7−9間を貫通するビアによって形成される。ここでは、整合回路CR2を形成するビアの形状として、Layer7に形成されたランドと、Layer8に形成されたランドと、Layer9に形成されたランドとが接続されたビアが例示されている。また、前述した整合回路CT1と同様に、グラウンド電位に接続される複数のグラウンドビア16が、差動信号線路SNDRの整合回路CR2を形成する夫々のビアを囲むように配置される。
【0120】
二段目の整合回路CR2を形成するビアに接続されるランドは、一段目の整合回路CT1を形成するビアに接続されるランドよりも、ランド径が小さくされる。これは、I/O素子Tx1、Rx1等の入出力端の寄生容量CT0、CR0で反射した信号は、その信号レベルがI/O素子Tx1、Rx1等の入出力端から離れるほど小さくなることを考慮したものである。すなわち、一段目の整合回路よりもI/O素子Tx1、Rx1等から離れた位置に形成される二段目の整合回路は、その容量値を一段目のそれよりも小さくしても、I/O素子Tx1、Rx1等の入出力端で反射した反射波を打ち消すのに十分な効果を得ることが可能となる。したがって、上記のように、一段目の整合回路CT1よりも二段目の整合回路CR2の容量値を小さくすることで、二段目の整合回路CR2を形成するための領域の面積を小さくすることができる。これにより、反射波による信号波形の歪を抑える効果を低減させずに、更なる整合回路の高密度化と配線密度の低減を図ることが可能となる。
【0121】
また、
図17及び18に示されるように、各外部端子8に接続される第2電極11の開口部31の直上の配線層Layer8には、電磁波を吸収するためのメッシュ状の金属部材30が形成される。これによれば、外部端子8(半田バンプ)と接触する第2電極11でのインピーダンス不連続を低減させることができるので、差動信号線路SNDR、SNDTの信号伝達特性を更に向上させることができる。
【0122】
図21及び22に、整合回路としてのスルーホール及びビアのパッケージ基板1上の配置例を示す。ここでは、
図10と同様に、信号経路SNR1の一段目の整合回路CR1をLayer5−6間のスルーホールで形成するとともに、二段目の整合回路CR2をLayer7−9間のビアで形成し、信号経路SNT1の一段目の整合回路CT1をLayer2−4間のビアで形成するとともに、二段目の整合回路CT2をLayer5−6間のスルーホールで形成した場合を例示する。
【0123】
図21は、配線層Layer2の配線パターンを例示した平面図であり、
図22は、配線層Layer4とLayer5の配線パターンを例示した平面図である。
【0124】
図21に示されるように、パッケージ基板1における半導体チップ2の直下の領域に複数の第1電極10が形成される。複数の第1電極10のうち、半導体チップ2の送信用のI/O素子Txの出力端に接続される第1信号電極10_Rxと、半導体チップ2の受信用のI/O素子Rxの入力端に接続される第2信号電極10_Txとが規則的に配列される。例えば、
図21に示されるように、差動対を構成する2つの第1信号電極10_Rxがx方向に並んで配置され、同様に、差動対を構成する2つの第2信号電極10_Txがx方向に並んで配置される。そして、第1信号電極10_Rxの差動対と第2信号電極10_Txの差動対が、1組又は2組毎にy方向に交互に配列される。なお、第1信号電極10_Txと第2信号電極10_Rxの配列は、それらの全部又は一部が規則的に配置されていれば足り、
図21に例示されるものに限定されない。
【0125】
上記のように複数の第1信号電極10_Rxを配置し、夫々の第1信号電極10_Rxから配線長LR1だけ離れた位置に整合回路CR1としてのスルーホールを夫々形成する。これにより、
図21及び
図22に示される領域Sに、整合回路CR1が密集して形成される。
【0126】
また、上記のように複数の第2信号電極10_Txを配置し、夫々の第2信号電極10_Txから配線長LT1だけ離れた位置に整合回路CT1としてのビアを夫々形成する。これにより、
図22に示される領域Uに、整合回路CR1が密集して形成される。なお、
図22では、配線長LR1を、理想の配線長(λ/4)の誤差の範囲内(20%以内)で配線長LT1よりも短くすることで、スルーホールとビアが平面視において重ならないようにしている。
【0127】
以上
図21及び22によれば、パッケージ基板1上の領域Aに、多くの整合回路がより高密度に形成されていることが理解される。また、整合回路に接続される配線群が、複数の配線層に分散されていることが理解される。
【0128】
図23に、一段目の整合回路CR1をスルーホールで形成し、且つ二段目の整合回路CR2をビアで形成した場合の差動信号線路SNDRの伝送特性を例示する。この特性図は、
図12乃至18の配線パターンからモデルパラメータを抽出し、それらのモデルパラメータを用いて3次元電磁界シミュレータによりシミュレーションを行ったものである。
【0129】
図23の(a)には、コモンモードでの信号周波数に対する反射損失の特性が例示され、
図23の(b)には、ディファレンシャルモードでの信号周波数に対する反射損失の特性が例示される。参照符号400は、12.5GHzの伝送線路のコモンモードにおける反射損失の要求仕様値を表し、参照符号401は、コモンモードでのI/O素子Rxの反射損失を表す。参照符号402は、整合回路CR1、CR2を設けなかった場合のコモンモードでの差動信号線路SNDRの反射損失を表し、参照符号403は、整合回路CR1、CR2を設けた場合のコモンモードでの差動信号線路SNDRの反射損失を表す。また、参照符号410は、12.5GHzの伝送線路のディファレンシャルモードにおける反射損失の要求仕様値を表し、参照符号411は、ディファレンシャルモードでのI/O素子Rxの反射損失を表す。参照符号412は、整合回路CR1、CR2を設けなかった場合のディファレンシャルモードでの差動信号線路SNDRの反射損失を表し、参照符号413は、整合回路CR1、CR2を設けた場合のディファレンシャルモードモードでの差動信号線路SNDRの反射損失を表す。
【0130】
図23の(a)、(b)から理解されるように、差動信号線路SNDRの整合回路CR1、CR2を設けることにより、広い帯域において良好な信号の伝送特性が実現される。
【0131】
図24に、一段目の整合回路CT1をビアで形成し、且つ二段目の整合回路CT2をスルーホールで形成した場合の差動信号線路SNDTの伝送特性を例示する。この特性図は、
図23と同様に、抽出したモデルパラメータを用いて3次元電磁界シミュレータによりシミュレーションを行ったものである。
【0132】
図24の(a)には、コモンモードでの信号周波数に対する反射損失の特性が例示され、
図24の(b)には、ディファレンシャルモードでの信号周波数に対する反射損失の特性が例示される。参照符号500は、12.5GHzの伝送線路のコモンモードにおける反射損失の要求仕様値を表し、参照符号501は、コモンモードでのI/O素子Txの反射損失を表す。参照符号502は、整合回路CT1、CT2を設けた場合のコモンモードでの差動信号線路SNDTの反射損失を表す。また、参照符号510は、12.5GHzの伝送線路のディファレンシャルモードにおける反射損失の要求仕様値を表し、参照符号511は、ディファレンシャルモードでのI/O素子Txの反射損失を表す。参照符号512は、整合回路CT1、CT2を設けた場合のディファレンシャルモードモードでの差動信号線路SNDTの反射損失を表す。
【0133】
図24の(a)、(b)から理解されるように、差動信号線路SNDTの整合回路CT1、CT2を設けることにより、広い帯域において良好な信号の伝送特性が実現される。
【0134】
次に、半導体装置100の製造方法について説明する。半導体装置100は、例えば以下の順序で組み立てられる。
【0135】
図25は、半導体装置100の製造プロセスのアウトラインを示す流れ図である。
【0136】
なお、以下の例では、フリップチップボンディング後のアンダーフィル樹脂を導入するプロセスを例に取り具体的に説明するが、フリップチップボンディング前に、アンダーフィル樹脂をマウントして、その後、フリップチップボンディングするプロセスでもよいことはいうまでもない。
【0137】
図25に示されるように、先ず、バンプ付の半導体チップ2、3が準備される(S101)。例えば、ステップS101に先行する半田バンプ形成工程において、先ず、所定の回路パターンが形成されたウエハのデバイス面に多数の電極パッド(UBM等)が設けられ、その上にバンプ電極7となる半田バンプ7が形成される。その後、ウエハプローブテスト工程、バンプ高さ検査工程、及びウエハダイシング工程を経て、ウエハが各チップに分割される。これにより、バンプ付の半導体チップ2、3が得られる。
【0138】
また、パッケージ基板1が準備される(S102)。パッケージ基板1は、ステップ102に先行する配線基板製造工程において、基板を上下1層ずつ積層し、その都度、スルーホールやビアをあけて導通を確保してゆく製法によって得られる。パッケージ基板1の製造方法については後で詳述する。
【0139】
次に、チップボンディング工程(フリップチップボンディング工程)により、パッケージ基板1と半導体チップ2,3が電気的に接続される(S103)。具体的には、チップボンディング工程において、例えば摂氏240度から260度程度でリフロー処理することによって、バンプ電極7を介して、半導体チップ2、3上の電極パッドと対応するパッケージ基板1上の第1電極10(第1信号電極10_Rx、第2信号電極10_Tx等)とが接続される。
【0140】
次に、パッケージ基板1の第1主面(上面)1aと半導体チップ2のデバイス面の間に、アンダーフィルレジン部材12を注入し、キュア処理を施す(S104)。そして、パッケージ基板1の上面、及び半導体チップ2、3が封止樹脂体(エポキシ)により封止され、パッケージングされる(S105)。その後、パッケージ基板1の第2主面(下面)1bの第2電極11に外部端子8として外部半田バンプを取り付ける(S106)。そして、上記工程によりパッケージングされた半導体装置100は、封止体の上面へマーキングを行うマーキング工程等を経た後、パッケージテストが行われ(S107)、パッケージテスト工程を通過した半導体装置100は、外観検査を経て梱包され出荷される(S108)。
【0141】
図26に、パッケージ基板1の製造プロセスのアウトラインを例示する。
【0142】
図26に示されるように、先ず、配線パターンが形成された両面銅張板の両側に銅張りプリプレグを張り合わせたコア基板21が準備される(S201)。コア基板21をドリル加工によってスルーホールの穴あけを行う(S202)。このとき、通常のスルーホールと同じように、整合回路(CR1やCT2等)を構成するためのスルーホールが形成される。その後、スルーホールにめっき(無電解めっき又は電界めっき)を施す(S203)。次に、ビルドアップ層20、21の形成を行う。先ず、樹脂による穴埋めを行ってから層間絶縁膜を両面に形成する(S204)。次に、レーザ加工によって、ビアを形成する(S205)。このとき、通常のビアと同様に、整合回路(CR2やCT1等)を構成するためのビアが形成される。更に全面に数μm厚レベルで無電解銅めっきを行う(S206)。そして、配線パターンをフォトマスクを用いて配線形成用のドライフィルムレジストにパターニングし、開口部分に例えば10μm厚レベルの電解銅めっきを行う(S207)。その後、レジストを除去し、めっきした銅をライトエッチングすることにより、配線が形成される(S208)。その後は、上記ステップS204〜S207を繰り返すことによって、ビルドアップ層が形成される。ビルドアップ層において必要な数の配線層が形成されたら、表面保護膜としてソルダーレジストが形成される(S209)。そして、半導体チップ2、パッケージ基板1との接続部分(パッド)となる第1電極10や、第2電極(ソルダーボールパッド)11が開口される(S210)。最後に、開口部分に表面処理を施すことで、パッケージ基板1が完成する(S211)。
【0143】
以上のように、パッケージ基板1において通常のスルーホールやビアを形成する場合と同様の方法で、整合回路としてのスルーホール及びビアを形成することができ、新たな工程等の追加はない。
【0144】
以上、本半導体装置100及びパッケージ基板1によれば、パッケージ基板の製造コストを抑えつつ、良好な信号の伝送特性を実現することが可能となる。
【0145】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0146】
例えば、一段目の整合回路CR1(CT1)を配線長λa/4の位置に形成する場合を例示したが、これに限られず、一段目の整合回路CR1(CT1)を配線長3λa/4の位置に形成しても、同様の効果が得られる。また、二段目の整合回路CR2(CT2)を配線長3λb/4の位置に形成する場合を例示したが、これに限られず、二段目の整合回路CR2(CT2)を配線長λb/4の位置に形成しても、同様の効果が得られる。例えば、反射波を低減させたい信号の電磁波波長λa,λb(信号周波数fa,fb)が離れている場合には、一段目の整合回路をλa/4の位置に形成し、二段目の整合回路をλb/4の位置に形成しても良いし、一段目の整合回路を3λa/4の位置に形成し、二段目の整合回路を3λb/4の位置に形成しても良い。また、整合回路CT2、CR2の配置の組み合わせとしては、以下のようなパターンが考えられる。例えば、上述のように整合回路CT2を配線長3λb/4に配置し、整合回路CR2を配線長3λb/4に配置する第1パターンや、整合回路CT2を配線長λb/4に配置し、整合回路CR2を配線長λb/4に配置する第2パターンがある。その他に、整合回路CT2を配線長3λb/4に配置し、整合回路CR2を配線長λb/4に配置する第3パターンや、整合回路CT2を配線長λb/4に配置し、整合回路CR2を配線長3λb/4に配置する第4パターンがある。整合回路CR1、CT1についても同様である。何れのパターンによって整合回路を形成するかは、反射波を低減させたい信号の電磁波波長λa,λb(信号周波数fa,fb)やパッケージ基板1上の領域の余裕度等によって、種々変更可能である。例えば、より狭い領域に密集させて整合回路を配置したい場合には、上記第2パターンを採用すれば良いし、整合回路を配線基板上に分散させて配置したい場合には、上記第3パターンや第4パターンを採用すれば良い。
【0147】
また、本実施の形態では、受信側の信号線路SNDRの一段目の整合回路をスルーホール、二段目の整合回路をビアとし、送信側の信号線路SNDTの一段目の整合回路をビア、二段目の整合回路をスルーホールとした場合を例示したが、限られない。例えば、受信側の信号線路SNDRの一段目の整合回路をビア、二段目の整合回路をスルーホールとし、送信側の信号線路SNDTの一段目の整合回路をスルーホール、二段目の整合回路をビアとしても良い。また、半導体装置100が送信用のI/O素子しか有しない場合には、それに接続される複数の送信用の信号線路のうち、一部の信号線路の一段目の整合回路をスルーホール、二段目の整合回路をビアとし、その他の信号線路の一段目の整合回路をビア、二段目の整合回路をスルーホールとすることも、その逆とすることも可能である。半導体装置100が受信用のI/O素子しか有しない場合も同様である。
【0148】
パッケージ基板1上の信号線路に形成する整合回路の段数を二段とした場合を例示したが、これに限られず、要求される仕様に応じて変更可能である。例えば、一段の整合回路としても良いし、三段以上の整合回路を設けても良い。三段目以降の整合回路も、上述した一段目及び二段目と同じようにλ/4や3λ/4を基準に配置すれば良い。
【0149】
本実施の形態では、半導体装置100と半導体装置101とを接続する信号経路におけるバンプ電極7と外部端子8とを接続する信号線路のインピーダンスを整合するために、パッケージ基板1に整合回路CR1等を形成する場合を例示したが、これに限られない。例えば、半導体チップ2のバンプ電極7と半導体装置3のバンプ電極13とを接続する信号線路のインピーダンスを整合するために、当該信号線路が形成されるパッケージ基板1上に、スルーホールやビアによって整合回路を形成することも可能である。